JP2004299222A - コンタクトレンズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学性に優れ、角膜に損傷を与えることのない滑らかなエッジ及び表面を有する高品質のコンタクトレンズを、低コストで製造する。
【解決手段】雄型と雌型の樹脂型を組み合わせて形成された空間に、原料を充填し、重合せしめてコンタクトレンズを製造する方法において、樹脂型の雄型と雌型の接触面を接着剤にて固定した状態で原料の充填・重合を行ってコンタクトレンズを製造する。この樹脂型は好ましく変性ポリオレフィンからなり、該変性ポリオレフィンは厚み0.5mmとした時の波長356nmの光線透過率が10%以上である。また、この型は変性ポリオレフィンと樹脂型の重量に対して5重量%以下の水酸基若しくはアミノ基を有する脂肪酸エステルとが含有されているコンタクトレンズ製造用の樹脂型とすることが望ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】雄型と雌型の樹脂型を組み合わせて形成された空間に、原料を充填し、重合せしめてコンタクトレンズを製造する方法において、樹脂型の雄型と雌型の接触面を接着剤にて固定した状態で原料の充填・重合を行ってコンタクトレンズを製造する。この樹脂型は好ましく変性ポリオレフィンからなり、該変性ポリオレフィンは厚み0.5mmとした時の波長356nmの光線透過率が10%以上である。また、この型は変性ポリオレフィンと樹脂型の重量に対して5重量%以下の水酸基若しくはアミノ基を有する脂肪酸エステルとが含有されているコンタクトレンズ製造用の樹脂型とすることが望ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学性に優れ、角膜に損傷を与えることのない滑らかなエッジ及び表面を有する高品質のコンタクトレンズを、低コストで製造するために用いられるコンタクトレンズの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンタクトレンズの製造方法は大きく分類して3種類あり、レースカット法(切削研磨法)、モールド法、スピンキャスト法(遠心注型法)のいずれかの製造方法が主に用いられる。レースカット法は、現在コンタクトレンズの製造に最も一般的に用いられている方法であり、ボタン状のコンタクトレンズ材料を旋盤によって切り出し、切削、研磨を行ってコンタクトレンズを製造する方法である。この方法はBC(ベースカーブ:コンタクトレンズが角膜に接する面、あるいはその面の曲率半径)等形状の異なった多品種のコンタクトレンズを製造するのには適した方法であるが、コストが高いという問題点がある。現在、ハードコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズの多くがこの方法を用いて製造されている。
【0003】
これに対してモールド法とスピンキャスト法は、大半がソフトコンタクトレンズの製造に用いられている方法であり、レンズ形状の空間を有する成形型にコンタクトレンズ用原料を充填して重合させ、コンタクトレンズを製造する方法である。この方法の欠点は、形状の異なった多品種のコンタクトレンズをフレキシブルに製造する場合に不利になるということであるが、ソフトコンタクトレンズの場合には、BCの種類が少なく必要とされる型の種類が少ないために、好ましく用いられている。
【0004】
一方、これらの方法の利点は低コストでコンタクトレンズを製造することができることだが、その精度、具体的には寸法精度や面精度は共に型の精度に大きく左右され、精度の良い型を使用すれば品質の良いコンタクトレンズを製造することが可能である。但し、スピンキャスト法はコンタクトレンズ用原料の粘度、表面張力、量、回転数等の多くの因子を制御する必要があり、適用可能なレンズ材料も特定のものに限定されてしまう。又、この方法によって得られるコンタクトレンズは球面精度が悪く、十分な光学性能が得られない場合もある。
【0005】
近年、ソフトコンタクトレンズはその装用感の良さから、従来のハードコンタクトレンズを装用できなかった人々に多く使用されている。ソフトコンタクトレンズの特徴として、レンズ自体が柔軟で角膜形状に沿って装着されるため、ハードコンタクトレンズのように非常に沢山のBCの種類を必要としない。そのため、品質のバラツキの少ないコンタクトレンズを製造するためにはモールド法が好適であると考えられている。別な要因であるが、シリコンラバーや長鎖アルキルメタクリレートのような非含水ソフトコンタクトレンズのように、柔軟な材料はレースカット法では加工できないため、一般的にはモールド法により製造されている。
【0006】
このモールド法によるコンタクトレンズの製造方法における最も大きな課題の1つして、重合時の雄型と雌型の固定が必要という点が挙げられる。雄型と雌型を組み合わせて重合する際、押さえ込んで重合しなければ成形されるコンタクトレンズの厚みが不安定になる。しかしながら光重合の場合、押さえ込んで重合を行うと、押さえ込み用の治具が邪魔になり、光を雄型と雌型の間に注入されたコンタクトレンズ用原料まで届けることが出来なかった。熱重合においても、押さえ込み用の治具が熱の伝導を妨げると共に、コンタクトレンズ表面への面荒れを発生させた。又、荷重をかけた状態で長時間放置すると、雄型と雌型によってコンタクトレンズが成型される空間の周辺部分(エッジ部分)が潰れやすく、このため、レンズ周辺部にバリが発生して余計な加工を必要としたり、あるいは、品質低下につながっていた。係る課題を解決するため、荷重をかけ、コンタクトレンズモノマーの早期硬化を行って、その後、荷重を取り除いて重合を行う技術が知られている(特許文献1)。しかし、この方法を実施するには大がかりな設備を必要とし、安価に製造することが困難であった。
【0007】
2つ目の課題としては、重合方法との関係が挙げられる。例えば、熱によって重合させ、コンタクトレンズを成型する場合、それに使用する型はある程度の耐熱性を有するものでなくてはならない。一般的にコンタクトレンズ型の材質としては、主にPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等のポリオレフィン、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリアセタール、ポリ四フッ化エチレン、ポリアミド等、射出成形可能な合成樹脂が広く使用されているが、熱重合を行えば、コンタクトレンズ型のゆがみが生じるため、熱重合で精度の高いコンタクトレンズを得ることは困難とされている。一方、コンタクトレンズ用原料を光線によって重合する場合は、精度の高いコンタクトレンズを得ることができるが、使用する型は重合に必要な波長の光線を充分に透過するものでなければならなかった。
【0008】
3つ目の課題として、コンタクトレンズ用樹脂型とコンタクトレンズ用材料との密着性が大きな問題である。例えばコンタクトレンズ用樹脂型の材質とコンタクトレンズ用材料の密着性が大きすぎる場合、コンタクトレンズ用原料を重合した後、離型ができなくなってしまうという問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開平8−174699号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、モールド法によるコンタクトレンズの製造においては、光学性に優れ、且つバリの少ない品質に優れたコンタクトレンズの製造方法を提供せんとするものである。また、更に好ましく光重合により得る場合に十分な透明性を有し、生産性を高めたコンタクトレンズを製造する方法を提供せんとするものである。そして、離型性の良いコンタクトレンズの製造の為の樹脂型を提供せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、
(1)雄型と雌型の樹脂型を組み合わせて形成された空間に、原料を充填し、重合せしめてコンタクトレンズを製造する方法において、樹脂型の雄型と雌型の接触面を接着剤にて固定した状態で原料の重合を行うことを特徴とするコンタクトレンズの製造方法、
(2)前記の樹脂型は変性ポリオレフィンからなり、該変性ポリオレフィンは厚み0.5mmとした時の波長356nmの光線透過率が10%以上であることを特徴とする前記(1)記載のコンタクトレンズの製造方法、
(3)変性ポリオレフィンと樹脂型の重量に対して5重量%以下の水酸基若しくはアミノ基を有する脂肪酸エステルとが含有されているコンタクトレンズ製造用の樹脂型、である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの例に限定されるわけではない。
【0013】
本発明の製造方法は雄型と雌型の樹脂型の接着面を接着剤で固定して製造を行うが、この接着剤は少なくとも雄型と雌型をコンタクトレンズ用原料の注入・重合中固定できるものであれば特に制限はないが、密着性が高く、かつ容易に離型できるものであることが好ましい。このような接着剤としては、石油ワックス、ポリエチレンワックス等の溶融ワックス、UV硬化性接着剤、可視光接着剤等の光接着剤、EVA樹脂系ホットメルト接着剤、ポリアミド系ホットメルト接着剤等のホットメルト系接着剤、アクリル系嫌気性接着剤等の嫌気性接着剤が挙げられる。本発明においては水溶性の接着剤が採用することが特に好ましい。係る接着剤を用いることで雄型と雌型の樹脂型を固定し、重合してコンタクトレンズを成形後、樹脂型全体を水中に浸漬することで、接着剤が水に溶解するため雄型と雌型の樹脂型の分離が容易となる。
【0014】
本発明に用いる樹脂型の材質としては、コンタクトレンズの製造に支障がなければ、特に限定されるものではないが、変性ポリオレフィンを用いることが好ましい。現在コンタクトレンズ製造用樹脂型の材質として最も一般的に使用されているといわれているポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンは、一般に安価で、射出成形等で容易に成形ができるとの利点を持つ。しかし、成形時の体積収縮が比較的大きく、精度を出すことが困難であり、また耐熱性が悪いために比較的低温でも変形を生じ易い。更に結晶性が大きいために透明性が不十分である等の欠点も有している。本発明に好適に用い得る変性ポリオレフィンは上記ポリオレフィンの有する問題を改善したもので、その具体例としては、光ディスク等の光学材料分野で用いられるようなポリオレフィンの結晶度を小さくし、非晶性の性質を持たせた変性ポリオレフィンである。この変性ポリオレフィンは非晶性の性質を有することでポリオレフィン本来の耐溶剤性等の性質に加えて、透明性、耐熱性は良好であり、また成形時の体積収縮を抑えることでコンタクトレンズの精度が大幅に改善できる。特に主鎖に脂環を含むポリオレフィンを使用した場合、コンタクトレンズ製造用樹脂型に要求される性質をバランス良く備え、極めて有用である。この様な変性ポリオレフィンとしては、酸処理や熱処理により性質を変化させたポリオレフィンが挙げられる。具体的には三井化学株式会社製のタフマーM、チッソ株式会社製のK5028及びXK4644等が挙げられる。
【0015】
また、本発明に好適に用いられる変性ポリオレフィンは、厚み0.5mmとした時の365nm光線透過率が好ましく10%以上、さらに好ましくは15%以上であることを特徴とする。
【0016】
光線透過率の測定方法について説明すると、ホットプレートで加熱して幅1cm、厚さ0.5mm均一のシートを作製し、高さ4cmに設定した分光光度計(株式会社日立製作所製のU−3200型)に取りつけ、本発明のコンタクトレンズに使用する重合開始剤の吸収波長である、356nmにおける透過率を測定する。
【0017】
本発明に用いられる樹脂型は、離型性を向上させるために、樹脂型には脂肪酸エステルを樹脂型の重量の5重量%以下で含むものが好ましい。含有量として更に好ましくは3%以下である。5%を超えると脂肪酸エステルがコンタクトレンズ成型時の重合を阻害する場合があり、少なすぎると離型が困難となる。脂肪酸エステルとしては水酸基若しくはアミノ基を有するものが好ましい。本発明に好適な脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。特に好ましくは、医療用具であるコンタクトレンズの特性を考えると、医薬品として登録されているグリセリンモノステアリン酸、ポリオキシステアリン酸などが好ましい。
【0018】
次に、本発明によるコンタクトレンズ製造方法について具体的に例を挙げて説明する。重合は通常の重合開始剤の存在下、加熱あるいは紫外線などの活性化エネルギー線の照射によって行われる。雌型の凹状面にコンタクトレンズ用原料を必要量吐出し、雄型と雌型の接触面に接着剤を塗布して重ね合わせて、雄型と雌型を組み合わせて形成された空間に原料を充填する。この際、型の接触面及び側面部接触面が完全に固定されるように注意する。こうして組み立てた型を加熱して熱重合させるか、あるいは紫外線を照射し光重合をさせる。重合したコンタクトレンズは樹脂型のまま超音波をかけながら、イソプロピルアルコールに浸漬して自然に離型させ、純水にて洗浄した後に、100℃、10hrの煮沸をして完結させる。重合方法について、大量生産を考えると光重合を行う方が好ましいが、熱重合を行う場合は、変性ポリオレフィンを用いると耐熱性が向上するが、100℃が限界であるため、100℃以下での重合を行う必要がある。
【0019】
本発明において用いられるコンタクトレンズ原料であるモノマーとしては、単独でも2種以上でも混合して用いることはできる。例えば、n−ブチルアクリレート、メチルメタアクリレート等のアクリル酸エステル、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルメタアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニルラクタム類、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸系、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸系エステル類、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート等のシリコーン化合物などが挙げられる。カルボニル基を含むメタクリル酸等のイオン性モノマーの使用量は1%未満に控え、FDA分類でII類となるN−ビニルピロリドン、メチルメタクリレートからなる非イオン性素材を用いることが好ましい。イオン性ソフトコンタクトレンズは脂質が付着し汚れやすく、アレルギー障害等の眼障害の原因となりやすい。その上、脂質が付着すると酸素透過性が落ち、眼にとっては、良くない。その点、非イオン性ソフトコンタクトレンズは、脂質が付着しにくいため、眼障害の発生率も下がり、レンズの使用開始時と比較しても酸素透過性の低下が小さい。
【0020】
架橋剤としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアネート等を用いることが可能である。
【0021】
重合開始剤は、熱開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル、光開始剤であるダロキュア1173等を用いることが可能である。
【0022】
【実施例】
以下実施例により、更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
実施例1
チッソ株式会社製のK5028に1.5重量%のグリセリンモノステアリン酸を含ませた、0.5mm厚みでの356nmにおける光透過率が15%である変性ポリプロピレン製の樹脂型を準備した。コンタクトレンズ用原料は、メチルメタクリレートとメチルアクリレートの共重合体20重量%、N−ビニルピロリドン20重量%、ジメチルスルホオキシド60重量%、補助剤にトリアリルイソシアヌラート0.4重量部、2,4,6−ターシャリーブチルフェノール0.05重量部、アゾビスジメチルバレロニトリルを0.3重量部をよく混合し、この混合物を脱気、アルゴン置換を行ったものを使用した。この混合物を前記の樹脂型に充填し、雄型と雌型の接触面を60℃で溶融した水溶性ワックス(日化精工株式会社製アクアワックス80)で固定し、オーブン中で70℃で60分、82℃で20分、100℃で5分加熱し、得られたコンタクトレンズを超音波をかけながらイソプロピルアルコールで膨潤させて離型し、純水洗浄した後、100℃、10時間煮沸をして重合を完結させた。
【0024】
こうして得られたソフトコンタクトレンズのエッジ及び表面は滑らかで、剥離時にレンズ破れも発生しなかった。製造した10枚の厚みは平均0.10mm、標準偏差0.00mmでばらつきは無かった。
【0025】
実施例2
チッソ株式会社製のK5028に2.5重量%のグリセリンモノステアリン酸を含ませた、0.5mm厚みでの356nmにおける光透過率が20%である変性ポリプロピレン製の樹脂型を準備した。コンタクトレンズ用原料は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート99.6重量%、補助剤にエチレングリコールジメタクリレート0.1重量%、アゾビスイソブチロニトリル0.3重量%をよく混合し、この混合物を脱気、アルゴン置換を行ったものを使用した。この混合物を前記の樹脂型に充填し、雄型と雌型の接触面に水溶性のUV硬化性接着剤(ヘンケルジャパン株式会社製UV−7000)を塗布して10秒間紫外光を照射後、オーブン中で70℃で60分、82℃で20分、100℃で5分加熱して重合し、得られたコンタクトレンズを超音波をかけながらイソプロピルアルコールで膨潤させて離型し、純水洗浄した後、100℃、10時間煮沸をして重合を完結させた。
【0026】
こうして得られたソフトコンタクトレンズのエッジ及び表面は滑らかで、剥離時にレンズ破れも発生しなかった。製造した10枚の厚みは平均0.10mm、標準偏差0.01mmでばらつきは無かった。
【0027】
実施例3
チッソ株式会社製のK5028に1.5重量%のグリセリンモノステアリン酸を含ませた、0.5mm厚みでの356nmにおける光透過率が15%である変性ポリプロピレン製の樹脂型を準備した。コンタクトレンズ用原料は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート70重量%、N−ビニルピロリドン30重量%、アクリル酸2重量%、補助剤にエチレングリコールジメタクリレート1.5重量部、トリアリルイソシアネート0.5重量部をよく混合し、この混合物を脱気、アルゴン置換を行ったものを使用した。この混合物を前記の樹脂型に充填し、雄型と雌型の接触面を60℃で溶融した水溶性ワックス(日化精工株式会社製アクアワックス80)で固定し、窒素雰囲気に保たれたグローボックス内で補虫灯を用いて1(mW/cm2)の光を12分間照射し、得られたコンタクトレンズを超音波をかけながらイソプロピルアルコールで膨潤させて離型し、純水洗浄した後、100℃、10時間煮沸をして重合を完結させた。
【0028】
こうして得られたソフトコンタクトレンズのエッジ及び表面は滑らかで、剥離時にレンズ破れも発生しなかった。製造した10枚の厚みは平均0.10mm、標準偏差0.00mmでばらつきは無かった。
【0029】
実施例4
チッソ株式会社製のK5028に2.5重量%のグリセリンモノステアリン酸を含ませた、0.5mm厚みでの356nmにおける光透過率が20%である変性ポリプロピレン製の樹脂型を準備した。コンタクトレンズ用原料は、メチルメタクリレートとメチルアクリレートの共重合体20重量%、N−ビニルピロリドン20重量%、ジメチルスルホオキシド60重量%、補助剤にトリアリルイソシアヌラート0.4重量部、2,4,6−ターシャリーブチルフェノール0.05重量部、ダロキュア1173を1.0重量部をよく混合し、この混合物を脱気、アルゴン置換を行ったものを使用した。この混合物を前記の樹脂型に充填し、雄型と雌型の接触面に水溶性のUV硬化性接着剤(ヘンケルジャパン株式会社製UV−7000)を塗布して10秒間紫外光を照射後、窒素雰囲気に保たれたグローボックス内で補虫灯を用いて1(mW/cm2)の光を12分間照射し、得られたコンタクトレンズを超音波をかけながらイソプロピルアルコールで膨潤させて離型し、純水洗浄した後、100℃、10時間煮沸して重合を完結させた。
【0030】
こうして得られたソフトコンタクトレンズのエッジ及び表面は滑らかで、剥離時にレンズ破れも発生しなかった。製造した10枚の厚みは平均0.10mm、標準偏差0.01mmでばらつきは無かった。
【0031】
比較例1
出光化学株式会社製のJ−2021GR(通常のポリプロピレン)で0.5mm厚みでの356nmにおける光透過率が5%である樹脂型を準備した。コンタクトレンズ用原料は、メチルメタクリレートとメチルアクリレートの共重合体20重量%、N−ビニルピロリドン20重量%、ジメチルスルホオキシド60重量%、補助剤にトリアリルイソシアヌラート0.4重量部、2,4,6−ターシャリーブチルフェノール0.05重量部、ダロキュア1173を1.0重量部をよく混合し、この混合物を脱気、アルゴン置換を行ったものを使用した。この混合物を前記の樹脂型に充填し、雄型と雌型に鉄製の治具を用いて1,000gの荷重をかけて固定し、窒素雰囲気に保たれたグローボックス内で補虫灯を用いて1(mW/cm2)の光を12分間照射し、得られたコンタクトレンズを超音波をかけながらイソプロピルアルコールで膨潤させて離型し、純水洗浄した後、100℃、10時間煮沸して重合を完結させた。
【0032】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは、エッジ部にバリが発生し、かつレンズ面には皺が発生した。剥離時には10枚中6枚にレンズ破れが発生し、10枚の厚みは平均0.15mm、標準偏差0.04mmとばらつきが確認された。
【0033】
比較例2
比較例1と同様のポリプロピレンに2.5重量%のグリセリンモノステアリン酸を含ませた、0.5mm厚みでの356nmにおける光透過率が10%である樹脂型を準備した。コンタクトレンズ用原料は、メチルメタクリレートとメチルアクリレートの共重合体20重量%、N−ビニルピロリドン20重量%、ジメチルスルホキシド60重量%、補助剤にトリアリルイソシアヌラート0.4重量部、2,4,6−ターシャリーブチルフェノール0.05重量部、ダロキュア1173を1.0重量部をよく混合し、この混合物を脱気、アルゴン置換を行ったものを使用した。この混合物を前記の樹脂型に充填し、雄型と雌型を接着剤で固定せずに合わせた状態で、窒素雰囲気に保たれたグローボックス内で補虫灯を用いて1(mW/cm2)の光を12分間照射し、得られたコンタクトレンズを超音波をかけながらイソプロピルアルコールで膨潤させて離型し、純水洗浄した後、100℃、10時間煮沸して重合を完結させた。
【0034】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは、エッジ部にバリが発生し、かつレンズ面には皺が発生した。剥離時にレンズ破れは発生しなかったが、製造した10枚の厚みは平均0.14mm、標準偏差0.05mmとばらつきが確認された。
【0035】
【発明の効果】
本発明によるコンタクトレンズ製造用の樹脂型およびそれを用いたコンタクトレンズの製造方法は、樹脂型の雄型と雌型の接触面を接着剤にて固定し、重合することで、光学性に優れ、角膜に損傷を与えることのない滑らかなエッジ及び表面を有する高品質のコンタクトレンズを、低コストで製造することができる。さらには、アルコールやアミンを持つ脂肪酸エステルが5%以下含有した透明度の高い変性ポリオレフィンモールドを用いて、重合を行うことにより、コンタクトレンズ型からのコンタクトレンズの離型性を良くすることが可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学性に優れ、角膜に損傷を与えることのない滑らかなエッジ及び表面を有する高品質のコンタクトレンズを、低コストで製造するために用いられるコンタクトレンズの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンタクトレンズの製造方法は大きく分類して3種類あり、レースカット法(切削研磨法)、モールド法、スピンキャスト法(遠心注型法)のいずれかの製造方法が主に用いられる。レースカット法は、現在コンタクトレンズの製造に最も一般的に用いられている方法であり、ボタン状のコンタクトレンズ材料を旋盤によって切り出し、切削、研磨を行ってコンタクトレンズを製造する方法である。この方法はBC(ベースカーブ:コンタクトレンズが角膜に接する面、あるいはその面の曲率半径)等形状の異なった多品種のコンタクトレンズを製造するのには適した方法であるが、コストが高いという問題点がある。現在、ハードコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズの多くがこの方法を用いて製造されている。
【0003】
これに対してモールド法とスピンキャスト法は、大半がソフトコンタクトレンズの製造に用いられている方法であり、レンズ形状の空間を有する成形型にコンタクトレンズ用原料を充填して重合させ、コンタクトレンズを製造する方法である。この方法の欠点は、形状の異なった多品種のコンタクトレンズをフレキシブルに製造する場合に不利になるということであるが、ソフトコンタクトレンズの場合には、BCの種類が少なく必要とされる型の種類が少ないために、好ましく用いられている。
【0004】
一方、これらの方法の利点は低コストでコンタクトレンズを製造することができることだが、その精度、具体的には寸法精度や面精度は共に型の精度に大きく左右され、精度の良い型を使用すれば品質の良いコンタクトレンズを製造することが可能である。但し、スピンキャスト法はコンタクトレンズ用原料の粘度、表面張力、量、回転数等の多くの因子を制御する必要があり、適用可能なレンズ材料も特定のものに限定されてしまう。又、この方法によって得られるコンタクトレンズは球面精度が悪く、十分な光学性能が得られない場合もある。
【0005】
近年、ソフトコンタクトレンズはその装用感の良さから、従来のハードコンタクトレンズを装用できなかった人々に多く使用されている。ソフトコンタクトレンズの特徴として、レンズ自体が柔軟で角膜形状に沿って装着されるため、ハードコンタクトレンズのように非常に沢山のBCの種類を必要としない。そのため、品質のバラツキの少ないコンタクトレンズを製造するためにはモールド法が好適であると考えられている。別な要因であるが、シリコンラバーや長鎖アルキルメタクリレートのような非含水ソフトコンタクトレンズのように、柔軟な材料はレースカット法では加工できないため、一般的にはモールド法により製造されている。
【0006】
このモールド法によるコンタクトレンズの製造方法における最も大きな課題の1つして、重合時の雄型と雌型の固定が必要という点が挙げられる。雄型と雌型を組み合わせて重合する際、押さえ込んで重合しなければ成形されるコンタクトレンズの厚みが不安定になる。しかしながら光重合の場合、押さえ込んで重合を行うと、押さえ込み用の治具が邪魔になり、光を雄型と雌型の間に注入されたコンタクトレンズ用原料まで届けることが出来なかった。熱重合においても、押さえ込み用の治具が熱の伝導を妨げると共に、コンタクトレンズ表面への面荒れを発生させた。又、荷重をかけた状態で長時間放置すると、雄型と雌型によってコンタクトレンズが成型される空間の周辺部分(エッジ部分)が潰れやすく、このため、レンズ周辺部にバリが発生して余計な加工を必要としたり、あるいは、品質低下につながっていた。係る課題を解決するため、荷重をかけ、コンタクトレンズモノマーの早期硬化を行って、その後、荷重を取り除いて重合を行う技術が知られている(特許文献1)。しかし、この方法を実施するには大がかりな設備を必要とし、安価に製造することが困難であった。
【0007】
2つ目の課題としては、重合方法との関係が挙げられる。例えば、熱によって重合させ、コンタクトレンズを成型する場合、それに使用する型はある程度の耐熱性を有するものでなくてはならない。一般的にコンタクトレンズ型の材質としては、主にPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等のポリオレフィン、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリアセタール、ポリ四フッ化エチレン、ポリアミド等、射出成形可能な合成樹脂が広く使用されているが、熱重合を行えば、コンタクトレンズ型のゆがみが生じるため、熱重合で精度の高いコンタクトレンズを得ることは困難とされている。一方、コンタクトレンズ用原料を光線によって重合する場合は、精度の高いコンタクトレンズを得ることができるが、使用する型は重合に必要な波長の光線を充分に透過するものでなければならなかった。
【0008】
3つ目の課題として、コンタクトレンズ用樹脂型とコンタクトレンズ用材料との密着性が大きな問題である。例えばコンタクトレンズ用樹脂型の材質とコンタクトレンズ用材料の密着性が大きすぎる場合、コンタクトレンズ用原料を重合した後、離型ができなくなってしまうという問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開平8−174699号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、モールド法によるコンタクトレンズの製造においては、光学性に優れ、且つバリの少ない品質に優れたコンタクトレンズの製造方法を提供せんとするものである。また、更に好ましく光重合により得る場合に十分な透明性を有し、生産性を高めたコンタクトレンズを製造する方法を提供せんとするものである。そして、離型性の良いコンタクトレンズの製造の為の樹脂型を提供せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、
(1)雄型と雌型の樹脂型を組み合わせて形成された空間に、原料を充填し、重合せしめてコンタクトレンズを製造する方法において、樹脂型の雄型と雌型の接触面を接着剤にて固定した状態で原料の重合を行うことを特徴とするコンタクトレンズの製造方法、
(2)前記の樹脂型は変性ポリオレフィンからなり、該変性ポリオレフィンは厚み0.5mmとした時の波長356nmの光線透過率が10%以上であることを特徴とする前記(1)記載のコンタクトレンズの製造方法、
(3)変性ポリオレフィンと樹脂型の重量に対して5重量%以下の水酸基若しくはアミノ基を有する脂肪酸エステルとが含有されているコンタクトレンズ製造用の樹脂型、である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの例に限定されるわけではない。
【0013】
本発明の製造方法は雄型と雌型の樹脂型の接着面を接着剤で固定して製造を行うが、この接着剤は少なくとも雄型と雌型をコンタクトレンズ用原料の注入・重合中固定できるものであれば特に制限はないが、密着性が高く、かつ容易に離型できるものであることが好ましい。このような接着剤としては、石油ワックス、ポリエチレンワックス等の溶融ワックス、UV硬化性接着剤、可視光接着剤等の光接着剤、EVA樹脂系ホットメルト接着剤、ポリアミド系ホットメルト接着剤等のホットメルト系接着剤、アクリル系嫌気性接着剤等の嫌気性接着剤が挙げられる。本発明においては水溶性の接着剤が採用することが特に好ましい。係る接着剤を用いることで雄型と雌型の樹脂型を固定し、重合してコンタクトレンズを成形後、樹脂型全体を水中に浸漬することで、接着剤が水に溶解するため雄型と雌型の樹脂型の分離が容易となる。
【0014】
本発明に用いる樹脂型の材質としては、コンタクトレンズの製造に支障がなければ、特に限定されるものではないが、変性ポリオレフィンを用いることが好ましい。現在コンタクトレンズ製造用樹脂型の材質として最も一般的に使用されているといわれているポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンは、一般に安価で、射出成形等で容易に成形ができるとの利点を持つ。しかし、成形時の体積収縮が比較的大きく、精度を出すことが困難であり、また耐熱性が悪いために比較的低温でも変形を生じ易い。更に結晶性が大きいために透明性が不十分である等の欠点も有している。本発明に好適に用い得る変性ポリオレフィンは上記ポリオレフィンの有する問題を改善したもので、その具体例としては、光ディスク等の光学材料分野で用いられるようなポリオレフィンの結晶度を小さくし、非晶性の性質を持たせた変性ポリオレフィンである。この変性ポリオレフィンは非晶性の性質を有することでポリオレフィン本来の耐溶剤性等の性質に加えて、透明性、耐熱性は良好であり、また成形時の体積収縮を抑えることでコンタクトレンズの精度が大幅に改善できる。特に主鎖に脂環を含むポリオレフィンを使用した場合、コンタクトレンズ製造用樹脂型に要求される性質をバランス良く備え、極めて有用である。この様な変性ポリオレフィンとしては、酸処理や熱処理により性質を変化させたポリオレフィンが挙げられる。具体的には三井化学株式会社製のタフマーM、チッソ株式会社製のK5028及びXK4644等が挙げられる。
【0015】
また、本発明に好適に用いられる変性ポリオレフィンは、厚み0.5mmとした時の365nm光線透過率が好ましく10%以上、さらに好ましくは15%以上であることを特徴とする。
【0016】
光線透過率の測定方法について説明すると、ホットプレートで加熱して幅1cm、厚さ0.5mm均一のシートを作製し、高さ4cmに設定した分光光度計(株式会社日立製作所製のU−3200型)に取りつけ、本発明のコンタクトレンズに使用する重合開始剤の吸収波長である、356nmにおける透過率を測定する。
【0017】
本発明に用いられる樹脂型は、離型性を向上させるために、樹脂型には脂肪酸エステルを樹脂型の重量の5重量%以下で含むものが好ましい。含有量として更に好ましくは3%以下である。5%を超えると脂肪酸エステルがコンタクトレンズ成型時の重合を阻害する場合があり、少なすぎると離型が困難となる。脂肪酸エステルとしては水酸基若しくはアミノ基を有するものが好ましい。本発明に好適な脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。特に好ましくは、医療用具であるコンタクトレンズの特性を考えると、医薬品として登録されているグリセリンモノステアリン酸、ポリオキシステアリン酸などが好ましい。
【0018】
次に、本発明によるコンタクトレンズ製造方法について具体的に例を挙げて説明する。重合は通常の重合開始剤の存在下、加熱あるいは紫外線などの活性化エネルギー線の照射によって行われる。雌型の凹状面にコンタクトレンズ用原料を必要量吐出し、雄型と雌型の接触面に接着剤を塗布して重ね合わせて、雄型と雌型を組み合わせて形成された空間に原料を充填する。この際、型の接触面及び側面部接触面が完全に固定されるように注意する。こうして組み立てた型を加熱して熱重合させるか、あるいは紫外線を照射し光重合をさせる。重合したコンタクトレンズは樹脂型のまま超音波をかけながら、イソプロピルアルコールに浸漬して自然に離型させ、純水にて洗浄した後に、100℃、10hrの煮沸をして完結させる。重合方法について、大量生産を考えると光重合を行う方が好ましいが、熱重合を行う場合は、変性ポリオレフィンを用いると耐熱性が向上するが、100℃が限界であるため、100℃以下での重合を行う必要がある。
【0019】
本発明において用いられるコンタクトレンズ原料であるモノマーとしては、単独でも2種以上でも混合して用いることはできる。例えば、n−ブチルアクリレート、メチルメタアクリレート等のアクリル酸エステル、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルメタアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニルラクタム類、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸系、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸系エステル類、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート等のシリコーン化合物などが挙げられる。カルボニル基を含むメタクリル酸等のイオン性モノマーの使用量は1%未満に控え、FDA分類でII類となるN−ビニルピロリドン、メチルメタクリレートからなる非イオン性素材を用いることが好ましい。イオン性ソフトコンタクトレンズは脂質が付着し汚れやすく、アレルギー障害等の眼障害の原因となりやすい。その上、脂質が付着すると酸素透過性が落ち、眼にとっては、良くない。その点、非イオン性ソフトコンタクトレンズは、脂質が付着しにくいため、眼障害の発生率も下がり、レンズの使用開始時と比較しても酸素透過性の低下が小さい。
【0020】
架橋剤としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアネート等を用いることが可能である。
【0021】
重合開始剤は、熱開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル、光開始剤であるダロキュア1173等を用いることが可能である。
【0022】
【実施例】
以下実施例により、更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
実施例1
チッソ株式会社製のK5028に1.5重量%のグリセリンモノステアリン酸を含ませた、0.5mm厚みでの356nmにおける光透過率が15%である変性ポリプロピレン製の樹脂型を準備した。コンタクトレンズ用原料は、メチルメタクリレートとメチルアクリレートの共重合体20重量%、N−ビニルピロリドン20重量%、ジメチルスルホオキシド60重量%、補助剤にトリアリルイソシアヌラート0.4重量部、2,4,6−ターシャリーブチルフェノール0.05重量部、アゾビスジメチルバレロニトリルを0.3重量部をよく混合し、この混合物を脱気、アルゴン置換を行ったものを使用した。この混合物を前記の樹脂型に充填し、雄型と雌型の接触面を60℃で溶融した水溶性ワックス(日化精工株式会社製アクアワックス80)で固定し、オーブン中で70℃で60分、82℃で20分、100℃で5分加熱し、得られたコンタクトレンズを超音波をかけながらイソプロピルアルコールで膨潤させて離型し、純水洗浄した後、100℃、10時間煮沸をして重合を完結させた。
【0024】
こうして得られたソフトコンタクトレンズのエッジ及び表面は滑らかで、剥離時にレンズ破れも発生しなかった。製造した10枚の厚みは平均0.10mm、標準偏差0.00mmでばらつきは無かった。
【0025】
実施例2
チッソ株式会社製のK5028に2.5重量%のグリセリンモノステアリン酸を含ませた、0.5mm厚みでの356nmにおける光透過率が20%である変性ポリプロピレン製の樹脂型を準備した。コンタクトレンズ用原料は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート99.6重量%、補助剤にエチレングリコールジメタクリレート0.1重量%、アゾビスイソブチロニトリル0.3重量%をよく混合し、この混合物を脱気、アルゴン置換を行ったものを使用した。この混合物を前記の樹脂型に充填し、雄型と雌型の接触面に水溶性のUV硬化性接着剤(ヘンケルジャパン株式会社製UV−7000)を塗布して10秒間紫外光を照射後、オーブン中で70℃で60分、82℃で20分、100℃で5分加熱して重合し、得られたコンタクトレンズを超音波をかけながらイソプロピルアルコールで膨潤させて離型し、純水洗浄した後、100℃、10時間煮沸をして重合を完結させた。
【0026】
こうして得られたソフトコンタクトレンズのエッジ及び表面は滑らかで、剥離時にレンズ破れも発生しなかった。製造した10枚の厚みは平均0.10mm、標準偏差0.01mmでばらつきは無かった。
【0027】
実施例3
チッソ株式会社製のK5028に1.5重量%のグリセリンモノステアリン酸を含ませた、0.5mm厚みでの356nmにおける光透過率が15%である変性ポリプロピレン製の樹脂型を準備した。コンタクトレンズ用原料は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート70重量%、N−ビニルピロリドン30重量%、アクリル酸2重量%、補助剤にエチレングリコールジメタクリレート1.5重量部、トリアリルイソシアネート0.5重量部をよく混合し、この混合物を脱気、アルゴン置換を行ったものを使用した。この混合物を前記の樹脂型に充填し、雄型と雌型の接触面を60℃で溶融した水溶性ワックス(日化精工株式会社製アクアワックス80)で固定し、窒素雰囲気に保たれたグローボックス内で補虫灯を用いて1(mW/cm2)の光を12分間照射し、得られたコンタクトレンズを超音波をかけながらイソプロピルアルコールで膨潤させて離型し、純水洗浄した後、100℃、10時間煮沸をして重合を完結させた。
【0028】
こうして得られたソフトコンタクトレンズのエッジ及び表面は滑らかで、剥離時にレンズ破れも発生しなかった。製造した10枚の厚みは平均0.10mm、標準偏差0.00mmでばらつきは無かった。
【0029】
実施例4
チッソ株式会社製のK5028に2.5重量%のグリセリンモノステアリン酸を含ませた、0.5mm厚みでの356nmにおける光透過率が20%である変性ポリプロピレン製の樹脂型を準備した。コンタクトレンズ用原料は、メチルメタクリレートとメチルアクリレートの共重合体20重量%、N−ビニルピロリドン20重量%、ジメチルスルホオキシド60重量%、補助剤にトリアリルイソシアヌラート0.4重量部、2,4,6−ターシャリーブチルフェノール0.05重量部、ダロキュア1173を1.0重量部をよく混合し、この混合物を脱気、アルゴン置換を行ったものを使用した。この混合物を前記の樹脂型に充填し、雄型と雌型の接触面に水溶性のUV硬化性接着剤(ヘンケルジャパン株式会社製UV−7000)を塗布して10秒間紫外光を照射後、窒素雰囲気に保たれたグローボックス内で補虫灯を用いて1(mW/cm2)の光を12分間照射し、得られたコンタクトレンズを超音波をかけながらイソプロピルアルコールで膨潤させて離型し、純水洗浄した後、100℃、10時間煮沸して重合を完結させた。
【0030】
こうして得られたソフトコンタクトレンズのエッジ及び表面は滑らかで、剥離時にレンズ破れも発生しなかった。製造した10枚の厚みは平均0.10mm、標準偏差0.01mmでばらつきは無かった。
【0031】
比較例1
出光化学株式会社製のJ−2021GR(通常のポリプロピレン)で0.5mm厚みでの356nmにおける光透過率が5%である樹脂型を準備した。コンタクトレンズ用原料は、メチルメタクリレートとメチルアクリレートの共重合体20重量%、N−ビニルピロリドン20重量%、ジメチルスルホオキシド60重量%、補助剤にトリアリルイソシアヌラート0.4重量部、2,4,6−ターシャリーブチルフェノール0.05重量部、ダロキュア1173を1.0重量部をよく混合し、この混合物を脱気、アルゴン置換を行ったものを使用した。この混合物を前記の樹脂型に充填し、雄型と雌型に鉄製の治具を用いて1,000gの荷重をかけて固定し、窒素雰囲気に保たれたグローボックス内で補虫灯を用いて1(mW/cm2)の光を12分間照射し、得られたコンタクトレンズを超音波をかけながらイソプロピルアルコールで膨潤させて離型し、純水洗浄した後、100℃、10時間煮沸して重合を完結させた。
【0032】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは、エッジ部にバリが発生し、かつレンズ面には皺が発生した。剥離時には10枚中6枚にレンズ破れが発生し、10枚の厚みは平均0.15mm、標準偏差0.04mmとばらつきが確認された。
【0033】
比較例2
比較例1と同様のポリプロピレンに2.5重量%のグリセリンモノステアリン酸を含ませた、0.5mm厚みでの356nmにおける光透過率が10%である樹脂型を準備した。コンタクトレンズ用原料は、メチルメタクリレートとメチルアクリレートの共重合体20重量%、N−ビニルピロリドン20重量%、ジメチルスルホキシド60重量%、補助剤にトリアリルイソシアヌラート0.4重量部、2,4,6−ターシャリーブチルフェノール0.05重量部、ダロキュア1173を1.0重量部をよく混合し、この混合物を脱気、アルゴン置換を行ったものを使用した。この混合物を前記の樹脂型に充填し、雄型と雌型を接着剤で固定せずに合わせた状態で、窒素雰囲気に保たれたグローボックス内で補虫灯を用いて1(mW/cm2)の光を12分間照射し、得られたコンタクトレンズを超音波をかけながらイソプロピルアルコールで膨潤させて離型し、純水洗浄した後、100℃、10時間煮沸して重合を完結させた。
【0034】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは、エッジ部にバリが発生し、かつレンズ面には皺が発生した。剥離時にレンズ破れは発生しなかったが、製造した10枚の厚みは平均0.14mm、標準偏差0.05mmとばらつきが確認された。
【0035】
【発明の効果】
本発明によるコンタクトレンズ製造用の樹脂型およびそれを用いたコンタクトレンズの製造方法は、樹脂型の雄型と雌型の接触面を接着剤にて固定し、重合することで、光学性に優れ、角膜に損傷を与えることのない滑らかなエッジ及び表面を有する高品質のコンタクトレンズを、低コストで製造することができる。さらには、アルコールやアミンを持つ脂肪酸エステルが5%以下含有した透明度の高い変性ポリオレフィンモールドを用いて、重合を行うことにより、コンタクトレンズ型からのコンタクトレンズの離型性を良くすることが可能となる。
Claims (3)
- 雄型と雌型の樹脂型を組み合わせて形成された空間に、原料を充填し、重合せしめてコンタクトレンズを製造する方法において、樹脂型の雄型と雌型の接触面を接着剤にて固定した状態で原料の重合を行うことを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。
- 前記の樹脂型は変性ポリオレフィンからなり、該変成ポリオレフィンは厚み0.5mmとした時の波長356nmの光線透過率が10%以上であることを特徴とする請求項1記載のコンタクトレンズの製造方法。
- 変性ポリオレフィンと樹脂型の重量に対して5重量%以下の水酸基若しくはアミノ基を有する脂肪酸エステルとが含有されているコンタクトレンズ製造用の樹脂型。
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