JP2011084431A - 高耐熱性水酸化アルミニウム粒子、その製造方法及びこの粒子を含む樹脂組成物並びにこの樹脂組成物を使用したプリント配線板 - Google Patents

高耐熱性水酸化アルミニウム粒子、その製造方法及びこの粒子を含む樹脂組成物並びにこの樹脂組成物を使用したプリント配線板 Download PDF

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Abstract

【課題】鉛フリーはんだに対応可能なプリント配線板用基材等に好適に使用することができる耐熱性と難燃性を有する高耐熱性水酸化アルミニウム粒子、その製造方法及びこの粒子を含む樹脂組成物並びにこの樹脂組成物を使用したプリント配線板を提供する。
【解決手段】BET法による比表面積が2.0〜50.0m2/gであり、脱水量が31.5〜34.0質量%であり、熱分解開始温度が260℃より高い高耐熱性水酸化アルミニウム粒子、その製造方法及びこの粒子を含む樹脂組成物並びにこの樹脂組成物を使用したプリント配線板である。
【選択図】なし

Description

本発明は、難燃剤として樹脂に添加するのに適した高耐熱性水酸化アルミニウム粒子、その製造方法及びこの粒子を含む樹脂組成物並びにこの樹脂組成物を使用したプリント配線板に関する。
従来、一般的に、多層プリント配線板は、片面または両面に内層回路を形成したプリント基板上に、プリプレグと呼ばれるガラス布にエポキシ樹脂を含浸し半硬化状態にした材料を銅箔と重ねて熱プレスにより積層一体化した後、ドリルで層間接続用のスルーホールと呼ばれる穴をあけ、スルーホール内壁と銅箔表面上に無電解めっきを行い、必要ならばさらに電解めっきを行って回路導体として必要な厚さとした後、不要な銅を除去して製造されている。
このようなプリント配線板用基材では、難燃性を確保するためにハロゲン系の難燃材を用いた樹脂組成物が使用されていた。しかし、近年、環境問題への関心の高まりとともにダイオキシンなどの有害物質を発生しない水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を難燃性フィラーとして充填した樹脂組成物が増えている。特に水酸化アルミニウムは、脱水量が多く難燃効果が大きく、さらに、耐酸性や耐アルカリ性などの耐薬品性に優れるため、難燃性フィラーとして好ましく使用されている。
この水酸化アルミニウムとしては、一般に、Al(OH)3あるいはAl23・3H2Oで表されるギブサイト型水酸化アルミニウムが使用されており、200℃以上の温度で吸熱を伴う脱水反応を起こしχ−アルミナに変化する。そして、この脱水反応により樹脂組成物の温度上昇が抑制され、発生した水蒸気により可燃性のガスを希釈することにより燃焼が抑制されるというものである。
また、プリント配線板用基材は、はんだにより電子部品が実装されるため、はんだ溶融温度以上の耐熱性が要求される。はんだには、従来Sn−Pb系はんだが使用されていたが、鉛の毒性の問題からSn−Cu系、Sn−Ag−Cu系などの鉛フリーはんだへの転換が進んでいる。これらの鉛フリーはんだ材料の融点は220℃付近であり、従来のSn−Pb系はんだの183℃に対して約40℃上昇している。このため従来のギブサイト型水酸化アルミニウムを使用すると、実装時の加熱により水酸化アルミニウムが脱水反応を起こし、生じた水蒸気により基材に膨れが生じるという問題が生じる。そこで、この問題を解決するために、種々の熱分解温度を向上させた高耐熱性水酸化アルミニウムが提案されている。
例えば、特許文献1には、Al23・nH2O(nは1.8〜2.7である。)で表される水酸化アルミニウム粒子を使用することにより、250〜260℃程度に加熱されても脱水反応を起こさず、樹脂組成物に難燃性を付与することができる旨が記載されている。
このAl23・nH2O(nは1.8〜2.7である。)で表される水酸化アルミニウム粒子は、結合水数が3であるギブサイト型水酸化アルミニウムが部分的に結合水数が1であるベーマイト型水酸化アルミニウム(以下、単に「ベーマイト」ということがある。)に転移し、その結果、結合水数が1.8〜2.7の範囲の水酸化アルミニウム粒子を得ることができるというものである。
この水酸化アルミニウム粒子の製造方法としては、静置式加熱方法及び流動式加熱方法を使用することができ、静置式加熱方法では、大気中、紛体温度を220〜280℃に制御しながら、1〜6時間処理することにより、また流動式加熱方法では、大気中、紛体温度を220〜280℃に制御しながら、滞留時間15〜90分で処理する旨が記載されている。
また、特許文献2には、合成樹脂の成形や合成樹脂の使用する環境温度において、脱水による発泡が少なく、合成樹脂製品の歩留まりを低下させず、かつ難燃性に優れた水酸化アルミニウムからなる難燃性フィラーが記載されている。この難燃性フィラーの製造方法として、ギブサイト型水酸化アルミニウムと水とを混合し、160〜170℃程度で水熱処理してベーマイトを複合化する旨が記載されている。
さらに、特許文献3には、脱水反応が高く、合成樹脂の成形や合成樹脂の使用する環境温度において脱水による発泡が少なく、合成樹脂製品の歩留まりを低下させず、かつ十分な脱水量を保持する難燃性に優れる耐熱性水酸化アルミニウムが記載されている。この耐熱性水酸化アルミニウムの製造方法として、水酸化アルミニウムと、ベーマイト化を遅延させる反応遅延剤とを混合し、170〜300℃で、オートクレーブ等の圧力容器を用いて、水熱処理、あるいは水蒸気雰囲気下で加圧、加熱する旨が記載されている。
特開2002−211918号公報 特許第4102428号公報 国際公開第2004/080897号公報
特許文献1では、ギブサイト型水酸化アルミニウム粒子を大気中で加熱処理して、部分的にベーマイトに変化させるものであるが、通常、加熱処理だけではベーマイトは析出しにくく、また、ギブサイト型水酸化アルミニウムをAl23・3H2Oで表した場合の含水量を3から、1.8〜2.7まで減らした状態では、放出可能な水分量が減るため、この水酸化アルミニウム粒子を用いたプリント配線板用基材では、難燃性が低下することがわかった。
また、特許文献2では、ギブサイト型水酸化アルミニウムを160〜170℃程度で水熱処理して、一部をベーマイトに変化させるものであるが、ベーマイトに変化させる温度が低いため、未反応のギブサイト型水酸化アルミニウムには160〜170℃程度の熱履歴しか付与されておらず、水酸化アルミニウム粒子の熱分解開始温度が低く、この水酸化アルミニウム粒子を用いたプリント配線板用基材では充分な高耐熱化ができないという問題がある。
さらに、特許文献3では、水酸化アルミニウム粒子にベーマイト化を遅延させる反応遅延剤を混合するものであり、これを水熱処理等した場合には、170〜300℃の熱処理が可能となり、高耐熱化が可能となるが、この水酸化アルミニウム粒子を樹脂と混合した場合には、添加された反応遅延剤により、得られる合成樹脂組成物の耐熱性等の特性が低下するおそれがあり、プリント配線板用基材として充分な高耐熱化ができないおそれがある。
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、製造装置、製造方法等の選択の自由度が広く、特に、鉛フリーはんだに対応可能なプリント配線板用基材等に好適に使用することができる適度な脱水量と熱分解開始温度とを有する高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を提供することを目的とする。
また、このような高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を使用して、プリント配線板用基材等の耐熱性と難燃性とを向上させることを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、比表面積、脱水量及び熱分解開始温度を適度に調整した水酸化アルミニウム粒子が上記目的に適うものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) BET法による比表面積が2.0〜50.0m2/gであり、脱水量が31.5〜34.0質量%であり、熱分解開始温度が260℃より高い高耐熱性水酸化アルミニウム粒子、
(2) 一粒子中に、少なくともギブサイト型水酸化アルミニウムとχ−アルミナとが存在する水酸化アルミニウム粒子である上記(1)に記載の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子、
(3) 高耐熱性水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径が0.5〜5μmである上記(1)又は(2)に記載の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子、
(4) 高耐熱性水酸化アルミニウム粒子中の酸化ナトリウムの含有量が0.3質量%以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子、
(5) ギブサイト型水酸化アルミニウム粒子を230〜270℃で加熱処理して、当該ギブサイト型水酸化アルミニウム粒子の少なくとも表面をχ−アルミナに変えることにより、水酸化アルミニウム粒子の表面に少なくともχ−アルミナが存在する高耐熱性水酸化アルミニウム粒子の製造方法、
(6) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を含む樹脂組成物、
(7) 基材に上記(6)に記載の樹脂組成物が含浸、乾燥されてなるプリプレグ、
(8) 上記(7)に記載のプリプレグの硬化物の少なくとも一方の面に導体層を有する積層板、
(9) 上記(8)に記載の積層板の導体層に回路が設けられてなるプリント配線板、
を提供するものである。
本発明によれば、製造装置、製造方法等の選択の自由度が広く、特に、鉛フリーはんだに対応可能なプリント配線板用基材等に好適に使用することができる適度な脱水量と熱分解開始温度とを有する高耐熱水酸化アルミニウム粒子が得られる。
また、このような高耐熱水酸化アルミニウム粒子を使用すれば、プリント配線板用基材等の耐熱性と難燃性とを向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
無機物の熱分解は、一般に活性化エネルギーの低い表面や、粒界の結晶転移やその他の欠陥部分から始まるとされる。そこで耐熱性を向上させるためには活性化エネルギーの低い表面等を予め熱分解させ熱的に安定な材料に変えることが有効である。例えば、ギブサイト型の水酸化アルミニウム粒子においては、水酸化アルミニウムの脱水物であるχ−アルミナがギブサイト型の水酸化アルミニウムより熱的に安定な物質である。そこで、活性化エネルギーの低い表面等を安定な脱水物に変えることにより熱分解開始温度を上昇させることを考えた。この熱分解開始温度が上昇すれば、プリント配線板用基材の耐熱性が上昇するからである。
そして、このχ−アルミナは、別名活性アルミナと呼ばれており、比表面積が大きく、吸湿性の大きい多孔質材料である。このため、ギブサイト型の水酸化アルミニウムの熱分解によるχ-アルミナへの変化率が高ければ、プリント配線板基材用フィラーとして充填した場合、吸着により表面に保持している水分量が増加するため、リフロー温度である260℃付近まで、多量の水蒸気を発生させることになり、耐熱性が低下するおそれがある。
そこで、ギブサイト型水酸化アルミニウム粒子を加熱処理等して、部分的にギブサイト型水酸化アルミニウムを直接ベーマイトに変化させた水酸化アルミニウム粒子とは異なり、水酸化アルミニウム粒子の表面に少なくともχ−アルミナを存在させ、そのχ-アルミナへの変化率を適度に調整することにより、適度な脱水量と熱分解開始温度とを有する高耐熱性水酸化アルミニウム粒子が得られ、その高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を含むプリント配線板用基材等が、耐熱性と難燃性に優れたものになることがわかった。
すなわち、BET法による比表面積が2.0〜50.0m2/gであり、脱水量が31.5〜34.0質量%であり、熱分解開始温度が260℃より高い高耐熱性水酸化アルミニウム粒子により、適度な脱水量と熱分解開始温度とを有する高耐熱性水酸化アルミニウム粒子となり、その高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を含むプリント配線板用基材等が、耐熱性と難燃性に優れたものになることがわかった。
本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子では、そのBET法による比表面積は、2.0〜50.0m2/gであり、2.5〜30.0m2/gが好ましく、3.0〜10.0m2/gがさらに好ましい。また、脱水量は31.5〜34.0質量%であり、32.0〜34.0質量%が好ましく、32.5〜33.5質量%がさらに好ましい。この範囲の比表面積及び脱水量であれば、少なくとも表面がχ−アルミナとなっていても、χ−アルミナの吸湿性が大きすぎることもなく、プリント配線板用基材等の耐熱性及び難燃性が低下することもないからである。
さらに、熱分解開始温度は260℃より高いものであり、262℃以上が好ましく、264℃以上がさらに好ましい。この熱分解開始温度であれば、耐熱性に優れた水酸化アルミニウム粒子となり、プリント配線板用基材等の耐熱性が低下することもないからである。熱分解開始温度の上限は特に限定されないが、例えば、280℃以下が好ましい。熱分解開始温度が280℃を超えると、吸湿性が高くなり、難燃効果は低減する。
ここで、本発明における熱分解開始温度は、示差熱−重量分析装置を使用し、昇温速度10℃/分、空気流量50ml/分で室温から800℃まで測定し、110℃を基準に質量減少率が1.0質量%になったときの温度である。
本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径は、0.5〜5μmが好ましく、1.0〜4.5μmがさらに好ましく、2.0〜4.0μmが特に好ましい。この範囲であれば、水酸化アルミニウム粒子が凝集することなく樹脂組成物中へ均一に混合分散することが容易となり、樹脂材料に水酸化アルミニウムを加えてワニスを作製する際の粘度が適度な粘度となり、沈降することもなく、ガラス基材等への含浸や、プリプレグをプレスした時の成形が容易となるからである。また、この範囲であれば、近年のプリント基板の薄型化においても、絶縁信頼性の高い薄物基板とすることができるからである。
また、一般に、水酸化アルミニウム粒子の熱分解開始温度は、含まれる不純物の含有量の影響を受け、例えば、Na2Oの含有量が低いほど熱分解開始温度が高くなることが知られている。このため本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子のNa2Oの含有量は、0.3質量%以下、さらに0.1質量%以下が好ましい。
次に、本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子の原料について説明する。
本発明に使用される原料としての水酸化アルミニウム粒子は、工業的に量産されているギブサイト型の水酸化アルミニウム粒子である。化学式は、Al(OH)3又はAl23・3H2Oで表され、一般的には、熱分析により実測した800℃における脱水量34.4質量%の水を含有している。
この水酸化アルミニウム粒子は、一般に、高温のアルミン酸ナトリウム溶液に水酸化アルミニウムの種結晶を添加した後、液温を低下させて過飽和溶液にすることにより、種結晶上に水酸化アルミニウム粒子を析出させることにより製造される。このため、通常、一定量のナトリウムを不純物として含んでいる。
そこで、本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子のNa2Oの含有量を上記した好ましい含有量にするために、原料としての水酸化アルミニウム粒子のNa2Oの含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、0.05質量%以下が特に好ましい。このようなNa2Oの含有量が低い水酸化アルミニウム粒子は、例えば、特開2004−182555号公報に記載されているような公知の方法で製造することができる。
また、水酸化アルミニウムの表面に付着するNa2Oの含有量は0.01質量%以下が好ましく、0.005質量%以下がさらに好ましく、0.003質量%以下が特に好ましい。Na2Oの含有量がこの程度であれば、熱分解開始温度が低下し、耐熱性が低下することもないからである。
また、本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子の粒径を上記した好ましい粒径にするために、原料としての水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径は0.3〜5μm、さらに、
0.5〜4.5μmにしておくのがよい。この範囲であれば、水酸化アルミニウムの表面にχ−アルミナが生成して比表面積が大きくなっても、本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子の粒径の好ましい粒径の範囲とすることができるからである。
次に、本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子の製造方法について説明する。
まず、原料であるギブサイト型水酸化アルミニウム粒子に加熱処理を施す。この加熱処理により水酸化アルミニウムの表面活性化エネルギーの低い表面や、粒界の結晶転移やその他の欠陥部分から分解脱水反応がおこり、水酸化アルミニウムの一部がχ−アルミナに変化する。これにより、熱分解開始温度の低い部分が予め除去され、適度に調整された比表面積、脱水量及び熱分解開始温度を有する高耐熱性水酸化アルミニウム粒子となる。
この加熱処理の雰囲気は特に制限されず、大気雰囲気でも窒素雰囲気でもよいが、コスト等の観点から大気雰囲気で行うのが実用的である。
また、処理装置及び処理方法は特に制限はなく、静置式加熱方式であるボックス炉、流動式加熱方式であるロータリーキルン、ディスク式ドライヤ等を使用することができるが、ロータリーキルンやディスク式ドライヤを用いた方がより均一な熱処理が可能になる。また、ロータリーキルンやディスク式ドライヤは連続運転が可能なため、量産性の観点からもより実用的である。
加熱処理は230〜270℃、好ましくは240℃〜260℃で行う。処理温度がこの範囲であれば、適度なχ−アルミナの生成速度となり、脱水量の制御が容易だからである。
処理時間は、水酸化アルミニウム粒子の脱水量が31.5〜34.0質量%となるように適宜選択する。
処理時間としては、例えば、230〜250℃の場合、40〜120分、又は、250〜270℃の場合、20〜40分である。
そして、加熱処理された水酸化アルミニウム粒子を、必要によりろ過や遠心分離により水や不純物等を除去し、乾燥処理して、本発明の高耐熱水酸化アルミニウム粒子を製造する。
次に、本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を含む樹脂組成物について説明する。
本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を樹脂に添加することにより、耐熱性の高い本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を含む樹脂組成物を得ることができる。
高耐熱性水酸化アルミニウムの配合量は、樹脂材料100質量部に対して30〜150質量部が好ましく、50〜120質量部さらに好ましい。この範囲であれば、充分な難燃性が得られ、配合時のワニスの粘度が高くなることもなく、積層板において成形性が容易となるからである。
本発明に使用する樹脂は特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、これら樹脂の変性物等が用いられる。また、これらの樹脂は2種類以上を併用してもよく、必要に応じて各種硬化剤、硬化促進剤等を使用し、これらを溶剤、溶液として配合してもかまわない。
耐熱性、耐湿性等の特性やコスト等のバランスを考慮するとエポキシ樹脂を使用することが好ましい。エポキシ樹脂としては、ハロゲンを含まず分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物がよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多官能フェノール類のグリシジルエーテル化合物、二官能アルコール類のグリシジルエーテル化合物、およびこれらのアルキル置換体、水素添加物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、硬化後の樹脂組成物のTgや耐熱性を向上するために、分子内に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を使用することが好ましい。このような樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等がある。
ポリイミド樹脂としては、例えば、マレイン酸N、N−エチレン−ビス−イミド、マレイン酸N、N−ヘキサメチレン−ビス−イミド、マレイン酸N、N−メタフェニレン−ビス−イミド、マレイン酸N、N−パラフェニレン−ビス−イミド、マレイン酸N、N−4,4−ジフェニルメタン−ビス−イミド、マレイン酸N、N−4,4−ジフェニルエーテル−ビス−イミド、マレイン酸N、N−4,4−ジフェニルスルホン−ビス−イミド、マレイン酸N、N−4,4−ジシクロヘキシルメタン−ビス−イミド、マレイン酸N、N−α、α−4,4−ジメチレンシクロヘキサン−ビス−イミド、マレイン酸N、N−4,4−メタキシリレン−ビス−イミド及びマレイン酸N、N−4,4−ジフェニルシクロヘキサン−ビス−イミド等を使用することができる。
フェノール樹脂としては、例えば、レゾール樹脂、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、ベンゾグアナミンフェノール樹脂又はフェノール変性ポリブタジエン等を使用することができる。
メラミン樹脂としては、例えば、メラミン−アルデヒド樹脂、メラミン−ウレア樹脂、メラミン−チオウレア樹脂、メラミン−アルキド樹脂、n−ブタノール変性メラミン樹脂、i−ブタノール変性メラミン樹脂等を使用することができる。
硬化剤としては、従来公知の種々のものを使用することができ、例えば樹脂材料としてエポキシ樹脂に使用する場合の硬化剤として、アミン化合物、フェノール化合物、酸無水物化合物等が挙げられる。アミン化合物の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、m−キシリレンジアミン等の芳香族アミン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ポリエーテルジアミン等の脂肪族アミン、ジシアンジアミド、1−(o−トリル)ビグアニド等のグアニジン類等が挙げられる。フェノール化合物の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4'−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、シメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4'−ビフェノール、ジメチル−4,4'−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tertブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂等が挙げられる。酸無水物化合物の具体例としては、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコール無水トリメリット酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸の無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物等の脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。これらの硬化剤は2種類以上を併用することも可能である。
本発明では、硬化促進剤を使用しても良く、その種類や配合量は特に制限するものではない。例えばエポキシ樹脂に使用する場合の硬化促進剤として、イミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられ、これらを2種類以上を併用してもよい。イミダゾール系化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等が挙げられる。これらイミダゾール系化合物はマスク化剤によりマスクされていてもよい。マスク化剤としては、アクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、メラミンアクリレート等が挙げられる。有機リン系化合物としては、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、フェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン/トリフェニルボラン錯体、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。第2級アミンとしては、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−アルキルアリールアミン、ピペラジン、ジアリルアミン、チアゾリジン、チオモルホリン等が挙げられる。第3級アミンとしては、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール等が挙げられる。第4級アンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物には、上記高耐熱性水酸化アルミニウム以外にも無機充填剤を配合することができる。併用する無機充填剤の種類や形状、粒径は特に限定するものではなく、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルク、酸化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。中でも熱膨張係数減の観点からは溶融シリカが好ましい。充填剤の形状は高充填化及び樹脂組成物の微細間隙への流動性・浸透性の観点から球形が好ましい。これらの無機充填剤は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記高耐熱性水酸化アルミニウム及び、場合によって配合される無機充填剤には、樹脂と充填剤の界面接着性や無機充填剤の分散性を向上させるために、各種カップリング剤やシリコーン重合体等を用いて無機充填剤の表面処理をすることが好ましい。カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が用いられる。シラン系カップリング剤としては、炭素官能性シランが用いられ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(2、3−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シラン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル(メチル)ジメトキシシランのようなアミノ基含有シラン;3−(トリメトキシリル)プロピルテトラメチルアンモニウムクロリドのようなカチオン性シラン;ビニルトリエトキシシランのようなビニル基含有シラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなアクリル基含有シラン;および3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シランが例示される。一方、チタネート系カップリング剤としては、チタンプロポキシド、チタンブトキシドのようなチタン酸アルキルエステルが例示される。これらのカップリング剤やシリコーン重合体は2種以上併用してもよい。また、その配合量は、特に制限はないが、無機充填剤に対して0.05〜5質量%であることが好ましく、0.1〜2.5質量%がより好ましい。この範囲であれば、充填剤の分散性が向上し、硬化物中にボイドが発生することを抑制でき、また耐熱性や機械強度が低下することもなく、線膨張係数が大きくなることもないからである。
さらに、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線遮蔽剤などを適宜配合することができる。
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて有機溶剤に希釈してワニス化する。用いられる溶剤は特に限定はなく、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、テトラヒドルフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N'−ジエチルアセトアミドなどのアミド系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、ブチロニトリルなどのニトリル系溶剤、ジメチルスルホキシドなどの硫黄化合物系溶剤などがあり、これらは単独で用いても何種類かを混合してもよい。また、ワニスの固形分濃度は特に制限はなく、樹脂の組成等により適宜変更できるが、通常、50質量%〜80質量%の範囲が好ましい。この範囲であれば、適度のワニス粘度となる。また、本発明の樹脂組成物をプリプレグに使用する場合、プリプレグの樹脂分も適量となり、プリプレグの外観を害することもないからである。
本発明のプリプレグは、本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を有する樹脂組成物を基材に含浸させ、例えば80℃〜200℃の範囲で乾燥させることにより製造することができる。
基材としては、金属箔張り積層板や多層印刷配線板を製造する際に用いられるものであれば特に制限されないが、通常、織布や不織布等の繊維基材が用いられる。繊維基材としては、例えば、ガラス、アルミナ、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維やアラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維等及びこれらの混抄系があり、特にガラス繊維の織布が好ましく用いられる。ガラス織布の種類は特に指定はなく、厚さ20〜200μmまでのものを目的のプリプレグまたは積層板の厚さに合わせて使用することができる。
また、樹脂をワニスに含浸させる方法としては、特に制限されず、例えば、ウェット方式やドライ方式などの樹脂液に基材を含浸させる方法、基材に樹脂組成物を塗布する方法などが挙げられる。
そして、上記により得られたプリプレグを少なくとも1枚以上重ね、加熱加圧成形することにより積層板が得られる。加熱温度は150〜250℃、さらに170〜200℃が好ましく、圧力は1.0〜8.0MPa、さらに2.0〜6.0MPaが好ましく、プリプレグ特性や、プレス機の能力、目的とする積層板の厚み等により適宜決定することができる。
また、プリプレグを少なくとも1枚以上重ねて、その片側又は両側に金属箔を配して、加熱加圧成形してプリント配線板用基材を製造することができる。金属箔としては主に銅箔やアルミ箔を使用するが、他の金属箔を用いても良い。金属箔の厚みは通常3〜200μmである。これらのプリント配線板用基材を使用し、回路加工してプリント配線板が得られる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
まず、本発明の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子についての実施例及び比較例を以下に示す。水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径、比表面積、脱水量及び熱分解開始温度は以下の方法で測定した。
〔平均粒子径〕
水酸化アルミニウムの平均粒子径は、日機装株式会社製レーザー散乱粒度分布計MT3000で水を分散液として測定した。
〔比表面積〕
水酸化アルミニウム粒子の比表面積は、ユアサアイオニクス株式会社製全自動ガス吸着量測定装置AUTO SORB−1でBET法により測定した。
〔脱水量、熱分解開始温度〕
水酸化アルミニウム粒子の脱水量は、マックサイエンス株式会社製示差熱−重量分析装置 TG-DTA2000を用いて、昇温速度10℃/分、空気流量50ml/分で室温から800℃まで測定し、110℃を基準に800℃における加熱質量減少量から算出した。
この脱水量から、下記式(1)によって、χ−アルミナの生成率を算出した。

χ−アルミナの生成率=〔(34.4−サンプルの脱水量)/34.4〕×100・・・(1)

また、熱分解開始温度は、この測定において110℃を基準に質量減少率が1.0質量%となったときの温度とした。
(実施例1)
原料であるギブサイト型水酸化アルミニウム粒子として、昭和電工株式会社製HP−360(平均粒子径3.2μm、比表面積1.3m2/g、脱水量34.4質量%)を使用した。
このギブサイト型水酸化アルミニウム粒子をディスク式ドライヤ(栗本鐵工所製、CD−80、処理容量5.0リットル)を用いて、250℃で滞留時間30分として大気雰囲気で加熱処理した。
得られた水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径、比表面積、脱水量及び熱分解開始温度を表1に示す。また、この粒子の酸化ナトリウムの含有量は、0.1質量%以下であった。
そして、この得られた水酸化アルミニウム粒子を株式会社リガク製X線回折装置 RAD3で管電圧40kV、管電流20mAの条件でX線回折パターン測定したところ、ギブサイト型水酸化アルミニウムのX線回折パターンが測定された。さらに、走査電子顕微鏡観察したところ、粒子の表面には結晶相は見られず、水酸化アルミニウム粒子の表面は無定形のχ−アルミナに変化しているものと推測された。
この結果、得られた粒子は、適度な脱水量と熱分解開始温度を併せ持つ高耐熱性水酸化アルミニウム粒子であることが確認された。そして、脱水量から、この高耐熱性水酸化アルミニウム粒子の表面には、χ−アルミナが1.7質量%生成していると推測される。
(実施例2)
加熱処理の温度を260℃に代えた以外は実施例1と同様にして、高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を作製した。
得られた水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径、比表面積、脱水量及び熱分解開始温度を表1に示す。また、この粒子の酸化ナトリウムの含有量は、0.1質量%以下であった。
そして、この得られた水酸化アルミニウム粒子を実施例1と同様にX線回折パターン測定したところ、ギブサイト型水酸化アルミニウムのX線回折パターンが測定された。
この結果、得られた粒子は、適度な脱水量と熱分解開始温度を併せ持つ高耐熱性水酸化アルミニウム粒子であることが確認された。そして、脱水量から、この高耐熱性水酸化アルミニウム粒子の表面には、χ−アルミナが4.9質量%生成していると推測される。
(実施例3)
原料であるギブサイト型水酸化アルミニウム粒子として、住友化学株式会社製CL−303(平均粒子径4.1μm、比表面積1.6m2/g、脱水量34.4質量%)を使用した以外は、実施例2と同様にして高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を作製した。
得られた水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径、比表面積、脱水量及び熱分解開始温度を表1に示す。また、この粒子の酸化ナトリウムの含有量は、0.1質量%以下であった。
そして、この得られた水酸化アルミニウム粒子を実施例1と同様にX線回折パターン測定したところ、ギブサイト型水酸化アルミニウムのX線回折パターンが測定された。
この結果、得られた粒子は、適度な脱水量と熱分解開始温度を併せ持つ高耐熱性水酸化アルミニウム粒子であることが確認された。そして、脱水量から、この高耐熱性水酸化アルミニウム粒子の表面には、χ−アルミナが7.0質量%生成していると推測される。
(比較例1)
加熱処理の温度及び時間を210℃で1時間に代えた以外は実施例1と同様にして、水酸化アルミニウム粒子を作製した。
得られた水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径、比表面積、脱水量及び熱分解開始温度を表2に示す。また、この粒子の酸化ナトリウムの含有量は、0.1質量%以下であった。
この結果、得られた粒子は、比表面積が少なく、脱水量が多く、熱分解開始温度が低い水酸化アルミニウム粒子であることが確認された。
(比較例2)
加熱処理の温度及び時間を210℃で1時間とした以外は実施例3と同様にして、水酸化アルミニウム粒子を作製した。
得られた水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径、比表面積、脱水量及び熱分解開始温度を表2に示す。また、この粒子の酸化ナトリウムの含有量は、0.1質量%以下であった。
この結果、得られた粒子は、比表面積が少なく、脱水量が多く、熱分解開始温度が低い水酸化アルミニウム粒子であることが確認された。
(比較例3)
ディスク式ドライヤに代えて熱風循環タイプのボックス炉(ヤマト科学社製 ファインオーブンDH42)を用い、さらに加熱処理の温度及び時間を280℃で1時間とした以外は実施例1と同様にして、水酸化アルミニウム粒子を作製した。
得られた水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径、比表面積、脱水量及び熱分解開始温度を表2に示す。また、この粒子の酸化ナトリウムの含有量は、0.1質量%以下であった。
この結果、得られた粒子は、比表面積が多く、脱水量が少なく、熱分解開始温度が低い水酸化アルミニウム粒子であることが確認された。
(比較例4)
実施例3で使用した原料であるギブサイト型水酸化アルミニウム粒子住友化学株式会社製CL−303(平均粒子径4.1μm、比表面積1.6m2/g、脱水量34.4質量%)を加熱処理を施さずにそのまま使用した。
このギブサイト型水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径、比表面積、脱水量及び熱分解開始温度を表2に示す。また、この粒子の酸化ナトリウムの含有量は、0.1質量%以下であった。
この結果、この粒子は、比表面積が少なく、脱水量が多く、熱分解開始温度が低い水酸化アルミニウム粒子であることが確認された。
(比較例5)
ディスク式ドライヤに代えて熱風循環タイプのボックス炉(ヤマト科学社製 ファインオーブンDH42)を用い、さらに加熱処理の温度及び時間を280℃で30時間とした以外は実施例1と同様にして、水酸化アルミニウム粒子を作製した。
得られた水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径、比表面積、脱水量及び熱分解開始温度を表2に示す。また、この粒子の酸化ナトリウムの含有量は、0.1質量%以下であった。
この結果、得られた粒子は、比表面積が多く、脱水量が少なく、熱分解開始温度が低い水酸化アルミニウム粒子であることが確認された。
(比較例6)
ギブサイト型水酸化アルミニウム粒子として住友化学株式会社製のCL303(平均粒子径4.1μm、比表面積1.6m2/g、脱水量34.4質量%)およびベーマイト型水酸化アルミニウム粒子として河合石灰工業株式会社製BMT−2(平均粒子径2.9μm,比表面積3.0m2/g、脱水量16.6質量%)を6:1の比率で混合して使用した以外は実施例1と同様にして、水酸化アルミニウム粒子を作製した。この混合物の水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径、比表面積、脱水量及び熱分解開始温度を表2に示す。
この結果、得られた粒子は、比表面積及び脱水量は適切な量であったが、熱分解開始温度が低い水酸化アルミニウム粒子であることが確認された。
Figure 2011084431
Figure 2011084431
次に、実施例1〜3の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子及び比較例1〜6の水酸化アルミニウム粒子を使用して、プリプレグの硬化物の両面に銅箔を重ねた積層板を製造し、積層板の吸湿率、耐熱性、難燃性を評価した。
(積層板の製造)
水酸化アルミニウム粒子として上記実施例1〜3の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子及び比較例1〜6の水酸化アルミニウム粒子85質量部のそれぞれに対して、エポキシ樹脂としてビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製EPICLON N865、エポキシ当量:205)を65.4質量部、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製HF−4、水酸基当量:108)を34.6質量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成株式会社製2E4MZ)を0.2質量部、平均粒子径0.5μmの球状溶融シリカ(株式会社アドマテックス製SO−25H)30質量部、難燃助剤としてモリブデン酸亜鉛担持タルク(シャーウインウイリアムズ社製 Kemgard 911C)を5質量部、メチルエチルケトンを94.4質量部配合し、固形分70質量%のワニスを調整した。
これらのワニスを厚さ約0.1mmのガラス布(#2116、E−ガラス)に含浸後、150℃で3〜10分加熱乾燥して樹脂分48質量%のプリプレグを得た。これらプリプレグを4枚を重ね、その両側に厚みが18μmの銅箔を重ね、175℃で90分間3.0MPaの圧力を加えてプレスし、両面銅張積層板を作製した。この積層板を使用して吸湿率、耐熱性及び難燃性の評価を行った。
〔吸湿率〕
作製した積層板を50mm四角に裁断して測定サンプルを3個作製し、銅箔をエッチングで除去し、125℃のプレッシャークッカー装置で5時間吸湿処理を行い、質量の変化から吸湿率を測定した。
〔耐熱性〕
作製した積層板を50mm四角に裁断して測定サンプルを3個作製し、288℃のはんだにフローティングし、膨れが発生するまでの時間を測定した。
〔難燃性〕
作製した積層板の銅箔をエッチングで除去し、縦10cm、横1cmに裁断し、サンプルを5個作製し、縦型の燃焼試験を行い、5サンプルの平均燃焼時間と最大燃焼時間を測定し、UL−94垂直法による燃焼時間により評価した。そして、平均燃焼時間5秒以下かつ最大燃焼時間10秒以下をV−0,平均燃焼時間10秒以下かつ最大燃焼時間30秒以下をV−1とした。
これら、吸湿率、耐熱性及び難燃性の結果を表3及び4に示す。表3及び4において、積層板1〜3は上記実施例1〜3の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子をそれぞれ使用した積層板であり、積層板4〜9は上記比較例1〜6の水酸化アルミニウム粒子をそれぞれ使用した積層板である。
Figure 2011084431
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実施例1〜3で得られた高耐熱水酸化アルミニウム粒子を用いた積層板1〜3では、吸湿率が0.48〜0.50質量%であり、耐熱性が30分以上であり耐熱性に優れていた。また、平均燃焼時間が4.3〜4.4秒、最大燃焼時間が7〜8秒、UL−94がV−0であり難燃性に優れていた。
これに対して、脱水量が34.0質量%より多い比較例1及び2の水酸化アルミニウム粒子を使用した積層板4及び5並びに比較例6のギブサイト型水酸化アルミニウム粒子とベーマイト型水酸化アルミニウム粒子との混合粒子を使用した積層板9は、吸湿率、平均燃焼時間、最大燃焼時間及びUL−94は積層板1〜3と同程度であったが、耐熱性がそれぞれ20分、6分、5分であり耐熱性に劣っていた。
また、脱水量が34.0%未満の比較例3の水酸化アルミニウム粒子を使用した積層板6は、吸湿率、耐熱性、平均燃焼時間、最大燃焼時間及びUL−94のすべてにおいて積層板1〜3より劣っていた。
さらに、比較例4の加熱処理をしていない水酸化アルミニウム粒子(ギブサイト型水酸化アルミニウム粒子)を使用した積層板7は、吸湿率、平均燃焼時間、最大燃焼時間及びUL−94は積層板1〜3と同程度であったが、耐熱性が3分であり耐熱性に劣っていた。
また、実施例1の加熱処理の温度を高くした比較例5の水酸化アルミニウム粒子を用いた積層板8は、吸湿率、耐熱性、平均燃焼時間及び最大燃焼時間が積層板1〜3より劣っていた。
この結果から、本発明によれば、合成樹脂に難燃材として添加するのに適した脱水量及び熱分解開始温度を有する高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を提供することができることを確認することができた。
そして、この高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を使用すれば、吸湿性が低く、耐熱性及び難燃性に優れた積層板を提供することができる。
本発明は、難燃剤として添加するのに適した高耐熱性の水酸化アルミニウム粒子を提供することができ、鉛フリーはんだに対応可能なプリント配線板基材の耐熱性と難燃性を向上させたプリント配線板等を提供することができる。

Claims (9)

  1. BET法による比表面積が2.0〜50.0m2/gであり、脱水量が31.5〜34.0質量%であり、熱分解開始温度が260℃より高い高耐熱性水酸化アルミニウム粒子。
  2. 一粒子中に、少なくともギブサイト型水酸化アルミニウムとχ−アルミナとが存在する水酸化アルミニウム粒子である請求項1に記載の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子。
  3. 高耐熱性水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径が0.5〜5μmである請求項1又は2に記載の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子。
  4. 高耐熱性水酸化アルミニウム粒子中の酸化ナトリウムの含有量が0.3質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子。
  5. ギブサイト型水酸化アルミニウム粒子を230〜270℃で加熱処理して、当該ギブサイト型水酸化アルミニウム粒子の少なくとも表面をχ−アルミナに変えることにより、水酸化アルミニウム粒子の表面に少なくともχ−アルミナが存在する高耐熱性水酸化アルミニウム粒子の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の高耐熱性水酸化アルミニウム粒子を含む樹脂組成物。
  7. 基材に請求項6に記載の樹脂組成物が含浸、乾燥されてなるプリプレグ。
  8. 請求項7に記載のプリプレグの硬化物の少なくとも一方の面に導体層を有する積層板。
  9. 請求項8に記載の積層板の導体層に回路が設けられてなるプリント配線板。
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