JP2004291651A - 基準補正値と相対補正値とを用いた双方向印刷時の記録位置ズレの調整 - Google Patents

基準補正値と相対補正値とを用いた双方向印刷時の記録位置ズレの調整 Download PDF

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Abstract


【課題】 双方向印刷を行う際に、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを緩和して、画質を向上させる
【解決手段】 特定の基準ドットに関して、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための基準補正値を設定し、少なくとも前記基準補正値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを減少させるための調整値を決定する。そして、この調整値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置を調整する。基準補正値を補正するために予め準備された相対補正値で基準補正値を補正する第1の調整モードに従って調整値を決定する。
【選択図】 図18

Description

この発明は、主走査を往復で双方向に行いつつ印刷媒体上に画像を印刷する技術に関し、特に、往路と復路の記録位置ズレを補正する技術に関する。
近年、コンピュータの出力装置として、数色のインクをヘッドから吐出するタイプのカラープリンタが広く普及している。このようなカラープリンタとして、近年では、互いに異なるサイズの複数種類のドットで1画素を記録可能な多値プリンタも提案されている。多値プリンタでは、比較的少量のインク滴によって比較的小さなドットが1画素の領域内に形成され、比較的多量のインク滴によって比較的大きなドットが1画素の領域内に形成される。このような多値プリンタでも、従来の他のプリンタと同様に、印刷速度の向上のためにいわゆる「双方向印刷」を行うことが可能である。
双方向印刷では、主走査方向の駆動機構のバックラッシュや、印刷媒体を下で支えているプラテンの反り等に起因して、往路と復路における主走査方向の記録位置がずれてしまうという問題が生じ易い。このような位置ズレを解決する技術としては、例えば本出願人により開示された特開平5−69625号公報に記載されたものが知られている。この従来技術では、主走査方向における位置ズレ量(印刷ズレ)を予め登録しておき、この位置ズレ量に基づいて往路と復路における記録位置を補正している。
しかし、従来は、多値プリンタで双方向印刷を行った場合における往路と復路の位置ズレに関してはあまり考慮されていなかった。また、複数のインクの中の特定の1つのインクに関して位置ズレを補正しても、他のインクの位置ズレが補正されないことがあり、この場合には、カラー画像の画質が位置ズレの補正によってあまり向上しないという問題があった。このような問題は、特に、位置ズレによる画質への影響が大きな中間調領域において重大であった。
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、双方向印刷を行う際に、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを緩和して、画質を向上させることを目的とする。
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明では、特定の基準ドットに関して、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための基準補正値を設定し、少なくとも前記基準補正値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを減少させるための調整値を決定する。そして、この調整値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置を調整する。基準補正値を補正するために予め準備された相対補正値で基準補正値を補正する第1の調整モードに従って調整値を決定する。
こうすれば、基準補正値や相対補正値を用いて位置ズレ補正の調整値を決定することができるので、種々の印刷条件に適した態様で、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを緩和して、画質を向上させることが可能である。
なお、印刷ヘッドが複数のノズル列を有するときに、基準補正値を、複数のノズル列の中の特定の基準ノズル列に関して往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための補正値とし、また、相対補正値を、複数のノズル列の中の基準ノズル列以外の他のノズル列に関して基準ノズル列に対する相対的な記録位置のズレを補正するための補正値としてもよい。こうすれば、基準ノズル列以外の他のノズル列に関して記録位置のズレを軽減することができる。
また、基準ノズル列は、ブラックインクを吐出するためのブラックノズル列であり、基準ノズル列以外の他のノズル列は、カラーインクを吐出するためのカラーノズル列を含むことが好ましい。
なお、相対補正値は、基準ノズル列以外の他のノズル列に対して共通に適用されるようにしてもよい。
あるいは、相対補正値として、基準ノズル列以外の他のノズル列に対してノズル列毎に独立な値を適用するようにしてもよい。こうすれば、各ノズル列毎により効果的に記録位置のズレを軽減することが可能である。
また、相対補正値としては、同一のインクを吐出するノズル列のグループ毎に対して独立な値を適用するようにしてもよい。記録位置の相対的なズレ量はインクの物性値に依存するので、インク毎に相対補正値の独立な値を適用することによって、記録位置のズレをより効果的に軽減することができる。
印刷ヘッドが、少なくとも大きさが異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを形成可能なときに、基準ドットをN種類のドットの中から選択されたドットとし、また、第1の調整モードにおいては、調整値がN種類のドットに共通に適用されるものとしてもよい。こうすれば、N種類のドットに関する往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを緩和して、画質を向上させることができる。
なお、基準ドットは、N種類のドットの中の最も大きなドットとすることが好ましい。例えば、位置ズレ調整用のテストパターンを観察して基準補正値を設定するときに、最も大きなドットを用いてテストパターンを記録すれば、テストパターンにおける位置ズレを認識し易く、従って、基準補正値の設定が容易である。
また、相対補正値は、N種類のドットの中の基準ドットよりも小さなドットを含む少なくとも1つの対象ドットに関する位置ズレ量と、基準ドットに関する位置ズレ量の差分を実質的に表す値としてもよい。こうすれば、画質に影響の大きな対象ドットに関して位置ズレ量を軽減することができる。
前記対象ドットは、N種類のドットの中の最も小さなドットとしてもよい。通常は、画像の濃度が比較的低い画像領域において、画質の劣化が目立ちやすい傾向にある。また、画像の濃度が比較的低いときには、最小サイズのドットが多く用いられる。そこで、位置ズレ量を減少させる対象ドットとして最小ドットを選択すれば、低濃度領域の画質を向上させることができる。
あるいは、対象ドットが大きさの異なる複数のドットを含むときには、対象ドットに関する位置ズレ量として複数のドットに関する位置ズレ量の平均値を使用することができる。こうすれば、画質に比較的大きな影響を与える複数のドットに関して記録位置のズレを減少させることができ、この結果、画質を向上させることが可能である。
なお、基準ドットはブラックインクで形成されたドットであり、対象ドットは有彩色インクで形成されたドットであるとしてもよい。例えば、ブラックインクで形成された基準ドットで基準補正値設定用のテストパターンを作成するようにすれば、テストパターンにおける位置ズレを認識し易いので、基準補正値の設定が容易である。また、カラー画像では、有彩色インクのドットが画質に大きな影響を与えることがあるので、有彩色インクのドットに関して記録位置のズレを減少させることによってカラー画像の画質を向上させることができる。
また、位置ズレの調整値を、基準補正値を調整値としてそのまま使用する第2の調整モードに従って決定してもよい。この調整値は、少なくとも基準ドットの位置ズレの調整に使用される。こうすれば、基準ドットの位置ズレが特に目立つような場合に、その位置ズレを軽減することができる。
また、カラー印刷を行うときには第1の調整モードに従って記録位置ズレの補正を実行し、白黒印刷を行うときには第2の調整モードに従って記録位置ズレの補正を実行するようにしてもよい。こうすれば、カラー印刷時には各ノズル列の記録位置のズレが全体として軽減され、一方、白黒印刷時には基準ノズル列(このときにはブラックノズル列)の記録位置のズレのみが軽減される。従って、カラー印刷と白黒印刷のそれぞれの場合に、効果的に記録位置のズレを軽減することができる。
なお、基準補正値は、基準ノズル列を用いて印刷媒体上に印刷された位置ズレ検査用パターンの中から選択された好ましい補正状態を示す補正情報に従って決定されるようにしてもよい。こうすれば、基準補正値を容易に決定することができる。
印刷装置が複数の主走査速度で主走査を実行可能である場合に、相対補正値としては、複数の主走査速度のそれぞれに対して独立な値を適用することが好ましい。記録位置の相対的なズレ量は主走査速度に依存するので、主走査速度毎に相対補正値の独立な値を適用することによって、記録位置のズレをより効果的に低減することができる。
また、印刷装置が、インク吐出速度が互いに異なる複数のドット吐出モードでインクを吐出することが可能である場合に、相対補正値として、複数のドット吐出モードのそれぞれに対して独立な値を適用することが好ましい。記録位置の相対的なズレ量はインク吐出速度にも依存するので、インク吐出速度毎に相対補正値の独立な値を適用することによって、記録位置のズレをより効果的に軽減することができる。
なお、相対補正値を格納するためのメモリは、印刷装置内に設けられた不揮発性メモリであることが好ましい。
また、相対補正値を格納するためのメモリは、印刷ヘッドと共に印刷装置に着脱され得るように、印刷ヘッドに固定されていることが好ましい。こうすれば、印刷ヘッドを交換する際にも、その印刷ヘッドに適した相対補正値を利用して記録位置のズレを補正することが可能である。
なお、本発明は、印刷方法、印刷装置、その印刷方法または印刷装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の種々の態様で実現することができる。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.装置の構成:
B.ノズル列間の記録位置ズレの発生:
C.第1実施例(ノズル列間の記録位置ズレ補正1):
D.第2実施例(ノズル列間の記録位置ズレ補正2):
E.第3実施例(サイズの異なるドット間の記録位置ズレ補正):
F.変形例
A.装置の構成:
図1は、本発明の第1実施例としてのインクジェットプリンタ20を備えた印刷システムの概略構成図である。このプリンタ20は、紙送りモータ22によって印刷用紙Pを副走査方向に搬送する副走査送り機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ30をプラテン26の軸方向(主走査方向)に往復動させる主走査送り機構と、キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット60(「印刷ヘッド集合体」とも呼ぶ)を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御するヘッド駆動機構と、これらの紙送りモータ22,キャリッジモータ24,印刷ヘッドユニット60および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とを備えている。制御回路40は、コネクタ56を介してコンピュータ88に接続されている。
印刷用紙Pを搬送する副走査送り機構は、紙送りモータ22の回転をプラテン26と用紙搬送ローラ(図示せず)とに伝達するギヤトレインを備える(図示省略)。また、キャリッジ30を往復動させる主走査送り機構は、プラテン26の軸と並行に架設されキャリッジ30を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ30の原点位置を検出する位置センサ39とを備えている。
図2は、制御回路40を中心としたプリンタ20の構成を示すブロック図である。制御回路40は、CPU41と、プログラマブルROM(PROM)43と、RAM44と、文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタジェネレータ(CG)45とを備えた算術論理演算回路として構成されている。この制御回路40は、さらに、外部のモータ等とのインタフェースを専用に行なうI/F専用回路50と、このI/F専用回路50に接続され印刷ヘッドユニット60を駆動してインクを吐出させるヘッド駆動回路52と、紙送りモータ22およびキャリッジモータ24を駆動するモータ駆動回路54と、を備えている。I/F専用回路50は、パラレルインタフェース回路を内蔵しており、コネクタ56を介してコンピュータ88から供給される印刷信号PSを受け取ることができる。
図3は、印刷ヘッドユニット60の具体的な構成と、インクの吐出原理を示す説明図である。図3に示すように、印刷ヘッドユニット60は、略L字形状をしており、図示しない黒インク用カートリッジとカラーインク用カートリッジとを搭載可能であって、両カートリッジを装着可能に仕切る仕切板31を備えている。
印刷ヘッドユニット60の上端面には、印刷ヘッドユニット60の特性に応じて予め割り当てられたヘッド識別情報(「ヘッドID」とも呼ぶ)を示すヘッドIDシール100が貼りつけられている。このヘッドIDシール100に表示されたヘッドIDの内容については後述する。
なお、印刷ヘッド28とインクカートリッジの搭載部とを含む図3の構成全体を「印刷ヘッドユニット60」と呼ぶのは、この印刷ヘッドユニット60が1つの部品としてプリンタ20に着脱されるからである。すなわち、印刷ヘッド28を交換しようとする際には、印刷ヘッドユニット60を交換することになる。
印刷ヘッドユニット60の底部には、印刷ヘッド28にインク容器からのインクを導く導入管71〜76が立設されている。印刷ヘッドユニット60に黒インク用のカートリッジおよびカラーインク用カートリッジを上方から装着すると、各カートリッジに設けられた接続孔に導入管71〜76が挿入される。
図4は、インクが吐出される機構を説明する説明図である。インク用カートリッジが印刷ヘッドユニット60に装着されると、インク用カートリッジ内のインクが導入管71〜76を介して吸い出され、図4に示したように、印刷ヘッドユニット60下部に設けられた印刷ヘッド28に導かれる。
印刷ヘッド28は、各色毎に一列に設けられた複数のノズルnと、各ノズルnに設けられたピエゾ素子PEを動作させるアクチュエータ回路90と、を有している。アクチュエータ回路90は、ヘッド駆動回路52(図2)の一部であり、ヘッド駆動回路52内の図示しない駆動信号生成回路から与えられた駆動信号をオン/オフ制御する。すなわち、アクチュエータ回路90は、コンピュータ88から供給された印刷信号PSに従って、各ノズルに関してオン(インクを吐出する)またはオフ(インクを吐出しない)を示すデータをラッチし、オンのノズルについてのみ、駆動信号をピエゾ素子PEに印加する。
図5は、ピエゾ素子PEによるノズルnの駆動原理を示す説明図である。ピエゾ素子PEは、ノズルnまでインクを導くインク通路80に接する位置に設置されている。本実施例では、ピエゾ素子PEの両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加することにより、図5(B)に示すように、ピエゾ素子PEが急速に伸張し、インク通路80の一側壁を変形させる。この結果、インク通路80の体積は、ピエゾ素子PEの伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、粒子Ipとなって、ノズルnの先端から高速に吐出される。このインク粒子Ipがプラテン26に装着された用紙Pに染み込むことにより、印刷が行なわれることになる。
図6は、印刷ヘッド28に設けられた複数列のノズルと複数のアクチュエータチップとの対応関係を示す説明図である。このプリンタ20は、ブラック(K)、濃シアン(C)、淡シアン(LC)、濃マゼンタ(M)、淡マゼンタ(LC)、イエロー(Y)の6色のインクを用いて印刷を行う印刷装置であり、各インク用のノズル列をそれぞれ備えている。なお、濃シアンと淡シアンとは、ほぼ同じ色相を有し、濃度が異なるシアンインクである。濃マゼンタインクと淡マゼンタインクも同様である。
アクチュエータ回路90には、ブラックノズル列Kと濃シアンノズル列Cを駆動する第1のアクチュエータチップ91と、淡シアンノズル列LCと濃マゼンタノズル列Mを駆動する第2のアクチュエータチップ92と、淡マゼンタノズル列LMとイエローノズル列Yを駆動する第3のアクチュエータチップ93とが設けられている。
図7は、アクチュエータ回路90の分解斜視図である。3つのアクチュエータチップ91〜93は、ノズルプレート110とリザーバプレート112の積層体の上に接着剤で接着されている。また、アクチュエータチップ91〜93の上には、接続端子プレート120が固定される。接続端子プレート120の一端には、外部回路(具体的には図2のI/F専用回路50)との電気的接続のための外部接続端子124が形成されている。また、接続端子プレート120の下面には、アクチュエータチップ91〜93との電気的接続のための内部接続端子122が設けられている。さらに、接続端子プレート120の上には、ドライバIC126が設けられている。ドライバIC126内には、コンピュータ88から与えられた印刷信号をラッチする回路や、その印刷信号に応じて駆動信号をオン/オフするアナログスイッチなどが設けられている。なお、ドライバIC126と接続端子122,124との間の配線は図示が省略されている。
図8は、アクチュエータ回路90の部分断面図である。ここでは、第1のアクチュエータチップ91と、その上部の接続端子プレート120の断面のみを示しているが、他のアクチュエータチップ92,93も第1のアクチュエータチップ91と同じ構造を有している。
ノズルプレート110には、各インク用のノズル口が形成されている。リザーバプレート112は、インクの貯蔵部(リザーバ)を形成するための板状体である。アクチュエータチップ91は、インク通路80(図5)を形成するセラミック焼結体130と、その上方に壁面を介して配置されたピエゾ素子PEと、端子電極132とを有している。接続端子プレート120がアクチュエータチップ91の上に固定されると、接続端子プレート120の下面に設けられた接続端子122と、アクチュエータチップ91の上面に設けられている端子電極132とが電気的に接続される。なお、端子電極132とピエゾ素子PEとの間の配線は図示が省略されている。
B.ノズル列間の記録位置ズレの発生:
後述する第1、第2実施例では、双方向印刷時にノズル列間に発生する記録位置ズレを調整している。そこで、これらの実施例を説明する前に、以下ではまず、ノズル列間の記録位置のズレの発生について説明する。
図9は、異なるノズル列に関する双方向印刷時の位置ズレを示す説明図である。ノズルnは、印刷用紙Pの上方において双方向に水平に移動しており、往路と復路においてそれぞれインクを吐出することによって印刷用紙P上にドットを形成する。ここでは、ブラックインクKが吐出される場合と、シアンインクCが吐出される場合とを重ねて図示している。ブラックインクKは、鉛直下方に向けて吐出速度VK で吐出されるものと仮定し、一方、シアンインクCはブラックインクよりも低い吐出速度VC で吐出されるものと仮定している。各インクの合成速度ベクトルCVK ,CVC は、下方への吐出速度ベクトルと、ノズルnの主走査速度ベクトルVsとを合成したものとなる。ブラックインクKとシアンインクCでは、下方への吐出速度VK ,VC が異なるので、その合成速度CVK ,CVC の大きさや方向が互いに異なる。
この例では、ブラックドットに関しては、双方向印刷の位置ズレがゼロになるように補正されている。しかし、シアンインクCの合成速度ベクトルCVC はブラックインクKの合成速度ベクトルCVK とは異なるので、ブラックインクKと同じタイミングでシアンインクCを吐出すると、シアンドットの記録位置に関しては印刷用紙P上で大きなズレが生じてしまう。また、往路におけるブラックドットとシアンドットの相対的な位置関係(左右の関係)は、復路における位置関係とは逆転していることが解る。
図10は、図9に示されている記録位置のズレを平面的に示す説明図である。ここでは、ブラックインクKとシアンインクCとを用いて、副走査方向yに沿った縦罫線が往路と復路でそれぞれ記録された場合が示されている。ブラックインクを用いて往路で記録された縦罫線は、主走査方向xの位置が復路で記録された縦罫線と一致している。一方、シアンインクを用いて往路で記録された縦罫線はブラックの縦罫線よりも右側に記録され、復路で記録された縦罫線はブラックの縦罫線よりも左側に記録されている。
このように、ブラックノズル列に関してのみ往路と復路の記録位置のズレを補正したときには、他のノズル列に関しては記録位置のズレをうまく補正できない場合があった。
各ノズル列から吐出されるインク滴の吐出速度は、以下のような種々の要因に依存して変化する。
(1)アクチュエータチップの製造誤差。
(2)インクの物理的性質(例えば粘度)。
(3)インク滴の重量。
インク滴の吐出速度の主要な要因がアクチュエータチップの製造誤差である場合には、同じアクチュエータチップから吐出されるインク滴の吐出速度はほぼ同じである。従って、この場合には、異なるアクチュエータチップで駆動されるノズル列のグループ毎に、主走査方向における記録位置のズレを補正することが好ましい。
一方、インクの物理的性質やインク滴の重量もその吐出速度に大きな影響がある場合には、インク毎に、あるいは、ノズル列毎に、主走査方向におけるドットの記録位置のズレを補正することが好ましい。
C.第1実施例(ノズル列間の記録位置ズレ補正1):
図11は、本発明の第1実施例における処理の全体を示すフローチャートである。ステップS1では、製造ラインにおいてプリンタ20が組み立てられ、ステップS2では、作業者によって相対補正値がプリンタ20内に設定される。ステップS3ではプリンタ20が工場から出荷され、ステップS4では、プリンタ20を購入したユーザが、使用時の位置ズレを補正するための基準補正値を設定して、印刷を実行する。以下ではステップS2,S4の内容をそれぞれ詳細に説明する。
図12は、図10のステップS2の詳細手順を示すフローチャートである。ステップS11では、プリンタ20を用いて相対補正値決定用のテストパターン(相対位置ズレ検査用パターン)を印刷する。図13は、相対補正値決定用のテストパターンの一例を示す説明図である。このテストパターンは、印刷用紙Pの上に、副走査方向yに伸びる6本の縦罫線LK ,LC ,LLC,LM ,LLM,LY が6色のインクK,C,LC,M,LM,Yでそれぞれ形成されたものである。なお、これらの6本の縦罫線は、一定の速度でキャリッジ30を走査しながら、6組のノズル列から同時にインクを吐出させることによって記録されている。なお、1回の主走査でのインク吐出では、副走査方向yのノズルピッチだけ離れたドットを形成できるだけなので、図13に示すような縦罫線を記録するためには、複数回の主走査時において同じタイミングでインクを吐出する。
なお、テストパターンとしては、縦罫線では無く、間欠的にドットが記録されたような直線状のパターンを使用することも可能である。これは、後述する基準補正値決定用のテストパターンについても同様である。
図12のステップS12では、図13に示す6本の縦罫線の相互のズレ量を測定する。この測定は、例えば、テストパターンの画像をCCDカメラで読取り、縦罫線LK ,LC ,LLC,LM ,LLM,LY の主走査方向xの位置を画像処理によって測定することによって実現される。6本の縦罫線の位置は、6組のノズル列からインクを同時に吐出することによって形成されているので、仮に6組のノズル列によるインクの吐出速度が同一であれば、6本の縦罫線の間隔はノズル列の間隔に等しいはずである。
図13に示すx座標値xK ,xC ,xLC,xM ,xLM,xY は、ブラックインクの縦罫線LK のx座標値xK を基準としたときに、他の5本の縦罫線がノズル列の間隔の設計値通りに並んでいる場合のそれぞれの縦罫線の座標値を示している。そこで、これらのx座標値xK ,xC ,xLC,xM ,xLM,xY で示される位置を、以下では「設計位置」とも呼ぶ。ステップS12では、ブラックの縦罫線以外の5本の縦罫線について、設計位置と実際の縦罫線位置とのズレ量δC ,δLC,δM ,δLM,δY を測定する。このとき、設計位置よりも右側にずれている場合にはズレ量δをプラスの値とし、設計位置よりも左側にずれている場合にはズレ量δをマイナスの値とする。
ステップS13では、こうして測定されたズレ量から、適切なヘッドIDを作業者が決定し、プリンタ20内にそのヘッドIDを設定する。このヘッドIDは、測定されたズレ量を補正するための適切な相対補正値を示す情報である。適切な相対補正値Δとしては、例えば、以下の(1)式で与えられるように、基準となる縦罫線LK 以外の他のすべての縦罫線のズレ量の平均値δave の正負の符号を反転したものを用いることができる。
Δ=−δave =−Σδi /(N−1) …(1)
ここで、Σは基準となるブラックインクの縦罫線以外のすべての縦罫線のズレ量δiの和を取る演算を示しており、Nは縦罫線の総数(すなわちノズル列の数)を示している。
図14は、相対補正値ΔとヘッドIDとの関係を示す説明図である。この例では、相対補正値Δが−35.0μmのときにはヘッドIDが1に設定され、相対補正値Δが17.5μm増加するたびにヘッドIDの値が1つ増加する。ここで、17.5μmは、プリンタ20において調整可能な主走査方向のズレ量の最小値(最小調整可能値)である。この最小調整可能値としては、主走査方向に沿ったドットピッチに等しい値を使用することができる。例えば、主走査方向の解像度が1440dpiのときには、そのドットピッチは約17.5μm(=25.4mm/1440)であり、この値が最小調整可能値として使用される。なお、ドットピッチよりも小さな値を最小調整可能値とすることも可能である。
こうして決定されたヘッドIDは、プリンタ20内のPROM43(図2)の中に格納される。本実施例では、さらに、印刷ヘッドユニット60(図3)の上面に、ヘッドIDを示すヘッドIDシール100が貼り付けられる。あるいは、印刷ヘッドユニット60に設けられているドライバIC126(図7)内に不揮発性メモリ(例えばプログラマブルROM)を設けておき、その不揮発性メモリの中にヘッドIDを格納するようにしてもよい。印刷ヘッドユニット60にヘッドIDシール100を貼りつけたり、印刷ヘッドユニット60内の不揮発性メモリにヘッドIDを格納したりしておけば、印刷ヘッドユニット60を他のプリンタ20に使用する場合にも、その印刷ヘッドユニット60に適したヘッドIDを利用することができるという利点がある。
なお、ステップS2における相対補正値の決定は、印刷ヘッドユニット60をプリンタ20に組み込む前の工程において、専用の検査装置に印刷ヘッドユニット60を組み込んだ状態で実行することも可能である。この場合には、その後のプリンタ組み立て工程において、印刷ヘッドユニット60をプリンタ20に組み込む際に、ヘッドIDがプリンタ20内のPROM43に登録される。PROM43内への登録の方法としては、例えば、ヘッドIDシール100を専用の読み取り装置で読取る方法や、作業者がヘッドIDをキーボードから入力する方法を採用することができる。あるいは、印刷ヘッドユニット60内の不揮発性メモリに格納されたヘッドIDを、プリンタ20内のPROM43に転送するようにしてもよい。
なお、相対補正値Δは、以下の(2)式で与えられるように、淡シアンと淡マゼンタのズレ量の平均値としてもよい。
Δ=−(δLC+δLM)/2 …(2)
淡シアンと淡マゼンタは、カラー画像の中間調領域(特にシアンやマゼンタの画像濃度が約10%〜約30%の範囲)において最も多く用いられるインクであり、これらのインクのドットの記録位置の精度が画質に大きな影響を有している。従って、淡シアンと淡マゼンタのズレ量の平均値からヘッドIDを決定するようにすれば、これらの位置ズレ量を低減できるので、カラー画像の画質を向上させることが可能である。
なお、上記(2)式を用いる場合には、淡シアンインクと淡マゼンタインクについてのみ、ブラックインクからのズレ量δを測定すれば十分である。
図11のフローチャートに示したように、プリンタ20内にヘッドIDが設定された後にプリンタ20が出荷される。ユーザがプリンタ20を使用する際には、このヘッドIDを用いて双方向印刷時の記録位置のズレが以下のように調整される。
図15は、ユーザの使用時におけるズレ調整の手順を示すフローチャートである。ステップS21では、プリンタ20を用いて基準補正値決定用のテストパターン(基準位置ズレ検査用パターン)を印刷する。図16は、基準補正値決定用のテストパターンの一例を示す説明図である。このテストパターンは、ブラックインクを用いて往路と復路でそれぞれ印刷された複数の縦罫線で構成されている。往路では一定の間隔で縦罫線を記録しているが、復路では、縦罫線の主走査方向の位置を1ドットピッチ単位で順次ずらしている。この結果、印刷用紙P上には、往路の縦罫線と復路の縦罫線との相対位置が1ドットピッチずつずれていくような複数組の縦罫線対が印刷される。複数組の縦罫線対の下には、ズレ調整番号の数字が印刷される。ズレ調整番号は、好ましい補正状態を示す補正情報としての機能を有する。ここで、「好ましい補正状態」とは、往路または復路における記録位置(または記録タイミング)を適切な基準補正値で補正したときに、往路と復路でそれぞれ形成されたドットの主走査方向の位置が一致するような状態を言う。従って、好ましい補正状態は、適切な基準補正値によって実現される。なお、図16の例では、ズレ調整番号が4である縦罫線対が、好ましい補正状態を示している。
なお、基準補正値決定用のテストパターンは、相対補正値の決定の際に使用されていた基準ノズル列で形成される。従って、相対補正値の決定の際に、ブラックノズル列の代わりにマゼンタノズル列が基準ノズル列として使用された場合には、基準補正値決定用のテストパターンも、そのマゼンタノズル列で形成される。
ユーザは、このテストパターンを観察して、最もズレの少ない縦罫線対のズレ調整番号を、コンピュータ88(図2)のプリンタドライバのユーザインタフェイス画面(図示せず)に入力する。このズレ調整番号は、プリンタ20内のPROM43に格納される。
その後、ステップS23においてユーザによって印刷の実行が指示されると、ステップS24において、基準補正値と相対補正値とを用いたズレ補正を行いながら双方向印刷が実行される。図17は、第1実施例における双方向印刷時のズレ補正に関連する主要な構成を示すブロック図である。プリンタ20内のPROM43には、ヘッドID格納領域200と、調整番号格納領域202と、相対補正値テーブル204と、基準補正値テーブル206とが設けられている。ヘッドID格納領域200には、好ましい相対補正値を示すヘッドIDが格納されている。調整番号格納領域202には、好ましい基準補正値を示すズレ調整番号が格納されている。相対補正値テーブル204は、図14に示したヘッドIDと相対補正値Δとの関係を格納したテーブルである。基準補正値テーブル206は、ズレ調整番号と、基準補正値の関係を示すテーブルである。基準補正値テーブル206は、図16に示したテストパターンにおける復路の縦罫線の記録位置のズレ量(すなわち基準補正値)とズレ調整番号との関係を格納したテーブルである。
プリンタ20内のRAM44には、双方向印刷時の位置ズレを補正するための位置ズレ補正実行部(調整値決定部)210としての機能を有するコンピュータプログラムが格納されている。位置ズレ補正実行部210は、PROM43に格納されているヘッドIDに対応する相対補正値を相対補正値テーブル204から読み出すとともに、ズレ調整番号に対応する基準補正値を基準補正値テーブル206から読み出す。位置ズレ補正実行部210は、復路において位置センサ39(図1)からキャリッジ30の原点位置を示す信号を受け取ると、相対補正値と基準補正値との総合的な補正値に応じて、ヘッドの記録タイミングを指示するための信号(遅延量設定値ΔT)をヘッド駆動回路52に供給する。ヘッド駆動回路52内のは、3つのアクチュエータチップ91〜93に同一の駆動信号を供給しており、位置ズレ補正実行部210から与えられた記録タイミング(すなわち遅延量設定値ΔT)に応じて復路の記録位置を調整する。これによって、復路において、6組のノズル列の記録位置が共通する補正量で調整される。前述したように、相対補正値も基準補正値も、共に、主走査方向のドットピッチの整数倍に設定されているので、この記録位置(すなわち記録タイミング)も主走査方向のドットピッチの単位で調整される。なお、総合的な補正値は、基準補正値と相対補正値とを加算した値である。
図18は、基準補正値と相対補正値とを用いた位置ズレ補正の内容を示す説明図である。図18(A)は、位置ズレの調整を行っていない場合にブラックドットで形成された縦罫線が往路と復路でずれた位置に印刷されることを示している。図18(B)は、基準補正値を用いてブラックドットの位置ズレを調整した結果を示している。基準補正値による補正を行うと、ブラックドットに関しては、双方向印刷時に位置ズレが解消される。図18(C)は、図18(B)と同じ調整状態において、ブラックドットで形成された縦罫線の他に、シアンドットで形成された縦罫線も印刷した場合を示している。図18(C)は、図10と同じものであり、ブラックドットの位置ズレは無いが、シアンドットの位置ズレはかなり大きい。図18(D)は、基準補正値によるズレ調整に加えて、シアンドットに関する相対補正値Δ(=−δC )によるズレ調整も行った場合のブラックドットの罫線とシアンドットの罫線とを示している。図18(D)では、シアンドットの位置ズレは軽減されているが、ブラックドットの位置ズレはやや増加しており、この結果、ブラックドットとシアンドットの位置ズレがほぼ同程度に減少している。この理由は、復路における6組のノズル列の記録位置を、共通する補正量で補正しているからである。図18(D)の例は、ブラックドットとシアンドットとの2種類のドットが位置ズレ調整の対象ドットとして選択され、これらの2種類のドットに関する位置ズレ調整が行われた例である。
図19は、シアンドットのみを位置ズレ調整の対象としたときの位置ズレ補正の内容を示す説明図である。図19(A)〜図19(C)に示す基準補正値による調整は図18(A)〜図18(C)と同じであり、図19(D)は図18(D)と異なる。図19(D)では、相対補正値Δとして、相対補正値決定用テストパターン(図13)におけるシアンドットのズレ量δC の2倍の値(正確には、それにマイナス符号を付した値)が使用されている。こうすれば、ブラックドットの位置ズレは大きくなるが、シアンドットは往復の位置ズレをほぼ0にすることが可能である。
図18と図19の例から理解できるように、相対補正値決定用テストパターンにおける特定のドットのズレ量δそのものを相対補正値Δとして使用した場合には、その特定のドットと基準ドット(ブラックドット)との双方が位置ズレ調整の対象ドットに相当し、これらの対象ドットに関する位置ズレを減少させることができる。一方、相対補正値決定用テストパターンにおける特定のドットのズレ量δの2倍を相対補正値Δとして使用した場合には、その特定のドットのみが位置ズレ調整の対象ドットに相当し、その対象ドットに関する位置ズレを低減させることができる。具体的には、前述した(2)式で与えられる相対補正値Δ(=−(δLC+δLM)/2)を使用した場合にはは、ブラックドットと淡シアンドットと淡マゼンタドットの3種類のドットに関する位置ズレをほぼ同程度に低減できる。また、その2倍の値を相対補正値として使用した場合には、淡シアンドットと淡マゼンタドットの2種類のドットに関する位置ズレをほぼ同程度に低減できる。同様に、前述した(1)式で与えられる相対補正値Δ(=−δave )を使用した場合には、6種類のすべてのドットに関する位置ズレをほぼ同程度に低減できる。また、その2倍の値を相対補正値として使用した場合には、ブラックドット以外の5種類のドットに関する位置ズレをほぼ同程度に低減できる。
なお、図18(D),図19(D)から解るように、基準補正値と相対補正値とに基づいて位置ズレ調整を行うと、カラーインクのドットの位置ズレが過度に大きくなることが防止されるので、カラー画像の画質が向上する。
なお、白黒印刷では、カラーインクを用いないので、図18(D)や図19(D)のような相対補正値を用いた位置ズレ補正を行う必要が無い。従って、白黒印刷では、図18(B)のように基準補正値のみを用いた位置ズレ補正の方が好ましい。そこで、プリンタ20の制御回路40(具体的には図17の位置ズレ補正実行部210)は、コンピュータ88(図1)から白黒印刷であることが通知されたときには、基準補正値のみを用いて双方向印刷時の位置ズレを補正し、また、カラー印刷であることが通知されたときには基準補正値と相対補正値とを用いて双方向印刷時の位置ズレを補正するように構成しておくことが好ましい。
ところで、印刷ヘッドユニット60の経年劣化などの理由によって、印刷ヘッドユニット60を交換したい場合が生じる。印刷ヘッドユニット60を交換する場合には、交換後の印刷ヘッドユニット60のヘッドIDが、プリンタ20の制御回路40内のPROM43に書き込まれる。このヘッドIDの書き込みを実行する方法としては、次のようないくつかの方法がある。第1の方法は、印刷ヘッドユニット60に貼りつけられたヘッドIDシール100に表示されているヘッドIDを、ユーザがコンピュータ88から入力し、PROM43に書き込む方法である。第2の方法は、印刷ヘッドユニット60のドライバIC126(図7)内に設けられた不揮発性メモリから、制御回路40がヘッドIDを読み出してPROM43に書き込む方法である。このように、印刷ヘッドユニット60の交換後にそのヘッドIDをPROM43内に格納するようにすれば、交換後の印刷ヘッドユニット60に適したヘッドID(すなわち相対補正値)を用いて双方向印刷時の位置ズレを補正することが可能である。
以上のように、第1実施例では、ブラックノズル列を基準として他のノズル列に関する双方向印刷時の位置ズレを補正するための相対補正値を設定し、この相対補正値と、ブラックノズル列に関する基準補正値とに従ってカラー双方向印刷時の位置ズレを補正している。この結果、カラー印刷の画質を向上させることが可能である。特に、ユーザは、基準ノズル列に関する位置ズレの調整のみを行えばよく、すべてインクの位置ズレの調整を行わずにカラー双方向印刷時の画質を向上させることができるという利点がある。なお、白黒印刷の際に、基準補正値のみを用いて双方向印刷時の位置ズレを補正するようにすれば、白黒印刷も悪化させることが無いという利点がある。
図20は、印刷ヘッド28のノズル列の他の構成を示す説明図である。この印刷ヘッド28aには、ブラック(K)の3組のノズル列K1〜K3が設けられており、また、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のノズル列がそれぞれ1組設けられている。白黒印刷の際には、3組のブラックノズル列K1〜K3をすべて用いて高速な印刷が実行される。一方、カラー印刷の際には、第1のアクチュエータチップ91の2組のブラックノズル列K1,K2は使用されず、第2のアクチュエータチップ92の1組のブラックノズル列K3と、シアンノズル列Cと、マゼンタノズル列Mと、イエローノズル列Yと、が用いられる。
このような印刷ヘッドを用いてカラー印刷を行う時には、例えば、以下の(3a)、(3b)式で与えられるように、シアンとマゼンタのズレ量の平均値、または、その2倍の値が、カラー双方向印刷時の相対補正値Δとして使用される。
Δ=−(δC +δM )/2 …(3a)
Δ=−(δC +δM ) …(3b)
なお、シアンとマゼンタのズレ量δC ,δM は、相対補正値決定用テストパターン(図13)において、カラー印刷の際に使用されるブラックノズル列K3で形成される縦罫線を基準として測定された相対的なズレ量である。
このように、淡インクを用いない4色印刷の場合には、シアンとマゼンタのズレ量の平均値からヘッドIDを決定することによって、カラー画像の画質を向上させることが可能である。ここで、イエローを除外しているのは、イエロードットがあまり目立たず、イエロードットが双方向印刷時に多少ずれていても画質に大きな影響が無いためである。但し、シアンとマゼンタとイエローのズレ量の平均値からヘッドIDを決定するようにしてもよい。すなわち、カラー印刷に用いられる複数のノズル列の中で、基準ノズル列以外の他のすべてのノズル列に関するズレ量の平均値を用いて相対補正値を決定するようにしてもよい。
なお、基準とするブラックノズル列K3に対する他のブラックノズル列K1,K2の相対補正値ΔKを求めておくようにしてもよい。この相対補正値ΔKは、以下の(4)式に従って求めることができる。
ΔK=−(δK1 +δK2 )/2 …(4)
ここで、δK1 は第1のブラックノズル列K1に関するズレ量、δK2 は第2のブラックノズル列K2に関するズレ量である。
白黒印刷の際に、この2組のブラックノズル列K1,K2に関する相対補正値ΔKと、基準とするブラックノズル列K3に関する基準補正値(図15で決定したもの)とを用いて双方向印刷時の位置ズレ補正すれば、3組のノズル列を用いた白黒印刷における双方向印刷の位置ズレを低減することができる。すなわち、白黒印刷の際に複数のブラックノズル列が用いられる場合には、その中の特定の基準ブラックノズル列に関する基準補正値と、他のブラックノズル列に関する相対補正値とを用いて双方向印刷時の位置ズレを補正するようにすることが好ましい。
D.第2実施例(ノズル列間の記録位置ズレ補正2):
図21は、第2実施例における双方向印刷時のズレ補正に関係する主要な構成を示すブロック図である。図17に示した構成との違いは、3つのアクチュエータチップ91,92,93を駆動するためのヘッド駆動回路52a,52b,52cが独立に設けられている点である。すなわち、3つのヘッド駆動回路52a,52b,52cは、3つのアクチュエータチップ91,92,93を独立に駆動する。このため、位置ズレ補正実行部210からの記録タイミングの指示も、各ヘッド駆動回路52a,52b,52cに対して独立に与えることができる。従って、双方向印刷時の位置ズレ補正も、アクチュエータチップ毎に実行することができる。
第2実施例においても、第1のアクチュエータチップ91のブラックノズル列Kが基準ノズル列として使用される。従って、基準補正値は、第1実施例と同様に、ブラックノズル列Kを用いて記録されたテストパターンから決定される。
一方、相対補正値は、第2実施例では各アクチュエータチップ毎に決定される。すなわち、第1のアクチュエータチップ91の相対補正値Δ91としては、以下の(4a)式で与えられるように、濃シアンノズル列Cで形成された縦罫線のズレ量δC の正負の符号を反転した値が採用される。
Δ91=−δC …(4a)
また、第2と第3のアクチュエータチップ92,93の相対補正値Δ92,Δ93としては、以下の(4b)式および(4c)式でそれぞれ与えられるように、各アクチュエータチップのノズル列に関するズレ量の平均値の正負の符号を反転した値が採用される。
Δ92=−(δLC+δM )/2 …(4b)
Δ93=−(δLM+δY )/2 …(4c)
なお、第2と第3のアクチュエータチップ92,93に対する相対補正値Δ92,Δ93は、1つのノズル列に関する基準ノズル列からの記録位置のズレ量から決定されていてもよい。このとき、上記(4b),(4c)の代わりに、例えば次の(5b),(5c)式を用いることができる。
Δ92=−δLC …(5b)
Δ93=−δLM …(5c)
プリンタ20内のPROM43には、これらの3つの相対補正値Δ91,Δ92,Δ93を表すヘッドIDが格納される。また、位置ズレ補正実行部210には、このヘッドIDに応じて相対補正値Δ91,Δ92,Δ93が供給される。なお、上記(4a)式〜(5c)式の代わりに、これらの式の右辺の値の2倍の値を相対補正値として使用することも可能である。
上述した第2実施例では、アクチュエータチップ毎に相対補正値を独立に設定できる点に特徴がある。こうすれば、アクチュエータチップ毎に基準ノズル列からの相対的な位置ズレを補正できるので、双方向印刷時の位置ズレをより低減することができる。なお、1つのアクチュエータチップで3組のノズル列を駆動するタイプのプリンタでは、3組のノズル列毎に相対補正値を独立に設定することができる。
なお、中間調領域の画質を向上させる意味からは、ライトシアンドットやライトマゼンタドットを位置ズレ調整の対象ドットとして選択し、これらのドットの位置ズレを減少させることが好ましい。但し、上記第1および第2実施例の原理は、M種類(Mは2以上の整数)のインクを用いてカラー印刷を行う際に、M種類のインクのうちで比較的濃度の低い特定のインク(すなわち、ブラック以外の特定のインク)を位置ズレ調整の対象ドットとして選択し、その対象ドットの位置ズレを減少させる場合に適用可能である。
E.第3実施例(サイズの異なるドット間の記録位置ズレ補正):
上述した第1および第2実施例ではノズル列間の記録位置ズレを補正していたが、以下に説明する第3実施例では、大きさが異なる複数種類のドット間の記録位置ズレを補正する。
図22は、第3実施例においてヘッド駆動回路52(図2)から印刷ヘッド28に供給される原駆動信号ODRVの波形を示す説明図である。この原駆動信号ODRVでは、往路においては1画素区間の間に大ドット用波形W11と、小ドット用波形W12と、中ドット用波形W13とがこの順番に発生する。また、復路においては、1画素区間の間に中ドット用波形W21と、小ドット用波形W22と、大ドット用波形W23とがこの順番に発生する。往路においても、また、復路においても、3つの波形のいずれか1つを選択的に使用することによって、各画素位置に大ドットと小ドットと中ドットのいずれか1つを記録することができる。
往路と復路で大ドット用波形と中ドット用波形と小ドット用波形の発生の順番が異なっているのは、往路と復路における各ドットの主走査方向の記録位置をほぼ整合させるようにするためである。図23は、図22の原駆動信号ODRVを用いて形成される3種類のドットを示す説明図である。図23の格子は画素領域の境界を示しており、格子で区切られた1つの矩形領域が1画素分の領域に相当する。各画素領域内のドットは、印刷ヘッド28(図3)が主走査方向に沿って移動する際に、印刷ヘッド28によって吐出されるインク滴によって記録される。図23の例では、奇数番目のラスタラインL1、L3、L5は往路で記録され、偶数番目のラスタラインL2,L4は復路で記録される。この際、吐出されるインクの量を画素毎に調整することによって、サイズの異なる3種類のドットのいずれかを各画素位置に形成することができる。
小ドットは、往路と復路の双方において1画素の領域のほぼ中央に形成される。また、中ドットは、1画素の領域の右寄りの位置に形成され、大ドットは1画素の領域のほぼ全体にわたって形成される。このように、図22(a),(b)に示した原駆動信号ODRVを用いることによって、往路と復路におけるインク滴の着弾位置をほぼ整合させることが可能である。もちろん、実際には各ドットに関して双方向印刷時に多少の位置ズレが発生する可能性があるので、その位置ズレ調整が必要である。
図24は、3種類のドットを用いた階調再現方法を示すグラフである。図24の横軸は画像信号レベルの相対値を示し、縦軸は3種類のドットのドット記録密度を示している。ここで、「ドット記録密度」とは、ドットが形成される画素位置の割合を意味している。例えば、100個の画素を含む領域内において、40個の画素位置にドットが形成される場合には、ドット記録密度は40%である。なお、画像信号レベルは、画像の濃度階調(濃度レベル)を示す階調値に相当する。
図24のグラフにおいて、画像信号レベルが0%〜約16%の階調範囲では、小ドットのドット記録密度が画像信号レベルの増加とともに0%から約50%まで直線的に増加している。この結果、画像信号レベルが約16%である画像部分では小ドットが約半分のドット位置に形成される。また、画像信号レベルが約16%〜約50%の階調範囲では、小ドットのドット記録密度が画像信号レベルの増加とともに約50%から約15%まで直線的に減少しており、一方、中ドットのドット記録密度が0%から約80%まで直線的に増加している。画像信号レベルが約50%〜100%の階調範囲では、小ドットと中ドットのドット記録密度が画像信号レベルの増加とともに0%に至るまで直線的に減少しており、一方、大ドットのドット記録密度が0%から100%まで直線的に増加している。このように、各画像部分の画像信号レベルに応じて、その画像部分が1種類または2種類のドットで記録されることにより、画像の濃度階調が滑らかに直線的に再現される。
往路と復路の記録位置のズレは、約50%以下の階調範囲(約10%〜約50%)である中間調領域において目立ち易い。特に、中間調領域において多く使用される中ドットや小ドットに関する往路と復路の記録位置のズレが、中間調領域の画像で目立ちやすい傾向にある。
ところで、双方向の記録位置ズレ調整用のテストパターンを中ドットや小ドットで作成すると、ユーザがテストパターンにおける位置ズレを認識し難いという問題が生じる。そこで、ユーザ調整時のテストパターンとしては、大ドットで形成したものを使用したい。第3実施例においては、これらの事情を考慮して、ユーザによる調整時には、大ドットで記録したテストパターンを用いて位置ズレの基準補正値を設定する。また、印刷実行時には、この基準補正値を、予め決定されていた相対補正値で補正することによって、小ドットまたは中ドットに関する記録位置ズレが減少するように位置ズレ調整を実行する。
第3実施例における処理手順は、前述した第1実施例において図11、図12および図15で説明したものと同じである。但し、相対補正値決定用のパターンは、第1実施例とは異なるものが使用される。
図25は、相対補正値決定用のテストパターンの一例を示す説明図である。このテストパターンは、印刷用紙Pの上に形成されており、大ドット用テストパターンTPLと、小ドット用テストパターンTPSと、中ドット用テストパターンTPMとを含んでいる。3つのテストパターンTPL,TPS,TPMは、往路と復路とにおいてそれぞれ形成された1組の縦罫線対で構成されており、それぞれブラックインクを用いて記録されている。各縦罫線は、縦罫線の位置をなるべく正確に測定できるようにするために、それぞれ1ドット幅の直線とすることが好ましい。
第3実施例において、ステップS12(図12)では、図25に示す3つのテストパターンTPL,TPS,TPMにおける往路と復路の記録位置のズレ量δL,δS,δMをそれぞれ測定する。この測定は、例えば、テストパターンの画像をCCDカメラで読取り、3つのテストパターンの縦罫線対の主走査方向Xの位置を、画像処理によって測定することによって実現される。
ステップS13では、こうして測定されたズレ量δL,δS,δMから、相対補正値が決定されて、プリンタ20内のPROMに設定される。相対補正値は、基準ドットに関するズレ量と、基準ドット以外のドットに関するズレ量との差分である。大ドットを基準ドットとしたときに、小ドットに関する相対補正値ΔSと、中ドットに関する相対補正値ΔMとは、それぞれ以下の(6a)式、(6b)式で与えられる。
ΔS=(δS−δL) …(6a)
ΔM=(δM−δL) …(6b)
なお、相対補正値ΔS,ΔMの代わりに、テストパターンにおける3つのズレ量δL,δS,δMそのものを作業者がプリンタ20内のPROM43に設定してもよい。すなわち、プリンタ20内のPROMには、相対補正値を実質的に表す情報が設定されていればよい。また、プリンタ20内のPROM43に基準ドット以外のすべてのドットに関する相対補正値を設定する必要は無く、少なくとも1つの相対補正値(例えばΔS)が設定されていればよい。
なお、各ドット用のテストパターンとしては、複数組の縦罫線対で構成されたものを使用してもよい。この場合には、各ドットに関する複数組の縦罫線対における往復の記録位置ズレ量の平均値を、そのドットに関する記録位置のズレ量として採用する。また、縦罫線の代わりに、間欠的にドットが記録されたような直線状のパターンを使用することも可能である。
さらに、テストパターンの一部をブラックインク以外の有彩色インク(マゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアンなど)で記録するようにしてもよい。また、この場合に、大ドット用テストパターンTPLをブラックインクで形成し、小ドット用テストパターンTPSと中ドット用テストパターンTPMを有彩色インクで形成するようにしてもよい。カラー画像では、有彩色インクの小ドットや中ドットが中間調領域の画質に大きな影響を与える。従って、小ドットや中ドットを有彩色インクで形成し、これらに対する相対補正値を設定するようにすれば、カラー画像の中間調領域の画質を向上させることができる。
第3実施例においては、図16に示した基準補正値決定用のテストパターン(基準位置ズレ検査用パターン)は、ブラックインクの大ドット(すなわち基準ドット)を用いて往路と復路でそれぞれ印刷された複数組の縦罫線対で構成されている。
なお、基準補正値決定用のテストパターンは、相対補正値の決定の際に使用されていた基準ドットを用いて形成される。従って、相対補正値の決定の際に、ブラックインクの大ドットの代わりにマゼンタインクの大ドットが基準ドットとして使用された場合には、基準補正値決定用のテストパターンも、そのマゼンタインクの大ドットで形成される。
なお、ユーザによるズレ調整用のテストパターンを記録する際に用いる基準ドットとしては、最も大きなドットを選択することが好ましい。こうすれば、ユーザがテストパターンにおける位置ズレを認識し易いので、より正確に位置ズレ調整を行えるという利点がある。
第3実施例においても、前述した図17または図21に示した構成によって位置ズレ調整が実行される。図26は、第3実施例における位置ズレ調整の内容を示す説明図である。図26(A)は、位置ズレの調整を行っていない場合に大ドット(基準ドット)で形成された縦罫線が、往路と復路でずれた位置に印刷されることを示している。図26(B)は、基準補正値を用いて大ドットの位置ズレを調整したと仮定したときの結果を示している。基準補正値による補正を行うと、大ドットに関しては、双方向印刷時に位置ズレが解消される。図26(C)は、図26(B)と同じ調整状態において、大ドットで形成された縦罫線の他に、小ドットで形成された縦罫線も印刷した場合を示している。図26(C)では、大ドットの位置ズレは解消されているが、小ドットの位置ズレは解消されていない。一方、カラー画像では、特に中間調領域における画質が重要であり、大ドットよりも小ドットに関する位置ズレの方が画質に対する影響が大きい。図26(D)では、基準補正値によるズレ調整に加えて、小ドット用相対補正値ΔSによるズレ調整も行った場合に大ドットで形成される縦罫線と小ドットで形成される縦罫線とを示している。図26(D)では、小ドットの位置ズレは減少しているが、大ドットの位置ズレはやや増加している。図26(D)から解るように、基準補正値と相対補正値とに基づいて位置ズレ調整を行うと、小ドットの位置ズレを小さくすることができるので、カラー画像の中間調領域の画質が向上する。
なお、小ドットよりも中ドットの方が画質への影響が大きい場合には、中ドット用相対補正値ΔMを用いて位置ズレの調整を行うようにすればよい。また、小ドットと中ドットの画質への影響がほぼ同じ程度である場合には、小ドットと中ドットの相対補正値の平均値Δave を用いて、位置ズレの調整を行えばよい。この時、相対補正値の平均値Δave は、次の(7)式で与えられる。
Δave ={(δS−δL)+(δM−δL)}/2
={(δS+δM)/2}−δL …(7)
(7)式から解るように、相対補正値の平均値Δave は、図25に示す小ドットおよび中ドットに関するズレ量δS,δMの平均値と、基準ドットに関するズレ量δLとの差分である。
この例からも理解できるように、相対補正値は、特定の大きさの1種類の対象ドットに関するものでなくてもよく、複数の対象ドットに関する平均的な相対補正値を用いることも可能である。なお、本明細書における「対象ドット」という用語は、「位置ズレ補正の対象となる1つ又は複数のドット」を意味している。なお、「対象ドット」の中に基準ドットが含まれるようにしてもよい。
ところで、白黒印刷では、むしろ大ドットの位置ズレの方が画質に対する影響が大きい場合がある。従って、白黒印刷では、図26(B)のように基準補正値のみを用いた位置ズレ補正の方が好ましいことがある。そこで、プリンタ20の制御回路40(具体的には図17の位置ズレ補正実行部210)は、コンピュータ88(図2)から白黒印刷であることが通知されたときには、基準補正値のみを用いて双方向印刷時の位置ズレを調整し、また、カラー印刷であることが通知されたときには基準補正値と相対補正値とを用いて双方向印刷時の位置ズレを調整するように構成しておくことが好ましい。
また、白黒印刷でない場合にも、基準ドットの位置ズレが特に目立ちやすいときには、基準補正値をそのまま調整値として用いて位置ズレの調整を行うことが好ましい。すなわち、位置ズレ補正実行部(調整値決定部)210は、基準補正値を相対補正値で補正することによって調整値を決定する第1の調整モードと、基準補正値を調整値としてそのまま用いる第2の調整モードと、のいずれかに従って調整値を決定すればよい。
以上のように、第3実施例では、大ドットに関する基準補正値を、予め準備された相対補正値で補正することによって小ドットや中ドットに関する位置ズレ調整用の調整値を決定しているので、中間調領域の画質を向上させることが可能である。特に、ユーザにおける位置ズレの調整時には、大ドットで形成されたテストパターンを用いるので、ユーザが位置ズレの調整を正確に行い易いという利点がある。
F.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
F1.変形例1:
基準補正値と相対補正値とを用いて双方向印刷時の位置ズレを補正する際に、主走査速度(キャリッジの移動速度)として複数の値を利用可能なタイプのプリンタにおいては、ノズル列に関する相対補正値を主走査速度毎に設定することが好ましい。前述した図9の説明から解るように、主走査速度Vsが異なると、ノズル列同士の相対的な位置ズレ量も変化する。従って、異なる主走査速度毎に相対補正値を設定すれば、双方向印刷時の位置ズレをより低減することが可能である。
F2.変形例2:
基準補正値と相対補正値とを用いて双方向印刷時の位置ズレを補正する際に、同一のインクで複数の異なるサイズのドットを各画素位置に形成可能なタイプの多値プリンタにおいては、相対補正値をドットのサイズ毎に設定することが好ましい。ドットサイズが異なると、インク滴の吐出速度も変化する。従って、異なるドットサイズ毎に相対補正値を設定すれば、双方向印刷時の位置ズレをより低減することが可能である。なお、多値プリンタでは、1回の主走査の間は1つのノズル列によって同じサイズのドットしか形成できない場合がある。この場合には、各主走査毎に、ドットのサイズが選択されるので、位置ズレの補正に用いられる相対補正値も、各主走査毎にドットサイズに応じた適切な値が選択される。
なお、サイズの異なるドットを吐出する印刷動作は、インク吐出速度が互いに異なる印刷モードであると考えることができる。従って、上述した変形例は、インク吐出速度が互いに異なる複数のドット吐出モードのそれぞれに関してそれぞれ相対補正値を設定することを意味している。
F3.変形例3:
第1および第2実施例では、基準ノズル列以外の各ノズル列毎に相対補正値を独立に設定することが好ましい。こうすれば、上述した第1、第2実施例よりもさらに位置ズレを低減することが可能である。また、同一のインクを吐出するノズル列のグループ毎に相対補正値を独立に設定するようにしてもよい。例えば、特定のインクを吐出するノズル列が2組設けられている場合には、その2組のノズルに対しては同一の相対補正値を適用するようにしてもよい。
F4.変形例4:
第1ないし第3実施例では、基準補正値と相対補正値を決定する際の基準ノズル列としてブラックノズル列を選択していたが、ブラックノズル列以外の任意のノズル列を基準ノズル列として選択することが可能である。但し、濃度の低いインク(淡シアンや淡マゼンタ)ではユーザが基準補正値を決定する際にテストパターンを認識しにくいため、濃度の比較的高いインク(ブラック、濃シアン、濃マゼンタ)を吐出するノズル列を基準ノズル列として用いることが好ましい。
F5.変形例5:
第1ないし第3実施例では、ドットの記録位置(または記録タイミング)を調整することによって位置ズレを補正していたが、これ以外の手段を用いて位置ズレの補正を行うようにしてもよい。例えば、アクチュエータチップへの駆動信号を遅延させたり、駆動信号の周波数を調整したりすることによって、位置ズレの補正を行うようにすることも可能である。
F6.変形例6:
第3実施例では、1つのノズルで大きさの異なる3種類のドットを1画素領域内に記録できるものとしたが、この実施例の思想は、一般に、少なくとも1種類のインクについて、1つのノズルによって大きさの異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを各画素位置に記録し得るような印刷装置に適用可能である。この場合に、位置ズレの調整を行う対象ドットとしては、N種類のドットの中の最も大きなドット以外のドットを含む少なくとも1つドットを選択することができる。この対象ドットに関するズレの調整値が、N種類のドットに共通に適用される。
対象ドットとしては、例えば、N種類のドットの中の最小のドットや、N種類のドットの中の中程度の大きさを有するドットを選択することができる。このような対象ドットの選択によって、中間調領域における画質を向上できると期待される。
なお、「N種類の中の中程度の大きさを有するドット」とは、Nが奇数の場合には(N+1)/2番目の大きさを有するドットを意味し、Nが偶数の場合にはN/2番目または(N/2+1)番目の大きさを有するドットを意味する。この代わりに、中程度の大きさを有するドットとして、画像信号が50%の階調を示すときに最も数多く用いられるドットを用いてもよい。
F7.変形例7:
上記各実施例では、復路の記録位置(または記録タイミング)を調整することによって位置ズレを補正していたが、往路の記録位置を調整することによって位置ズレを補正するようにしてもよい。また、往路と復路の記録位置の両方を調整することによって位置ズレを補正するようにしてもよい。すなわち、一般には、往路と復路の記録位置の少なくとも一方を調整することによって位置ズレを補正するようにすればよい。
F8.変形例8:
上記各実施例では、インクジェットプリンタについて説明したが、本発明はインクジェットプリンタに限らず、一般に、印刷ヘッドを用いて印刷を行う種々の印刷装置に適用可能である。また、本発明は、インク滴を吐出する方法や装置に限らず、他の手段でドットを記録する方法や装置にも適用可能である。
F9.変形例9:
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図12に示したヘッド駆動回路52の一部の機能をソフトウェアによって実現することも可能である。
第1実施例のプリンタ20を備えた印刷システムの概略構成図。 プリンタ20における制御回路40の構成を示すブロック図。 印刷ヘッドユニット60の構成を示す斜視図。 各印字ヘッドにおけるインク吐出のための構成を示す説明図。 ピエゾ素子PEの伸張によりインク粒子Ipが吐出される様子を示す説明図。 印刷ヘッド28内の複数列のノズルと複数個のアクチュエータチップとの対 応関係を示す説明図。 アクチュエータ回路90の分解斜視図。 アクチュエータ回路90の部分断面図。 異なるノズル列で記録されるドットの双方向印刷時の位置ズレを示す説明図。 図9に示されている位置ズレを平面的に示す説明図。 第1実施例の処理の全体を示すフローチャート。 図11のステップS2の詳細手順を示すフローチャート。 相対補正値決定用のテストパターンの一例を示す説明図。 相対補正値ΔとヘッドIDとの関係を示す説明図。 図11のステップS4の詳細手順を示すフローチャート。 基準補正値決定用のテストパターンの一例を示す説明図。 第1実施例における双方向印刷時のズレ補正に関連する主要な構成を示すブロック図。 ブラックドットとシアンドットを対象ドットとして選択したときの基準補正値と相対補正値とを用いた位置ズレ補正の内容を示す説明図。 シアンドットのみを対象ドットとして選択したときの基準補正値と相対補正値とを用いた位置ズレ補正の内容を示す説明図。 印刷ヘッド28aの他の構成を示す説明図。 第2実施例において使用される制御回路40aの構成を示すブロック図。 第3実施例における原駆動信号ODRVの波形を示す説明図。 第3実施例で形成される3種類のドットを示す説明図。 3種類のドットを用いた階調再現方法を示すグラフ。 第3実施例における相対補正値決定用のテストパターンの一例を示す説明図。 第3実施例における位置ズレ補正の内容を示す説明図。
符号の説明
20…インクジェットプリンタ
22…紙送りモータ
24…キャリッジモータ
26…プラテン
28…印刷ヘッド
30…キャリッジ
31…仕切板
32…操作パネル
34…摺動軸
36…駆動ベルト
38…プーリ
39…位置センサ
40…制御回路
41…CPU
43…PROM
44…RAM
50…I/F専用回路
52…ヘッド駆動回路
54…モータ駆動回路
56…コネクタ
60…印刷ヘッドユニット
71〜76…導入管
80…インク通路
88…コンピュータ
90…アクチュエータ回路
91〜93…アクチュエータチップ
100…ヘッドIDシール
110…ノズルプレート
112…リザーバプレート
120…接続端子プレート
122…内部接続端子
124…外部接続端子
130…セラミック焼結体
132…端子電極
200…ヘッドID格納領域
202…調整番号格納領域
204…相対補正値テーブル
206…基準補正値テーブル
210…位置ズレ補正実行部(調整値決定部)

Claims (37)

  1. 主走査を往復で双方向に行いつつ、印刷画像信号に応じて印刷媒体上に画像を印刷する双方向印刷機能を有する双方向印刷装置であって、
    前記印刷媒体上の各画素位置にドットを記録する印刷ヘッドと、
    前記印刷媒体と前記印刷ヘッドの少なくとも一方を移動させることによって双方向の主走査を行う主走査駆動部と、
    前記印刷媒体と前記印刷ヘッドの少なくとも一方を移動させることによって副走査を行う副走査駆動部と、
    前記印刷ヘッドに駆動信号を与えて前記印刷媒体上に印刷を行わせるヘッド駆動部と、
    双方向印刷の制御を行う制御部と、を備え、
    前記制御部は、
    往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを減少させるための調整値を用いて、往路と復路における主走査方向の記録位置を調整する記録位置調整部を備え、
    前記記録位置調整部は、
    前記印刷ヘッドによって形成される特定の基準ドットに関して、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための基準補正値を格納する第1のメモリと、
    前記基準補正値を補正するために予め準備された相対補正値を格納するための第2のメモリと、
    少なくとも前記基準補正値を用いて前記調整値を決定する調整値決定部と、
    を備え、
    前記調整値決定部は、前記基準補正値を前記相対補正値で補正することによって前記調整値を決定する第1の調整モードを有することを特徴とする双方向印刷装置。
  2. 請求項1記載の双方向印刷装置であって、
    前記印刷ヘッドは、複数のノズル列を有し、
    前記基準補正値は、前記複数のノズル列の中の特定の基準ノズル列に関して往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための補正値であり、
    前記相対補正値は、前記複数のノズル列の中の前記基準ノズル列以外の他のノズル列に関して、前記基準ノズル列に対する相対的な記録位置のズレを補正するための補正値である、双方向印刷装置。
  3. 請求項2記載の双方向印刷装置であって、
    前記基準ノズル列は、ブラックインクを吐出するためのブラックノズル列であり、
    前記基準ノズル列以外の他のノズル列は、カラーインクを吐出するためのカラーノズル列を含む、双方向印刷装置。
  4. 請求項2または3記載の双方向印刷装置であって、
    前記第2のメモリは、前記相対補正値として、前記基準ノズル列以外の他のノズル列に対して共通に適用される値を格納する、双方向印刷装置。
  5. 請求項2または3記載の双方向印刷装置であって、
    前記第2のメモリは、前記相対補正値として、前記基準ノズル列以外の他のノズル列に対してノズル列毎に独立に適用される値を格納する、双方向印刷装置。
  6. 請求項2または3記載の双方向印刷装置であって、
    前記第2のメモリは、前記相対補正値として、同一のインクを吐出するノズル列のグループ毎に対して独立に適用される値を格納する、双方向印刷装置。
  7. 請求項1記載の双方向印刷装置であって、
    前記印刷ヘッドは、少なくとも大きさが異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを形成可能であり、
    前記基準ドットは前記N種類のドットの中から選択されたドットであり、
    前記第1の調整モードにおいては、前記調整値が前記N種類のドットに共通に適用される、双方向印刷装置。
  8. 請求項7記載の双方向印刷装置であって、
    前記基準ドットは、前記N種類のドットの中の最も大きなドットである、双方向印刷装置。
  9. 請求項7または8記載の双方向印刷装置であって、
    前記相対補正値は、前記N種類のドットの中の前記基準ドットよりも小さなドットを含む少なくとも1つの対象ドットに関する位置ズレ量と、前記基準ドットに関する位置ズレ量の差分を実質的に表す値である、双方向印刷装置。
  10. 請求項9記載の双方向印刷装置であって、
    前記対象ドットは、前記N種類のドットの中の最も小さなドットである、双方向印刷装置。
  11. 請求項9記載の双方向印刷装置であって、
    前記対象ドットが大きさの異なる複数のドットを含むときに、前記対象ドットに関する位置ズレ量として前記複数のドットに関する位置ズレ量の平均値が使用される、双方向印刷装置。
  12. 請求項9記載の双方向印刷装置であって、
    前記基準ドットは、ブラックインクで形成されたドットであり、
    前記対象ドットは、有彩色インクで形成されたドットである、双方向印刷装置。
  13. 請求項1記載の双方向印刷装置であって、
    前記調整値決定部は、さらに、前記基準補正値を前記調整値としてそのまま使用する第2の調整モードを備える、双方向印刷装置。
  14. 請求項13記載の双方向印刷装置であって、
    前記調整値決定部は、カラー印刷を行うときには前記第1の調整モードに従って記録位置ズレの補正を実行し、白黒印刷を行うときには前記第2の調整モードに従って記録位置ズレの補正を実行する、双方向印刷装置。
  15. 請求項1ないし14のいずれかに記載の双方向印刷装置であって、
    前記基準補正値は、前記基準ドットを用いて印刷媒体上に印刷された位置ズレ検査用パターンの中から選択された好ましい補正状態を示す補正情報に従って決定される、双方向印刷装置。
  16. 請求項1ないし14のいずれかに記載の双方向印刷装置であって、
    前記双方向印刷装置は、複数の主走査速度で主走査を実行可能であり、
    前記第2のメモリは、前記相対補正値として、前記複数の主走査速度のそれぞれに対して独立に適用される値を格納する、双方向印刷装置。
  17. 請求項1ないし14のいずれかに記載の双方向印刷装置であって、
    前記双方向印刷装置は、インク吐出速度が互いに異なる複数のドット吐出モードでインクを吐出することが可能であり、
    前記第2のメモリは、前記相対補正値として、前記複数のドット吐出モードのそれぞれに対して独立に適用される値を格納する、双方向印刷装置。
  18. 請求項1ないし14のいずれかに記載の双方向印刷装置であって、
    前記第2のメモリは、前記双方向印刷装置内に設けられた不揮発性メモリである、双方向印刷装置。
  19. 請求項1ないし14のいずれかに記載の双方向印刷装置であって、
    前記第2のメモリは、前記印刷ヘッドと共に前記双方向印刷装置に着脱され得るように、前記印刷ヘッドに固定されている、双方向印刷装置。
  20. 印刷媒体上の各画素位置にドットを記録する印刷ヘッドを備えた印刷装置を用いて、主走査を往復で双方向に行いつつ、印刷画像信号に応じて前記印刷媒体上に画像を印刷する双方向印刷方法であって、
    (a)特定の基準ドットに関して、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための基準補正値を設定する工程と、
    (b)少なくとも前記基準補正値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを減少させるための調整値を決定する工程と、
    (c)前記調整値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置を調整する工程と、を備え、
    前記工程(b)は、前記基準補正値を補正するために予め準備された相対補正値で前記基準補正値を補正する第1の調整モードに従って前記調整値を決定する工程を備えることを特徴とする双方向印刷方法。
  21. 請求項20記載の双方向印刷方法であって、
    前記印刷ヘッドは、複数のノズル列を有し、
    前記基準補正値は、前記複数のノズル列の中の特定の基準ノズル列に関して往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための補正値であり、
    前記相対補正値は、前記複数のノズル列の中の前記基準ノズル列以外の他のノズル列に関して、前記基準ノズル列に対する相対的な記録位置のズレを補正するための補正値である、双方向印刷方法。
  22. 請求項21記載の双方向印刷方法であって、
    前記基準ノズル列は、ブラックインクを吐出するためのブラックノズル列であり、
    前記基準ノズル列以外の他のノズル列は、カラーインクを吐出するためのカラーノズル列を含む、双方向印刷方法。
  23. 請求項21または22記載の双方向印刷方法であって、
    前記相対補正値は、前記基準ノズル列以外の他のノズル列に対して共通に適用される、双方向印刷方法。
  24. 請求項21または22記載の双方向印刷方法であって、
    前記相対補正値は、前記基準ノズル列以外の他のノズル列に対してノズル列毎に独立に適用される、双方向印刷方法。
  25. 請求項21または22記載の双方向印刷方法であって、
    前記相対補正値として、同一のインクを吐出するノズル列のグループ毎に対して独立に適用される、双方向印刷方法。
  26. 請求項20記載の双方向印刷方法であって、
    前記印刷ヘッドは、少なくとも大きさが異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを形成可能であり、
    前記基準ドットは前記N種類のドットの中から選択されたドットであり、
    前記第1の調整モードにおいては、前記調整値が前記N種類のドットに共通に適用される、双方向印刷方法。
  27. 請求項26記載の双方向印刷方法であって、
    前記基準ドットは、前記N種類のドットの中の最も大きなドットである、双方向印刷方法。
  28. 請求項26または27記載の双方向印刷方法であって、
    前記相対補正値は、前記N種類のドットの中の前記基準ドットよりも小さなドットを含む少なくとも1つの対象ドットに関する位置ズレ量と、前記基準ドットに関する位置ズレ量の差分を実質的に表す値である、双方向印刷方法。
  29. 請求項28記載の双方向印刷方法であって、
    前記対象ドットは、前記N種類のドットの中の最も小さなドットである、双方向印刷方法。
  30. 請求項28記載の双方向印刷方法であって、
    前記対象ドットが大きさの異なる複数のドットを含むときに、前記対象ドットに関する位置ズレ量として前記複数のドットに関する位置ズレ量の平均値が使用される、双方向印刷方法。
  31. 請求項28記載の双方向印刷方法であって、
    前記基準ドットは、ブラックインクで形成されたドットであり、
    前記対象ドットは、有彩色インクで形成されたドットである、双方向印刷方法。
  32. 請求項20記載の双方向印刷方法であって、
    前記工程(b)は、さらに、前記基準補正値を前記調整値としてそのまま使用する第2の調整モードに従って前記調整値を決定する工程を含む、双方向印刷方法。
  33. 請求項32記載の双方向印刷方法であって、
    カラー印刷を行うときには前記第1の調整モードに従って記録位置ズレの補正を実行し、白黒印刷を行うときには前記第2の調整モードに従って記録位置ズレの補正を実行する、双方向印刷方法。
  34. 請求項20ないし33のいずれかに記載の双方向印刷方法であって、
    前記基準補正値は、前記基準ドットを用いて印刷媒体上に印刷された位置ズレ検査用パターンの中から選択された好ましい補正状態を示す補正情報に従って決定される、双方向印刷方法。
  35. 請求項20ないし33のいずれかに記載の双方向印刷方法であって、
    前記印刷装置は、複数の主走査速度で主走査を実行可能であり、
    前記相対補正値は、前記複数の主走査速度のそれぞれに対して独立に適用される、双方向印刷方法。
  36. 請求項20ないし33のいずれかに記載の双方向印刷方法であって、
    前記印刷装置は、インク吐出速度が互いに異なる複数のドット吐出モードでインクを吐出することが可能であり、
    前記相対補正値は、前記複数のドット吐出モードのそれぞれに対して独立に適用される、双方向印刷方法。
  37. 印刷媒体上の各画素領域内に、大きさが異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを記録することが可能な印刷装置を備えたコンピュータに、主走査を往復で双方向に行いつつ印刷画像信号に応じて前記印刷媒体上に画像を印刷させるためのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
    特定の基準ドットに関して往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための基準補正値を、予め準備された相対補正値で補正する第1の調整モードに従って、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを減少させるための調整値を決定し、前記調整値を使用して往路と復路における主走査方向の記録位置を調整する機能を、前記コンピュータに実現させるためのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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