JP2004292765A - レーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハロゲン含有化合物を配合することなく高度な難燃性を有し、かつ硬化性や耐湿性などの特性を損なうことのないレーザー印字可能なエポキシ樹脂粉体塗料を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、充填材、レーザー発色剤、イオン捕捉剤及びリン酸エステル系難燃剤を含有するレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料であって、上記レーザー発色剤は金属塩類化合物を含有し、上記イオン捕捉剤はゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有することを特徴とする、レーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
【選択図】 なし
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、充填材、レーザー発色剤、イオン捕捉剤及びリン酸エステル系難燃剤を含有するレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料であって、上記レーザー発色剤は金属塩類化合物を含有し、上記イオン捕捉剤はゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有することを特徴とする、レーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気・電子部品を絶縁外装する目的で使用されているエポキシ樹脂粉体塗料は、従来からエポキシ樹脂組成物により絶縁外装された電気・電子部品に特性や型番を明示するための印字を施す際、工程の合理化を目的として短時間で印字できる方法が要求されている。
この対応方法の一つとして、レーザーの照射による印字システムがある。しかし、レーザーを照射しても変色が起こらなかったり、コントラストが弱く鮮明な文字やパターンを印字できなかったりする事が多く、エポキシ樹脂組成物中にレーザーの熱エネルギーにより変色する材料を含有することが必要となる。
レーザー発色剤として配合する化合物としては、例えば塩基性亜リン酸鉛などの鉛系化合物(例えば、特許文献1参照。)の他、銅化合物、ニッケル化合物など様々な金属塩類化合物が知られている。
【0003】
一方、電気・電子部品の火災に対する安全性を確保するため、絶縁外装塗膜に高度の難燃性を有することも要求されている。このため粉体塗料の成分中には難燃性を賦与する様々な化合物が配合されている。
例えば、可燃性の樹脂成分を少なくし不燃性の無機充填材、特に結晶水を含有していて燃焼時にはこれを放出することで難燃効果を発現するような、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの無機充填材を多く配合する方法、燃焼性の低いシリコーン樹脂やシアヌレート環含有樹脂で変性する方法など、さまざまな方法が提案、実施されているが、最も広く実施されているのは各種のハロゲン系難燃剤を配合する方法である。
【0004】
このハロゲン化合物のなかでも芳香族臭素化合物は、燃焼時に発生する臭化水素が不燃性の重い気体であり、これが可燃物周辺を酸素から遮蔽し、燃焼性ガスを希釈することにより著しい消火作用を示すが、反面この臭化水素は腐食性を有すること、酸素存在下で熱分解した場合は猛毒のダイオキシン構造に近似の毒性の高いポリブロムジベンゾフラン、ポリジブロムジベンゾオキシンを形成するとの指摘がある。このような状況の下でハロゲンを含まない難燃系が望まれている。
【0005】
この理由から近年,臭素化合物に替わる難燃剤として燃焼時の脱水作用によるチャー生成による熱遮蔽効果を示すリン化合物が広く検討され、無機系の赤リンや有機系の各種リン酸エステルが使用されている。
しかしながら、赤リン配合物は色調が濃赤褐色を呈するため、エポキシ粉体塗料に使用された場合、エポキシ樹脂粉体塗料の特長の一つである、青、黄、緑などの淡色製品には不適で黒色系の濃色に限定される不都合がある。
【0006】
また、各種リン酸エステルの配合物はいずれも硬化性が低下するとともに、リン酸エステル化合物が吸湿処理下で加水分解をおこしリン酸イオン等のイオン性物質を放出する。
さらに、リン酸エステル化合物を配合すると粉体塗料組成物のpHが変化し、レーザー発色剤として配合した金属塩類が不安定化され、金属イオン等のイオン性物質の放出が促進される。
これらのイオン性物質は塗膜の電気絶縁性を大きく低下させるため、レーザー印字に対応させた粉体塗料への実用は困難であった。
【0007】
難燃性を賦与するリン化合物としては、赤リンやリン酸エステル以外にも各種のものが提案されている。例えば無機系化合物としてはリン酸アンモニウムなどのリン酸塩も一部の用途で難燃性効果があるとされているが、高度の難燃性賦与を必要とする粉体塗料では有効な結果を得ることはできない。
一方、構造中にリンを含有する各種の新規エポキシ樹脂を合成しこの適用を図ることが提案されているが、これらの樹脂は通常リン含有率が3重量%以下と低いために難燃性が不十分である。
【0008】
【特許文献1】
特開平02−136288号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ハロゲン含有化合物を配合することなく高度な難燃性を有し、かつ硬化性や耐湿性などの特性を損なうことのないレーザー印字可能なエポキシ樹脂粉体塗料を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的は下記の本発明(1)〜(4)により達成される。
(1)エポキシ樹脂、硬化剤、充填材、レーザー発色剤、イオン捕捉剤及びリン酸エステル系難燃剤を含有するレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料であって、前記レーザー発色剤として金属塩類化合物を含有し、前記イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有することを特徴とする、レーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
(2)前記粉体塗料全体に対して、前記ゼオライト類と前記ハイドロタルサイト類との合計量で、0.2〜5.0重量%配合する上記(1)に記載のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
(3)前記ゼオライト類と前記ハイドロタルサイト類との合計量に対して、前記ハイドロタルサイト類の占める割合が60〜90重量%である上記(1)又は(2)に記載のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
(4)前記リン酸エステル系難燃剤を、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計量に対して、リン成分の含有率で1.5〜3.5重量%配合する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料について詳細に説明する。
本発明のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料(以下、単に「粉体塗料」ということがある)
は、エポキシ樹脂、硬化剤、充填材、レーザー発色剤、イオン捕捉剤及びリン酸エステル系難燃剤を含有するレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料であって、上記レーザー発色剤として金属塩類化合物を含有し、上記イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の粉体塗料に用いられるエポキシ樹脂としては、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有し、かつ、非ハロゲン化エポキシ樹脂であり、一般のエポキシ粉体塗料に適用される室温下で固形のものであればよく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、ナフタレン型、芳香族アミン型などが例示されるが、特にこれらに限定されるものではない。なお,これらは単独又は複数を組み合わせ使用することができる。
【0013】
本発明の粉体塗料に用いられる硬化剤も特に限定するものではなく、エポキシ樹脂粉体塗料が適用される目的に応じて種々のものを単独または複数を組み合わせ使用することができる。例えば、ジアミノジフェニルメタンやアニリン樹脂などの芳香族アミン、脂肪族アミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合物、ジシアンジアミド及びその誘導体、各種イミダゾールやイミダゾリン化合物、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、ピロメリット酸などのポリジカルボン酸またはその酸無水物、アジピン酸やフタル酸などのジヒドラジッド、フェノール、クレゾール、キシレノール、ビスフェノールAなどとアルデヒドとの縮合物であるノボラック類、カルボン酸アミド、メチロール化メラミン類、ブロック型イソシアヌレート類などである。これらの内、特に酸無水物系の硬化剤の使用が、硬化特性の点から最も望ましい。
【0014】
エポキシ樹脂に対する硬化剤の使用割合は、使用するエポキシ樹脂及び硬化剤の種類により適宜決定されるが、硬化物特性を考慮して一般的にはエポキシ樹脂に対して0.6〜1.2当量の範囲で使用するのが適当である。なお、これらの硬化剤に対して必要により3級アミン類、イミダゾール類などの硬化促進剤を使用してもよく、なかでも有機リン化合物の使用はさらに難燃性を高めるために望ましい。
【0015】
上記エポキシ樹脂の配合量についても特に限定されないが、硬化剤と合わせて、粉体塗料全体に対して10〜80重量%であることが好ましく、さらに好ましくは25〜60重量%である。これにより、粉体塗料の塗装性を良好なものとすることができる。配合量が上記下限値よりも少ないと塗膜の平滑性が低下することがあり、一方、上記上限値よりも多いと塗装後の硬化工程である焼成時にタレやトガリといった外観不良を起こすことがある。
【0016】
さらに、本発明の粉体塗料には、充填材として炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶又は溶融シリカ、タルク、カオリン、クレー、マイカ、ドロマイト、ウォラストナイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、ジルコン、チタン化合物、モリブデン化合物などを単独又は複数組み合わせて使用する。
【0017】
上記充填材の配合量としては特に限定されないが、粉体塗料全体に対して10〜80重量%であることが好ましく、さらに好ましくは30〜70重量%である。これにより、粉体塗料の塗装性を良好なものにすることができる。配合量が上記下限値よりも少ないと焼成時にタレやトガリといった外観上の不具合を起こすことがあり、塗膜の機械的強度も十分とならないことがある。一方、上記上限値よりも多いと塗膜の平滑性が低下することがある。
また、充填材の粒径としては特に限定されないが、通常、平均粒径として5〜30μmのものが好ましく用いられる。これにより、粉体塗料に良好な流動性が付与され塗装性がより向上し、さらには塗膜の機械的強度についても最適なものとすることができる。
【0018】
本発明の粉体塗料には、レーザー発色剤として金属塩類化合物を用いる。
上記金属塩類化合物としては特に限定されないが、例えば、乳酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル、ギ酸ニッケル、炭酸銅、シュウ酸銅、各種鉛化合物などが挙げられる。これらを単独又は複数を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、鉛化合物以外の金属塩類化合物を用いることが好ましい。これにより、比較的少量の添加で十分な発色性を賦与できるとともに、環境負荷の軽減を図ることができる。
【0019】
上記金属塩類化合物の配合量としては特に限定されないが、粉体塗料全体に対して0.5〜20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜10重量%である。配合量が上記下限値よりも少ないと発色性が充分でないことがあり、一方、上記上限値よりも多いと耐湿性の大幅な低下を招くことがある。
【0020】
本発明の粉体塗料には、イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類とを併用する。
本発明の粉体塗料に用いられるゼオライト類はケイ酸・アルミン酸の金属塩であり、吸着剤として用いられるものであれば特に限定されないが、天然物よりも、不純物の少ない合成物の方が好ましい。
【0021】
本発明の粉体塗料に用いられるハイドロタルサイト類は、複合水酸化物層(基本層)及びアニオンと層間水から成る層間が繰り返す層状構造を持った複合水酸化物塩であり、酸中和能力が大きく、イオン交換により酸を中和する機能を有する天然物または合成物の無機化合物である。基本層はマグネシウムとアルミニウム或いはマグネシウムと他の2価金属とアルミニウムから成るものがもっとも普通であるが、他の金属によって置換されてもよい。たとえばマグネシウムは、カルシウム、亜鉛、銅、マンガン、リチウムまたはニッケルで置換したもの、またアルミニウムはクロム(III)、鉄で置換したものをそれぞれ使用することができる。
【0022】
上記イオン捕捉剤の配合量は特に限定されないが、粉体塗料全体に対して、ゼオライト類とハイドロタルサイト類との合計量で0.2〜5.0重量%であることが好ましい。さらに好ましくは0.5〜2.0重量%である。
配合量が上記下限値未満では、分解したイオン性物質の捕捉剤としての効果が十分でないことがあり、この結果耐湿特性が低下することがある。また、上記上限値を越えると、イオン捕捉剤それ自体がイオン性物質として作用することがあり、場合によっては電気絶縁性を低下させることがある。
【0023】
また、上記ゼオライト類とハイドロタルサイト類との配合比率としては特に限定されないが、両者の合計量に対して、ハイドロタルサイト類の占める割合が60〜90重量%であることが望ましい。さらに好ましくは75〜90重量%である。これにより、リン酸イオンと金属イオンの両方を効率的に捕捉させることができる。
ハイドロタルサイト類の比率が上記下限値未満ではリン酸イオンが十分に捕捉されないことがあり、上記上限値を越えると金属イオンが十分に捕捉されず電気絶縁性が低下する場合がある。
【0024】
本発明の粉体塗料には、イオン捕捉剤として上記のゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有するが、このほかにも、本発明の効果を損なわない範囲内でこれ以外のイオン捕捉剤も併せて用いることもできる。このようなイオン捕捉剤としては例えば、カリックスアレーン、リン酸チタン系イオン捕捉剤、リン酸ジルコニウム系イオン捕捉剤等が挙げられる。
【0025】
本発明の粉体塗料に用いられるリン酸エステル化合物は特に限定するものではないが、粉体塗料特性に与える影響を小さくし、十分な難燃性を賦与するためにはリン含有量が高く室温において固形のものが望ましく、例えば、トリフェニルホスフェートや芳香族縮合型リン酸エステル等が挙げられる。
これをエポキシ樹脂と硬化剤の総量に対して、リン成分の含有率で1.5〜3.5重量%配合することが望ましい。リン含有率が上記下限値を下回ると十分な難燃性が得られないことがあり、上記上限値を上回っても,それ以上は難燃性賦与の効果の改善は見られなくなる。
【0026】
本発明において、ハロゲン含有化合物を配合することなく高度な難燃性を有し、かつ硬化性や耐湿性などの特性を損なうことのない粉体塗料が得られる理由は、下記のように推測される。
難燃剤として配合しているリン酸エステルは、吸湿すると加水分解してリン酸イオンを主とするイオン性不純物が生成し、これが素子の電気絶縁性を低下させる。
さらに、リン酸エステルの配合に伴う粉体塗料組成物のpH低下によって、レーザー発色剤として配合している金属塩類が不安定化し、金属イオンやその対イオンの生成が促進され素子の電気絶縁性をより一層低下させる。
しかし、イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類を配合しているので、上記金属イオンはゼオライト類に吸着され、上記対イオンやリン酸イオンなどはハイドロタルサイト類に捕捉される。このために吸湿時の電気絶縁性低下が防止され、耐湿性が向上する。
【0027】
本発明の粉体塗料には、以上に説明した成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種顔料、レベリング剤、カップリング剤や消泡剤などの添加剤などを配合することができる。また、難燃性を高めるためにシリコーン樹脂、メラミン樹脂などのシアヌレート環骨格を有する樹脂、あるいはホウ酸亜鉛、膨張性黒鉛などの非ハロゲンの難燃性助剤を使用することもできる。
【0028】
本発明において粉体塗料を製造する方法は特別に限定されるものではなく、一般的な方法でよい。一例としては、所定の組成比に配合した原料成分をミキサーによって十分に均一混合した後、エクストルーダーや二軸混練機などで溶融混合し、ついで粉砕機により適当な粒度に粉砕、分級して得られる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
原料成分を表1で示す組成比(重量部)でミキサーにより混合し溶融混練後、粉砕機にて粉砕して平均粒度40〜60μmのエポキシ樹脂粉体塗料を得た。得られた各粉体塗料について、150℃におけるゲルタイム、難燃性、耐湿性を測定し、表1の下欄に示す結果を得た。
【0031】
【表1】
【0032】
(使用材料)
1.エポキシ樹脂
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン社製・「エピコート1004F」(エポキシ当量720)
2.硬化剤
・BTDA:ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物
・TPP:トリフェニルホスフィン
3.充填材
・溶融シリカ:龍森社製・「RD−8」(平均粒径15μm)
・水酸化アルミニウム:住友化学社製・「CL−310」(平均粒径10μm)
4.顔料
・白顔料(酸化チタン):石原産業社製・「TTO−55」
・青顔料(シアニンブルー):住友化学社製・「シアニンブルーGH」
5.添加剤
・シランカップリング剤:日本ユニカー社製・「A−187」
6.難燃剤
・リン酸エステル:大八化学社製・「PX−200」(リン含有率8.9重量%)
7.レーザー発色剤
・次亜リン酸ニッケル
8.イオン捕捉剤
・ハイドロタルサイト類:協和化学工業社製・「DHT−4A」
・ゼオライト類:東ソー社製・「ゼオラムA−4」
【0033】
(試験方法)
1.ゲルタイム:JIS C 2161に準拠して、165℃の熱盤で測定した。
2.難燃性:試験板厚みを1mmとし、UL94法に準拠して測定した。
3.耐湿性:リード線付きセラミックコンデンサ(φ=12mm)を、0.6mm厚で粉体塗装した。これをPCTで121℃、2時間処理し、その後の絶縁抵抗で判定した。各符号は下記の通りである。
○:1012Ω超
△:1012〜1011Ω
×:1011Ω未満
【0034】
実施例はいずれも、エポキシ樹脂、硬化剤、充填材、レーザー発色剤、イオン捕捉剤及びリン酸エステル系難燃剤を含有し、レーザー発色剤として金属塩類化合物を含有し、イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有する本発明の粉体塗料であり、硬化性、硬化物の耐湿性、及び難燃性に優れたものとなった。
一方、比較例ではそれぞれ幾つかの特性において問題があり、粉体塗料に適用することは困難である。すなわち、比較例1はイオン捕捉剤としてハイドロタルサイト類のみ配合したものであり、比較例2は同様にゼオライト類のみ配合したものであり、いずれも耐湿性が大きく低下している。比較例3は難燃剤として水酸化アルミニウムのみを用いたもので十分な難燃性が得られず、耐湿性も低下したものとなった。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤、充填材、レーザー発色剤、イオン捕捉剤及びリン酸エステル系難燃剤を含有し、レーザー発色剤として金属塩類化合物を含有し、イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有することを特徴とするレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料であり、環境上の問題が指摘されている臭素などハロゲン含有化合物を使用することなく、優れた難燃性を付与するとともに、硬化性、耐湿性においても良好な特性を有するものであり、電気・電子部品を絶縁外装する目的で用いるレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料として有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気・電子部品を絶縁外装する目的で使用されているエポキシ樹脂粉体塗料は、従来からエポキシ樹脂組成物により絶縁外装された電気・電子部品に特性や型番を明示するための印字を施す際、工程の合理化を目的として短時間で印字できる方法が要求されている。
この対応方法の一つとして、レーザーの照射による印字システムがある。しかし、レーザーを照射しても変色が起こらなかったり、コントラストが弱く鮮明な文字やパターンを印字できなかったりする事が多く、エポキシ樹脂組成物中にレーザーの熱エネルギーにより変色する材料を含有することが必要となる。
レーザー発色剤として配合する化合物としては、例えば塩基性亜リン酸鉛などの鉛系化合物(例えば、特許文献1参照。)の他、銅化合物、ニッケル化合物など様々な金属塩類化合物が知られている。
【0003】
一方、電気・電子部品の火災に対する安全性を確保するため、絶縁外装塗膜に高度の難燃性を有することも要求されている。このため粉体塗料の成分中には難燃性を賦与する様々な化合物が配合されている。
例えば、可燃性の樹脂成分を少なくし不燃性の無機充填材、特に結晶水を含有していて燃焼時にはこれを放出することで難燃効果を発現するような、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの無機充填材を多く配合する方法、燃焼性の低いシリコーン樹脂やシアヌレート環含有樹脂で変性する方法など、さまざまな方法が提案、実施されているが、最も広く実施されているのは各種のハロゲン系難燃剤を配合する方法である。
【0004】
このハロゲン化合物のなかでも芳香族臭素化合物は、燃焼時に発生する臭化水素が不燃性の重い気体であり、これが可燃物周辺を酸素から遮蔽し、燃焼性ガスを希釈することにより著しい消火作用を示すが、反面この臭化水素は腐食性を有すること、酸素存在下で熱分解した場合は猛毒のダイオキシン構造に近似の毒性の高いポリブロムジベンゾフラン、ポリジブロムジベンゾオキシンを形成するとの指摘がある。このような状況の下でハロゲンを含まない難燃系が望まれている。
【0005】
この理由から近年,臭素化合物に替わる難燃剤として燃焼時の脱水作用によるチャー生成による熱遮蔽効果を示すリン化合物が広く検討され、無機系の赤リンや有機系の各種リン酸エステルが使用されている。
しかしながら、赤リン配合物は色調が濃赤褐色を呈するため、エポキシ粉体塗料に使用された場合、エポキシ樹脂粉体塗料の特長の一つである、青、黄、緑などの淡色製品には不適で黒色系の濃色に限定される不都合がある。
【0006】
また、各種リン酸エステルの配合物はいずれも硬化性が低下するとともに、リン酸エステル化合物が吸湿処理下で加水分解をおこしリン酸イオン等のイオン性物質を放出する。
さらに、リン酸エステル化合物を配合すると粉体塗料組成物のpHが変化し、レーザー発色剤として配合した金属塩類が不安定化され、金属イオン等のイオン性物質の放出が促進される。
これらのイオン性物質は塗膜の電気絶縁性を大きく低下させるため、レーザー印字に対応させた粉体塗料への実用は困難であった。
【0007】
難燃性を賦与するリン化合物としては、赤リンやリン酸エステル以外にも各種のものが提案されている。例えば無機系化合物としてはリン酸アンモニウムなどのリン酸塩も一部の用途で難燃性効果があるとされているが、高度の難燃性賦与を必要とする粉体塗料では有効な結果を得ることはできない。
一方、構造中にリンを含有する各種の新規エポキシ樹脂を合成しこの適用を図ることが提案されているが、これらの樹脂は通常リン含有率が3重量%以下と低いために難燃性が不十分である。
【0008】
【特許文献1】
特開平02−136288号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ハロゲン含有化合物を配合することなく高度な難燃性を有し、かつ硬化性や耐湿性などの特性を損なうことのないレーザー印字可能なエポキシ樹脂粉体塗料を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的は下記の本発明(1)〜(4)により達成される。
(1)エポキシ樹脂、硬化剤、充填材、レーザー発色剤、イオン捕捉剤及びリン酸エステル系難燃剤を含有するレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料であって、前記レーザー発色剤として金属塩類化合物を含有し、前記イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有することを特徴とする、レーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
(2)前記粉体塗料全体に対して、前記ゼオライト類と前記ハイドロタルサイト類との合計量で、0.2〜5.0重量%配合する上記(1)に記載のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
(3)前記ゼオライト類と前記ハイドロタルサイト類との合計量に対して、前記ハイドロタルサイト類の占める割合が60〜90重量%である上記(1)又は(2)に記載のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
(4)前記リン酸エステル系難燃剤を、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計量に対して、リン成分の含有率で1.5〜3.5重量%配合する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料について詳細に説明する。
本発明のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料(以下、単に「粉体塗料」ということがある)
は、エポキシ樹脂、硬化剤、充填材、レーザー発色剤、イオン捕捉剤及びリン酸エステル系難燃剤を含有するレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料であって、上記レーザー発色剤として金属塩類化合物を含有し、上記イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の粉体塗料に用いられるエポキシ樹脂としては、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有し、かつ、非ハロゲン化エポキシ樹脂であり、一般のエポキシ粉体塗料に適用される室温下で固形のものであればよく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、ナフタレン型、芳香族アミン型などが例示されるが、特にこれらに限定されるものではない。なお,これらは単独又は複数を組み合わせ使用することができる。
【0013】
本発明の粉体塗料に用いられる硬化剤も特に限定するものではなく、エポキシ樹脂粉体塗料が適用される目的に応じて種々のものを単独または複数を組み合わせ使用することができる。例えば、ジアミノジフェニルメタンやアニリン樹脂などの芳香族アミン、脂肪族アミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合物、ジシアンジアミド及びその誘導体、各種イミダゾールやイミダゾリン化合物、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、ピロメリット酸などのポリジカルボン酸またはその酸無水物、アジピン酸やフタル酸などのジヒドラジッド、フェノール、クレゾール、キシレノール、ビスフェノールAなどとアルデヒドとの縮合物であるノボラック類、カルボン酸アミド、メチロール化メラミン類、ブロック型イソシアヌレート類などである。これらの内、特に酸無水物系の硬化剤の使用が、硬化特性の点から最も望ましい。
【0014】
エポキシ樹脂に対する硬化剤の使用割合は、使用するエポキシ樹脂及び硬化剤の種類により適宜決定されるが、硬化物特性を考慮して一般的にはエポキシ樹脂に対して0.6〜1.2当量の範囲で使用するのが適当である。なお、これらの硬化剤に対して必要により3級アミン類、イミダゾール類などの硬化促進剤を使用してもよく、なかでも有機リン化合物の使用はさらに難燃性を高めるために望ましい。
【0015】
上記エポキシ樹脂の配合量についても特に限定されないが、硬化剤と合わせて、粉体塗料全体に対して10〜80重量%であることが好ましく、さらに好ましくは25〜60重量%である。これにより、粉体塗料の塗装性を良好なものとすることができる。配合量が上記下限値よりも少ないと塗膜の平滑性が低下することがあり、一方、上記上限値よりも多いと塗装後の硬化工程である焼成時にタレやトガリといった外観不良を起こすことがある。
【0016】
さらに、本発明の粉体塗料には、充填材として炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶又は溶融シリカ、タルク、カオリン、クレー、マイカ、ドロマイト、ウォラストナイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、ジルコン、チタン化合物、モリブデン化合物などを単独又は複数組み合わせて使用する。
【0017】
上記充填材の配合量としては特に限定されないが、粉体塗料全体に対して10〜80重量%であることが好ましく、さらに好ましくは30〜70重量%である。これにより、粉体塗料の塗装性を良好なものにすることができる。配合量が上記下限値よりも少ないと焼成時にタレやトガリといった外観上の不具合を起こすことがあり、塗膜の機械的強度も十分とならないことがある。一方、上記上限値よりも多いと塗膜の平滑性が低下することがある。
また、充填材の粒径としては特に限定されないが、通常、平均粒径として5〜30μmのものが好ましく用いられる。これにより、粉体塗料に良好な流動性が付与され塗装性がより向上し、さらには塗膜の機械的強度についても最適なものとすることができる。
【0018】
本発明の粉体塗料には、レーザー発色剤として金属塩類化合物を用いる。
上記金属塩類化合物としては特に限定されないが、例えば、乳酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル、ギ酸ニッケル、炭酸銅、シュウ酸銅、各種鉛化合物などが挙げられる。これらを単独又は複数を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、鉛化合物以外の金属塩類化合物を用いることが好ましい。これにより、比較的少量の添加で十分な発色性を賦与できるとともに、環境負荷の軽減を図ることができる。
【0019】
上記金属塩類化合物の配合量としては特に限定されないが、粉体塗料全体に対して0.5〜20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜10重量%である。配合量が上記下限値よりも少ないと発色性が充分でないことがあり、一方、上記上限値よりも多いと耐湿性の大幅な低下を招くことがある。
【0020】
本発明の粉体塗料には、イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類とを併用する。
本発明の粉体塗料に用いられるゼオライト類はケイ酸・アルミン酸の金属塩であり、吸着剤として用いられるものであれば特に限定されないが、天然物よりも、不純物の少ない合成物の方が好ましい。
【0021】
本発明の粉体塗料に用いられるハイドロタルサイト類は、複合水酸化物層(基本層)及びアニオンと層間水から成る層間が繰り返す層状構造を持った複合水酸化物塩であり、酸中和能力が大きく、イオン交換により酸を中和する機能を有する天然物または合成物の無機化合物である。基本層はマグネシウムとアルミニウム或いはマグネシウムと他の2価金属とアルミニウムから成るものがもっとも普通であるが、他の金属によって置換されてもよい。たとえばマグネシウムは、カルシウム、亜鉛、銅、マンガン、リチウムまたはニッケルで置換したもの、またアルミニウムはクロム(III)、鉄で置換したものをそれぞれ使用することができる。
【0022】
上記イオン捕捉剤の配合量は特に限定されないが、粉体塗料全体に対して、ゼオライト類とハイドロタルサイト類との合計量で0.2〜5.0重量%であることが好ましい。さらに好ましくは0.5〜2.0重量%である。
配合量が上記下限値未満では、分解したイオン性物質の捕捉剤としての効果が十分でないことがあり、この結果耐湿特性が低下することがある。また、上記上限値を越えると、イオン捕捉剤それ自体がイオン性物質として作用することがあり、場合によっては電気絶縁性を低下させることがある。
【0023】
また、上記ゼオライト類とハイドロタルサイト類との配合比率としては特に限定されないが、両者の合計量に対して、ハイドロタルサイト類の占める割合が60〜90重量%であることが望ましい。さらに好ましくは75〜90重量%である。これにより、リン酸イオンと金属イオンの両方を効率的に捕捉させることができる。
ハイドロタルサイト類の比率が上記下限値未満ではリン酸イオンが十分に捕捉されないことがあり、上記上限値を越えると金属イオンが十分に捕捉されず電気絶縁性が低下する場合がある。
【0024】
本発明の粉体塗料には、イオン捕捉剤として上記のゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有するが、このほかにも、本発明の効果を損なわない範囲内でこれ以外のイオン捕捉剤も併せて用いることもできる。このようなイオン捕捉剤としては例えば、カリックスアレーン、リン酸チタン系イオン捕捉剤、リン酸ジルコニウム系イオン捕捉剤等が挙げられる。
【0025】
本発明の粉体塗料に用いられるリン酸エステル化合物は特に限定するものではないが、粉体塗料特性に与える影響を小さくし、十分な難燃性を賦与するためにはリン含有量が高く室温において固形のものが望ましく、例えば、トリフェニルホスフェートや芳香族縮合型リン酸エステル等が挙げられる。
これをエポキシ樹脂と硬化剤の総量に対して、リン成分の含有率で1.5〜3.5重量%配合することが望ましい。リン含有率が上記下限値を下回ると十分な難燃性が得られないことがあり、上記上限値を上回っても,それ以上は難燃性賦与の効果の改善は見られなくなる。
【0026】
本発明において、ハロゲン含有化合物を配合することなく高度な難燃性を有し、かつ硬化性や耐湿性などの特性を損なうことのない粉体塗料が得られる理由は、下記のように推測される。
難燃剤として配合しているリン酸エステルは、吸湿すると加水分解してリン酸イオンを主とするイオン性不純物が生成し、これが素子の電気絶縁性を低下させる。
さらに、リン酸エステルの配合に伴う粉体塗料組成物のpH低下によって、レーザー発色剤として配合している金属塩類が不安定化し、金属イオンやその対イオンの生成が促進され素子の電気絶縁性をより一層低下させる。
しかし、イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類を配合しているので、上記金属イオンはゼオライト類に吸着され、上記対イオンやリン酸イオンなどはハイドロタルサイト類に捕捉される。このために吸湿時の電気絶縁性低下が防止され、耐湿性が向上する。
【0027】
本発明の粉体塗料には、以上に説明した成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種顔料、レベリング剤、カップリング剤や消泡剤などの添加剤などを配合することができる。また、難燃性を高めるためにシリコーン樹脂、メラミン樹脂などのシアヌレート環骨格を有する樹脂、あるいはホウ酸亜鉛、膨張性黒鉛などの非ハロゲンの難燃性助剤を使用することもできる。
【0028】
本発明において粉体塗料を製造する方法は特別に限定されるものではなく、一般的な方法でよい。一例としては、所定の組成比に配合した原料成分をミキサーによって十分に均一混合した後、エクストルーダーや二軸混練機などで溶融混合し、ついで粉砕機により適当な粒度に粉砕、分級して得られる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
原料成分を表1で示す組成比(重量部)でミキサーにより混合し溶融混練後、粉砕機にて粉砕して平均粒度40〜60μmのエポキシ樹脂粉体塗料を得た。得られた各粉体塗料について、150℃におけるゲルタイム、難燃性、耐湿性を測定し、表1の下欄に示す結果を得た。
【0031】
【表1】
【0032】
(使用材料)
1.エポキシ樹脂
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン社製・「エピコート1004F」(エポキシ当量720)
2.硬化剤
・BTDA:ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物
・TPP:トリフェニルホスフィン
3.充填材
・溶融シリカ:龍森社製・「RD−8」(平均粒径15μm)
・水酸化アルミニウム:住友化学社製・「CL−310」(平均粒径10μm)
4.顔料
・白顔料(酸化チタン):石原産業社製・「TTO−55」
・青顔料(シアニンブルー):住友化学社製・「シアニンブルーGH」
5.添加剤
・シランカップリング剤:日本ユニカー社製・「A−187」
6.難燃剤
・リン酸エステル:大八化学社製・「PX−200」(リン含有率8.9重量%)
7.レーザー発色剤
・次亜リン酸ニッケル
8.イオン捕捉剤
・ハイドロタルサイト類:協和化学工業社製・「DHT−4A」
・ゼオライト類:東ソー社製・「ゼオラムA−4」
【0033】
(試験方法)
1.ゲルタイム:JIS C 2161に準拠して、165℃の熱盤で測定した。
2.難燃性:試験板厚みを1mmとし、UL94法に準拠して測定した。
3.耐湿性:リード線付きセラミックコンデンサ(φ=12mm)を、0.6mm厚で粉体塗装した。これをPCTで121℃、2時間処理し、その後の絶縁抵抗で判定した。各符号は下記の通りである。
○:1012Ω超
△:1012〜1011Ω
×:1011Ω未満
【0034】
実施例はいずれも、エポキシ樹脂、硬化剤、充填材、レーザー発色剤、イオン捕捉剤及びリン酸エステル系難燃剤を含有し、レーザー発色剤として金属塩類化合物を含有し、イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有する本発明の粉体塗料であり、硬化性、硬化物の耐湿性、及び難燃性に優れたものとなった。
一方、比較例ではそれぞれ幾つかの特性において問題があり、粉体塗料に適用することは困難である。すなわち、比較例1はイオン捕捉剤としてハイドロタルサイト類のみ配合したものであり、比較例2は同様にゼオライト類のみ配合したものであり、いずれも耐湿性が大きく低下している。比較例3は難燃剤として水酸化アルミニウムのみを用いたもので十分な難燃性が得られず、耐湿性も低下したものとなった。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤、充填材、レーザー発色剤、イオン捕捉剤及びリン酸エステル系難燃剤を含有し、レーザー発色剤として金属塩類化合物を含有し、イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有することを特徴とするレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料であり、環境上の問題が指摘されている臭素などハロゲン含有化合物を使用することなく、優れた難燃性を付与するとともに、硬化性、耐湿性においても良好な特性を有するものであり、電気・電子部品を絶縁外装する目的で用いるレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料として有用である。
Claims (4)
- エポキシ樹脂、硬化剤、充填材、レーザー発色剤、イオン捕捉剤及びリン酸エステル系難燃剤を含有するレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料であって、前記レーザー発色剤として金属塩類化合物を含有し、前記イオン捕捉剤としてゼオライト類とハイドロタルサイト類とを含有することを特徴とする、レーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
- 前記粉体塗料全体に対して、前記ゼオライト類と前記ハイドロタルサイト類との合計量で、0.2〜5.0重量%配合する請求項1に記載のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
- 前記ゼオライト類と前記ハイドロタルサイト類との合計量に対して、前記ハイドロタルサイト類の占める割合が60〜90重量%である請求項1又は2に記載のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
- 前記リン酸エステル系難燃剤を、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計量に対して、リン成分の含有率で1.5〜3.5重量%配合する請求項1ないし3のいずれかに記載のレーザー印字用難燃性エポキシ樹脂粉体塗料。
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