JP2004299948A - 希土類シリケート高温水蒸気腐食防止用皮膜及びその製造方法 - Google Patents

希土類シリケート高温水蒸気腐食防止用皮膜及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】1500℃までの高温でも非酸化物が酸化及び水蒸気腐食されないような、緻密でクラックがない皮膜であって、長時間の使用中、異物の衝突など不慮の事故で皮膜が破損しても自己修復できる高温耐水蒸気腐食皮膜を提供する。
【解決手段】ゾル−ゲル法において出発水溶液中のLuとSiの比率をLnSiO からLn Si の組成とすること、焼結時に基材が酸化して生じるシリカと希土類を反応及び焼結させることにより、緻密でクラックのない希土類シリケート薄膜を基材上にコーティングすると共に、皮膜の組成を定比の化合物の組成よりずれたLu SiO −Lu Si の間の組成とすることで、高温で長時間使用中に不慮の事故で生じる皮膜の破損に対しても自己修復能を有する希土類シリケート高温耐水蒸気腐食皮膜を製造する。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1000℃以上の高温において、窒化ケイ素セラミックス及び炭化ケイ素セラミックスの高温耐水蒸気腐食を改善することを可能とする耐水蒸気腐食皮膜及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、ゾル−ゲル法により緻密な希土類シリケート皮膜を成膜することを特徴とする希土類シリケート高温水蒸気腐食防止用皮膜及びその製造方法に関するものである。本発明は、ゾル−ゲル法において希土類シリケートの出発組成においてLn(希土類元素)とSiの原子比を1:0.5〜1に調整することで、基材にコーティングした後の熱処理において基材の窒化ケイ素セラミックスあるいは炭化ケイ素セラミックスが酸化して生じるシリカ成分を希土類と反応させることにより緻密な希土類シリケート層のコーティングを可能とし、クラックのない緻密な高温耐水蒸気腐食皮膜を製造することを可能とする希土類シリケート皮膜及びその製造方法を提供するものとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
高温構造部材として、窒化ケイ素セラミックス及び炭化ケイ素セラミックス、すなわち、非酸化物系のセラミックスを応用する際に、高温における酸化と共に水蒸気腐食が問題となる。次世代のガスタービン部材など1500℃を超える高温で高速気流に晒される部材として、非酸化物系セラミックスを応用する際に、酸化して生じるシリカが水蒸気により腐食されることが予測される。表面のシリカが腐食されると、セラミックス表面には次の非酸化物表面が剥き出しとなるため、更に、酸化及び水蒸気腐食が生じ、上記機構によりセラミックスは時間とともに損耗すると予測される。
【0003】
上記の非酸化物セラミックスの損耗機構を抑止するためには、非酸化物セラミックスが高温でも酸化及び水蒸気腐食しないように高温耐水蒸気腐食皮膜を施す必要がある。また、高温で長時間使用中に異物の衝突による皮膜の破損など不慮の事故で皮膜が損傷した際には、自己修復により皮膜の再生が図られるような皮膜設計が必要となる。
【0004】
希土類シリケート(ここで、希土類は、Y、Yb、Luである)は、1800℃を超える高い融点を有し、高温で熱的及び化学的に安定であることが広く知られている。これらの希土類シリケート化合物としては、Y Si 、Y SiO 、Yb Si 、Yb SiO 、Lu Si 、Lu SiO が知られている。Ln Si (Lnは、希土類元素を表す) の熱膨張係数は、窒化ケイ素セラミックスのそれとほぼ同程度、Ln SiO の熱膨張係数は、炭化ケイ素セラミックスのそれとほぼ同程度であり、これらの化合物は、比較的定熱膨張係数を示す非酸化物系セラミックスのコーティング材として優れていると考えられている。
【0005】
窒化ケイ素の耐水蒸気腐食層としてLu Si が優れているとの報告もあり、窒化ケイ素にこの層がディップコートなどによりコーティングされた窒化ケイ素セラミックスが開発されつつある。しかし、耐水蒸気腐食皮膜として、上記化合物を塗布する場合、皮膜を貫通するクラックがあると、基材となる窒化ケイ素セラミックスや炭化ケイ素セラミックスが直接外気と触れるため、酸化によりシリカを生成し、上記腐食による損耗機構により基材のセラミックスが損耗することとなる。
【0006】
したがって、耐水蒸気腐食皮膜としては、まず、完全に緻密であり、クラックのない皮膜とする必要がある。緻密な皮膜の製造方法としては、先行技術文献(特許文献1参照)のようなゾル−ゲルを用いた方法が提案されている。この文献では、金属基材にゾル−ゲル法で耐熱層を成膜することが提案されているが、基材と耐熱層との密着性が優れることが指摘されている。一般に、ゾル−ゲル法は、金属錯体溶液を出発とするため、塗布した皮膜は、基材の凹凸の細部にまで入り込むため、基材と皮膜の密着性は、ディッピング法などと比較すると向上する。また、ゾル−ゲル法では、緻密な皮膜の作製プロセスは簡便であり、コスト的にも工業化を容易に図ることができる。
【0007】
基材の耐酸化を目的としてゾル−ゲル法により皮膜を形成する技術としては、先行技術文献(特許文献2、3、4、5、6参照)に記載されている様に、金属あるいは炭素系の基材に対する耐酸化層が提案されている。
【0008】
しかし、窒化ケイ素セラミックス及び炭化ケイ素セラミックスの高温耐水蒸気腐食層の成膜法として、ゾル−ゲル法による成膜を使用した例はこれまでのところ報告がない。更に、非酸化物セラミックスの耐酸化層としては、クラックのない緻密な層であるとともに、異物の衝突などによる皮膜の破損など、不慮の事故に対しても安全性を確保するためにクラックを防ぐ機構を付与する必要があるが、そのような機能を有する、1500℃を超える高温での使用を目的とする非酸化物セラミックスの耐酸化皮膜は、これまでに提案されていない。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−226781号公報
【特許文献2】
特開2000−17569号公報
【特許文献3】
特開平8−325750号公報
【特許文献4】
特開平11−70617号公報
【特許文献5】
特開平9−301788号公報
【特許文献6】
特開平8−232082号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術における諸問題を抜本的に解決することを可能とする新しい耐水蒸気腐食皮膜をゾル−ゲル法を応用した一連のプロセスにより開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、希土類シリケート化合物及びそれら化合物の混合物を窒化ケイ素セラミックス及び炭化ケイ素セラミックス上にゾル−ゲル法により成膜し、コーティングした皮膜の加熱処理にともない基材が若干酸化して生じるシリカを膜成分に吸収させることによりクラックのない緻密な皮膜を作製することに成功し、更に、皮膜の組成をLn SiO 〜Ln Si とすることで、応用に際して不慮の事故で生じるクラックを自己修復し得る皮膜の製造が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のゾル−ゲル法により成膜した希土類シリケート高温耐水蒸気腐食皮膜及びその製造方法は、窒化ケイ素セラミックス及び炭化ケイ素セラミックスの耐水蒸気腐食皮膜として希土類シリケートの簡便な成膜法を提供すること、及びその耐酸化層の組成をLn SiO 〜Ln Siとすることで、高温における応用に際して不慮の事故で生じる皮膜の破損を自己修復することを可能とする耐水蒸気腐食皮膜を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)基材の窒化ケイ素セラミックス、炭化ケイ素セラミックス又はそれらのコンポジットの上に、高温耐水蒸気腐食皮膜として、希土類(Ln)の硝酸水和物(Ln(NO ・nH O)とテトラエトキシシラン(Si(OH) )を出発物質として用いてゾル−ゲル法により成膜し、コーティングした皮膜を熱処理することにより、10ナノメートルから10ミクロンの膜厚を有する緻密な希土類シリケート皮膜を形成することを特徴とする緻密な希土類シリケート皮膜の製造方法。
(2)希土類として、Y、Yb、又はLuを用いる前記(1)記載の緻密な希土類シリケート皮膜の製造方法。
(3)出発物質の組成においてLn(希土類元素)とSiの比を原子比で1:0.5〜1に調整し、基材にコーティングした後の熱処理において基材の窒化ケイ素あるいは炭化ケイ素が酸化して生じるシリカ成分を希土類と反応させることにより緻密な希土類シリケート皮膜を形成することを特徴とする前記(1)記載の緻密な希土類シリケート皮膜の製造方法。
(4)コーティングした皮膜の熱処理の温度が1000〜1600℃である前記(1)記載の緻密な希土類シリケート皮膜の製造方法。
(5)前記(1)から(4)のいずれかに記載の希土類シリケート皮膜の製造方法により製造された、緻密な希土類シリケート層を基材の窒化ケイ素セラミックス、炭化ケイ素セラミックス又はそれらのコンポジットの上にコーティングしたことを特徴とする耐水蒸気腐食皮膜を有する窒化ケイ素セラミックス、炭化ケイ素セラミックス又はそれらのコンポジット材料。
(6)前記(5)記載の材料を構成要素として含むことを特徴とする高温耐水蒸気腐食性を有する構造部材。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、ゾル−ゲル法を応用して高温耐水蒸気腐食皮膜を成膜することを特徴とするものである。ゾル−ゲル法は、目的の金属錯体を含む溶液から出発するため、基材となる窒化ケイ素セラミックス及び炭化ケイ素セラミックスバルク表面のミクロな凸凹に完全に入り込み、基材との密着性の良い皮膜を得るのに最適でかつ簡便な方法である。
【0014】
本発明では、出発物質としては、希土類(Ln)の硝酸水和物(Ln(NO ・nH O)とテトラエトキシシラン(Si(OH) )を出発物質として用いられ、好適には、硝酸希土類水和物(Ln(NO ・nH O)及びシリシリックアシッド(Si(OH) )を用い、それらを混合した水溶液が例示されるが、水溶液中に希土類及びシリコンの錯体を生じさせる出発物質であれば出発物質の種類によらない。硝酸希土類水和物とシリシリックアシッドを希土類とシリコンの原子比が1:0.5〜1となるように混合し、充分に攪拌した後、基材となる窒化ケイ素セラミックスあるいは炭化ケイ素セラミックスバルクにディッピングし、加熱処理により皮膜を結晶化させる。
【0015】
Ln Si の熱膨張係数は、窒化ケイ素セラミックスのそれとほぼ同程度であり、Ln SiO の熱膨張係数は、炭化ケイ素のそれとほぼ同程度であるが、前者と後者は熱膨張係数が異なる。したがって、Ln Si とLn SiO の中間の組成を皮膜の組成とすると、基材が窒化ケイ素セラミックスであっても炭化ケイ素セラミックスであっても若干の熱膨張係数差に起因する熱応力が基材と皮膜との間に生じることになるが、皮膜の膜厚を薄くすると応力があってもクラックは生じない。更に、耐水蒸気腐食皮膜として応用する際、非酸化物上に成膜する緻密な層は数ミクロン厚でもかまわない。緻密な薄膜の上に更に厚膜を別の成膜手法によりコートすることを勘案した場合、緻密な層の厚みは数ナノでもかまわない。実際にゾル−ゲル法を用いてコーティングを行なう場合は、十ナノメートル程度の薄膜が下限であるため、ここで成膜する希土類シリケート皮膜の膜厚も10ナノメートルから10ミクロンとする。
【0016】
水溶液に非酸化物セラミックスをディッピングして乾燥した表面に形成されたアモルファスの層には多くのひび割れが生じている。乾燥させたバルクを高温で熱処理すると、1050℃程度の比較的低温で皮膜の結晶化が起こるが、1050℃での熱処理では最初のひび割れが残存し、皮膜にはクラックが入ったままとなる。
【0017】
そこで、1050℃よりも高い温度で加熱処理を行なうことにより、下記の化学式(1)、(2)のように下地の基材が若干酸化されてシリカを生じ、皮膜の組成をLn Si とLn SiO の中間の組成としていることから、皮膜が、ここで生じるシリカを化学式(3)のように吸収し、クラックが生じていた部分を塞ぎ、クラックの全くない緻密な希土類シリケート層が得られる。
Si +3O →3SiO (窒化ケイ素セラミックスの場合)(1)
SiC+O→SiO(炭化ケイ素セラミックスの場合) (2)
Ln Si2−x 7−y +SiO →Ln Si2−d7−e (3)
【0018】
熱処理によって皮膜は若干のシリカ成分を吸収し、皮膜の組成は希土類とシリコンの比が原子比で1:1となる方へ向かうが、耐酸化皮膜を施した非酸化物セラミックスを高温で応用する際に、不慮の事故により皮膜が破損したとき下地の非酸化物セラミックスの酸化により生じるシリカと皮膜が反応し、皮膜破損を自己修復する機能を付与する目的で、熱処理後の皮膜組成もLn Si とLn SiO の中間の組成となるように出発組成及び熱処理時間を調整する。
【0019】
シリカは1700℃以上の温度では蒸気相のSiOとなり昇華することから、基材が損耗する。よって、ここで行なう熱処理の温度は、皮膜の結晶化が開始する1050℃の温度から窒化ケイ素や炭化ケイ素がパッシブ酸化する1600℃の範囲である。
【0020】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例
本発明では、基材としては、窒化ケイ素セラミックス及び炭化ケイ素セラミックスを用いて、また、希土類シリケートの希土類種としてはY、Yb、Luを用いてコーティングが行われるが、本実施例では、それらの代表的な例として、窒化ケイ素セラミックスにルテチウムシリケートをコーティングした例を説明する。
【0021】
溶液の出発原料として、硝酸ルテチウム水和物(Lu(NO ・nH O)及びシリシリックアシッド(Si(OH) )を用い、LuとSiの比が原子比で1:0.85となるようにそれぞれの溶液を混合し、スターラーを用いて充分攪拌混合した。本実施例では、出発物質として、硝酸ルテチウム水和物とシリシリックアシッドを用いたが、ルテチウムとシリコンの錯体を生じさせ、ゾル−ゲル法で成膜させ得る出発原料であれば同様に用いられる。また、本実施例では、ルテチウムとシリコンの原子比は1:0.85としたが、この原子比が1:0.5からの範囲であればどの組成を使ってもよい。
【0022】
窒化ケイ素セラミックスの熱膨張係数は、Ln Si の熱膨張係数とほぼ等しく、Ln SiO の熱膨張係数より小さい。本実施例では、10ミクロン以下の薄膜を成膜するので、熱膨張係数の差に起因する熱応力はある程度膜内で吸収され、熱膨張係数差に起因するクラックなどは膜内に生じないと考えられるが、ここでは、窒化ケイ素の熱膨張係数に近いLn Si に近い組成の膜を得るため、出発組成のルテチウムとシリコンの比を1:0.85とした。
【0023】
上記方法で調製した水溶液に窒化ケイ素セラミックスバルクを含浸させ、引き上げた後、自然に滴下する余分な溶液を除去した後、60℃で2時間乾燥させた後、引き続き110℃で1日乾燥させた。このようにして乾燥させた膜の表面は、乾燥時の収縮により多くのひび割れが観察された。
【0024】
一方、上記組成の溶液だけを乾燥させて、得られた粉末の焼結挙動を熱分析法により調べた。その結果を図1に示す。400℃までに見られる3本の吸熱ピークは、ゲル体の重合を意味するピークに相当する。重量減少から判断すると、重合はおよそ600℃で完了するが、室温からこの温度範囲までにはアモルファスの結晶化を意味する発熱ピークは観測されない。1050℃付近に発熱ピークが存在することから、この粉末は1050℃まではアモルファス状態であるが、1050℃で反応焼結し、結晶相へ変わることが確認できた。よって、本実施例の出発物質を用いる場合、1050℃以上の温度で基材に塗布したアモルファス膜の結晶化を図ることができる。
【0025】
しかし、基材に塗布したアモルファス層は、ひび割れが生じており、1050℃ほどの熱処理では皮膜の結晶化は進むものの、ひび割れが埋まることはない。本発明での熱処理は、1600℃までの高温で行ない、基材の酸化により生じるシリカと皮膜とが反応及び焼結することでひび割れが完全に埋まり、クラックやオープンポアが全くない皮膜を作製することを可能とする。よって、ここでは、ゾル−ゲル法でルテチウムシリケート組成のものを塗布した窒化ケイ素セラミックスを高純度のアルミナボードに乗せ、大気中1500℃で2時間加熱処理を行なった。
【0026】
図2に、加熱処理により得られた結晶化した皮膜表面から得られたX線回折図形を示す。ほとんど全てのピークは、Ln Si 相として同定され、LnSiO 相からピークは無視できるほど小さい。出発組成としては、ルテチウムとシリコンの比が1:0.85であることから、この組成がそのまま結晶化した場合、LnSiO 相も、相のモル比としてLn Si 相の1/3ほど生じることとなるが、図2ではLn SiO 相は無視できるほど減少しており、焼結により上記化学反応式(3)の化学反応が進んだことが明らかである。すなわち、焼結により基材の窒化ケイ素セラミックスが若干酸化し、酸化により生じた若干のシリカ(SiO )が皮膜の組成に吸収され、その分Ln Si 相が生成したことが確認された。
【0027】
図3に、加熱処理した皮膜表面の電子顕微鏡像を示す。溶液にディッピングして乾燥させた後に巨視的に見られたひび割れは全く観察されないのみならず、1ミクロン以下の微細なクラックやひび割れも全く観察されず、緻密な皮膜が形成されていることが確認された。このことは、焼結により基材の窒化ケイ素セラミックスが若干酸化し、酸化により生じた若干のシリカが皮膜の組成に吸収され、その分、Ln Si 相が生成し、そこで生じる体積分で最初のひび割れ等が埋められ、緻密な皮膜を形成したと判断することができる。
【0028】
図4に、上記のプロセスで窒化ケイ素セラミックスにコーティングした試料の破断面を示す。窒化ケイ素セラミックスと皮膜の密着性は良好であり、10ミクロンと厚い膜を成膜しても、皮膜を貫通するようなクラックなどは生じておらず、耐酸化性に優れるルテチウムシリケート皮膜を窒化セラミックス上にコーティングすることができた。
【0029】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、ゾル−ゲル法により成膜した希土類シリケート高温耐酸化皮膜及びその製造方法に係るものであり、本発明により、(1)出発水溶液中のLuとSiの比率をLn SiO からLn Si の組成とすることで、焼結時に基材が酸化して生じるシリカと反応及び焼結させることにより、緻密でクラックのない希土類シリケート薄膜をコーティングすることができる、(2)皮膜の組成を定比の化合物の組成よりずれたLuSiO−LuSiの間の組成とすることで、高温で長時間使用中に不慮の事故で生じる皮膜の破損に対しても自己修復能を有する希土類シリケート高温耐酸化皮膜を提供することができる、という効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ゾル−ゲル粉末の熱測定結果を示す。
【図2】結晶化させた後の皮膜表面から得られたX 線回折図形を示す。
【図3】加熱処理後の皮膜表面を示す。
【図4】加熱後の皮膜破断面を示す。

Claims (6)

  1. 基材の窒化ケイ素セラミックス、炭化ケイ素セラミックス又はそれらのコンポジットの上に、高温耐水蒸気腐食皮膜として、希土類(Ln)の硝酸水和物(Ln(NO・nH O)とテトラエトキシシラン(Si(OH) )を出発物質として用いてゾル−ゲル法により成膜し、コーティングした皮膜を熱処理することにより、10ナノメートルから10ミクロンの膜厚を有する緻密な希土類シリケート皮膜を形成することを特徴とする緻密な希土類シリケート皮膜の製造方法。
  2. 希土類として、Y、Yb、又はLuを用いる請求項1記載の緻密な希土類シリケート皮膜の製造方法。
  3. 出発物質の組成においてLn(希土類元素)とSiの比を原子比で1:0.5〜1に調整し、基材にコーティングした後の熱処理において基材の窒化ケイ素あるいは炭化ケイ素が酸化して生じるシリカ成分を希土類と反応させることにより緻密な希土類シリケート皮膜を形成することを特徴とする請求項1記載の緻密な希土類シリケート皮膜の製造方法。
  4. コーティングした皮膜の熱処理の温度が1000〜1600℃である請求項1記載の緻密な希土類シリケート皮膜の製造方法。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の希土類シリケート皮膜の製造方法により製造された、緻密な希土類シリケート層を基材の窒化ケイ素セラミックス、炭化ケイ素セラミックス又はそれらのコンポジットの上にコーティングしたことを特徴とする耐水蒸気腐食皮膜を有する窒化ケイ素セラミックス、炭化ケイ素セラミックス又はそれらのコンポジット材料。
  6. 請求項5記載の材料を構成要素として含むことを特徴とする高温耐水蒸気腐食性を有する構造部材。
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