JP3726268B2 - コンタクトレンズの製造方法およびそれに用いられる樹脂型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学性に優れ角膜に損傷を与えることのない滑らかな表面およびエッジを有する高品質なコンタクトレンズを、低コストにて製造することが可能な製造方法と、それに用いられる樹脂型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンタクトレンズは視力矯正器具であると同時に医療器具であるため、その要求品質としてはコンタクトレンズ素材の安全性はもちろんのこと、デザインや加工精度等も重要な要素の1つに挙げられる。したがって、コンタクトレンズの製造には高度な精密加工技術を要するが、現在実施されている主な製造方法としては大きく分けて3種類挙げることができ、レースカット法(切削研磨法)、モールド法(注型法)、スピンキャスト法(遠心注型法)のいずれかの方法がとられている。レースカット法はコンタクトレンズの製造方法として最も一般的に行われている方法であり、棒状またはボタン状のコンタクトレンズ材料を旋盤によって切り出し、切削、研磨を行ってコンタクトレンズを製造する方法である。この方法はBC(ベースカーブ:コンタクトレンズが角膜に接する面、あるいはその面の曲率)等スペックの異なる多品種のコンタクトレンズをフレキシブルに製造するには適しているが、工程数が多く複雑なため製造コストが高くなる問題がある。さらに、近年連続装用可能なコンタクトレンズへの要求が高まる中、酸素透過性と装用感を向上させる目的でレンズの薄型化が進んでいるが、この薄型レンズの製造にレースカット法が適しているとは言えない。しかしながら、現在ハードコンタクトレンズのほとんどはレースカット法によって製造されており、ソフトコンタクトレンズについても多くのメーカーがレースカット法を採用している。
【0003】
これに対してモールド法とスピンキャスト法は、ほとんどがソフトコンタクトレンズの製造に用いられている方法である。モールド法はレンズ形状の空間を有する成形型に重合性モノマーを充填し、これを重合してコンタクトレンズを製造する方法であり、スピンキャスト法は重合性モノマーを回転する型の中に流し込み遠心力で原料である重合性モノマーが薄く広がるのを利用してコンタクトレンズを製造する方法である。これらの方法の欠点は、スペックの異なる多品種のコンタクトレンズをフレキシブルに製造する場合に不利になることであり、スペックの多いハードコンタクトレンズの場合には適用が難しいが、ソフトコンタクトレンズの場合BCの種類等スペックが少ないため、これらの方法が適用可能となる。一方、これらの方法の利点は低コストでコンタクトレンズが製造できることであるが、その精度、具体的には寸法精度や面精度はともに型の精度に大きく左右され、精度の良い型を使用すれば高品質なコンタクトレンズを製造することが可能である。但し、スピンキャスト法は重合性モノマーの粘度、表面張力、量、回転数等の多くの因子を制御する必要があり、適用可能なレンズ材料も特定のものに限定されてしまう。また、スピンキャスト法によって製造されたコンタクトレンズは非球面であり十分な光学性能が得られない特徴もある。
【0004】
ソフトコンタクトレンズは、柔軟で装用感が良いためハードコンタクトレンズを装用できない人々に広く使用されてきたが、破損し易く製品寿命が短いなどの理由で、ハードコンタクトレンズに比べるとそのシェアは低かった。しかし、近年タンパク質分解酵素を使用したクリーナーの実用化やコールド滅菌に代表される滅菌システムの進歩によって、ソフトコンタクトレンズ装用者が増加し、ハードコンタクトレンズのシェアに迫る勢いで普及してきている。さらに、ディスポーザブルソフトコンタクトレンズの普及も、ソフトコンタクトレンズのシェアの拡大を後押ししている。このような状況の中、とりわけソフトコンタクトレンズについて、高品質なレンズを低コストで製造する技術が研究者あるいは技術者達の手によってさまざまに行われてきている。ソフトコンタクトレンズの特徴は、上述の通りレンズ自体が柔軟で角膜形状に沿って装着されるため、ハードコンタクトレンズに比べるとBCの種類等スペックが少ないことである。そのため、低コストで品質のばらつきの少ないソフトコンタクトレンズを製造するためにはモールド法が好適であると考えられているが、それでも装用者の度数に応じたスペックの数だけ型の種類が必要になること、さらにはエッジ部形状の品質に限界があること等の問題がある。
【0005】
このモールド法の問題点を解決する有効な手段として、品質のばらつきの少ないコンタクトレンズを低コストにて製造可能なモールド法と、スペックの異なる多品種のコンタクトレンズをフレキシブルに製造できるレースカット法を組み合わせた方法が提案されている。半完成レンズ(ブランク)をモールド法によって製造するという意味で、この方法を本明細書中ではブランクモールド法と呼ぶことにする。ブランクモールド法は、BC面をモールド法によって形成し、FC(フロントカーブ:コンタクトレンズが角膜に接触する面の反対側の面、あるいはその面の曲率)面をレースカット法で任意の曲率に切削加工して形成するために、度数や中心厚を自由に設定することができる。
【0006】
ブランクモールド法を利用したコンタクトレンズの製造方法としては、例えば(1)特開昭60−73836号公報には、雄型と雌型の両型間のモノマー液を容器状型の凹面形成用凸面側から重合してレンズ素材に成形し、凹面側が成形されたレンズ素材が両型間に入っているままの状態で、レンズ素材の凸面を型と一緒に機械加工する方法が、また(2)特開平1−92719号公報には、それぞれが完成されたコンタクトレンズの裏面および表面に近似するものとされた一対の対向曲面を有する未加工プラスチックレンズ体を成形し、その一対の対向曲面を機械加工して、凹面とされた裏面と凸面とされた表面を有するものとして製造される方法が、さらに(3)特公平4−11085号公報には、コンタクトレンズの光学部の片側の光学面以外の全ての面を形成する成形凹部を形成した成形型と、この成形型の成形凹部の開口を覆う蓋型の間に原料の樹脂液を入れ、両型間の樹脂液を重合してレンズ素材に成形し、片側の光学面以外の全ての面が成形されたレンズ素材を機械加工して片側の光学面を形成する方法が開示されてる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
コンタクトレンズをブランクモールド法によって製造する最大の利点は、スペックの異なる多品種のコンタクトレンズを、フレキシブルに、しかも低コストで製造できることである。近年ソフトコンタクトレンズのシェアが大幅に拡大している中、従来の製造コストを大幅に引き下げることが要求されているが、コンタクトレンズが直接角膜に触れる医療器具である以上品質を低下させるわけにはいかない。
【0008】
本発明は、ブランクモールド法におけるエッジ形成の方法を改善するものであって、コンタクトレンズ、とりわけソフトコンタクトレンズの製造への適用を目指したものである。そこで、先の公知技術の問題点と本発明にて解決しようとする課題について述べる。
【0009】
前記(1)の方法は、雄型と雌型の両型間のモノマー液を容器状型の凹面形成用凸面側から重合してレンズ素材に成形し、凹面側が成形されたレンズ素材が両型間に入っているままの状態でレンズ素材の凸面を型と一緒に機械加工するため、
レンズ素材の固定が十分であり、レンズ素材の凸面が所望の通り加工される。しかしながら、この方法ではレンズのエッジ部がシャープな形状となり、特にBC側のエッジ部は型と密着しているため、滑らかな形状にならない。また前記(2)の方法は、それぞれが完成されたコンタクトレンズの裏面および表面に近似するものとされた一対の対向曲面を有する未加工プラスチックレンズ体を成形し、その一対の対向曲面を機械加工して、凹面とされた裏面と凸面とされた表面を有するものとして製造されるため、従来の方法に比べて必要なモノマー原料が節約でき、さらに切削加工に要する時間が短縮できる。しかしながら、本技術も先の例と同様にBC側のエッジ部が型と密着しているため、エッジ部がシャープな形状となり滑らかな形状にならない。さらに前記(3)の方法は、コンタクトレンズの光学部の片側の光学面以外の全ての面を形成する成形凹部を形成した成形型と、この成形型の成形凹部の開口を覆う蓋型の間に原料の樹脂液を入れ、両型間の樹脂液を重合してレンズ素材に成形し、片側の光学面以外の全ての面が成形されたレンズ素材を機械加工して片側の光学面を形成する方法であり、滑らかな丸みを帯びたエッジ形状を形成することが可能である。しかしながら、コンタクトレンズのエッジ部の厚みは通常0.03〜0.25mm程度と非常に薄いため、コンタクトレンズのエッジ形状全てを形成したエッジ部を有する樹脂型を作製するためには高度な技術を必要とし、それに伴う費用も大きくなるためコストアップにつながる。
【0010】
以上、ブランクモールド法を用いたコンタクトレンズの製造方法およびそれに用いる成形型における従来の技術とその問題点について述べてきたが、コンタクトレンズとして眼に与える負担を最小限に抑えるような滑らかなエッジ形状を有するレンズを、低コストにて製造する技術はいまだ十分であるとは言えない。特にコンタクトレンズが医療器具であってその精度が厳しく要求される中で、本発明は、光学性に優れ角膜に損傷を与えることのない滑らかな表面およびエッジを有する高品質なコンタクトレンズを、低コストにて製造することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明のコンタクトレンズの製造方法は、雄型と雌型を組み合わせた際に形成される半完成レンズ形状となる空間に重合性モノマーを充填し、これを加熱あるいは光照射することによって重合した後、両型が合致したままの状態であるいは雌型を取り外した状態で、半完成レンズの密着している雄型をレンズ切削用旋盤に取り付け、レンズのFC側を切削加工してコンタクトレンズを製造する方法において、雄型のレンズ外周規定部にコンタクトレンズのエッジ形状を形成するエッジRを付設した樹脂型を使用し、BC側のエッジ部は雄型に付設したエッジRの転写によって形成し、FC側のエッジ部は旋盤による切削加工によって形成することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のコンタクトレンズの製造に用いられる樹脂型は、雄型のレンズ外周規定部にコンタクトレンズのエッジ形状を形成するエッジRを付設したことを特徴とするものである。さらには、雄型のレンズ外周規定部に付設したエッジRが、R部から型の底面に対して鉛直方向に延びていることを特徴とするものである。ここでエッジRあるいはR部のRとは、コンタクトレンズのエッジ部に形成した曲面形状を示すものである。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。第一に、本発明のコンタクトレンズの製造に用いられる樹脂型について述べる。本樹脂型は、コンタクトレンズのBC面とエッジの一部を樹脂型の転写によって形成したブランクを製造するために使用する型であって、レンズのFC面およびFC側のエッジ部は、ブランクを製造した後レースカット法による切削研磨加工にて形成する。
【0014】
本発明に使用する樹脂型を、図面(図1〜図4)にて説明する。図1は本発明に使用するコンタクトレンズ製造用樹脂型の雄型の断面図、図2は雌型の断面図であり、図3は雄型と雌型の結合状態を示す組立断面図である。また、図4はコンタクトレンズ形状に成形したときにBC側のエッジ部を形成する雄型のレンズ外周規定部を拡大したレンズ外周規定部拡大断面図である。
【0015】
本コンタクトレンズ製造用樹脂型の雄型は、図1に示されるようにコンタクトレンズ形状に成形したときにBCを形成する凸状のBC光学面1、重合性モノマーを充填してから型を組み合わせるとき接触する型の接触面2、重合した後レンズ切削用旋盤に取り付けるときのアタッチメント3から構成される。コンタクトレンズ形状に成形したときにBCを形成する凸状のBC光学面1は十分に滑らかな鏡面に加工されている。またこの雄型には、図4に示されるように、BC光学面のレンズ外周規定部に、コンタクトレンズのエッジ形状を形成するエッジRが付設されている。ここでレンズ外周規定部とは、ソフトコンタクトレンズが含水したときに目的のレンズサイズ(直径)になるように、膨潤率から求めたドライ状態でのコンタクトレンズの最外周を示している。レンズ外周規定部に付設されたエッジRの形状は、コンタクトレンズのデザインにより異なるが、コンタクトレンズのエッジ部を、エッジの頂点を結んだ線上にあたる最外周を基準にBC側エッジ部とFC側エッジ部に分けたとき、少なくともBC側エッジ部は、所望のエッジ部のデザインと同一のR形状が形成されている。
【0016】
一方、雌型は図2に示されるように重合、切削加工した後にコンタクトレンズのFCを形成する凹状のFC形成面4、重合性モノマーを充填してから型を組み合わせるとき接触する型の接触面5、FC面とBC面の位置のズレを防ぐ型の側面部接触面6から構成される。
【0017】
これらの雄型と雌型を合致して組み立てると、図3に示されるようにFC形成面とBC光学面の間にレンズ形状を成す空間(キャビティー)7が形成され、そのキャビティー内に重合性モノマーを充填してこれを重合した後、両型が合致したままの状態であるいは雌型を取り外した状態で雄型をアタッチメントを介してレンズ切削用旋盤に取り付け、レンズのFC側を切削加工するとともにFC側エッジ部を形成してコンタクトレンズを得るのである。
【0018】
この際のキャビティーの厚さについてであるが、2種以上の重合性モノマーを共重合してコンタクトレンズを製造する場合に生じる重合歪と密接な関係がある。つまりコンタクトレンズの重合において、共重合の不均一性に由来する重合歪がしばしば問題とされるが、この現象はレースカット法によって製造する場合のバー材あるいはボタンのみでなくモールド法によって製造する場合にも同様に生じることがある。これは、モールド法によって2種以上の重合性モノマーを共重合してコンタクトレンズを製造する場合、レンズの厚さが極めて薄いため、重合による連鎖反応が均等に進まず重合歪が生じると考えられる。さらに、重合の過程で酸素が重合を阻害する物質として作用するが、キャビティーの厚さが十分ないと酸素の影響を受けやすくなるため、重合が不均一となりこれも重合歪の一因と考えられる。そこで本発明では、キャビティーの厚さをある程度以上に設定することで、重合歪の発生を抑えている。具体的なキャビティーの厚さは、使用する重合性モノマーの種類、重合条件によって異なるが、おおむね0.3mm以上であれば良い。さらに好ましくは0.5mm以上であり、キャビティーの厚さを大きくするにしたがって重合の均一性は向上すると考えられるが、必要以上に大きくすると重合性モノマーを大量に消費するだけでなく、切削加工する部分が大きくなることによってコストアップにつながるため、0.5〜1.0mmの範囲で適当に設定することが望ましい。
【0019】
続いて、本コンタクトレンズ製造用樹脂型の雄型のレンズ外周規定部に付設するエッジRについて説明する。ここで、図5はエッジR部を拡大したレンズ外周規定部拡大断面図であり、(A)、(B)および(C)はR部形状の一例を示している。(A)のR部形状は、エッジRが所望のエッジデザインと同一形状となるように雄型上に形成したBC側エッジ部のR部から、型の底面に対して鉛直方向にコンタクトレンズのエッジ厚の約二倍程の高さまで延びている例である。(B)のR部形状は、BC側エッジ部のR部からBC光学面に対して法線方向に延びており、(C)のR部形状は、型の底面に対して水平方向に延びている例である。これらのエッジRの形状は、いずれも型の底面に対して鉛直方向より外側に延びており、この形状は樹脂型を射出成形によって製造する際に使用する金型を作製し易い形状となっている。仮にエッジRの形状が型の底面に対して鉛直方向より内側に延びているとすると、金型加工のために複雑な工程と、極めて高度な技術を要するだけでなく、射出成形時樹脂型を金型から離型する際にエッジRの形状が変形する恐れがあるため好ましくない。
【0020】
これらのエッジRを付設した雄型と雌型を組み立て、雄型と雌型の間に形成されたキャビティーに重合性モノマーを充填した後、これを加熱あるいは光照射することによって重合すると、雄型に密着したブランクが得られる。図6はブランク8が密着している雄型のエッジR部を拡大したレンズ外周規定部拡大断面図であり、(D)、(E)および(F)は、それぞれ図5に示した(A)、(B)および(C)に対応している。
【0021】
こうして得られたブランクの密着した雄型をレンズ切削用旋盤に取り付け、所望の度数、中心厚に応じてレンズのFC側を切削加工し、ドライ状態のコンタクトレンズを得るのである。この際コンタクトレンズのFC側エッジ部は、切削のみあるいは切削および研磨による機械加工を施して形成する。図7は機械加工を施した後の雄型のエッジR部を拡大したレンズ外周規定部拡大断面図であり、(G)、(H)および(I)は、それぞれ図5に示した(A)、(B)および(C)に対応している。太線で示したのが加工後のコンタクトレンズエッジ部の形状であり、点線で示したのが切削加工前の雄型のレンズ外周規定部の形状である。
【0022】
次に、本コンタクトレンズ製造用樹脂型に使用する材料について述べる。本発明のコンタクトレンズの製造方法は、先述のように熱硬化あるいは光硬化によって行われるため、それに使用する樹脂材料としては、熱硬化によって製造する場合はある程度の耐熱性を有するものでなくてはならず、光硬化によって製造する場合は、硬化に必要な光線を十分透過するものでなくてはならない。特に熱硬化によって製造する場合には、一般的に重合性モノマーの熱硬化に使用される温度範囲である20〜100℃において、コンタクトレンズに要求される十分な寸法精度および面精度を維持していなければならない。さらに、一般的に熱硬化によるコンタクトレンズの製造では、アニールとして100℃以上の加熱が行われる場合があり、このアニールの目的は共重合体の均一性の向上と共重合体内に残存する可能性のある活性点を除去するためであるが、本樹脂型はこのアニール温度にて熱変形するものであってはならない。
【0023】
一方で、本発明のコンタクトレンズの製造方法がブランクモールド法であるため、BC面をモールド法によって形成した後、FC面をレンズ切削用旋盤にて切削加工する必要がある。さらに、コンタクトレンズの装用感を左右するエッジ部を滑らかな曲線形状に加工するためには、旋盤のバイトの刃を樹脂型まで切り込ませて加工する必要がある。そこで、本樹脂型には旋盤による切削加工が可能な樹脂を選択しなければならない。
【0024】
したがって、本発明の樹脂型材料としては熱可塑性樹脂を使用し、これを射出成形法、射出圧縮成形法あるいは圧縮成形法等の通常樹脂材料の成形に用いられている方法を適用することによって、精度の高い樹脂型を低コストで製造することができる。また、この樹脂型を使い捨てにすることで型の洗浄工程が省け、極めて生産性高くコンタクトレンズを製造することが可能である。本樹脂型に使用可能な材質として具体的には、一般的に耐熱性が良好で切削加工可能な樹脂であるポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリエステル、ポリスルフォン、非晶質ポリオレフィン等を挙げることができ、これらの中から使用する重合性モノマーの種類、重合あるいはアニール温度、切削条件、レンズ材料との密着性等を考慮して選択する。特に、エチレン−ビニルアルコール共重合体は一般的にコンタクトレンズ原料として使用される(メタ)アクリル酸エステルに対して浸食を受けにくく、非常に広範囲のコンタクトレンズ原料に使用可能なため好適な材料と言える。
【0025】
次に、本発明によるコンタクトレンズの重合方法について述べる。本発明の重合は、通常の重合開始剤の存在下、加熱あるいは紫外線などの活性エネルギー線の照射によって行われる。雌型の凹状面に重合性モノマーを必要量吐出し、これに雄型の凸状面が先の凹状面に合致するように重ね合わせる。この際、型の接触面および側面部接触面が完全に接触するよう注意する。こうして組み立てた型を温水重合槽または熱風循環式大気炉にて加熱して熱重合をさせるか、あるいは紫外線を照射して光重合をさせることが好ましい。
【0026】
本発明に適用可能な重合性モノマーとは、一般的に用いられるラジカル重合可能な化合物であり、ビニル基、アリル基、アクリル基、またはメタクリル基を分子中に1個以上含む化合物で、通常ハードコンタクトレンズまたはソフトコンタクトレンズ材料として使用されている物質である。具体的には、アルキル(メタ)アクリレート、シロキサニル(メタ)アクリレート、フルオロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、ビニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレンの誘導体、N−ビニルラクタム、(多価)カルボン酸ビニル等のビニル化合物等が挙げられる。さらに具体的には例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、フマル酸およびそれらのエステル類、メタクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0027】
さらに架橋剤として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンジアリルフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の多官能モノマーを用いることもできる。
【0028】
これらの使用する重合性モノマーの特性、つまり粘度、体積収縮率、重合速度等を考慮して、これに適した重合方法、重合開始剤の種類、添加量等を選択して行う必要がある。
【0029】
【作用】
本発明によるコンタクトレンズの製造方法およびそれに用いられる樹脂型は、雄型のレンズ外周規定部にコンタクトレンズのエッジ形状を形成するエッジRを付設した樹脂型を使用し、ベースカーブ側のエッジ部は雄型に付設したエッジRの転写によって形成し、フロントカーブ側のエッジ部は旋盤による切削加工によって形成するため、光学性に優れ角膜に損傷を与えることのない滑らかな表面およびエッジを有する高品質なコンタクトレンズを、低コストにて製造することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下実施例により、更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
本実施例においては図1に示す雄型を使用し、その材質としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名ソアライトM:日本合成化学工業(株)製)を選択した。BC光学面の曲率は7.21mmとし、レンズ外周規定部に付設されたエッジRは図5(A)に示す形状とした。図2に示す雌型は、その材質としてポリプロピレンを選択し、FC形成面の曲率を7.2mmとして射出成形によって製造された樹脂型を使用した。また、この雄型と雌型を組み合わせた際に形成されるキャビティーの厚さは0.5mmとした。コンタクトレンズ原料となる重合性モノマーとしては、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート70重量部、メチルメタクリレート28重量部、エチレングリコールジメタクリレート1重量部、アゾビス(2,4ージメチルバレロニトリル)0.2重量部をよく混合し、この混合物の脱気、窒素置換を行ったものを使用した。この混合物を先の樹脂型に充填し、これを熱風循環式の恒温槽内に投入し、50℃で5時間、80℃で5時間加熱した。さらに、アニールとして雌型を取り外した雄型を熱風循環式のアニール炉内に投入し、125℃で5時間加熱した。この後、ブランクの接着している雄型をレンズ切削用旋盤に取り付け、レンズのFC側を曲率7.70mmにて切削し、FC側表面を研磨した。さらに、レンズの外周規定部が滑らかな曲線形状になるように切削し、エッジ部分を形成した。この際、図7(G)に示すようにレンズ切削用旋盤のバイトを雄型の表面まで切り込ませるようにして行った。得られたコンタクトレンズを純水中で膨潤させ洗浄した後、生理食塩水に浸漬して所定量の吸水をさせると同時に、溶出物の溶出を完結させた。
【0032】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは表面およびエッジ部が滑らかで、コンタクトレンズ表面および内部に空隙はなかった。また、このソフトコンタクトレンズのBCは8.60mmでパワーは−3.00Dを有し、光学性能が非常に優れていた。
【0033】
(実施例2)
本実施例においては図1に示す雄型を使用し、その材質としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名ソアライトM:日本合成化学工業(株)製)を選択した。BC光学面の曲率は6.38mmとし、レンズ外周規定部に付設されたエッジRは図5(A)に示す形状とした。図2に示す雌型は、その材質としてポリプロピレンを選択し、FC形成面の曲率を6.5mmとして射出成形によって製造された樹脂型を使用した。また、この雄型と雌型を組み合わせた際に形成されるキャビティーの厚さは0.5mmとした。コンタクトレンズ原料となる重合性モノマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド58重量部、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート25重量部、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート10重量部、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート5重量部、エチレングリコールジメタクリレート1重量部、t−ブチルパーオキシピバレート0.5重量部をよく混合し、この混合物の脱気、窒素置換を行ったものを使用した。この混合物を先の樹脂型に充填し、これを熱風循環式の恒温槽内に投入し、70℃で5時間加熱した。さらに、アニールとして雌型を取り外した雄型を熱風循環式のアニール炉内に投入し、130℃で5時間加熱した。この後、ブランクが接着している雄型をレンズ切削用旋盤に取り付け、レンズのFC側を曲率6.90mmにて切削し、FC側表面を研磨した。さらに、レンズの外周規定部が滑らかな曲線形状になるように切削し、エッジ部分を形成した。この際、図7(G)に示すようにレンズ切削用旋盤のバイトを雄型の表面まで切り込ませるようにして行った。得られたコンタクトレンズを純水中で膨潤させ洗浄した後、生理食塩水に浸漬して所定量の吸水をさせると同時に、溶出物の溶出を完結させた。
【0034】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは表面およびエッジ部が滑らかで、コンタクトレンズ表面および内部に空隙はなかった。また、このソフトコンタクトレンズのBCは8.60mmでパワーは−3.00Dを有し、光学性能が非常に優れていた。
【0035】
(実施例3)
本実施例においては図1に示す雄型を使用し、その材質としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名ソアライトM:日本合成化学工業(株)製)を選択した。BC光学面の曲率は6.40mmとし、レンズ外周規定部に付設されたエッジRは図5(A)に示す形状とした。図2に示す雌型は、その材質としてポリプロピレンを選択し、FC形成面の曲率を6.5mmとして射出成形によって製造された樹脂型を使用した。また、この雄型と雌型を組み合わせた際に形成されるキャビティーの厚さは0.5mmとした。コンタクトレンズ原料となる重合性モノマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド58重量部、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート25重量部、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート10重量部、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート5重量部、エチレングリコールジメタクリレート1重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド0.2重量部をよく混合し、この混合物の脱気、窒素置換を行ったものを使用した。この混合物を先の樹脂型に充填し、80W/cm高圧水銀ランプを用いて雌型側から距離10cmで600秒間紫外線を照射した。硬化後雄型から雌型を取り外し、ブランクが接着している雄型をレンズ切削用旋盤に取り付け、レンズのFC側を曲率6.92mmにて切削し、FC側表面を研磨した。さらに、レンズの外周規定部が滑らかな曲線形状になるように切削し、エッジ部分を形成した。この際、図7(G)に示すようにレンズ切削用旋盤のバイトを雄型の表面まで切り込ませるようにして行った。得られたコンタクトレンズを純水中で膨潤させ洗浄した後、生理食塩水に浸漬して所定量の吸水をさせると同時に、溶出物の溶出を完結させた。
【0036】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは表面およびエッジ部が滑らかで、コンタクトレンズ表面および内部に空隙はなかった。また、このソフトコンタクトレンズのBCは8.60mmでパワーは−3.00Dを有し、光学性能が非常に優れていた。
【0037】
(実施例4)
本実施例においては図1に示す雄型を使用し、その材質としてポリアセタール(商品名ジュラコンM90−44:ポリプラスチックス(株)製)を選択した。BC光学面の曲率は7.25mmとし、レンズ外周規定部に付設されたエッジRは図5(B)に示す形状とした。図2に示す雌型は、その材質としてポリプロピレンを選択し、FC形成面の曲率を7.2mmとして射出成形によって製造された樹脂型を使用した。また、この雄型と雌型を組み合わせた際に形成されるキャビティーの厚さは0.3mmとした。コンタクトレンズ原料となる重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート97重量部、エチレングリコールジメタクリレート2重量部、アゾビス(2,4ージメチルバレロニトリル)0.3重量部をよく混合し、この混合物の脱気、窒素置換を行ったものを使用した。この混合物を先の樹脂型に充填し、これを熱風循環式の恒温槽内に投入し、40℃で8時間、80℃で5時間加熱した。硬化後雄型から雌型を取り外し、ブランクが接着している雄型をレンズ切削用旋盤に取り付け、レンズのFC側を曲率7.70mmにて切削し、FC側表面を研磨した。さらに、レンズの外周規定部が滑らかな曲線形状になるように切削し、エッジ部分を形成した。この際、図7(H)に示すようにレンズ切削用旋盤のバイトを雄型の表面まで切り込ませるようにして行った。得られたコンタクトレンズを純水中で膨潤させ洗浄した後、生理食塩水に浸漬して所定量の吸水をさせると同時に、溶出物の溶出を完結させた。
【0038】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは表面およびエッジ部が滑らかで、コンタクトレンズ表面および内部に空隙はなかった。また、このソフトコンタクトレンズのBCは8.60mmでパワーは−3.00Dを有し、光学性能が非常に優れていた。
【0039】
(実施例5)
本実施例においては図1に示す雄型を使用し、その材質としてポリアミド(商品名アーレンAE4200:三井石油化学(株)製)を選択した。BC光学面の曲率は6.90mmとし、レンズ外周規定部に付設されたエッジRは図5(C)に示す形状とした。図2に示す雌型は、その材質としてポリプロピレンを選択し、FC形成面の曲率を7.2mmとして射出成形によって製造された樹脂型を使用した。また、この雄型と雌型を組み合わせた際に形成されるキャビティーの厚さは1mmとした。コンタクトレンズ原料となる重合性モノマーとしは、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート70重量部、メチルメタクリレート28重量部、エチレングリコールジメタクリレート1重量部、アゾビス(2,4ージメチルバレロニトリル)0.2重量部をよく混合し、この混合物の脱気、窒素置換を行ったものを使用した。この混合物を先の樹脂型に充填し、これを熱風循環式の恒温槽内に投入し、50℃で5時間、80℃で5時間加熱した。さらに、アニールとして雌型を取り外した雄型を熱風循環式のアニール炉内に投入し、125℃で5時間加熱した。この後、ブランクが接着している雄型をレンズ切削用旋盤に取り付け、レンズのFC側を曲率7.65mmにて切削し、FC側表面を研磨した。さらに、レンズの外周規定部が滑らかな曲線形状になるように切削し、エッジ部分を形成した。この際、図7(I)に示すようにレンズ切削用旋盤のバイトを雄型の表面まで切り込ませるようにして行った。得られたコンタクトレンズを純水中で膨潤させ洗浄した後、生理食塩水に浸漬して所定量の吸水をさせると同時に、溶出物の溶出を完結させた。
【0040】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは表面およびエッジ部が滑らかで、コンタクトレンズ表面および内部に空隙はなかった。また、このソフトコンタクトレンズのBCは8.20mmでパワーは−8.00Dを有し、光学性能が非常に優れていた。
【0041】
(実施例6)
本実施例においては図1に示す雄型を使用し、その材質として変性ポリオレフィン(商品名ZEONEX280:日本ゼオン(株)製)を選択した。BC光学面の曲率は7.25mmとし、レンズ外周規定部に付設されたエッジRは図5(A)に示す形状とした。図2に示す雌型は、その材質としてポリプロピレンを選択し、FC形成面の曲率を7.2mmとして射出成形によって製造された樹脂型を使用した。また、この雄型と雌型を組み合わせた際に形成されるキャビティーの厚さは0.3mmとした。なお、ここで使用する雄型にはプラズマ処理を施した。プラズマ処理の方法としては、プラズマ装置内に該雄型を設置し、真空度0.1Torrのアルゴン雰囲気中、放電周波数13.56MHz、放電電力200Wで3分間の処理を行った。コンタクトレンズ原料となる重合性モノマーとしは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート97重量部、エチレングリコールジメタクリレート2重量部、アゾビス(2,4ージメチルバレロニトリル)0.3重量部をよく混合し、この混合物の脱気、窒素置換を行ったものを使用した。この混合物を先の樹脂型に充填し、これを熱風循環式の恒温槽内に投入し、40℃で8時間、80℃で5時間加熱した。硬化後雄型から雌型を取り外し、ブランクが接着している雄型をレンズ切削用旋盤に取り付け、レンズのFC側を曲率7.70mmにて切削し、FC側表面を研磨した。さらに、レンズの外周規定部が滑らかな曲線形状になるように切削し、エッジ部分を形成した。この際、図7(G)に示すようにレンズ切削用旋盤のバイトを雄型の表面まで切り込ませるようにして行った。得られたコンタクトレンズを純水中で膨潤させ洗浄した後、生理食塩水に浸漬して所定量の吸水をさせると同時に、溶出物の溶出を完結させた。
【0042】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは表面およびエッジ部が滑らかで、コンタクトレンズ表面および内部に空隙はなかった。また、このソフトコンタクトレンズのBCは8.60mmでパワーは−3.00Dを有し、光学性能が非常に優れていた。
【0043】
(実施例7)
本実施例においては図1に示す雄型を使用し、その材質として変性ポリオレフィン(商品名ZEONEX280:日本ゼオン(株)製)を選択した。BC光学面の曲率は7.25mmとし、レンズ外周規定部に付設されたエッジRは図5(A)に示す形状とした。図2に示す雌型は、その材質としてポリプロピレンを選択し、FC形成面の曲率を7.2mmとして射出成形によって製造された樹脂型を使用した。また、この雄型と雌型を組み合わせた際に形成されるキャビティーの厚さは0.3mmとした。なお、ここで使用する雄型にはプラズマ処理を施した。プラズマ処理の方法としては、プラズマ装置内に該雄型を設置し、真空度0.1Torrのアルゴン雰囲気中、放電周波数13.56MHz、放電電力200Wで3分間の処理を行った。コンタクトレンズ原料となる重合性モノマーとしは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート97重量部、エチレングリコールジメタクリレート2重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド0.5重量部をよく混合し、この混合物の脱気、窒素置換を行ったものを使用した。この混合物を先の樹脂型に充填し、これに80W/cm高圧水銀ランプを用いて、雄型側、雌型側それぞれの方向から距離15cmで200秒間紫外線を照射した。硬化後雄型から雌型を取り外し、ブランクが接着している雄型をレンズ切削用旋盤に取り付け、レンズのFC側を曲率7.70mmにて切削し、FC側表面を研磨した。さらに、レンズの外周規定部が滑らかな曲線形状になるように切削し、エッジ部分を形成した。この際、図7(G)に示すようにレンズ切削用旋盤のバイトを雄型の表面まで切り込ませるようにして行った。得られたコンタクトレンズを純水中で膨潤させ洗浄した後、生理食塩水に浸漬して所定量の吸水をさせると同時に、溶出物の溶出を完結させた。
【0044】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは表面およびエッジ部が滑らかで、コンタクトレンズ表面および内部に空隙はなかった。また、このソフトコンタクトレンズのBCは8.60mmでパワーは−3.00Dを有し、光学性能が非常に優れていた。
【0045】
(実施例8)
本実施例においては図1に示す雄型を使用し、その材質としてポリブチレンテレフタレート(商品名タフペットPBT−N1000:三菱レイヨン(株)製)を選択した。BC光学面の曲率は6.38mmとし、レンズ外周規定部に付設されたエッジRは図5(A)に示す形状とした。図2に示す雌型は、その材質としてポリプロピレンを選択し、FC形成面の曲率を6.5mmとして射出成形によって製造された樹脂型を使用した。また、この雄型と雌型を組み合わせた際に形成されるキャビティーの厚さは0.5mmとした。コンタクトレンズ原料となる重合性モノマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド58重量部、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート25重量部、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート10重量部、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート5重量部、エチレングリコールジメタクリレート1重量部、t−ブチルパーオキシピバレート0.5重量部をよく混合し、この混合物の脱気、窒素置換を行ったものを使用した。この混合物を先の樹脂型に充填し、これを熱風循環式の恒温槽内に投入し、70℃で5時間加熱した。さらに、アニールとして雌型を取り外した雄型を熱風循環式のアニール炉内に投入し、130℃で5時間加熱した。この後、ブランクが接着している雄型をレンズ切削用旋盤に取り付けレンズのFC側を曲率6.90mmにて切削し、FC側表面を研磨した。さらに、レンズの外周規定部が滑らかな曲線形状になるように切削し、エッジ部分を形成した。この際、図7(G)に示すようにレンズ切削用旋盤のバイトを雄型の表面まで切り込ませるようにして行った。得られたコンタクトレンズを純水中で膨潤させ洗浄した後、生理食塩水に浸漬して所定量の吸水をさせると同時に、溶出物の溶出を完結させた。
【0046】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは表面およびエッジ部が滑らかで、コンタクトレンズ表面および内部に空隙はなかった。また、このソフトコンタクトレンズのBCは8.60mmでパワーは−3.00Dを有し、光学性能が非常に優れていた。
【0047】
(実施例9)
本実施例においては図1に示す雄型を使用し、その材質としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名ソアライトM:日本合成化学工業(株)製)を選択した。BC光学面の曲率は6.38mmとし、レンズ外周規定部に付設されたエッジRは図5(A)に示す形状とした。図2に示す雌型は、その材質としてポリプロピレンを選択し、FC形成面の曲率を6.5mmとして射出成形によって製造された樹脂型を使用した。また、この雄型と雌型を組み合わせた際に形成されるキャビティーの厚さは0.5mmとした。コンタクトレンズ原料となる重合性モノマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド58重量部、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート25重量部、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート10重量部、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート5重量部、エチレングリコールジメタクリレート1重量部、t−ブチルパーオキシピバレート0.5重量部をよく混合し、この混合物の脱気、窒素置換を行ったものを使用した。この混合物を先の樹脂型に充填し、これを熱風循環式の恒温槽内に投入し、70℃で5時間加熱した。さらに、アニールとして雌型を取り外した雄型を熱風循環式のアニール炉内に投入し、130℃で5時間加熱した。この後、ブランクが接着している雄型をレンズ切削用旋盤に取り付け、レンズのFC側を曲率6.90mmにて切削し、FC側表面を研磨した。さらに、レンズの外周規定部が滑らかな曲線形状になるように切削し、エッジ部分を形成した。この際、図7(G)に示すようにレンズ切削用旋盤のバイトを雄型の表面まで切り込ませるようにして行った。得られたコンタクトレンズをドライ状態で離型し、このレンズにプラズマ処理を施した。プラズマ処理の方法としては、プラズマ装置内にドライ状態のコンタクトレンズを設置し、真空度0.02Torrの酸素雰囲気中、放電周波数13.56MHz、放電電力100Wで5分間の処理を行った。これを純水中で膨潤させ洗浄した後、生理食塩水に浸漬して所定量の吸水をさせると同時に、溶出物の溶出を完結させた。
【0048】
こうして得られたソフトコンタクトレンズは表面およびエッジ部が滑らかで、コンタクトレンズ表面および内部に空隙はなかった。また、このソフトコンタクトレンズのBCは8.60mmでパワーは−3.00Dを有し、光学性能およびレンズ表面の濡れ性が非常に優れていた。
【0049】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、雄型のレンズ外周規定部にコンタクトレンズのエッジ形状を形成するエッジRを付設した樹脂型を使用し、ベースカーブ側のエッジ部は雄型に付設したエッジRの転写によって形成し、フロントカーブ側のエッジ部は旋盤による切削加工によって形成するため、角膜に損傷を与えることのない滑らかな表面およびエッジを有する高品質なコンタクトレンズを、スペックに応じてフレキシブルに、しかも低コストで製造することができる。
【0050】
請求項2の発明によれば、雄型のレンズ外周規定部にコンタクトレンズのエッジ形状を形成するエッジRを付設したため、ベースカーブ側のエッジ加工工程が省略でき、さらに滑らかなエッジ形状を有する高品質なコンタクトレンズを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で使用したコンタクトレンズ製造用雄型の断面図。
【図2】本発明の実施例1で使用したコンタクトレンズ製造用雌型の断面図。
【図3】本発明の実施例1で使用したコンタクトレンズ製造用樹脂型の組立断面図。
【図4】本発明の実施例1で使用したコンタクトレンズ製造用雄型のレンズ外周規定部拡大断面図。
【図5】本発明のコンタクトレンズ製造用雄型のレンズ外周規定部に付設したエッジR部形状の一例。
【図6】本発明のコンタクトレンズ製造用雄型にブランクが密着している状態のエッジR部形状の一例。
【図7】本発明のコンタクトレンズ製造用雄型にFC加工を施してドライ状態のレンズが密着している状態のエッジR部形状の一例。
【符号の説明】
1 BC光学面
2 雄型の接触面
3 旋盤に取り付けるときのアタッチメント
4 FC形成面
5 雌型の接触面
6 型の側面部接触面
7 レンズ形状を成す空間
8 ブランク
Claims (3)
- 雄型と雌型を組み合わせた際に形成される半完成レンズ形状となる空間に重合性モノマーを充填し、これを加熱あるいは光照射することによって重合した後、両型が合致したままの状態であるいは雌型を取り外した状態で、半完成レンズの密着している雄型をレンズ切削用旋盤に取り付け、レンズのフロントカーブ側を切削加工するコンタクトレンズの製造方法において、雄型のレンズ外周規定部にコンタクトレンズのエッジ形状を形成するエッジRを付設し、このエッジRがR部から型の底面に対して鉛直方向に延びている樹脂型を使用し、ベースカーブ側のエッジ部は雄型に付設したエッジRの転写によって形成し、フロントカーブ側のエッジ部は旋盤による切削加工によって形成することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。
- 樹脂型の材質が射出成形によって成形することが可能な樹脂であることを特徴とする請求項1記載のコンタクトレンズの製造方法。
- 樹脂型の材質がポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリエステル、ポリスルフォン、非晶質ポリオレフィンから選ばれる樹脂よりなることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンタクトレンズの製造方法。
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