JP2004299960A - 繊維質成形体、耐熱構造体及びこれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】無機繊維同士が結晶化ガラスで融着されてなる繊維質成形体。無機繊維及び結晶性ガラス粉末を含むスラリーを得る工程、該スラリーを脱水成形又は抄造して成形体を得る工程、及び、該成形体を800〜1350℃で焼成する工程を含む繊維質成形体の製造方法。前記繊維質成形体の表面に、結晶化ガラス被覆層が形成される耐熱構造体。前記繊維質成形体の少なくとも表面に、結晶性ガラス粉末を含むコーティング材を塗布又は含浸する工程、及び、該コーティング材が塗布又は含浸された繊維質成形体を800〜1350℃で焼成する工程を含む耐熱構造体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れ、強度が高い繊維質成形体、耐熱構造体及びこれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
繊維質成形体は、例えばセラミックスファイバー、ロックウール等の無機繊維同士を、有機バインダー、無機バインダー等のバインダーで結着又は融着したものであり、無機繊維間等に空隙を有する3次元骨格構造のものである。近年、繊維質成形体は、焼成炉の炉壁等に付設する耐熱断熱材等として用いるために、高強度で且つ耐熱性の高い断熱材が求められている。
【0003】
繊維質成形体に耐熱性を付与するには、繊維やバインダーの選定等が重要である。例えば、有機バインダーを用いたものは、バインダーが200℃程度で揮発するため耐熱性に劣り耐熱断熱材に用いることができない。また、無機バインダーのうちでも一般的なコロイダルシリカやアルミナゾルを用いたものは、これらのバインダーは800℃程度では強度が十分でないために無機バインダーを多量に配合して重くなることから、耐熱性及び施工性に劣り上記耐熱断熱材としては好ましくない。また、無機バインダーのうちリン酸アルミニウムや水ガラスを用いたものは、800℃程度でバインダーが溶融するため、上記耐熱断熱材としては用いることができない。
【0004】
これに対し、特開昭62−171973号公報には、無機繊維を窒素又はホウ素含有ガラスで融着してなる繊維多孔質耐火物が開示されている。該耐火物は、窒化ホウ素、ホウ素化合物等を焼成時にAl2O3−SiO2繊維等の無機繊維と反応させて、窒素含有アルミノボロシリケートガラス又は窒素含有ボロシリケートガラスを生成して繊維同士を融着させるものであり、1000℃程度の耐熱性を有する。なお、耐熱性だけをとってみれば1000℃より高い温度での耐熱性を有する耐火物も知られているが、これらの耐火物は耐熱性の代わりに強度や熱容量を犠牲にしており、断熱材として付設可能な強度を得ることができていない。このように、従来の焼成炉用の耐熱断熱材では、断熱材として付設可能な強度を有するものとすると、耐熱性がせいぜい1000℃程度にすぎなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−171973号公報(第1頁〜第3頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、半導体やディスプレイ等の電子部品関連部材においては1100℃程度で熱処理されることが多い。このような温度域においては、上記公報記載の耐火物は、ホウ素が揮発して構造が崩壊することにより炉内を汚染したり耐火物から発塵が生じたりするおそれがあるため使用することができないという問題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、軽量で、断熱性が高く、1200℃程度で連続使用可能な高い耐熱性を有し、強度が高く、炉内を汚染せず、低発塵性の繊維質成形体、これから得られる耐熱構造体及びこれらの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、バインダーとして結晶化ガラスを用いて無機繊維同士を融着させた繊維質成形体は、断熱性及び1200℃で連続使用可能な耐熱性を有し、強度が高く、炉内を汚染せず、低発塵性であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、無機繊維同士が結晶化ガラスで融着されてなることを特徴とする繊維質成形体を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、無機繊維及び結晶性ガラス粉末を含むスラリーを得る工程、該スラリーを脱水成形又は抄造して成形体を得る工程、及び、該成形体を800〜1350℃で焼成する工程を含むことを特徴とする繊維質成形体の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、前記繊維質成形体の表面に、結晶化ガラス被覆層が形成されることを特徴とする耐熱構造体を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記繊維質成形体の少なくとも表面に、結晶性ガラス粉末を含むコーティング材を塗布又は含浸する工程、及び、該コーティング材が塗布又は含浸された繊維質成形体を800〜1350℃で焼成する工程を含むことを特徴とする耐熱構造体の製造方法を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係る繊維質成形体に用いられる無機繊維は、1100℃以上の耐熱性を有するものが用いられる。このような無機繊維としては、例えば、ムライト繊維、ニチアス株式会社製ファインフレックス等のアルミノシリケート繊維、アルミナ繊維等が挙げられる。このうち、アルミノシリケート繊維は、1200℃における耐熱性に充分に優れ、アルミナ繊維やムライト繊維等に比べて安価な材料であるため好ましい。
【0014】
ここでアルミナファイバーとは、アルミナの含有量が60重量%以上で残部がシリかであるものをいう。本発明で用いられるアルミナファイバーは、アルミナの含有量が、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上であると、耐熱性に優れるため望ましい。また、アルミノシリケート繊維は、組成中にジルコニアZrO2や酸化クロムCr2O3を含有させて、耐熱性を上げたものであってもよい。
【0015】
無機繊維は、平均繊維径が、通常1〜7μm、好ましくは1.5〜4μmである。平均繊維径が該範囲内にあると、繊維質成形体の強度が高く且つ空隙率が大きくなり易いため好ましい。
【0016】
本発明で用いられる結晶化ガラスとは、ガラスを再結晶化させて得られる材料をいう。結晶化ガラスは、例えば、非晶質であるガラスに熱処理や紫外線照射処理等を行うことによりガラス内部から結晶を析出させたり、非晶質であるガラスとセラミック粉末とを反応させて結晶を析出させたり、金属酸化物等の原料を結晶化ガラスを生成し得る組成比で混合して熱処理したりする方法により得られる。結晶化ガラスは、通常の非晶質ガラスに比べて、強固な結合を有し、熱膨張率が低く、熱衝撃に強い性質を有する。また、結晶化ガラスは高い耐熱性を有するため、1200℃の条件下でも結晶化ガラス中の成分がホウ素等のように揮発したり、発塵したりすることがない。
【0017】
本発明に用いられる結晶化ガラスの具体的な組成としては、例えば、Li2O−SiO2−Al2O3系結晶化ガラス、Na2O−Al2O3−SiO2系結晶化ガラス、Na2O−CaO−MgO−SiO2系結晶化ガラス、MgO−Al2O3−SiO2系結晶化ガラス、ZnO−SiO2系結晶化ガラス、ZnO−B2O3−SiO2系結晶化ガラス、Al2O3−SiO2−CaO系結晶化ガラス、MgO−SiO2系結晶化ガラスが挙げられる。
【0018】
このうち、MgO−Al2O3−SiO2系結晶化ガラスであるコーディライト結晶化ガラス(2MgO−2Al2O3−5SiO2)及びZnO−SiO2系結晶化ガラスであるウィレマイト結晶化ガラス(2ZnO−SiO2)は、耐熱性に優れ、強度が高いため好ましい。結晶化ガラスは、上記のものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0019】
繊維質成形体における結晶化ガラスの生成は、X線回析により各種結晶化ガラスの組成に特有の回析ピークが得られるため、繊維質成形体の表面又は断面の無機繊維の融着部をX線回析すれば容易に判断することができる。
【0020】
本発明に係る繊維質成形体は、無機繊維が結晶化ガラスで融着されてなり、無機繊維間等に空隙を有する3次元骨格構造のものである。繊維質成形体は、無機繊維の含有量が通常20〜90重量%、好ましくは30〜70重量%である。また、本発明に係る繊維質成形体は、結晶化ガラスの含有量が通常10〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。無機繊維及び結晶化ガラスの含有量が上記範囲内にあると、低密度で、耐熱性に優れ、強度が高くなるため好ましい。
【0021】
繊維質成形体には、必要により、さらに無機粒子や無機増粘材固化物が含まれていてもよい。無機粒子としては、例えば、アルミナ、ムライト、シリカ及びジルコニア等の粒子が挙げられる。このうち、アルミナ及びムライトは耐熱性が高く低コストであるため好ましい。無機粒子は、平均粒径が通常0.5〜60μm、好ましくは3〜15μmである。平均粒径が該範囲内にあると成形性が良いため好ましい。無機粒子は、上記のうち1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
繊維質成形体中において、無機粒子は、結晶化ガラスで無機繊維に融着される。無機粒子が含まれる場合、繊維質成形体中の無機粒子の含有量は、通常0〜50重量%である。無機粒子の含有量が上記範囲内にあると、繊維質成形体が耐熱性に優れ、低コストで作製できるため好ましい。
【0023】
繊維質成形体は、空隙率が通常50%以上、好ましくは70〜97%、さらに好ましくは80〜95%である。ここで、空隙率とは繊維質成形体中の空隙の全体積を繊維質成形体の嵩体積で除した値をいう。空隙率が上記範囲内にあると、繊維質成形体は、熱容量が小さく、熱伝導率及び熱膨張率が低く、軽量で熱衝撃に強くなり易いため好ましい。
【0024】
繊維質成形体は、嵩密度が、通常1.5kg/m3以下、好ましくは0.1〜1.0kg/m3、さらに好ましくは0.2〜0.8kg/m3である。嵩密度が1.5kg/m3を超えると、重すぎて製造及び施工の際に取り扱い難くなるため好ましくない。
【0025】
繊維質成形体は、1000℃での熱伝導率が、通常0.5W/(m・K)以下、好ましくは0.35W/(m・K)以下である。熱伝導率が該範囲内にあると、耐熱構造体を焼成炉の炉壁材等の断熱材用途に用いることができるため好ましい。
【0026】
繊維質成形体は、繊維質成形体を1200℃に昇温した前後における加熱収縮率が、通常5%以下、好ましくは3%以下である。加熱収縮率が5%を超えると、炉壁等に施工した場合に繊維質成形体同士の間に隙間が生じたり変形したりし易いため好ましくない。
【0027】
繊維質成形体は、熱膨張係数が、通常10×10−6/℃以下、好ましくは8×10−6/℃以下である。熱膨張係数が10×10−6/℃を超えると、耐熱衝撃性が低下するため好ましくない。熱膨張係数は、JIS−R1618「ファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法」又はこれに準じた測定方法で測定することができる。
【0028】
繊維質成形体は、例えば、以下の方法により製造することができる。本発明に係る繊維質成形体の製造方法は、まず、無機繊維及び結晶性ガラス粉末を含むスラリーを得る工程を行う。
【0029】
本発明で用いられる結晶性ガラス粉末は、とは、熱処理や紫外線照射等によりガラス内部から結晶を析出して結晶化ガラスを生成し得るものであって、未だ結晶化していない状態にあるガラスの粉末である。結晶性ガラス粉末は、800〜1350℃程度で熱処理すると、結晶化ガラスを生成する。
【0030】
本発明に用いられる結晶性ガラス粉末の種類は、結晶化ガラスを生成し得るものであればどのようなものでもよく特に限定されるものでないが、例えば、上記結晶化ガラスの組成と同一又は略同一の組成を有するものが挙げられる。具体的には、Li2O−SiO2−Al2O3系結晶化ガラス、Na2O−Al2O3−SiO2系結晶化ガラス、Na2O−CaO−MgO−SiO2系結晶化ガラス、MgO−Al2O3−SiO2系結晶化ガラス、ZnO−SiO2系結晶化ガラス、ZnO−B2O3−SiO2系結晶化ガラス、Al2O3−SiO2−CaO系結晶化ガラス、MgO−SiO2系結晶化ガラス等の組成と同一又は略同一の組成を有し、且つ結晶化していない状態にあるガラスが挙げられる。
【0031】
このうち、MgO−Al2O3−SiO2系結晶化ガラスであるコーディライト結晶化ガラス(2MgO−2Al2O3−5SiO2)の組成と同一又は略同一の組成を有するコーディライトフリット、及びZnO−SiO2系結晶化ガラスであるウィレマイト結晶化ガラス(2ZnO−SiO2)の組成と同一又は略同一の組成を有するウィレマイト(Willemite)フリットを用いると、揮発成分が無く、耐熱性に優れ、強度が高いため好ましい。
【0032】
結晶性ガラス粉末は、金属酸化物やセラミックス、鉱物等の原料を上記結晶化ガラスを生成し得る組成比で調合してなる混合物を、熱処理し、急冷して得られたガラスを、アルミナボール等で破砕して得ることができる。結晶性ガラス粉末は市場から容易に入手が可能なものであり、例えば、日本フェロー株式会社から商品名14−3635、14−3982等として販売されているものを本発明に用いることができる。
【0033】
結晶性ガラス粉末は、平均粒径が、通常0.1〜45μm、好ましくは3〜20μmである。平均粒径が0.1μm未満であると、乾燥時又は焼成時に割れが発生し易くなるため好ましくない。一方、平均粒径が45μmを超えると、焼成時の結晶化が不十分になり易く、また表面の平滑性が不十分になり易いため好ましくない。結晶性ガラス粉末は、上記のものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
スラリーの作製に用いる無機繊維は、上記と同様のものが用いられる。また、スラリーには、必要により、さらに無機粒子、無機増粘材、凝集剤及び凝集補助材等を適宜配合してもよい。本発明において、無機粒子及び無機増粘材は上記と同様のものが用いられる。本発明で用いられる凝集剤としては、例えば、カチオン澱粉が挙げられる。また、本発明で用いられる凝集補助材としては、例えば、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、白土、アルミナゾル、コロイダルシリカ等が挙げられる。凝集剤又は凝集補助材は、上記のうち1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。以下、無機繊維及び結晶性ガラス粉末並びに必要により配合される無機粒子、無機増粘材、凝集剤及び凝集補助材等の固形の原料を成形体原料ともいう。
【0035】
スラリーの調製は、上記成形体原料を水に混合し分散させることにより行う。成形体原料の各原料の混合順序は特に限定されるものでなく、適宜行えばよい。混合方法としては公知の方法を採用することができ、例えば、羽根型攪拌機、パルパー等を用いて水と原料とを混合する方法が挙げられる。
【0036】
スラリー中における無機繊維の配合量は、スラリー中にある成形体原料の合計量を100重量%として、通常30〜70重量%である。無機繊維の配合量が該範囲内にあると、低密度の構造体を得ることができるため好ましい。
【0037】
スラリー中における結晶化ガラス粉末の配合量は、スラリー中にある成形体原料の合計量を100重量%として、通常10〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。結晶化ガラス粉末の配合量が該範囲内にあると、低密度でも高強度であるため好ましい。
【0038】
無機粒子が配合される場合、スラリー中における無機粒子の配合量は、スラリー中にある成形体原料の合計量を100重量%として、通常0〜50重量%である。無機粒子の配合量が該範囲内にあると、低コスト化できると共に耐熱性が高くなるため好ましい。
【0039】
スラリー濃度、すなわち、スラリー中の成形体原料全体の含有量は、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。スラリー濃度が該範囲内にあると、成形性が良いため好ましい。
【0040】
スラリーを調製したら、次に、該スラリーを脱水成形又は抄造して成形体を得る工程を行う。脱水成形方法としては公知の方法を用いることがきでき、該方法としては、例えば吸引脱水成形方法が挙げられる。また、抄造方法としては、金網等の篩を用いてスラリー中に分散している成形体原料を漉した後、圧搾する方法が挙げられる。脱水成形又は抄造を行うことにより、成形体が得られる。
【0041】
次に、該成形体を焼成する工程を行う。焼成装置としては、例えば電気炉、ガス炉及びランプヒーター等を用いることができる。焼成温度は、焼成する結晶化ガラスの組成により異なるが、通常800〜1350℃、好ましくは1000〜1300℃、さらに好ましくは1050〜1250℃である。焼成が終了すると、繊維質成形体が得られる。本発明に係る繊維質成形体は、例えば、焼成炉の炉壁、焼成道具材、その他耐熱部材等に使用することができる。
【0042】
本発明に係る耐熱構造体は、上記繊維質成形体の表面に、結晶化ガラス被覆層が形成されるものである。本発明において結晶化ガラス被覆層とは、実質的に結晶化ガラスのみからなり、且つ、繊維質成形体の表面を被覆する層を意味する。なお、結晶化ガラス被覆層と繊維質成形体との接着のために繊維質成形体の内部に食い込んだ結晶化ガラス部分は、後述の結晶化ガラス含浸層が形成されていない場合は結晶化ガラス被覆層に含める。耐熱構造体における結晶化ガラスの生成は、結晶化ガラス被覆層の表面をX線回析すれば容易に判断することができる。
【0043】
結晶化ガラス被覆層は、熱膨張係数を、前記繊維質成形体の熱膨張係数に対して、通常−25〜+25%、好ましくは−10〜+10%、さらに好ましくは−5〜+5%の範囲内になるように選ぶと、結晶化ガラス被覆層にクラックが入ったり結晶化ガラス被覆層が剥離したりして発塵することが起こり難いため好ましい。
【0044】
結晶化ガラス被覆層は、厚さが、通常30μm〜1mm、好ましくは50〜600μm、さらに好ましくは100〜400μmである。厚さが30μm未満であると、強度が弱く低発塵の効果が得られ難いため好ましくなく、1mmを超えると乾燥時、熱処理時のクラックが発生し易くなるため好ましくない。ここで、結晶化ガラス被覆層の厚さとは、繊維質成形体の表面上に存在する結晶化ガラス層の厚さの平均値を意味する。すなわち、繊維質成形体の内部に食い込んだ結晶化ガラス層は、結晶化ガラス被覆層の厚さの計算に含めない。
【0045】
結晶化ガラス被覆層は、繊維質成形体の表面の少なくとも一部に形成されていればよく、繊維質成形体の表面の全体に形成されている必要はない。例えば、繊維質成形体が略直方体状である場合、結晶化ガラス被覆層は繊維質成形体の6面全体に形成されていてもよく、1つの面の一部分のみに形成されるものであってもよい。本発明において、繊維質成形体の表面に上記結晶化ガラス被覆層が形成されると、繊維質成形体中の結晶化ガラスと結晶化ガラス被覆層中の結晶化ガラスとが強固に結合して、断熱性、繊維質成形体に1200℃で連続使用可能な耐熱性、高い強度及び低発塵性が付与される。
【0046】
本発明に係る耐熱構造体は、繊維質成形体中の結晶化ガラスと結合した強固な結晶化ガラス被覆層が形成されることにより強度が高くなる。また、該強固に形成された結晶化ガラス被覆層により、加熱の際に繊維質成形体と結晶化ガラス被覆層との熱膨張又は熱収縮の状態が異なる場合でもクラックの発生や結晶化ガラス被覆層の剥離が生じ難くなるため、繊維質成形体から発生する発塵を抑えることができ、1300℃の高温においても使用することができる。
【0047】
本発明に係る耐熱構造体は、必要により、繊維質成形体内に、結晶化ガラス被覆層に連続して結晶化ガラス含浸層が形成されていてもよい。結晶化ガラス含浸層が形成されると、結晶化ガラス被覆層のみが形成される場合に比べて、断熱性、耐熱性及び低発塵性に優れ、強度が高くなり易いため好ましい。本発明において結晶化ガラス含浸層とは、繊維質成形体と結晶化ガラスとからなり、繊維質成形体中の空隙に結晶化ガラスが食い込んで形成される層を意味する。結晶化ガラス含浸層を形成する結晶化ガラスは、結晶化ガラス被覆層を形成するものと同様のものが用いられる。
【0048】
結晶化ガラス含浸層の厚さは、繊維質成形体自体の大きさにより適正な厚さが異なるため特に限定されるものでないが、通常0.5〜50mm、好ましくは1〜35mm、さらに好ましくは5〜25mmである。厚さが1mm未満であると、強度が弱く低発塵の効果が得られ難いため好ましくなく、50mmを超えると製造が困難になるため好ましくない。ここで、結晶化ガラス含浸層の厚さとは、繊維質成形体の内部、すなわち、繊維質成形体の表面より内側に存在する結晶化ガラス層の厚さの平均値である。
【0049】
耐熱構造体は、例えば、以下の方法により製造することができる。本発明に係る製造方法は、第1工程として、繊維質成形体の少なくとも表面に、結晶性ガラス粉末を含むコーティング材を塗布又は含浸する。
【0050】
コーティング材で用いられる結晶性ガラス粉末としては、上記繊維質成形体の製造方法と同様のものが挙げられる。コーティング材には、必要により、さらに、増粘材を配合してもよい。このように増粘材を配合すると、コーティング材に適度な粘性が付与されてコーティング材が塗布時に良好な伸び性を示し、これにより緻密で保水性に優れた結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層を形成することができるため好ましい。
【0051】
コーティング材に用いられる増粘材としては、無機系増粘材及び有機系増粘材が挙げられる。無機系増粘材としては、例えば、粘土が挙げられ、粘土としては、例えば、ハロイサイト、カオリン、耐火粘土、木節粘土、蛙目粘土及びベントナイトが挙げられる。このうち、カオリン及びベントナイトは、上記増粘材を配合する通常の効果に加えて、粒子の沈降防止性が高いため、コーティング材が経時変化を起こし難くなるため好ましい。
【0052】
また、有機系増粘材としては、例えば、メチルセルロース及びポリビニルアルコール等が挙げられ、このうち、メチルセルロースは少量で高い増粘効果が得られるため好ましい。メチルセルロースを配合すると、上記増粘材を配合する通常の効果に加えて、さらに繊維質成形体の表面に凹凸が多数ある場合でも結晶化ガラス被覆層の表面に平滑性を付与する効果が高く、また結晶化ガラスの組成を変化させないため好ましい。増粘材は、上記のものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0053】
コーティング材は、上記結晶性ガラス粉末及び必要により配合される増粘材等の固形原料(以下、単に「固形原料」という。)と水とを混合してなる混合物である。固形原料と水とを混合する方法としては公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではないが、固形原料と水とを羽根型攪拌機、擂潰器又はボールミル等を用いて混合する方法が挙げられる。また、固形原料を予め擂潰器又はボールミル等を用いて十分に混合しておき、その後、これを水と混合する方法を採用すると、混合物の組成が均一になり易いため好ましい。
【0054】
コーティング材中における結晶性ガラス粉末の配合量は、コーティング材中にある固形原料の合計量を100重量%として、通常50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%、さらに好ましくは80〜100重量%である。結晶性ガラス粉末の配合量が50重量%未満であると、特に軽量の繊維質成形体で乾燥時にクラックが発生し易くなるため好ましくない。
【0055】
コーティング材中における水の配合量は、コーティング材中にある固形原料の合計量100重量部に対し、通常30〜1000重量部、好ましくは100〜300重量部である。水の配合量が該範囲内にあると、塗布性が良いため好ましい。
【0056】
コーティング材に増粘材を配合する場合において増粘材として粘土を用いるときは、混合物中の粘土の配合量は、混合物中の固形原料の合計量を100重量%として、通常0〜30重量%、好ましくは3〜10重量%である。粘土の配合量が該範囲内にあると、コーティング材が塗布性に優れると共に、コーティング後の乾燥時に結晶化ガラス被覆層に亀裂が生じ難いため好ましい。一方、粘土の配合量が30重量%を超えると、塗布性が悪くなったりコーティング後の乾燥時に結晶化ガラス被覆層に亀裂が生じたりし易いため好ましくない。
【0057】
コーティング材は、粘度が、通常0.01〜5Pa・s、好ましくは0.05〜3Pa・sである。粘度が該範囲内にあると、塗布性がよくなるため好ましい。
【0058】
コーティング材の具体例としては、例えば、コーディライトフリット50〜100重量%、カオリン0〜20重量%、ベントナイト0〜5重量%及びメチルセルロース0.1〜1重量%からなる固形原料を、上記粘度範囲内になるように適当量の水と混合したものが挙げられる。
【0059】
第1工程では、繊維質成形体の少なくとも表面に、コーティング材を塗布又は含浸する。コーティング材を塗布する方法としては、スプレー等を用いて吹き付ける方法、刷毛やブレードで塗りつける方法を用いることができる。また、コーティング材を含浸する方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0060】
コーティング材の塗布量又は含浸量は、固形原料への換算量が、通常0.01〜1g/cm2である。塗布量又は含浸量が該範囲内にあると平滑性が良く、乾燥時に割れが生じ難いため好ましい。
【0061】
本方法においては、第2工程として、上記コーティング材が塗布又は含浸された繊維質成形体を焼成する。焼成装置としては、例えば電気炉、ガス炉及びランプヒーター等を用いることができる。本発明では、比較的低温焼成で結晶化ガラスを生成する結晶性ガラス粉末を含むコーティング材を用いるため、焼成温度は焼成する結晶化ガラスの組成により異なるが、通常800〜1350℃、好ましくは1000〜1300℃、さらに好ましくは1050〜1250℃と、金属酸化物原料から結晶化ガラスを生成する場合に比べて低い。焼成が終了すると、耐熱構造体が得られる。
【0062】
なお、コーティング材が塗布又は含浸された繊維質成形体は、焼成前に、予め乾燥させておくと、結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層にクラックが入ったり、結晶化ガラス被覆層が剥離したりすることが起こり難くなるため好ましい。乾燥方法としては、例えば、初めに室温で30分〜1時間乾燥させた後、さらに100〜120℃で1〜3時間乾燥させる方法が挙げられる。このような段階的に乾燥温度を高くする方法を用いると、結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層にクラックが入ったり、結晶化ガラス被覆層が剥離したりすることが起こり難くなるため好ましい。
【0063】
なお、本発明において、コーティング材の組成及び粘度、コーティング材の塗布又は含浸の方法、及びコーティング材の塗布量又は含浸量等を適宜調整することにより、結晶化ガラス被覆層のみが形成された耐熱構造体を作製することもできるし、結晶化ガラス被覆層及び結晶化ガラス含浸層の両方が形成された耐熱構造体を作製することもできる。
【0064】
本製造方法によれば、結晶性ガラス粉末を含むコーティング材を用いるため、比較的低温域の焼成で結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層を生成することができる。
【0065】
本発明に係る耐熱構造体及び本発明で得られた耐熱構造体は、繊維質成形体中のバインダーである結晶化ガラスと同様の結晶化ガラスを用いてなる強固な結晶化ガラス被覆層が形成されることにより、加熱の際に繊維質成形体と結晶化ガラス被覆層との熱膨張又は熱収縮の状態が異なる場合でも、クラックの発生や結晶化ガラス被覆層の剥離が生じ難くなるため、繊維質成形体から発生する発塵を抑えることができ、1300℃の高温においても使用することができる。また、さらに結晶化ガラス含浸層が形成されると、結晶化ガラス被覆層のみが形成される場合に比べて、より優れた耐熱性、強度及び低発塵性が付与される。
【0066】
本発明に係る耐熱構造体及び本発明で得られた耐熱構造体は、例えば、焼成炉等の炉壁、焼成道具材、その他耐熱部材等に用いられる耐熱構造体として使用することができる。
【0067】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されて解釈されるものではない。
【0068】
実施例1
(繊維質成形体の作製)
ムライト繊維(電気化学工業株式会社製、製品名B80、アルミナ含有量80%、シリカ含有量20%、平均繊維径3μm)50重量部、結晶性ガラス粉末として平均粒径4μmのコージェライト質結晶性ガラス粉末(日本フェロー株式会社製、製品名14−3635)50重量部、凝集剤としてカチオン澱粉1重量部、及び凝集補助剤として硫酸アルミニウム0.1重量部、コロイダルシリカ1重量部、アルミナゾル0.5重量部を混合調製したスラリーから吸引脱水成形法により厚さ50mm、幅300mm、長さ300mmの成形体を形成し、乾燥させた。この乾燥させた成形体を、さらに1200℃で1時間焼成して繊維質断熱材(A)を得た。得られた繊維質断熱材(A)は、1000℃での熱伝導率0.25W/(m・K)、密度0.25g/cm3、曲げ強度1.0MPa、熱膨張係数4.5×10−6/℃であった。表1に、繊維質断熱材(A)の密度及び曲げ強度を示す。
また、図1に乾燥させた成形体の表面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真、図2に繊維質断熱材(A)の表面のSEM写真を示す。図1及び図2より、無機繊維(ムライト繊維)1は、乾燥させた成形体では結晶性ガラス粉末(コージェライト質結晶性ガラス粉末)2により弱く結合されているにすぎないが、繊維質断熱材(A)では結晶化ガラス3により強固に融着されていることが観察される。
【0069】
実施例2
(コーティング液の作製)
水30重量部、結晶性ガラス粉末として平均粒径7μmのコージェライト質結晶性ガラス粉末(日本フェロー株式会社製、製品名14−3635)を60重量部、平均粒径10μmのカオリン粉末10重量部、メチルセルロース0.2重量部及び平均粒径10μmのベントナイト粉末0.2重量部を混合し、ボールミルにて撹拌して粘度2Pa・sの被覆層用のコーティング液(a)を得た。
(耐熱構造体の作製)
次に、実施例1で作製した繊維質断熱材(A)の表面に、コーティング液(a)を、配合した全固形分に換算して0.06g/cm2の面密度になるようにスプレーで塗布し、室温で30分乾燥させた後、105℃の乾燥機で1時間以上乾燥させた。乾燥体を1200℃で焼成して、繊維質断熱材(A)上に厚さ400μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の被覆層が形成された耐熱構造体(C)を得た。表1に、耐熱構造体(C)の密度及び曲げ強度を示す。
【0070】
実施例3
(コーティング液の作製)
水150重量部、結晶性ガラス粉末として平均粒径7μmのコージェライト質結晶性ガラス粉末(日本フェロー株式会社製、製品名14−3635)を60重量部、平均粒径10μmのカオリン粉末10重量部、メチルセルロース0.2重量部及び平均粒径10μmのベントナイト粉末0.2重量部を混合し、ボールミルにて撹拌して粘度0.5Pa・sの含浸層用のコーティング液(b)を得た。
(耐熱構造体の作製)
次に、実施例1で作製した繊維質断熱材(A)の表面に、コーティング液(b)を、配合した全固形分に換算して0.10g/cm2の面密度になるように、繊維質断熱材(A)をコーティング液(b)に含浸させた。次に、繊維質断熱材(A)を引き上げ、室温で30分乾燥させた後、105℃の乾燥機で1時間以上乾燥させた。乾燥体を1200℃で焼成して、繊維質断熱材(A)上に厚さ20μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の含浸層が形成された耐熱構造体(D)を得た。表1に、耐熱構造体(D)の密度及び曲げ強度を示す。
また、図3に耐熱構造体(D)の表面のSEM写真を示す。図3より、耐熱構造体(D)の最表面には結晶化ガラス3で被覆された結晶化ガラス被覆層が形成されていることが観察される。また一部に結晶化ガラス3で被覆されたムライト繊維4と繊維質断熱材(A)に基づく空洞も観察されることから、極薄い結晶化ガラス被覆層の下部にムライト繊維1と結晶化ガラス3とからなる結晶化ガラス含浸層が形成されていることが観察される。
【0071】
比較例1
(繊維質成形体の作製)
ムライト繊維(電気化学工業株式会社製、製品名B80、アルミナ含有量80%、シリカ含有量20%、平均繊維径3μm)50重量部、平均粒子経5μmのアルミナ粉末(昭和電工株式会社製、製品名A42−2)50重量部、コロイダルシリカ(日本化学工業株式会社製、製品名シリカドール30)8重量部、及び有機バインダーとしてポリアクリルアミド1重量部を混合調製したスラリーから吸引脱水成形法により厚さ50mm、幅300mm、長さ300mmの成形体を形成し、乾燥させて、1000℃での熱伝導率0.3W/(m・K)、密度1.00g/cm3、曲げ強度0.8MPa、熱膨張係数4.7×10−6/℃、空隙率80%の繊維質断熱材(B)を得た。表1に、繊維質断熱材(B)の密度及び曲げ強度を示す。
【0072】
比較例2
(耐熱構造体の作製)
次に、繊維質断熱材(A)に代えて比較例1で作製した繊維質断熱材(B)を用いた以外は、実施例2と同様にして、繊維質断熱材(B)上に厚さ400μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の被覆層が形成された耐熱構造体(E)を得た。表1に、耐熱構造体(E)の密度及び曲げ強度を示す。
【0073】
比較例3
(耐熱構造体の作製)
次に、繊維質断熱材(A)に代えて比較例1で作製した繊維質断熱材(B)を用いた以外は、実施例3と同様にして、繊維質断熱材(B)上に厚さ20μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の含浸層が形成された耐熱構造体(F)を得た。表1に、耐熱構造体(F)の密度及び曲げ強度を示す。
【0074】
上記各実施例及び比較例で得られた繊維質断熱材(A)及び(B)並びに耐熱構造体(C)〜(F)について、耐熱性、発塵性、平滑性及び光沢性を評価した。結果を表1に示す。
(耐熱性の評価)
耐熱構造体のコート面上に直方体状の耐熱煉瓦を載置した状態で室温から1300℃に加熱した後、室温まで冷却した。冷却後、コート面の割れ、及びコート面と耐熱煉瓦との付着具合を目視により観察した。
評価基準は、コート面にクラック及び剥がれの発生がなく耐熱煉瓦と付着していないものを「◎」、コート面に小さなクラックが発生しているか、又は脱落しない程度の若干の剥がれが発生しているが耐熱煉瓦と付着していないものを「○」、コート面に大きなクラックが発生しているか、又は若干の剥がれが発生しているが耐熱煉瓦と付着していないものを「△」、コート面に大きなクラックが発生しているか、又は剥がれが発生しており耐熱煉瓦と付着しているものを「×」とした。
(発塵性の評価)
発塵性の評価は、下記のような方法で得られる発塵指数で評価した。
(1)サンプル(耐熱構造体)の上面からサンプルの表面に圧力3×104N/m2で「ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標);CT−24 幅24mm」を貼り付けた。
(2)5秒の静置後、サンプルから粘着テープを剥がした。
(3)剥がした粘着テープを黒色紙上に貼り付け、明度指数を測定した。
(4)次式により求められる数値を発塵指数とした。明度指数の測定は同一サンプルについて5回行い、その平均値を採用した。
発塵指数=サンプルから剥がした粘着テープの明度指数−ブランクから剥がした粘着テープの明度指数
ここで、明度指数とは、例えば色彩色差計(形式「CR−300」、測定ヘッド91mm幅×201mm高さ×60mm奥行×670g重量×測定径8mm、ミノルタ株式会社製)等を用いて測定されるL*a*b*表色系のL値である。塵芥が付着していない粘着テープは光源からの光が粘着テープをほとんど透過し黒色紙からは光がほとんど反射しないからL値が低いのに対し、塵芥が付着した粘着テープは光源からの光が塵芥で反射されるからL値が高くなる。発塵指数は、このような性質を利用したものであり、塵芥の付着量が多いほど発塵指数も大きい数値を示す。また、ブランクの明度指数とは粘着テープに何も付着させない状態で黒色紙上に貼り付けたときの明度指数を示す。明度指数が10未満のものを「◎」、明度が10以上〜20未満のものを「○」、20以上のものを「△」とした。
(平滑性(緻密性)の評価)
平滑性(緻密性)の評価は、着色した水をコート面に滴下し、コート面への水の染み込み状況を目視する方法で行った。
水が滴下して3分経っても染み込まないものを「◎」、水が滴下した直後は染み込まないが3分以内に染み込むものを「○」、水が滴下した直後に染み込むものを「×」として評価した。
(光沢性の評価)
光沢性は目視により観察した。光沢があるものを「◎」、部分的に光沢があるものを「○」、光沢が無いものを「△」とした。
【0075】
【表1】
【0076】
【発明の効果】
本発明に係る繊維質成形体及び本発明で得られた繊維質成形体によれば、バインダーとして結晶化ガラスを用いるため、断熱性及び1100℃以上で連続使用可能な高い耐熱性を有し、強度が高く、低発塵性に優れる。また、本発明に係る耐熱構造体及び本発明で得られた耐熱構造体によれば、繊維質成形体中のバインダーである結晶化ガラスと同様の結晶化ガラスを用いてなる強固な結晶化ガラス被覆層が形成されるため、加熱の際に繊維質成形体と結晶化ガラス被覆層との熱膨張又は熱収縮の状態が異なる場合でも、クラックの発生や結晶化ガラス被覆層の剥離が生じ難くなる。このため、繊維質成形体と同様の断熱性及び耐熱性を有する上、繊維質成形体に対してさらに強度が高く、低発塵性に優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた乾燥させた成形体の表面のSEM写真である。
【図2】実施例1で得られた繊維質断熱材(A)の表面のSEM写真である。
【図3】実施例3で得られた耐熱構造体(D)の表面のSEM写真である。
【符号の説明】
1 無機繊維(ムライト繊維)
2 結晶性ガラス粉末(コージェライト質結晶性ガラス粉末)
3 結晶化ガラス
4 結晶化ガラスで被覆された無機繊維(ムライト繊維)
Claims (10)
- 無機繊維同士が結晶化ガラスで融着されてなることを特徴とする繊維質成形体。
- 前記無機繊維20〜90重量%及び前記結晶化ガラス10〜80重量%からなることを特徴とする繊維質成形体。
- 前記結晶化ガラスが、コーディライト結晶化ガラスであることを特徴とする請求項1又は2記載の繊維質成形体。
- 無機繊維及び結晶性ガラス粉末を含むスラリーを得る工程、該スラリーを脱水成形又は抄造して成形体を得る工程、及び、該成形体を800〜1350℃で焼成する工程を含むことを特徴とする繊維質成形体の製造方法。
- 前記結晶性ガラス粉末が、コーディライトフリットであることを特徴とする請求項4記載の繊維質成形体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の繊維質成形体の表面に、結晶化ガラス被覆層が形成されることを特徴とする耐熱構造体。
- 前記繊維質成形体内に、前記結晶化ガラス被覆層に連続して結晶化ガラス含浸層が形成されることを特徴とする請求項6記載の耐熱構造体。
- 前記結晶化ガラス被覆層又は前記結晶化ガラス含浸層を形成する結晶化ガラスが、コーディライト結晶化ガラスであることを特徴とする請求項6又は7記載の耐熱構造体。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の繊維質成形体の少なくとも表面に、結晶性ガラス粉末を含むコーティング材を塗布又は含浸する工程、及び、該コーティング材が塗布又は含浸された繊維質成形体を800〜1350℃で焼成する工程を含むことを特徴とする耐熱構造体の製造方法。
- 前記結晶性ガラス粉末が、コーディライトフリットであることを特徴とする請求項7記載の耐熱構造体の製造方法。
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