JP2004292723A - ポリプロピレン樹脂組成物 - Google Patents

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隆明 平手
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Abstract

【課題】曲げ弾性率、耐衝撃性などの物性バランスが良好で、成形加工性およびウエルド外観に優れたポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体55〜70重量%(B)エラストマー性重合体15〜25重量%(C)無機充填材10〜20重量%を含む樹脂組成物であって、前記(A)はプロピレン単独重合体部とプロピレン・エチレンランダム共重合体部とからなりMFRが70〜120g/10分であり、プロピレン・エチレンランダム共重合体部は(1)(A)中の含有量が7〜13重量%(2)エチレン含有量が45〜55モル%(3)極限粘度が3〜5dl/gであり、また前記(B)はMFRが1〜10g/10分でエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合ゴムであるポリプロピレン樹脂組成物。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロピレン・エチレンブロック共重合体、特定のエラストマー性重合体および無機充填材を含む樹脂組成物に関し、曲げ弾性率、耐衝撃性などの物性バランスが良好で、成形加工性およびウエルド外観に優れたポリプロピレン樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンは、日用雑貨、台所用品、包装用フィルム、自動車部品、機械部品、電気部品など種々の分野でその成形材料として利用されており、商品に要求される性能に応じて種々の添加剤が配合された組成物の形で使用されている。例えば、自動車部品などの機械的強度が要求される分野においては、エラストマー、タルクなどを配合したポリプロピレン組成物が利用されている。
【0003】
近年、エラストマーやタルク等を配合して物性を改良した従来のポリプロピレン組成物に対して、高剛性、高耐衝撃性、高流動性の樹脂が求められている。
ところがバンパー等に使用されている従来の自動車外装用樹脂組成物は、衝撃強度を重視するあまり、軟質で流動性が低く、成形品の大型化、薄肉化の要請に対してこれまでの樹脂組成では対応することが困難になってきている。例えば(1)引用文献1(特開平7−18151号)では、剛性及び耐衝撃性に優れるポロプロピレン樹脂組成物が提案されているが、製品の外観等に関しては特に言及されていない。
【0004】
【引用文献1】
特開平7−18151号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、成形時の流動性に優れ、ウエルド外観が良好で、しかも曲げ弾性率、衝撃強度などの物性のバランスに優れたポリプロピレン樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、(A)結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体55〜70重量%、(B)エラストマー性重合体15〜25重量%、および(C)無機充填材10〜20重量%とを含む樹脂組成物であって、ここで、前記の結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン単独重合体部とプロピレン・エチレンランダム共重合体部とからなり、メルトフローレート(JIS K7210、230℃、荷重2160g)が70〜120g/10分であり、プロピレン・エチレンランダム共重合体部は(1)結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)中の含有量が7〜13重量%、(2)エチレン含有量が45〜55モル%、(3)極限粘度が3〜5dl/gであり、また、前記のエラストマー性重合体(B)は、メルトフローレート(JIS K7210、190℃、荷重2160g)が1〜10g/10分でエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合ゴムであることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物に関する。
【0007】
ここで、前記のエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合ゴム(B)は、シングルサイト触媒を用いてエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとを共重合して製造したゴム状物であることが好ましい。(B)の好ましい例として、エチレン・1−ブテン共重合ゴムを挙げることができる。
【0008】
無機充填材(C)としては、タルクが好ましく、とりわけレーザー解析法で測定したその平均粒径が2〜6μmのタルクが好ましい。
【0009】
前記のポリプロピレン樹脂組成物としては、そのメルトフローレート(ASTMD−1238、230℃、荷重2160g)が35から100g/10分、曲げ弾性率(ASTM D−790)が1900から3000MPa、シャルピー衝撃強度が23℃において30から70kJ/m2、−30℃において3.5から7.0kJ/m2であるものが好適である。
【0010】
【発明の実施の形態】
(A)
本発明においては、(A)成分として結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体を使用する。
【0011】
前記結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン単独重合体部と、プロピレン・エチレンランダム共重合体部とから構成されている。前記結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)では、プロピレン・エチレンランダム共重合体部の含有量が7〜13重量%のものが使用される。
【0012】
結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)中のプロピレン・エチレンランダム共重合体部の含有量は、ブロック共重合体サンプルについてn−デカン溶剤を用いて室温で分別し、その可溶部の存在量から測定することができる。その測定方法の一例として、まずブロック共重合体サンプル5gを沸騰n−デカンに完全に溶解させ、その後20℃に降温して一昼夜放置してから濾別によって不溶部を分離する。次いで、濾液にメタノール1500mlを加えて撹拌すると、可溶部が析出物として分離し、それを濾別、乾燥することによってn−デカン可溶部が得られるので、可溶部を秤量することによって求めることができる。
【0013】
前記結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)では、プロピレン・エチレンランダム共重合体部のエチレン含有量が45〜55モル%、さらに好ましくは47〜51モル%のものが使用される。エチレン含有量が前記範囲より小さいブロック共重合体を使用すると、得られる樹脂組成物の低温耐衝撃性が不充分となり好ましくない。また、エチレン含有量が前記範囲より大きいブロック共重合体を使用すると、得られる樹脂組成物の常温耐衝撃性が不充分となり好ましくない。
【0014】
プロピレン・エチレンランダム共重合体部のエチレン含有量は、プロピレン・エチレンランダム共重合体部のサンプルのプレスフィルムを赤外線吸収スペクトル分析にかけることによって求めることができる。すなわち、メチル基に基づく1155cm−1の吸光度とメチレン基に基づく吸光度を測定し、Gardnerの検量線を用いて測定する(I. J.Gardner et al, Rubber Chem. And Tech., 44, 1015, 1971)。
【0015】
前記結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)では、プロピレン・エチレンランダム共重合体部の極限粘度が3〜5dl/g、さらに好ましくは3.7〜4.7dl/gのものが使用される。極限粘度が前記範囲より小さいブロック共重合体を使用すると、得られる樹脂組成物の耐衝撃性が不充分となり好ましくない。また、極限粘度が前記範囲より大きいブロック共重合体を使用すると、ウエルドが目立ちやすくなり好ましくない。
【0016】
さらに結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)としては、JIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)(230℃、荷重2160g)が、70〜120g/10分、さらに好ましくは70〜90g/10分のものが使用される。MFRが前記範囲より小さいブロック共重合体を使用すると、得られる樹脂組成物の流動性が不充分となり好ましくない。
【0017】
結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は種々の方法により製造することができるが、例えばチーグラー・ナッタ系触媒あるいはメタロセン系触媒などの公知のオレフィン立体規則性触媒を用いて製造することができる。チーグラー・ナッタ系触媒を使用するブロック共重合体(A)の製造例として、例えば固体状チタン触媒成分、有機金属化合物触媒成分、さらに必要に応じて電子供与体とから形成された触媒の存在下に、プロピレンを重合させた後、引続きプロピレンとエチレンとを共重合させる方法を挙げることができる。
【0018】
(B)
本発明で用いられる(B)エラストマー性重合体は、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合ゴムを使用する。
【0019】
前記エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合ゴム(B)は、エチレンと炭素数4以上、好ましくは炭素数4〜8のα−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等とを共重合したゴム状物である。
【0020】
エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合ゴム(B)としては、MFR(JIS K7210、190℃、荷重2160g)が1〜10g/10分のものが使用される。MFRが上記範囲より大きい共重合ゴムを使用した場合には、得られる樹脂組成物から製造した成形品の剛性や低温耐衝撃性を低下させるので好ましくない。該共重合ゴム(B)としてはまた、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとのモル比(エチレン/炭素数4以上のαーオレフィン)が、90/10〜75/25のものを使用するのが望ましい。
【0021】
このようなエチレン・α−オレフィン共重合ゴム(B)は、オレフィン立体規則性重合触媒を用いてエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとを共重合させて製造することができる。特に、シングルサイト触媒を用いて製造したエチレン・α−オレフィン共重合体は、分子量分布および組成分布が狭いことから、低温での衝撃強度向上効果に優れている。そのようなシングルサイト触媒の例として、シクロペンタジエン骨格を有する化合物がジルコニウム金属等の遷移金属に配位したメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物等とを含むメタロセン系触媒を挙げることができる。
【0022】
(C)
本発明で用いる(C)無機充填剤としては、タルク、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、けい酸塩類、炭酸塩類、ガラス繊維などがあげられる。これらの中で特にタルクが好ましい。タルクとしてはまた、レーザー解析法で測定した平均粒径が1〜10μm、好ましくは2〜6μmのものが望ましい。
【0023】

本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、(A)結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体55〜70重量%、(B)エラストマー性重合体18〜25重量%、および(C)無機充填剤15〜25重量%の割合で構成される。ここで、(A)、(B)、および(C)の3成分の合計量が100重量%になる。
【0024】
本発明の組成物には前記(A)〜(C)成分の他に、必要に応じて、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、軟化剤、分散剤、顔料のような着色剤、滑剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0025】
本発明の組成物は、前記(A)〜(C)成分、および必要により配合する添加剤を、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置により混合または溶融混練することにより得ることができる。この際、(A)、(B)、および(C)の各成分、および必要により配合する添加剤などの混合順序は任意であり、同時に混合してもよいし、一部成分を混合した後他の成分を混合するというような多段階の混合方法を採用することもできる。
【0026】
このようにして得られる本発明の樹脂組成物は、成形時の流動性に優れ、しかも曲げ弾性率、耐衝撃性、硬度および脆化温度などの物性のバランスに優れている。例えば、(1)MFR(JIS K7210、230℃、荷重2160g)が、好ましくは35から100g/10分、(2)曲げ弾性率(JIS K7171)が、好ましくは1900から3000MPa、および(3)シャルピー衝撃強度(JIS K7111)が23℃において30から70kJ/m2、−30℃において3.5から7.0kJ/m2を示す樹脂組成物を容易に得ることができる。
【0027】
このような樹脂物性を有する本発明の樹脂組成物は、射出成形用の樹脂原料として好適に利用することができ、この場合射出成形時に非常に良好な流動性を示し射出成形品を容易に成形することができる。
【0028】
本発明の組成物は、自動車部品、特に自動車外装用部品、例えばバンパー、オーバーフェンダー、サイドモール、ロッカーモールなどの部品成形に使用することができる。
【0029】
【実施例】
次に実施例を通して本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0030】
まず、実施例および比較例において、樹脂組成物の調製に用いた各種の成分は、次の性状を有していた。
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体(PEBC−1)
・MFR(230℃、2160g):70g/10分
・プロピレン・エチレンランダム共重合体部:8重量%
極限粘度[η]:3.8dl/g
エチレン含有量:46モル%
(2)プロピレン・エチレンブロック共重合体(PEBC−2)
・MFR(230℃、荷重2160g):87g/10分
・プロピレン・エチレンランダム共重合体部:9重量%
極限粘度[η]:4.7dl/g
エチレン含有量:51モル%
(3)プロピレン・エチレンブロック共重合体(PEBC−3)
・MFR(230℃、荷重2160g):69g/10分
・プロピレン・エチレンランダム共重合体部:9重量%
極限粘度[η]:2.4dl/g
エチレン含有量:43モル%
(4)プロピレン・エチレンブロック共重合体(PEBC−4)
・MFR(230℃、荷重2160g):95g/10分
・プロピレン・エチレンランダム共重合体部:12重量%
極限粘度[η]:4.8dl/g
エチレン含有量:36モル%
(5)プロピレン・エチレンブロック共重合体(PEBC−5)
・MFR(230℃、荷重2160g):94g/10分
・プロピレン・エチレンランダム共重合体部:10重量%
極限粘度[η]:7.0dl/g
エチレン含有量:38モル%
(6)エチレン・1−ブテンランダム共重合ゴム(EBR)
・1−ブテン含有量:18モル%
・MFR(190℃、荷重2160g):3.5g/10分、
(7)微粉末タルク
・平均粒径:4μm
【0031】
実施例および比較例で得られた樹脂組成物および成形品の物性測定は、次の試験方法によって行った。
(1)メルトフローレート(MFR):JIS K7210
測定条件;230℃、荷重2160g
(2)曲げ弾性率:JIS K7171
(3)シャルピー衝撃強度:JIS K7111
(4)ウエルド外観:長さ350mm、幅100mm、厚み3mmの平板を成形する際、幅方向の側面の中央にゲートを設けた金型を用い、その金型にはゲートより90mmの位置に長さ20mm、幅20mm、厚み3mmの樹脂の流動を妨げる堰を設けた。ウエルド外観は、前記金型を用いて射出成形した時に、堰以降に発生するウェルドマークを目視によって判定した。
【0032】
(実施例1〜2)
表1に記した各成分を所定量、ドライブレンドした後、二軸押出機によってペレタイズして樹脂組成物を製造した。この樹脂組成物を用いて、各種の物性測定を行なった。なお測定に用いた試験片は、シリンダー設定温度193℃、金型温度40℃の条件で射出成形にてJIS K7139 A型多目的試験片を成形した。
【0033】
(比較例1)
実施例1において、PEBC−1をPEBC−3へと変更した以外は実施例1と同様に行なった。樹脂組成物の物性評価を行ない、その結果を表1に示した。得られた樹脂組成物は実施例1〜2と比較して剛性および耐衝撃性が共に劣っていた。
【0034】
(比較例2)
実施例1において、PEBC−1をPEBC−4へと変更した以外は実施例1と同様に行なった。樹脂組成物の物性評価を行ない、その結果を表1に示した。得られた樹脂組成物は実施例1〜2と比較して剛性が劣っていた。
【0035】
(比較例3)
実施例1において、PEBC−1をPEBC−5へと変更した以外は実施例1と同様に行なった。樹脂組成物の物性評価を行ない、その結果を表1に示した。得られた樹脂組成物は、ウエルド外観が劣り、大型薄肉成形用樹脂として使用するには満足すべきものではなかった。
【0036】
【表1】
Figure 2004292723
【0037】
【発明の効果】本発明の自動車外装用樹脂組成物は、特定の結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体、特定のエラストマー性重合体および無機充填剤を特定量含有しているので、成形時の流動性に優れ、曲げ弾性率、衝撃強度および硬度などのバランスに優れている。
【0038】
従って、本発明に係わる樹脂組成物は、自動車外装部品を成形した時に十分な機械的強度特性を備えていると共に、成形品の外観が良好であることから、そのままで、すなわち無塗装で使用することができる。

Claims (4)

  1. (A)結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体55〜70重量%、
    (B)エラストマー性重合体15〜25重量%、
    (C)無機充填材10〜20重量%
    を含む樹脂組成物であって、ここで、前記の結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン単独重合体部とプロピレン・エチレンランダム共重合体部とからなり、メルトフローレート(JIS K7210、230℃、荷重2160g)が70〜120g/10分であり、プロピレン・エチレンランダム共重合体部は(1)結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)中の含有量が7〜13重量%、(2)エチレン含有量が45〜55モル%、(3)極限粘度が3〜5dl/gであり、また、前記のエラストマー性重合体(B)は、メルトフローレート(JIS K7210、190℃、荷重2160g)が1〜10g/10分でエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合ゴムであるポリプロピレン樹脂組成物。
  2. 前記のエラストマー性重合体(B)が、エチレン・1−ブテン共重合ゴムであることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
  3. 前記の無機充填材(C)が、タルクであることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
  4. 自動車外装用に使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
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