JP6528879B2 - 大型セラミック板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
JIS A1509−3(2014)に規定される吸水率が1%以下である大型セラミック板において、
結晶相としてムライトと、長石由来結晶鉱物とを含み、
さらに、クォーツを含まないか、または、含む場合は、当該クォーツの濃度が0質量%超過20質量%以下であり、
CaO換算で0質量%超過1質量%以下のCa元素と、MgO換算で0質量%超過1質量%以下のMg元素とを含んでなり、
前記長石由来結晶鉱物として、最大長が50μm以上の粒子を含み、かつ当該粒子が全長石由来結晶鉱物に対して3%以上の面積率を有することを特徴とする。
本発明による大型セラミック板は、JIS A1509−3(2014)に規定される吸水率が1%以下であり、結晶相としてムライトを含み、さらに、クォーツを含まないか、含む場合は、当該クォーツの濃度が0質量%超過20質量%以下であり、CaO換算で0質量%超過1質量%以下のCa元素と、MgO換算で0質量%超過1質量%以下のMg元素とを含んでなることを特徴とする。さらに、本発明の大型セラミック板は、長石由来結晶鉱物として、最大長が50μm以上の粒子を含み、かつ当該粒子が全長石由来結晶鉱物に対して3%以上の面積率を有するものである。以上の組成とすることにより、吸水率を1%以下とするために焼き締めても熔化することがない。さらに、特にクォーツ濃度を20質量%以下とすることで、熱変化に対して割れが生じにくくなる。従って、本発明によれば、耐凍害性、強度、耐熱衝撃性を満足する大型セラミック板を得ることができる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による大型セラミック板は、厚さが1mm以上10mm以下であることが好ましい。より好ましい厚さは1mm以上6mm以下である。また、本発明による大型セラミック板は、1辺の長さが400mm以上3000mm以下であることが好ましく、800mm以上3000mm以下であることがより好ましい。長さがこの範囲にあることにより、目地を少なくできるため、施工の簡略化や意匠の多様化を実現することが可能となる。
本発明による大型セラミック板は結晶相としてムライトを含み、さらに、クォーツを含まないか、含む場合は、当該クォーツの濃度が0質量%超過20質量%以下であるものである。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による大型セラミック板は、SiO2換算で60質量%以上70質量%以下のSi元素と、Al2O3換算で15質量%以上25質量%以下のAl元素と、K2O換算で0.5質量%以上10質量%以下のK元素と、Na2O換算で0.5質量%以上10質量%以下のNa元素と、CaO換算で0質量%超過1質量%以下のCa元素と、MgO換算で0質量%超過1質量%以下のMg元素とを含んでなることが好ましい。本発明において、元素の検出および定量は常法により行われてよいが、好ましくは蛍光X線分析装置(例えば、Supermini200(株式会社リガク))を用いて行なう。本発明による組成とすることにより、上述した結晶相をもつ、良好な諸性能を備える大型セラミック板を得ることが可能となる。本発明の好ましい態様によれば、本発明による大型セラミック板は、SiO2換算で64質量%以上67質量%以下のSi元素と、Al2O3換算で19質量%以上22質量%以下のAl元素と、K2O換算で1質量%以上4質量%以下のK元素と、Na2O換算で4質量%以上7質量%以下のNa元素と、CaO換算で0.1質量%以上0.8質量%以下のCa元素と、MgO換算で0.1質量%以上0.8質量%以下のMg元素とを含んでなることが、より好ましい。
本発明による大型セラミック板は、JIS A1509−3(2014)「セラミックタイル試験方法−第3部:吸水率、見掛け気孔率及びかさ密度の測定方法」に規定される、真空法により測定される吸水率が1%以下であり、0.01%以上0.5%以下であることが好ましい。吸水率をこの範囲とすることにより、大型セラミック板の強度を確保することができる。また、上述したように、ムライトを含むため、吸水率が当該範囲となる程度に焼締めても熔融による変形を防ぎ、耐熱衝撃性を得ることが可能となる。また、吸水率を1%以下とすることによって、大型セラミック板への水の浸透が抑制される。これにより、水の凍結に起因する損壊を防止できるので、外装材として好適に利用することができる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による大型セラミック板は、外装建材;内装建材;大型セラミック板単品;金属板やセッコウ板等の無機質板、ガラス繊維布又は合板などで裏打した複合材などに適用して用いることができる。とりわけ外装建材に適用して用いることが好ましい。
本発明の別の態様によれば、本発明は、耐凍害性、強度および耐熱衝撃性をいずれも満足する大型セラミック板の製造方法の提供をその目的としている。
(1)粘土鉱物と、(2)ガラス質鉱物と、そして場合により(3)ジルコニウム含有鉱物を含んでなる原料調合物を用意する工程と、
前記原料調合物を成形して、成形体を得る工程と、
前記成形体を焼成して、大型セラミック板を得る工程とを少なくとも含んでなる。
本発明による大型セラミック板の製造方法にあっては、先ず(1)粘土鉱物と、(2)ガラス質鉱物と、そして場合により(3)ジルコニウム含有鉱物とを少なくとも含んでなる原料調合物を用意する。
本発明による大型セラミック板の製造方法において用いられる原料調合物が含有する各成分について以下に説明する。
本発明による大型セラミック板の製造方法にあっては、次いで原料調合物を成形して、成形体を得る。成形の方法は特に限定されず、湿式成形法および乾式成形法のいずれも用いることが可能である。
本発明による大型セラミック板の製造方法にあっては、次いで成形体を焼成して焼成体を得る。本発明の好ましい態様によれば、成形体を焼成する最高温度は、1100℃〜1200℃であることが好ましく、1100℃〜1180℃であることがより好ましく、1120℃〜1180℃であることが最も好ましい。この温度範囲で焼成することにより、切れや割れまたは歪みの無い、薄く大型のセラミック板を得ることができる。焼成により得られた焼成体は、定形加工等の後加工を経て、または後加工なく焼成体のまま、本発明の大型セラミック板となる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による大型セラミック板の製造方法は、成形体の焼成前に、成形体を乾燥(加熱を含む)させることができる。成形体を乾燥させる最高温度は、50℃〜200℃であることが好ましく、80℃〜150℃であることがより好ましい。この温度範囲で乾燥させることにより、乾燥切れや歪みの無いセラミック板を得ることができる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による大型セラミック板の製造方法は、成形体の焼成前に、成形体を仮焼することができる。成形体を仮焼する温度は、600℃以上1140℃以下であることが好ましく、800℃以上1100℃以下であることがより好ましい。この温度範囲で仮焼することにより、切れや割れまたは歪みの無いセラミック板を得ることができる。
成形体の焼成前または焼成後に、もしくは仮焼前か仮焼後に、釉薬を施釉してもよい。釉薬は、スラリーであっても粉体であってもよい。成形体の焼成後に釉薬を施釉した場合、再焼成を行うことが好ましい。釉薬を焼成することにより、釉薬層が形成される。
原料調合物の用意
粘土鉱物としての粘土と、ガラス質鉱物としての長石とを混合して原料調合物を用意した。
得られた原料調合物をトロンミルに入れ混合粉砕し、スプレードライヤーにより顆粒粉を作製した。作製した顆粒粉を用い、25000t乾式プレス成形機により35〜40MPaの成形圧力で1090mm×3270mm×5.5mmサイズにプレスして、成形体を得た。
作製した各試験体を150℃で25分、加熱乾燥させて乾燥体を得た。
作製した乾燥体を、ローラーハースキルンを使用して、常温から30分で最高温度1170℃まで昇温し、最高温度を10分保持した後、20分で冷却し出炉して、焼成体を得ることで、実施例1の大型セラミック板を作製した。
原料調合物に、ジルコニウム含有鉱物としてのジルコンとを混合した以外は実施例1と同様の方法により、実施例2の大型セラミック板を得た。
実施例1の原料調合物をトロンミルに入れ混合粉砕する際の粉砕時間を実施例1の条件よりも長くして、原料の粒度を低くした以外は実施例1と同様の方法により、比較例1の大型セラミック板を得た。
実施例2の原料調合物をトロンミルに入れ混合粉砕する際の粉砕時間を実施例1の条件よりも長くして、原料の粒度を低くした以外は実施例1と同様の方法により、比較例2の大型セラミック板を得た。
粘土、長石、陶石および珪石を含有してなる磁器タイル用の原料調合物を使用した以外は実施例1と同様の方法により、比較例3の大型セラミック板を得た。
粘土、カオリン、長石、陶石、およびドロマイトを混合し粉砕して得られた衛生陶器用の原料調合物を使用した以外は実施例1と同様の方法により、比較例4の大型セラミック板を得た。
ザ・サイズ(The Size)社製の大型セラミック板(品名:Neolith 色:iron gray)を購入し、比較例5の大型セラミック板とした。
実施例1の原料調合物をトロンミルに入れ混合粉砕する際の粉砕時間を実施例1の条件よりも短くして、原料の粒度を高くした以外は実施例1と同様の方法により、比較例6の大型セラミック板を得た。
吸水率の測定
作製した各大型セラミック板から、幅100mm、長さ100mm、厚さ5mmの切片を切り出し、試料とした。各試料について、JIS A1509−3(2014)に規定される真空法による吸水率の測定方法に準拠して、吸水率を測定した。
以下の手順で試料を作製し、X線回折装置を用いて、以下の測定条件で検出されたスペクトルに対してリートベルト解析を行い、試料中の結晶相の存在比を算出した。なお、試料中の非結晶相は内部標準添加法にて算出した。
(a)各焼成体をプラスチックハンマーで破砕し、約50mm平方の破片を取り出した。
(b)得られた破片を乳鉢で粉砕し、100mesh以下のパウダーを作製した。
(c)プレス機金型に薬包紙を敷き、その上に外径38mm、内径31mm、厚み5mmの塩ビ製リングを置いた。
(d)上記(b)で作製したパウダーをリング内に山型になるように充填し、その上に薬包紙を置いた。
(e)5MPaの圧力になるまでプレスした(約5秒)。
(f)試料(ディスク状)周囲の粉体をハンドポンプで取り除き、測定試料を得た。
測定装置: X’Pert PRO MPD(パナリティカル社製)
X線源:Cu−Kα1
管電圧:45kV
管電流:40mA
測定範囲:2θ=5°〜80°
結晶形の同定:機器ライブラリより3強線を比較して行った。
(1)試料の作製
各焼成体の破片を樹脂包埋し、以下の条件で自動研磨機にて研磨を行った。その後、サンプル表面をPtでコーティングした。
装置:回転機 エコメット研磨機4型(12インチ)(BUEHLER社製)、
加圧機 オートメット2 (BUEHLER社製)
研磨手順:耐水研磨紙#500および#1200にて順に粗削りをしたのち、研磨用バフ盤上でダイヤモンド砥粒9μm、3μm、1μm、および0.05μmを用いて順に研磨することで鏡面出しを行なった。
上記で得られた試料を電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)にて、以下の条件で元素分析して、焼成体の元素マップデータを得た。
装置:電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)
機種:JXA−8230(日本電子製)
電子銃:Lab6
加速電圧:15kV
照射電流:1×10−7A
W.D.:11mm
X線分光:波長分散型(WDX)
分光結晶: LDE1H,TAP,TAPH,PETH,LIFH
スキャン方法:ステージスキャン
ピクセルサイズ:2μm×2μm
マッピングサイズ:740μm×520μm
測定時間:10msec/pixel
積算回数:1回
上記の分析にて得られた元素マップデータを、上記装置に付属する解析プログラム「フェイズマップメーカー」(日本電子製)にて解析して、特定の組成相の分布を表示した相マップを得ることで長石由来結晶鉱物の粒子を可視化した。
解析手順:
a)EPMAソフトウェアで元素マップデータを読み込み、上記解析プログラムを起動させた。
b)長石由来結晶鉱物であるアルバイト(NaAlSi3O8)のうち、含有元素であるNaおよびSiのデータを解析に用いた。
c)b)で選択した元素において、Na=3質量%以上4質量%以下かつSi=20質量%以上26質量%以下をソフト上で指定することで、元素マップデータのうち同鉱物の粒子の存在する箇所を抽出し、可視化させた。なお、長石由来結晶鉱物の純度や、焼成時の組成変化のため、質量比は組成式とは必ずしも合致するものではないため、上記の元素分析で得られたアルバイトの質量%の測定値を元に選択範囲を決定した。
上記のデータを解析して得られた長石由来結晶鉱物の粒子の可視化画像を、さらに画像解析ソフト「WinROOF」(三谷商事製)にて解析し、同粒子の大きさおよび面積率を抽出した。
解析手順:
a)元素マップデータの解析で得られた長石由来結晶鉱物の粒子を可視化させて得た画像を画像解析ソフトに読み込ませた。
b)現画像がカラー情報であるため、2値化処理を行なうためにソフト上にてモノクロ化処理(自動処理)を行なった。
c)解析範囲の選択として、長石由来結晶鉱物の粒子を可視化した元素マップデータ領域を指定した。
d)自動2値化処理(自動処理)を行ない、粒子を認識させた。
e)d)で認識させた粒子の大きさおよび面積率を抽出した。
作製した各大型セラミック板から、幅100mm、長さ100mm、厚さ5mmの切片を切り出し、試料とした。各試料について、JIS A1509−4(2014)に規定される曲げ強度の測定方法に準拠して、スパン290mmにおける曲げ強度を測定した。
作製した各大型セラミック板から、幅100mm、長さ100mm、厚さ5mmの切片を切り出し、試料とした。各試料について、試料上方から試料表面の方向に炎が放射されるバーナーが取り付けられたローラーハース型焼付炉を用い、試料の表面が1分間で室温から750℃まで昇温させる条件で急激な加熱を行なった後、直ちに室温まで急冷した。このような条件による熱衝撃を付与した試料について、破損状況を目視観察した。
成形体を100mm×100mmに切り取り、実施例1と同じ条件で乾燥および焼成した後の「ばち」を測定した。ばちが0.3mm未満の場合に形状安定性を有すると判定した。JIS A5209(2014)の表7によれば、プレス成形してなる第I類タイルの製作寸法が50mm超過105mm以下の場合、ばちの許容差は1.4mmであるとされている。他方、本発明のセラミック板のように、1辺が1mを超え、厚さが1cm未満であるような薄物で大型のセラミック板の場合、100mm角の試験片のばちの許容差を小さくして形状安定性を保つことによる歩留まり向上を念頭におき、0.3mm未満を合格:符号「○」、0.3mm以上を不合格:符号「×」とした。
結晶相の測定で使用した試料について、蛍光X線分析装置 Supermini200(株式会社リガク社製)を用いて、以下の測定条件および濃度の求め方に従い、検出される全元素の酸化物換算濃度を定量した。
・X線管電流:4.00mA
・X線管電圧:50kV
・恒温化温度:36.5℃
・PRガス量:7.0ml/min
・真空度 :10Pa以下
・試料形態 :粉末測定(ポリプロピレンフィルム被覆)
・分析方法 :EZスキャン
・測定径 :30mm
・測定時間 :「長い」を選択
検出される全元素の酸化物換算濃度を表示させた。
Claims (13)
- JIS A1509−3(2014)に規定される吸水率が1%以下である大型セラミック板において、
結晶相としてムライトと、長石由来結晶鉱物とを含み、
さらに、クォーツを含まないか、または、含む場合は、当該クォーツの濃度が0質量%超過20質量%以下であり、
CaO換算で0質量%超過1質量%以下のCa元素と、MgO換算で0質量%超過1質量%以下のMg元素とを含んでなり、
前記長石由来結晶鉱物として、最大長が50μm以上の粒子を含み、かつ当該粒子が全長石由来結晶鉱物に対して3%以上の面積率を有することを特徴とする、大型セラミック板。 - ZrO2換算で3質量%以上15質量%以下のZr元素をさらに含んでなる、請求項1に記載の大型セラミック板。
- 前記長石由来結晶鉱物は、アルカリ長石および曹長石からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項2に記載の大型セラミック板。
- 前記長石由来結晶鉱物の最大長50μm以上の粒子が、全長石由来結晶鉱物に対して10%以下の面積率を有するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の大型セラミック板。
- 前記長石由来結晶鉱物として、最大長が80μm以上の粒子を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の大型セラミック板。
- 前記クォーツ濃度が10質量%以上20質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の大型セラミック板。
- アノーサイトを含まない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の大型セラミック板。
- 1辺の長さが400mm以上3000mm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の大型セラミック板。
- 厚さが1mm以上10mm以下である、請求項8に記載の大型セラミック板。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載された大型セラミック板の製造方法であって、
(1)粘土鉱物と、(2)ガラス質鉱物とを含んでなる原料調合物を用意する工程と、
前記原料調合物を成形して、成形体を得る工程と、
前記成形体を焼成して、大型セラミック板を得る工程と、を少なくとも含んでなる、製造方法。 - 前記原料調合物は、当該原料調合物全量に対して、
前記(1)粘土鉱物を10質量%以上70質量%以下、前記(2)ガラス質鉱物を30質量%以上90質量%以下含んでなるものである、請求項10に記載の製造方法。 - 前記(1)粘土鉱物が粘土であり、前記(2)ガラス質鉱物が長石である、請求項10または11に記載の製造方法。
- 前記成形体を焼成する最高温度が、1100℃〜1200℃である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の製造方法。
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