JP2004294977A - パターン作成方法及びパターン作成システム、マスク製造方法及びマスク製造システム、マスク、露光方法及び露光装置、並びにデバイス製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与する原版パターンデータを作成する。
【解決手段】対象号機の投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報(フレアスプレッドファンクション)の情報を取得する(ステップ104)。次いで、投影光学系を介してウエハ上に転写すべき複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を、取得したフレアスプレッドファンクションと、対象となるパターン要素を中心としたフレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更し、その線幅変更後のパターン要素のデータを、そのパターン要素の作成データとして決定する(ステップ106〜114)。
【選択図】 図8
【解決手段】対象号機の投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報(フレアスプレッドファンクション)の情報を取得する(ステップ104)。次いで、投影光学系を介してウエハ上に転写すべき複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を、取得したフレアスプレッドファンクションと、対象となるパターン要素を中心としたフレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更し、その線幅変更後のパターン要素のデータを、そのパターン要素の作成データとして決定する(ステップ106〜114)。
【選択図】 図8
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パターン作成方法及びパターン作成システム、マスク製造方法及びマスク製造システム、マスク、露光方法及び露光装置、並びにデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、投影光学系を介して感光物体上に転写すべき複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素のデータを作成するパターン作成方法及びパターン作成システム、前記パターン作成方法を利用したマスク製造方法及びマスク製造システム、前記方法により製造されたマスク、該マスクを用いて露光を行う露光方法及び前記パターン作成方法の基礎データを取得することができる露光装置、並びに前記露光方法を用いたデバイス製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイスの微細パターンの形成に際しては、形成すべきパターンを4〜5倍程度に比例拡大して形成したマスク又はレチクル(以下、「レチクル」と総称する)のパターンを、投影露光装置を用いて、ウエハ等の被露光物体上に縮小転写する方法が用いられている。
【0003】
投影露光装置は、半導体素子(集積回路)の高集積化に伴う回路パターンの微細化に対応するために、その露光波長をより短波長側にシフトしてきた。現在、その波長はKrFエキシマレーザの248nmが主流となっているが、より短波長のArFエキシマレーザの193nmも実用化段階に入りつつある。そして、さらに短波長の波長157nmのF2レーザ(フッ素レーザ)のような、いわゆる真空紫外域と呼ばれる波長帯域の光源を使用する投影露光装置の提案も行なわれている。
【0004】
このような波長200nm以下の真空紫外光は、一般的なレンズ材料であるガラスにより強い吸収を受けるため、使用可能なレンズ材料は、合成石英か蛍石(フッ化カルシウム結晶)に限定される。特に、波長157nmのF2レーザ光を使用する場合には、レンズ材料は蛍石に限定される。
【0005】
また、露光波長の更なる短波長化のために、プラズマX線源やシンクロトロン放射光の波長10〜15nmのEUV(Extreme Ultraviolet)光を露光用照明光とする投影露光装置も研究されている。EUVの波長域では、使用可能なレンズ材料は全く無いので、光学系は凹面鏡,凸面鏡を組み合わせた反射光学系に限定される。
【0006】
その一方で、同一短波,同一開口数(NA:numeral aperture)の光学系を使用した状態で、解像度の向上を可能とする、位相シフトレチクルを用いた位相シフト法等の超解像技術も実用化されている。代表的な位相シフトレチクルは、レチクルパターン上の近接した透過部分に対して交互に位相シフト部材(位相シフト膜)を形成し、それらの透過部分からの透過光の位相を交互に反転させることで解像度を向上するもので、渋谷−レベンソン型と称されている。但し、この位相シフトレチクルを用いて高解像度を得るには、透過光に与えられる位相差は2値(その差は180度)に限定されるので、任意形状の回路パターンの転写像を、1枚の位相シフトレチクルを用いた露光で感光物体上に形成することはパターンレイアウト上、困難である。そこで、1枚の位相シフトレチクルと他のレチクルとを組み合わせ、これらのレチクル上のパターンを用いた合成露光により、ウエハ上に所望のパターン(の転写像)を形成する方法(2重露光)が実用化され、任意形状のパターンの形成に利用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述の露光波長の短波長化に伴い、レンズやミラーの表面に残存する微小な研磨残痕や傷によるフレアの光量の増大、及びレンズ材料の不均一性等に起因して発生するフレアの光量が増大してきた。特に、ArFレーザやF2レーザを光源とする露光装置では、投影光学系に蛍石レンズが必須となるが、蛍石結晶の不均一性に起因するフレアの増大が懸念されている。このフレアは、本来のパターン像の周囲に、広範囲に渡って微弱なフレア光が形成されるものである。
【0008】
レチクル上のパターンが、非常に離散的な透過パターンであるならば、各透過パターンの投影像とそれに伴うフレア像とは、相互に重なり合うことはない。このため、一のパターンのフレアが別のパターンの投影像の像強度を変化させることがなく、その結果、転写されるパターンの線幅を変化させることもない。
【0009】
しかしながら、複数のパターンがある程度の距離で近接して配置されると、一のパターンのフレアが別のパターンの像に重なり、レチクル上のパターンが被露光物体上の結像面で忠実に再現すること、すなわちパターン忠実度を悪化させ、そのパターンの転写像の線幅を変動させてしまうおそれがある。特に、高速動作が要求されるC−MOS−LSIの場合、素子内でのパターン線幅の均一性は極めて重要であり、上記のようにパターン相互間の近接度に応じてパターンの線幅が変動する現象の発生は到底看過できるものではない。
【0010】
また、反射光学系を用いるEUV露光装置についても、反射面の微小な凹凸や欠陥により生じるフレア光は大きいため、屈折光学系を用いる露光装置と同様に、転写するパターン相互間の近接度によってパターンの線幅が変動してしまうという現象が生じる蓋然性が高い。
【0011】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与する原版パターンデータを作成することができるパターン作成方法及びパターン作成システムを提供することにある。
【0012】
本発明の第2の目的は、光学的フレアの如何によらず、転写像のパターン忠実度を向上させることができるマスク及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の第3の目的は、光学的フレアの如何によらず、パターン要素を感光物体上に精度良く転写することができる露光方法を提供することにある。
【0014】
本発明の第4の目的は、転写像の忠実度が良好な原版パターンデータの作成に用いられる投影光学系の特性データを取得可能な露光装置を提供することにある。
【0015】
本発明の第5の目的は、高集積度のデバイスの生産性の向上を図ることができるデバイス製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、投影光学系(PL)を介して感光物体(W)上に転写すべき複数のパターン要素(P0〜P4)を、マスク(R)となる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素のデータを作成するパターン作成方法であって、前記複数のパターン要素のうち、対象となる少なくとも一つのパターン要素の線幅を、前記投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報と、前記対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更して、前記対象となるパターン要素の作成データを決定するパターン作成方法である。
【0017】
これによれば、投影光学系を介して感光物体上に転写すべき複数のパターン要素のうち、対象となる少なくとも一つのパターン要素の線幅が、投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報と、対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更され、その線幅変更後のパターン要素のデータが、そのパターン要素の作成データとして決定される。
【0018】
ここで、投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報と、対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて、対象となるパターン要素を投影光学系を介して感光物体上に転写する際に、実際に像面(感光物体)上に形成される光学像(の強度分布)を演算により推定することができる。すなわち、本発明では、マスクの製造段階の初期段階であるパターンのデータ(設計データ)の作成段階で、像面(感光物体)上に形成される光学像を考慮してパターン要素の線幅を、そのパターン要素の転写像の線幅が最適化されるように変更し、その線幅変更後のデータが、パターン要素の作成データとして決定される。勿論、対象となるパターン要素は複数あっても良く、その場合には、各パターン要素について線幅変更が行われる。そして、このようにして決定されたパターン要素データを用いて原版上にそのパターン要素が形成されることによりマスクが製造され、そのマスクを露光装置に搭載して露光を行うと、前記パターン要素の転写像が感光物体上に再現性良く形成されることとなる。このように、本発明によれば、光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与する原版パターンデータを作成することが可能となる。
【0019】
この場合において、請求項2に記載のパターン作成方法の如く、前記投影光学系を介して前記感光物体上に、前記複数のパターン要素を転写する際における、前記マスクを照明する露光用照明光(EL)の波長をλ、前記投影光学系のマスク側の開口数をNARとしたとき、前記所定の半径は、10×λ/NARから100×λ/NARの範囲内であることとすることができる。
【0020】
上記請求項1及び2に記載の各パターン作成方法において、請求項3に記載のパターン作成方法の如く、前記光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報は、前記光学的なフレアを含む点像強度分布関数であるフレアスプレッドファンクションであり、前記パターン要素の分布に関する情報は、前記複数のパターン要素が前記原版上に形成された場合の第1パターンの透過率分布関数であり、前記線幅の変更量は、前記フレアスプレッドファンクションと前記第1パターンの透過率分布関数とのたたみ込み積分(コンボリューション)の演算結果に基づいて決定されることとすることができる。
【0021】
上記請求項2に記載のパターン作成方法において、請求項4に記載のパターン作成方法の如く、前記光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報は、前記光学的なフレアを含む点像強度分布関数であるフレアスプレッドファンクションであり、前記パターン要素の分布に関する情報は、前記複数のパターン要素が前記原版上に形成された場合の第1パターンの透過率分布を、前記円内における1辺がλ/NARから5×λ/NAR程度の方形領域毎に平均した平均化透過率の分布関数であり、前記線幅の変更量は、前記フレアスプレッドファンクションと前記平均化透過率の分布関数とのたたみ込み積分の演算結果に基づいて決定されることとすることができる。
【0022】
上記請求項3及び4に記載の各パターン作成方法において、請求項5に記載のパターン作成方法の如く、前記線幅の変更量は、前記第1パターンとは異なる第2パターン上の所定の点を中心とする前記半径の円内に存在する他のパターン要素の分布に関する情報を、更に考慮して決定されることとすることができる。
【0023】
この場合において、請求項6に記載のパターン作成方法の如く、前記線幅の変更量の決定に際して、前記第2パターン上の前記パターン要素の分布に関する関数と前記フレアスプレッドファンクションとのたたみ込み積分の演算結果が考慮されることとすることができる。
【0024】
上記請求項3〜6に記載の各パターン作成方法において、請求項7に記載のパターン作成方法の如く、前記フレアスプレッドファンクションに代えて、該フレアスプレッドファンクションの中心部分に所定の修正を行った分布関数を使用するとともに、前記第1パターンの透過率分布に代えて、シミュレーションにより得られた、前記投影光学系を介して前記感光物体上に投影されるべき前記第1パターンの像強度分布に対応する関数を使用することとすることができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパターン作成方法により、原版に形成すべき複数のパターン要素のデータを作成する工程と;前記作成された複数のパターン要素のデータに従って、前記原版上に複数のパターン要素を形成する工程と;を含むマスクの製造方法である。
【0026】
これによれば、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパターン作成方法により、原版に形成すべき複数のパターン要素のデータが作成され、その作成された複数のパターン要素のデータに従って、前記原版上に複数のパターン要素が形成されて、マスクが製造される。この製造されたマスクを露光装置に搭載して露光を行うと、前記パターン要素の転写像が感光物体上に再現性良く形成される。従って、本発明によれば、光学的フレアの如何によらず、露光の際のパターン忠実度の向上に寄与するマスクを製造することが可能となる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のマスクの製造方法により製造されたマスクである。本発明のマスクを露光装置に搭載して露光を行うと、前記パターン要素の転写像が感光物体上に再現性良く形成される。
【0028】
請求項10に記載の発明は、マスク(R)に形成された複数のパターン要素(P0〜P4)を投影光学系(PL)を介して感光物体(W)上に転写する露光方法において、請求項8に記載のマスクの製造方法によって製造された前記マスクに対し、露光用照明光(EL)を照射し、前記マスク上の前記複数のパターン要素の少なくとも一部を前記投影光学系を介して前記感光物体上に転写することを特徴とする露光方法である。
【0029】
これによれば、請求項8に記載のマスクの製造方法によって製造されたマスクに対し、露光用照明光が照射され、前記マスク上の前記複数のパターン要素の少なくとも一部が投影光学系を介して感光物体上に転写される。従って、光学的フレアの如何によらず、パターン要素を感光物体上に精度良く転写することが可能となる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、波長λの紫外線を露光用照明光とし、マスク側の開口数がNARの投影光学系を備えた投影露光装置(9221〜922N)を用い、第1パターン(PA1)と第2パターン(PA2)とを含む複数のパターンを感光物体上に重ねて転写する露光方法であって、請求項5又は6に記載のパターン作成方法によって、前記第1パターンを構成する複数のパターン要素の作成データが、第2パターン上の他のパターン要素の分布に関する情報を考慮して決定され、その決定された作成データに対応する複数のパターン要素を含み原版上に形成された第1パターンに対して前記露光用照明光を照射し、前記第1パターンを前記投影光学系を介して前記感光物体上の所定の区画領域に転写する工程と;前記原版と同一又は異なる原版上に形成された前記第2パターンに対して前記露光用照明光を照射し、前記感光物体上の前記区画領域に前記第2パターンを前記投影光学系を介して転写する工程と;を含む露光方法である。
【0031】
これによれば、原版上に形成された複数のパターン要素を含む第1パターンに対して露光用照明光が照射され、第1パターンが投影光学系を介して感光物体上の所定の区画領域に転写される。また、前記原版と同一又は異なる原版上に形成された第2パターンに対して露光用照明光が照射され、前記感光物体上の前記区画領域に第2パターンが投影光学系を介して転写される。すなわち、感光物体上の所定の区画領域に第1パターンと第2パターンとが二重露光にて転写される。この場合、請求項5又は6に記載のパターン作成方法によって、前記第1パターンを構成する複数のパターン要素の作成データが、前記第2パターン上の他のパターン要素の分布に関する情報を考慮して決定され、その決定された作成データに対応する複数のパターン要素を含む前記第1パターンが原版上に形成されている。すなわち、第1パターンを構成する複数のパターン要素のデータは、その作成に際して第2パターン上の他のパターン要素の分布に関する情報を考慮して決定されているので、第2パターンの転写の際に、投影光学系から生じるフレアの影響で感光物体上に形成されている第1パターンの転写像の線幅が変動した際にその変動後の第1パターンの転写像の線幅が所望の値にほぼ一致するようになっている。
【0032】
従って、本発明によれば、二重露光にて第1パターンと第2パターンとを感光物体上に転写する際に、少なくとも第1パターンについては所望の線幅のパターン要素の転写像を得ることが可能となる。ここで、第1パターンとして、その転写時に投影光学系から生じるフレアが非常に小さくなるようなパターンを用いると、上記の二重露光に際して、第2パターンについても所望の線幅のパターン要素の転写像を得ることが可能となる。従って、本発明によれば、光学的フレアの如何によらず、パターン要素を感光物体上に精度良く転写することが可能となる。
【0033】
この場合において、請求項12に記載の露光方法の如く、前記第1パターンの転写時と前記第2パターンの転写時とで、前記感光物体に与えられる露光量が異なることとすることができる。
【0034】
この場合において、請求項13に記載の露光方法の如く、前記第1パターンを構成する複数のパターン要素の作成データの作成に際し、対象となるパターン要素の線幅の変更量は、前記第1パターンの転写時の前記露光量と前記第2パターンの転写時の前記露光量との比を更に考慮して決定されていることとすることができる。
【0035】
請求項14に記載の発明は、リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、前記リソグラフィ工程では、請求項10〜13のいずれか一項に記載の露光方法を用いることを特徴とするデバイス製造方法である。
【0036】
請求項15に記載の発明は、投影光学系(PL)を介して感光物体(W)上に転写すべき複数のパターン要素(P0〜P4)を、マスク(R)となる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素のデータを作成するパターン作成システムであって、前記投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報を取得する取得装置(930)と;前記複数のパターン要素のうち、対象となる少なくとも一つのパターン要素の線幅を、前記フレアを含む点像強度分布に関する情報と、前記対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更して、前記対象となるパターン要素の作成データを決定する処理装置(930)と;を備えるパターン作成システムである。
【0037】
これによれば、取得装置により、投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報が取得される。そして、処理装置により、投影光学系を介して感光物体上に転写すべき複数のパターン要素のうち、対象となる少なくとも一つのパターン要素の線幅が、取得装置により取得された前記点像強度分布に関する情報と、対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更され、その線幅変更後のパターン要素のデータが、そのパターン要素の作成データとして決定される。
【0038】
ここで、投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報と、対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて、対象となるパターン要素を投影光学系を介して感光物体上に転写する際に、実際に像面(感光物体)上に形成される光学像(の強度分布)を演算により推定することができる。すなわち、本発明では、マスクの製造段階の初期段階であるパターンのデータ(設計データ)の作成段階で、処理装置により、像面(感光物体)上に形成される光学像を考慮してパターン要素の線幅が、そのパターン要素の転写像の線幅が最適化されるように変更され、その線幅変更後のデータが、パターン要素の作成データとして決定される。勿論、対象となるパターン要素は複数あっても良く、その場合には、各パターン要素について線幅変更が行われる。そして、このようにして決定されたパターン要素データを用いて原版上にそのパターン要素が形成されることによりマスクが製造され、そのマスクを露光装置に搭載して露光を行うと、前記パターン要素の転写像が感光物体上に再現性良く形成されることとなる。このように、本発明によれば、光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与する原版パターンデータを作成することが可能となる。
【0039】
この場合において、請求項16に記載のパターン作成システムの如く、前記投影光学系を介して前記感光物体上に、前記複数のパターン要素を転写する際における、前記マスクを照明する露光用照明光の波長をλ、前記投影光学系のマスク側の開口数をNARとしたとき、前記所定の半径は、10×λ/NARから100×λ/NARの範囲内であることとすることができる。
【0040】
上記請求項15及び16に記載の各パターン作成システムにおいて、請求項17に記載のパターン作成システムの如く、前記光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報は、前記光学的なフレアを含む点像強度分布関数であるフレアスプレッドファンクションであり、前記パターン要素の分布に関する情報は、前記複数のパターン要素が前記原版上に形成された場合の第1パターンの透過率分布関数であり、前記処理装置は、前記フレアスプレッドファンクションと前記第1パターンの透過率分布関数とのたたみ込み積分の演算結果に基づいて前記線幅の変更量を決定することとすることができる。
【0041】
上記請求項16に記載のパターン作成システムにおいて、請求項18に記載のパターン作成システムの如く、前記光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報は、前記光学的なフレアを含む点像強度分布関数であるフレアスプレッドファンクションであり、前記パターン要素の分布に関する情報は、前記複数のパターン要素が前記原版上に形成された場合の第1パターンの透過率分布を、前記円内における1辺がλ/NARから5×λ/NAR程度の方形領域毎に平均した平均化透過率の分布関数であり、前記処理装置は、前記フレアスプレッドファンクションと前記平均化透過率の分布関数とのたたみ込み積分の演算結果に基づいて、前記線幅の変更量を決定することとすることができる。
【0042】
上記請求項17及び18に記載の各パターン作成システムにおいて、請求項19に記載のパターン作成システムの如く、前記処理装置は、前記第1パターンとは異なる第2パターン上の所定の点を中心とする前記半径の円内に存在する他のパターン要素の分布に関する情報を更に考慮して前記線幅の変更量を決定することとすることができる。
【0043】
この場合において、請求項20に記載のパターン作成システムの如く、前記処理装置は、前記線幅の変更量の決定に際して、前記第2パターン上の前記パターン要素の分布に関する関数と前記フレアスプレッドファンクションとのたたみ込み積分の演算結果を考慮することとすることができる。
【0044】
上記請求項17〜20に記載の各パターン作成システムにおいて、請求項21に記載のパターン作成システムの如く、前記フレアスプレッドファンクションに代えて、該フレアスプレッドファンクションの中心部分に所定の修正を行った分布関数を使用するとともに、前記第1パターンの透過率分布に代えて、シミュレーションにより得られた、前記投影光学系を介して前記感光物体上に投影されるべき前記第1パターンの像強度分布に対応する関数を使用することとすることができる。
【0045】
請求項22に記載の発明は、請求項15〜21のいずれか一項に記載のパターン作成システム(932)と;前記パターン作成システムにより作成されたパターンデータに基づいて、マスクとなるべき原版上にパターン要素を形成するパターン形成システム(942)と;を備えるマスク製造システムである。
【0046】
これによれば、請求項15〜21のいずれか一項に記載のパターン作成システムにより、原版に形成すべき複数のパターン要素のデータが作成され、パターン形成システムにより、その作成された複数のパターン要素のデータに基づいて、前記原版上に複数のパターン要素が形成されて、マスクが製造される。この製造されたマスクを露光装置に搭載して露光を行うと、前記パターン要素の転写像が感光物体上に再現性良く形成される。従って、本発明によれば、光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与するマスクを製造することが可能となる。
【0047】
請求項23に記載の発明は、第1面上に配置された回路パターンを像面側の開口数がNAWの投影光学系(PL)を介して第2面上に配置された感光物体上(W)に転写する露光装置であって、波長λの紫外線を露光用照明光として前記第1面上のパターンを照明する照明系(1、ILU)と;前記第1面上に微小開口パターン(66)が形成されたマスクが配置され、該マスクが前記照明系からの露光用照明光(EL)により照明された際に前記投影光学系を介して前記第2面上に形成される前記微小開口パターンの像の、半径10×λ/NAWから100×λ/NAWの範囲内における強度分布の情報を計測する計測装置(27,20)と;を備える露光装置である。
【0048】
これによれば、第1面(物体面)上に微小開口パターンが形成されたマスクが配置され、該マスクが前記照明系からの露光用照明光により照明された際に投影光学系を介して第2面(像面)上に形成される前記微小開口パターンの像の、半径10×λ/NARから100×λ/NARの範囲内における強度分布の情報を計測する計測装置を備えているので、その計測装置で計測される情報を用いて、上述した本発明のパターン作成方法を実行することにより、原版パターンのデータが作成される。そして、その作成されたデータに従って製造された原版のパターンを第1面上に配置し、その原版を照明系からの露光用照明光によって照明することにより、投影光学系を介して感光物体上に原版のパターンの転写像が忠実度良く形成される。
【0049】
この場合において、請求項24に記載の露光装置の如く、前記計測装置の計測結果の情報を記憶する記憶装置(50)及び記憶媒体の少なくとも一方を更に備えることとすることができる。
【0050】
【発明の実施の形態】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図11(B)に基づいて説明する。
【0051】
図1には、第1の実施形態に係る、システム10の全体構成が一部省略して示されている。
【0052】
この図1に示されるシステム10は、露光装置等のデバイス製造装置のユーザであるデバイスメーカ(以下、適宜「メーカA」と呼ぶ)の半導体工場内に構築された社内LANシステムである。このシステム10は、第1コンピュータ920を含みクリーンルーム内に設置されたリソグラフィシステム912と、該リソグラフィシステム912を構成する第1コンピュータ920に通信路としてのローカルエリアネットワーク(LAN)926を介して接続された第2コンピュータ930を含むパターン作成システムとしてのレチクル設計システム932と、第2コンピュータ930にLAN938を介して接続された工程管理用のコンピュータ940を含み別のクリーンルーム内に設置されたパターン形成システム942とを備えている。本実施形態では、レチクル設計システム932とパターン形成システム942とによって、マスク製造システムとしてのレチクル製造システムが構成されている。
【0053】
前記リソグラフィシステム912は、LAN918を介して相互に接続された中型コンピュータより成る第1コンピュータ920、第1露光装置9221,第2露光装置9222,……,第N露光装置922N(以下においては、適宜「露光装置922」と総称する)を含んで構成されている。
【0054】
図2には、前記第1露光装置9221の概略構成が示されている。この露光装置9221は、エネルギビームとしての真空紫外域に属する露光用照明光(以下、「照明光」と略述する)ELをマスクとしてのレチクルRに照射して、該レチクルRに形成されたパターンを投影光学系PLを介して感光物体としてのウエハW上に転写するステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、すなわちいわゆるスキャニング・ステッパである。
【0055】
この露光装置9221は、光源1及び照明ユニットILUを含み、照明光ELによりレチクルRを照明する照明系、レチクルRを保持するレチクルステージRST、レチクルRから射出される照明光ELをウエハW上に投射する投影光学系PL、ウエハWを保持するウエハステージWST等を備えている。
【0056】
前記光源1としては、ここでは、波長約120nm〜約190nmの真空紫外域に属する光を発する光源、一例として例えば出力波長157nmのフッ素レーザ(F2レーザ)が用いられているものとする。なお、光源として出力波長193nmのArFエキシマレーザ等を用いても構わない。
【0057】
光源1は、送光光学系(ビームライン)2を介して照明ユニットILUを構成する照明系ハウジング3の一端に接続されている。光源1は、実際には、照明ユニットILU及び投影光学系PL等を含む露光装置本体が設置されるクリーンルームとは別のクリーン度の低いサービスルーム、あるいはクリーンルーム床下のユーティリティスペースなどに設置されている。
【0058】
前記照明ユニットILUは、その内部を外部から隔離する照明系ハウジング3と、その内部に所定の位置関係で配置されたビームエキスパンダ等から成るビーム整形光学系4,5、オプティカル・インテグレータ(ホモジナイザ)としてのフライアイレンズ6、照明開口絞り(σ絞り)7、リレーレンズ8等を含む照明光学系とを含んで構成されている。
【0059】
フライアイレンズ6の射出側焦点面は、照明光学系の瞳面(レチクルR上の各位置への照明光の主光線が収束する面)と一致しており、この位置に照明開口絞り(σ絞り)7が配置されている。この照明開口絞り7は、虹彩絞りによって構成されているが、この照明開口絞り7は、不図示の絞り交換機構により、光軸近傍を遮光し光軸から離れた輪帯領域や複数個の領域上の照明光のみを透過させる変形照明絞りと、交換可能な構成となっている。
【0060】
なお、ビーム整形光学系4、5内の光学素子をズームレンズとして、フライアイレンズ6に入射する光束の径(集光状態)を上記虹彩絞りの径に合わせて可変とし、照明光の利用効率を向上させる構成としても良く、照明光学系のフライアイレンズ6よりも光源1側に、回折光学素子や多面体プリズムなどの傾向部材を設け、フライアイレンズ6の入射面上の照明光束の強度分布を、上記の変形照明絞り透過部に対応する位置に集中させ、照明光の利用効率を向上することもできる。この不図示の偏向部材も不図示の交換機構によって、偏向度合いの異なる数種の偏向部材を切り換えて使用可能とすることが望ましい。また、このような構成とする場合には、フライアイレンズ6の射出側焦点面の虹彩絞りや変形照明絞りを必ずしも設けなくても良い。
【0061】
なお、オプティカル・インテグレータとして、フライアイレンズ6に代えて、ガラス又は紫外線透過性結晶のロッド(内面反射型インテグレータ)を用いることも可能である。この場合には、照明光学系の構成を、ロッドに合わせて変更することとなる。
【0062】
照明ユニットILUによると、光源1を発し、送光光学系2を介して導かれた光束は、照明光学系中のビームエキスパンダ等の整形光学系4、5により整形され、フライアイレンズ6に入射する。これにより、フライアイレンズ6の射出側焦点面(照明光学系の瞳面)に多数の点光源より成る面光源(2次光源)が形成される。この2次光源から射出されるレーザビームを以下においては、「照明光EL」と呼ぶものとする。
【0063】
この2次光源から射出された照明光ELは、照明開口絞り7又は変形照明絞りを通過した後、リレーレンズ8により集光され、レチクルR上で長方形又は円弧状の照明領域(中心が投影光学系の光軸に略一致しX軸方向に細長く延びる領域)を均一な照度で照明する。なお、上記照明領域は、例えばリレーレンズ8を複数枚のレンズで構成し、その中にレチクルRに対する共役面(結像面)を形成し、そこに照明視野絞り(レチクルブラインド又はマスキングブレード)を設け、この視野絞りによって規定されるのが通常である。かかる照明光学系の構成は、例えば特開平6−349701号公報などに開示されており、本実施形態においても、該公報に記載の照明光学系を用いることもできる。
【0064】
ところで、真空紫外域の波長の光を露光光とする場合には、その光路から酸素、水蒸気、炭化水素系のガス等の、かかる波長帯域の光に対し強い吸収特性を有するガス(以下、適宜「吸収性ガス」と呼ぶ)を排除する必要がある。このため、本実施形態では、照明系ハウジング3の内部に、真空紫外域の光を吸収する特性が空気に比べて低い特定ガス、例えば窒素、及びヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトンなどの希ガス、又はそれらの混合ガス(以下、適宜「低吸収性ガス」と呼ぶ)を満たしている。この結果、照明系ハウジング3内の吸収性ガスの濃度は数ppm以下の濃度となっている。
【0065】
なお、本実施形態では、光源1及び送光光学系2内部の光路にも上記照明系ハウジング3と同様に低吸収性ガスが満たされている。
【0066】
前記レチクルステージRSTは、レチクルRを保持してマスク室としてのレチクル室15内に配置されている。このレチクル室15は、照明系ハウジング3とベローズ等から成る伸縮自在のシール部材9を介して隙間なく接合され、かつ投影光学系PLの鏡筒とシール部材29を介して隙間なく接合された隔壁18で覆われており、その内部のガスが外部と隔離されている。レチクル室15の隔壁18は、ステンレス鋼(SUS)等の脱ガスの少ない材料にて形成されている。
【0067】
レチクル室15の隔壁18の天井部には、レチクルRより一回り小さい矩形の開口が形成されている。なお、この開口部分に照明系ハウジング3の内部空間と、露光すべきレチクルRが配置されるレチクル室15の内部空間とを分離する透過部材を配置することもできる。この透過部材としては、照明ユニットILUからレチクルRに照射される照明光ELの光路上に配置されるため、真空紫外光である照明光ELの透過性の高い蛍石等の結晶材料によって形成することが望ましい。
【0068】
レチクルステージRSTは、レチクルRをレチクルステージ定盤19上でY軸方向に大きなストロークで直線移動するとともに、X軸方向とθz方向(Z軸回りの回転方向)に関しても微小駆動が可能な構成となっている。このレチクルステージRSTは、リニアモータ等を含む不図示のレチクル駆動系によって駆動される。
【0069】
なお、レチクルステージRSTとして、レチクル駆動系により、レチクルステージ定盤19上をY軸方向に所定ストロークで駆動されるレチクル粗動ステージと、このレチクル走査ステージ上に搭載されレチクルRを吸着保持してXY面内で微小駆動(回転を含む)されるレチクル微動ステージとを備える、粗微動型のステージを用いても良い。
【0070】
レチクル室15の隔壁18には、図2に示されるように、給気管路16の一端と、排気管路17の一端とがそれぞれ接続されている。給気管路16の他端は、不図示の低吸収性ガスの供給装置、例えばヘリウムガス供給装置に接続され、排気管路17の他端は不図示のバキュームポンプに接続されている。このような構成により、レチクル室15の内部にはヘリウムガス供給装置から送り込まれた高純度のヘリウムガスが常時フローされている。これは、本実施形態のように、真空紫外の露光波長を使用する露光装置では、酸素等の吸収性ガスによる露光光の吸収を避けるために、レチクルRの近傍も低吸収性ガスで置換する必要があるためである。このレチクル室15内も吸収性ガスの濃度が数ppm以下の濃度となっている。
【0071】
レチクル室15の隔壁18の−Y側の側壁には光透過窓71が設けられている。これと同様に図示は省略されているが、隔壁18の−X側(図2における紙面奥側)の側壁にも光透過窓が設けられている。これらの光透過窓は、隔壁18に形成された窓部(開口部)に該窓部を閉塞する光透過部材、ここでは一般的な光学ガラスを取り付けることによって構成されている。この場合、光透過窓71を構成する光透過部材の取り付け部分からのガス漏れが生じないように、取り付け部には、インジウムや銅等の金属シールや、フッ素系樹脂による封止(シーリング)が施されている。なお、上記フッ素系樹脂としては、80℃で2時間加熱し、脱ガス処理が施されたものを使うことが望ましい。
【0072】
前記レチクルステージRSTの−Y側の端部には、平面鏡から成るY移動鏡72YがX軸方向に延設されている。このY移動鏡72Yにほぼ垂直にレチクル室15の外部に配置されたY軸レーザ干渉計74Yからの測長ビームが光透過窓71を介して投射され、その反射光が光透過窓71を介してY軸レーザ干渉計74Y内部のディテクタによって受光され、Y軸レーザ干渉計74Y内部の参照鏡の位置を基準としてY移動鏡72Yの位置、すなわちレチクルRのY位置が検出される。
【0073】
同様に、図示は省略されているが、レチクルステージRSTの−X側の端部には、平面鏡から成るX移動鏡がY軸方向に延設されている。そして、このX移動鏡を介して不図示のX軸レーザ干渉計によって上記と同様にしてX移動鏡の位置、すなわちレチクルRのX位置が検出される。上記2つのレーザ干渉計の検出値(計測値)は制御装置20に供給されており、制御装置20では、これらのレーザ干渉計の検出値に基づいてレチクルステージRSTの位置制御を行うようになっている。
【0074】
このように、本実施形態では、レーザ干渉計、すなわちレーザ光源、プリズム等の光学部材及びディテクタ等がレチクル室15の外部に配置されているので、レーザ干渉計を構成するディテクタ等から仮に微量の吸収性ガスが発生しても、これが露光に対して悪影響を及ぼすことがないようになっている。
【0075】
前記投影光学系PLは、フッ素レーザ光である照明光ELに対して十分な透過性を有し、高性能レンズ材料として使用可能な均一性を有する、ホタル石(フッ化カルシウム結晶)、フッ化バリウム結晶、フッ化リチウム結晶等のフッ化物結晶から成る複数のレンズを含む光学系を、鏡筒で密閉したものである。投影光学系PLとしては、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小光学系が用いられている。このため、前述の如く、照明ユニットILUからの照明光ELによりレチクルRが照明されると、レチクルRに形成された前述の照明領域内のパターンが投影光学系PLによりウエハW上のショット領域に縮小投影され、パターンの縮小像が形成される。
【0076】
投影光学系PLの鏡筒には、給気管路30の一端と、排気管路31の一端とがそれぞれ接続されている。給気管路30の他端は、不図示のヘリウムガス供給装置に接続され、排気管路31の他端は、不図示のバキュームポンプに接続されている。このような構成により、投影光学系PLの鏡筒の内部には、ヘリウムガス供給装置から給気管路30を介して供給された例えば22℃の所定温度に管理された高純度のヘリウムガスが常時フローされている。これにより、投影光学系PL内部では、吸収性ガス(酸素、水蒸気、有機物等)の濃度は数ppm以下の濃度に維持されている。
【0077】
なお、投影光学系PLのレンズ材料が、熱膨張係数の大きなホタル石等の結晶材料に限られ場合には、レンズが照明光ELを吸収することにより発生する温度上昇が、レンズの結像特性等に対して与える影響が非常に大きいので、本実施形態では、上記低吸収性ガスのうち、冷却効果の大きなヘリウムガスを採用することとしている。
【0078】
前記ウエハステージWSTは、ウエハ室40内に配置されている。このウエハ室40は、投影光学系PLのフランジFLGとベローズ等から成るシール部材を介して隙間なく接合された隔壁41で覆われており、その内部のガスが外部と隔離されている。ウエハ室40の隔壁41は、ステンレス鋼(SUS)等の脱ガスの少ない材料にて形成されている。
【0079】
この場合、ウエハステージWSTの移動に伴なう振動の投影光学系PLへの伝達を防ぐため、投影光学系PLと隔壁41の間の気密には、柔らかいフィルム状のシール部材49が使用されており、その投影光学系PLへの取りつけ位置は、投影光学系PLの鏡筒側面に設けられたフランジFLG部分となっている。
【0080】
ウエハ室40内には、ベースBSが、複数の防振ユニット39を介して水平に支持されている。この防振ユニット39により、ウエハステージWSTの移動に伴う振動が投影光学系PLやレチクルRに伝達するのが効果的に抑制されている。なお、この防振ユニット39として、装置内の一部に固定された半導体加速度計等の振動センサの出力に基づいてベースBSを積極的に制振するいわゆるアクティブ防振装置を用いることは勿論可能である。
【0081】
前記ウエハステージWSTは、不図示のウエハホルダを介してウエハWを真空吸着等により吸着保持し、例えばリニアモータ等から成る不図示のウエハ駆動系によって前記ベースBSの上面に沿ってXY2次元方向に自在に駆動されるようになっている。
【0082】
ウエハ室40の隔壁41には、図2に示されるように、給気管路32の一端と、排気管路33の一端とがそれぞれ接続されている。給気管路32の他端は、不図示のヘリウムガス供給装置に接続され、排気管路33の他端は、不図示のバキュームポンプに接続されている。このような構成により、ウエハ室40の内部にはヘリウムガス供給装置から送り込まれた高純度のヘリウムガスが常時フローされている。これは、本実施形態のように、真空紫外域の露光波長の照明光ELを使用する露光装置では、酸素等の吸収性ガスによる露光光の吸収を避けるために、投影光学系PLからウエハWまでの光路についても低吸収性ガスで置換する必要があるためである。このウエハ室40内も吸収性ガスの濃度が数ppm以下の濃度となっている。
【0083】
なお、給気管路32の他端、排気管路33の他端を、それぞれ不図示のヘリウムガス供給装置に接続し、ヘリウムガス供給装置から給気管路32を介して常時例えば22℃に管理された高純度の窒素ガスをウエハ室40内に供給し、ウエハ室40内部のガスを排気管路33を介してヘリウムガス供給装置に戻し、このようにして、ヘリウムガスを循環使用する構成を採用しても良い。この場合、ヘリウムガス供給装置には、ガス精製装置を内蔵することが好ましい。なお、ウエハ室40内に圧力センサ、吸収性ガス濃度センサ等のセンサを設け、該センサの計測値に基づいて、制御装置20を介して窒素ガス供給装置に内蔵されたポンプの作動、停止を適宜制御することとしても良い。
【0084】
前述したレチクル室15や、投影光学系PLの鏡筒内についても、上記と同様に、ヘリウムガスを循環使用する構成等を、採用することとしても良い。
【0085】
前記ウエハ室40の隔壁41の−Y側の側壁には光透過窓38が設けられている。これと同様に、図示は省略されているが、隔壁41の−X側(図2における紙面奥側)の側壁にも光透過窓が設けられている。これらの光透過窓は、隔壁41に形成された窓部(開口部)に該窓部を閉塞する光透過部材、ここでは一般的な光学ガラスを取り付けることによって構成されている。この場合、光透過窓38を構成する光透過部材の取り付け部分からのガス漏れが生じないように、取り付け部には、インジウムや銅等の金属シールや、フッ素系樹脂による封止(シーリング)が施されている。なお、上記フッ素系樹脂としては、80℃で2時間、加熱し、脱ガス処理が施されたものを使うことが望ましい。
【0086】
前記ウエハステージWSTの−Y側の端部には、平面鏡から成るY移動鏡36YがX方向に延設されている。このY移動鏡36Yにほぼ垂直にウエハ室40の外部に配置されたY軸レーザ干渉計37Yからの測長ビームが光透過窓38を介して投射され、その反射光が光透過窓38を介してY軸レーザ干渉計37Y内部のディテクタによって受光され、Y軸レーザ干渉計37Y内部の参照鏡の位置を基準としてY移動鏡36Yの位置、すなわちウエハWのY位置が検出される。
【0087】
同様に、図示は省略されているが、ウエハステージWSTの−X側の端部には、平面鏡から成るX移動鏡がY方向に延設されている。そして、このX移動鏡を介してX軸レーザ干渉計によって上記と同様にしてX移動鏡の位置、すなわちウエハWのX位置が検出される。上記2つのレーザ干渉計の検出値(計測値)は制御装置20に供給されており、制御装置20では、これらのレーザ干渉計の検出値をモニタしつつウエハ駆動系を介してウエハステージWSTの位置制御を行うようになっている。
【0088】
このように、本実施形態では、レーザ干渉計、すなわちレーザ光源、プリズム等の光学部材及びディテクタ等が、ウエハ室40の外部に配置されているので、上記ディテクタ等から仮に微量の吸収性ガスが発生しても、これが露光に対して悪影響を及ぼすことがないようになっている。
【0089】
ウエハステージWST上のウエハWの近傍には、図2に示されるように、像強度分布検出器27が取り付けられている。この像強度分布検出器27は、投影光学系PLによって像面に投影される像の強度分布を計測するためのものである。図3には、この像強度分布検出器27の構成が拡大して示されている。この図3に示されるように、像強度分布検出器27は、中空の筐体82と、該筐体82内に収納された拡大光学系80及びCCD等から成る撮像素子81とを備えている。筐体82の上端面よりやや下方の位置には、その外周部にフランジ部82aが設けられている。筐体82は、ウエハステージWSTの上壁に形成された開口84を介して、上方からウエハステージWSTの内部空間にそのフランジ部82aより下側の部分が挿入され、フランジ部82aを介して筐体82がウエハステージWSTに固定されている。筐体82は、その上面が開口し、底部が閉塞された筒状の形状を有している。この筐体82の上面の開口は、その外側からカバーガラス86で覆われ、筐体82とカバーガラス86により囲まれた空間内には真空紫外域の光を吸収する特性が空気に比べて低い特定ガス(低吸収性ガス)が満たされている。カバーガラス86の上面には、クロム等の金属の蒸着により中央部に円形開口を有する遮光膜が形成されている。このため、後述する像強度分布の計測の際に、筐体の上方から投影光学系PLを介した照明光ELがカバーガラス86の円形開口(以下、便宜上「検出用開口」と呼ぶ)を介して筐体内部の拡大光学系80に入射するとともに、その際に遮光膜によって、周囲からの余計な(不要な)光が拡大光学系80に入射するのが遮られるようになっている。なお、像強度分布検出器として、ウエハステージWSTの側面などに、マグネット等を介して着脱自在の構成のものを採用し、像強度分布を計測する際にのみ、露光装置9221に取付けるようにしても良い。
【0090】
前記撮像素子81からの撮像信号は、不図示の信号処理回路及び信号線(有線又は無線)を介して、像強度分布検出器27が取り付けられた露光装置9221の制御装置20に供給されるようになっている。
【0091】
さらに、露光装置9221は、図2に示されるように、制御装置20によってオン・オフが制御される光源を有し、投影光学系PLの結像面に向けて多数の微小開口又はスリットの像を形成するための結像光束を光軸AXに対して斜め方向より照射する照射系60aと、それらの結像光束のウエハW表面での反射光束を受光する受光系60bとから成る射入射方式の多点焦点位置検出系(以下、単に「焦点位置検出系」と呼ぶ)を備えている。この焦点位置検出系としては、例えば特開平6−283403号公報に開示されるものと同様の構成のものが用いられる。
【0092】
制御装置20では、露光時等に、受光系60bからの焦点ずれ信号(デフォーカス信号)、例えばSカーブ信号に基づいて焦点ずれが零となるようにウエハWのZ位置及びXY面に対する傾斜をウエハ駆動系を介して制御することにより、オートフォーカス(自動焦点合わせ)及びオートレベリングを実行する。また、制御装置20では、後述する点像強度分布の計測の際に、焦点位置検出系(60a、60b)を用いて像強度分布検出器27のZ位置の計測及び位置合わせを行う。このとき、必要に応じて像強度分布検出器27の傾斜計測も行うようにしても良い。
【0093】
さらに、露光装置9221は、ウエハステージWST上に保持されたウエハW上のアライメントマーク及び基準マーク板(不図示)上に形成された基準マークの位置計測等に用いられる不図示のオフ・アクシス(off−axis)方式のアライメント系を備えている。このアライメント系としては、例えばウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標の像とを撮像素子(CCD等)を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系のセンサが用いられる。なお、FIA系に限らず、コヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する散乱光又は回折光を検出したり、その対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数)を干渉させて検出したりするアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることは勿論可能である。
【0094】
さらに、本実施形態の露光装置9221では、レチクルRの上方に、投影光学系PLを介してレチクルR上のレチクルマークとこれに対応するウエハステージWST上の不図示の基準板上の基準マークとを同時に観察するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から成る一対のレチクルアライメント系が設けられている。本実施形態では、レチクルアライメント系として、例えば特開平7−176468号公報などに開示されるものと同様の構成のものが用いられている。
【0095】
図1に戻り、前記レチクル設計システム932は、マスクとしてのレチクルに形成すべきパターンのデータを作成するためのシステムである。このレチクル設計システム932は、中型コンピュータ(又は大型コンピュータ)より成る第2コンピュータ930と、該第2コンピュータ930にLAN934を介して接続された小型コンピュータよりなる設計用の端末936A〜936Dとを備えている。端末936A〜936Dにおいて、それぞれ半導体素子等の各レイヤの回路パターン(チップパターン)に対応するレチクルパターンの部分的な設計が行われる。第2コンピュータ930は、本実施形態では、回路設計集中管理装置を兼ねており、この第2コンピュータ930により、各端末936A〜936Dにおける設計領域の分担等が管理されている。
【0096】
第2コンピュータ930は、各レイヤで使用されるレチクルパターンの設計データの情報を、LAN938を介してパターン形成システム942中の工程管理用のコンピュータ940に伝送する。
【0097】
前記パターン形成システム942は、レチクル設計システム932によって設計された転写用のパターンが形成されたレチクル(ワーキングレチクル)を製造するためのシステムである。このパターン形成システム942は、中型コンピュータより成る工程管理用のコンピュータ940、該コンピュータ940にLAN948を介して接続された電子ビーム描画装置(以下、「EB描画装置」と略述する)944及びコータ・デベロッパ(以下、「C/D」と略述する)946等を備えている。EB描画装置944とC/D946との間は、インタフェース部947を介してインラインにて接続されている。
【0098】
前記EB描画装置944は、フッ素(F)を混入した石英、あるいは蛍石(CaF2)等から成り所定の電子線レジストが塗布された基板(レチクルブランクス)上に電子ビームを用いて所定のパターンを描画する。
【0099】
前記C/D946は、レチクルブランクス上へのレジストの塗布及び露光(パターンの描画)後にそのレチクルブランクスの現像を行う。
【0100】
前記インタフェース部947の内部には、EB描画装置944中の真空の雰囲気中と、ほぼ大気圧の所定の気体の雰囲気中にあるC/D946との間でレチクルブランクスの受け渡しを行う基板搬送系が設けられている。
【0101】
この他、不図示ではあるが、このパターン形成システム942は、ワーキングレチクル用の複数のレチクルブランクス(基板)を収納するブランクス収納部が設けられている。
【0102】
ところで、各露光装置922を構成する投影光学系PLの解像度Rは、一般的に露光波長をλ、開口数をNAとすると、R=k・λ/NAの式で定義される。ここでkはレチクルや照明の条件及びレジストの性能で決まる係数である。
【0103】
投影光学系PLのレチクル側の開口数NARは、ウエハ側の開口数NAWに対して、レチクルRからウエハWへの縮小率倍になるため、レチクル側の解像度とウエハ側の解像度の比も、縮小率倍になる。
【0104】
この場合において、レチクル上に、この解像度に比べて小さな微小開口パターンを配置した際の像強度分布関数(点像強度分布関数)は、ベストフォーカス位置において第1種1次のベッセル関数となり、これに対応する点像は、半径0.61×λ/NA内に像エネルギの約85%が集中する像となる。
【0105】
しかしながら、真空紫外光を用いた露光装置における投影光学系では、真空紫外光の波長が極めて短いため、レンズやミラーの表面に残存する微小な研磨残痕や傷によるフレアが生じやすく、また不均一性の生じやすいレンズ材料(蛍石)を使用するので、これらの相乗効果により、上記点像の周囲に広範囲に広がる光学的なフレアが形成されてしまう。
【0106】
本実施形態の露光装置922では、ウエハステージWSTに取り付けられた前述の像強度分布検出器27を用いて、フレアを含めた点像強度分布の形状を計測することができる。ここで、この像強度分布検出器27を用いて、フレアを含めた点像強度分布(の形状)を計測する際の動作について簡単に説明する。この計測には、図4に示されるような、計測用レチクルRTが用いられる。この計測用レチクルRTは、クロム等の遮光膜から成る長方形のパターン領域のY軸方向の中央の長方形領域64内に、解像度に比べて小さな径の微小開口パターン66が多数マトリックス状の配置で形成されている。ここで、長方形領域64は、計測用レチクルRTの中心(レチクルセンタ)が投影光学系PLの光軸と略一致し回転誤差も補正された状態で、前述の照明領域に略一致するような配置とされている。また、この計測用レチクルRTのパターン領域のX軸方向の両側には、レチクル中心から等距離の位置に一対のアライメントマークRMが形成されている。
【0107】
上記のフレアを含めた点像強度分布の計測に際しては、オペレータ等による計測開始のコマンドの入力に応答して、制御装置20は、不図示のアライメント系の下方に像強度分布検出器27が位置するように、ウエハ駆動系を介してウエハステージWSTを移動させる。そして、制御装置20は、アライメント系により像強度検出器27に設けられた不図示の位置合わせマークを検出し、その検出結果とそのときのY軸レーザ干渉計37Y及びX軸レーザ干渉計の計測値とに基づいて位置合わせマークの位置座標を算出し、像強度分布検出器27の正確な位置を求める。そして、像強度分布検出器27の位置計測後、制御装置20は、以下のようにしてフレアを含めた点像強度分布の計測を実行する。
【0108】
まず、制御装置20は、不図示のレチクルローダにより計測用レチクルRTをレチクルステージRST上にロードする。計測用レチクルRTのロード後、制御装置20は、前述のレチクルアライメント系を用いて、計測用レチクルRTに形成された一対のレチクルアライメントマークRMを検出し、その検出結果に基づいて、計測用レチクルRTを所定の位置に位置合わせする。これにより、計測用レチクルRTの中心と投影光学系PLの光軸とがほぼ一致する。
【0109】
この後、制御装置20は、光源1に制御情報を与えてレーザビームを発光させる。これにより、照明ユニットILUからの照明光ELが、計測用レチクルRTに照射される。そして、計測用レチクルRTの多数の微小開口パターン66から射出された光が投影光学系PLを介して像面上に集光され、微小開口パターン66の像が像面に結像される。
【0110】
次に、制御装置20は、計測用レチクルRT上のいずれかの微小開口パターン(以下においては、「着目する微小開口パターン」と呼ぶ)の像が結像する結像点に像強度分布検出器27の前述の検出用開口の中心がほぼ一致するように、Y軸レーザ干渉計37Y及びX軸レーザ干渉計の計測値をモニタしつつ、ウエハ駆動系を介してウエハステージWSTを移動する。この際、制御装置20は、焦点位置検出系(60a、60b)の検出結果に基づいて、微小開口パターンの像が結像される像面に像強度分布検出器27のカバーガラス86の上面を一致させるべく、ウエハ駆動系を介してウエハステージWSTをZ軸方向に微少駆動する。このとき、必要に応じてウエハステージWSTの傾斜角も調整する。これにより、着目する微小開口パターンの像光束が検出用開口を介して拡大光学系80に入射し、撮像素子81の受光面に着目する微小開口パターンの像が結像される。
【0111】
そして、撮像素子81の受光面に形成された前述の微小開口パターンの像(この像は、投影光学系PLからのフレアの影響を受けている)のエネルギ強度分布が撮像素子81で光電変換され、該光電変換信号が不図示の信号処理回路及び不図示の信号線を介して制御装置20に送られる。制御装置20では、その光電変換信号に基づいてフレアを含めた点像強度分布の形状に対応する点像強度分布関数を算出し、RAMに格納する。このとき、制御装置20には、X軸レーザ干渉計及びY軸レーザ干渉計37Yのそのときの計測値(Xi,Yi)が供給されている。
【0112】
上述のようにして、像強度分布検出器27による、1つの着目する微小開口パターンの像の結像点における点像強度分布の形状の計測が終了すると、制御装置20では、次の微小開口パターン像の結像点に、像強度分布検出器27の検出用開口のほぼ中心が一致するように、ウエハステージWSTを移動する。この移動が終了すると、前述と同様にして、制御装置20により、光源1からレーザビームの発光が行われ、同様にして制御装置20によって各微小開口パターンの像の結像点における点像強度分布の形状(点像強度分布関数)が計測される。以後、他の微小開口パターンの像の結像点で同様の計測が順次行われる。
【0113】
このようにして、必要な計測が終了した段階では、制御装置20のRAMには、前述した各微小開口パターンの像の結像点における点像強度分布の形状(点像強度分布関数)と、各結像点の座標データ(各微小開口パターンの像の結像点における計測を行った際のX軸レーザ干渉計及びY軸レーザ干渉計37Yの計測値(Xi,Yi)とが格納されている。なお、上記計測時に前述の照明視野絞り(レチクルブラインド)を用いて、計測用レチクルRT上の着目する微小開口パターンのみ、あるいは少なくとも着目する微小開口パターンを含む一部領域のみが照明光ELで照明されるように、例えば微小開口パターン毎に、計測用レチクルRT上での照明領域の位置や大きさなどを変更しても良い。
【0114】
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、像強度分布検出器27及び制御装置20によって、レチクルステージRST(物体面)上に微小開口パターンが形成された計測用レチクルが配置され、該計測用レチクルが照明ユニットILUからの照明光ELにより照明された際に投影光学系PLを介してウエハ面(像面)上に形成される前記微小開口パターンの像の、半径10×λ/NARから100×λ/NARの範囲内におけるフレアを含めた強度分布の情報を計測する計測装置が構成されている。
【0115】
図5(A)、図5(B)には、上述の計測装置により計測されるフレアを含めた点像強度分布の形状の一例が示されている。このうち、図5(A)には、像面内(XY面内)でのフレアを含めた点像強度分布を表す等高線が示され、図5(B)には、図5(A)の点像強度分布のX軸上の分布が示されている。このフレアを含めた点像強度分布の形状に対応する点像強度分布関数を、以下では、フレアスプレッドファンクションFSFと呼ぶものとする。図5(A)、図5(B)では、フレアスプレッドファンクションFSFと同一の符号を付してフレアを含めた点像強度分布が示されている。フレアを含めた点像強度分布は、半径0.61×λ/NAW以内の中心で強い分布を示すと共に、その外周の半径10×λ/NAWから100×λ/NAW程度の範囲内に、弱い強度分布(フレア)を有するものとなる。このフレアの半径は、投影光学系PLを構成するレンズ材料の種類や品質、あるいは投影光学系PL自体の構成によって変動する。このフレアの半径は、投影光学系PLの解像度に比べれば遥かに大きいが、NAW=0.85、λ=157nmの場合で1.85〜18.5μm程度の実寸法であり微小な値である。
【0116】
制御装置20のRAM内には、上述のような、微小開口パターンの結像点毎に、フレアスプレッドファンクションFSF(x、y)が格納されている。
【0117】
次に、投影光学系PLを用いて、レチクル上のパターンをウエハに転写する場合に生じる、パターンの像の線幅がフレアの影響により変動する現象について、図6(A)、図6(B)及び図7(A)〜図7(C)に基づいて説明する。
【0118】
図6(A)には、遮光性のパターンエリアPA内に、投影光学系PLの解像度程度の線幅W0(図7(A)参照)を有する5本のライン状の透過部から成るライン・アンド・スペース(L/S)状のパターン要素(以下、「L/Sパターン要素」と記述する)P1,P2,P3,P4と、線幅W0の10倍程度の線幅L(図7(A)参照)を有する大面積の透過パターン要素P0と、が形成されたレチクルRAが示されている。但し、図6(A)では、各パターンの大きき(レチクルRAの大きさに対する各パターン要素の大きさの比率)は、図示及び説明の便宜上から、現実のものよりも誇張して示されている。この図6(A)に示されるように、L/Sパターン要素P1〜P4のうち、L/Sパターン要素P1とL/Sパターン要素P2とはX軸方向に所定間隔を隔てて配置され、L/Sパターン要素P3とL/Sパターン要素P4とはX軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。また、L/Sパターン要素P1とL/Sパターン要素P3はY軸方向に所定間隔を隔てて配置され、L/Sパターン要素P2とL/Sパターン要素P4とはY軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。すなわち、L/Sパターン要素P1〜P4の各中心点は、X軸方向及びY軸方向の各一対の辺を有する矩形(長方形)の各頂点位置に位置している。また、パターン要素P0はL字(より正確には逆L字)状の形状を有しており、L/Sパターン要素P1,P2,P4の中心点を結ぶL字(より正確には逆L字)に沿って配置されている。なお、パターン要素P0を以下では便宜上「大透過パターン要素P0」と呼ぶものとする。
【0119】
上記各透過パターン要素を透過した光束は、投影光学系PLを介してウエハW上に像を形成する。これらの像(光学像)は、概ね、図5(A)及び図5(B)に示されるフレアを含んだ点像強度分布に対応するフレアスプレッドファンクションFSFと、図6(A)のパターンの透過部形状に対応する透過率分布関数との2次元コンボリューションとなる。そして、大透過パターン要素P0の周囲では、フレアの強度が強いため、そのフレアがウエハ上に形成される像に与える影響は残りの透過パターン、すなわちL/Sパターン要素P1,P2,P3,P4の周囲で発生するフレアがウエハ上に形成される像に与える影響に比べて格段大きくなる。
【0120】
この場合、図6(A)の各パターンの配置から明らかなように、L/Sパターン要素P1〜P4のうち、L/Sパターン要素P2では、+X側と+Y側の2方向で大透過パターン要素P0に近接しているため、大透過パターン要素P0からのフレアの影響を強く受け、その像強度(像を形成するエネルギ強度)は増大することとなる。その反対に、大透過パターン要素P0に対し、いずれの方向についても最も離れたL/Sパターン要素P3では、大透過パターン要素P0からのフレアによる影響を殆ど受けず、その像強度は殆ど増大しない。
【0121】
残りのL/Sパターン要素P1,P4では、+Y側又は+X側でのみ大透過パターン要素P0に近接しているため、L/Sパターン要素P2とL/Sパターン要素P3の中間程度のフレアを大透過パターン要素P0から受け、その像強度は、ある程度増大することとなる。
【0122】
このため、ウエハW上に形成される上記L/Sパターン要素P1,P2,P3,P4の転写像(レジスト像)は、フレアの影響の程度に応じて、それぞれの線幅が変動することとなる。
【0123】
ここで、この転写像の線幅変動の発生原理について、図7(A)〜図7(C)を用いてさらに説明する。ここでは、説明を簡単にするために、投影光学系PLの投影倍率は、所定の倍率であるものとする。
【0124】
図7(A)には、図6(A)に示されるレチクルRA上のL/Sパターン要素P4及び大透過パターン要素P0付近の拡大断面図(XZ断面図)が示されている。L/Sパターン要素P4は、前述のように、投影光学系PLの解像限界程度の線幅W0を有する5本の線状の透過パターンから成るL/Sパターン要素であり、その一側(+X側)に近接して、線幅W0の10倍程度の線幅Lを有する大透過パターン要素P0が存在する。
【0125】
図7(B)には、レチクルRA上のL/Sパターン要素P4及び大透過パターン要素P0の投影光学系PLによるウエハW上への投影像(空間像)の像強度分布が示されている。この図7(B)に示されるように、大透過パターン要素P0を透過した光によってウエハW上に形成される像の像強度分布は、大透過パターン要素P0と対応した位置に形成される主像ILの像強度分布と、その周辺に広がるフレアFLとを含む。同様に、L/Sパターン要素P4を透過した光(回折光)によってウエハW上に形成される像の像強度分布は、L/Sパターン要素P4に対応した位置に形成される像I4の像強度分布と、その周辺に広がるフレアとを含むが、そのフレア強度は、L/Sパターン要素P4の光透過部(開口部)面積が小さいために非常に小さく、無視できるレベルとなっている。
【0126】
この場合の露光により、実際には、ウエハ上の感光層(ポジ型のフォトレジスト)上に、図7(C)に示されるような、図7(B)中の各像強度分布を加算した像強度分布を有する合成像ICが形成される。そして、この露光後のウエハを現像すると、フォトレジストの高γな感光特性により、像強度がある閾値(SL)以上の部分でレジストが除去され、閾値SL以下ではレジストが残膜してパターンが形成される。すなわち、ウエハ上に形成されるL/Sパターン要素P4の転写像(レジスト像)のパターンの線幅は、合成像ICをレベルSLでスライスした幅Wwになる。この場合、線幅Wwは、図7(B)に示される理想的な線幅Wi(=W0×投影光学系PLの投影倍率)に比べて明らかに太くなっている。
【0127】
この場合において、図6(A)のL/Sパターン要素P3の空間像の像強度分布には、大透過パターン要素P0からのフレアによる像強度分布が加算されることがないため、ウエハ上に形成される、L/Sパターン要素P3の転写像(レジスト像)I3(図6(B)参照)の線幅は、図7(B)に示される像強度分布I4を閾値SLでスライスした理想的な線幅Wiと同じ線幅となる。
【0128】
残りのL/Sパターン要素P1はその一側に大透過パターン要素P0が近接しており、大透過パターン要素P0からのフレアによる影響がL/Sパターン要素P4と同程度であるため、L/Sパターン要素P1のウエハ上への転写像(レジスト像)I1の線幅は、上記L/Sパターン要素P4の転写像I4の線幅Wwと同程度となる。また、残りのL/Sパターン要素P2は、2方向で大透過パターン要素P0に近接しているため、大透過パターン要素P0からのフレアによる影響が最も大きく、L/Sパターン要素P2のウエハ上への転写像(レジスト像)I2の線幅は、上述の線幅Wwよりもさらに太くなる。
【0129】
このような原理により、ウエハW上には、図6(B)に示されるような線幅をそれぞれ有する、レチクルRA上のL/Sパターン要素P1〜P4及び大透過パターン要素P0の転写像I1〜I4、及びI0がそれぞれ形成される。
【0130】
ところで、最先端の高性能LSI(C−MOS−LSI等)では、各パターンの転写像の線幅が、レチクル上のパターンの配置位置によって変動することは大きな問題であり、高速動作可能なLSIの製造のためには、線幅変動の発生は極力抑制する必要がある。
【0131】
そこで、本実施形態では、レチクル上に形成すべきパターンのデータ(以下「レチクルパターンデータ」ともよぶ)の作成段階で、図1のレチクル設計システム932によって、基本となるレチクルパターンデータ中のパターン要素データの線幅の補正が行われる。
【0132】
次に、このレチクル設計システム932による製造対象のワーキングレチクル上に形成すべきレチクルパターンデータの作成処理について、レチクル設計システム932を構成する第2コンピュータ930(内部のCPU)の処理アルゴリズムを示す、図8のフローチャートに沿って説明する。なお、ここでは、製造対象のワーキングレチクルは、露光装置9221〜922Nのうちの特定の一台、例えば露光装置9221で用いられるものとする。
【0133】
このフローチャートがスタートするのは、図1に示される端末936A〜936Dより第2コンピュータ930に、製造対象のワーキングレチクルに形成すべきパターンの複数の部分的な設計データを含む情報が、LAN934を介してそれぞれ入力された時である。
【0134】
まず、ステップ102において、これらの情報の入力に応答して、全部の部分的な設計データを統合した1つのレチクルパターンの基本的な設計データを作成する。ここでは、図6(A)に示されるレチクルRAのパターンの基本的な設計データが作成されたものとする。
【0135】
次のステップ104では、作成したレチクルRAのパターンの基本的な設計データを、LAN926を介して第1コンピュータ920に送り、該第1コンピュータ920から、そのパターンの最適な転写のために対象号機(ここでは、露光装置9221)の露光条件(目標照明条件、目標露光量(レジスト感度に応じた適正露光量)、投影光学系の使用NAなどの情報を含む)の情報、及び投影光学系の有効視野(前述の照明領域に対応するスタティックフィールド)内の多数の計測点における前述のフレアスプレッドファンクションFSFの情報などを含む必要な情報を問い合わせ、取得する。このとき、対象号機(露光装置)9221では、事前に、投影光学系PLの有効視野内の多数の計測点におけるフレアスプレッドファンクションFSFが、前述の像強度分布検出器27を用いて、予め計測され、その計測結果が制御装置20のRAMなどのメモリ内に格納されているものとする。そこで、第1コンピュータ920では、そのメモリ内に格納された、フレアスプレッドファンクションFSFを制御装置20から取得する。
【0136】
なお、必ずしもこのようにする必要はなく、第1コンピュータ920では、第2コンピュータ930からの問い合わせに応じ、制御装置20に指示を与えてその時点で前述の計測処理を行わせて、フレアスプレッドファンクションFSFの計測結果を取得しても良い。
【0137】
いずれにしても、対象号機の露光条件(目標照明条件、目標露光量や、投影光学系の使用NAなどの情報を含む)の情報とともに、多数の計測点におけるフレアスプレッドファンクションFSFの情報が第1コンピュータ920から第2コンピュータ930に送られる。このとき、第1コンピュータ920は、必要な情報として投影光学系の設計データ(レンズデータ)などを送っても良い。
【0138】
そして、次のステップ106以降で、取得したフレアスプレッドファンクションFSFと、上記ステップ102で作成した設計データから得られるパターンの分布形状(明暗分布の形状)に対応する透過率分布関数とに基づいて、レチクルパターンを構成する各パターン要素の線幅の補正値を算出する。
【0139】
具体的には、ステップ106で次式(1)で示される、パターンの分布形状(明暗分布の形状)に対応する透過率分布関数P(x,y)と、フレアスプレッドファンクションFSF(x,y)との2次元コンボリューション演算を行って、投影光学系PLの像面に形成されるフレア込みの光学像における像強度分布(以下、「光学像」と呼ぶ)F(x,y)を算出する。
【0140】
F(x,y)=P(x,y)*FSF(x,y) ……(1)
ここで、上式(1)の演算の意味する内容について説明する。
【0141】
図9に示されるように、レチクルパターンの設計データ(2次元マップ)上の1点(補正検討対象点)O(O(x,y))を基準として、その点Oに対してフレアの影響を及ぼす半径HD(半径HDは、例えばレチクル上で10×λ/NARから100×λ/NAR程度)内のレチクルパターンの設計データから得られる透過率分布関数Pと、その点OにおけるフレアスプレッドファンクションFSFとの積和を計算することで、その点Oでの像強度を算出することができる。ここで、フレアスプレッドファンクションFSFのXYスケールは、レチクル側のスケール((1/縮小倍率)倍)に変換しておく。
【0142】
上記の積和計算を、レチクルパターンの設計データ上の全ての点について行なうことと、上述した式(1)の2次元コンボリューション演算とが等価である。
【0143】
なお、上記のフレア込みの光学像の算出は、上記の2次元コンボリューション演算(又は積和計算)に限らず、レチクルパターンの透過率分布関数Pのフーリエ変換と、フレアスプレッドファンクションFSFのフーリエ変換との双方を求め、それらの積を逆フーリエ変換することでも求めることができる。
【0144】
ところで、図5(A),図5(B)に示されるフレア込みの点像強度分布は、厳密には投影光学系PLの有効視野内の各点で、その形状が微妙に異なる。従って、より正確にフレアの影響による線幅変化を補正するためには、補正対象とするレチクルパターンの設計データ上の点が、レチクル製造後にそのレチクルが実際の露光装置に搭載された際に、その投影光学系の有効視野内のどの点(座標点)と対応するかを、各点について把握して、その点(又はその点の近傍)のフレアスプレッドファンクションFSFを用いることが望ましい。このため、本実施形態では、前述の如く、対象号機(露光装置9221など)の投影光学系PLの有効視野内の多数の計測点におけるフレアスプレッドファンクションFSFを、前述の像強度分布検出器27を用いて計測することとしているのである。
【0145】
但し、本実施形態のような走査型の露光装置(いわゆるスキャナなど)の場合には、多数点のフレアスプレッドファンクションFSFが必要となるのは、投影光学系の有効視野(スタティック・フィールド)内のスキャン方向(走査方向)に垂直な非スキャン方向(本実施形態ではX軸方向)のみであり、スキャン方向に平行な方向のフレアスプレッドファンクションFSFは、その方向の数点でのフレアスプレッドファンクションFSFを平均化したものを使用して、上記の2次元コンボリューション演算を行うこととしても良い。かかる場合には、対象号機における投影光学系PLのフレアスプレッドファンクションFSFの計測時間を短縮することができる。
【0146】
また、実際の露光装置の投影光学系のフレアスプレッドファンクションFSFが、有効視野(スタティック・フィールド)の場所によらずほぼ一定である場合には、視野内の1点におけるフレアスプレッドファンクションFSFをそのまま、あるいは視野内の複数点におけるフレアスプレッドファンクションFSFの平均値を、有効視野(スタティック・フィールド)内の全ての点で用い、上記の2次元コンボリューション演算を行うこととしても良い。かかる場合には、対象号機における投影光学系PLのフレアスプレッドファンクションFSFの計測時間を最も短くすることができるとともに、データ数の削減により2次元コンボリューション演算に要する時間をも最も短くすることができる。
【0147】
また、投影光学系のフレアスプレッドファンクションFSFの分布が、ある程度回転対称である場合には、この分布を回転対称とみなしても良い。かかる場合には、対象号機における投影光学系PLのフレアスプレッドファンクションFSFの計測及び2次元コンボリューション演算に関して、上記と同様にデータ数や処理時間の削減を図ることができる。
【0148】
いずれにしても、ステップ106の処理により、前述した図7(C)中の合成像ICと同様の光学像が得られることになる。
【0149】
次のステップ108では、上記ステップ106で算出した光学像を所定のスライスレベルでスライスして、各パターン要素の転写像の線幅を算出する。すなわち、前述した図7(C)に示されるように、得られた光学像(IC)を所定のスライスレベルSL(このスライスレベルは、ウエハ上に塗布されるフォトレジストの感度に応じて定められるが、その感度が未知の場合、例えばステップ104で取得した目標露光量に基づいて定めるものとする)でスライスし、図7(C)中の線幅Wwと同様にして、各パターン要素について線幅をそれぞれ算出する。
【0150】
次のステップ110では、上記ステップ108で算出したパターン要素毎に算出した線幅の各パターン要素の転写像の設計上の線幅に対する誤差(以下、「線幅誤差」という)が、全てのパターン要素で許容範囲内にあるかを判断する。そして、このステップ110における判断が肯定された場合、すなわち全てのパターン要素の転写像の線幅誤差が許容範囲内にある場合には、ステップ114に進んで、そのとき設定されているレチクルパターンデータを、最終的なレチクルパターンデータとして決定し、メモリ内に記憶した後、本ルーチンの一連の処理を終了する。
【0151】
この一方、上記ステップ110における判断が否定された場合、すなわち少なくとも1つのパターン要素で線幅誤差が許容範囲外であった場合には、ステップ112に移行し、その許容範囲外であった各パターン要素の転写像の線幅が所望の線幅、すなわち設計線幅に近づくように、レチクルパターンデータを変更(補正)する。
【0152】
このステップ112におけるレチクルパターンデータの変更(補正)処理に際しては、ステップ108で算出された補正対象のパターン要素の転写像の線幅から対応する設計線幅を減じ、この差の値が正の場合には、そのパターン要素の設計上の線幅を細くし、反対に上記差の値が負の場合には、そのパターン要素の設計上の線幅を太くする。いずれの場合も、線幅の変更(補正)は、例えばレチクルパターンの設計データ上のパターンエッジ(データ上の透過部と遮光部の境界)を、そのエッジと垂直な方向に所定量(所定グリッド)ずらすことにより行われる。
【0153】
上記のレチクルパターンデータの変更(補正)後、ステップ106に戻り、以後ステップ106→108→110→112のループの処理を、ステップ110における判断が肯定されるまで、繰り返す。これにより、補正後のレチクルパターンデータの形状(透過率分布関数)に対するフレア込みの光学像の算出、その光学像に対応する各パターン要素の転写像の線幅算出が、少なくとも1回繰り返し行われて、全てのパターン要素の転写線幅が許容範囲内となった場合に、ステップ114に進んで、そのとき設定されているレチクルパターンデータが、最終的なレチクルパターンデータとして決定され、メモリ内に記憶されることとなる。
【0154】
ここで、上述した第2コンピュータ930の処理による、パターン要素の線幅補正(変更)の一例について、図7(A)〜図7(C)及び図10(A)〜図10(C)を参照して説明する。すなわち、設計上の転写像の線幅がWiとなるべきパターン要素(L/Sパターン要素)P4(このパターン要素のレチクルパターンの設計データ上の線幅はW0)について、上記ステップ106、108の処理の結果、ステップ108で図7(C)中の線幅Wwが算出されたものとする。
【0155】
この場合、次のステップ110において、|Ww−Wi|≦B(Bはパターン要素の転写像の線幅誤差の許容値)を満足するか否かが判断される。ここで、|Ww−Wi|>Bである場合には、ステップ112に移行して、Ww−Wi>0又はWw−Wi<0のいずれが成り立つか否かが判断される。この場合、Ww−Wi>0であるので、パターン要素P4の線幅がW0より細くなるようにレチクルパターンデータが変更(補正)される。(なお、Ww−Wi<0の場合は、補正対象のパターン要素P4の線幅が、より太くなるように変更される。)。
【0156】
この結果、パターン要素P4の線幅が、例えば図10(A)に示されるように線幅Wn0に変更(補正)される。この変更後のパターン要素が図10(A)では、パターン要素P4’として示され、該パターン要素P4’が形成されたレチクルがレチクルRBとして示されている。上記の変更後に、再度、その変更(補正)後のパターン要素P4’について、ステップ106、108の処理が行われる。図10(C)には、上記補正の結果、ステップ108で算出されたパターン要素P4’のフレア込みの転写像の線幅がWiにほぼ一致した状態が示されている。この場合、図10(A)に示されるレチクルRB上のパターンP4’は、その像(投影光学系のフレアの影響がない場合の像)I4’単独では、図10(B)に示されるようにその線幅Wnが、Wiよりも細くなっている。
【0157】
なお、上記のように、パターン要素の線幅の1度の補正で、パターン要素の転写像の線幅が設計線幅にほぼ一致するとは限らず、その場合には、上記ステップ112→106→108→110のループが、複数回繰り返し行われることとなる。
【0158】
その他のパターン要素(L/Sパターン要素)P1、P2等についても、上記と同様にして、パターンの設計データの線幅補正が行われる。
【0159】
このように、本実施形態では、パターン要素の転写像の線幅(予測値)と設計線幅との大小関係に応じて、実際のレチクルの製造前に、対象号機(露光装置9221などのワーキングレチクルの使用が予定されている露光装置)の投影光学系PLのフレアの影響によるパターン要素の転写像の線幅誤差が許容範囲内になるように、レチクルパターンデータの線幅変更(補正)が行われ、その変更後のデータがレチクルパターンのデータとして作成されている。
【0160】
次に、上述のようにして、作成されたレチクルパターンデータが、第2コンピュータ930からLAN938を介してパターン形成システム942のコンピュータ940に送られる。
【0161】
次に、コンピュータ940の指示に基づき、基板搬送系により、不図示のブランクス収納部からワーキングレチクル用の基板、すなわちレチクルブランクス(蛍石、フッ素を混入した石英等から成る)が取り出され、C/D946に搬送される。この基板(レチクルブランクス)には予めクロム膜等の金属膜が蒸着されると共に、大まかな位置合わせ用のマークも形成されている。
【0162】
次に、コンピュータ940の指示に基づき、C/D946によりそのレチクルブランクス上に所定の電子線レジストが塗布される。
【0163】
次に、コンピュータ940は、先に送られてきた、レチクルパターンデータの情報に基づき、EB描画装置944を用いて、その電子線レジストが塗布されたレチクルブランクス上にそのレチクルパターンを描画する。
【0164】
このようにして、レチクルパターンが描画されたレチクルブランクスが、C/D946によってそれぞれ現像され、例えば電子線レジストがポジ型である場合には、電子線の照射されない領域のレジストパターンが、原版パターンとして残される。
【0165】
その後、その現像後の基板は不図示のエッチング部に搬送され、残されたレジストパターンをマスクとしてエッチングが行われる。更に、レジスト剥離などの処理を行うことでワーキングレチクル、例えば図11(A)に示されるレチクルRBの製造が完了する。
【0166】
なお、電子線レジストとして、露光装置9221で使用される照明光ELを吸収する(又は反射も可)色素が含まれるものを用いると、レチクルブランクスへの事前のクロム膜等の金属膜の蒸着や、現像後にレジストパターンが形成されたレチクルブランクスに対するエッチングなどを行うことなく、そのレジストパターンが形成されたレチクルブランクスをワーキングレチクルとして使用することも可能である。
【0167】
本実施形態のレチクル設計システム932及びパターン形成システム942によって、上述したようにして、レチクルRB、その他のワーキングレチクルが製造される。
【0168】
ところで、本実施形態に係る露光装置9221〜922Nでは、半導体デバイスの製造時には、デバイス製造用のワーキングレチクルがレチクルステージRST上に装填され、その露光が第2層目(セカンドレイヤ)以降の露光である場合には、その後、レチクルアライメント及びウエハアライメント系のいわゆるベースライン計測、並びにEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)等のウエハアライメントなどの準備作業が行われる。
【0169】
なお、上記のレチクルアライメント、ベースライン計測等の準備作業については、例えば例えば特開平7−176468号公報及びこれに対応する米国特許第5,646,413号に詳細に開示されており、また、これに続くEGAについては、特開昭61−44429号公報及びこれに対応する米国特許第4,780,617号などに詳細に開示されている。
【0170】
その後、ウエハアライメント結果に基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われる。なお、露光時の動作等は通常のスキャニング・ステッパと異なることがないので、詳細説明については省略する。
【0171】
上述のようにして、図11(A)に示されるレチクルRBのパターンが、前述の対象号機である露光装置9221を用いてウエハW上に転写され、そのウエハを現像することにより、図11(B)に示されるような転写像(レジスト像)を得ることができる。この図11(B)から明らかなように、本実施形態では、パターン要素P1〜P4のレジスト像I1〜I4の全てが所望の線幅(この場合同一線幅)となる。
【0172】
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、レチクル設計システム932を構成する第2コンピュータ930、より具体的には該第2コンピュータ930のCPUとソフトウェアプログラムとによって、取得装置及び処理装置が実現されている。すなわち、第2コンピュータ930のCPUが行うステップ104の処理によって取得装置が実現され、ステップ106〜ステップ112の処理によって処理装置が実現されている。
【0173】
以上詳細に説明したように、本実施形態のシステム10によると、レチクル設計システム932の第2コンピュータ930によって、対象号機(露光装置9221など)の投影光学系PLによって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報として投影光学系PLの有効視野内の多数の計測点(評価点)におけるフレアスプレッドファンクションFSFの情報が、第1コンピュータ920を介して取得される(図8のステップ104)。
【0174】
上記のフレアスプレッドファンクションFSFの情報の取得後、第2コンピュータ930によって、投影光学系PLを介してウエハ上に転写すべき複数のパターン要素のうち少なくとも対象となるパターン要素(フレアの影響により転写像の線幅が変化する可能性があるパターン要素、例えば、前述のL/Sパターン要素P1,P2,P4など)それぞれの線幅が、取得したフレアスプレッドファンクションFSFと、対象となるパターン要素のそれぞれを中心としたフレアの広がり領域のうち、所定の半径HD内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更され、その線幅変更後のパターン要素のデータが、そのパターン要素の作成データとして決定される(図8のステップ106〜114)。
【0175】
ここで、投影光学系PLによって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報である前述のフレアスプレッドファンクションFSFと、対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径HD内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報(レチクルパターンの設計データにおける透過率分布関数P)とに基づいて、対象となるパターン要素を投影光学系PLを介してウエハ上に転写する際に、実際に像面(ウエハ)上に形成される光学像(の強度分布)を演算により推定することができる(図8のステップ106参照)。
【0176】
すなわち、本実施形態のシステム10によると、レチクルの製造段階の初期段階であるレチクルパターンデータ(設計データ)の作成段階で、第2コンピュータ930により、像面(ウエハ)上に形成される光学像を考慮してパターン要素の線幅が、そのパターン要素の転写像の線幅が最適化されるように変更され、その線幅変更後のデータが、パターン要素の作成データとして決定される。
【0177】
そして、パターン形成システム942によって、前記決定されたパターン要素データに従い、レチクルブランクス(原版)上にそのパターン要素が形成されることによりレチクルRB等のワーキングレチクルが前述のようにして製造される。
【0178】
そして、その製造されたレチクルを、対象号機である露光装置9221のレチクルステージRST上にロードして、ステップ・アンド・スキャン方式で露光を行うことにより、そのレチクル上のパターン要素の転写像がウエハW上に再現性良く形成されることとなる。
【0179】
このように、本実施形態に係るパターン設計システム932及び該パターン設計システムで実行されるパターン決定方法によると、光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与するレチクルパターンデータを作成することが可能となる。
【0180】
また、本実施形態に係るレチクル製造システム(932、942)及び該レチクル製造システムで実行されるレチクル製造方法によると、転写像のパターン忠実度を向上させることができるレチクルを製造することが可能となる。
【0181】
また、前述の対象号機である露光装置9221で実行される露光方法によると、投影光学系PLの光学的フレアの如何によらず、レチクルRB上のパターン要素をウエハW上に精度良く転写することが可能となる。
【0182】
さらに、露光装置9221を含む本実施形態に係る露光装置922によると、前述の計測装置(27、20)を備えているので、該計測装置により、投影光学系PLの特性データとしてのフレア込みの点像強度分布の情報(例えばフレアスプレッドファンクションFSF)が計測され、その計測結果がメモリに記憶される。従って、そのメモリ内の情報を用いて、前述のレチクル設計システム932は前述のパターン作成方法を実行して転写像の忠実度が良好な原版パターンデータを作成することができる。
【0183】
なお、上記のフレア込みの点像強度分布の情報(フレアスプレッドファンクションFSF等)が、経時変化に応じて変動しないのであれば、フレア込みの点像強度分布の情報(フレアスプレッドファンクションFSF等)は、露光装置メーカのエンジニア等がその露光装置の工場出荷前に計測して、その計測結果を制御装置20に併設されたメモリ(又はハードディスク)等の記憶装置50に記憶しておく、あるいはCD(compact disc),DVD(digital versatile disc),MO(magneto−optical disc)あるいはFD(flexible disc)等の情報記録媒体にその計測結果を記録して露光装置の付属品としてユーザ(メーカA等のデバイス製造メーカ)に納入することとしても良い。このようにすると、露光装置に像強度分布検出器27を必ずしも装備しなくても良いとともに、メーカA等の作業者は、上記の記憶装置に記憶され、あるいは情報記録媒体に記録されたフレア込みの点像強度分布の情報(フレアスプレッドファンクションFSF等)を用いて、前述したレチクルパターンデータの作成方法を実行することができる。
【0184】
あるいは、露光装置メーカのサービスエンジニア等が、露光装置を半導体工場へ納入後にフレア込みの点像強度分布の情報(フレアスプレッドファンクションFSF等)を計測して、その計測結果を記憶装置50に記憶しておく、あるいは上記の情報記録媒体に記録しておくこととしても良い。
【0185】
なお、上記実施形態では、前述の半径HDが、10×λ/NARから100×λ/NARの範囲内であるものとしたが、本発明がこれに限定されないことは勿論である。
【0186】
なお、上記実施形態では、レチクルのパターンとして、遮光部の下地上に透過性のパターンが形成されるものとし、ウエハW上に形成されるレジスト除去パターンの線幅が所望の線幅になるようにパターンデータの線幅を変更する場合について説明したが、これに限らず、レチクルのパターンとして、透過部の下地上に遮光性のパターンが形成されたものを用い、ウエハW上に形成されるレジスト残膜パターンの線幅が所望の線幅になるようにパターンデータの線幅を変更する場合であっても、本発明のパターン作成方法は、同等の効果を得ることができる。この場合には、対象とするパターンの像に対してフレアが影響を及ぼす部位は、透過性の下地パターンとなる。
【0187】
また、上記実施形態では、レチクル製造システムを構成するパターン形成システム942として、EB描画装置944を用いて、パターンをレチクルブランクス上にダイレクトに描画する場合について説明したが、これに限らず、パターン描画装置によりマスターレチクル(親レチクル)を製造し、該新規なマスターレチクルと、予め用意しているマスターレチクルとを用いて、光露光装置によりそれらのマスターレチクルのパターンをレチクルブランクス上につなぎ露光にて順次転写することにより、ワーキングレチクルを製造することとしても良い。かかるワーキングレチクルの製造方法については、例えば、WO99/66370号などに詳細に開示されており、本実施形態においてもこの国際公開公報に開示される種々の手法をそのまま、あるいは一部変更して用いることができる。
【0188】
なお、上記実施形態では、投影光学系のフレア込みの点像強度分布に関する情報としてフレアスプレッドファンクションFSFを、実際に計測する場合について説明したが、これに限らず、レンズの設計データなどを用いて高度な光学シミュレーションにより、投影光学系の有効視野内のフレア込みの点像強度分布に関する情報(例えばフレアスプレッドファンクションFSF)を推定しても良い。
【0189】
ところで、上述したような光学的なフレアの影響によるもの以外でも、パターンの転写像の線幅が変化する現象として、パターンの近接度によって転写されたパターンの線幅や形状が変化する光近接効果(Optical Proximity Effect)と呼ばれる現象が知られている。しかし、この光近接効果の場合、その影響が生じる範囲は、照明光学系の照明条件等にも依るが、ウエハ側(開口数NAW)でパターンの周囲の半径2×λ/NAW程度の領域に限られる。これに比べて本発明が問題としている、フレアの影響が及ぶ範囲は、半径10×λ/NAWから100×λ/NAW程度と圧倒的に大きい。これは、光近接効果は、レチクルで回折する光が投影光学系の周辺を通過し、投影光学系自身がロー・パス・フィルタになったのと等価な現象により、複数の回折光の干渉状態が変化することが原因であるのに対し、フレアの影響は、先に説明したような理由により生じるためである。
【0190】
なお、最近のレチクルでは、各パターン要素の線幅を微少量変化させることで、上記光近接効果の補正(OPC:Optical Proximity Correction)を行なったものも増えてきている。OPCの場合にも、まずはレチクルパターンの設計データ上でパターン要素相互の近接度に応じて各パターン要素の線幅補正を行なうが、その手法は、上記実施形態の手法に近く、光学系の点像強度分布や照明条件を考慮して線幅補正を行っている。
【0191】
ところで、このようなOPCによる補正済みのレチクルパターンデータに対しては、上記実施形態で説明したフレアの影響によるパターン要素の線幅誤差の補正(以下、「本発明の第1のフレア補正」と呼ぶ)を、そのまま適用することは以下の理由により好ましくない。
【0192】
上述の通り本発明の第1のフレア補正において使用する投影光学像の強度分布(光学像)の算出方法は、レチクルパターンの透過率(エネルギ透過率)分布関数とフレアスプレッドファンクションとをコンボリューションするものであるから、その結果として得られる像は、インコヒーレント照明(コヒーレンスファクタが1の照明)により得られる像と等価になる。従って、上記のOPC補正の検討とは異なり、そのレチクルが実際に使用されるときの照明条件を考慮したものではない。これは、本発明の第1のフレア補正における光学像の計算は、レチクル上の広大なパターン領域を対象として計算する必要があるため、計算を高速化し、計算時間を短縮する必要があるためである。
【0193】
従って、本発明の第1のフレア補正において使用する光学像の計算方法には、近接効果を問題にするほど密集して配置されたレチクルパターンの投影像を正確に算出するほどの計算精度は無く、また、OPC補正されたレチクルパターンの、所定の照明条件下での投影像の線幅を正確に算出するほどの精度も無い。
【0194】
そこで、既にOPCによる補正がなされたレチクルパターンデータに対して本発明のフレア補正を行う際には、次のような方法(以下、「本発明の第2のフレア補正方法」と呼ぶ)を採用することが望ましい。
【0195】
すなわち、レチクルパターンの透過率データ(透過率分布関数)の代わりに、実際の照明条件及びその他の結像条件(露光波長、投影光学系開口数、レチクルが位相シフトレチクルであればその位相特性等)を考慮して、シミュレーションにより求めたOPC補正後のレチクルパターンの投影像の強度分布に対応する関数(強像分布関数)を使用する。
【0196】
同時に、フレアを含む点像強度分布に関する情報としては、図5(A)に示されるフレア込みの点像強度分布を修正し、例えばフレア込みの点像強度分布(フレアスプレッドファンクションFSF)内の、原点を中心とした、半径2×λ/NAW程度以内の部分の積算分布の積算値を、全て、例えば半径0.2×λ/NAW程度以内の部分に集中して分布させ、代わりに上記半径0.2×λ/NAW程度から2×λ/NAW程度の間での輪帯領域の分布を0にするように、その中心部分に対して修正を行った分布関数(フレア分布関数)を使用する。
【0197】
上記のフレア込みの点像強度分布の修正により、そのフレア分布関数と上記OPC補正後のレチクルパターンの投影像の強度分布関数とのコンボリューションに際して、上記照明条件及びその他の結像条件を考慮した投影像の計算で既に考慮済みの回折作用による原理的な像の劣化が、重複して影響することを防止できる。
【0198】
これにより、OPCによる補正がなされたレチクルパターンデータに対して、本発明のフレア補正(本発明の第2のフレア補正)を行うことが可能となる。
【0199】
なお、上記実施形態中では、説明の複雑化を防止するためにあえて触れなかったが、本発明のパターン決定方法を実施するに当たっては、以下のようにして計算に要する時間及びコストを削減することが望ましい。
【0200】
すなわち、現在の実際のレチクルデータマップのグリッド(最小分割サイズ)は、ウエハ上のスケールで1nm程度と微小である。縮小倍率1/4、NAW=0.85、λ=157nmの投影光学系では、その解像度はk=0.35としてウエハ側で65nm程度、レチクル側で260nm程度となる。一方、フレアの及ぶ半径はウエハ側換算で1.85〜18.5μm程度であるため、レチクル上の1点の投影像の算出で考慮すべき、このエリア(円)内のデータ数は、1850×1850×π≒1千万個から18500×18500×π≒10億個と膨大である。そして、当然ながらレチクル上のパターンデータの数だけ、この計算を行なう必要があり、その計算時間及び計算コストは膨大となる恐れがある。
【0201】
幸いにして、図5(A)及び図5(B)からもわかるように、フレア込みの点像強度分布(及びこれに対応するフレアスプレッドファンクションFSF)では、フレア起因でない通常の点像強度分布が支配的な、その中心部(半径2×λ/NA程度)を除き、位置に対する変化が緩やかである(急峻ではない)。
【0202】
従って、フレアスプレッドファンクションFSFとレチクル透過率分布関数とのコンボリューション演算に際して、最小グリッド(ウエハスケールで1nm角)の分解能を有する両関数を使用する代わりに、フレアスプレッドファンクションFSFの半径2×λ/NA程度より外側の部分の処理では、ウエハ側スケールで10nm角程度の、すなわち10×10=100個のグリッド内の両関数の平均値を使用して、コンボリューション演算を行なっても、計算精度を大きく悪化させることはない。
【0203】
この方法を採用すると、計算対象の殆どのエリアでのデータ数を1/100に低減できるため、フレア補正の計算時間を概ね1/100に短縮できる。勿論、10×10グリッド内の両関数の平均値の演算は、コンボリューション演算に先立って行っておき、1nm刻みのグリッドデータと、10nm刻みの平均化したグリッドデータの双方を使用して、コンボリューション演算を行なうことが、処理時間の短縮上望ましい。
【0204】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図12(A)〜図13に基づいて説明する。この第2の実施形態のシステムは、システム全体の構成は、前述した第1の実施形態のシステム10とほぼ同様になっている。従って、重複説明を省略する観点から、前述の第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともに、その説明を省略するものとする。
【0205】
但し、本第2の実施形態では、製造されたレチクルを用いて、いわゆる多重露光、一例として二重露光が行われるので、これに対応して、対象号機となる露光装置9221などの構成が幾分異なっている。すなわち、この第2の実施形態のリソグラフィシステムを構成する露光装置922は、二重露光を効率良く行なうために、不図示の高速のレチクル交換機構と、高速レチクルアライメント機構が搭載されている。また、前述の虹彩絞り7や変形照明絞りの交換機構、ズームレンズの駆動機構、回折光学素子等の傾向部材の交換機構などとして、1枚のウエハに対する二重露光に際して、高速に交換等が可能な構成が採用されている。また、レチクルを交換して多重露光を行なう際に、個々のレチクルでの露光の積算露光量を正確に制御可能な積算露光量制御系も備えている。但し、これら各構成部分の実現手段はいずれも公知であるので、ここでは、説明を省略する。
【0206】
また、本実施形態では、露光装置により二重露光が行われること、及びこれに対応してレチクル設計システム932の第2コンピュータ930によるパターンデータ作成の際の処理が、前述の第1の実施形態と幾分相違している。以下では、かかる相違点を中心として説明する。
【0207】
ここでは、図12(A)に示される第1パターンPA1が形成されたレチクルR1と、図12(B)に示される第2パターンPA2が形成されたレチクルR2とを用いて、対象号機(露光装置9221〜922Nのいずれか)で、ウエハWに対して二重露光を行い、そのウエハWを現像後にウエハW上の各ショット領域に図12(C)に示されるようなパターン(レジスト像)PDを形成する場合について説明する。
【0208】
図12(A)に示されるレチクルR1は、遮光部の下地DBGに5本のラインパターン(透過パターン)から成る複数のL/Sパターン要素Paが所定の配置で形成され、かつL/Sパターン要素Paを構成する各透過パターンは、隣接する透過パターン間の透過光の位相が180°異なる位相シフトレチクルである。一方、図12(B)に示される、レチクルR2は、透過部の下地BBG上に、遮光部から成る矩形のパターン要素Pbが、L/Sパターン要素Paに対応する配置で形成された通常のバイナリーレチクルである。この場合、各L/Sパターン要素Paが全体として占める矩形領域と、対応するパターン要素Pbとは、完全に重ね合わせることができるサイズとなっている。
【0209】
従って、レチクルR1上の第1パターンPA1とレチクルR2上の第2パターンPA2とを二重露光により重ね合わせて表面にポジ型レジストが塗布されたウエハW上に転写すると、各L/Sパターン要素Paのスペース部(隣接するラインパターンとラインパターンとの間の遮光部)に相当する4本のラインパターンの潜像がウエハ上のレジスト層に形成され、このウエハを現像することにより、図12(C)に示されるようなレジスト残膜部から成るパターン(レジスト像)PDが得られる。
【0210】
上記の二重露光(多重露光)の際に、転写されるパターンの1点(たとえば図12(C)中の点PDO)上に及ぼされるフレアは、2枚(複数枚)のレチクルR1、R2のパターンをそれぞれ介して及ぼされるフレアの総和になる。これは、二重露光(多重露光)の際には、1つのレチクルのパターンの転写のための第1回目の露光と、別のレチクルのパターンの転写のための第2回目の露光との間で、ウエハの現像が行われないため、第1回目の露光の際に1つのレチクルのパターンを介してフレアの影響を受けたレジスト層のある点に、第2回目の露光の際に別のレチクルのパターンを介してフレアが重ねて影響を与えるためである。
【0211】
従って、レチクル設計データ上でのフレア補正の際の計算も、2枚(複数枚)のレチクルR1、R2のパターンPA1、PA2によって像面上にそれぞれ形成されるフレア込みの光学像の総和に基づいて行う必要がある。
【0212】
次に、本第2の実施形態に係るレチクル設計システム932による、製造対象のワーキングレチクル(ここでは、二重露光で用いられるレチクル)上に形成すべきレチクルパターンデータの作成処理について、レチクル設計システム932を構成する第2コンピュータ930(内部のCPU)の処理アルゴリズムを示す、図13のフローチャートに沿って説明する。なお、ここでは、製造対象のワーキングレチクルは、露光装置9221〜922Nのうちの特定の一台、例えば9221で用いられるものとする。
【0213】
このフローチャートがスタートするのは、図1に示される端末936A〜936Dより第2コンピュータ930に、製造対象の2枚のワーキングレチクルに形成すべきパターンの部分的な設計データを含む情報が、LAN934を介してそれぞれ入力された時である。
【0214】
まず、ステップ122において、これらの情報の入力に応答して、複数の部分的な設計データを統合した1つのレチクルパターンの基本的な設計データを、2枚のレチクルのそれぞれについて作成する。
【0215】
ここでは、図12(A)、図12(B)にそれぞれ示されるレチクルR1、R2のパターンPA1、PA2の基本的な設計データがそれぞれ作成されたものとする。
【0216】
次のステップ124では、作成したレチクルR1,R2のパターンの基本的な設計データを、LAN926を介して第1コンピュータ920に送り、該第1コンピュータ920から、それらのパターンの最適な転写のために対象号機(ここでは、露光装置9221)で設定可能な露光条件(目標照明条件、目標露光量(レジスト感度に応じた適正露光量)や、投影光学系の使用NAなどの情報を含む)、及び投影光学系の有効視野内の多数の計測点における前述のフレアスプレッドファンクションFSFの情報などを含む必要な情報を問い合わせ、取得する。このとき、対象号機(露光装置)9221では、事前に、投影光学系PLの有効視野内の多数の計測点におけるフレアスプレッドファンクションFSFが、前述の像強度分布検出器27を用いて、予め計測され、その計測結果が制御装置20のRAMなどのメモリ内に格納されているものとする。そこで、第1コンピュータ920では、そのメモリ内に格納された、フレアスプレッドファンクションFSFを制御装置20から取得する。なお、この場合も、第1コンピュータ920では、第2コンピュータ930からの問い合わせに応じ、制御装置20に指示を与えてその時点で前述の計測処理を行わせて、フレアスプレッドファンクションFSFの計測結果を取得しても良い。
【0217】
いずれにしても、対象号機の露光条件(目標照明条件、目標露光量や、投影光学系の使用NAなどの情報を含む)の情報とともに、多数の計測点におけるフレアスプレッドファンクションFSFの情報が第1コンピュータ920から第2コンピュータ930に送られる。このとき、第1コンピュータ920は、必要な情報として投影光学系の設計データ(レンズデータ)などを送っても良い。
【0218】
次のステップ126で、次式(2)で示される2次元コンボリューション演算を行って、二重露光により投影光学系PLの像面に形成されるフレア込みの光学像における像強度分布(以下、「光学像」と呼ぶ)F1(x,y)+F2(x,y)を算出する。
【0219】
F1(x,y)+F2(x,y)
={P1(x,y)+P2(x,y)}*FSF(x,y) ……(2)
ここで、F1(x,y)は、第1パターンPA1を用いた第1回目の露光の際に投影光学系PLによって像面上に形成されるフレア込みの光学像(の強度分布)であり、またF2(x,y)は、第2パターンPA2を用いた第2回目の露光の際に投影光学系PLによって像面上に形成されるフレア込みの光学像(の強度分布)である。また、P1(x,y)は、第1パターンPA1の設計データにおける透過率分布関数であり、P2(x,y)は、第2パターンPA2の設計データにおける透過率分布関数である。
【0220】
ここで、上式(2)は、次のようにして導かれたものである。すなわち、レチクルR1,R2のそれぞれについて、前述の第1の実施形態と同様に、透過率分布関数とフレアスプレッドファンクションとのコンボリューション演算を行い、フレア込みの光学像(の強度分布)をそれぞれ算出すると、次式(3)、(4)のようになる。
【0221】
F1(x,y)=P1(x,y)*FSF(x,y) ……(3)
F2(x,y)=P2(x,y)*FSF(x,y) ……(4)
そこで、レチクルR1,R2との二重露光による光学像を求めるため、両者を加算することにより、上式(2)が得られるのである。
【0222】
上式(2)の演算に際しても、フレアスプレッドファンクションFSFのXYスケールは、レチクル側のスケール((1/縮小倍率)倍)に変換しておくことは言うまでもない。また、この場合も、上記のフレア込みの光学像の算出は、上記の2次元コンボリューション演算に限らず、レチクルパターンの透過率分布関数のフーリエ変換と、フレアスプレッドファンクションのフーリエ変換との双方を求め、それらの積を逆フーリエ変換することでも求めることができる。
【0223】
すなわち、上式(2)の演算の意味するところは、二重露光(多重露光)の際に形成される、例えば図12(C)の光学像(合成像)PDは、光学像PD上の1点PDOに対応するレチクルR1上の点PAOを中心とするフレアの影響を及ぼす半径HD内のパターンの形状分布データ(透過率分布関数P1)と、投影光学系PLによって生じるフレアを含む点像強度分布関数(フレアスプレッドファンクション)とのコンボリューション結果と、点PDOに対応するレチクルR2上の点(すなわち露光時にレチクルR1上の点PAOと重ね合わせられる点)PBOを中心とするフレアの影響を及ぼす半径HD内のパターンの形状分布データ(透過率分布関数P2)と投影光学系PLによって生じるフレアを含む点像強度分布関数(フレアスプレッドファンクション)とのコンボリューション結果との、加算結果として算出されるということである。ここでフレアの影響を及ぼす半径とは、例えば10×λ/NARから100×λ/NARである。
【0224】
この場合も、前述と同様に、多数点のフレアスプレッドファンクションFSFが必要となるのは、投影光学系の有効視野(スタティック・フィールド)内のスキャン方向(走査方向)に垂直な非スキャン方向(本実施形態ではX軸方向)のみであり、スキャン方向に平行な方向のフレアスプレッドファンクションFSFは、その方向の数点でのフレアスプレッドファンクションFSFを平均化したものを使用して、上記の2次元コンボリューション演算を行うこととしても良い。また、実際の露光装置の投影光学系のフレアスプレッドファンクションFSFが、有効視野(スタティック・フィールド)の場所によらずほぼ一定である場合には、視野内の1点におけるフレアスプレッドファンクションFSFをそのまま、あるいは視野内の複数点におけるフレアスプレッドファンクションFSFの平均値を、有効視野(スタティック・フィールド)内の全ての点で用い、上記の2次元コンボリューション演算を行うこととしても良い。また、投影光学系のフレアスプレッドファンクションFSFの分布が、ある程度回転対称である場合には、この分布を回転対称とみなしても良い。これらの場合には、投影光学系PLのフレアスプレッドファンクションFSFの計測及び2次元コンボリューション演算に関して、上記と同様にデータ数や処理時間の削減を図ることができる。
【0225】
いずれにしても、ステップ126の処理により、前述した図12(C)中の合成像PDと同様の光学像が得られることになる。
【0226】
次のステップ128では、上記ステップ126で算出した光学像を所定のスライスレベルでスライスして、各パターン要素の転写像の線幅を、前述のステップ108(図8参照)と同様にして算出する。
【0227】
次のステップ130では、上記ステップ128でパターン要素毎に算出した線幅の各パターン要素の転写像の設計上の線幅に対する誤差(線幅誤差)が、全てのパターン要素で許容範囲内にあるかを前述のステップ110と同様にして判断する。そして、この判断が肯定された場合には、ステップ134に進んで、そのとき設定されているパターンデータを、最終的なレチクルR1、R2のパターンデータとして決定し、メモリ内に記憶した後、本ルーチンの一連の処理を終了する。
【0228】
この一方、上記ステップ130における判断が否定された場合には、ステップ132に移行し、前述のステップ112と同様にして、許容範囲外であった各パターン要素の転写線幅が所望の線幅、すなわち設計線幅に近づくように、パターンデータを変更(補正)する。但し、このステップ132では、線幅が補正されるのは、最終的にウエハ上に形成される微細パターンを含んだパターン、例えばレチクルR1とレチクルR2の場合には、レチクルR1に形成すべき第1パターンのみとなる。勿論、製造対象である2つのレチクルが、共に最終的にウエハ上に形成される微細パターンを含む場合には、両レチクル上のパターンの線幅を変更(補正)する。
【0229】
上記のパターンデータの補正(又は変更)後、ステップ126に戻り、以後ステップ126→128→130→132のループの処理を、ステップ130における判断が肯定されるまで、繰り返す。これにより、全てのパターン要素の転写線幅が許容範囲内となった場合に、ステップ134に進んで、そのとき設定されているパターンデータが、最終的なレチクルR1、R2のパターンデータ、すなわち第1パターンPA1、第2パターンPA2としてそれぞれ決定され、メモリ内に記憶されることとなる。
【0230】
ところで、本実施形態のように、位相シフトレチクル(レチクルR1)と通常レチクル(レチクルR2)とで2重露光を行なう場合、両レチクルでの露光に際してのウエハへの露光量(積算露光エネルギ)が大きく異なる場合がある。このように、2枚の(あるいはより多数回の多重露光で使用する多数枚の)レチクル間で、露光時の露光量が異なる場合には、上記フレアの影響を解決するためのレチクル線幅補正時にも、レチクル毎に求めたフレア込みの光学像の加算に際して、レチクル毎の露光量比に応じた重みを用いた加重平均(重み付き平均)演算により求めた合成像に基づいて、各レチクル上パターンの線幅補正(線幅変更)を行うことが望ましい。
【0231】
この場合に、上記ステップ126の処理に代えて、次式(5)の演算により、線幅補正の基準となる、二重露光(多重露光)によりレジスト層に形成される転写像を算出することとすれば良い。
【0232】
F1,2(x,y)=a×F1(x,y)+b×F2(x,y)/(a+b)…(5)
ここで、a/(a+b):b/(a+b)=a:bは、レチクルR1を用いて露光を行う際の露光量とレチクルR2を用いて露光を行う際の露光量との比である。
【0233】
いずれにしても、上述のようにして、作成された第1パターンPA1、第2パターンPA2のデータが、第2コンピュータ930からLAN938を介してパターン形成システム942のコンピュータ940に送られる。
【0234】
そして、前述の第1の実施形態と同様にして、レチクル製造システム942によって、その表面に電子線レジストによって第1パターンPA1、第2パターンPA2がそれぞれ形成されたレチクルブランクス(原版)が形成される。その後、それらの原版はエッチング等の処理が行われ、さらに、一方の原版については位相シフトパターン形成用の描画、現像、エッチング等が施されて、例えば図12(A)、図12(B)に示されるレチクルR1、R2が製造される。
【0235】
そして、対象号機である露光装置9221で、半導体デバイスの製造時には、レチクルR1,R2を順次交換して二重露光が行われる。
【0236】
具体的には、最初のレチクルR1を用いた第1回目の露光に先立って、照明条件等の設定、レチクルアライメント及びウエハアライメント系のいわゆるベースライン計測、並びにEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)等のウエハアライメントなどの準備作業が行われる。そして、ウエハアライメント結果に基づいて、レチクルR1のパターンがウエハW上の複数のショット領域にステップ・アンド・スキャン方式で順次転写される。この際、レチクルR1上に形成された複数のL/Sパターン要素Paを含む第1パターンPA1に対して照明光ELが照射され、第1パターンPA1が投影光学系PLを介してウエハW上の各ショット領域にそれぞれ転写される。
【0237】
次に、レチクルR1からレチクルR2へのレチクル交換、レチクルR2に併せた照明条件等の切り替え設定、レチクルアライメントが行われ、前述のウエハアライメント結果に基づいて、レチクルR2のパターンが転写されたウエハW上の複数のショット領域に重ねてそれぞれ転写される。この際、レチクルR2上に形成された第2パターンPA2に対して照明光ELが照射され、ウエハ上のショット領域に第2パターンPA2が投影光学系PLを介して重ねて転写される。
【0238】
すなわち、このようにして、ウエハW上の複数のショット領域に第1パターンPA1と第2パターンPA2とが二重露光にて転写される。
【0239】
ここで、本第2の実施形態では、前述の如く、レチクル設計システム932により、第1パターンPA1を構成する複数のパターン要素Paの作成データが、第2パターンPA2上のパターン要素Pbの分布に関する情報(透過率分布関数)を考慮して決定され、その決定された作成データに対応する複数のパターン要素Paを含む第1パターンPA1がレチクルR1上に形成されている。すなわち、第1パターンPA1の複数のパターン要素Paのデータは、その作成に際して第2パターンPA2上の他のパターン要素Pbの分布に関する情報を考慮して決定されている。このため、第2パターンPA2の転写の際に、投影光学系PLから生じるフレアの影響でウエハW上に形成されている第1パターンPA1の転写像(潜像)の線幅が変化した際に、その変化後の第1パターンの転写像の線幅が所望の値にほぼ一致するようになっている。
【0240】
従って、本実施形態によると、二重露光により第1パターンと第2パターンとをウエハW上に転写する際に、少なくとも第1パターンPA1については所望の線幅のパターン要素の転写像を得ることが可能となる。この場合、最終的に形成されるレジスト像PDは、第1パターンPA1のみが原版となっているので、最終的なレジスト像の線幅は、設計上の線幅に略一致している。
【0241】
ここで、一般的な二重露光では、ウエハ上に最終的に形成されるレジスト像が、第1レチクルのパターンと第2レチクルのパターンとをともに原版として形成される場合もあるが、かかる場合にも、その転写時に投影光学系PLから生じるフレアが非常に小さくなるようなパターンを、線幅補正の対象パターンとする、あるいは両レチクルのパターンをともに線幅補正の対象パターンとすることにより、二重露光に際して、所望の線幅のパターン要素の転写像を得ることができる。
【0242】
以上の説明から明らかなように、本第2の実施形態によると、光学的フレアの如何によらず、二重露光により、パターン要素をウエハW上に精度良く転写することが可能となっている。
【0243】
なお、本発明の露光方法の一態様である、二重露光、あるいは二重露光を含む多重露光に使用するレチクルは、上記のような位相シフトレチクルと通常レチクルに限定されるわけではなく、位相シフトレチクル同士の多重露光、通常レチクル同士の多重露光や、ハーフトーン位相シフトレチクルを含む多重露光等、どのような多重露光に対しても本発明は適用可能である。ここで、位相シフトレチクル同士の多重露光、通常レチクル同士の多重露光などに用いられるレチクルを製造する場合、上記実施形態とは異なり、前述と同様にして2つのレチクルパターンデータを作成し、それらのレチクルパターンデータを同一の基板(レチクルブランクス)上に形成しても良い。
【0244】
なお、上記各実施形態では、上記フレアにより発生するウエハ転写像の線幅変化を、レチクル上のパターンの線幅を変化させることで補正する場合について説明したが、補正方法としては、これ以外の方法を採用することも可能である。例えば、レチクル上の各微細パターンの周囲のパターンの平均的な透過率を等しくするようなパターンレイアウトを採用することによっても補正することができる。より具体的には、例えば、あるパターンの周囲に、開口パターンが多い場合には、その周囲に遮光パターンを追加して、そのパターンの周囲の平均透過率(透過率の面積平均)を低下させるようなパターン補正を行なう。その逆に、あるパターンの周囲に、遮光パターンが多い場合には、その周囲に開口パターンを追加することにより、その周囲の平均透過率を向上させるようなパターン補正を行う。
【0245】
レチクル上の各部位で等しくすべき平均透過率は、この場合にも、ウエハ上のある1点にフレアを及ぼす半径内の範囲であり、レチクル上では、10×λ/NARから100×λ/NARである。ただし、実際のLSI用のレチクルでは、そのレチクルのパターンデータのみから、このような処理(部分的に明暗を反転させる処理)を行なうことは難しい。これは、任意のレチクルで、ある部分を遮光パターンから透過パターンに変えた場合、一般的には、その部分から、そのレチクルを用いたレイヤ(層)の露光で形成されるべき膜が形成されなくなることを意味する。従って、そのレイヤの前後のレイヤの露光で形成された膜間でショートが発生したり、電子デバイスの電気特性に何らかの影響を及ぼしたりすることが懸念されるからである。勿論、ある部分を透過パターンから遮光パターンに変えた場合にも同様の問題が発生する。
【0246】
そこで、このようなレチクル上の透過/開口部の部分的な反転により平均透過率を揃える方法は、単一のレチクルのデータだけでなく、その前後のレイヤの露光で用いられるレチクルのデータ(配線等の位置を含む)も参照した上で行なうことが望ましい。
【0247】
なお、上記各実施形態で説明したシステム構成は、一例であって、本発明に係るマスク製造システムなどがこれに限定されるものではない。例えば、図14に示されるシステムの如く、公衆回線926’をその一部に含む通信路を有するシステム構成を採用しても良い。
【0248】
この図14に示されるシステム1000は、露光装置等のデバイス製造装置のユーザであるメーカAの半導体工場内のリソグラフィシステム912と、該リソグラフィシステム912にその一部に公衆回線926’を含む通信路を介して接続されたマスクメーカ(以下、適宜「メーカB」と呼ぶ)側のレチクル設計システム932及びパターン形成システム942と、を含んで構成されている。
【0249】
この図14のシステム1000は、例えばメーカBが、メーカAからの依頼を受け、露光装置9221〜922Nのうちの少なくとも1台で使用が予定されているワーキングレチクルを製造する場合などに、特に好適である。
【0250】
また、上記各実施形態で説明したリソグラフィシステム912とレチクル製造システム942とを、同一のクリーンルーム内に設置しても良い。
【0251】
また、上記各実施形態及び図14の変形例では、第2コンピュータ930がハードディスクなど前述のレチクル設計プログラム(図8、図13参照)などが格納されていることを前提に説明を行ったが、これに限らず、例えば少なくとも1台の露光装置922が備えるCD−ROM等のドライブ装置にレチクル設計プログラムを記録したCD−ROMを装填し、CD−ROMドライブからレチクル設計プログラムをハードディスクなどの記憶装置内にインストール及びコピーしておいても良い。このようにすれば、露光装置922のオペレータが、自装置で使用が予定されているレチクルのパターン補正情報を得ることが可能になり、そのパターン補正情報を、電話、ファクシミリ、電子メールなどで、自社のマスク製造部門、又はマスクメーカなどに送るなどすることで好適なワーキングレチクルを確実に製造させることができる。
【0252】
なお、上記各実施形態では、F2レーザ(又はArFレーザ)を光源とし、屈折光学系から成る投影光学系を使用する露光装置を前提としたが、投影光学系はこれに限るものではなく、反射屈折光学系や反射光学系を使用する露光装置についても同様に適用可能であることは言うまでもない。反射光学系の場合、レンズ材料の不均一を原因とするフレアは発生しないが、反射面の微小な凹凸により同様なフレアが発生するので、本発明の適用によりフレアを補正することができる。
【0253】
また、光源についても上記2つのレーザに限られるものではなく、その他の光源、例えば出力波長146nmのクリプトンダイマーレーザ(Kr2レーザ)、出力波長126nmのアルゴンダイマーレーザ(Ar2レーザ)などを使用することもできる。露光波長についても例えば、波長10〜15nm程度のEUV光を使用することもできることは言うまでもない。
【0254】
なお、上記各実施形態では、露光装置としてスキャナを用いる場合について説明したが、これに限らず、例えば米国特許第5,243,195号等に開示されるマスクと物体とを静止した状態でマスクのパターンを物体上に転写する静止露光方式の露光装置(ステッパなど)を用いても良い。
【0255】
さらに、上記実施形態及び変形例では複数台の露光装置が同一構成であるものとしたが、照明光ELの波長が異なる露光装置を混用しても良いし、あるいは構成が異なる露光装置、例えば静止露光方式の露光装置(ステッパなど)と走査露光方式の露光装置(スキャナなど)とを混用しても良い。また、例えば国際公開WO99/49504号などに開示される、投影光学系PLとウエハとの間に液体が満たされる液浸型露光装置を用いても良い。
【0256】
この場合の露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、プラズマディスプレイ又は有機ELなどの表示装置、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0257】
《デバイス製造方法》
次に上述した露光装置をリソグラフィ工程で使用したデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
【0258】
図15には、デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートが示されている。図15に示されるように、まず、ステップ201(設計ステップ)において、デバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。この設計ステップで、前述したレチクル設計システムによるパターン決定が実行される。引き続き、ステップ202(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクル)を製作する。このマスク製作ステップで、前述のパターン形成システムによってマスク(レチクル)が製造される。一方、ステップ203(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
【0259】
次に、ステップ204(ウエハ処理ステップ)において、ステップ201〜ステップ203で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップ205(デバイス組立てステップ)において、ステップ204で処理されたウエハを用いてデバイス組立てを行う。このステップ205には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
【0260】
最後に、ステップ206(検査ステップ)において、ステップ205で作成されたデバイスの動作確認テスト、耐久テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
【0261】
図16には、半導体デバイスにおける、上記ステップ204の詳細なフロー例が示されている。図16において、ステップ211(酸化ステップ)においてはウエハの表面を酸化させる。ステップ212(CVDステップ)においてはウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ213(電極形成ステップ)においてはウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ214(イオン打ち込みステップ)においてはウエハにイオンを打ち込む。以上のステップ211〜ステップ214それぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0262】
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップ215(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップ216(露光ステップ)において、上で説明した露光装置及び露光方法によって上記ステップで製作されたマスク(レチクル)の回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップ217(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップ218(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップ219(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
【0263】
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0264】
以上説明した本実施形態のデバイス製造方法によると、設計ステップで、前述したレチクル設計システムによるパターン決定が実行され、引き続き、マスク製作ステップで、前述のパターン形成システムによってレチクル(マスク)が製造される。そして、露光工程(ステップ216)において上記実施形態の露光装置によりその製造されたレチクルを用いて露光が行われるので、精度良くレチクルのパターンをウエハ上に転写することができる。この結果、高集積度のデバイスの生産性(歩留まりを含む)を向上させることが可能になる。
【0265】
【発明の効果】
以上説明したように、パターン作成方法及びパターン作成システムによれば、光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与する原版パターンデータを作成することができるという効果がある。
【0266】
また、本発明のマスクによれば、光学的フレアの如何によらず、転写像のパターン忠実度を向上させることができ、また、本発明のマスクの製造方法によれば、そのようなマスクを製造することができる。
【0267】
また、本発明の露光方法によれば、光学的フレアの如何によらず、パターン要素を感光物体上に精度良く転写することができるという効果がある。
【0268】
また、本発明の露光装置によれば、転写像の忠実度が良好な原版パターンデータの作成に用いられる投影光学系の特性データを取得できるという効果がある。
【0269】
また、本発明のデバイス製造方法によれば、高集積度のデバイスの生産性の向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の一実施形態に係るシステムの全体構成を一部省略して示す図である。
【図2】図1の第1露光装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2の像強度分布検出器の構成を拡大して示す図である。
【図4】計測用レチクルを示す平面図である。
【図5】図5(A)、図5(B)は、計測装置により計測されるフレアを含めた点像強度分布の形状の一例を示す図である。
【図6】図6(A),図6(B)は、投影光学系を用いて、レチクル上のパターンをウエハに転写する場合に生じる、パターンの像の線幅がフレアの影響により変動する現象について説明するための図(その1)である。
【図7】図7(A)〜図7(C)は、投影光学系を用いて、レチクル上のパターンをウエハに転写する場合に生じる、パターンの像の線幅がフレアの影響により変動する現象について説明するための図(その2)である。
【図8】第1の実施形態に係るレチクル設計システムによる、製造対象のワーキングレチクル上に形成すべきレチクルパターンデータの作成処理アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図9】レチクルパターンの設計データ(2次元マップ)を示す図である。
【図10】レチクル設計システムにより線幅が変更されたパターン要素が形成されたレチクルを示す断面図、図10(B)は、そのレチクルの各パターン要素の像が互いに影響を受けることなく形成されたと仮定した光学像を示す図、図10(C)は、実際に投影光学系によって像面に形成されるレチクルの各パターン要素の光学像を示す図である。
【図11】図11(A)は、線幅補正後のレチクルを示す図であり、図11(B)は、該レチクルのパターンをウエハ上に転写し、ウエハを現像した状態を示す図である。
【図12】図12(A)、図12(B)は、第2の実施形態において、二重露光する際に用いられるレチクルR1,R2を示す図であり、図12(C)は、二重露光の結果ウエハ上に形成されるパターンを示す図である。
【図13】第2の実施形態に係るレチクル設計システムによる製造対象のワーキングレチクル上に形成すべきレチクルパターンデータの作成処理アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図14】システムの変形例を示す図である。
【図15】本発明に係るデバイス製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図16】図15のステップ204の具体例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…光源(照明系の一部)、20…制御装置(計測装置の一部)、27…像強度分布検出器(計測装置の一部)、50…記憶装置、66…微小開口パターン、9221〜922N…露光装置、930…第2コンピュータ(取得装置、処理装置)、932…レチクル設計システム(パターン作成システム、マスク製造システムの一部)、942…パターン形成システム(マスク製造システムの一部)、EL…照明光(露光用照明光)、ILU…照明ユニット(照明系の一部)、P0〜P4…パターン要素、PA1…第1パターン、PA2…第2パターン、PL…投影光学系、R…レチクル(マスク)、W…ウエハ(感光物体)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、パターン作成方法及びパターン作成システム、マスク製造方法及びマスク製造システム、マスク、露光方法及び露光装置、並びにデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、投影光学系を介して感光物体上に転写すべき複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素のデータを作成するパターン作成方法及びパターン作成システム、前記パターン作成方法を利用したマスク製造方法及びマスク製造システム、前記方法により製造されたマスク、該マスクを用いて露光を行う露光方法及び前記パターン作成方法の基礎データを取得することができる露光装置、並びに前記露光方法を用いたデバイス製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイスの微細パターンの形成に際しては、形成すべきパターンを4〜5倍程度に比例拡大して形成したマスク又はレチクル(以下、「レチクル」と総称する)のパターンを、投影露光装置を用いて、ウエハ等の被露光物体上に縮小転写する方法が用いられている。
【0003】
投影露光装置は、半導体素子(集積回路)の高集積化に伴う回路パターンの微細化に対応するために、その露光波長をより短波長側にシフトしてきた。現在、その波長はKrFエキシマレーザの248nmが主流となっているが、より短波長のArFエキシマレーザの193nmも実用化段階に入りつつある。そして、さらに短波長の波長157nmのF2レーザ(フッ素レーザ)のような、いわゆる真空紫外域と呼ばれる波長帯域の光源を使用する投影露光装置の提案も行なわれている。
【0004】
このような波長200nm以下の真空紫外光は、一般的なレンズ材料であるガラスにより強い吸収を受けるため、使用可能なレンズ材料は、合成石英か蛍石(フッ化カルシウム結晶)に限定される。特に、波長157nmのF2レーザ光を使用する場合には、レンズ材料は蛍石に限定される。
【0005】
また、露光波長の更なる短波長化のために、プラズマX線源やシンクロトロン放射光の波長10〜15nmのEUV(Extreme Ultraviolet)光を露光用照明光とする投影露光装置も研究されている。EUVの波長域では、使用可能なレンズ材料は全く無いので、光学系は凹面鏡,凸面鏡を組み合わせた反射光学系に限定される。
【0006】
その一方で、同一短波,同一開口数(NA:numeral aperture)の光学系を使用した状態で、解像度の向上を可能とする、位相シフトレチクルを用いた位相シフト法等の超解像技術も実用化されている。代表的な位相シフトレチクルは、レチクルパターン上の近接した透過部分に対して交互に位相シフト部材(位相シフト膜)を形成し、それらの透過部分からの透過光の位相を交互に反転させることで解像度を向上するもので、渋谷−レベンソン型と称されている。但し、この位相シフトレチクルを用いて高解像度を得るには、透過光に与えられる位相差は2値(その差は180度)に限定されるので、任意形状の回路パターンの転写像を、1枚の位相シフトレチクルを用いた露光で感光物体上に形成することはパターンレイアウト上、困難である。そこで、1枚の位相シフトレチクルと他のレチクルとを組み合わせ、これらのレチクル上のパターンを用いた合成露光により、ウエハ上に所望のパターン(の転写像)を形成する方法(2重露光)が実用化され、任意形状のパターンの形成に利用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述の露光波長の短波長化に伴い、レンズやミラーの表面に残存する微小な研磨残痕や傷によるフレアの光量の増大、及びレンズ材料の不均一性等に起因して発生するフレアの光量が増大してきた。特に、ArFレーザやF2レーザを光源とする露光装置では、投影光学系に蛍石レンズが必須となるが、蛍石結晶の不均一性に起因するフレアの増大が懸念されている。このフレアは、本来のパターン像の周囲に、広範囲に渡って微弱なフレア光が形成されるものである。
【0008】
レチクル上のパターンが、非常に離散的な透過パターンであるならば、各透過パターンの投影像とそれに伴うフレア像とは、相互に重なり合うことはない。このため、一のパターンのフレアが別のパターンの投影像の像強度を変化させることがなく、その結果、転写されるパターンの線幅を変化させることもない。
【0009】
しかしながら、複数のパターンがある程度の距離で近接して配置されると、一のパターンのフレアが別のパターンの像に重なり、レチクル上のパターンが被露光物体上の結像面で忠実に再現すること、すなわちパターン忠実度を悪化させ、そのパターンの転写像の線幅を変動させてしまうおそれがある。特に、高速動作が要求されるC−MOS−LSIの場合、素子内でのパターン線幅の均一性は極めて重要であり、上記のようにパターン相互間の近接度に応じてパターンの線幅が変動する現象の発生は到底看過できるものではない。
【0010】
また、反射光学系を用いるEUV露光装置についても、反射面の微小な凹凸や欠陥により生じるフレア光は大きいため、屈折光学系を用いる露光装置と同様に、転写するパターン相互間の近接度によってパターンの線幅が変動してしまうという現象が生じる蓋然性が高い。
【0011】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与する原版パターンデータを作成することができるパターン作成方法及びパターン作成システムを提供することにある。
【0012】
本発明の第2の目的は、光学的フレアの如何によらず、転写像のパターン忠実度を向上させることができるマスク及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の第3の目的は、光学的フレアの如何によらず、パターン要素を感光物体上に精度良く転写することができる露光方法を提供することにある。
【0014】
本発明の第4の目的は、転写像の忠実度が良好な原版パターンデータの作成に用いられる投影光学系の特性データを取得可能な露光装置を提供することにある。
【0015】
本発明の第5の目的は、高集積度のデバイスの生産性の向上を図ることができるデバイス製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、投影光学系(PL)を介して感光物体(W)上に転写すべき複数のパターン要素(P0〜P4)を、マスク(R)となる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素のデータを作成するパターン作成方法であって、前記複数のパターン要素のうち、対象となる少なくとも一つのパターン要素の線幅を、前記投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報と、前記対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更して、前記対象となるパターン要素の作成データを決定するパターン作成方法である。
【0017】
これによれば、投影光学系を介して感光物体上に転写すべき複数のパターン要素のうち、対象となる少なくとも一つのパターン要素の線幅が、投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報と、対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更され、その線幅変更後のパターン要素のデータが、そのパターン要素の作成データとして決定される。
【0018】
ここで、投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報と、対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて、対象となるパターン要素を投影光学系を介して感光物体上に転写する際に、実際に像面(感光物体)上に形成される光学像(の強度分布)を演算により推定することができる。すなわち、本発明では、マスクの製造段階の初期段階であるパターンのデータ(設計データ)の作成段階で、像面(感光物体)上に形成される光学像を考慮してパターン要素の線幅を、そのパターン要素の転写像の線幅が最適化されるように変更し、その線幅変更後のデータが、パターン要素の作成データとして決定される。勿論、対象となるパターン要素は複数あっても良く、その場合には、各パターン要素について線幅変更が行われる。そして、このようにして決定されたパターン要素データを用いて原版上にそのパターン要素が形成されることによりマスクが製造され、そのマスクを露光装置に搭載して露光を行うと、前記パターン要素の転写像が感光物体上に再現性良く形成されることとなる。このように、本発明によれば、光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与する原版パターンデータを作成することが可能となる。
【0019】
この場合において、請求項2に記載のパターン作成方法の如く、前記投影光学系を介して前記感光物体上に、前記複数のパターン要素を転写する際における、前記マスクを照明する露光用照明光(EL)の波長をλ、前記投影光学系のマスク側の開口数をNARとしたとき、前記所定の半径は、10×λ/NARから100×λ/NARの範囲内であることとすることができる。
【0020】
上記請求項1及び2に記載の各パターン作成方法において、請求項3に記載のパターン作成方法の如く、前記光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報は、前記光学的なフレアを含む点像強度分布関数であるフレアスプレッドファンクションであり、前記パターン要素の分布に関する情報は、前記複数のパターン要素が前記原版上に形成された場合の第1パターンの透過率分布関数であり、前記線幅の変更量は、前記フレアスプレッドファンクションと前記第1パターンの透過率分布関数とのたたみ込み積分(コンボリューション)の演算結果に基づいて決定されることとすることができる。
【0021】
上記請求項2に記載のパターン作成方法において、請求項4に記載のパターン作成方法の如く、前記光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報は、前記光学的なフレアを含む点像強度分布関数であるフレアスプレッドファンクションであり、前記パターン要素の分布に関する情報は、前記複数のパターン要素が前記原版上に形成された場合の第1パターンの透過率分布を、前記円内における1辺がλ/NARから5×λ/NAR程度の方形領域毎に平均した平均化透過率の分布関数であり、前記線幅の変更量は、前記フレアスプレッドファンクションと前記平均化透過率の分布関数とのたたみ込み積分の演算結果に基づいて決定されることとすることができる。
【0022】
上記請求項3及び4に記載の各パターン作成方法において、請求項5に記載のパターン作成方法の如く、前記線幅の変更量は、前記第1パターンとは異なる第2パターン上の所定の点を中心とする前記半径の円内に存在する他のパターン要素の分布に関する情報を、更に考慮して決定されることとすることができる。
【0023】
この場合において、請求項6に記載のパターン作成方法の如く、前記線幅の変更量の決定に際して、前記第2パターン上の前記パターン要素の分布に関する関数と前記フレアスプレッドファンクションとのたたみ込み積分の演算結果が考慮されることとすることができる。
【0024】
上記請求項3〜6に記載の各パターン作成方法において、請求項7に記載のパターン作成方法の如く、前記フレアスプレッドファンクションに代えて、該フレアスプレッドファンクションの中心部分に所定の修正を行った分布関数を使用するとともに、前記第1パターンの透過率分布に代えて、シミュレーションにより得られた、前記投影光学系を介して前記感光物体上に投影されるべき前記第1パターンの像強度分布に対応する関数を使用することとすることができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパターン作成方法により、原版に形成すべき複数のパターン要素のデータを作成する工程と;前記作成された複数のパターン要素のデータに従って、前記原版上に複数のパターン要素を形成する工程と;を含むマスクの製造方法である。
【0026】
これによれば、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパターン作成方法により、原版に形成すべき複数のパターン要素のデータが作成され、その作成された複数のパターン要素のデータに従って、前記原版上に複数のパターン要素が形成されて、マスクが製造される。この製造されたマスクを露光装置に搭載して露光を行うと、前記パターン要素の転写像が感光物体上に再現性良く形成される。従って、本発明によれば、光学的フレアの如何によらず、露光の際のパターン忠実度の向上に寄与するマスクを製造することが可能となる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のマスクの製造方法により製造されたマスクである。本発明のマスクを露光装置に搭載して露光を行うと、前記パターン要素の転写像が感光物体上に再現性良く形成される。
【0028】
請求項10に記載の発明は、マスク(R)に形成された複数のパターン要素(P0〜P4)を投影光学系(PL)を介して感光物体(W)上に転写する露光方法において、請求項8に記載のマスクの製造方法によって製造された前記マスクに対し、露光用照明光(EL)を照射し、前記マスク上の前記複数のパターン要素の少なくとも一部を前記投影光学系を介して前記感光物体上に転写することを特徴とする露光方法である。
【0029】
これによれば、請求項8に記載のマスクの製造方法によって製造されたマスクに対し、露光用照明光が照射され、前記マスク上の前記複数のパターン要素の少なくとも一部が投影光学系を介して感光物体上に転写される。従って、光学的フレアの如何によらず、パターン要素を感光物体上に精度良く転写することが可能となる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、波長λの紫外線を露光用照明光とし、マスク側の開口数がNARの投影光学系を備えた投影露光装置(9221〜922N)を用い、第1パターン(PA1)と第2パターン(PA2)とを含む複数のパターンを感光物体上に重ねて転写する露光方法であって、請求項5又は6に記載のパターン作成方法によって、前記第1パターンを構成する複数のパターン要素の作成データが、第2パターン上の他のパターン要素の分布に関する情報を考慮して決定され、その決定された作成データに対応する複数のパターン要素を含み原版上に形成された第1パターンに対して前記露光用照明光を照射し、前記第1パターンを前記投影光学系を介して前記感光物体上の所定の区画領域に転写する工程と;前記原版と同一又は異なる原版上に形成された前記第2パターンに対して前記露光用照明光を照射し、前記感光物体上の前記区画領域に前記第2パターンを前記投影光学系を介して転写する工程と;を含む露光方法である。
【0031】
これによれば、原版上に形成された複数のパターン要素を含む第1パターンに対して露光用照明光が照射され、第1パターンが投影光学系を介して感光物体上の所定の区画領域に転写される。また、前記原版と同一又は異なる原版上に形成された第2パターンに対して露光用照明光が照射され、前記感光物体上の前記区画領域に第2パターンが投影光学系を介して転写される。すなわち、感光物体上の所定の区画領域に第1パターンと第2パターンとが二重露光にて転写される。この場合、請求項5又は6に記載のパターン作成方法によって、前記第1パターンを構成する複数のパターン要素の作成データが、前記第2パターン上の他のパターン要素の分布に関する情報を考慮して決定され、その決定された作成データに対応する複数のパターン要素を含む前記第1パターンが原版上に形成されている。すなわち、第1パターンを構成する複数のパターン要素のデータは、その作成に際して第2パターン上の他のパターン要素の分布に関する情報を考慮して決定されているので、第2パターンの転写の際に、投影光学系から生じるフレアの影響で感光物体上に形成されている第1パターンの転写像の線幅が変動した際にその変動後の第1パターンの転写像の線幅が所望の値にほぼ一致するようになっている。
【0032】
従って、本発明によれば、二重露光にて第1パターンと第2パターンとを感光物体上に転写する際に、少なくとも第1パターンについては所望の線幅のパターン要素の転写像を得ることが可能となる。ここで、第1パターンとして、その転写時に投影光学系から生じるフレアが非常に小さくなるようなパターンを用いると、上記の二重露光に際して、第2パターンについても所望の線幅のパターン要素の転写像を得ることが可能となる。従って、本発明によれば、光学的フレアの如何によらず、パターン要素を感光物体上に精度良く転写することが可能となる。
【0033】
この場合において、請求項12に記載の露光方法の如く、前記第1パターンの転写時と前記第2パターンの転写時とで、前記感光物体に与えられる露光量が異なることとすることができる。
【0034】
この場合において、請求項13に記載の露光方法の如く、前記第1パターンを構成する複数のパターン要素の作成データの作成に際し、対象となるパターン要素の線幅の変更量は、前記第1パターンの転写時の前記露光量と前記第2パターンの転写時の前記露光量との比を更に考慮して決定されていることとすることができる。
【0035】
請求項14に記載の発明は、リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、前記リソグラフィ工程では、請求項10〜13のいずれか一項に記載の露光方法を用いることを特徴とするデバイス製造方法である。
【0036】
請求項15に記載の発明は、投影光学系(PL)を介して感光物体(W)上に転写すべき複数のパターン要素(P0〜P4)を、マスク(R)となる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素のデータを作成するパターン作成システムであって、前記投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報を取得する取得装置(930)と;前記複数のパターン要素のうち、対象となる少なくとも一つのパターン要素の線幅を、前記フレアを含む点像強度分布に関する情報と、前記対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更して、前記対象となるパターン要素の作成データを決定する処理装置(930)と;を備えるパターン作成システムである。
【0037】
これによれば、取得装置により、投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報が取得される。そして、処理装置により、投影光学系を介して感光物体上に転写すべき複数のパターン要素のうち、対象となる少なくとも一つのパターン要素の線幅が、取得装置により取得された前記点像強度分布に関する情報と、対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更され、その線幅変更後のパターン要素のデータが、そのパターン要素の作成データとして決定される。
【0038】
ここで、投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報と、対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて、対象となるパターン要素を投影光学系を介して感光物体上に転写する際に、実際に像面(感光物体)上に形成される光学像(の強度分布)を演算により推定することができる。すなわち、本発明では、マスクの製造段階の初期段階であるパターンのデータ(設計データ)の作成段階で、処理装置により、像面(感光物体)上に形成される光学像を考慮してパターン要素の線幅が、そのパターン要素の転写像の線幅が最適化されるように変更され、その線幅変更後のデータが、パターン要素の作成データとして決定される。勿論、対象となるパターン要素は複数あっても良く、その場合には、各パターン要素について線幅変更が行われる。そして、このようにして決定されたパターン要素データを用いて原版上にそのパターン要素が形成されることによりマスクが製造され、そのマスクを露光装置に搭載して露光を行うと、前記パターン要素の転写像が感光物体上に再現性良く形成されることとなる。このように、本発明によれば、光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与する原版パターンデータを作成することが可能となる。
【0039】
この場合において、請求項16に記載のパターン作成システムの如く、前記投影光学系を介して前記感光物体上に、前記複数のパターン要素を転写する際における、前記マスクを照明する露光用照明光の波長をλ、前記投影光学系のマスク側の開口数をNARとしたとき、前記所定の半径は、10×λ/NARから100×λ/NARの範囲内であることとすることができる。
【0040】
上記請求項15及び16に記載の各パターン作成システムにおいて、請求項17に記載のパターン作成システムの如く、前記光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報は、前記光学的なフレアを含む点像強度分布関数であるフレアスプレッドファンクションであり、前記パターン要素の分布に関する情報は、前記複数のパターン要素が前記原版上に形成された場合の第1パターンの透過率分布関数であり、前記処理装置は、前記フレアスプレッドファンクションと前記第1パターンの透過率分布関数とのたたみ込み積分の演算結果に基づいて前記線幅の変更量を決定することとすることができる。
【0041】
上記請求項16に記載のパターン作成システムにおいて、請求項18に記載のパターン作成システムの如く、前記光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報は、前記光学的なフレアを含む点像強度分布関数であるフレアスプレッドファンクションであり、前記パターン要素の分布に関する情報は、前記複数のパターン要素が前記原版上に形成された場合の第1パターンの透過率分布を、前記円内における1辺がλ/NARから5×λ/NAR程度の方形領域毎に平均した平均化透過率の分布関数であり、前記処理装置は、前記フレアスプレッドファンクションと前記平均化透過率の分布関数とのたたみ込み積分の演算結果に基づいて、前記線幅の変更量を決定することとすることができる。
【0042】
上記請求項17及び18に記載の各パターン作成システムにおいて、請求項19に記載のパターン作成システムの如く、前記処理装置は、前記第1パターンとは異なる第2パターン上の所定の点を中心とする前記半径の円内に存在する他のパターン要素の分布に関する情報を更に考慮して前記線幅の変更量を決定することとすることができる。
【0043】
この場合において、請求項20に記載のパターン作成システムの如く、前記処理装置は、前記線幅の変更量の決定に際して、前記第2パターン上の前記パターン要素の分布に関する関数と前記フレアスプレッドファンクションとのたたみ込み積分の演算結果を考慮することとすることができる。
【0044】
上記請求項17〜20に記載の各パターン作成システムにおいて、請求項21に記載のパターン作成システムの如く、前記フレアスプレッドファンクションに代えて、該フレアスプレッドファンクションの中心部分に所定の修正を行った分布関数を使用するとともに、前記第1パターンの透過率分布に代えて、シミュレーションにより得られた、前記投影光学系を介して前記感光物体上に投影されるべき前記第1パターンの像強度分布に対応する関数を使用することとすることができる。
【0045】
請求項22に記載の発明は、請求項15〜21のいずれか一項に記載のパターン作成システム(932)と;前記パターン作成システムにより作成されたパターンデータに基づいて、マスクとなるべき原版上にパターン要素を形成するパターン形成システム(942)と;を備えるマスク製造システムである。
【0046】
これによれば、請求項15〜21のいずれか一項に記載のパターン作成システムにより、原版に形成すべき複数のパターン要素のデータが作成され、パターン形成システムにより、その作成された複数のパターン要素のデータに基づいて、前記原版上に複数のパターン要素が形成されて、マスクが製造される。この製造されたマスクを露光装置に搭載して露光を行うと、前記パターン要素の転写像が感光物体上に再現性良く形成される。従って、本発明によれば、光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与するマスクを製造することが可能となる。
【0047】
請求項23に記載の発明は、第1面上に配置された回路パターンを像面側の開口数がNAWの投影光学系(PL)を介して第2面上に配置された感光物体上(W)に転写する露光装置であって、波長λの紫外線を露光用照明光として前記第1面上のパターンを照明する照明系(1、ILU)と;前記第1面上に微小開口パターン(66)が形成されたマスクが配置され、該マスクが前記照明系からの露光用照明光(EL)により照明された際に前記投影光学系を介して前記第2面上に形成される前記微小開口パターンの像の、半径10×λ/NAWから100×λ/NAWの範囲内における強度分布の情報を計測する計測装置(27,20)と;を備える露光装置である。
【0048】
これによれば、第1面(物体面)上に微小開口パターンが形成されたマスクが配置され、該マスクが前記照明系からの露光用照明光により照明された際に投影光学系を介して第2面(像面)上に形成される前記微小開口パターンの像の、半径10×λ/NARから100×λ/NARの範囲内における強度分布の情報を計測する計測装置を備えているので、その計測装置で計測される情報を用いて、上述した本発明のパターン作成方法を実行することにより、原版パターンのデータが作成される。そして、その作成されたデータに従って製造された原版のパターンを第1面上に配置し、その原版を照明系からの露光用照明光によって照明することにより、投影光学系を介して感光物体上に原版のパターンの転写像が忠実度良く形成される。
【0049】
この場合において、請求項24に記載の露光装置の如く、前記計測装置の計測結果の情報を記憶する記憶装置(50)及び記憶媒体の少なくとも一方を更に備えることとすることができる。
【0050】
【発明の実施の形態】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図11(B)に基づいて説明する。
【0051】
図1には、第1の実施形態に係る、システム10の全体構成が一部省略して示されている。
【0052】
この図1に示されるシステム10は、露光装置等のデバイス製造装置のユーザであるデバイスメーカ(以下、適宜「メーカA」と呼ぶ)の半導体工場内に構築された社内LANシステムである。このシステム10は、第1コンピュータ920を含みクリーンルーム内に設置されたリソグラフィシステム912と、該リソグラフィシステム912を構成する第1コンピュータ920に通信路としてのローカルエリアネットワーク(LAN)926を介して接続された第2コンピュータ930を含むパターン作成システムとしてのレチクル設計システム932と、第2コンピュータ930にLAN938を介して接続された工程管理用のコンピュータ940を含み別のクリーンルーム内に設置されたパターン形成システム942とを備えている。本実施形態では、レチクル設計システム932とパターン形成システム942とによって、マスク製造システムとしてのレチクル製造システムが構成されている。
【0053】
前記リソグラフィシステム912は、LAN918を介して相互に接続された中型コンピュータより成る第1コンピュータ920、第1露光装置9221,第2露光装置9222,……,第N露光装置922N(以下においては、適宜「露光装置922」と総称する)を含んで構成されている。
【0054】
図2には、前記第1露光装置9221の概略構成が示されている。この露光装置9221は、エネルギビームとしての真空紫外域に属する露光用照明光(以下、「照明光」と略述する)ELをマスクとしてのレチクルRに照射して、該レチクルRに形成されたパターンを投影光学系PLを介して感光物体としてのウエハW上に転写するステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、すなわちいわゆるスキャニング・ステッパである。
【0055】
この露光装置9221は、光源1及び照明ユニットILUを含み、照明光ELによりレチクルRを照明する照明系、レチクルRを保持するレチクルステージRST、レチクルRから射出される照明光ELをウエハW上に投射する投影光学系PL、ウエハWを保持するウエハステージWST等を備えている。
【0056】
前記光源1としては、ここでは、波長約120nm〜約190nmの真空紫外域に属する光を発する光源、一例として例えば出力波長157nmのフッ素レーザ(F2レーザ)が用いられているものとする。なお、光源として出力波長193nmのArFエキシマレーザ等を用いても構わない。
【0057】
光源1は、送光光学系(ビームライン)2を介して照明ユニットILUを構成する照明系ハウジング3の一端に接続されている。光源1は、実際には、照明ユニットILU及び投影光学系PL等を含む露光装置本体が設置されるクリーンルームとは別のクリーン度の低いサービスルーム、あるいはクリーンルーム床下のユーティリティスペースなどに設置されている。
【0058】
前記照明ユニットILUは、その内部を外部から隔離する照明系ハウジング3と、その内部に所定の位置関係で配置されたビームエキスパンダ等から成るビーム整形光学系4,5、オプティカル・インテグレータ(ホモジナイザ)としてのフライアイレンズ6、照明開口絞り(σ絞り)7、リレーレンズ8等を含む照明光学系とを含んで構成されている。
【0059】
フライアイレンズ6の射出側焦点面は、照明光学系の瞳面(レチクルR上の各位置への照明光の主光線が収束する面)と一致しており、この位置に照明開口絞り(σ絞り)7が配置されている。この照明開口絞り7は、虹彩絞りによって構成されているが、この照明開口絞り7は、不図示の絞り交換機構により、光軸近傍を遮光し光軸から離れた輪帯領域や複数個の領域上の照明光のみを透過させる変形照明絞りと、交換可能な構成となっている。
【0060】
なお、ビーム整形光学系4、5内の光学素子をズームレンズとして、フライアイレンズ6に入射する光束の径(集光状態)を上記虹彩絞りの径に合わせて可変とし、照明光の利用効率を向上させる構成としても良く、照明光学系のフライアイレンズ6よりも光源1側に、回折光学素子や多面体プリズムなどの傾向部材を設け、フライアイレンズ6の入射面上の照明光束の強度分布を、上記の変形照明絞り透過部に対応する位置に集中させ、照明光の利用効率を向上することもできる。この不図示の偏向部材も不図示の交換機構によって、偏向度合いの異なる数種の偏向部材を切り換えて使用可能とすることが望ましい。また、このような構成とする場合には、フライアイレンズ6の射出側焦点面の虹彩絞りや変形照明絞りを必ずしも設けなくても良い。
【0061】
なお、オプティカル・インテグレータとして、フライアイレンズ6に代えて、ガラス又は紫外線透過性結晶のロッド(内面反射型インテグレータ)を用いることも可能である。この場合には、照明光学系の構成を、ロッドに合わせて変更することとなる。
【0062】
照明ユニットILUによると、光源1を発し、送光光学系2を介して導かれた光束は、照明光学系中のビームエキスパンダ等の整形光学系4、5により整形され、フライアイレンズ6に入射する。これにより、フライアイレンズ6の射出側焦点面(照明光学系の瞳面)に多数の点光源より成る面光源(2次光源)が形成される。この2次光源から射出されるレーザビームを以下においては、「照明光EL」と呼ぶものとする。
【0063】
この2次光源から射出された照明光ELは、照明開口絞り7又は変形照明絞りを通過した後、リレーレンズ8により集光され、レチクルR上で長方形又は円弧状の照明領域(中心が投影光学系の光軸に略一致しX軸方向に細長く延びる領域)を均一な照度で照明する。なお、上記照明領域は、例えばリレーレンズ8を複数枚のレンズで構成し、その中にレチクルRに対する共役面(結像面)を形成し、そこに照明視野絞り(レチクルブラインド又はマスキングブレード)を設け、この視野絞りによって規定されるのが通常である。かかる照明光学系の構成は、例えば特開平6−349701号公報などに開示されており、本実施形態においても、該公報に記載の照明光学系を用いることもできる。
【0064】
ところで、真空紫外域の波長の光を露光光とする場合には、その光路から酸素、水蒸気、炭化水素系のガス等の、かかる波長帯域の光に対し強い吸収特性を有するガス(以下、適宜「吸収性ガス」と呼ぶ)を排除する必要がある。このため、本実施形態では、照明系ハウジング3の内部に、真空紫外域の光を吸収する特性が空気に比べて低い特定ガス、例えば窒素、及びヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトンなどの希ガス、又はそれらの混合ガス(以下、適宜「低吸収性ガス」と呼ぶ)を満たしている。この結果、照明系ハウジング3内の吸収性ガスの濃度は数ppm以下の濃度となっている。
【0065】
なお、本実施形態では、光源1及び送光光学系2内部の光路にも上記照明系ハウジング3と同様に低吸収性ガスが満たされている。
【0066】
前記レチクルステージRSTは、レチクルRを保持してマスク室としてのレチクル室15内に配置されている。このレチクル室15は、照明系ハウジング3とベローズ等から成る伸縮自在のシール部材9を介して隙間なく接合され、かつ投影光学系PLの鏡筒とシール部材29を介して隙間なく接合された隔壁18で覆われており、その内部のガスが外部と隔離されている。レチクル室15の隔壁18は、ステンレス鋼(SUS)等の脱ガスの少ない材料にて形成されている。
【0067】
レチクル室15の隔壁18の天井部には、レチクルRより一回り小さい矩形の開口が形成されている。なお、この開口部分に照明系ハウジング3の内部空間と、露光すべきレチクルRが配置されるレチクル室15の内部空間とを分離する透過部材を配置することもできる。この透過部材としては、照明ユニットILUからレチクルRに照射される照明光ELの光路上に配置されるため、真空紫外光である照明光ELの透過性の高い蛍石等の結晶材料によって形成することが望ましい。
【0068】
レチクルステージRSTは、レチクルRをレチクルステージ定盤19上でY軸方向に大きなストロークで直線移動するとともに、X軸方向とθz方向(Z軸回りの回転方向)に関しても微小駆動が可能な構成となっている。このレチクルステージRSTは、リニアモータ等を含む不図示のレチクル駆動系によって駆動される。
【0069】
なお、レチクルステージRSTとして、レチクル駆動系により、レチクルステージ定盤19上をY軸方向に所定ストロークで駆動されるレチクル粗動ステージと、このレチクル走査ステージ上に搭載されレチクルRを吸着保持してXY面内で微小駆動(回転を含む)されるレチクル微動ステージとを備える、粗微動型のステージを用いても良い。
【0070】
レチクル室15の隔壁18には、図2に示されるように、給気管路16の一端と、排気管路17の一端とがそれぞれ接続されている。給気管路16の他端は、不図示の低吸収性ガスの供給装置、例えばヘリウムガス供給装置に接続され、排気管路17の他端は不図示のバキュームポンプに接続されている。このような構成により、レチクル室15の内部にはヘリウムガス供給装置から送り込まれた高純度のヘリウムガスが常時フローされている。これは、本実施形態のように、真空紫外の露光波長を使用する露光装置では、酸素等の吸収性ガスによる露光光の吸収を避けるために、レチクルRの近傍も低吸収性ガスで置換する必要があるためである。このレチクル室15内も吸収性ガスの濃度が数ppm以下の濃度となっている。
【0071】
レチクル室15の隔壁18の−Y側の側壁には光透過窓71が設けられている。これと同様に図示は省略されているが、隔壁18の−X側(図2における紙面奥側)の側壁にも光透過窓が設けられている。これらの光透過窓は、隔壁18に形成された窓部(開口部)に該窓部を閉塞する光透過部材、ここでは一般的な光学ガラスを取り付けることによって構成されている。この場合、光透過窓71を構成する光透過部材の取り付け部分からのガス漏れが生じないように、取り付け部には、インジウムや銅等の金属シールや、フッ素系樹脂による封止(シーリング)が施されている。なお、上記フッ素系樹脂としては、80℃で2時間加熱し、脱ガス処理が施されたものを使うことが望ましい。
【0072】
前記レチクルステージRSTの−Y側の端部には、平面鏡から成るY移動鏡72YがX軸方向に延設されている。このY移動鏡72Yにほぼ垂直にレチクル室15の外部に配置されたY軸レーザ干渉計74Yからの測長ビームが光透過窓71を介して投射され、その反射光が光透過窓71を介してY軸レーザ干渉計74Y内部のディテクタによって受光され、Y軸レーザ干渉計74Y内部の参照鏡の位置を基準としてY移動鏡72Yの位置、すなわちレチクルRのY位置が検出される。
【0073】
同様に、図示は省略されているが、レチクルステージRSTの−X側の端部には、平面鏡から成るX移動鏡がY軸方向に延設されている。そして、このX移動鏡を介して不図示のX軸レーザ干渉計によって上記と同様にしてX移動鏡の位置、すなわちレチクルRのX位置が検出される。上記2つのレーザ干渉計の検出値(計測値)は制御装置20に供給されており、制御装置20では、これらのレーザ干渉計の検出値に基づいてレチクルステージRSTの位置制御を行うようになっている。
【0074】
このように、本実施形態では、レーザ干渉計、すなわちレーザ光源、プリズム等の光学部材及びディテクタ等がレチクル室15の外部に配置されているので、レーザ干渉計を構成するディテクタ等から仮に微量の吸収性ガスが発生しても、これが露光に対して悪影響を及ぼすことがないようになっている。
【0075】
前記投影光学系PLは、フッ素レーザ光である照明光ELに対して十分な透過性を有し、高性能レンズ材料として使用可能な均一性を有する、ホタル石(フッ化カルシウム結晶)、フッ化バリウム結晶、フッ化リチウム結晶等のフッ化物結晶から成る複数のレンズを含む光学系を、鏡筒で密閉したものである。投影光学系PLとしては、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小光学系が用いられている。このため、前述の如く、照明ユニットILUからの照明光ELによりレチクルRが照明されると、レチクルRに形成された前述の照明領域内のパターンが投影光学系PLによりウエハW上のショット領域に縮小投影され、パターンの縮小像が形成される。
【0076】
投影光学系PLの鏡筒には、給気管路30の一端と、排気管路31の一端とがそれぞれ接続されている。給気管路30の他端は、不図示のヘリウムガス供給装置に接続され、排気管路31の他端は、不図示のバキュームポンプに接続されている。このような構成により、投影光学系PLの鏡筒の内部には、ヘリウムガス供給装置から給気管路30を介して供給された例えば22℃の所定温度に管理された高純度のヘリウムガスが常時フローされている。これにより、投影光学系PL内部では、吸収性ガス(酸素、水蒸気、有機物等)の濃度は数ppm以下の濃度に維持されている。
【0077】
なお、投影光学系PLのレンズ材料が、熱膨張係数の大きなホタル石等の結晶材料に限られ場合には、レンズが照明光ELを吸収することにより発生する温度上昇が、レンズの結像特性等に対して与える影響が非常に大きいので、本実施形態では、上記低吸収性ガスのうち、冷却効果の大きなヘリウムガスを採用することとしている。
【0078】
前記ウエハステージWSTは、ウエハ室40内に配置されている。このウエハ室40は、投影光学系PLのフランジFLGとベローズ等から成るシール部材を介して隙間なく接合された隔壁41で覆われており、その内部のガスが外部と隔離されている。ウエハ室40の隔壁41は、ステンレス鋼(SUS)等の脱ガスの少ない材料にて形成されている。
【0079】
この場合、ウエハステージWSTの移動に伴なう振動の投影光学系PLへの伝達を防ぐため、投影光学系PLと隔壁41の間の気密には、柔らかいフィルム状のシール部材49が使用されており、その投影光学系PLへの取りつけ位置は、投影光学系PLの鏡筒側面に設けられたフランジFLG部分となっている。
【0080】
ウエハ室40内には、ベースBSが、複数の防振ユニット39を介して水平に支持されている。この防振ユニット39により、ウエハステージWSTの移動に伴う振動が投影光学系PLやレチクルRに伝達するのが効果的に抑制されている。なお、この防振ユニット39として、装置内の一部に固定された半導体加速度計等の振動センサの出力に基づいてベースBSを積極的に制振するいわゆるアクティブ防振装置を用いることは勿論可能である。
【0081】
前記ウエハステージWSTは、不図示のウエハホルダを介してウエハWを真空吸着等により吸着保持し、例えばリニアモータ等から成る不図示のウエハ駆動系によって前記ベースBSの上面に沿ってXY2次元方向に自在に駆動されるようになっている。
【0082】
ウエハ室40の隔壁41には、図2に示されるように、給気管路32の一端と、排気管路33の一端とがそれぞれ接続されている。給気管路32の他端は、不図示のヘリウムガス供給装置に接続され、排気管路33の他端は、不図示のバキュームポンプに接続されている。このような構成により、ウエハ室40の内部にはヘリウムガス供給装置から送り込まれた高純度のヘリウムガスが常時フローされている。これは、本実施形態のように、真空紫外域の露光波長の照明光ELを使用する露光装置では、酸素等の吸収性ガスによる露光光の吸収を避けるために、投影光学系PLからウエハWまでの光路についても低吸収性ガスで置換する必要があるためである。このウエハ室40内も吸収性ガスの濃度が数ppm以下の濃度となっている。
【0083】
なお、給気管路32の他端、排気管路33の他端を、それぞれ不図示のヘリウムガス供給装置に接続し、ヘリウムガス供給装置から給気管路32を介して常時例えば22℃に管理された高純度の窒素ガスをウエハ室40内に供給し、ウエハ室40内部のガスを排気管路33を介してヘリウムガス供給装置に戻し、このようにして、ヘリウムガスを循環使用する構成を採用しても良い。この場合、ヘリウムガス供給装置には、ガス精製装置を内蔵することが好ましい。なお、ウエハ室40内に圧力センサ、吸収性ガス濃度センサ等のセンサを設け、該センサの計測値に基づいて、制御装置20を介して窒素ガス供給装置に内蔵されたポンプの作動、停止を適宜制御することとしても良い。
【0084】
前述したレチクル室15や、投影光学系PLの鏡筒内についても、上記と同様に、ヘリウムガスを循環使用する構成等を、採用することとしても良い。
【0085】
前記ウエハ室40の隔壁41の−Y側の側壁には光透過窓38が設けられている。これと同様に、図示は省略されているが、隔壁41の−X側(図2における紙面奥側)の側壁にも光透過窓が設けられている。これらの光透過窓は、隔壁41に形成された窓部(開口部)に該窓部を閉塞する光透過部材、ここでは一般的な光学ガラスを取り付けることによって構成されている。この場合、光透過窓38を構成する光透過部材の取り付け部分からのガス漏れが生じないように、取り付け部には、インジウムや銅等の金属シールや、フッ素系樹脂による封止(シーリング)が施されている。なお、上記フッ素系樹脂としては、80℃で2時間、加熱し、脱ガス処理が施されたものを使うことが望ましい。
【0086】
前記ウエハステージWSTの−Y側の端部には、平面鏡から成るY移動鏡36YがX方向に延設されている。このY移動鏡36Yにほぼ垂直にウエハ室40の外部に配置されたY軸レーザ干渉計37Yからの測長ビームが光透過窓38を介して投射され、その反射光が光透過窓38を介してY軸レーザ干渉計37Y内部のディテクタによって受光され、Y軸レーザ干渉計37Y内部の参照鏡の位置を基準としてY移動鏡36Yの位置、すなわちウエハWのY位置が検出される。
【0087】
同様に、図示は省略されているが、ウエハステージWSTの−X側の端部には、平面鏡から成るX移動鏡がY方向に延設されている。そして、このX移動鏡を介してX軸レーザ干渉計によって上記と同様にしてX移動鏡の位置、すなわちウエハWのX位置が検出される。上記2つのレーザ干渉計の検出値(計測値)は制御装置20に供給されており、制御装置20では、これらのレーザ干渉計の検出値をモニタしつつウエハ駆動系を介してウエハステージWSTの位置制御を行うようになっている。
【0088】
このように、本実施形態では、レーザ干渉計、すなわちレーザ光源、プリズム等の光学部材及びディテクタ等が、ウエハ室40の外部に配置されているので、上記ディテクタ等から仮に微量の吸収性ガスが発生しても、これが露光に対して悪影響を及ぼすことがないようになっている。
【0089】
ウエハステージWST上のウエハWの近傍には、図2に示されるように、像強度分布検出器27が取り付けられている。この像強度分布検出器27は、投影光学系PLによって像面に投影される像の強度分布を計測するためのものである。図3には、この像強度分布検出器27の構成が拡大して示されている。この図3に示されるように、像強度分布検出器27は、中空の筐体82と、該筐体82内に収納された拡大光学系80及びCCD等から成る撮像素子81とを備えている。筐体82の上端面よりやや下方の位置には、その外周部にフランジ部82aが設けられている。筐体82は、ウエハステージWSTの上壁に形成された開口84を介して、上方からウエハステージWSTの内部空間にそのフランジ部82aより下側の部分が挿入され、フランジ部82aを介して筐体82がウエハステージWSTに固定されている。筐体82は、その上面が開口し、底部が閉塞された筒状の形状を有している。この筐体82の上面の開口は、その外側からカバーガラス86で覆われ、筐体82とカバーガラス86により囲まれた空間内には真空紫外域の光を吸収する特性が空気に比べて低い特定ガス(低吸収性ガス)が満たされている。カバーガラス86の上面には、クロム等の金属の蒸着により中央部に円形開口を有する遮光膜が形成されている。このため、後述する像強度分布の計測の際に、筐体の上方から投影光学系PLを介した照明光ELがカバーガラス86の円形開口(以下、便宜上「検出用開口」と呼ぶ)を介して筐体内部の拡大光学系80に入射するとともに、その際に遮光膜によって、周囲からの余計な(不要な)光が拡大光学系80に入射するのが遮られるようになっている。なお、像強度分布検出器として、ウエハステージWSTの側面などに、マグネット等を介して着脱自在の構成のものを採用し、像強度分布を計測する際にのみ、露光装置9221に取付けるようにしても良い。
【0090】
前記撮像素子81からの撮像信号は、不図示の信号処理回路及び信号線(有線又は無線)を介して、像強度分布検出器27が取り付けられた露光装置9221の制御装置20に供給されるようになっている。
【0091】
さらに、露光装置9221は、図2に示されるように、制御装置20によってオン・オフが制御される光源を有し、投影光学系PLの結像面に向けて多数の微小開口又はスリットの像を形成するための結像光束を光軸AXに対して斜め方向より照射する照射系60aと、それらの結像光束のウエハW表面での反射光束を受光する受光系60bとから成る射入射方式の多点焦点位置検出系(以下、単に「焦点位置検出系」と呼ぶ)を備えている。この焦点位置検出系としては、例えば特開平6−283403号公報に開示されるものと同様の構成のものが用いられる。
【0092】
制御装置20では、露光時等に、受光系60bからの焦点ずれ信号(デフォーカス信号)、例えばSカーブ信号に基づいて焦点ずれが零となるようにウエハWのZ位置及びXY面に対する傾斜をウエハ駆動系を介して制御することにより、オートフォーカス(自動焦点合わせ)及びオートレベリングを実行する。また、制御装置20では、後述する点像強度分布の計測の際に、焦点位置検出系(60a、60b)を用いて像強度分布検出器27のZ位置の計測及び位置合わせを行う。このとき、必要に応じて像強度分布検出器27の傾斜計測も行うようにしても良い。
【0093】
さらに、露光装置9221は、ウエハステージWST上に保持されたウエハW上のアライメントマーク及び基準マーク板(不図示)上に形成された基準マークの位置計測等に用いられる不図示のオフ・アクシス(off−axis)方式のアライメント系を備えている。このアライメント系としては、例えばウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標の像とを撮像素子(CCD等)を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系のセンサが用いられる。なお、FIA系に限らず、コヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する散乱光又は回折光を検出したり、その対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数)を干渉させて検出したりするアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることは勿論可能である。
【0094】
さらに、本実施形態の露光装置9221では、レチクルRの上方に、投影光学系PLを介してレチクルR上のレチクルマークとこれに対応するウエハステージWST上の不図示の基準板上の基準マークとを同時に観察するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から成る一対のレチクルアライメント系が設けられている。本実施形態では、レチクルアライメント系として、例えば特開平7−176468号公報などに開示されるものと同様の構成のものが用いられている。
【0095】
図1に戻り、前記レチクル設計システム932は、マスクとしてのレチクルに形成すべきパターンのデータを作成するためのシステムである。このレチクル設計システム932は、中型コンピュータ(又は大型コンピュータ)より成る第2コンピュータ930と、該第2コンピュータ930にLAN934を介して接続された小型コンピュータよりなる設計用の端末936A〜936Dとを備えている。端末936A〜936Dにおいて、それぞれ半導体素子等の各レイヤの回路パターン(チップパターン)に対応するレチクルパターンの部分的な設計が行われる。第2コンピュータ930は、本実施形態では、回路設計集中管理装置を兼ねており、この第2コンピュータ930により、各端末936A〜936Dにおける設計領域の分担等が管理されている。
【0096】
第2コンピュータ930は、各レイヤで使用されるレチクルパターンの設計データの情報を、LAN938を介してパターン形成システム942中の工程管理用のコンピュータ940に伝送する。
【0097】
前記パターン形成システム942は、レチクル設計システム932によって設計された転写用のパターンが形成されたレチクル(ワーキングレチクル)を製造するためのシステムである。このパターン形成システム942は、中型コンピュータより成る工程管理用のコンピュータ940、該コンピュータ940にLAN948を介して接続された電子ビーム描画装置(以下、「EB描画装置」と略述する)944及びコータ・デベロッパ(以下、「C/D」と略述する)946等を備えている。EB描画装置944とC/D946との間は、インタフェース部947を介してインラインにて接続されている。
【0098】
前記EB描画装置944は、フッ素(F)を混入した石英、あるいは蛍石(CaF2)等から成り所定の電子線レジストが塗布された基板(レチクルブランクス)上に電子ビームを用いて所定のパターンを描画する。
【0099】
前記C/D946は、レチクルブランクス上へのレジストの塗布及び露光(パターンの描画)後にそのレチクルブランクスの現像を行う。
【0100】
前記インタフェース部947の内部には、EB描画装置944中の真空の雰囲気中と、ほぼ大気圧の所定の気体の雰囲気中にあるC/D946との間でレチクルブランクスの受け渡しを行う基板搬送系が設けられている。
【0101】
この他、不図示ではあるが、このパターン形成システム942は、ワーキングレチクル用の複数のレチクルブランクス(基板)を収納するブランクス収納部が設けられている。
【0102】
ところで、各露光装置922を構成する投影光学系PLの解像度Rは、一般的に露光波長をλ、開口数をNAとすると、R=k・λ/NAの式で定義される。ここでkはレチクルや照明の条件及びレジストの性能で決まる係数である。
【0103】
投影光学系PLのレチクル側の開口数NARは、ウエハ側の開口数NAWに対して、レチクルRからウエハWへの縮小率倍になるため、レチクル側の解像度とウエハ側の解像度の比も、縮小率倍になる。
【0104】
この場合において、レチクル上に、この解像度に比べて小さな微小開口パターンを配置した際の像強度分布関数(点像強度分布関数)は、ベストフォーカス位置において第1種1次のベッセル関数となり、これに対応する点像は、半径0.61×λ/NA内に像エネルギの約85%が集中する像となる。
【0105】
しかしながら、真空紫外光を用いた露光装置における投影光学系では、真空紫外光の波長が極めて短いため、レンズやミラーの表面に残存する微小な研磨残痕や傷によるフレアが生じやすく、また不均一性の生じやすいレンズ材料(蛍石)を使用するので、これらの相乗効果により、上記点像の周囲に広範囲に広がる光学的なフレアが形成されてしまう。
【0106】
本実施形態の露光装置922では、ウエハステージWSTに取り付けられた前述の像強度分布検出器27を用いて、フレアを含めた点像強度分布の形状を計測することができる。ここで、この像強度分布検出器27を用いて、フレアを含めた点像強度分布(の形状)を計測する際の動作について簡単に説明する。この計測には、図4に示されるような、計測用レチクルRTが用いられる。この計測用レチクルRTは、クロム等の遮光膜から成る長方形のパターン領域のY軸方向の中央の長方形領域64内に、解像度に比べて小さな径の微小開口パターン66が多数マトリックス状の配置で形成されている。ここで、長方形領域64は、計測用レチクルRTの中心(レチクルセンタ)が投影光学系PLの光軸と略一致し回転誤差も補正された状態で、前述の照明領域に略一致するような配置とされている。また、この計測用レチクルRTのパターン領域のX軸方向の両側には、レチクル中心から等距離の位置に一対のアライメントマークRMが形成されている。
【0107】
上記のフレアを含めた点像強度分布の計測に際しては、オペレータ等による計測開始のコマンドの入力に応答して、制御装置20は、不図示のアライメント系の下方に像強度分布検出器27が位置するように、ウエハ駆動系を介してウエハステージWSTを移動させる。そして、制御装置20は、アライメント系により像強度検出器27に設けられた不図示の位置合わせマークを検出し、その検出結果とそのときのY軸レーザ干渉計37Y及びX軸レーザ干渉計の計測値とに基づいて位置合わせマークの位置座標を算出し、像強度分布検出器27の正確な位置を求める。そして、像強度分布検出器27の位置計測後、制御装置20は、以下のようにしてフレアを含めた点像強度分布の計測を実行する。
【0108】
まず、制御装置20は、不図示のレチクルローダにより計測用レチクルRTをレチクルステージRST上にロードする。計測用レチクルRTのロード後、制御装置20は、前述のレチクルアライメント系を用いて、計測用レチクルRTに形成された一対のレチクルアライメントマークRMを検出し、その検出結果に基づいて、計測用レチクルRTを所定の位置に位置合わせする。これにより、計測用レチクルRTの中心と投影光学系PLの光軸とがほぼ一致する。
【0109】
この後、制御装置20は、光源1に制御情報を与えてレーザビームを発光させる。これにより、照明ユニットILUからの照明光ELが、計測用レチクルRTに照射される。そして、計測用レチクルRTの多数の微小開口パターン66から射出された光が投影光学系PLを介して像面上に集光され、微小開口パターン66の像が像面に結像される。
【0110】
次に、制御装置20は、計測用レチクルRT上のいずれかの微小開口パターン(以下においては、「着目する微小開口パターン」と呼ぶ)の像が結像する結像点に像強度分布検出器27の前述の検出用開口の中心がほぼ一致するように、Y軸レーザ干渉計37Y及びX軸レーザ干渉計の計測値をモニタしつつ、ウエハ駆動系を介してウエハステージWSTを移動する。この際、制御装置20は、焦点位置検出系(60a、60b)の検出結果に基づいて、微小開口パターンの像が結像される像面に像強度分布検出器27のカバーガラス86の上面を一致させるべく、ウエハ駆動系を介してウエハステージWSTをZ軸方向に微少駆動する。このとき、必要に応じてウエハステージWSTの傾斜角も調整する。これにより、着目する微小開口パターンの像光束が検出用開口を介して拡大光学系80に入射し、撮像素子81の受光面に着目する微小開口パターンの像が結像される。
【0111】
そして、撮像素子81の受光面に形成された前述の微小開口パターンの像(この像は、投影光学系PLからのフレアの影響を受けている)のエネルギ強度分布が撮像素子81で光電変換され、該光電変換信号が不図示の信号処理回路及び不図示の信号線を介して制御装置20に送られる。制御装置20では、その光電変換信号に基づいてフレアを含めた点像強度分布の形状に対応する点像強度分布関数を算出し、RAMに格納する。このとき、制御装置20には、X軸レーザ干渉計及びY軸レーザ干渉計37Yのそのときの計測値(Xi,Yi)が供給されている。
【0112】
上述のようにして、像強度分布検出器27による、1つの着目する微小開口パターンの像の結像点における点像強度分布の形状の計測が終了すると、制御装置20では、次の微小開口パターン像の結像点に、像強度分布検出器27の検出用開口のほぼ中心が一致するように、ウエハステージWSTを移動する。この移動が終了すると、前述と同様にして、制御装置20により、光源1からレーザビームの発光が行われ、同様にして制御装置20によって各微小開口パターンの像の結像点における点像強度分布の形状(点像強度分布関数)が計測される。以後、他の微小開口パターンの像の結像点で同様の計測が順次行われる。
【0113】
このようにして、必要な計測が終了した段階では、制御装置20のRAMには、前述した各微小開口パターンの像の結像点における点像強度分布の形状(点像強度分布関数)と、各結像点の座標データ(各微小開口パターンの像の結像点における計測を行った際のX軸レーザ干渉計及びY軸レーザ干渉計37Yの計測値(Xi,Yi)とが格納されている。なお、上記計測時に前述の照明視野絞り(レチクルブラインド)を用いて、計測用レチクルRT上の着目する微小開口パターンのみ、あるいは少なくとも着目する微小開口パターンを含む一部領域のみが照明光ELで照明されるように、例えば微小開口パターン毎に、計測用レチクルRT上での照明領域の位置や大きさなどを変更しても良い。
【0114】
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、像強度分布検出器27及び制御装置20によって、レチクルステージRST(物体面)上に微小開口パターンが形成された計測用レチクルが配置され、該計測用レチクルが照明ユニットILUからの照明光ELにより照明された際に投影光学系PLを介してウエハ面(像面)上に形成される前記微小開口パターンの像の、半径10×λ/NARから100×λ/NARの範囲内におけるフレアを含めた強度分布の情報を計測する計測装置が構成されている。
【0115】
図5(A)、図5(B)には、上述の計測装置により計測されるフレアを含めた点像強度分布の形状の一例が示されている。このうち、図5(A)には、像面内(XY面内)でのフレアを含めた点像強度分布を表す等高線が示され、図5(B)には、図5(A)の点像強度分布のX軸上の分布が示されている。このフレアを含めた点像強度分布の形状に対応する点像強度分布関数を、以下では、フレアスプレッドファンクションFSFと呼ぶものとする。図5(A)、図5(B)では、フレアスプレッドファンクションFSFと同一の符号を付してフレアを含めた点像強度分布が示されている。フレアを含めた点像強度分布は、半径0.61×λ/NAW以内の中心で強い分布を示すと共に、その外周の半径10×λ/NAWから100×λ/NAW程度の範囲内に、弱い強度分布(フレア)を有するものとなる。このフレアの半径は、投影光学系PLを構成するレンズ材料の種類や品質、あるいは投影光学系PL自体の構成によって変動する。このフレアの半径は、投影光学系PLの解像度に比べれば遥かに大きいが、NAW=0.85、λ=157nmの場合で1.85〜18.5μm程度の実寸法であり微小な値である。
【0116】
制御装置20のRAM内には、上述のような、微小開口パターンの結像点毎に、フレアスプレッドファンクションFSF(x、y)が格納されている。
【0117】
次に、投影光学系PLを用いて、レチクル上のパターンをウエハに転写する場合に生じる、パターンの像の線幅がフレアの影響により変動する現象について、図6(A)、図6(B)及び図7(A)〜図7(C)に基づいて説明する。
【0118】
図6(A)には、遮光性のパターンエリアPA内に、投影光学系PLの解像度程度の線幅W0(図7(A)参照)を有する5本のライン状の透過部から成るライン・アンド・スペース(L/S)状のパターン要素(以下、「L/Sパターン要素」と記述する)P1,P2,P3,P4と、線幅W0の10倍程度の線幅L(図7(A)参照)を有する大面積の透過パターン要素P0と、が形成されたレチクルRAが示されている。但し、図6(A)では、各パターンの大きき(レチクルRAの大きさに対する各パターン要素の大きさの比率)は、図示及び説明の便宜上から、現実のものよりも誇張して示されている。この図6(A)に示されるように、L/Sパターン要素P1〜P4のうち、L/Sパターン要素P1とL/Sパターン要素P2とはX軸方向に所定間隔を隔てて配置され、L/Sパターン要素P3とL/Sパターン要素P4とはX軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。また、L/Sパターン要素P1とL/Sパターン要素P3はY軸方向に所定間隔を隔てて配置され、L/Sパターン要素P2とL/Sパターン要素P4とはY軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。すなわち、L/Sパターン要素P1〜P4の各中心点は、X軸方向及びY軸方向の各一対の辺を有する矩形(長方形)の各頂点位置に位置している。また、パターン要素P0はL字(より正確には逆L字)状の形状を有しており、L/Sパターン要素P1,P2,P4の中心点を結ぶL字(より正確には逆L字)に沿って配置されている。なお、パターン要素P0を以下では便宜上「大透過パターン要素P0」と呼ぶものとする。
【0119】
上記各透過パターン要素を透過した光束は、投影光学系PLを介してウエハW上に像を形成する。これらの像(光学像)は、概ね、図5(A)及び図5(B)に示されるフレアを含んだ点像強度分布に対応するフレアスプレッドファンクションFSFと、図6(A)のパターンの透過部形状に対応する透過率分布関数との2次元コンボリューションとなる。そして、大透過パターン要素P0の周囲では、フレアの強度が強いため、そのフレアがウエハ上に形成される像に与える影響は残りの透過パターン、すなわちL/Sパターン要素P1,P2,P3,P4の周囲で発生するフレアがウエハ上に形成される像に与える影響に比べて格段大きくなる。
【0120】
この場合、図6(A)の各パターンの配置から明らかなように、L/Sパターン要素P1〜P4のうち、L/Sパターン要素P2では、+X側と+Y側の2方向で大透過パターン要素P0に近接しているため、大透過パターン要素P0からのフレアの影響を強く受け、その像強度(像を形成するエネルギ強度)は増大することとなる。その反対に、大透過パターン要素P0に対し、いずれの方向についても最も離れたL/Sパターン要素P3では、大透過パターン要素P0からのフレアによる影響を殆ど受けず、その像強度は殆ど増大しない。
【0121】
残りのL/Sパターン要素P1,P4では、+Y側又は+X側でのみ大透過パターン要素P0に近接しているため、L/Sパターン要素P2とL/Sパターン要素P3の中間程度のフレアを大透過パターン要素P0から受け、その像強度は、ある程度増大することとなる。
【0122】
このため、ウエハW上に形成される上記L/Sパターン要素P1,P2,P3,P4の転写像(レジスト像)は、フレアの影響の程度に応じて、それぞれの線幅が変動することとなる。
【0123】
ここで、この転写像の線幅変動の発生原理について、図7(A)〜図7(C)を用いてさらに説明する。ここでは、説明を簡単にするために、投影光学系PLの投影倍率は、所定の倍率であるものとする。
【0124】
図7(A)には、図6(A)に示されるレチクルRA上のL/Sパターン要素P4及び大透過パターン要素P0付近の拡大断面図(XZ断面図)が示されている。L/Sパターン要素P4は、前述のように、投影光学系PLの解像限界程度の線幅W0を有する5本の線状の透過パターンから成るL/Sパターン要素であり、その一側(+X側)に近接して、線幅W0の10倍程度の線幅Lを有する大透過パターン要素P0が存在する。
【0125】
図7(B)には、レチクルRA上のL/Sパターン要素P4及び大透過パターン要素P0の投影光学系PLによるウエハW上への投影像(空間像)の像強度分布が示されている。この図7(B)に示されるように、大透過パターン要素P0を透過した光によってウエハW上に形成される像の像強度分布は、大透過パターン要素P0と対応した位置に形成される主像ILの像強度分布と、その周辺に広がるフレアFLとを含む。同様に、L/Sパターン要素P4を透過した光(回折光)によってウエハW上に形成される像の像強度分布は、L/Sパターン要素P4に対応した位置に形成される像I4の像強度分布と、その周辺に広がるフレアとを含むが、そのフレア強度は、L/Sパターン要素P4の光透過部(開口部)面積が小さいために非常に小さく、無視できるレベルとなっている。
【0126】
この場合の露光により、実際には、ウエハ上の感光層(ポジ型のフォトレジスト)上に、図7(C)に示されるような、図7(B)中の各像強度分布を加算した像強度分布を有する合成像ICが形成される。そして、この露光後のウエハを現像すると、フォトレジストの高γな感光特性により、像強度がある閾値(SL)以上の部分でレジストが除去され、閾値SL以下ではレジストが残膜してパターンが形成される。すなわち、ウエハ上に形成されるL/Sパターン要素P4の転写像(レジスト像)のパターンの線幅は、合成像ICをレベルSLでスライスした幅Wwになる。この場合、線幅Wwは、図7(B)に示される理想的な線幅Wi(=W0×投影光学系PLの投影倍率)に比べて明らかに太くなっている。
【0127】
この場合において、図6(A)のL/Sパターン要素P3の空間像の像強度分布には、大透過パターン要素P0からのフレアによる像強度分布が加算されることがないため、ウエハ上に形成される、L/Sパターン要素P3の転写像(レジスト像)I3(図6(B)参照)の線幅は、図7(B)に示される像強度分布I4を閾値SLでスライスした理想的な線幅Wiと同じ線幅となる。
【0128】
残りのL/Sパターン要素P1はその一側に大透過パターン要素P0が近接しており、大透過パターン要素P0からのフレアによる影響がL/Sパターン要素P4と同程度であるため、L/Sパターン要素P1のウエハ上への転写像(レジスト像)I1の線幅は、上記L/Sパターン要素P4の転写像I4の線幅Wwと同程度となる。また、残りのL/Sパターン要素P2は、2方向で大透過パターン要素P0に近接しているため、大透過パターン要素P0からのフレアによる影響が最も大きく、L/Sパターン要素P2のウエハ上への転写像(レジスト像)I2の線幅は、上述の線幅Wwよりもさらに太くなる。
【0129】
このような原理により、ウエハW上には、図6(B)に示されるような線幅をそれぞれ有する、レチクルRA上のL/Sパターン要素P1〜P4及び大透過パターン要素P0の転写像I1〜I4、及びI0がそれぞれ形成される。
【0130】
ところで、最先端の高性能LSI(C−MOS−LSI等)では、各パターンの転写像の線幅が、レチクル上のパターンの配置位置によって変動することは大きな問題であり、高速動作可能なLSIの製造のためには、線幅変動の発生は極力抑制する必要がある。
【0131】
そこで、本実施形態では、レチクル上に形成すべきパターンのデータ(以下「レチクルパターンデータ」ともよぶ)の作成段階で、図1のレチクル設計システム932によって、基本となるレチクルパターンデータ中のパターン要素データの線幅の補正が行われる。
【0132】
次に、このレチクル設計システム932による製造対象のワーキングレチクル上に形成すべきレチクルパターンデータの作成処理について、レチクル設計システム932を構成する第2コンピュータ930(内部のCPU)の処理アルゴリズムを示す、図8のフローチャートに沿って説明する。なお、ここでは、製造対象のワーキングレチクルは、露光装置9221〜922Nのうちの特定の一台、例えば露光装置9221で用いられるものとする。
【0133】
このフローチャートがスタートするのは、図1に示される端末936A〜936Dより第2コンピュータ930に、製造対象のワーキングレチクルに形成すべきパターンの複数の部分的な設計データを含む情報が、LAN934を介してそれぞれ入力された時である。
【0134】
まず、ステップ102において、これらの情報の入力に応答して、全部の部分的な設計データを統合した1つのレチクルパターンの基本的な設計データを作成する。ここでは、図6(A)に示されるレチクルRAのパターンの基本的な設計データが作成されたものとする。
【0135】
次のステップ104では、作成したレチクルRAのパターンの基本的な設計データを、LAN926を介して第1コンピュータ920に送り、該第1コンピュータ920から、そのパターンの最適な転写のために対象号機(ここでは、露光装置9221)の露光条件(目標照明条件、目標露光量(レジスト感度に応じた適正露光量)、投影光学系の使用NAなどの情報を含む)の情報、及び投影光学系の有効視野(前述の照明領域に対応するスタティックフィールド)内の多数の計測点における前述のフレアスプレッドファンクションFSFの情報などを含む必要な情報を問い合わせ、取得する。このとき、対象号機(露光装置)9221では、事前に、投影光学系PLの有効視野内の多数の計測点におけるフレアスプレッドファンクションFSFが、前述の像強度分布検出器27を用いて、予め計測され、その計測結果が制御装置20のRAMなどのメモリ内に格納されているものとする。そこで、第1コンピュータ920では、そのメモリ内に格納された、フレアスプレッドファンクションFSFを制御装置20から取得する。
【0136】
なお、必ずしもこのようにする必要はなく、第1コンピュータ920では、第2コンピュータ930からの問い合わせに応じ、制御装置20に指示を与えてその時点で前述の計測処理を行わせて、フレアスプレッドファンクションFSFの計測結果を取得しても良い。
【0137】
いずれにしても、対象号機の露光条件(目標照明条件、目標露光量や、投影光学系の使用NAなどの情報を含む)の情報とともに、多数の計測点におけるフレアスプレッドファンクションFSFの情報が第1コンピュータ920から第2コンピュータ930に送られる。このとき、第1コンピュータ920は、必要な情報として投影光学系の設計データ(レンズデータ)などを送っても良い。
【0138】
そして、次のステップ106以降で、取得したフレアスプレッドファンクションFSFと、上記ステップ102で作成した設計データから得られるパターンの分布形状(明暗分布の形状)に対応する透過率分布関数とに基づいて、レチクルパターンを構成する各パターン要素の線幅の補正値を算出する。
【0139】
具体的には、ステップ106で次式(1)で示される、パターンの分布形状(明暗分布の形状)に対応する透過率分布関数P(x,y)と、フレアスプレッドファンクションFSF(x,y)との2次元コンボリューション演算を行って、投影光学系PLの像面に形成されるフレア込みの光学像における像強度分布(以下、「光学像」と呼ぶ)F(x,y)を算出する。
【0140】
F(x,y)=P(x,y)*FSF(x,y) ……(1)
ここで、上式(1)の演算の意味する内容について説明する。
【0141】
図9に示されるように、レチクルパターンの設計データ(2次元マップ)上の1点(補正検討対象点)O(O(x,y))を基準として、その点Oに対してフレアの影響を及ぼす半径HD(半径HDは、例えばレチクル上で10×λ/NARから100×λ/NAR程度)内のレチクルパターンの設計データから得られる透過率分布関数Pと、その点OにおけるフレアスプレッドファンクションFSFとの積和を計算することで、その点Oでの像強度を算出することができる。ここで、フレアスプレッドファンクションFSFのXYスケールは、レチクル側のスケール((1/縮小倍率)倍)に変換しておく。
【0142】
上記の積和計算を、レチクルパターンの設計データ上の全ての点について行なうことと、上述した式(1)の2次元コンボリューション演算とが等価である。
【0143】
なお、上記のフレア込みの光学像の算出は、上記の2次元コンボリューション演算(又は積和計算)に限らず、レチクルパターンの透過率分布関数Pのフーリエ変換と、フレアスプレッドファンクションFSFのフーリエ変換との双方を求め、それらの積を逆フーリエ変換することでも求めることができる。
【0144】
ところで、図5(A),図5(B)に示されるフレア込みの点像強度分布は、厳密には投影光学系PLの有効視野内の各点で、その形状が微妙に異なる。従って、より正確にフレアの影響による線幅変化を補正するためには、補正対象とするレチクルパターンの設計データ上の点が、レチクル製造後にそのレチクルが実際の露光装置に搭載された際に、その投影光学系の有効視野内のどの点(座標点)と対応するかを、各点について把握して、その点(又はその点の近傍)のフレアスプレッドファンクションFSFを用いることが望ましい。このため、本実施形態では、前述の如く、対象号機(露光装置9221など)の投影光学系PLの有効視野内の多数の計測点におけるフレアスプレッドファンクションFSFを、前述の像強度分布検出器27を用いて計測することとしているのである。
【0145】
但し、本実施形態のような走査型の露光装置(いわゆるスキャナなど)の場合には、多数点のフレアスプレッドファンクションFSFが必要となるのは、投影光学系の有効視野(スタティック・フィールド)内のスキャン方向(走査方向)に垂直な非スキャン方向(本実施形態ではX軸方向)のみであり、スキャン方向に平行な方向のフレアスプレッドファンクションFSFは、その方向の数点でのフレアスプレッドファンクションFSFを平均化したものを使用して、上記の2次元コンボリューション演算を行うこととしても良い。かかる場合には、対象号機における投影光学系PLのフレアスプレッドファンクションFSFの計測時間を短縮することができる。
【0146】
また、実際の露光装置の投影光学系のフレアスプレッドファンクションFSFが、有効視野(スタティック・フィールド)の場所によらずほぼ一定である場合には、視野内の1点におけるフレアスプレッドファンクションFSFをそのまま、あるいは視野内の複数点におけるフレアスプレッドファンクションFSFの平均値を、有効視野(スタティック・フィールド)内の全ての点で用い、上記の2次元コンボリューション演算を行うこととしても良い。かかる場合には、対象号機における投影光学系PLのフレアスプレッドファンクションFSFの計測時間を最も短くすることができるとともに、データ数の削減により2次元コンボリューション演算に要する時間をも最も短くすることができる。
【0147】
また、投影光学系のフレアスプレッドファンクションFSFの分布が、ある程度回転対称である場合には、この分布を回転対称とみなしても良い。かかる場合には、対象号機における投影光学系PLのフレアスプレッドファンクションFSFの計測及び2次元コンボリューション演算に関して、上記と同様にデータ数や処理時間の削減を図ることができる。
【0148】
いずれにしても、ステップ106の処理により、前述した図7(C)中の合成像ICと同様の光学像が得られることになる。
【0149】
次のステップ108では、上記ステップ106で算出した光学像を所定のスライスレベルでスライスして、各パターン要素の転写像の線幅を算出する。すなわち、前述した図7(C)に示されるように、得られた光学像(IC)を所定のスライスレベルSL(このスライスレベルは、ウエハ上に塗布されるフォトレジストの感度に応じて定められるが、その感度が未知の場合、例えばステップ104で取得した目標露光量に基づいて定めるものとする)でスライスし、図7(C)中の線幅Wwと同様にして、各パターン要素について線幅をそれぞれ算出する。
【0150】
次のステップ110では、上記ステップ108で算出したパターン要素毎に算出した線幅の各パターン要素の転写像の設計上の線幅に対する誤差(以下、「線幅誤差」という)が、全てのパターン要素で許容範囲内にあるかを判断する。そして、このステップ110における判断が肯定された場合、すなわち全てのパターン要素の転写像の線幅誤差が許容範囲内にある場合には、ステップ114に進んで、そのとき設定されているレチクルパターンデータを、最終的なレチクルパターンデータとして決定し、メモリ内に記憶した後、本ルーチンの一連の処理を終了する。
【0151】
この一方、上記ステップ110における判断が否定された場合、すなわち少なくとも1つのパターン要素で線幅誤差が許容範囲外であった場合には、ステップ112に移行し、その許容範囲外であった各パターン要素の転写像の線幅が所望の線幅、すなわち設計線幅に近づくように、レチクルパターンデータを変更(補正)する。
【0152】
このステップ112におけるレチクルパターンデータの変更(補正)処理に際しては、ステップ108で算出された補正対象のパターン要素の転写像の線幅から対応する設計線幅を減じ、この差の値が正の場合には、そのパターン要素の設計上の線幅を細くし、反対に上記差の値が負の場合には、そのパターン要素の設計上の線幅を太くする。いずれの場合も、線幅の変更(補正)は、例えばレチクルパターンの設計データ上のパターンエッジ(データ上の透過部と遮光部の境界)を、そのエッジと垂直な方向に所定量(所定グリッド)ずらすことにより行われる。
【0153】
上記のレチクルパターンデータの変更(補正)後、ステップ106に戻り、以後ステップ106→108→110→112のループの処理を、ステップ110における判断が肯定されるまで、繰り返す。これにより、補正後のレチクルパターンデータの形状(透過率分布関数)に対するフレア込みの光学像の算出、その光学像に対応する各パターン要素の転写像の線幅算出が、少なくとも1回繰り返し行われて、全てのパターン要素の転写線幅が許容範囲内となった場合に、ステップ114に進んで、そのとき設定されているレチクルパターンデータが、最終的なレチクルパターンデータとして決定され、メモリ内に記憶されることとなる。
【0154】
ここで、上述した第2コンピュータ930の処理による、パターン要素の線幅補正(変更)の一例について、図7(A)〜図7(C)及び図10(A)〜図10(C)を参照して説明する。すなわち、設計上の転写像の線幅がWiとなるべきパターン要素(L/Sパターン要素)P4(このパターン要素のレチクルパターンの設計データ上の線幅はW0)について、上記ステップ106、108の処理の結果、ステップ108で図7(C)中の線幅Wwが算出されたものとする。
【0155】
この場合、次のステップ110において、|Ww−Wi|≦B(Bはパターン要素の転写像の線幅誤差の許容値)を満足するか否かが判断される。ここで、|Ww−Wi|>Bである場合には、ステップ112に移行して、Ww−Wi>0又はWw−Wi<0のいずれが成り立つか否かが判断される。この場合、Ww−Wi>0であるので、パターン要素P4の線幅がW0より細くなるようにレチクルパターンデータが変更(補正)される。(なお、Ww−Wi<0の場合は、補正対象のパターン要素P4の線幅が、より太くなるように変更される。)。
【0156】
この結果、パターン要素P4の線幅が、例えば図10(A)に示されるように線幅Wn0に変更(補正)される。この変更後のパターン要素が図10(A)では、パターン要素P4’として示され、該パターン要素P4’が形成されたレチクルがレチクルRBとして示されている。上記の変更後に、再度、その変更(補正)後のパターン要素P4’について、ステップ106、108の処理が行われる。図10(C)には、上記補正の結果、ステップ108で算出されたパターン要素P4’のフレア込みの転写像の線幅がWiにほぼ一致した状態が示されている。この場合、図10(A)に示されるレチクルRB上のパターンP4’は、その像(投影光学系のフレアの影響がない場合の像)I4’単独では、図10(B)に示されるようにその線幅Wnが、Wiよりも細くなっている。
【0157】
なお、上記のように、パターン要素の線幅の1度の補正で、パターン要素の転写像の線幅が設計線幅にほぼ一致するとは限らず、その場合には、上記ステップ112→106→108→110のループが、複数回繰り返し行われることとなる。
【0158】
その他のパターン要素(L/Sパターン要素)P1、P2等についても、上記と同様にして、パターンの設計データの線幅補正が行われる。
【0159】
このように、本実施形態では、パターン要素の転写像の線幅(予測値)と設計線幅との大小関係に応じて、実際のレチクルの製造前に、対象号機(露光装置9221などのワーキングレチクルの使用が予定されている露光装置)の投影光学系PLのフレアの影響によるパターン要素の転写像の線幅誤差が許容範囲内になるように、レチクルパターンデータの線幅変更(補正)が行われ、その変更後のデータがレチクルパターンのデータとして作成されている。
【0160】
次に、上述のようにして、作成されたレチクルパターンデータが、第2コンピュータ930からLAN938を介してパターン形成システム942のコンピュータ940に送られる。
【0161】
次に、コンピュータ940の指示に基づき、基板搬送系により、不図示のブランクス収納部からワーキングレチクル用の基板、すなわちレチクルブランクス(蛍石、フッ素を混入した石英等から成る)が取り出され、C/D946に搬送される。この基板(レチクルブランクス)には予めクロム膜等の金属膜が蒸着されると共に、大まかな位置合わせ用のマークも形成されている。
【0162】
次に、コンピュータ940の指示に基づき、C/D946によりそのレチクルブランクス上に所定の電子線レジストが塗布される。
【0163】
次に、コンピュータ940は、先に送られてきた、レチクルパターンデータの情報に基づき、EB描画装置944を用いて、その電子線レジストが塗布されたレチクルブランクス上にそのレチクルパターンを描画する。
【0164】
このようにして、レチクルパターンが描画されたレチクルブランクスが、C/D946によってそれぞれ現像され、例えば電子線レジストがポジ型である場合には、電子線の照射されない領域のレジストパターンが、原版パターンとして残される。
【0165】
その後、その現像後の基板は不図示のエッチング部に搬送され、残されたレジストパターンをマスクとしてエッチングが行われる。更に、レジスト剥離などの処理を行うことでワーキングレチクル、例えば図11(A)に示されるレチクルRBの製造が完了する。
【0166】
なお、電子線レジストとして、露光装置9221で使用される照明光ELを吸収する(又は反射も可)色素が含まれるものを用いると、レチクルブランクスへの事前のクロム膜等の金属膜の蒸着や、現像後にレジストパターンが形成されたレチクルブランクスに対するエッチングなどを行うことなく、そのレジストパターンが形成されたレチクルブランクスをワーキングレチクルとして使用することも可能である。
【0167】
本実施形態のレチクル設計システム932及びパターン形成システム942によって、上述したようにして、レチクルRB、その他のワーキングレチクルが製造される。
【0168】
ところで、本実施形態に係る露光装置9221〜922Nでは、半導体デバイスの製造時には、デバイス製造用のワーキングレチクルがレチクルステージRST上に装填され、その露光が第2層目(セカンドレイヤ)以降の露光である場合には、その後、レチクルアライメント及びウエハアライメント系のいわゆるベースライン計測、並びにEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)等のウエハアライメントなどの準備作業が行われる。
【0169】
なお、上記のレチクルアライメント、ベースライン計測等の準備作業については、例えば例えば特開平7−176468号公報及びこれに対応する米国特許第5,646,413号に詳細に開示されており、また、これに続くEGAについては、特開昭61−44429号公報及びこれに対応する米国特許第4,780,617号などに詳細に開示されている。
【0170】
その後、ウエハアライメント結果に基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われる。なお、露光時の動作等は通常のスキャニング・ステッパと異なることがないので、詳細説明については省略する。
【0171】
上述のようにして、図11(A)に示されるレチクルRBのパターンが、前述の対象号機である露光装置9221を用いてウエハW上に転写され、そのウエハを現像することにより、図11(B)に示されるような転写像(レジスト像)を得ることができる。この図11(B)から明らかなように、本実施形態では、パターン要素P1〜P4のレジスト像I1〜I4の全てが所望の線幅(この場合同一線幅)となる。
【0172】
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、レチクル設計システム932を構成する第2コンピュータ930、より具体的には該第2コンピュータ930のCPUとソフトウェアプログラムとによって、取得装置及び処理装置が実現されている。すなわち、第2コンピュータ930のCPUが行うステップ104の処理によって取得装置が実現され、ステップ106〜ステップ112の処理によって処理装置が実現されている。
【0173】
以上詳細に説明したように、本実施形態のシステム10によると、レチクル設計システム932の第2コンピュータ930によって、対象号機(露光装置9221など)の投影光学系PLによって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報として投影光学系PLの有効視野内の多数の計測点(評価点)におけるフレアスプレッドファンクションFSFの情報が、第1コンピュータ920を介して取得される(図8のステップ104)。
【0174】
上記のフレアスプレッドファンクションFSFの情報の取得後、第2コンピュータ930によって、投影光学系PLを介してウエハ上に転写すべき複数のパターン要素のうち少なくとも対象となるパターン要素(フレアの影響により転写像の線幅が変化する可能性があるパターン要素、例えば、前述のL/Sパターン要素P1,P2,P4など)それぞれの線幅が、取得したフレアスプレッドファンクションFSFと、対象となるパターン要素のそれぞれを中心としたフレアの広がり領域のうち、所定の半径HD内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更され、その線幅変更後のパターン要素のデータが、そのパターン要素の作成データとして決定される(図8のステップ106〜114)。
【0175】
ここで、投影光学系PLによって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報である前述のフレアスプレッドファンクションFSFと、対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径HD内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報(レチクルパターンの設計データにおける透過率分布関数P)とに基づいて、対象となるパターン要素を投影光学系PLを介してウエハ上に転写する際に、実際に像面(ウエハ)上に形成される光学像(の強度分布)を演算により推定することができる(図8のステップ106参照)。
【0176】
すなわち、本実施形態のシステム10によると、レチクルの製造段階の初期段階であるレチクルパターンデータ(設計データ)の作成段階で、第2コンピュータ930により、像面(ウエハ)上に形成される光学像を考慮してパターン要素の線幅が、そのパターン要素の転写像の線幅が最適化されるように変更され、その線幅変更後のデータが、パターン要素の作成データとして決定される。
【0177】
そして、パターン形成システム942によって、前記決定されたパターン要素データに従い、レチクルブランクス(原版)上にそのパターン要素が形成されることによりレチクルRB等のワーキングレチクルが前述のようにして製造される。
【0178】
そして、その製造されたレチクルを、対象号機である露光装置9221のレチクルステージRST上にロードして、ステップ・アンド・スキャン方式で露光を行うことにより、そのレチクル上のパターン要素の転写像がウエハW上に再現性良く形成されることとなる。
【0179】
このように、本実施形態に係るパターン設計システム932及び該パターン設計システムで実行されるパターン決定方法によると、光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与するレチクルパターンデータを作成することが可能となる。
【0180】
また、本実施形態に係るレチクル製造システム(932、942)及び該レチクル製造システムで実行されるレチクル製造方法によると、転写像のパターン忠実度を向上させることができるレチクルを製造することが可能となる。
【0181】
また、前述の対象号機である露光装置9221で実行される露光方法によると、投影光学系PLの光学的フレアの如何によらず、レチクルRB上のパターン要素をウエハW上に精度良く転写することが可能となる。
【0182】
さらに、露光装置9221を含む本実施形態に係る露光装置922によると、前述の計測装置(27、20)を備えているので、該計測装置により、投影光学系PLの特性データとしてのフレア込みの点像強度分布の情報(例えばフレアスプレッドファンクションFSF)が計測され、その計測結果がメモリに記憶される。従って、そのメモリ内の情報を用いて、前述のレチクル設計システム932は前述のパターン作成方法を実行して転写像の忠実度が良好な原版パターンデータを作成することができる。
【0183】
なお、上記のフレア込みの点像強度分布の情報(フレアスプレッドファンクションFSF等)が、経時変化に応じて変動しないのであれば、フレア込みの点像強度分布の情報(フレアスプレッドファンクションFSF等)は、露光装置メーカのエンジニア等がその露光装置の工場出荷前に計測して、その計測結果を制御装置20に併設されたメモリ(又はハードディスク)等の記憶装置50に記憶しておく、あるいはCD(compact disc),DVD(digital versatile disc),MO(magneto−optical disc)あるいはFD(flexible disc)等の情報記録媒体にその計測結果を記録して露光装置の付属品としてユーザ(メーカA等のデバイス製造メーカ)に納入することとしても良い。このようにすると、露光装置に像強度分布検出器27を必ずしも装備しなくても良いとともに、メーカA等の作業者は、上記の記憶装置に記憶され、あるいは情報記録媒体に記録されたフレア込みの点像強度分布の情報(フレアスプレッドファンクションFSF等)を用いて、前述したレチクルパターンデータの作成方法を実行することができる。
【0184】
あるいは、露光装置メーカのサービスエンジニア等が、露光装置を半導体工場へ納入後にフレア込みの点像強度分布の情報(フレアスプレッドファンクションFSF等)を計測して、その計測結果を記憶装置50に記憶しておく、あるいは上記の情報記録媒体に記録しておくこととしても良い。
【0185】
なお、上記実施形態では、前述の半径HDが、10×λ/NARから100×λ/NARの範囲内であるものとしたが、本発明がこれに限定されないことは勿論である。
【0186】
なお、上記実施形態では、レチクルのパターンとして、遮光部の下地上に透過性のパターンが形成されるものとし、ウエハW上に形成されるレジスト除去パターンの線幅が所望の線幅になるようにパターンデータの線幅を変更する場合について説明したが、これに限らず、レチクルのパターンとして、透過部の下地上に遮光性のパターンが形成されたものを用い、ウエハW上に形成されるレジスト残膜パターンの線幅が所望の線幅になるようにパターンデータの線幅を変更する場合であっても、本発明のパターン作成方法は、同等の効果を得ることができる。この場合には、対象とするパターンの像に対してフレアが影響を及ぼす部位は、透過性の下地パターンとなる。
【0187】
また、上記実施形態では、レチクル製造システムを構成するパターン形成システム942として、EB描画装置944を用いて、パターンをレチクルブランクス上にダイレクトに描画する場合について説明したが、これに限らず、パターン描画装置によりマスターレチクル(親レチクル)を製造し、該新規なマスターレチクルと、予め用意しているマスターレチクルとを用いて、光露光装置によりそれらのマスターレチクルのパターンをレチクルブランクス上につなぎ露光にて順次転写することにより、ワーキングレチクルを製造することとしても良い。かかるワーキングレチクルの製造方法については、例えば、WO99/66370号などに詳細に開示されており、本実施形態においてもこの国際公開公報に開示される種々の手法をそのまま、あるいは一部変更して用いることができる。
【0188】
なお、上記実施形態では、投影光学系のフレア込みの点像強度分布に関する情報としてフレアスプレッドファンクションFSFを、実際に計測する場合について説明したが、これに限らず、レンズの設計データなどを用いて高度な光学シミュレーションにより、投影光学系の有効視野内のフレア込みの点像強度分布に関する情報(例えばフレアスプレッドファンクションFSF)を推定しても良い。
【0189】
ところで、上述したような光学的なフレアの影響によるもの以外でも、パターンの転写像の線幅が変化する現象として、パターンの近接度によって転写されたパターンの線幅や形状が変化する光近接効果(Optical Proximity Effect)と呼ばれる現象が知られている。しかし、この光近接効果の場合、その影響が生じる範囲は、照明光学系の照明条件等にも依るが、ウエハ側(開口数NAW)でパターンの周囲の半径2×λ/NAW程度の領域に限られる。これに比べて本発明が問題としている、フレアの影響が及ぶ範囲は、半径10×λ/NAWから100×λ/NAW程度と圧倒的に大きい。これは、光近接効果は、レチクルで回折する光が投影光学系の周辺を通過し、投影光学系自身がロー・パス・フィルタになったのと等価な現象により、複数の回折光の干渉状態が変化することが原因であるのに対し、フレアの影響は、先に説明したような理由により生じるためである。
【0190】
なお、最近のレチクルでは、各パターン要素の線幅を微少量変化させることで、上記光近接効果の補正(OPC:Optical Proximity Correction)を行なったものも増えてきている。OPCの場合にも、まずはレチクルパターンの設計データ上でパターン要素相互の近接度に応じて各パターン要素の線幅補正を行なうが、その手法は、上記実施形態の手法に近く、光学系の点像強度分布や照明条件を考慮して線幅補正を行っている。
【0191】
ところで、このようなOPCによる補正済みのレチクルパターンデータに対しては、上記実施形態で説明したフレアの影響によるパターン要素の線幅誤差の補正(以下、「本発明の第1のフレア補正」と呼ぶ)を、そのまま適用することは以下の理由により好ましくない。
【0192】
上述の通り本発明の第1のフレア補正において使用する投影光学像の強度分布(光学像)の算出方法は、レチクルパターンの透過率(エネルギ透過率)分布関数とフレアスプレッドファンクションとをコンボリューションするものであるから、その結果として得られる像は、インコヒーレント照明(コヒーレンスファクタが1の照明)により得られる像と等価になる。従って、上記のOPC補正の検討とは異なり、そのレチクルが実際に使用されるときの照明条件を考慮したものではない。これは、本発明の第1のフレア補正における光学像の計算は、レチクル上の広大なパターン領域を対象として計算する必要があるため、計算を高速化し、計算時間を短縮する必要があるためである。
【0193】
従って、本発明の第1のフレア補正において使用する光学像の計算方法には、近接効果を問題にするほど密集して配置されたレチクルパターンの投影像を正確に算出するほどの計算精度は無く、また、OPC補正されたレチクルパターンの、所定の照明条件下での投影像の線幅を正確に算出するほどの精度も無い。
【0194】
そこで、既にOPCによる補正がなされたレチクルパターンデータに対して本発明のフレア補正を行う際には、次のような方法(以下、「本発明の第2のフレア補正方法」と呼ぶ)を採用することが望ましい。
【0195】
すなわち、レチクルパターンの透過率データ(透過率分布関数)の代わりに、実際の照明条件及びその他の結像条件(露光波長、投影光学系開口数、レチクルが位相シフトレチクルであればその位相特性等)を考慮して、シミュレーションにより求めたOPC補正後のレチクルパターンの投影像の強度分布に対応する関数(強像分布関数)を使用する。
【0196】
同時に、フレアを含む点像強度分布に関する情報としては、図5(A)に示されるフレア込みの点像強度分布を修正し、例えばフレア込みの点像強度分布(フレアスプレッドファンクションFSF)内の、原点を中心とした、半径2×λ/NAW程度以内の部分の積算分布の積算値を、全て、例えば半径0.2×λ/NAW程度以内の部分に集中して分布させ、代わりに上記半径0.2×λ/NAW程度から2×λ/NAW程度の間での輪帯領域の分布を0にするように、その中心部分に対して修正を行った分布関数(フレア分布関数)を使用する。
【0197】
上記のフレア込みの点像強度分布の修正により、そのフレア分布関数と上記OPC補正後のレチクルパターンの投影像の強度分布関数とのコンボリューションに際して、上記照明条件及びその他の結像条件を考慮した投影像の計算で既に考慮済みの回折作用による原理的な像の劣化が、重複して影響することを防止できる。
【0198】
これにより、OPCによる補正がなされたレチクルパターンデータに対して、本発明のフレア補正(本発明の第2のフレア補正)を行うことが可能となる。
【0199】
なお、上記実施形態中では、説明の複雑化を防止するためにあえて触れなかったが、本発明のパターン決定方法を実施するに当たっては、以下のようにして計算に要する時間及びコストを削減することが望ましい。
【0200】
すなわち、現在の実際のレチクルデータマップのグリッド(最小分割サイズ)は、ウエハ上のスケールで1nm程度と微小である。縮小倍率1/4、NAW=0.85、λ=157nmの投影光学系では、その解像度はk=0.35としてウエハ側で65nm程度、レチクル側で260nm程度となる。一方、フレアの及ぶ半径はウエハ側換算で1.85〜18.5μm程度であるため、レチクル上の1点の投影像の算出で考慮すべき、このエリア(円)内のデータ数は、1850×1850×π≒1千万個から18500×18500×π≒10億個と膨大である。そして、当然ながらレチクル上のパターンデータの数だけ、この計算を行なう必要があり、その計算時間及び計算コストは膨大となる恐れがある。
【0201】
幸いにして、図5(A)及び図5(B)からもわかるように、フレア込みの点像強度分布(及びこれに対応するフレアスプレッドファンクションFSF)では、フレア起因でない通常の点像強度分布が支配的な、その中心部(半径2×λ/NA程度)を除き、位置に対する変化が緩やかである(急峻ではない)。
【0202】
従って、フレアスプレッドファンクションFSFとレチクル透過率分布関数とのコンボリューション演算に際して、最小グリッド(ウエハスケールで1nm角)の分解能を有する両関数を使用する代わりに、フレアスプレッドファンクションFSFの半径2×λ/NA程度より外側の部分の処理では、ウエハ側スケールで10nm角程度の、すなわち10×10=100個のグリッド内の両関数の平均値を使用して、コンボリューション演算を行なっても、計算精度を大きく悪化させることはない。
【0203】
この方法を採用すると、計算対象の殆どのエリアでのデータ数を1/100に低減できるため、フレア補正の計算時間を概ね1/100に短縮できる。勿論、10×10グリッド内の両関数の平均値の演算は、コンボリューション演算に先立って行っておき、1nm刻みのグリッドデータと、10nm刻みの平均化したグリッドデータの双方を使用して、コンボリューション演算を行なうことが、処理時間の短縮上望ましい。
【0204】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図12(A)〜図13に基づいて説明する。この第2の実施形態のシステムは、システム全体の構成は、前述した第1の実施形態のシステム10とほぼ同様になっている。従って、重複説明を省略する観点から、前述の第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともに、その説明を省略するものとする。
【0205】
但し、本第2の実施形態では、製造されたレチクルを用いて、いわゆる多重露光、一例として二重露光が行われるので、これに対応して、対象号機となる露光装置9221などの構成が幾分異なっている。すなわち、この第2の実施形態のリソグラフィシステムを構成する露光装置922は、二重露光を効率良く行なうために、不図示の高速のレチクル交換機構と、高速レチクルアライメント機構が搭載されている。また、前述の虹彩絞り7や変形照明絞りの交換機構、ズームレンズの駆動機構、回折光学素子等の傾向部材の交換機構などとして、1枚のウエハに対する二重露光に際して、高速に交換等が可能な構成が採用されている。また、レチクルを交換して多重露光を行なう際に、個々のレチクルでの露光の積算露光量を正確に制御可能な積算露光量制御系も備えている。但し、これら各構成部分の実現手段はいずれも公知であるので、ここでは、説明を省略する。
【0206】
また、本実施形態では、露光装置により二重露光が行われること、及びこれに対応してレチクル設計システム932の第2コンピュータ930によるパターンデータ作成の際の処理が、前述の第1の実施形態と幾分相違している。以下では、かかる相違点を中心として説明する。
【0207】
ここでは、図12(A)に示される第1パターンPA1が形成されたレチクルR1と、図12(B)に示される第2パターンPA2が形成されたレチクルR2とを用いて、対象号機(露光装置9221〜922Nのいずれか)で、ウエハWに対して二重露光を行い、そのウエハWを現像後にウエハW上の各ショット領域に図12(C)に示されるようなパターン(レジスト像)PDを形成する場合について説明する。
【0208】
図12(A)に示されるレチクルR1は、遮光部の下地DBGに5本のラインパターン(透過パターン)から成る複数のL/Sパターン要素Paが所定の配置で形成され、かつL/Sパターン要素Paを構成する各透過パターンは、隣接する透過パターン間の透過光の位相が180°異なる位相シフトレチクルである。一方、図12(B)に示される、レチクルR2は、透過部の下地BBG上に、遮光部から成る矩形のパターン要素Pbが、L/Sパターン要素Paに対応する配置で形成された通常のバイナリーレチクルである。この場合、各L/Sパターン要素Paが全体として占める矩形領域と、対応するパターン要素Pbとは、完全に重ね合わせることができるサイズとなっている。
【0209】
従って、レチクルR1上の第1パターンPA1とレチクルR2上の第2パターンPA2とを二重露光により重ね合わせて表面にポジ型レジストが塗布されたウエハW上に転写すると、各L/Sパターン要素Paのスペース部(隣接するラインパターンとラインパターンとの間の遮光部)に相当する4本のラインパターンの潜像がウエハ上のレジスト層に形成され、このウエハを現像することにより、図12(C)に示されるようなレジスト残膜部から成るパターン(レジスト像)PDが得られる。
【0210】
上記の二重露光(多重露光)の際に、転写されるパターンの1点(たとえば図12(C)中の点PDO)上に及ぼされるフレアは、2枚(複数枚)のレチクルR1、R2のパターンをそれぞれ介して及ぼされるフレアの総和になる。これは、二重露光(多重露光)の際には、1つのレチクルのパターンの転写のための第1回目の露光と、別のレチクルのパターンの転写のための第2回目の露光との間で、ウエハの現像が行われないため、第1回目の露光の際に1つのレチクルのパターンを介してフレアの影響を受けたレジスト層のある点に、第2回目の露光の際に別のレチクルのパターンを介してフレアが重ねて影響を与えるためである。
【0211】
従って、レチクル設計データ上でのフレア補正の際の計算も、2枚(複数枚)のレチクルR1、R2のパターンPA1、PA2によって像面上にそれぞれ形成されるフレア込みの光学像の総和に基づいて行う必要がある。
【0212】
次に、本第2の実施形態に係るレチクル設計システム932による、製造対象のワーキングレチクル(ここでは、二重露光で用いられるレチクル)上に形成すべきレチクルパターンデータの作成処理について、レチクル設計システム932を構成する第2コンピュータ930(内部のCPU)の処理アルゴリズムを示す、図13のフローチャートに沿って説明する。なお、ここでは、製造対象のワーキングレチクルは、露光装置9221〜922Nのうちの特定の一台、例えば9221で用いられるものとする。
【0213】
このフローチャートがスタートするのは、図1に示される端末936A〜936Dより第2コンピュータ930に、製造対象の2枚のワーキングレチクルに形成すべきパターンの部分的な設計データを含む情報が、LAN934を介してそれぞれ入力された時である。
【0214】
まず、ステップ122において、これらの情報の入力に応答して、複数の部分的な設計データを統合した1つのレチクルパターンの基本的な設計データを、2枚のレチクルのそれぞれについて作成する。
【0215】
ここでは、図12(A)、図12(B)にそれぞれ示されるレチクルR1、R2のパターンPA1、PA2の基本的な設計データがそれぞれ作成されたものとする。
【0216】
次のステップ124では、作成したレチクルR1,R2のパターンの基本的な設計データを、LAN926を介して第1コンピュータ920に送り、該第1コンピュータ920から、それらのパターンの最適な転写のために対象号機(ここでは、露光装置9221)で設定可能な露光条件(目標照明条件、目標露光量(レジスト感度に応じた適正露光量)や、投影光学系の使用NAなどの情報を含む)、及び投影光学系の有効視野内の多数の計測点における前述のフレアスプレッドファンクションFSFの情報などを含む必要な情報を問い合わせ、取得する。このとき、対象号機(露光装置)9221では、事前に、投影光学系PLの有効視野内の多数の計測点におけるフレアスプレッドファンクションFSFが、前述の像強度分布検出器27を用いて、予め計測され、その計測結果が制御装置20のRAMなどのメモリ内に格納されているものとする。そこで、第1コンピュータ920では、そのメモリ内に格納された、フレアスプレッドファンクションFSFを制御装置20から取得する。なお、この場合も、第1コンピュータ920では、第2コンピュータ930からの問い合わせに応じ、制御装置20に指示を与えてその時点で前述の計測処理を行わせて、フレアスプレッドファンクションFSFの計測結果を取得しても良い。
【0217】
いずれにしても、対象号機の露光条件(目標照明条件、目標露光量や、投影光学系の使用NAなどの情報を含む)の情報とともに、多数の計測点におけるフレアスプレッドファンクションFSFの情報が第1コンピュータ920から第2コンピュータ930に送られる。このとき、第1コンピュータ920は、必要な情報として投影光学系の設計データ(レンズデータ)などを送っても良い。
【0218】
次のステップ126で、次式(2)で示される2次元コンボリューション演算を行って、二重露光により投影光学系PLの像面に形成されるフレア込みの光学像における像強度分布(以下、「光学像」と呼ぶ)F1(x,y)+F2(x,y)を算出する。
【0219】
F1(x,y)+F2(x,y)
={P1(x,y)+P2(x,y)}*FSF(x,y) ……(2)
ここで、F1(x,y)は、第1パターンPA1を用いた第1回目の露光の際に投影光学系PLによって像面上に形成されるフレア込みの光学像(の強度分布)であり、またF2(x,y)は、第2パターンPA2を用いた第2回目の露光の際に投影光学系PLによって像面上に形成されるフレア込みの光学像(の強度分布)である。また、P1(x,y)は、第1パターンPA1の設計データにおける透過率分布関数であり、P2(x,y)は、第2パターンPA2の設計データにおける透過率分布関数である。
【0220】
ここで、上式(2)は、次のようにして導かれたものである。すなわち、レチクルR1,R2のそれぞれについて、前述の第1の実施形態と同様に、透過率分布関数とフレアスプレッドファンクションとのコンボリューション演算を行い、フレア込みの光学像(の強度分布)をそれぞれ算出すると、次式(3)、(4)のようになる。
【0221】
F1(x,y)=P1(x,y)*FSF(x,y) ……(3)
F2(x,y)=P2(x,y)*FSF(x,y) ……(4)
そこで、レチクルR1,R2との二重露光による光学像を求めるため、両者を加算することにより、上式(2)が得られるのである。
【0222】
上式(2)の演算に際しても、フレアスプレッドファンクションFSFのXYスケールは、レチクル側のスケール((1/縮小倍率)倍)に変換しておくことは言うまでもない。また、この場合も、上記のフレア込みの光学像の算出は、上記の2次元コンボリューション演算に限らず、レチクルパターンの透過率分布関数のフーリエ変換と、フレアスプレッドファンクションのフーリエ変換との双方を求め、それらの積を逆フーリエ変換することでも求めることができる。
【0223】
すなわち、上式(2)の演算の意味するところは、二重露光(多重露光)の際に形成される、例えば図12(C)の光学像(合成像)PDは、光学像PD上の1点PDOに対応するレチクルR1上の点PAOを中心とするフレアの影響を及ぼす半径HD内のパターンの形状分布データ(透過率分布関数P1)と、投影光学系PLによって生じるフレアを含む点像強度分布関数(フレアスプレッドファンクション)とのコンボリューション結果と、点PDOに対応するレチクルR2上の点(すなわち露光時にレチクルR1上の点PAOと重ね合わせられる点)PBOを中心とするフレアの影響を及ぼす半径HD内のパターンの形状分布データ(透過率分布関数P2)と投影光学系PLによって生じるフレアを含む点像強度分布関数(フレアスプレッドファンクション)とのコンボリューション結果との、加算結果として算出されるということである。ここでフレアの影響を及ぼす半径とは、例えば10×λ/NARから100×λ/NARである。
【0224】
この場合も、前述と同様に、多数点のフレアスプレッドファンクションFSFが必要となるのは、投影光学系の有効視野(スタティック・フィールド)内のスキャン方向(走査方向)に垂直な非スキャン方向(本実施形態ではX軸方向)のみであり、スキャン方向に平行な方向のフレアスプレッドファンクションFSFは、その方向の数点でのフレアスプレッドファンクションFSFを平均化したものを使用して、上記の2次元コンボリューション演算を行うこととしても良い。また、実際の露光装置の投影光学系のフレアスプレッドファンクションFSFが、有効視野(スタティック・フィールド)の場所によらずほぼ一定である場合には、視野内の1点におけるフレアスプレッドファンクションFSFをそのまま、あるいは視野内の複数点におけるフレアスプレッドファンクションFSFの平均値を、有効視野(スタティック・フィールド)内の全ての点で用い、上記の2次元コンボリューション演算を行うこととしても良い。また、投影光学系のフレアスプレッドファンクションFSFの分布が、ある程度回転対称である場合には、この分布を回転対称とみなしても良い。これらの場合には、投影光学系PLのフレアスプレッドファンクションFSFの計測及び2次元コンボリューション演算に関して、上記と同様にデータ数や処理時間の削減を図ることができる。
【0225】
いずれにしても、ステップ126の処理により、前述した図12(C)中の合成像PDと同様の光学像が得られることになる。
【0226】
次のステップ128では、上記ステップ126で算出した光学像を所定のスライスレベルでスライスして、各パターン要素の転写像の線幅を、前述のステップ108(図8参照)と同様にして算出する。
【0227】
次のステップ130では、上記ステップ128でパターン要素毎に算出した線幅の各パターン要素の転写像の設計上の線幅に対する誤差(線幅誤差)が、全てのパターン要素で許容範囲内にあるかを前述のステップ110と同様にして判断する。そして、この判断が肯定された場合には、ステップ134に進んで、そのとき設定されているパターンデータを、最終的なレチクルR1、R2のパターンデータとして決定し、メモリ内に記憶した後、本ルーチンの一連の処理を終了する。
【0228】
この一方、上記ステップ130における判断が否定された場合には、ステップ132に移行し、前述のステップ112と同様にして、許容範囲外であった各パターン要素の転写線幅が所望の線幅、すなわち設計線幅に近づくように、パターンデータを変更(補正)する。但し、このステップ132では、線幅が補正されるのは、最終的にウエハ上に形成される微細パターンを含んだパターン、例えばレチクルR1とレチクルR2の場合には、レチクルR1に形成すべき第1パターンのみとなる。勿論、製造対象である2つのレチクルが、共に最終的にウエハ上に形成される微細パターンを含む場合には、両レチクル上のパターンの線幅を変更(補正)する。
【0229】
上記のパターンデータの補正(又は変更)後、ステップ126に戻り、以後ステップ126→128→130→132のループの処理を、ステップ130における判断が肯定されるまで、繰り返す。これにより、全てのパターン要素の転写線幅が許容範囲内となった場合に、ステップ134に進んで、そのとき設定されているパターンデータが、最終的なレチクルR1、R2のパターンデータ、すなわち第1パターンPA1、第2パターンPA2としてそれぞれ決定され、メモリ内に記憶されることとなる。
【0230】
ところで、本実施形態のように、位相シフトレチクル(レチクルR1)と通常レチクル(レチクルR2)とで2重露光を行なう場合、両レチクルでの露光に際してのウエハへの露光量(積算露光エネルギ)が大きく異なる場合がある。このように、2枚の(あるいはより多数回の多重露光で使用する多数枚の)レチクル間で、露光時の露光量が異なる場合には、上記フレアの影響を解決するためのレチクル線幅補正時にも、レチクル毎に求めたフレア込みの光学像の加算に際して、レチクル毎の露光量比に応じた重みを用いた加重平均(重み付き平均)演算により求めた合成像に基づいて、各レチクル上パターンの線幅補正(線幅変更)を行うことが望ましい。
【0231】
この場合に、上記ステップ126の処理に代えて、次式(5)の演算により、線幅補正の基準となる、二重露光(多重露光)によりレジスト層に形成される転写像を算出することとすれば良い。
【0232】
F1,2(x,y)=a×F1(x,y)+b×F2(x,y)/(a+b)…(5)
ここで、a/(a+b):b/(a+b)=a:bは、レチクルR1を用いて露光を行う際の露光量とレチクルR2を用いて露光を行う際の露光量との比である。
【0233】
いずれにしても、上述のようにして、作成された第1パターンPA1、第2パターンPA2のデータが、第2コンピュータ930からLAN938を介してパターン形成システム942のコンピュータ940に送られる。
【0234】
そして、前述の第1の実施形態と同様にして、レチクル製造システム942によって、その表面に電子線レジストによって第1パターンPA1、第2パターンPA2がそれぞれ形成されたレチクルブランクス(原版)が形成される。その後、それらの原版はエッチング等の処理が行われ、さらに、一方の原版については位相シフトパターン形成用の描画、現像、エッチング等が施されて、例えば図12(A)、図12(B)に示されるレチクルR1、R2が製造される。
【0235】
そして、対象号機である露光装置9221で、半導体デバイスの製造時には、レチクルR1,R2を順次交換して二重露光が行われる。
【0236】
具体的には、最初のレチクルR1を用いた第1回目の露光に先立って、照明条件等の設定、レチクルアライメント及びウエハアライメント系のいわゆるベースライン計測、並びにEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)等のウエハアライメントなどの準備作業が行われる。そして、ウエハアライメント結果に基づいて、レチクルR1のパターンがウエハW上の複数のショット領域にステップ・アンド・スキャン方式で順次転写される。この際、レチクルR1上に形成された複数のL/Sパターン要素Paを含む第1パターンPA1に対して照明光ELが照射され、第1パターンPA1が投影光学系PLを介してウエハW上の各ショット領域にそれぞれ転写される。
【0237】
次に、レチクルR1からレチクルR2へのレチクル交換、レチクルR2に併せた照明条件等の切り替え設定、レチクルアライメントが行われ、前述のウエハアライメント結果に基づいて、レチクルR2のパターンが転写されたウエハW上の複数のショット領域に重ねてそれぞれ転写される。この際、レチクルR2上に形成された第2パターンPA2に対して照明光ELが照射され、ウエハ上のショット領域に第2パターンPA2が投影光学系PLを介して重ねて転写される。
【0238】
すなわち、このようにして、ウエハW上の複数のショット領域に第1パターンPA1と第2パターンPA2とが二重露光にて転写される。
【0239】
ここで、本第2の実施形態では、前述の如く、レチクル設計システム932により、第1パターンPA1を構成する複数のパターン要素Paの作成データが、第2パターンPA2上のパターン要素Pbの分布に関する情報(透過率分布関数)を考慮して決定され、その決定された作成データに対応する複数のパターン要素Paを含む第1パターンPA1がレチクルR1上に形成されている。すなわち、第1パターンPA1の複数のパターン要素Paのデータは、その作成に際して第2パターンPA2上の他のパターン要素Pbの分布に関する情報を考慮して決定されている。このため、第2パターンPA2の転写の際に、投影光学系PLから生じるフレアの影響でウエハW上に形成されている第1パターンPA1の転写像(潜像)の線幅が変化した際に、その変化後の第1パターンの転写像の線幅が所望の値にほぼ一致するようになっている。
【0240】
従って、本実施形態によると、二重露光により第1パターンと第2パターンとをウエハW上に転写する際に、少なくとも第1パターンPA1については所望の線幅のパターン要素の転写像を得ることが可能となる。この場合、最終的に形成されるレジスト像PDは、第1パターンPA1のみが原版となっているので、最終的なレジスト像の線幅は、設計上の線幅に略一致している。
【0241】
ここで、一般的な二重露光では、ウエハ上に最終的に形成されるレジスト像が、第1レチクルのパターンと第2レチクルのパターンとをともに原版として形成される場合もあるが、かかる場合にも、その転写時に投影光学系PLから生じるフレアが非常に小さくなるようなパターンを、線幅補正の対象パターンとする、あるいは両レチクルのパターンをともに線幅補正の対象パターンとすることにより、二重露光に際して、所望の線幅のパターン要素の転写像を得ることができる。
【0242】
以上の説明から明らかなように、本第2の実施形態によると、光学的フレアの如何によらず、二重露光により、パターン要素をウエハW上に精度良く転写することが可能となっている。
【0243】
なお、本発明の露光方法の一態様である、二重露光、あるいは二重露光を含む多重露光に使用するレチクルは、上記のような位相シフトレチクルと通常レチクルに限定されるわけではなく、位相シフトレチクル同士の多重露光、通常レチクル同士の多重露光や、ハーフトーン位相シフトレチクルを含む多重露光等、どのような多重露光に対しても本発明は適用可能である。ここで、位相シフトレチクル同士の多重露光、通常レチクル同士の多重露光などに用いられるレチクルを製造する場合、上記実施形態とは異なり、前述と同様にして2つのレチクルパターンデータを作成し、それらのレチクルパターンデータを同一の基板(レチクルブランクス)上に形成しても良い。
【0244】
なお、上記各実施形態では、上記フレアにより発生するウエハ転写像の線幅変化を、レチクル上のパターンの線幅を変化させることで補正する場合について説明したが、補正方法としては、これ以外の方法を採用することも可能である。例えば、レチクル上の各微細パターンの周囲のパターンの平均的な透過率を等しくするようなパターンレイアウトを採用することによっても補正することができる。より具体的には、例えば、あるパターンの周囲に、開口パターンが多い場合には、その周囲に遮光パターンを追加して、そのパターンの周囲の平均透過率(透過率の面積平均)を低下させるようなパターン補正を行なう。その逆に、あるパターンの周囲に、遮光パターンが多い場合には、その周囲に開口パターンを追加することにより、その周囲の平均透過率を向上させるようなパターン補正を行う。
【0245】
レチクル上の各部位で等しくすべき平均透過率は、この場合にも、ウエハ上のある1点にフレアを及ぼす半径内の範囲であり、レチクル上では、10×λ/NARから100×λ/NARである。ただし、実際のLSI用のレチクルでは、そのレチクルのパターンデータのみから、このような処理(部分的に明暗を反転させる処理)を行なうことは難しい。これは、任意のレチクルで、ある部分を遮光パターンから透過パターンに変えた場合、一般的には、その部分から、そのレチクルを用いたレイヤ(層)の露光で形成されるべき膜が形成されなくなることを意味する。従って、そのレイヤの前後のレイヤの露光で形成された膜間でショートが発生したり、電子デバイスの電気特性に何らかの影響を及ぼしたりすることが懸念されるからである。勿論、ある部分を透過パターンから遮光パターンに変えた場合にも同様の問題が発生する。
【0246】
そこで、このようなレチクル上の透過/開口部の部分的な反転により平均透過率を揃える方法は、単一のレチクルのデータだけでなく、その前後のレイヤの露光で用いられるレチクルのデータ(配線等の位置を含む)も参照した上で行なうことが望ましい。
【0247】
なお、上記各実施形態で説明したシステム構成は、一例であって、本発明に係るマスク製造システムなどがこれに限定されるものではない。例えば、図14に示されるシステムの如く、公衆回線926’をその一部に含む通信路を有するシステム構成を採用しても良い。
【0248】
この図14に示されるシステム1000は、露光装置等のデバイス製造装置のユーザであるメーカAの半導体工場内のリソグラフィシステム912と、該リソグラフィシステム912にその一部に公衆回線926’を含む通信路を介して接続されたマスクメーカ(以下、適宜「メーカB」と呼ぶ)側のレチクル設計システム932及びパターン形成システム942と、を含んで構成されている。
【0249】
この図14のシステム1000は、例えばメーカBが、メーカAからの依頼を受け、露光装置9221〜922Nのうちの少なくとも1台で使用が予定されているワーキングレチクルを製造する場合などに、特に好適である。
【0250】
また、上記各実施形態で説明したリソグラフィシステム912とレチクル製造システム942とを、同一のクリーンルーム内に設置しても良い。
【0251】
また、上記各実施形態及び図14の変形例では、第2コンピュータ930がハードディスクなど前述のレチクル設計プログラム(図8、図13参照)などが格納されていることを前提に説明を行ったが、これに限らず、例えば少なくとも1台の露光装置922が備えるCD−ROM等のドライブ装置にレチクル設計プログラムを記録したCD−ROMを装填し、CD−ROMドライブからレチクル設計プログラムをハードディスクなどの記憶装置内にインストール及びコピーしておいても良い。このようにすれば、露光装置922のオペレータが、自装置で使用が予定されているレチクルのパターン補正情報を得ることが可能になり、そのパターン補正情報を、電話、ファクシミリ、電子メールなどで、自社のマスク製造部門、又はマスクメーカなどに送るなどすることで好適なワーキングレチクルを確実に製造させることができる。
【0252】
なお、上記各実施形態では、F2レーザ(又はArFレーザ)を光源とし、屈折光学系から成る投影光学系を使用する露光装置を前提としたが、投影光学系はこれに限るものではなく、反射屈折光学系や反射光学系を使用する露光装置についても同様に適用可能であることは言うまでもない。反射光学系の場合、レンズ材料の不均一を原因とするフレアは発生しないが、反射面の微小な凹凸により同様なフレアが発生するので、本発明の適用によりフレアを補正することができる。
【0253】
また、光源についても上記2つのレーザに限られるものではなく、その他の光源、例えば出力波長146nmのクリプトンダイマーレーザ(Kr2レーザ)、出力波長126nmのアルゴンダイマーレーザ(Ar2レーザ)などを使用することもできる。露光波長についても例えば、波長10〜15nm程度のEUV光を使用することもできることは言うまでもない。
【0254】
なお、上記各実施形態では、露光装置としてスキャナを用いる場合について説明したが、これに限らず、例えば米国特許第5,243,195号等に開示されるマスクと物体とを静止した状態でマスクのパターンを物体上に転写する静止露光方式の露光装置(ステッパなど)を用いても良い。
【0255】
さらに、上記実施形態及び変形例では複数台の露光装置が同一構成であるものとしたが、照明光ELの波長が異なる露光装置を混用しても良いし、あるいは構成が異なる露光装置、例えば静止露光方式の露光装置(ステッパなど)と走査露光方式の露光装置(スキャナなど)とを混用しても良い。また、例えば国際公開WO99/49504号などに開示される、投影光学系PLとウエハとの間に液体が満たされる液浸型露光装置を用いても良い。
【0256】
この場合の露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、プラズマディスプレイ又は有機ELなどの表示装置、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0257】
《デバイス製造方法》
次に上述した露光装置をリソグラフィ工程で使用したデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
【0258】
図15には、デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートが示されている。図15に示されるように、まず、ステップ201(設計ステップ)において、デバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。この設計ステップで、前述したレチクル設計システムによるパターン決定が実行される。引き続き、ステップ202(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクル)を製作する。このマスク製作ステップで、前述のパターン形成システムによってマスク(レチクル)が製造される。一方、ステップ203(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
【0259】
次に、ステップ204(ウエハ処理ステップ)において、ステップ201〜ステップ203で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップ205(デバイス組立てステップ)において、ステップ204で処理されたウエハを用いてデバイス組立てを行う。このステップ205には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
【0260】
最後に、ステップ206(検査ステップ)において、ステップ205で作成されたデバイスの動作確認テスト、耐久テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
【0261】
図16には、半導体デバイスにおける、上記ステップ204の詳細なフロー例が示されている。図16において、ステップ211(酸化ステップ)においてはウエハの表面を酸化させる。ステップ212(CVDステップ)においてはウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ213(電極形成ステップ)においてはウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ214(イオン打ち込みステップ)においてはウエハにイオンを打ち込む。以上のステップ211〜ステップ214それぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0262】
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップ215(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップ216(露光ステップ)において、上で説明した露光装置及び露光方法によって上記ステップで製作されたマスク(レチクル)の回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップ217(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップ218(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップ219(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
【0263】
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0264】
以上説明した本実施形態のデバイス製造方法によると、設計ステップで、前述したレチクル設計システムによるパターン決定が実行され、引き続き、マスク製作ステップで、前述のパターン形成システムによってレチクル(マスク)が製造される。そして、露光工程(ステップ216)において上記実施形態の露光装置によりその製造されたレチクルを用いて露光が行われるので、精度良くレチクルのパターンをウエハ上に転写することができる。この結果、高集積度のデバイスの生産性(歩留まりを含む)を向上させることが可能になる。
【0265】
【発明の効果】
以上説明したように、パターン作成方法及びパターン作成システムによれば、光学的フレアの如何によらず、露光の際にパターン忠実度の向上に寄与する原版パターンデータを作成することができるという効果がある。
【0266】
また、本発明のマスクによれば、光学的フレアの如何によらず、転写像のパターン忠実度を向上させることができ、また、本発明のマスクの製造方法によれば、そのようなマスクを製造することができる。
【0267】
また、本発明の露光方法によれば、光学的フレアの如何によらず、パターン要素を感光物体上に精度良く転写することができるという効果がある。
【0268】
また、本発明の露光装置によれば、転写像の忠実度が良好な原版パターンデータの作成に用いられる投影光学系の特性データを取得できるという効果がある。
【0269】
また、本発明のデバイス製造方法によれば、高集積度のデバイスの生産性の向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の一実施形態に係るシステムの全体構成を一部省略して示す図である。
【図2】図1の第1露光装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2の像強度分布検出器の構成を拡大して示す図である。
【図4】計測用レチクルを示す平面図である。
【図5】図5(A)、図5(B)は、計測装置により計測されるフレアを含めた点像強度分布の形状の一例を示す図である。
【図6】図6(A),図6(B)は、投影光学系を用いて、レチクル上のパターンをウエハに転写する場合に生じる、パターンの像の線幅がフレアの影響により変動する現象について説明するための図(その1)である。
【図7】図7(A)〜図7(C)は、投影光学系を用いて、レチクル上のパターンをウエハに転写する場合に生じる、パターンの像の線幅がフレアの影響により変動する現象について説明するための図(その2)である。
【図8】第1の実施形態に係るレチクル設計システムによる、製造対象のワーキングレチクル上に形成すべきレチクルパターンデータの作成処理アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図9】レチクルパターンの設計データ(2次元マップ)を示す図である。
【図10】レチクル設計システムにより線幅が変更されたパターン要素が形成されたレチクルを示す断面図、図10(B)は、そのレチクルの各パターン要素の像が互いに影響を受けることなく形成されたと仮定した光学像を示す図、図10(C)は、実際に投影光学系によって像面に形成されるレチクルの各パターン要素の光学像を示す図である。
【図11】図11(A)は、線幅補正後のレチクルを示す図であり、図11(B)は、該レチクルのパターンをウエハ上に転写し、ウエハを現像した状態を示す図である。
【図12】図12(A)、図12(B)は、第2の実施形態において、二重露光する際に用いられるレチクルR1,R2を示す図であり、図12(C)は、二重露光の結果ウエハ上に形成されるパターンを示す図である。
【図13】第2の実施形態に係るレチクル設計システムによる製造対象のワーキングレチクル上に形成すべきレチクルパターンデータの作成処理アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図14】システムの変形例を示す図である。
【図15】本発明に係るデバイス製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図16】図15のステップ204の具体例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…光源(照明系の一部)、20…制御装置(計測装置の一部)、27…像強度分布検出器(計測装置の一部)、50…記憶装置、66…微小開口パターン、9221〜922N…露光装置、930…第2コンピュータ(取得装置、処理装置)、932…レチクル設計システム(パターン作成システム、マスク製造システムの一部)、942…パターン形成システム(マスク製造システムの一部)、EL…照明光(露光用照明光)、ILU…照明ユニット(照明系の一部)、P0〜P4…パターン要素、PA1…第1パターン、PA2…第2パターン、PL…投影光学系、R…レチクル(マスク)、W…ウエハ(感光物体)。
Claims (24)
- 投影光学系を介して感光物体上に転写すべき複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素のデータを作成するパターン作成方法であって、
前記複数のパターン要素のうち、対象となる少なくとも一つのパターン要素の線幅を、前記投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報と、前記対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更して、前記対象となるパターン要素の作成データを決定するパターン作成方法。 - 前記投影光学系を介して前記感光物体上に、前記複数のパターン要素を転写する際における、前記マスクを照明する露光用照明光の波長をλ、前記投影光学系のマスク側の開口数をNARとしたとき、
前記所定の半径は、10×λ/NARから100×λ/NARの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のパターン作成方法。 - 前記光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報は、前記光学的なフレアを含む点像強度分布関数であるフレアスプレッドファンクションであり、
前記パターン要素の分布に関する情報は、前記複数のパターン要素が前記原版上に形成された場合の第1パターンの透過率分布関数であり、
前記線幅の変更量は、前記フレアスプレッドファンクションと前記第1パターンの透過率分布関数とのたたみ込み積分の演算結果に基づいて決定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン作成方法。 - 前記光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報は、前記光学的なフレアを含む点像強度分布関数であるフレアスプレッドファンクションであり、
前記パターン要素の分布に関する情報は、前記複数のパターン要素が前記原版上に形成された場合の第1パターンの透過率分布を、前記円内における1辺がλ/NARから5×λ/NAR程度の方形領域毎に平均した平均化透過率の分布関数であり、
前記線幅の変更量は、前記フレアスプレッドファンクションと前記平均化透過率の分布関数とのたたみ込み積分の演算結果に基づいて決定されることを特徴とする請求項2に記載のパターン作成方法。 - 前記線幅の変更量は、前記第1パターンとは異なる第2パターン上の所定の点を中心とする前記半径の円内に存在する他のパターン要素の分布に関する情報を、更に考慮して決定されることを特徴とする請求項3又は4に記載のパターン作成方法。
- 前記線幅の変更量の決定に際して、前記第2パターン上の前記パターン要素の分布に関する関数と前記フレアスプレッドファンクションとのたたみ込み積分の演算結果が考慮されることを特徴とする請求項5に記載のパターン作成方法。
- 前記フレアスプレッドファンクションに代えて、該フレアスプレッドファンクションの中心部分に所定の修正を行った分布関数を使用するとともに、
前記第1パターンの透過率分布に代えて、シミュレーションにより得られた、前記投影光学系を介して前記感光物体上に投影されるべき前記第1パターンの像強度分布に対応する関数を使用することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載のパターン作成方法。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載のパターン作成方法により、原版に形成すべき複数のパターン要素のデータを作成する工程と;
前記作成された複数のパターン要素のデータに従って、前記原版上に複数のパターン要素を形成する工程と;を含むマスクの製造方法。 - 請求項8に記載のマスクの製造方法により製造されたマスク。
- マスクに形成された複数のパターン要素を投影光学系を介して感光物体上に転写する露光方法において、
請求項8に記載のマスクの製造方法によって製造された前記マスクに対し、露光用照明光を照射し、前記マスク上の前記複数のパターン要素の少なくとも一部を前記投影光学系を介して前記感光物体上に転写することを特徴とする露光方法。 - 波長λの紫外線を露光用照明光とし、マスク側の開口数がNARの投影光学系を備えた投影露光装置を用い、第1パターンと第2パターンとを含む複数のパターンを感光物体上に重ねて転写する露光方法であって、
請求項5又は6に記載のパターン作成方法によって、前記第1パターンを構成する複数のパターン要素の作成データが、前記第2パターン上の他のパターン要素の分布に関する情報を考慮して決定され、その決定された作成データに対応する複数のパターン要素を含み原版上に形成された前記第1パターンに対して前記露光用照明光を照射し、前記第1パターンを前記投影光学系を介して前記感光物体上の所定の区画領域に転写する工程と;
前記原版と同一又は異なる原版上に形成された前記第2パターンに対して前記露光用照明光を照射し、前記感光物体上の前記区画領域に前記第2パターンを前記投影光学系を介して転写する工程と;を含む露光方法。 - 前記第1パターンの転写時と前記第2パターンの転写時とで、前記感光物体に与えられる露光量が異なることを特徴とする請求項11に記載の露光方法。
- 前記第1パターンを構成する複数のパターン要素の作成データの作成に際し、対象となるパターン要素の線幅の変更量は、前記第1パターンの転写時の前記露光量と前記第2パターンの転写時の前記露光量との比を更に考慮して決定されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の露光方法。
- リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
前記リソグラフィ工程では、請求項10〜13のいずれか一項に記載の露光方法を用いることを特徴とするデバイス製造方法。 - 投影光学系を介して感光物体上に転写すべき複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素のデータを作成するパターン作成システムであって、
前記投影光学系によって生じる光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報を取得する取得装置と;
前記複数のパターン要素のうち、対象となる少なくとも一つのパターン要素の線幅を、前記フレアを含む点像強度分布に関する情報と、前記対象となるパターン要素を中心とした前記フレアの広がり領域のうち、所定の半径内の領域に存在するパターン要素の分布に関する情報とに基づいて変更して、前記対象となるパターン要素の作成データを決定する処理装置と;を備えるパターン作成システム。 - 前記投影光学系を介して前記感光物体上に、前記複数のパターン要素を転写する際における、前記マスクを照明する露光用照明光の波長をλ、前記投影光学系のマスク側の開口数をNARとしたとき、
前記所定の半径は、10×λ/NARから100×λ/NARの範囲内であることを特徴とする請求項15に記載のパターン作成システム。 - 前記光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報は、前記光学的なフレアを含む点像強度分布関数であるフレアスプレッドファンクションであり、
前記パターン要素の分布に関する情報は、前記複数のパターン要素が前記原版上に形成された場合の第1パターンの透過率分布関数であり、
前記処理装置は、前記フレアスプレッドファンクションと前記第1パターンの透過率分布関数とのたたみ込み積分の演算結果に基づいて前記線幅の変更量を決定することを特徴とする請求項15又は16に記載のパターン作成システム。 - 前記光学的なフレアを含む点像強度分布に関する情報は、前記光学的なフレアを含む点像強度分布関数であるフレアスプレッドファンクションであり、
前記パターン要素の分布に関する情報は、前記複数のパターン要素が前記原版上に形成された場合の第1パターンの透過率分布を、前記円内における1辺がλ/NARから5×λ/NAR程度の方形領域毎に平均した平均化透過率の分布関数であり、
前記処理装置は、前記フレアスプレッドファンクションと前記平均化透過率の分布関数とのたたみ込み積分の演算結果に基づいて、前記線幅の変更量を決定することを特徴とする請求項16に記載のパターン作成システム。 - 前記処理装置は、前記第1パターンとは異なる第2パターン上の所定の点を中心とする前記半径の円内に存在する他のパターン要素の分布に関する情報を更に考慮して前記線幅の変更量を決定することを特徴とする請求項17又は18に記載のパターン作成システム。
- 前記処理装置は、前記線幅の変更量の決定に際して、前記第2パターン上の前記パターン要素の分布に関する関数と前記フレアスプレッドファンクションとのたたみ込み積分の演算結果を考慮することを特徴とする請求項19に記載のパターン作成システム。
- 前記フレアスプレッドファンクションに代えて、該フレアスプレッドファンクションの中心部分に所定の修正を行った分布関数を使用するとともに、
前記第1パターンの透過率分布に代えて、シミュレーションにより得られた、前記投影光学系を介して前記感光物体上に投影されるべき前記第1パターンの像強度分布に対応する関数を使用することを特徴とする請求項17〜20のいずれか一項に記載のパターン作成システム。 - 請求項15〜21のいずれか一項に記載のパターン作成システムと;
前記パターン作成システムにより作成されたパターンデータに基づいて、マスクとなるべき原版上にパターン要素を形成するパターン形成システムと;を備えるマスク製造システム。 - 第1面上に配置された回路パターンを像面側の開口数がNAWの投影光学系を介して第2面上に配置された感光物体上に転写する露光装置であって、
波長λの紫外線を露光用照明光として前記第1面上のパターンを照明する照明系と;
前記第1面上に微小開口パターンが形成されたマスクが配置され、該マスクが前記照明系からの露光用照明光により照明された際に前記投影光学系を介して前記第2面上に形成される前記微小開口パターンの像の、半径10×λ/NAWから100×λ/NAWの範囲内における強度分布の情報を計測する計測装置と;を備える露光装置。 - 前記計測装置の計測結果の情報を記憶する記憶装置及び記憶媒体の少なくとも一方を更に備えることを特徴とする請求項23に記載の露光装置。
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