JP2004300358A - 記録液 - Google Patents
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Abstract
【課題】水系インクジェット記録用として高彩度のマゼンタ記録物を与える記録易を提供する。
【解決手段】水性媒体と、遊離酸の形が下記一般式(1)で示されるモノアゾ色素から選ばれる少なくとも1種の色素を含有することを特徴とする記録液。
(式中、Aはアゾ基に対するオルト位にカルボキシル基が結合し、さらに少なくともハロゲン原子を置換基として有するフェニル基を示し、R5は、水素原子又は炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基を示し、R6は及びR6’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数3以下の置換もしくは非置換のアルキル基、又は、炭素数3以下の置換もしくは非置換のアルケニル基を示し、Zは、スルホン酸基以外の基で置換されていても良い、芳香族炭素環又は芳香族複素環基等を示す。)
【選択図】 なし
【解決手段】水性媒体と、遊離酸の形が下記一般式(1)で示されるモノアゾ色素から選ばれる少なくとも1種の色素を含有することを特徴とする記録液。
(式中、Aはアゾ基に対するオルト位にカルボキシル基が結合し、さらに少なくともハロゲン原子を置換基として有するフェニル基を示し、R5は、水素原子又は炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基を示し、R6は及びR6’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数3以下の置換もしくは非置換のアルキル基、又は、炭素数3以下の置換もしくは非置換のアルケニル基を示し、Zは、スルホン酸基以外の基で置換されていても良い、芳香族炭素環又は芳香族複素環基等を示す。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は記録液に関するものである。詳しくはインクジェット記録に適した記録液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
直接染料や酸性染料等の水溶性染料を含む記録液の液滴を微小な吐出オリフィスから飛翔させて記録を行う、いわゆるインクジェット記録方法が実用化されている。
この記録液に関しては、電子写真用紙のPPC(プレインペーパーコピア)用紙、ファンホールド紙(コンピューター等の連続用紙)等の一般事務用に汎用される記録紙に対する定着が速く、しかも印字物の印字品位が良好であること、即ち印字ににじみがなく輪郭がはっきりしていることが要求されると共に、記録液としての保存時の安定性も優れていることが必要であり、従って使用できる溶剤が著しく制限される。
【0003】
一方、記録液用の染料に関しては、上記のような限られた溶剤に対して充分な溶解性を有すると共に、記録液として長期間保存した場合にも安定であり、また印字された画像の濃度が高く、しかも耐水性、耐光性に優れていること等が要求されるが、これ等の多くの要求を同時に満足させることを目的として、各種色素に関する検討がなされている。このうち、トリアジン環を有するアミノナフトールジスルホン酸系のモノアゾ色素を用いた記録液が普通紙へ記録した場合に好ましい色調で且つ高濃度のマゼンダ色系の記録物を与えることが知られており(特許文献1及び2参照)、また、上記色素のうち、トリアジン環の置換基としてスルホン酸基及びアミノ基で置換されたアニリノ基を有するものの方が普通紙における高い耐水堅牢度を有することが知られている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−090211号公報
【特許文献2】特開平7−278478号公報
【特許文献3】特開平11−279469号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記文献に記載の色素は、彩度及び色味等の点で、未だ不十分であることが判明し、より高彩度のマゼンタ色素の出現が望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、上記色素のうち、アゾ基に対するオルト位にカルボキシル基が結合し、さらに少なくともハロゲン原子を置換基として有するフェニル基を有する色素であって、且つ、トリアジン環の置換基として特定のアミノ基を有するモノアゾ色素を含有する記録液が彩度及び色味の優れた記録物を与えることを見出し、本発明を解決するに至った。すなわち本発明の要旨は、水性媒体と、遊離酸の形が下記一般式(1)で示されるモノアゾ色素から選ばれる少なくとも1種の色素を含有することを特徴とする記録液及び遊離酸の形が下記一般式(1)で示される記録液用モノアゾ色素に存する。
【0007】
【化4】
【0008】
(式中、Aはアゾ基に対するオルト位にカルボキシル基が結合し、さらに少なくともハロゲン原子を置換基として有するフェニル基を示し、R5は、水素原子又は炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基を示し、R6は及びR6’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数3以下の置換もしくは非置換のアルキル基、又は、炭素数3以下の置換もしくは非置換のアルケニル基を示し、Zは、スルホン酸基以外の基で置換されていても良い、芳香族炭素環又は芳香族複素環基、若しくは、スルホン酸基及びアミノ基で置換されているフェニル基、若しくは、スルホン酸基及び置換若しくは非置換のアミノ基で置換されている芳香族複素環基を示す。)
以下本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される色素は、遊離酸の形が上記一般式(1)で表されるものである。
上記一般式(1)におけるAは、アゾ基に対するオルト位にカルボキシル基が結合し、更に少なくとも塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子により置換されたフェニル基である。
【0010】
上記Aとして好ましくは上記一般式(2)で表される基が挙げられ、式中R1はハロゲン原子である。R2〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、SO3H基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは非置換のアリールスルホニル基、スルホン酸エステル基又はカルボン酸エステル基を示す。
【0011】
ここで、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノメチル基等のハロゲン原子及びアミノ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよいアルキル基が挙げられ、このうち好ましくは炭素数1〜4のものであり、特に好ましくは炭素数1〜4のハロアルキル基であり、特に好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0012】
炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基等の水酸基で置換されていても良いアルコキシ基が挙げられ、このうち好ましくは炭素数1〜4のものであり、より好ましくは無置換の炭素数1〜4のアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基である。
【0013】
置換もしくは非置換のカルバモイル基としては、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等のアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いカルバモイル基が挙げられ、このうち好ましくはカルバモイル基である。
置換もしくは非置換のスルファモイル基としては、スルファモイル基、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、p−カルボキシフェニルスルファモイル基等のアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いスルファモイル基が挙げられ、このうち好ましくはスルファモイル基である。
【0014】
置換もしくは非置換のアミノ基としては、アミノ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基、カルバモイルアミノ基、アセチルアミノ基等のアルキル基、アリール基、カルバモイル基及びアシル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いアミノ基が挙げられ、このうち好ましくはアシルアミノ基であり、特に好ましくはアセチルアミノ基である。
【0015】
炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、ヒドロキシエチルスルホニル基、ベンジルスルホニル基等の水酸基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良い炭素数1〜9のアルキルスルホニル基が挙げられ、このうち好ましくは炭素数1〜4のものであり、より好ましくは炭素数1〜4の無置換のアルキルスルホニル基であり、特に好ましくはメチルスルホニル基である。
【0016】
炭素数6〜15の置換もしくは非置換のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、トリルスルホニル基等のアルキル基で置換されていても良いアリールスルホニル基が挙げられ、このうち好ましくはフェニルスルホニル基である
スルホン酸エステル基としては、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等のアルコキシスルホニル基又はフェノキシスルホニル基等のアリールオキシスルホニル基が挙げられ、このうち好ましくは炭素数1〜6のアルコキシスルホニル基、ベンジルオキシスルホニル基又はフェニルスルホニル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシスルホニル基である。
【0017】
カルボン酸エステル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基又はフェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基が挙げられ、このうち好ましくは炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基又はフェノキシカルボニル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基であり、特に好ましくはメトキシカルボニル基である。
【0018】
このうち、R2〜R4として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは非置換のアリールスルホニル基、スルホン酸エステル基又はカルボン酸エステル基であり、より好ましくは水素原子、ニトロ基、COOH基又は炭素数1〜4のアルキル基である。
【0019】
上記Aとしては、ハロゲン原子がアゾ基に対してメタ位及びパラ位の位置の少なくとも1箇所を置換しているものが好ましく、より好ましくはR2〜R4のうち少なくとも1つが水素原子のものであり、特に好ましくはR2〜R4が全て水素原子のものである。
以下にAの好ましい具体例を例示する。
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
R5は、水素原子又は炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基であり、上記炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基としては、R2〜R4の説明の項で例示したのと同様の基を挙げることができる。
このうち、R5としては、水素原子が好ましい。
【0023】
R6及びR6’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数3以下の置換もしくは非置換のアルキル基、又は、炭素数3以下の置換もしくは非置換のアルケニル基である。
上記炭素数3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、上記炭素数3以下のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基が挙げられる。
上記アルキル基及びアルケニル基の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基、メトキシ基、エトキシ基、カルバモイル基等が挙げられ、このうち好ましくはハロゲン原子、水酸基又はカルボキシル基が挙げられる。
上記R6及びR6’として好ましくは、水素原子、炭素数2以下の置換もしくは非置換のアルキル基、又は、炭素数2以下の置換もしくは非置換のアルケニル基であり、より好ましくは水素原子;メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、1−カルボキシ−2−メルカプトエチル基等の上述の置換基で置換されていても良い炭素数2以下のアルキル基又はビニル基であり、さらに好ましくはR6及びR6’のうちいずれか一方が水素原子の場合であり、特に好ましくは両方とも水素原子の場合である。
【0024】
Zは、スルホン酸基以外の基で置換されていても良い、芳香族炭素環又は芳香族複素環基、若しくは、スルホン酸基及びアミノ基で置換されているフェニル基、若しくは、スルホン酸基及び置換若しくは非置換のアミノ基で置換されている芳香族複素環基である。
上記芳香族炭素環基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられ、上記芳香族複素環基としてはピリジル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、チアゾリル基又はベンゾチアゾリル基が挙げられる。
【0025】
上記芳香族炭素環基及び芳香族複素環基のスルホン酸基以外の置換基として好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基又はカルボン酸エステル基が挙げられる。
【0026】
ここで、上記炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基及びカルボン酸エステル基としては、上記R2〜R4の説明の項で挙げたのと同様の基が挙げられる。
【0027】
上述のスルホン酸基以外の置換基で置換されていても良い芳香族炭素環基又は芳香族複素環基として好ましくは、カルボキシル基を1〜4個有する芳香族炭素環基又は芳香族複素環基、若しくは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基及びカルボン酸エステル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いフェニル基であり、より好ましくは、カルボキシル基を1又は2個有するフェニル基、又は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数1〜4の置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基及び置換もしくは非置換のアミノ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いフェニル基であり、更に好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基及び置換若しくは非置換のアミノ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いフェニル基である。
【0028】
スルホン酸基及びアミノ基で置換されているフェニル基として好ましくは、スルホン酸基及びアミノ基をそれぞれ1又は2個有し、それ以外の部分をハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基又はカルボン酸エステル基から選ばれる置換基で置換されていても良いフェニル基が挙げられ、より好ましくは、スルホン酸基及びアミノ基以外には置換基を有しないフェニル基であり、特に好ましくはスルホン酸基及びアミノ基をそれぞれ1個づつ有するフェニル基である。
【0029】
スルホン酸基及び置換若しくは非置換のアミノ基で置換されている芳香族複素環基として好ましくは、スルホン酸基及び置換若しくは非置換のアミノ基をそれぞれ1又は2個有し、それ以外の部分をハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基又はカルボン酸エステル基から選ばれる置換基で置換されていても良い芳香族複素環基が挙げられ、より好ましくは、スルホン酸基及び置換若しくは非置換のアミノ基以外には置換基を有しない芳香族複素環基であり、特に好ましくはスルホン酸基及びアミノ基をそれぞれ1個づつ有する芳香族複素環基である。
ここで、置換若しくは非置換のアミノ基としては、上記R2〜R4の説明の項で挙げたのと同様の基が挙げられる。
【0030】
このうちZとして好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基及びカルボン酸エステル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いフェニル基、又は、スルホン酸基及びアミノ基を有し且つ該スルホン酸基と該アミノ基をそれぞれ隣接する位置に有するフェニル基である。
上記で説明されたアミノナフトール側のカップラー部分の好ましい具体例を以下に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
【表8】
【0039】
また、本発明で使用される上記一般式(1)で表される色素は構造中に、SO3H基及びCOOH基、並びに、これらの酸の塩の基を合計で少なくとも3個以上有するのが好ましく、また8個以下、好ましくは5個以下有するものが好ましい。
特には、スルホン酸基及び/又はその塩としては3又は4個、カルボキシル基及び/又はその塩として1又は2個有するものが好ましい。
【0040】
本発明で使用される色素は一般式(1)で示されるような遊離酸型のまま使用してもよく、また、製造時に塩型で得られた場合はそのまま使用してもよいし、所望の塩型に変換してもよい。塩型の交換方法としては、公知の方法を任意に用いることができ、例えば以下の方法が挙げられる。
1) 塩型で得られた色素の水溶液に塩酸等の強酸を添加し、色素を遊離酸の形で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
2) 塩型で得られたの色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば、塩化リチウム)を添加し、塩析ケーキの形で塩交換を行う方法。
3) 塩型で得られた色素の水溶液を、強酸性イオン交換樹脂で処理し、色素を遊離酸の形で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
4) 予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で処理した強酸性イオン交換樹脂に、塩型で得られた色素の水溶液を作用させ、塩交換を行う方法。
【0041】
また、本発明で使用される色素は、酸基の一部が塩型を取っているものであってもよく、塩型の色素と遊離酸型の色素が混在していてもよい。ここで、酸性基が遊離酸型をとるか、塩型を取るかは、色素のpKaとインクのpHに依存するが、通常、スルホン酸基が塩型を取り、カルボキシル基よりも多く塩型になっている方が、インクの目詰まりしにくさの点では好ましい。他方、カルボキシル基が酸型を取っている色素は、耐水性や耐滲み性を重視する場合に好ましく使用される。
【0042】
本発明に用いられる色素は、pH2〜12、好ましくはpH4〜11、より好ましくはpH6〜10で用いられ、特に塩基性インクとした場合にも優れた性能を示すものである。
上記の塩型の例としては、Na、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、炭素数1〜6の低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン、カルボキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
【0043】
塩型を構成する対イオンの種類の選択についても、そのインクにおいて重視すべき特性に応じ、自由に選択される。色素の合成に用いられる中間体や試薬にNaを含むものが多いので、一般にNa塩の形で得られるものが多いが、耐水性を重視する場合はNH4塩に変換されることが多く、また色素の溶解性を高めインクの目詰まり性をより高いレベルに維持する必要があるときなどは、Li塩や、トリエタノールアミンに代表されるアルカノールアミン塩の形に変換されることもある。
【0044】
本発明の記録液における好ましい色素の具体例としては、例えば下記表2におけるNo.1−72に示す構造の色素が挙げられる。ここで、表中のA及びBは前述の置換基の具体例に記載されている基を示す。
【0045】
【表9】
【0046】
上記一般式(1)で表されるモノアゾ色素は、それ自体周知の方法に従って製造することができる。例えばNo.1で示される色素は、下記(A)〜(C)の工程で製造できる。
(A)5−クロロアントラニル酸と1−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸(H酸)とから常法[例えば、細田豊著「新染料化学」(昭和48年12月21日、技報堂発行)第396頁第409頁参照]に従って、ジアゾ化、カップリング工程を経てモノアゾ化合物を製造する。
(B)得られたモノアゾ化合物を塩化シアヌル懸濁液にpH4〜6、温度0〜5℃を保持しながら加えて、数時間反応を行う。次いで室温にてアルカリ性にならない様に、2−アミノ安息香酸(アントラニル酸)水溶液を加えて数時間縮合反応を行う。次いで、28%アンモニア水を添加し、80〜90℃にて縮合反応を行い、反応を完結させる。
(C)冷却後、塩化リチウムで塩析することにより目的の色素No.1が得られる。
【0047】
記録液中における前記一般式(1)の色素の含有量としては、記録液全量に対して0.5〜5重量%、特に2〜4重量%程度が好ましい。
本発明に用いられる溶剤としては、水及び水溶性有機溶剤として、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(#200)、ポリエチレングリコール(#400)、グリセリン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、チオジエタノール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ピロリドン、スルホラン、エチルアルコール、イソプロパノール等を含有しているのが好ましい。これ等の水溶性有機溶剤は、通常記録液の全量に対して50重量%以下、好ましくは1〜50重量%の範囲で使用される。一方、水は記録液の全量に対して45〜95重量%の範囲で使用される。
【0048】
本発明の記録液に、その全量に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の尿素、チオ尿素、ビウレット、セミカルバジドから選ばれる化合物を添加したり、又0.001〜5.0重量%の界面活性剤を添加することによって、印字後の速乾性及び印字品位をより一層改良することができる。
【0049】
【実施例】
以下本発明を実施例について更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれ等の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
オルフィンE1010(界面活性剤、日信化学工業(株)社製)2重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル11重量部、ジエチレングリコール13重量部、グリセリン12重量部、トリエタノールアミン0.8重量部、尿素11重量部、前記色素No.1 3重量部に水を加え、1N水酸化リチウム水溶液でpHを9に調整して全量を100重量部とした。この組成物を充分に混合して溶解し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで加圧濾過した後、超音波洗浄機で脱気処理して記録液を調整した。
【0050】
得られた記録液を使用し、インクジェットプリンター(商品名BJ F870、キヤノン社製)を用いてインクジェット専用光沢紙(商品名PM写真用紙、セイコーエプソン社製)にインクジェット記録を行い、マゼンタの記録画像を得た。
【0051】
−彩度の評価−
上述のマゼンタ画像を、測色装置(商品名スペクトロアイ、グレタグマクベス社製)にて測色し、彩度(C*値)と赤味の大きさ(a*値)とで定量した。結果を表3に示す。
<実施例2>
使用する色素を上記No.1の化合物から、No.65の化合物に変えた以外は実施例1と同様にして、それぞれマゼンタの記録画像を得、彩度(C*値)と赤味の大きさ(a*値)について定量した。結果を表3に示す。
<比較例1>
使用する色素を上記No.1の化合物から、特開平11−279469号公報に記載の色素(色素No.2)に変えた以外は実施例1と同様にして、マゼンタの記録画像を得、彩度(C*値)と赤味の大きさ(a*値)について定量した。結果を表3に示す。
【0052】
【表10】
以上の結果より、本願発明の色素を用いた記録液は、公知の色素を用いた場合に比較し、高彩度のマゼンタ色の記録物を与えることが分かる。
【0053】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録用色素は水溶解性に優れ、この色素を用いた本発明の記録液は、水系インクジェット記録用として、普通紙及び専用紙に記録した場合にも鮮明な印字物を得ることができる上に、その記録画像の濃度が高く、耐光性や耐室内変褪色性が優れており、長期間保存した場合の安定性も良好なものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は記録液に関するものである。詳しくはインクジェット記録に適した記録液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
直接染料や酸性染料等の水溶性染料を含む記録液の液滴を微小な吐出オリフィスから飛翔させて記録を行う、いわゆるインクジェット記録方法が実用化されている。
この記録液に関しては、電子写真用紙のPPC(プレインペーパーコピア)用紙、ファンホールド紙(コンピューター等の連続用紙)等の一般事務用に汎用される記録紙に対する定着が速く、しかも印字物の印字品位が良好であること、即ち印字ににじみがなく輪郭がはっきりしていることが要求されると共に、記録液としての保存時の安定性も優れていることが必要であり、従って使用できる溶剤が著しく制限される。
【0003】
一方、記録液用の染料に関しては、上記のような限られた溶剤に対して充分な溶解性を有すると共に、記録液として長期間保存した場合にも安定であり、また印字された画像の濃度が高く、しかも耐水性、耐光性に優れていること等が要求されるが、これ等の多くの要求を同時に満足させることを目的として、各種色素に関する検討がなされている。このうち、トリアジン環を有するアミノナフトールジスルホン酸系のモノアゾ色素を用いた記録液が普通紙へ記録した場合に好ましい色調で且つ高濃度のマゼンダ色系の記録物を与えることが知られており(特許文献1及び2参照)、また、上記色素のうち、トリアジン環の置換基としてスルホン酸基及びアミノ基で置換されたアニリノ基を有するものの方が普通紙における高い耐水堅牢度を有することが知られている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−090211号公報
【特許文献2】特開平7−278478号公報
【特許文献3】特開平11−279469号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記文献に記載の色素は、彩度及び色味等の点で、未だ不十分であることが判明し、より高彩度のマゼンタ色素の出現が望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、上記色素のうち、アゾ基に対するオルト位にカルボキシル基が結合し、さらに少なくともハロゲン原子を置換基として有するフェニル基を有する色素であって、且つ、トリアジン環の置換基として特定のアミノ基を有するモノアゾ色素を含有する記録液が彩度及び色味の優れた記録物を与えることを見出し、本発明を解決するに至った。すなわち本発明の要旨は、水性媒体と、遊離酸の形が下記一般式(1)で示されるモノアゾ色素から選ばれる少なくとも1種の色素を含有することを特徴とする記録液及び遊離酸の形が下記一般式(1)で示される記録液用モノアゾ色素に存する。
【0007】
【化4】
【0008】
(式中、Aはアゾ基に対するオルト位にカルボキシル基が結合し、さらに少なくともハロゲン原子を置換基として有するフェニル基を示し、R5は、水素原子又は炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基を示し、R6は及びR6’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数3以下の置換もしくは非置換のアルキル基、又は、炭素数3以下の置換もしくは非置換のアルケニル基を示し、Zは、スルホン酸基以外の基で置換されていても良い、芳香族炭素環又は芳香族複素環基、若しくは、スルホン酸基及びアミノ基で置換されているフェニル基、若しくは、スルホン酸基及び置換若しくは非置換のアミノ基で置換されている芳香族複素環基を示す。)
以下本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される色素は、遊離酸の形が上記一般式(1)で表されるものである。
上記一般式(1)におけるAは、アゾ基に対するオルト位にカルボキシル基が結合し、更に少なくとも塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子により置換されたフェニル基である。
【0010】
上記Aとして好ましくは上記一般式(2)で表される基が挙げられ、式中R1はハロゲン原子である。R2〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、SO3H基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは非置換のアリールスルホニル基、スルホン酸エステル基又はカルボン酸エステル基を示す。
【0011】
ここで、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノメチル基等のハロゲン原子及びアミノ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよいアルキル基が挙げられ、このうち好ましくは炭素数1〜4のものであり、特に好ましくは炭素数1〜4のハロアルキル基であり、特に好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0012】
炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基等の水酸基で置換されていても良いアルコキシ基が挙げられ、このうち好ましくは炭素数1〜4のものであり、より好ましくは無置換の炭素数1〜4のアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基である。
【0013】
置換もしくは非置換のカルバモイル基としては、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等のアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いカルバモイル基が挙げられ、このうち好ましくはカルバモイル基である。
置換もしくは非置換のスルファモイル基としては、スルファモイル基、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、p−カルボキシフェニルスルファモイル基等のアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いスルファモイル基が挙げられ、このうち好ましくはスルファモイル基である。
【0014】
置換もしくは非置換のアミノ基としては、アミノ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基、カルバモイルアミノ基、アセチルアミノ基等のアルキル基、アリール基、カルバモイル基及びアシル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いアミノ基が挙げられ、このうち好ましくはアシルアミノ基であり、特に好ましくはアセチルアミノ基である。
【0015】
炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、ヒドロキシエチルスルホニル基、ベンジルスルホニル基等の水酸基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良い炭素数1〜9のアルキルスルホニル基が挙げられ、このうち好ましくは炭素数1〜4のものであり、より好ましくは炭素数1〜4の無置換のアルキルスルホニル基であり、特に好ましくはメチルスルホニル基である。
【0016】
炭素数6〜15の置換もしくは非置換のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、トリルスルホニル基等のアルキル基で置換されていても良いアリールスルホニル基が挙げられ、このうち好ましくはフェニルスルホニル基である
スルホン酸エステル基としては、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等のアルコキシスルホニル基又はフェノキシスルホニル基等のアリールオキシスルホニル基が挙げられ、このうち好ましくは炭素数1〜6のアルコキシスルホニル基、ベンジルオキシスルホニル基又はフェニルスルホニル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシスルホニル基である。
【0017】
カルボン酸エステル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基又はフェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基が挙げられ、このうち好ましくは炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基又はフェノキシカルボニル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基であり、特に好ましくはメトキシカルボニル基である。
【0018】
このうち、R2〜R4として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは非置換のアリールスルホニル基、スルホン酸エステル基又はカルボン酸エステル基であり、より好ましくは水素原子、ニトロ基、COOH基又は炭素数1〜4のアルキル基である。
【0019】
上記Aとしては、ハロゲン原子がアゾ基に対してメタ位及びパラ位の位置の少なくとも1箇所を置換しているものが好ましく、より好ましくはR2〜R4のうち少なくとも1つが水素原子のものであり、特に好ましくはR2〜R4が全て水素原子のものである。
以下にAの好ましい具体例を例示する。
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
R5は、水素原子又は炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基であり、上記炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基としては、R2〜R4の説明の項で例示したのと同様の基を挙げることができる。
このうち、R5としては、水素原子が好ましい。
【0023】
R6及びR6’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数3以下の置換もしくは非置換のアルキル基、又は、炭素数3以下の置換もしくは非置換のアルケニル基である。
上記炭素数3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、上記炭素数3以下のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基が挙げられる。
上記アルキル基及びアルケニル基の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基、メトキシ基、エトキシ基、カルバモイル基等が挙げられ、このうち好ましくはハロゲン原子、水酸基又はカルボキシル基が挙げられる。
上記R6及びR6’として好ましくは、水素原子、炭素数2以下の置換もしくは非置換のアルキル基、又は、炭素数2以下の置換もしくは非置換のアルケニル基であり、より好ましくは水素原子;メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、1−カルボキシ−2−メルカプトエチル基等の上述の置換基で置換されていても良い炭素数2以下のアルキル基又はビニル基であり、さらに好ましくはR6及びR6’のうちいずれか一方が水素原子の場合であり、特に好ましくは両方とも水素原子の場合である。
【0024】
Zは、スルホン酸基以外の基で置換されていても良い、芳香族炭素環又は芳香族複素環基、若しくは、スルホン酸基及びアミノ基で置換されているフェニル基、若しくは、スルホン酸基及び置換若しくは非置換のアミノ基で置換されている芳香族複素環基である。
上記芳香族炭素環基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられ、上記芳香族複素環基としてはピリジル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、チアゾリル基又はベンゾチアゾリル基が挙げられる。
【0025】
上記芳香族炭素環基及び芳香族複素環基のスルホン酸基以外の置換基として好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基又はカルボン酸エステル基が挙げられる。
【0026】
ここで、上記炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基及びカルボン酸エステル基としては、上記R2〜R4の説明の項で挙げたのと同様の基が挙げられる。
【0027】
上述のスルホン酸基以外の置換基で置換されていても良い芳香族炭素環基又は芳香族複素環基として好ましくは、カルボキシル基を1〜4個有する芳香族炭素環基又は芳香族複素環基、若しくは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基及びカルボン酸エステル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いフェニル基であり、より好ましくは、カルボキシル基を1又は2個有するフェニル基、又は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数1〜4の置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基及び置換もしくは非置換のアミノ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いフェニル基であり、更に好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基及び置換若しくは非置換のアミノ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いフェニル基である。
【0028】
スルホン酸基及びアミノ基で置換されているフェニル基として好ましくは、スルホン酸基及びアミノ基をそれぞれ1又は2個有し、それ以外の部分をハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基又はカルボン酸エステル基から選ばれる置換基で置換されていても良いフェニル基が挙げられ、より好ましくは、スルホン酸基及びアミノ基以外には置換基を有しないフェニル基であり、特に好ましくはスルホン酸基及びアミノ基をそれぞれ1個づつ有するフェニル基である。
【0029】
スルホン酸基及び置換若しくは非置換のアミノ基で置換されている芳香族複素環基として好ましくは、スルホン酸基及び置換若しくは非置換のアミノ基をそれぞれ1又は2個有し、それ以外の部分をハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基又はカルボン酸エステル基から選ばれる置換基で置換されていても良い芳香族複素環基が挙げられ、より好ましくは、スルホン酸基及び置換若しくは非置換のアミノ基以外には置換基を有しない芳香族複素環基であり、特に好ましくはスルホン酸基及びアミノ基をそれぞれ1個づつ有する芳香族複素環基である。
ここで、置換若しくは非置換のアミノ基としては、上記R2〜R4の説明の項で挙げたのと同様の基が挙げられる。
【0030】
このうちZとして好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基及びカルボン酸エステル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いフェニル基、又は、スルホン酸基及びアミノ基を有し且つ該スルホン酸基と該アミノ基をそれぞれ隣接する位置に有するフェニル基である。
上記で説明されたアミノナフトール側のカップラー部分の好ましい具体例を以下に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
【表8】
【0039】
また、本発明で使用される上記一般式(1)で表される色素は構造中に、SO3H基及びCOOH基、並びに、これらの酸の塩の基を合計で少なくとも3個以上有するのが好ましく、また8個以下、好ましくは5個以下有するものが好ましい。
特には、スルホン酸基及び/又はその塩としては3又は4個、カルボキシル基及び/又はその塩として1又は2個有するものが好ましい。
【0040】
本発明で使用される色素は一般式(1)で示されるような遊離酸型のまま使用してもよく、また、製造時に塩型で得られた場合はそのまま使用してもよいし、所望の塩型に変換してもよい。塩型の交換方法としては、公知の方法を任意に用いることができ、例えば以下の方法が挙げられる。
1) 塩型で得られた色素の水溶液に塩酸等の強酸を添加し、色素を遊離酸の形で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
2) 塩型で得られたの色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば、塩化リチウム)を添加し、塩析ケーキの形で塩交換を行う方法。
3) 塩型で得られた色素の水溶液を、強酸性イオン交換樹脂で処理し、色素を遊離酸の形で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
4) 予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で処理した強酸性イオン交換樹脂に、塩型で得られた色素の水溶液を作用させ、塩交換を行う方法。
【0041】
また、本発明で使用される色素は、酸基の一部が塩型を取っているものであってもよく、塩型の色素と遊離酸型の色素が混在していてもよい。ここで、酸性基が遊離酸型をとるか、塩型を取るかは、色素のpKaとインクのpHに依存するが、通常、スルホン酸基が塩型を取り、カルボキシル基よりも多く塩型になっている方が、インクの目詰まりしにくさの点では好ましい。他方、カルボキシル基が酸型を取っている色素は、耐水性や耐滲み性を重視する場合に好ましく使用される。
【0042】
本発明に用いられる色素は、pH2〜12、好ましくはpH4〜11、より好ましくはpH6〜10で用いられ、特に塩基性インクとした場合にも優れた性能を示すものである。
上記の塩型の例としては、Na、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、炭素数1〜6の低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン、カルボキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
【0043】
塩型を構成する対イオンの種類の選択についても、そのインクにおいて重視すべき特性に応じ、自由に選択される。色素の合成に用いられる中間体や試薬にNaを含むものが多いので、一般にNa塩の形で得られるものが多いが、耐水性を重視する場合はNH4塩に変換されることが多く、また色素の溶解性を高めインクの目詰まり性をより高いレベルに維持する必要があるときなどは、Li塩や、トリエタノールアミンに代表されるアルカノールアミン塩の形に変換されることもある。
【0044】
本発明の記録液における好ましい色素の具体例としては、例えば下記表2におけるNo.1−72に示す構造の色素が挙げられる。ここで、表中のA及びBは前述の置換基の具体例に記載されている基を示す。
【0045】
【表9】
【0046】
上記一般式(1)で表されるモノアゾ色素は、それ自体周知の方法に従って製造することができる。例えばNo.1で示される色素は、下記(A)〜(C)の工程で製造できる。
(A)5−クロロアントラニル酸と1−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸(H酸)とから常法[例えば、細田豊著「新染料化学」(昭和48年12月21日、技報堂発行)第396頁第409頁参照]に従って、ジアゾ化、カップリング工程を経てモノアゾ化合物を製造する。
(B)得られたモノアゾ化合物を塩化シアヌル懸濁液にpH4〜6、温度0〜5℃を保持しながら加えて、数時間反応を行う。次いで室温にてアルカリ性にならない様に、2−アミノ安息香酸(アントラニル酸)水溶液を加えて数時間縮合反応を行う。次いで、28%アンモニア水を添加し、80〜90℃にて縮合反応を行い、反応を完結させる。
(C)冷却後、塩化リチウムで塩析することにより目的の色素No.1が得られる。
【0047】
記録液中における前記一般式(1)の色素の含有量としては、記録液全量に対して0.5〜5重量%、特に2〜4重量%程度が好ましい。
本発明に用いられる溶剤としては、水及び水溶性有機溶剤として、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(#200)、ポリエチレングリコール(#400)、グリセリン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、チオジエタノール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ピロリドン、スルホラン、エチルアルコール、イソプロパノール等を含有しているのが好ましい。これ等の水溶性有機溶剤は、通常記録液の全量に対して50重量%以下、好ましくは1〜50重量%の範囲で使用される。一方、水は記録液の全量に対して45〜95重量%の範囲で使用される。
【0048】
本発明の記録液に、その全量に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の尿素、チオ尿素、ビウレット、セミカルバジドから選ばれる化合物を添加したり、又0.001〜5.0重量%の界面活性剤を添加することによって、印字後の速乾性及び印字品位をより一層改良することができる。
【0049】
【実施例】
以下本発明を実施例について更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれ等の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
オルフィンE1010(界面活性剤、日信化学工業(株)社製)2重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル11重量部、ジエチレングリコール13重量部、グリセリン12重量部、トリエタノールアミン0.8重量部、尿素11重量部、前記色素No.1 3重量部に水を加え、1N水酸化リチウム水溶液でpHを9に調整して全量を100重量部とした。この組成物を充分に混合して溶解し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで加圧濾過した後、超音波洗浄機で脱気処理して記録液を調整した。
【0050】
得られた記録液を使用し、インクジェットプリンター(商品名BJ F870、キヤノン社製)を用いてインクジェット専用光沢紙(商品名PM写真用紙、セイコーエプソン社製)にインクジェット記録を行い、マゼンタの記録画像を得た。
【0051】
−彩度の評価−
上述のマゼンタ画像を、測色装置(商品名スペクトロアイ、グレタグマクベス社製)にて測色し、彩度(C*値)と赤味の大きさ(a*値)とで定量した。結果を表3に示す。
<実施例2>
使用する色素を上記No.1の化合物から、No.65の化合物に変えた以外は実施例1と同様にして、それぞれマゼンタの記録画像を得、彩度(C*値)と赤味の大きさ(a*値)について定量した。結果を表3に示す。
<比較例1>
使用する色素を上記No.1の化合物から、特開平11−279469号公報に記載の色素(色素No.2)に変えた以外は実施例1と同様にして、マゼンタの記録画像を得、彩度(C*値)と赤味の大きさ(a*値)について定量した。結果を表3に示す。
【0052】
【表10】
以上の結果より、本願発明の色素を用いた記録液は、公知の色素を用いた場合に比較し、高彩度のマゼンタ色の記録物を与えることが分かる。
【0053】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録用色素は水溶解性に優れ、この色素を用いた本発明の記録液は、水系インクジェット記録用として、普通紙及び専用紙に記録した場合にも鮮明な印字物を得ることができる上に、その記録画像の濃度が高く、耐光性や耐室内変褪色性が優れており、長期間保存した場合の安定性も良好なものである。
Claims (6)
- 水性媒体と、遊離酸の形が下記一般式(1)で示されるモノアゾ色素から選ばれる少なくとも1種の色素を含有することを特徴とする記録液。
- アゾ基に対してメタ位及びパラ位の位置の少なくとも1つがハロゲン原子で置換されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録液。
- R2〜R4がいずれもスルホン酸基でなく、また、これらのうち少なくとも1つが水素原子であることを特徴とする請求項2又は3に記載の記録液。
- R5が水素原子であり、Zが、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、COOH基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜9の置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のカルバモイル基、置換もしくは非置換のスルファモイル基、置換もしくは非置換のアミノ基、スルホン酸エステル基及びカルボン酸エステル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いフェニル基であるか、Zがスルホン酸基及びアミノ基を有するフェニル基であって、スルホン酸基とアミノ基の置換位置がそれぞれ隣接する位置にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の記録液。
- 遊離酸の形が下記一般式(1)で示される記録液用モノアゾ色素。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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2003
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