JP2003292819A - 難燃性フィラー - Google Patents

難燃性フィラー

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JP2003292819A
JP2003292819A JP2002103146A JP2002103146A JP2003292819A JP 2003292819 A JP2003292819 A JP 2003292819A JP 2002103146 A JP2002103146 A JP 2002103146A JP 2002103146 A JP2002103146 A JP 2002103146A JP 2003292819 A JP2003292819 A JP 2003292819A
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aluminum hydroxide
boehmite
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retardant filler
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健二 木戸
Hirofumi Mitsunaka
宏文 満仲
Hirokazu Kikata
宏和 木方
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  • Compounds Of Alkaline-Earth Elements, Aluminum Or Rare-Earth Metals (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】合成樹脂の成形や合成樹脂の用いる環境温度
において脱水により発泡することがなく、合成樹脂製品
の歩留まりを低下させることなく、しかも難燃性に優れ
た水酸化アルミニウムからなる難燃性フィラーを提供す
ること。 【解決手段】水酸化アルミニウムを原料として水熱処理
により製造されるベーマイトが複合した水酸化アルミニ
ウムからなる難燃性フィラー。該難燃性フィラーは、熱
可塑性樹脂に添加しても、熱硬化性樹脂に添加しても良
い。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂でも良い。また、前
記難燃性フィラーにおいて、ベーマイトの複合率は、5
〜70重量%でも良い。水酸化アルミニウムを水熱処理
してベーマイトが複合した水酸化アルミニウムを製造す
る難燃性フィラーの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、難燃性フィラーに
関し、詳細には、ベーマイトが複合した水酸化アルミニ
ウムからなる難燃性フィラーに関する。
【0002】
【従来の技術】合成樹脂は多方面で汎用されているが、
通常、難燃性を付与するために易燃性の合成樹脂には難
燃性フィラーが充填される。また、難燃性のある合成樹
脂の場合でも、難燃性をより一層強化するために難燃性
フィラーが充填されることがある。そのため、従来より
様々な難燃性フィラーが提供されているが、とりわけ水
酸化アルミニウム(Al(OH))が、構造水に富ん
で難燃効果に優れるばかりか耐酸性や耐アルカリ性にも
優れ、コスト面でも有利であることから最も汎用されて
いる。この水酸化アルミニウムの難燃特性については、
脱水がおよそ200℃から徐々に始まり、230℃から
250℃で一気に脱水することが知られている。
【0003】しかし、熱可塑性樹脂は、水酸化アルミニ
ウムが脱水する温度領域あたりで成形されるものが多
く、水酸化アルミニウムの脱水で合成樹脂成形品内で発
泡が発生し、成形品の表面にブツブツが表れて歩留まり
を低下させることがあった。また、熱硬化性樹脂は、熱
可塑性樹脂より低い温度で成形されることが多いもの
の、この合成樹脂の特徴から高温度で使用される例えば
電気・電子機器部品などに用いられることも多く、用い
られる環境温度によっては水酸化アルミニウムが脱水
し、成形品の歩留まりや物性を低下させることがあっ
た。例示すれば、熱硬化性樹脂を電子基板に用いた場
合、電子基板上にハンダ付けするときの環境温度は23
0℃位になるため、水酸化アルミニウムが脱水し、電子
基板の歩留まりを低下させることがあった。
【0004】このような事情下、脱水温度の高い難燃性
フィラーを用いることも考え得るが、例えば、ベーマイ
ト(AlO(OH))では、約500℃に脱水のピーク
があり有利なようであるが、構造水が少ないため脱水量
が少ないという欠点があった。また、水酸化マグネシウ
ム(Mg(OH))は、脱水温度のピークが約380
℃と高いが、アルカリ性が強く、合成樹脂を劣化させ易
いばかりか、耐酸性に欠けるため電子機器部品などにお
いて酸でエッチングする際に溶け易いという欠点があっ
た。そこで、水酸化アルミニウムからなる難燃性フィラ
ー自体の脱水温度を上昇させることが最も望ましいと言
えるが、これまでの研究にも拘わらず未だそのような難
燃性フィラーは提供されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みなされたものであり、水酸化アルミニウムからなり
合成樹脂の成形や合成樹脂の用いる環境温度において脱
水による発泡がなく、合成樹脂製品の歩留まりを低下さ
せないばかりか難燃性にも優れた難燃フィラーを提供す
ることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため水酸化アルミニウムとベーマイトの難燃
特性に着目して検討を重ね本発明に想到した。すなわ
ち、本発明は、ベーマイトが複合した水酸化アルミニウ
ムからなる難燃性フィラーを要旨とする。ベーマイトが
複合した水酸化アルミニウムとは、ベーマイトと水酸化
アルミニウムとを単に混合したものをいうのではなく、
水酸化アルミニウムを原料としてベーマイト化させる過
程で水酸化アルミニウムにベーマイトが混在したものを
いう。本発明の難燃性フィラーは、ベーマイトが複合す
ることにより全脱水量をほとんど低下させることなく水
酸化アルミニウムの脱水温度を上昇させる。このような
作用がどのような機序によるかは明らかでないが、水酸
化アルミニウムの表面をベーマイトの結晶が被覆するこ
とによるものではないかと推測される。なお、水酸化ア
ルミニウムとベーマイトを単に混合しただけでは、水酸
化アルミニウムからなる難燃性フィラー自体の脱水温度
を上昇させることができない。
【0007】上記難燃性フィラーは、熱可塑性樹脂ある
いは熱硬化性樹脂に添加することができる。
【0008】また、上記発明の難燃性フィラーにおける
ベーマイトの複合率は、5〜70重量%であることが好
ましい。
【0009】また、上記発明の難燃性フィラーは、水酸
化アルミニウムを原料として水熱処理により製造される
ベーマイトが複合した水酸化アルミニウムであっても良
い。
【0010】また、本発明は、水酸化アルミニウムを水
熱処理してベーマイトが複合した水酸化アルミニウムを
製造する難燃性フィラーの製造方法を要旨とする。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の難燃性フィラーは、ベー
マイトが複合した水酸化アルミニウムからなる。ベーマ
イトが複合する水酸化アルミニウムは、水酸化アルミニ
ウムを原料として水熱処理することにより得ることがで
きる。水熱処理は、水酸化アルミニウムと水を混合して
行っても(以下、湿式水熱処理という)、あるいは水酸
化アルミニウムに水を混合することなく行っても(以
下、乾式水熱処理という)良いが、前者の湿式水熱処理
が難燃性フィラーの脱水温度を上昇させ易いのでより好
ましい。水熱処理は、オートクレーブなどの圧力容器を
用いて、通常、水蒸気雰囲気下150℃以上で所定時間
加熱して行われる。
【0012】本発明の難燃性フィラーは、ベーマイトの
複合率が高くなれば難燃性フィラーとしての脱水温度が
上昇する反面、総脱水量が減少し、また、ベーマイトの
複合率が低くなれば難燃性フィラー自体の脱水温度が低
下する反面、総脱水量が増加する関係にある。したがっ
て、ベーマイトの複合率は、添加する合成樹脂の成形温
度や用いる環境温度を考慮して適宜変更すれば良いが、
通常、5〜70重量%で、10〜20重量%がより好ま
しい。ベーマイトの複合率は、加熱温度、処理時間ある
いは水比(湿式水熱処理の場合、水酸化アルミニウムと
水の重量比)を変更することにより制御可能である。
【0013】本発明の難燃性フィラーは、熱可塑性樹脂
あるいは熱硬化性樹脂のいずれにも用いることができ、
また易燃性、難燃性を問わず用いることができ、例えば
メチルメタアクリル樹脂、アクリル−スチレン共重合樹
脂、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ユリア
樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステ
ル、ジアリルフタレートなど様々な合成樹脂に用いるこ
とができる。
【0014】
【実施例】次に、本発明を実施例を挙げて説明するが、
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。な
お、以下に用いる%は重量%である。
【0015】〔実施例1〕水酸化アルミニウム1000
gをオートクレーブに入れ、160℃で1時間水熱処理
した。得られた生成物を脱水、乾燥しベーマイトが複合
した水酸化アルミニウムを試験に供した(乾式水熱処
理)。
【0016】〔実施例2〕水酸化アルミニウム1000
gと水7000g(水比7)を良く混合した後、オート
クレーブに入れ、170℃で6時間水熱処理した。得ら
れた生成物を脱水、乾燥しベーマイトが複合した水酸化
アルミニウムを試験に供した(湿式水熱処理)。
【0017】〔実施例3〕水酸化アルミニウム1000
gと水5000g(水比5)を良く混合した後、オート
クレーブに入れ、170℃で6時間水熱処理した。得ら
れた生成物を脱水、乾燥しベーマイトが複合した水酸化
アルミニウムを試験に供した(湿式水熱処理)。
【0018】〔比較例1〜比較例3〕市販の水酸化アル
ミニウムの粒度の異なるものを試験に供した。なお、比
較例2は、空気中にて230℃に20分間保持脱水し、
ベーマイトを複合させた。
【0019】上記の各実施例及び各比較例について、熱
分析(TG−DTA)測定により脱水温度、脱水量
(%)、全脱水量(%)について試験を行った。合成樹
脂中での難燃性フィラーの脱水する水分量が難燃性フィ
ラーの全重量に対して1%が許容範囲とされることが多
いので、1%の脱水に到達した温度を脱水温度として測
定した。また、脱水量は、250℃までの脱水量を測定
した。全脱水量は、ベーマイトが複合した水酸化アルミ
ニウムからなる難燃性フィラーの最大の水分量をいう。
なお、脱水量と全脱水量における%はベーマイトが複合
した水酸化アルミニウムの重量に対する脱水する水分の
重量の百分率である。また、熱分析(TG−DTA)測
定は、リガク社製の熱分析装置TAS−200 4.1
0を用いて、空気中10℃/分で昇温して測定した。
【0020】各実施例におけるベーマイトの複合率は、
水熱処理により得られた生成物全重量に対するベーマイ
トの重量の百分率である。この複合率は、純粋な水酸化
アルミニウムとベーマイトの全脱水量の理論値が各々3
4.6%と15%であることに基づき、下記数式のよう
に算出した。
【0021】
【数1】
【0022】上記のZに脱水量の実測値を導入すること
により算出し、得られたXを1から減じ、これを百分率
にしたものがベーマイトの複合率(%)である。
【0023】結果は下記表に示した通りである。この表
から明らかなように、脱水温度はいずれの実施例も比較
例より高く、しかも全脱水量は水酸化アルミニウム単独
の場合とほとんど変わらなかった。また、実施例1と比
較例2から明らかなように、水熱処理により水酸化アル
ミニウムにベーマイトを複合させることにより脱水温度
を上昇させることができた。実施例1と実施例2から、
湿式水熱処理の方が乾式水熱処理より脱水温度をより上
昇させることができた。
【0024】また、水酸化アルミニウムとベーマイト
は、一般的に残存Na量が多いと脱水温度が上昇すると
言われているため、実施例1、実施例2及び比較例1に
ついて残存Na量を検出した(測定法:ICP発光分光
分析法(HF分解))。それぞれの残存Na量は、0.
21%、0.10%、0.21%で実施例1と比較例1
に差異はなく、また、実施例2は比較例1より残存量が
少ないにも拘わらず脱水温度が上昇していた。このこと
より、実施例と比較例の脱水温度の相違は、残存Na量
に依存するものではないことが判明した。
【0025】
【表1】
【0026】実施例2と比較例1の難燃性フィラーをエ
ポキシ樹脂に添加し、いずれも混合温度80℃で2時間
処理した後、成形温度150℃で8時間硬化を行い、次
いで255℃で5秒の熱処理を5サイクル繰り返し発泡
の状況を観察した。その結果、実施例2では脱水に起因
する発泡が発生しなかったが、比較例1については発泡
が発生した。
【0027】脱水温度が5℃違えば合成樹脂の発泡の有
無に大きな影響があることを考慮すれば、上記の結果か
ら本発明の難燃性フィラーは、脱水温度を上昇させなが
ら、しかも脱水量を十分に確保できる優れた難燃性フィ
ラーであることが判明した。
【0028】
【発明の効果】本発明の難燃性フィラーは、従来の水酸
化アルミニウムからなる難燃性フィラーに比し、脱水温
度を上昇させながら全脱水量をほとんど減少させないの
で、合成樹脂の成形や合成樹脂の用いる環境温度におい
て難燃性フィラーの脱水に起因する合成樹脂成形品内で
の発泡を回避させ、合成樹脂成形品の歩留まり低下させ
ることなく生産効率を高め、ひいてはコスト低減に資す
るばかりか、優れた難燃効果を発揮することができる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】明細書
【発明の名称】難燃性フィラー
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、難燃性フィラーに
関し、詳細には、水酸化アルミニウムを原料として水熱
処理により製造されるベーマイトが複合した水酸化アル
ミニウムからなる難燃性フィラーに関する。
【0002】
【従来の技術】合成樹脂は多方面で汎用されているが、
通常、難燃性を付与するために易燃性の合成樹脂には難
燃性フィラーが充填される。また、難燃性のある合成樹
脂の場合でも、難燃性をより一層強化するために難燃性
フィラーが充填されることがある。そのため、従来より
様々な難燃性フィラーが提供されているが、とりわけ水
酸化アルミニウム(Al(OH))が、構造水に富ん
で難燃効果に優れるばかりか耐酸性や耐アルカリ性にも
優れ、コスト面でも有利であることから最も汎用されて
いる。この水酸化アルミニウムの難燃特性については、
脱水がおよそ200℃から徐々に始まり、230℃から
250℃で一気に脱水することが知られている。
【0003】しかし、熱可塑性樹脂は、水酸化アルミニ
ウムが脱水する温度領域あたりで成形されるものが多
く、水酸化アルミニウムの脱水で合成樹脂成形品内で発
泡が発生し、成形品の表面にブツブツが表れて歩留まり
を低下させることがあった。また、熱硬化性樹脂は、熱
可塑性樹脂より低い温度で成形されることが多いもの
の、この合成樹脂の特徴から高温度で使用される例えば
電気・電子機器部品などに用いられることも多く、用い
られる環境温度によっては水酸化アルミニウムが脱水
し、成形品の歩留まりや物性を低下させることがあっ
た。例示すれば、熱硬化性樹脂を電子基板に用いた場
合、電子基板上にハンダ付けするときの環境温度は23
0℃位になるため、水酸化アルミニウムが脱水し、電子
基板の歩留まりを低下させることがあった。
【0004】このような事情下、脱水温度の高い難燃性
フィラーを用いることも考え得るが、例えば、ベーマイ
ト(AlO(OH))では、約500℃に脱水のピーク
があり有利なようであるが、構造水が少ないため脱水量
が少ないという欠点があった。また、水酸化マグネシウ
ム(Mg(OH))は、脱水温度のピークが約380
℃と高いが、アルカリ性が強く、合成樹脂を劣化させ易
いばかりか、耐酸性に欠けるため電子機器部品などにお
いて酸でエッチングする際に溶け易いという欠点があっ
た。そこで、水酸化アルミニウムからなる難燃性フィラ
ー自体の脱水温度を上昇させることが最も望ましいと言
えるが、これまでの研究にも拘わらず未だそのような難
燃性フィラーは提供されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みなされたものであり、水酸化アルミニウムからなり
合成樹脂の成形や合成樹脂の用いる環境温度において脱
水による発泡がなく、合成樹脂製品の歩留まりを低下さ
せないばかりか難燃性にも優れた難燃フィラーを提供す
ることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため水酸化アルミニウムとベーマイトの難燃
特性に着目して検討を重ね本発明に想到した。すなわ
ち、本発明は、水酸化アルミニウムを原料として水熱処
理により製造されるベーマイトが複合した水酸化アルミ
ニウムからなる難燃性フィラーを要旨とする。ベーマイ
トが複合した水酸化アルミニウムとは、ベーマイトと水
酸化アルミニウムとを単に混合したものをいうのではな
く、水酸化アルミニウムを原料として水熱処理によりベ
ーマイト化させる過程で水酸化アルミニウムにベーマイ
トが混在したものをいう。本発明の難燃性フィラーは、
ベーマイトが複合することにより全脱水量をほとんど低
下させることなく水酸化アルミニウムの脱水温度を上昇
させる。このような作用がどのような機序によるかは明
らかでないが、水酸化アルミニウムの表面をベーマイト
の結晶が被覆することによるものではないかと推測され
る。なお、水酸化アルミニウムとベーマイトを単に混合
しただけでは、水酸化アルミニウムからなる難燃性フィ
ラー自体の脱水温度を上昇させることができない。
【0007】上記難燃性フィラーは、熱可塑性樹脂ある
いは熱硬化性樹脂に添加することができる。
【0008】また、上記発明の難燃性フィラーにおける
ベーマイトの複合率は、5〜70重量%であることが好
ましい。
【0009】また、本発明は、水酸化アルミニウムを水
熱処理してベーマイトが複合した水酸化アルミニウムを
製造する難燃性フィラーの製造方法を要旨とする。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の難燃性フィラーは、水酸
化アルミニウムを原料として水熱処理することにより製
造されるベーマイトが複合した水酸化アルミニウムから
なる。水熱処理は、水酸化アルミニウムと水を混合して
行っても(以下、湿式水熱処理という)、あるいは水酸
化アルミニウムに水を混合することなく行っても(以
下、乾式水熱処理という)良いが、前者の湿式水熱処理
が難燃性フィラーの脱水温度を上昇させ易いのでより好
ましい。水熱処理は、オートクレーブなどの圧力容器を
用いて、通常、水蒸気雰囲気下150℃以上で所定時間
加熱して行われる。
【0011】本発明の難燃性フィラーは、ベーマイトの
複合率が高くなれば難燃性フィラーとしての脱水温度が
上昇する反面、総脱水量が減少し、また、ベーマイトの
複合率が低くなれば難燃性フィラー自体の脱水温度が低
下する反面、総脱水量が増加する関係にある。したがっ
て、ベーマイトの複合率は、添加する合成樹脂の成形温
度や用いる環境温度を考慮して適宜変更すれば良いが、
通常、5〜70重量%で、10〜20重量%がより好ま
しい。ベーマイトの複合率は、加熱温度、処理時間ある
いは水比(湿式水熱処理の場合、水酸化アルミニウムと
水の重量比)を変更することにより制御可能である。
【0012】本発明の難燃性フィラーは、熱可塑性樹脂
あるいは熱硬化性樹脂のいずれにも用いることができ、
また易燃性、難燃性を問わず用いることができ、例えば
メチルメタアクリル樹脂、アクリル−スチレン共重合樹
脂、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ユリア
樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステ
ル、ジアリルフタレートなど様々な合成樹脂に用いるこ
とができる。
【0013】
【実施例】次に、本発明を実施例を挙げて説明するが、
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。な
お、以下に用いる%は重量%である。
【0014】〔実施例1〕水酸化アルミニウム1000
gをオートクレーブに入れ、160℃で1時間水熱処理
した。得られた生成物を脱水、乾燥しベーマイトが複合
した水酸化アルミニウムを試験に供した(乾式水熱処
理)。
【0015】〔実施例2〕水酸化アルミニウム1000
gと水7000g(水比7)を良く混合した後、オート
クレーブに入れ、170℃で6時間水熱処理した。得ら
れた生成物を脱水、乾燥しベーマイトが複合した水酸化
アルミニウムを試験に供した(湿式水熱処理)。
【0016】〔実施例3〕水酸化アルミニウム1000
gと水5000g(水比5)を良く混合した後、オート
クレーブに入れ、170℃で6時間水熱処理した。得ら
れた生成物を脱水、乾燥しベーマイトが複合した水酸化
アルミニウムを試験に供した(湿式水熱処理)。
【0017】〔比較例1〜比較例3〕市販の水酸化アル
ミニウムの粒度の異なるものを試験に供した。なお、比
較例2は、空気中にて230℃に20分間保持脱水し、
ベーマイトを複合させた。
【0018】上記の各実施例及び各比較例について、熱
分析(TG−DTA)測定により脱水温度、脱水量
(%)、全脱水量(%)について試験を行った。合成樹
脂中での難燃性フィラーの脱水する水分量が難燃性フィ
ラーの全重量に対して1%が許容範囲とされることが多
いので、1%の脱水に到達した温度を脱水温度として測
定した。また、脱水量は、250℃までの脱水量を測定
した。全脱水量は、ベーマイトが複合した水酸化アルミ
ニウムからなる難燃性フィラーの最大の水分量をいう。
なお、脱水量と全脱水量における%はベーマイトが複合
した水酸化アルミニウムの重量に対する脱水する水分の
重量の百分率である。また、熱分析(TG−DTA)測
定は、リガク社製の熱分析装置TAS−200 4.1
0を用いて、空気中10℃/分で昇温して測定した。
【0019】各実施例におけるベーマイトの複合率は、
水熱処理により得られた生成物全重量に対するベーマイ
トの重量の百分率である。この複合率は、純粋な水酸化
アルミニウムとベーマイトの全脱水量の理論値が各々3
4.6%と15%であることに基づき、下記数式のよう
に算出した。
【0020】
【数1】
【0021】上記のZに脱水量の実測値を導入すること
により算出し、得られたXを1から減じ、これを百分率
にしたものがベーマイトの複合率(%)である。
【0022】結果は下記表に示した通りである。この表
から明らかなように、脱水温度はいずれの実施例も比較
例より高く、しかも全脱水量は水酸化アルミニウム単独
の場合とほとんど変わらなかった。また、実施例1と比
較例2から明らかなように、水熱処理により水酸化アル
ミニウムにベーマイトを複合させることにより脱水温度
を上昇させることができた。実施例1と実施例2から、
湿式水熱処理の方が乾式水熱処理より脱水温度をより上
昇させることができた。
【0023】また、水酸化アルミニウムとベーマイト
は、一般的に残存Na量が少ないと脱水温度が上昇する
と言われているため、実施例1及び比較例1について残
存Na量を検出した(測定法:ICP発光分光分析法
(HF分解))。それぞれの残存Na量は、0.21
%、0.21%で実施例1と比較例1に差異はないにも
拘わらず、実施例1の脱水温度が上昇していた。このこ
とより、実施例と比較例の脱水温度の相違は、残存Na
量に依存するものではないことが判明した。
【0024】
【表1】
【0025】実施例2と比較例1の難燃性フィラーをエ
ポキシ樹脂に添加し、いずれも混合温度80℃で2時間
処理した後、成形温度150℃で8時間硬化を行い、次
いで255℃で5秒の熱処理を5サイクル繰り返し発泡
の状況を観察した。その結果、実施例2では脱水に起因
する発泡が発生しなかったが、比較例1については発泡
が発生した。
【0026】脱水温度が5℃違えば合成樹脂の発泡の有
無に大きな影響があることを考慮すれば、上記の結果か
ら本発明の難燃性フィラーは、脱水温度を上昇させなが
ら、しかも脱水量を十分に確保できる優れた難燃性フィ
ラーであることが判明した。
【0027】
【発明の効果】本発明の難燃性フィラーは、従来の水酸
化アルミニウムからなる難燃性フィラーに比し、脱水温
度を上昇させながら全脱水量をほとんど減少させないの
で、合成樹脂の成形や合成樹脂の用いる環境温度におい
て難燃性フィラーの脱水に起因する合成樹脂成形品内で
の発泡を回避させ、合成樹脂成形品の歩留まり低下させ
ることなく生産効率を高め、ひいてはコスト低減に資す
るばかりか、優れた難燃効果を発揮することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09C 3/06 C09C 3/06 (72)発明者 木方 宏和 岐阜県大垣市赤坂町2093番地 河合石灰工 業株式会社内 Fターム(参考) 4G076 AA10 AA19 AB06 BA12 DA05 FA08 4J002 AA011 AA021 BB031 BB121 BC031 BF051 BG061 CC041 CC161 CC181 CD001 CF211 CG001 DE146 FD136 4J037 AA24 EE16

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ベーマイトが複合した水酸化アルミニウム
    からなる難燃性フィラー。
  2. 【請求項2】熱可塑性樹脂に添加される請求項1記載の
    難燃性フィラー。
  3. 【請求項3】熱硬化性樹脂に添加される請求項1記載の
    難燃性フィラー。
  4. 【請求項4】熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である請求
    項3記載の難燃性フィラー。
  5. 【請求項5】ベーマイトの複合率が、5〜70重量%で
    ある請求項1〜請求項4のいずれか記載の難燃性フィラ
    ー。
  6. 【請求項6】水酸化アルミニウムを原料として水熱処理
    により製造される請求項1〜請求項5のいずれか記載の
    難燃性フィラー。
  7. 【請求項7】水酸化アルミニウムを水熱処理してベーマ
    イトが複合した水酸化アルミニウムを製造する難燃性フ
    ィラーの製造方法。
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