JP2004296874A - ハイブリッド型希土類ボンド磁石と磁界中圧縮成形装置、およびモータ - Google Patents

ハイブリッド型希土類ボンド磁石と磁界中圧縮成形装置、およびモータ Download PDF

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Abstract

【課題】希土類ボンド磁石は圧縮による緻密化の際、希土類磁石粉末の亀裂や損壊が不可避である。すると、表面積の増加に伴って粉末最表面には多くのNdFe14B結晶が新たに暴露されることになり、高温暴露におけるそれらの組織変化によって永久減磁が増大するなど、磁石としての耐久性の向上が課題。
【解決手段】磁気的に異方性の多結晶集合型希土類磁石粉末、単磁区粒子型希土類磁石粉末、結合剤とのコンパウンドを、前記結合剤の熱硬化温度以下で配向磁界を印加しながら圧縮成形する際、単磁区粒子型希土類磁石粉末による緩衝作用によって多結晶集合型希土類磁石粉末相互の機械的損傷を抑制しながら緻密化し、然る後結合剤を加熱硬化することで、耐久性を兼備えた(BH)max180kJ/mの異方性ハイブリッド型希土類ボンド磁石を提供。
【選択図】 図6

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はコンピュータ周辺機、プリンタなどの電気電子機器の制御用、駆動用として幅広く使用され、小型軽量化・高出力化を中心に技術革新が活発な、所謂永久磁石回転子型、或は永久磁石界磁型のブラシレスモータや直流モータに関し、更に詳しくは、それらに搭載する円弧状や環状のハイブリッド型希土類ボンド磁石、並びに磁界中圧縮成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
非特許文献1:J.J.Croat,J.F.Herbst,R.W.Leeand F.E.Pinkerton:J.Appl.Phys.,Vol.55,2078(1984)により、R−Fe−B(RはNd,Pr)系合金をメルトスパンしたリボンがHci>1200kA/m,残留磁化(Mr)800mT、最大エネルギ−積(BH)max112kJ/mの磁気特性が明らかになった。同時に非特許文献2:M.Sagawa,S.Fujiwara,H.Yamamoto and Y.Matsuura:J.Appl.Phys.,Vol.55,2083(1984)によって、Nd−Fe−B系合金を出発原料とし、粉末冶金学的手法によって(BH)max304kJ/mの常圧焼結磁石が得られることも明らかになった。1986年には、非特許文献3:J.F.Herbst,R.W.Lee and F.E.Pinkerton:Ann.Rev.Mater.Sci.,Vol.16,467(1986)によって、J.J.CroatらやM.SagawaらのNd−Fe−B3元系合金の主相がNdFe14B金属間化合物であることが明らかにされた。このNdFe14B系希土類磁石の作製法として、その後、メカニカルアロイング法、熱間鋳造法なども提唱された。しかし、1980年代後半から現在に至るまで新市場を創製し、拡充し得た代表的NdFe14B系希土類磁石はM.Sagawaらの粉末冶金学的手法によるNdFe14B系希土類焼結磁石と、J.J.Croatらのメルトスパンリボンを出発原料とするNdFe14B系希土類ボンド磁石の2系統に区分される。
【0003】
まず、粉末冶金学的手法による常圧焼結磁石であるが、当該磁石の作製は既に工業的規模で生産されていた1−5,2−17型Sm−Co系希土類焼結磁石の作製方法を利用できることから、いち早く工業的規模での生産技術が確立され、(BH)max300kJ/m以上の最強磁石としてMRI、VCM、FAやEVなど機械出力数百W〜数十kWに至る比較的大型のモータなどへ広く普及した。
【0004】
一方、J.J.Croatらのメルトスパンで得られる磁石材料形態はリボンなどの薄帯や、それを粉砕したフレーク状粉末に制限される。このため、当該磁石材料を、モータなどに通常使用されるバルク状の磁石とするには材料形態の変換、つまり何らかの方法で薄帯や粉末を特定のバルクに固定化する技術が必要となる。粉末冶金学における基本的な粉末固定手段は常圧焼結であるが、メルトスパンリボンは準安定状態に基づく磁気特性を維持する必要があるため常圧焼結の適用は困難である。そのため、もっぱらエポキシ樹脂のような結合剤で薄帯や粉末を特定形状のバルクに固定化することが行われた。例えば、非特許文献4:R.W.Lee,E.G.Brewere and N.A.Shaffel:IEEE Trans.Magn.,Vol.21,1958(1985)では、(BH)max111kJ/mのメルトスパンリボンを樹脂で固定すると(BH)max72kJ/mの等方性ボンド磁石ができるとした。このような磁気的に等方性のNdFe14B系希土類ボンド磁石の(BH)maxは300kJ/m以上のNdFe14B系希土類焼結磁石に比べると磁気特性で劣るため、MRI、VCM、FAやEVなど機械出力数百W〜数十kWに至る比較的大型のモータの分野には普及していない。
【0005】
しかしながら、1986年、本発明者らは、上記メルトスパンリボンを粉砕した磁気的に等方性のNdFe14B系希土類磁石粉末を樹脂で固定した(BH))max〜72kJ/mの小口径環状等方性希土類ボンド磁石が小型モ−タに有用であることを見出し、特許文献1:特開昭62−196057号公報,(特許願 特願昭61−38830号)にて明らかにした。その後、T.Shimodaらは、前記小口径環状等方性希土類ボンド磁石をSm−Co系ラジアル異方性希土類ボンド磁石を搭載した小型モ−タと比較検証し、前者が有用であると裏づけた非特許文献5:(T.Shimoda,SUPPLEMENTARY MATERIAL,“PERMANENT MAGNETS 1988 UPDATE”Wheeler Associate,INC(1988))。さらに、小型モータに有用であるという報告は、非特許文献6:W.Baran,“The European Business and Technical Outlook for NdFeB Magnets”Nov.(1989),非特許文献7:G.X.Huang,W.M.Gao,S.F.Yu,:“Application of Melt−Spun Nd−Fe−B BondedMagnet to the Micro−motor”,Proc.of the 11th International Rare−Earth Magnets and Their Applications,Pittsburgh,USA,pp.583〜595,(1990)などによって明らかにされ、1990年代からOA、AV、PCおよびその周辺機器、情報通信機器などの駆動源として使用される各種高性能小型モータに広く普及した。
【0006】
以下に、従来の技術の説明にて示した特許文献及び非特許文献を記載する。また、発明が解決しようとする課題にて引用する特許文献及び非特許文献を記載する。
【0007】
【特許文献1】
特開昭62−196057号公報(特許願 特願昭61−38830号)
【非特許文献1】
J.J.Croat,J.F.Herbst,R.W.Lee and F.E.Pinkerton:J.Appl.Phys.,Vol.55,2078(1984)
【非特許文献2】
M.Sagawa,S.Fujiwara,H.Yamamoto andY.Matsuura:J.Appl.Phys.,Vol.55,2083(1984)
【非特許文献3】
J.F.Herbst,R.W.Lee and F.E.Pinkerton:Ann.Rev.Mater.Sci.,Vol.16,467(1986)
【非特許文献4】
R.W.Lee,E.G.Brewere and N.A.Shaffel:IEEE Trans.Magn.,Vol.21,1958(1985)
【非特許文献5】
(T.Shimoda,SUPPLEMENTARY MATERIAL,“PERMANENT MAGNETS 1988 UPDATE”Wheeler Associate,INC(1988))
【非特許文献6】
W.Baran,“The European Business andTechnical Outlook for NdFeB Magnets”Nov.(1989)
【非特許文献7】
G.X.Huang,W.M.Gao,S.F.Yu,:“Application of Melt−Spun Nd−Fe−B Bonded Magnet to the Micro−motor”,Proc.of the 11th International Rare−Earth Magnetsand Their Applications,Pittsburgh,USA,pp.583〜595,(1990)
【非特許文献8】
M.Tokunaga,N.Nozawa,K.Iwasaki,M.Endoh,S,Tanigawa and H.Harada:IEEE Trans.Magn.,Vol.25,3561(1989)
【非特許文献9】
H. Sakamoto, M. Fujikura and T.Mukai:J.Appl.Phys.,Vol.69,5382(1991)
【非特許文献10】
M.Doser,V.Panchanacthan,and R.K.Mishra:J.Appl.Phys.,Vol.70,6603(1991)
【非特許文献11】
T.Takeshita,and R.Nakayama:Proc.ofthe 11th International workshop on Rare−earth Magnets and Their Applications,Pittsburk,PA.,Vol.1,49(1990)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、1980年代半ばから現在に至るまでメルトスパンリボンの磁気特性の改良研究は継続的、かつ活発に行われてきたものの、リボン自体の(BH)maxは160kJ/m程であり、当該リボンを粉砕したNdFe14B系希土類磁石粉末を樹脂で固定した磁気的に等方性の希土類ボンド磁石の(BH))maxは工業的には〜80kJ/mである。したがって、1985年当時から最近に至るまで、メルトスパンリボンを粉砕したNdFe14B系希土類磁石粉末を樹脂で固定した磁気的に等方性の希土類ボンド磁石の高(BH))max化は、さほど進展していない。
【0009】
上記に拘らず、本発明が対象とするコンピュータ周辺機、プリンタなど電気電子機器の制御用、駆動用として幅広く使用され、所謂永久磁石回転子型、或は永久磁石界磁型のブラシレスモータや直流モータに関しては当該電気電子機器の高性能化のもと、小型磁石モータの更なる小型軽量化、高出力化に対する要求が絶えない。したがって、本発明者らが1986年に見出したメルトスパンリボンを粉砕したNdFe14B系希土類磁石粉末を樹脂で固定した小口径環状等方性希土類ボンド磁石は、もはや現在の高性能小型モ−タの高出力化に有用であると言い切ることはできない。
【0010】
一方、1980年代後半より、NdFe14B化学量論組成より、高Nd組成のメルトスパンリボンを出発原料とした磁気的に異方性の希土類磁石粉末の研究が活発に行われた。従来のSm−Co系希土類ボンド磁石ではインゴットを微粉砕することにより、大きな保磁力Hciが得られるのに対し、NdFe14B系合金インゴットやNdFe14B系常圧焼結磁石を粉砕しても小さな保磁力Hciしか得られない。このため、磁気的に異方性のNdFe14B系希土類磁石粉末の出発原料としては、メルトスパンリボンが検討された。1989年、TokunagaらはNd14Fe80−XGa(X=0.4〜0.5)を熱間据え込み加工(Die−up−set)して得たバルクを機械粉砕して保磁力Hci1.52MA/mの異方性の多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末を作製し、これを樹脂で固めて(BH)max127kJ/mの異方性希土類ボンド磁石を得ている[非特許文献8:M.Tokunaga,N.Nozawa,K.Iwasaki,M.Endoh,S,Tanigawa and H.Harada:IEEE Trans.Magn.,Vol.25,3561(1989)]。また、1991年、T. MukaiらはNd14Fe79.85.2Cuを熱間圧延して、保磁力Hci 1.30 MA/mの異方性多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末を作製している。[非特許文献9:H. Sakamoto, M. Fujikura and T.Mukai:J.Appl.Phys.,Vol.69,5382(1991)]このように、GaやCuなどの添加は熱間加工性を向上させ結晶粒径を概ね500nm以下に抑制できる。結晶粒成長が抑えられると粉末粒子径が概ね100μm以上の粉末であれば保磁力Hciの低下を抑えた多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末となる。1991年、M.Doser,V.Panchanathanらは、それら熱間加工後のバルクを粉末化する方法として粒界から水素を侵入させNdFe14BHとして崩壊させ、その後真空加熱により脱水素したHD(HydrogenDecrepitation)処理による多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末を樹脂で固めて(BH)max150kJ/mの異方性希土類ボンド磁石を得ている[非特許文献10:M.Doser,V.Panchanacthan,and R.K.Mishra:J.Appl.Phys.,Vol.70,6603(1991)]。
【0011】
しかし、上記メルトスパンリボンを熱間据え込み、或いは熱間圧延した異方性多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末は結晶粒界にNd−rich相が存在し、粒界腐食に基づく永久減磁を引起こし易い欠点があった。この欠点を克服する方法として、Ga,Zr,Hf,などの元素を添加したNd−Fe(Co)−B系合金インゴットを水素中で熱処理しNd(Fe,Co)14B相の水素化(Hydrogenation,Nd[Fe,Co]14B Hx)、650〜1000℃での相分解(Decomposition,NdH+Fe+FeB)、脱水素(Desorpsion)、再結合(Recombination)する、いわゆるHDDR処理が提案された[例えば、非特許文献11:T.Takeshita,and R.Nakayama:Proc.of the 11th International workshop on Rare−earth Magnets and Their Applications,Pittsburk,PA.,Vol.1,49(1990)]。この方法で作製された異方性多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末は0.5μm以下の結晶粒の集合組織のみから構成され、結晶粒界にNd−rich相が存在しない。このHDDR現象のメカニズムに対する研究も精力的に行われ、Dy添加や脱水素条件などによりNdFe14B化学量論組成に近い粉末を樹脂で固めたボンド磁石と同等の熱安定性が期待される保磁力Hci1.20MA/m以上の異方性多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末も開発された。
【0012】
しかし、上記、異方性多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末を用いた高(BH))max希土類ボンド磁石は多くの場合、エポキシ樹脂のような結合剤と混合したのち、1GPa以上の圧力で圧縮成形したボンド磁石である。したがって、圧縮による緻密化の際、希土類磁石粉末の亀裂や損壊が不可避である。すると、表面積の増加に伴って粉末最表面には多くのNdFe14B結晶が新たに暴露されることになり、高温暴露におけるそれらの組織変化によって永久減磁が増大するなど、磁石としての耐久性の低下が基本的課題として存在していた。すなわち、如何に高(BH)maxの異方性希土類ボンド磁石であっても、実用温度領域での耐久性が確保されなければならないのである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
以上のように、本発明が対象とするコンピュータ周辺機、プリンタなど電気電子機器の制御用、駆動用として幅広く使用され、所謂永久磁石回転子型、或は永久磁石界磁型のブラシレスモータや直流モータに関して、電気・電子機器の高性能化のもと、当該小型磁石モータの更なる小型軽量化、高出力化に対する要求に応えるため、高(BH))max化が、さほど進展しないメルトスパンリボンを粉砕した磁気的に等方性のNdFe14B系希土類磁石粉末を樹脂で固めた希土類ボンド磁石に換え、本発明は異方性多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末を用いて、高密度に圧縮して緻密化する際、当該希土類磁石粉末の亀裂や損壊を回避する技術によって、実使用温度領域での耐久性を確保できる高(BH))maxハイブリッド型希土類ボンド磁石、並びに磁界中圧縮成形装置の技術開示に関する。
【0014】
例えば、小型モータに適用し得る任意の環状、或いは円弧状で、耐久性を兼備えた150kJ/m以上の高(BH)max希土類ボンド磁石が容易に作製できれば、近年の電気電子機器の高性能化を促す、新規な高出力小型モータを提供することができる。何故ならば、従来のメルトスパンリボンを粉砕したNdFe14B系希土類磁石粉末を樹脂で固定した等方性希土類ボンド磁石の(BH)maxは前述のように80kJ/mである。これに対し、任意の環状、或いは円弧状で耐久性を兼備えた150kJ/m以上の高(BH)max希土類ボンド磁石が作製できれば、モータ磁石と鉄心との空隙磁束密度は略(BH)maxの比の平方根となるから、当該小型モータの設計思想によるが、約1.4倍の高出力化、30%の小型化が見込まれるのである。
【0015】
上記目的を実現するため、磁気的に異方性の多結晶集合型希土類磁石粉末、単磁区粒子型希土類磁石粉末、結合剤とのコンパウンドを、前記結合剤の熱硬化温度以下で配向磁界を印加しながら圧縮成形する際、単磁区粒子型希土類磁石粉末による緩衝作用によって多結晶集合型希土類磁石粉末相互の機械的損傷を抑制しながら緻密化し、然る後結合剤を加熱硬化するという異方性ハイブリッド型希土類ボンド磁石が本発明の骨子となる。
【0016】
上記、本発明にかかる高(BH)maxハイブリッド型希土類ボンド磁石の作製は、周知のように、当該多結晶集合型希土類磁石粉末を高配向、かつ高密度化する技術が基本となる。一般に希土類ボンド磁石の高密度化に関しては射出成形や押出成形に比べて圧縮成形が有利であることは言うまでもない。他方、一般の磁界中圧縮成形における磁石粉末の配向磁界発生に関しては、1.電磁石、2.パルス磁場、3.永久磁石を埋設した成形型による方法が知られている。ここで、高配向を実現するには高い配向磁界(静磁界)が必要で、電磁石1を配向(脱磁)磁界に用いることは周知である。その際、圧縮方向と磁界方向が直交する横配向磁界、圧縮方向と磁界方向が同一の縦配向磁界、ラジアル配向磁界、極配向磁界など多くの配向磁界中圧縮成形が知られているが、高配向の観点からは圧縮方向と磁界方向が直交する横配向磁界、圧縮方向と磁界方向が同一の縦配向磁界がラジアル配向磁界、極配向磁界よりも有利である。よって、本発明の配向磁界の印加は横配向磁界、または縦配向磁界が好ましい。
【0017】
先ず、本発明にかかる磁界中圧縮成形装置について図面を用いて説明する。図2は本発明にかかる磁界中圧縮成形装置の要部構成図である。図中A1はコンパウンド充填工程、B2は磁界配向圧縮工程、B2は脱磁工程、A2はグリーンコンパクト取出工程であり、それらA1,B2,B2,A2が当該順序で必須工程となる。このような、磁界中圧縮成形において、本発明では図のように工程A1A2と工程B2B2とを隔離し、当該ダイセットDSが工程A1A2と工程B2B2間を移動する磁界中圧縮成形装置が特徴となる。また、前記成形型、並びにダイセットDSの全ての部材を非磁性材料で構成することによって、磁界配向用電磁石の磁極間で複数のダイセットDS成形型キャビティMCにより多数個同時成形を行うことができる。これにより、磁気的に等方性の希土類ボンド磁石のように多数個同時成形など生産性の向上を図ることができる。また、高(BH)maxの希土類ボンド磁石を得るために、ダイセットDSの成形型キャビティMCが常用150℃の温度制御機能を有する磁界中圧縮成形装置を使用する。本発明で、斯様に成形型キャビティを熱するのは、磁界配向の際、結合剤による異方性希土類磁石粉末の拘束力を減少させることが目的である。多くのエポキシ樹脂組成物や不飽和ポリエステル樹脂の熱重合開始温度は150℃以下であるため、成形型キャビティは常用150℃の温度制御機能があればよい。
【0018】
次に、本発明における工程B2が、成形型キャビティMCに充填したコンパウンドを加熱下で配向磁界を印加する工程B21、配向磁界を印加しながら所定圧力までコンパウンドを圧縮してグリーンコンパクトとする工程B22、成形型キャビティ中のグリーンコンパクトを脱磁する工程B23とから成り、前記工程B21において、磁界強度が1.4MA/m以上とすることが好ましい。なお、工程A1A2と工程B2B2とを、ダイセット2基にて交互に繰返す機構を付与すると生産性の向上に繋がり、工程A1と工程B2との間に、成形型キャビティMCから漏洩したコンパウンドを帯磁させることなく回収する工程C1を介し、工程C1にて回収したコンパウンドを再利用すると材料の歩留まりを改善することができる。なお、図2(a)に示す工程C1のように、配向磁界に影響されない位置で、異方性希土類磁石粉末を帯磁させることなく回収することが望ましく、回収手段としては集塵機等の周知の設備を利用することができる。なお、工程A2により得たグリーンコンパクトを加熱硬化する際の雰囲気は、結合剤成分が熱硬化して本来の熱機械的、化学的性質を発揮するまで不活性ガス、または減圧下で行うことが望ましい。
【0019】
他方、本発明にかかる異方性多結晶集合型希土類磁石粉末は平均粒子径75〜150μmの多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末とし、単磁区粒子型希土類磁石粉末は平均粒子径3〜5μmのSmFe17(x≒3)系希土類磁石粉末、或いは平均粒子径3〜5μmのSmCo系希土類磁石粉末が使用される。ここで、多結晶集合型希土類磁石粉末の平均粒子径が75μm未満、或いは150μmを越えると(BH)maxが減少する。また、単磁区粒子型希土類磁石粉末の平均粒子径が3μm未満であると、圧縮の際の緻密化が困難となり、5μmを越えると多磁区粒子となるため保磁力、(BH)maxが減少する。
【0020】
また、上記多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末を80wt.%以下とする必要がある。60wt.%を越えると、単磁区粒子型希土類磁石粉末による緩衝作用によって当該多結晶集合型希土類磁石粉末相互の機械的損傷を抑制しながら緻密化することが困難となる。
【0021】
なお、結合剤の全量、もしくは当該成分の少なくとも一部によってグラニュール化した単磁区粒子型希土類磁石粉末と異方性多結晶集合型希土類磁石粉末とでコンパウンドを構成すると、より高(BH)maxのハイブリッド型希土類ボンド磁石が得られる。ここで、結合剤の主成分は不飽和ポリエステルアルキドのアリル系共重合性単量体溶液、ジアリルフタレートプレポリマーのアリル系共重合性単量体溶液、或いはエポキシオリゴマーと当該エポキシの潜在性硬化剤とすることが好ましい。
【0022】
以上、本発明にかかる最大エネルギー積(BH)maxを150kJ/m以上の円弧状もしくは環状形状のハイブリッド型希土類ボンド磁石を搭載した永久磁石回転子型小型ブラシレスモータ、もしくは永久磁石界磁型小型直流モータは、従来の(BH)max80kJ/m程度の等方性NdFe14B系希土類ボンド磁石を搭載した小型モータの高出力化を実現できる。
【0023】
(作用)
以下、本発明を更に詳しく説明する。
【0024】
本発明は、磁気的に異方性の多結晶集合型希土類磁石粉末、単磁区粒子型希土類磁石粉末、結合剤とのコンパウンドを、前記結合剤の重合開始温度以下で配向磁界を印加しながら圧縮成形する際、単磁区粒子型希土類磁石粉末による緩衝作用によって多結晶集合型希土類磁石粉末相互の機械的損傷を抑制しながら緻密化し、然る後結合剤を加熱硬化するという異方性ハイブリッド型希土類ボンド磁石が本発明の骨子となる。
【0025】
本発明に供するコンパウンドは異方性多結晶集合型希土類磁石粉末、単磁区粒子型希土類磁石粉末、結合剤とから構成され、磁界中圧縮成形装置で作製したグリーンコンパクトを加熱硬化した希土類ボンド磁石の(BH)maxは150kJ/m以上であることが好ましい。そして、このような、高(BH)max希土類ボンド磁石を搭載した高出力小型ブラシレスモータや直流モータとするのである。
【0026】
本発明にかかる異方性多結晶集合型希土類磁石粉末としては熱間据込加工(Die−Up−Setting)によって準備されたNdFe14B系希土類磁石粉末(例えば、M.Doser,V.Panchanathan;”Pulverizing anisotropic rapidly solidified Nd−Fe−B materials for bonded magnet”;J.Appl.Phys.70(10),15,1993)。HDDR処理(水素分解/再結合)によって準備された磁気的に異方性の多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末、すなわち、Nd−Fe(Co)−B系合金のNd(Fe,Co)14B相の水素化(ydrogenation,Nd[Fe,Co]14BHx)、650〜1000℃での相分解(ecomposition,NdH+Fe+FeB)、脱水素(esorpsion)、再結合(ecombination)するHDDR処理(T.TakeshitaandR.Nakayama:Proc.of the 10th RE Magnets and Their Applications,Kyoto,Vol.1,551 1989)で作製した磁気的に異方性の多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末である。なお、前記希土類磁石粉末の表面を予め光分解したZnなど不活性化処理した粉末など(例えば、K.Machida,K.Noguchi,M.Nushimura,Y.Hamaguchi,G.Adachi,Proc.9th Int.Workshop on Rare−Earth Magnets andTtheir Applications,Sendai,Japan,II,845 2000,或いは、K.Machida,Y.Hamaguchi,K.Noguchi,G.Adachi,Digests of the 25th Annual conference on Magnetcs in Japan,28aC−6 2001)も使用することができる。
【0027】
他方、本発明にかかる単磁区粒子型希土類磁石粉末としてはRD(酸化還元)処理によって準備された磁気的に異方性のSmFe17系希土類磁石粉末、或いは前記粉末の表面を予め不活性化処理した粉末、SmCo系希土類磁石粉末を必要に応じて1種または2種以上適宜併用することができる。
【0028】
図2は本発明にかかる磁気的に異方性の多結晶集合型希土類磁石粉末の模式図である。図において、1は磁石粉末、1Gは磁石粉末を構成する一つ一つのNdFe14B結晶粒を示しており、それらの結晶粒1Gの磁化容易軸1(006)は、ほぼ一定方向に揃った構造の粉末である。他方、図3は本発明にかかる単磁区粒子型希土類磁石粉末の模式図である。図において、2は磁石粉末、2(006)は磁石粉末2の磁区に存在する磁化容易軸であり、一つの単磁区粒子型希土類磁石粉末あたりに一つの磁化容易軸2(006)が存在する構造である。
【0029】
上記、本発明にかかる単磁区粒子型希土類磁石粉末2は、(1)結合剤の熱硬化温度以下で配向磁界を印加しながら圧縮成形する際、単磁区粒子型希土類磁石粉末2による圧縮応力の緩衝作用によって多結晶集合型希土類磁石粉末1相互の機械的損傷を抑制しながら緻密化を促進したり、或いは、(2)成形型キャビティへの充填性等、粉末成形性を改善するために、図4のように、予め結合剤4、またはその構成成分の一部4’でグラニュール3とすることが望ましい。
【0030】
上記、単磁区粒子型希土類磁石粉末2の結合剤4によるグラニュール化の手段としては、先ず、当該結合剤4、またはその構成成分の一部4’を有機溶媒に溶解し、当該有機溶媒溶液と単磁区粒子型希土類磁石粉末2とを湿式混合し、溶媒を除去し、然る後、分級する。分級により、例えば350μm以下にグラニュール化するとコンパウンド全体の粉末成形性を改善することができる。
【0031】
本発明では、上記結合剤の主成分として、不飽和ポリエステルアルキドの共重合性単量体溶液である不飽和ポリエステル樹脂を例示できる。ここで、不飽和ポリエステルアルキドとは不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸とグリコール類とを反応させたものである。不飽和多塩基酸は、例えば無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などである。飽和多塩基酸は、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸などである。グリコール類は、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1−3−ブタンジオール、1−6−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド化合物、ジブロムネオペンチルグリコールなどである。他方、共重合性単量体として、先ず、例えばスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニルなどのビニル系共重合性単量体が挙げられるが、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−6ヘキサンジオ−ルジアクリレートなどのアリル系共重合性単量体も例示できる。
【0032】
以上において、本発明で好ましい不飽和ポリエステル樹脂の構成としては、耐熱性に優れる室温で固体の直鎖状芳香族ポリエステルアルキドであるテレフタル酸系不飽和ポリエステルアルキド、および蒸気圧が高く、揮発し難いジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレートなどアリル系共重合性単量体の1種または2種以上が好ましい。なお、前記不飽和ポリエステル樹脂とは、例えば軟化温度90〜100℃のテレフタル酸系不飽和ポリエステルアルキドに対してジアリルオルソフタレート、アリルイソフタレート、トリアリルシアヌレートなどアリル系共重合性単量体の1種または2種以上を5〜50重量%とすることで任意に調整可能である。更に、本発明では不飽和ポリエステルアルキドに代えてジアリルオルソフタレートプレポリマー、ジアリルイソフタレートプレポリマーなどの前駆体のアリル系共重合性単量体溶液である所謂ジアリルフタレート樹脂などが使用できることはいうまでもない。
【0033】
他方、本発明にかかる結合剤として、周知のエポキシ樹脂を使用することもできる。ここで、エポキシ樹脂とは1分子中に2個以上のオキシラン環を有するエポキシオリゴマ−と、前記オキシラン環を開環重合し得る所謂硬化剤との混合物である。ここで、架橋密度を高めるためには分子鎖内にもエポキシ基を有するノボラック型エポキシやエピクロルヒドリンとビスフェノール類との縮合物であるジグリシジルエーテル型エポキシが好ましい。また、前記エポキシオリゴマーと架橋するエポキシ硬化剤としては潜在性硬化剤として知られているジシアンジアミドおよびその誘導体、カルボン酸ジヒドラジド、ジアミノマレオニトリルおよびその誘導体のヒドラジドの群より選ばれた1種または2種以上などを挙げることができる。これ等は一般に有機溶媒に難溶の高融点有機化合物であるが、粒子径を数ないし数十μm以下に調整し、多結晶集合型希土類磁石粉末や単磁区粒子型希土類磁石粉末、或いは他の結合剤構成成分と物理的付着性の強いものが好ましい。なお、ジシアンジアミド誘導体としては、例えばo−トリルビグアニド、α−2・5−ジメチルビクアニド、α−ω−ジフェニルビグアニド、5−ヒドロキシブチル−1−ビグアニド、フェニルビグアニド、α−,ω−ジメチルビクアニドなどを挙げることができる。更に、カルボン酸ジヒドラジドとしてはコハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド、p−アキシ安息香酸ヒドラジドなどを挙げることができる。これらのエポキシ樹脂硬化剤はコンパウンドに乾式混合によって添加する。なお、コンパウンドの成形型への移着を防ぐには高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属石鹸類から選ばれる1種または2種以上を必要に応じて適宜使用できる。それらの添加剤は通常0.2wt.%以下をコンパウンドに直接乾式混合する。
【0034】
上記、コンパウンドの異方性多結晶集合型希土類磁石粉末1と単磁区粒子型希土類磁石粉末2との含有量は97wt.%以上とする。すると、図5で示すように成形型キャビティに充填したコンパウンド5は、先ず単磁区粒子型希土類磁石粉末を含むグラニュールの一部が熱によって崩壊する。
【0035】
続いて、図6のように熱間で配向磁界Hを印加すると、先ず、磁化容易軸方向に多結晶集合型希土類磁石粉末1と熱崩壊した単磁区粒子型希土類磁石粉末2が配向する(工程B21)。続いて、配向磁界中でコンパウンド5を圧縮によって緻密化する。緻密化の際に、熱崩壊したグラニュール3から再生した単磁区粒子型希土類磁石粉末2は結合剤またはその構成成分4とともに、多結晶集合型希土類磁石粉末1相互間に浸入し、圧縮応力を分散せしめ、当該粉末相互間の直接接触による損傷を防ぐのである。また、緻密化の最終過程で、単磁区粒子型希土類磁石粉末2は多結晶集合型希土類磁石粉末1の表面を覆うように形成され、全体の密度を高める。したがって、高密度による高(BH)max化とともに、多結晶集合型希土類磁石粉末の損傷による耐久性の低下を抑制することができるのである。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。ただし、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0037】
(実施例の説明1、原料)
本実施例では、異方性多結晶集合型希土類磁石粉末として、HDDR処理(水素分解/再結合)によって準備された粒子径32〜250μmのNdFe14B系希土類磁石粉末(Nd12.3Dy0.3Fe64.7Co12.36.0Ga0.6Zr0.1)、残留磁化Jr=1.34T、保磁力HcJ=0.97MA/m、(BH)max=292kJ/mを、また、単磁区粒子型希土類磁石粉末として、RD(酸化還元)した平均粒子径3〜5μmのSmFe17系希土類磁石粉末、残留磁化Jr=1.28T、保磁力HcJ=0.87MA/m、(BH)max=302kJ/mを使用した。また、結合剤としては軟化点90〜100℃のテレフタル酸系不飽和ポリエステルアルキッドのジアリルオルソフタレート20%溶液、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド、滑剤としてペンタエリスリトールC17トリエステルを使用した。
【0038】
(実施例の説明2、ハイブリッド化による高密度化と高(BH)max化への効果)
先ず、RD(酸化還元)した平均粒子径3〜5μmのSmFe17系希土類磁石粉末294重量部を不飽和ポリエステル樹脂6重量部、重合開始剤0.03重量部、滑剤6重量部でグラニュール化したコンパウンド前駆体Aを用意した。続いて、平均粒子径80μmのNdFe14B系希土類磁石粉末298.5重量部、不飽和ポリエステル樹脂1.5重量部、重合開始剤0.015重量部、滑剤0.6重量部でグラニュール化したコンパウンド前駆体Bを用意した。次ぎに、前記コンパウンド前駆体A,Bを室温で混合し、本発明にかかる図5に示したコンパウンド5とした。
【0039】
次いで、図1に示した磁界中圧縮成形装置で示すような移動可能なダイセットDSに組み込まれた成形型キャビティMCにコンパウンド5を充填した。ただし、上下パンチと成形型キャビティは110℃(この実施例での重合開始温度は110℃)程度に加熱されている。成形型キャビティMCに充填されたコンパウンド5は、図5に示したように、先ず単磁区粒子型希土類磁石粉末を含むグラニュールの一部が熱によって崩壊する。続いて、図6のように熱間で配向磁界H(2MA/m)を印加すると、先ず、磁化容易軸方向に多結晶集合型希土類磁石粉末1と熱崩壊した単磁区粒子型希土類磁石粉末2が配向する(工程B21)。続いて、配向磁界中でコンパウンド5を圧縮によって緻密化する。緻密化の際に、熱崩壊したグラニュール3から再生した単磁区粒子型希土類磁石粉末2は結合剤またはその構成成分4とともに、多結晶集合型希土類磁石粉末1相互間に浸入し、圧縮応力を分散せしめ、当該粉末相互間の直接接触による損傷を防ぐのである。また、緻密化の最終過程で、単磁区粒子型希土類磁石粉末2は多結晶集合型希土類磁石粉末1の表面を覆うように形成され、全体の密度を高める。このようにして作製したグリーンコンパクトを加熱硬化(160℃、20min)し、本発明にかかる8mm×8mm×4mmの立方形状のハイブリッド型希土類ボンド磁石とした。
【0040】
図7は圧縮圧力0.6GPa、1.1GPaで作製した本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石において、コンパウンド前駆体Bの割合(wt.%)に対してアルキメデス法によって測定した磁石密度をプロットした特性図である。図から明らかなように、圧縮圧力に拘らず、コンパウンド前駆体Bの増加に伴って磁石が高密度化する。しかし、前駆体Bが概ね80〜90%以上となると磁石密度は減少した。このように、本発明で言うハイブリッド型希土類ボンド磁石は圧縮圧力に拘らず、ハイブリッド化によって高密度化が実現していることが了解される。
【0041】
上記磁石の配向方向に4MA/mのパルス磁界を印加して磁化したのちの(BH)maxを測定磁界Hm±1.6MA/mの条件でVSM(試料振動型磁力計)を用いて求めた。
【0042】
図8は圧縮圧力0.6GPa、1.1GPaで作製した本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石において、コンパウンド前駆体Bの割合(wt.%)に対して磁石の(BH)maxをプロットした特性図である。図から明らかなように、本発明にかかるハイブリッド化による密度変化と同様に、(BH)maxも向上した。当該磁石の(BH)max水準は圧縮圧力0.6GPaの場合でも、コンパウンド前駆体Bの割合が50〜80wt.%の範囲で150kJ/mを越えるものとなる。
【0043】
図9は上記に示したハイブリッド型希土類ボンド磁石の保磁力HcJに対する(BH)maxをプロットした特性図である。ただし、図中の番号はコンパウンド前駆体Bの割合(wt.%)を表している。図から明らかなように、コンパウンド前駆体Bの割合が0〜70wt.%では、その増加割合に応じて保磁力HcJと共に(BH)maxも増加する。しかしながら、80wt.%では(BH)maxと保磁力HcJの増加はなくなる。更に80wt.%を越えるとHcJは殆ど変化せず、(BH)maxが急激に減少した。この現象はコンパウンド前駆体Bの割合が80wt.%を越えると、圧縮圧力の水準に拘らず、圧縮による緻密化の際に、当該多結晶集合型希土類磁石粉末の損壊が起こることを示唆している。
【0044】
(実施例の説明3、多結晶集合型希土類磁石粉末の直接ハイブリッド化)
図10(a)は多結晶集合型希土類磁石粉末をコンパウンド前駆体Bとせず、RD(酸化還元)した平均粒子径3〜5μmのSmFe17系希土類磁石粉末294重量部を不飽和ポリエステル樹脂6重量部、重合開始剤0.03重量部、滑剤6重量部でグラニュール化したコンパウンド前駆体Aと直接混合したコンパウンド5から本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石とした場合の多結晶集合型希土類磁石粉末の割合に対する当該磁石の密度と(BH)maxの関係を示した特性図である。図から明らかなように、多結晶集合型希土類磁石粉末(HDDR powder)をコンパウンド前駆体Bとした場合と同様に、ハイブリッド化によって当該磁石密度と(BH)maxは共に上昇する。そして、多結晶集合型希土類磁石粉末60wt.%付近で(BH)maxは180kJ/mを越える極大値を示した。さらに、それ以上の割合では、密度は上昇するものの、(BH)maxは暫時減少した。(BH)maxの減少は多結晶集合型希土類磁石粉末をコンパウンド前駆体Bとした場合と同様に、当該多結晶集合型希土類磁石粉末の損壊を示唆している。
【0045】
上記、(BH)max180kJ/mの水準は、従来TokunagaらがNd14Fe80−XGa(X=0.4〜0.5)を熱間据え込み加工(Die−up−set)して得たバルクを機械粉砕して作製した保磁力Hci1.52MA/mの異方性NdFe14B系希土類磁石粉末を樹脂で固めて(BH)max127kJ/mの異方性希土類ボンド磁石[M.Tokunaga,N.Nozawa,K.Iwasaki,M.Endoh,S,Tanigawa and H.Harada:IEEE Trans.Magn.,Vol.25,3561(1989)]。M.Doser,V.Panchanathanらは、それら熱間加工後のバルクを粉末化する方法として粒界から水素を侵入させNdFe14BHとして崩壊させ、その後真空加熱により脱水素したHD(Hydrogen Decrepitation)異方性希土類磁石粉末を樹脂で固めた(BH)max150kJ/mの異方性希土類ボンド磁石[M. Doser,V.Panchanacthan,and R.K.Mishra:J.Appl.Phys.,Vol.70,6603(1991)]の水準を遥かに上回るものである。したがって、図10(a)で示す本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石の(BH)max180kJ/mという意味は、従来の多結晶集合型希土類磁石粉末を単独で使用した希土類ボンド磁石の(BH)max値を上回るもので、ハイブリッド化による高密度化が高(BH)max化を引出したものであることは明白である。
【0046】
図10(b)は多結晶集合型希土類磁石粉末をコンパウンド前駆体Bとせず、RD(酸化還元)した平均粒子径3〜5μmのSmFe17系希土類磁石粉末294重量部を不飽和ポリエステル樹脂6重量部、重合開始剤0.03重量部、滑剤6重量部でグラニュール化したコンパウンド前駆体Aと直接混合したコンパウンド5から本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石とした場合の多結晶集合型希土類磁石粉末の割合に対する当該磁石の(BH)max、保磁力HcJ、残留磁化Jrの関係を示した特性図である。また、図11は、前記磁石の保磁力HcJに対する(BH)maxの関係を示す特性図である。ただし、図中の数値は多結晶集合型希土類磁石粉末の割合(wt.%)を表している。図10(b)並びに図11から明らかなように、本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石も多結晶集合型希土類磁石粉末の割合が80wt.%以下であれば急激な保磁力HcJの減少は観測されない。なお、多結晶集合型希土類磁石粉末の割合(wt.%)を30wt.%程度とすれば、(BH)maxは160kJ/mに達し、55〜70wt.%とすれば180kJ/mを越える。
【0047】
他方、上記、本発明にかかる高(BH)maxハイブリッド型希土類ボンド磁石において、磁石密度に対する(BH)max、保磁力HcJ、残留磁気Jrをプロットすると図12が得られる。図から明らかなように、圧縮による緻密化の際に、多結晶集合型希土類磁石粉末を損壊せしめて磁石密度を6.3Mg/m以上に高める行為は高(BH)max化にとっても逆効果となることが判る。
【0048】
(実施例の説明4、多結晶集合型希土類磁石粉末粒子径)
図13(a)(b)は多結晶集合型希土類磁石粉末(HDDR powder)を分級し、前項と同一条件で本発明にかかる多結晶集合型希土類磁石粉末60wt.%のハイブリッド型希土類ボンド磁石とし、もとの粉末粒子径に対して磁石密度、(BH)max、保磁力HcJ、残留磁化Jrをプロットした特性図である。多結晶集合型希土類磁石粉末の磁気特性は、その粉末粒子径に強く依存する。[例えば、F.Yamashita,Y. Yamagata,H.Fukunaga,“Anisotropic Nd−Fe−B Based Flexible Bonded Magnet Curled to The Ring for Small Permanent Magnet Motors”,IEEE.Trans.Magn.,Vol.37,pp.3366〜3369(2001)]。図から明らかなように、本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石の磁気特性も多結晶集合型希土類磁石粉末の粉末粒子径に強く依存する。とくに、粉末粒子径が75μm以下となると磁石密度、(BH)max、残留磁化Jrともに減少するが、とくに保磁力HcJが粉末粒子径75μm以下で急激に減少する。したがって、多結晶集合型希土類磁石粉末の平均粒子径は当該磁石の耐久性の維持を考慮すると、75μm以上とする必要がある。一方、多結晶集合型希土類磁石粉末の平均粒子径を250μm以上とすると薄肉磁石等の圧縮成形時に当該粉末の物理的損壊を助長するので好ましくない。
【0049】
(実施例の説明5、不活性雰囲気中硬化処理)
前述の(実施例の説明2、ハイブリッド化による高密度化と高(BH)max化への効果)と同様に、先ず、RD(酸化還元)した平均粒子径3〜5μmのSmFe17系希土類磁石粉末294重量部を不飽和ポリエステル樹脂6重量部、重合開始剤0.03重量部、滑剤6重量部でグラニュール化したコンパウンド前駆体Aを用意した。続いて、平均粒子径80μmのNdFe14B系希土類磁石粉末298.5重量部、不飽和ポリエステル樹脂1.5重量部、重合開始剤0.015重量部、滑剤0.6重量部でグラニュール化したコンパウンド前駆体Bを用意した。次ぎに、前記コンパウンド前駆体A,Bを室温で混合し、本発明にかかる図5に示したコンパウンド5とした。
【0050】
次いで、図1に示した磁界中圧縮成形装置で示すような移動可能なダイセットDSに組み込まれた成形型キャビティMCにコンパウンド5を充填した。ただし、上下パンチと成形型キャビティは110℃(この実施例での重合開始温度は110℃)程度に加熱されている。成形型キャビティMCに充填されたコンパウンド5は、図5に示したように、先ず単磁区粒子型希土類磁石粉末を含むグラニュールの一部が熱によって崩壊する。続いて、図6のように熱間で配向磁界H(2MA/m)を印加すると、先ず、磁化容易軸方向に多結晶集合型希土類磁石粉末1と熱崩壊した単磁区粒子型希土類磁石粉末2が配向する(工程B21)。続いて、配向磁界中でコンパウンド5を圧縮によって緻密化する。緻密化の際に、熱崩壊したグラニュール3から再生した単磁区粒子型希土類磁石粉末2は結合剤またはその構成成分4とともに、多結晶集合型希土類磁石粉末1相互間に浸入し、圧縮応力を分散せしめ、当該粉末相互間の直接接触による損傷を防ぐのである。また、緻密化の最終過程で、単磁区粒子型希土類磁石粉末2は多結晶集合型希土類磁石粉末1の表面を覆うように形成され、全体の密度を高める。このようにして作製したグリーンコンパクトを、温度を変えて硬化(各20min)し、本発明にかかる8mm×8mm×4mmの立方形状のハイブリッド型希土類ボンド磁石とした。
【0051】
図14は硬化温度と(BH)max、保磁力HcJ、残留磁化Jrの関係を示す特性図である。図から明らかなように、残留磁化Jrは硬化温度が160℃を越えると低下が始まる。また、保磁力HcJは硬化温度の上昇とともに減少するが、160℃を越えると急激に減少する傾向が見られる。一方、(BH)maxは100℃を越えると減少が顕著となる。したがって、高温で結合剤を硬化する場合には不活性ガス雰囲気とすることが望ましい。
【0052】
(実施例の説明6、圧縮圧力と密度と(BH)maxの関係)
前述の(実施例の説明2、ハイブリッド化による高密度化と高(BH)max化への効果)と同様に、先ず、RD(酸化還元)した平均粒子径3〜5μmのSmFe17系希土類磁石粉末294重量部を不飽和ポリエステル樹脂6重量部、重合開始剤0.03重量部、滑剤6重量部でグラニュール化したコンパウンド前駆体Aを用意した。続いて、平均粒子径80μmのNdFe14B系希土類磁石粉末298.5重量部、不飽和ポリエステル樹脂1.5重量部、重合開始剤0.015重量部、滑剤0.6重量部でグラニュール化したコンパウンド前駆体Bを用意した。次ぎに、前記コンパウンド前駆体A,Bを室温で混合し、本発明にかかる図5に示したコンパウンド5とした。
【0053】
次いで、図1に示した磁界中圧縮成形装置で示すような移動可能なダイセットDSに組み込まれた成形型キャビティMCにコンパウンド5を充填した。ただし、上下パンチと成形型キャビティは110℃(この実施例での重合開始温度は110℃)程度に加熱されている。成形型キャビティMCに充填されたコンパウンド5は、図5に示したように、先ず単磁区粒子型希土類磁石粉末を含むグラニュールの一部が熱によって崩壊する。続いて、図6のように熱間で配向磁界H(2MA/m)を印加すると、先ず、磁化容易軸方向に多結晶集合型希土類磁石粉末1と熱崩壊した単磁区粒子型希土類磁石粉末2が配向する(工程B21)。続いて、配向磁界中でコンパウンド5を圧縮によって緻密化する。緻密化の際に、熱崩壊したグラニュール3から再生した単磁区粒子型希土類磁石粉末2は結合剤またはその構成成分4とともに、多結晶集合型希土類磁石粉末1相互間に浸入し、圧縮応力を分散せしめ、当該粉末相互間の直接接触による損傷を防ぐのである。また、緻密化の最終過程で、単磁区粒子型希土類磁石粉末2は多結晶集合型希土類磁石粉末1の表面を覆うように形成され、全体の密度を高める。ここでは、圧縮圧力を変えてグリーンコンパクト作製し、硬化した、本発明にかかる8mm×8mm×4mmの立方形状のハイブリッド型希土類ボンド磁石とした。
【0054】
図15は圧縮圧力と磁石密度、並びに(BH)maxの関係を示す特性図である。図から明らかなように、磁石密度は圧縮圧力とともに増加する。しかし、(BH)maxは圧縮圧力1GPaで極大値を示した。したがって、圧縮圧力は1GPa以下とすることが望ましい。
【0055】
(実施例の説明7、多結晶集合型希土類磁石粉末の圧縮前後の粒度分布変化)実施例の説明2と同様に、先ず、RD(酸化還元)した平均粒子径3〜5μmのSmFe17系希土類磁石粉末294重量部を不飽和ポリエステル樹脂6重量部、重合開始剤0.03重量部、滑剤6重量部でグラニュール化したコンパウンド前駆体Aを用意した。続いて、平均粒子径80μmのNdFe14B系希土類磁石粉末298.5重量部、不飽和ポリエステル樹脂1.5重量部、重合開始剤0.015重量部、滑剤0.6重量部でグラニュール化したコンパウンド前駆体Bを用意した。次ぎに、前記コンパウンド前駆体A,Bを室温で混合し、本発明にかかる図5に示したコンパウンド5とした。
【0056】
次いで、図1に示した磁界中圧縮成形装置で示すような移動可能なダイセットDSに組み込まれた成形型キャビティMCにコンパウンド5を充填した。ただし、上下パンチと成形型キャビティは110℃(この実施例での重合開始温度は110℃)程度に加熱されている。成形型キャビティMCに充填されたコンパウンド5は、図5に示したように、先ず単磁区粒子型希土類磁石粉末を含むグラニュールの一部が熱によって崩壊する。続いて、図6のように熱間で配向磁界H(2MA/m)を印加すると、先ず、磁化容易軸方向に多結晶集合型希土類磁石粉末1と熱崩壊した単磁区粒子型希土類磁石粉末2が配向する(工程B21)。続いて、配向磁界中でコンパウンド5を圧縮によって緻密化する。緻密化の際に、熱崩壊したグラニュール3から再生した単磁区粒子型希土類磁石粉末2は結合剤またはその構成成分4とともに、多結晶集合型希土類磁石粉末1相互間に浸入し、圧縮応力を分散せしめ、当該粉末相互間の直接接触による損傷を防ぐのである。また、緻密化の最終過程で、単磁区粒子型希土類磁石粉末2は多結晶集合型希土類磁石粉末1の表面を覆うように形成され、全体の密度を高める。ここでは、圧縮圧力を変えてグリーンコンパクト作製し、当該グリーンコンパクトに含有される結合剤を有機溶媒で除去し、圧縮成形前後の希土類磁石粉末の粉末粒子径分布をレーザー回折式粒度分布計で調べた。
【0057】
図16(a)はコンパウンド前駆体A,Bから採取した希土類磁石粉末2種の圧縮前後の粒度分布を示す特性図である。また、図16(b)は比較のためにコンパウンド前駆体Bのみとした多結晶集合型磁石粉末の圧縮前後の粒度分布を示す特性図である。図中の数値は何れも圧縮圧力を示している。図から明らかなように、圧縮前(図中0で示す曲線)を基準とすると図16(a)の0.6GPaの粒度分布曲線は基準とした圧縮前の曲線と一致している。しかし、1.1GPaの曲線は低粒度側にシフトしている。一方、図16(b)のコンパウンド前駆体Bのみとした場合には、0.6GPaの曲線は1.1GPaの曲線とほぼ一致している。
【0058】
以上の結果から、本発明の骨子となる磁気的に異方性の多結晶集合型希土類磁石粉末、単磁区粒子型希土類磁石粉末、結合剤とのコンパウンドを、前記結合剤の熱硬化温度以下で配向磁界を印加しながら圧縮成形する際、単磁区粒子型希土類磁石粉末による緩衝作用によって多結晶集合型希土類磁石粉末相互の機械的損傷を抑制しながら緻密化される事実が裏づけられる。
【0059】
(実施例の説明8、ハイブリッド化による多結晶集合型希土類磁石粉末の損傷抑制)
図17(a)(b)は実施例の説明6で説明したグリーンコンパクト破断面の走査電子顕微鏡写真を示す特性図である。ただし、図17(a)はコンパウンド前駆体A,Bを50wt.%としたもの、図17(b)は比較のためにコンパウンド前駆体Bのみのもので、圧縮圧力はそれぞれ1GPaである。本発明にかかる図17(a)から明らかなように、緻密化の際に、熱崩壊したグラニュール3から再生した単磁区粒子型希土類磁石粉末2は結合剤またはその構成成分4とともに、多結晶集合型希土類磁石粉末1相互間に浸入し、圧縮応力を分散せしめ、当該粉末相互間の直接接触による損傷を防ぐのである。また、緻密化の最終過程で、単磁区粒子型希土類磁石粉末2は多結晶集合型希土類磁石粉末1の表面を覆うように形成され、全体の密度を高めている様子が了解される。これに対して、本発明の比較例となる図17(b)は圧縮圧力によって多結晶集合型希土類磁石粉末1が物理的に崩壊した多数の破砕片、或いは多数のマイクロクラックの存在が認められた。
【0060】
(実施例の説明9、耐久性改善効果)
多結晶集合型希土類磁石粉末の圧縮前後の粒度分布変化(実施例の説明6)、およびハイブリッド化による多結晶集合型希土類磁石粉末の損傷抑制(実施例の説明7)から本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石は高(BH)max化ばかりか耐久性の向上が期待される。そこで、7項で示した本発明にかかるグリーンコンパクトを不活性ガス雰囲気で加熱硬化したハイブリッド型希土類ボンド磁石、並びに7項で示した従来のコンパウンド前駆体Bのみからなるグリーンコンパクトを不活性ガス雰囲気で加熱硬化した従来の希土類ボンド磁石を4MA/mのパルス着磁後、100℃に長期間高温暴露したときの不可逆磁束損失を調べた。図18は高温暴露時間に対する不可逆磁束損失変化を示す特性図である。ただし、試料のパーミアンス係数は約2.1であり、磁束の測定はサーチコイル引抜法による。図から明らかなように、本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石は比較例として示した従来の希土類ボンド磁石と比べ、保磁力(HcJ)並びに保磁力の温度係数などで律則される初期不可逆磁束損失は同程度であるものの、長期不可逆磁束損失は半減するほどに改善されている。そこで、高温暴露1000hrs後に、再び4MA/mでパルス着磁したのちの磁束量を測定し、高温暴露前の磁束量と比較すると本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石は約2.1%の減少率、比較例は6.5%の減少率であった。この減少率は所謂永久減磁率であり、換言すれば永久減磁率が従来に比べて、約70%も抑制されたと言える。
【0061】
以上のように、磁気的に異方性の多結晶集合型希土類磁石粉末を結合剤とともに所定形状に圧縮した従来の希土類ボンド磁石と比べて、本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石は高密度化による高(BH)max化とともに耐久性をも向上できることは明らかである。
【0062】
ところで、(BH)max〜80kJ/mで代表される磁気的に等方性のNdFe14B系圧縮成形希土類ボンド磁石を搭載した従来の小型モータに対し、(BH)max150〜180kJ/mで代表される本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石を搭載した小型モータに代替すると、当該磁石と鉄心との空隙磁束密度は略(BH)maxの比の平方根となるから、1.37〜1.50倍と改善され、高出力化が可能となる。ここで、モ−タの効率ηは機械出力P、損失をWとすると下記1式で示され、本発明にかかるモータはブラシレスモータや直流モータに拘らず、機械出力Pの改善が可能である。よって、モータの高出力化によるモータの高効率化が実現できると結論づけることができる。
【0063】
η=[P/(P+W)]・・・(式1)
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明が対象とするコンピュータ周辺機、プリンタなど電気電子機器の制御用、駆動用として幅広く使用され、所謂永久磁石回転子型、或は永久磁石界磁型のブラシレスモータや直流モータに関して、電気・電子機器の高性能化のもと、当該小型磁石モータの更なる小型軽量化、高出力化に対する要求に応えるため、高(BH))max化が、さほど進展しないメルトスパンリボンを粉砕した磁気的に等方性のNdFe14B系希土類磁石粉末を樹脂で固めた希土類ボンド磁石に換え、本発明は磁気的に異方性の多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末を用いて、高密度に圧縮して緻密化する際、当該希土類磁石粉末の亀裂や損壊から回避する技術によって、実使用温度領域での耐久性を確保する高(BH))maxハイブリッド型希土類ボンド磁石、並びに磁界中圧縮成形装置の技術開示に関し、小型モータに適用し得る、耐久性を兼備えた150〜180kJ/mを越える高(BH)maxハイブリッド型希土類ボンド磁石を工業的規模で提供できる。
【0065】
したがって、(BH)max〜80kJ/mで代表される磁気的に等方性のNdFe14B系圧縮成形希土類ボンド磁石を搭載した従来の小型モータに対し、(BH)max150〜180kJ/mで代表される本発明にかかるハイブリッド型希土類ボンド磁石を搭載した小型モータに代替すると、当該磁石と鉄心との空隙磁束密度は略(BH)maxの比の平方根となるから、1.37〜1.50倍と改善され、高出力化が可能となる。したがって、当該モータの高出力化によるモータの高効率化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)ラジアル配向磁界の工程A1,A2,C1の成形型構成図
(b)ラジアル配向磁界の工程B1,B2の成形型構成図
【図2】多結晶集合型希土類磁石粉末の模式図
【図3】単磁区粒子型希土類磁石粉末の模式図
【図4】単磁区粒子型希土類磁石粉末グラニュールの模式図
【図5】成形型キャビティに充填したコンパウンドの熱崩壊模式図
【図6】配向したグリーンコンパクトの模式図
【図7】前駆体Bの割合と磁石密度の関係を示す特性図
【図8】前駆体Bの割合と(BH)maxの関係を示す特性図
【図9】保磁力と(BH)maxの関係を示す特性図
【図10】(a)多結晶集合型希土類磁石粉末の割合と密度を示す図
(b)磁気特性の関係を示す特性図
【図11】保磁力と(BH)maxの関係を示す特性図
【図12】磁石密度に対する磁気特性の関係を示す特性図
【図13】(a)多結晶集合型希土類磁石粉末の粒子径に対する密度を示す図
(b)磁気特性の関係を示す特性図
【図14】硬化温度と磁気特性の関係を示す特性図
【図15】圧縮圧力に対する密度、(BH)maxの関係を示す特性図
【図16】(a)コンパウンド前駆体A,Bから採取した希土類磁石粉末2種の圧縮前後の粒度分布を示す特性図
(b)比較のためにコンパウンド前駆体Bのみとした多結晶集合型磁石粉末の圧縮前後の粒度分布を示す特性図
【図17】(a)コンパウンド前駆体A,Bのグリーンコンパクト破断面の走査電子顕微鏡写真を示す特性図
(b)コンパウンド前駆体Bのみのグリーンコンパクト破断面の走査電子顕微鏡写真を示す特性図
【図18】不可逆磁束損失と永久減磁率を示す特性図
【符号の説明】
1 多結晶集合型希土類磁石粉末
2 単磁区粒子型希土類磁石粉末

Claims (21)

  1. 磁気的に異方性の多結晶集合型希土類磁石粉末、単磁区粒子型希土類磁石粉末、結合剤とのコンパウンドを、前記結合剤の熱硬化温度以下で配向磁界を印加しながら圧縮成形する際、単磁区粒子型希土類磁石粉末による緩衝作用によって多結晶集合型希土類磁石粉末相互の機械的損傷を抑制しながら緻密化し、然る後結合剤を加熱硬化した異方性ハイブリッド型希土類ボンド磁石。
  2. コンパウンド充填工程A1、磁界配向圧縮工程B2、脱磁工程B2、グリーンコンパクト取出工程A2を必須工程とした磁界中圧縮成形において、工程A1A2と工程B2B2とを隔離し、当該ダイセットが工程A1A2と工程B2B2間を移動する磁界中圧縮成形装置。
  3. 成形型、並びにダイセットの全ての部材を非磁性材料で構成した請求項2記載の磁界中圧縮成形装置。
  4. 磁界配向用電磁石の磁極間で複数の成形型キャビティにより多数個同時成形を行う請求項2、請求項3記載の磁界中圧縮成形装置。
  5. ダイセットの成形型キャビティが常用150℃の温度制御機能を有する請求項2記載の磁界中圧縮成形装置。
  6. 工程B2が、成形型キャビティに充填したコンパウンドを加熱下で配向磁界を印加する工程B21、配向磁界を印加しながら所定圧力までコンパウンドを圧縮してグリーンコンパクトとする工程B22、成形型キャビティ中のグリーンコンパクトを脱磁する工程B23とからなる請求項2記載の磁界中圧縮成形装置。
  7. コンパウンドに配向磁界を印加する工程B21において、磁界強度が1.4MA/m以上である請求項2記載の磁界中圧縮成形装置。
  8. 工程A1A2と工程B2B2とを、ダイセット2基にて交互に繰返す機構を付与した請求項2記載の磁界中圧縮成形装置。
  9. 工程A1と工程B2との間に、成形型キャビティから漏洩したコンパウンドを帯磁させることなく回収する工程C1を介し、工程C1にて回収したコンパウンドを再利用する請求項2記載の磁界中圧縮成形装置。
  10. 工程A2により得たグリーンコンパクトを加熱硬化する雰囲気が不活性ガス、または減圧下である請求項1記載のハイブリッド型希土類ボンド磁石。
  11. 異方性多結晶集合型希土類磁石粉末が平均粒子径75〜150μmの多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末である請求項1記載のハイブリッド型希土類ボンド磁石。
  12. 単磁区粒子型希土類磁石粉末が平均粒子径3〜5μmのSmFe17(x≒3)系希土類磁石粉末である請求項1記載のハイブリッド型希土類ボンド磁石。
  13. 単磁区粒子型希土類磁石粉末が平均粒子径3〜5μmのSmCo系希土類磁石粉末である請求項1記載のハイブリッド型希土類ボンド磁石。
  14. 多結晶集合型NdFe14B系希土類磁石粉末を80wt.%以下とした請求項1、請求項10記載のハイブリッド型希土類ボンド磁石。
  15. 結合剤の全量、もしくは当該成分の少なくとも一部によってグラニュール化した単磁区粒子型希土類磁石粉末と異方性多結晶集合型希土類磁石粉末とでコンパウンドを構成する請求項1記載のハイブリッド型希土類ボンド磁石。
  16. 結合剤の主成分を不飽和ポリエステルアルキドのアリル系共重合性単量体溶液とした請求項1、請求項15記載のハイブリッド型希土類ボンド磁石。
  17. 結合剤の主成分をジアリルフタレートプレポリマーのアリル系共重合性単量体溶液とした請求項1、請求項15記載のハイブリッド型希土類ボンド磁石。
  18. 結合剤の主成分をエポキシオリゴマーと当該エポキシの潜在性硬化剤とした請求項1、請求項15記載のハイブリッド型希土類ボンド磁石。
  19. 最大エネルギー積(BH)maxが150kJ/m以上である請求項1、請求項2記載のハイブリッド型希土類ボンド磁石と磁界中圧縮成形装置。
  20. 請求項1、請求項19記載の円弧状、もしくは環状磁石をした永久磁石回転子型小型ブラシレスモータ。
  21. 請求項1、請求項19記載の円弧状、もしくは環状磁石をした永久磁石界磁型小型直流モータ。
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