JP2004291406A - 感熱記録材料用顕色剤及び感熱記録材料 - Google Patents
感熱記録材料用顕色剤及び感熱記録材料 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ビスフェノールAを原料として用いたものと同等以上に、発色感度、耐水性、耐油性、及び耐光性に優れた感熱記録材料用顕色剤とその製造方法、及び、この感熱記録材料用顕色剤を含有する感熱記録材料とこれを用いた感熱記録材を提供する。
【解決手段】下記一般式[1]で示される化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料用顕色剤。
【化1】
(上記一般式[1]中、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換または無置換フェニル基、置換または無置換アラルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、一分子内に存在するR同士は同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数を示し、一分子内において同一であっても異なってもよい。)
【選択図】 なし
【解決手段】下記一般式[1]で示される化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料用顕色剤。
【化1】
(上記一般式[1]中、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換または無置換フェニル基、置換または無置換アラルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、一分子内に存在するR同士は同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数を示し、一分子内において同一であっても異なってもよい。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱記録材料用顕色剤とその製造方法、及び、この感熱記録材料用顕色剤を含有する感熱記録材料とこれを用いた感熱記録材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
感熱記録材は、主にファクシミリ、計測機器、医療機器などに使用され、最近では、POSシステムなどに利用されるバーコードラベル、レジスターのレシートなどへと展開され、使用量が増大している。利用用途が多岐にわたるに従い、耐水性、耐油性、耐黄変性及び耐可塑性など様々な特性が感熱記録材に要求されている。
【0003】
感熱記録材は、一般に発色前駆体であるロイコ染料と、酸性化合物である顕色剤とを基本成分とする感熱記録材料を支持体上に塗布して製造される。顕色剤には、古くからフェノール化合物が使用され、ビスフェノ−ルAに代表されるビスフェノール化合物が最も一般的に使用されている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかしながら、ビスフェノールAは、生殖機能に弊害を及ぼす環境ホルモン物質としての疑いが最近報告され、代替え化合物の要求が非常に高い。
【0004】
この問題解決のために、様々なフェノール骨格を有する酸性化合物が検討されているが、未だビスフェノールAに代わる、耐水性、耐油性、及び耐光性などに優れる顕色剤が得られていないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】
特開昭56−15394号公報
【特許文献2】
特開昭57−151394号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ビスフェノールAを原料として用いたものと同等以上に、発色感度、耐水性、耐油性、及び耐光性に優れた感熱記録材料用顕色剤とその製造方法、及び、この感熱記録材料用顕色剤を含有する感熱記録材料とこれを用いた感熱記録材を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、以下の本発明(1)〜(8)により達成される。
(1)下記一般式[1]で示される化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料用顕色剤。
【化3】
(前記一般式[1]中、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、あるいは、置換または無置換フェニル基、置換または無置換アラルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、一分子内に存在するR同士は同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数を示し、一分子内において同一であっても異なってもよい。)
(2)前記一般式[1]中、Rが水素又はメチル基で、nが1〜2である上記(1)に記載の感熱記録材料用顕色剤。
(3)前記一般式[1]で示される化合物を、70重量%以上含有する上記(1)又は(2)に記載の感熱記録材料用顕色剤。
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載された感熱記録材料用顕色剤の製造方法であって、下記一般式[2]で示されるフェノ−ル化合物とクロトンアルデヒドとを、酸性触媒の存在下で反応させることを特徴とする、感熱記録材料用顕色剤の製造方法。
【化4】
(前記一般式[2]中、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、あるいは、置換または無置換フェニル基、置換または無置換アラルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子である。nは1〜4の整数を示し、nが2〜4のとき、一分子内に存在するR同士は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
(5)前記フェノ−ル化合物(P)と前記クロトンアルデヒド(C)とを、反応モル比(P/C)6/1〜30/1で反応させる、上記(4)に記載の感熱記録材料用顕色剤の製造方法。
(6)上記酸性触媒として、ヘテロポリ酸を用いる上記(4)ないし(5)のいずれかに記載の感熱記録材料用顕色剤の製造方法。
(7)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載された感熱記録材料用顕色剤と、ロイコ染料とを含有することを特徴とする感熱記録材料。
(8)上記(7)に記載の感熱記録材料を支持体上に塗布してなる感熱記録材。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の感熱記録材料用顕色剤とその製造方法、及び、この感熱記録材料用顕色剤を含有する感熱記録材料とこれを用いた感熱記録材について説明する。
まず、本発明の感熱記録材料用顕色剤について説明する。本発明の感熱記録材料用顕色剤(以下、単に「顕色剤」ということがある)は、下記一般式[1]で示される化合物を含有することを特徴とする。
【化5】
【0009】
上記一般式[1]中、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、あるいは、置換または無置換フェニル基、置換または無置換アラルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子である。
炭素数1〜6のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
置換または無置換フェニル基としては例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、トリメチルフェニル基などのアリール基が挙げられる。
置換または無置換アラルキル基としては例えば、ベンジル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる
そして、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
これらのR同士は、一分子内に存在するものは同じであっても異なっていても良い。
これらのRの中でも、水素、メチル基が好ましい。これにより、顕色剤として用いた際の発色性を良好なものにすることができる。
【0010】
また、上記一般式[1]中、nは1〜4の整数を示し、一分子内において同一であっても異なってもよい。このnを調整することにより、得られる化合物の融点や酸性度を制御することができるが、nは1又は2が好ましい。これにより、高酸性度とすることができるので、発色性を良好にすることができる。
【0011】
本発明の顕色剤は特に限定されないが、上記一般式[1]で示される化合物を、70重量%以上含有することが好ましい。より好ましくは80重量%以上である。これにより、顕色剤の融点を高くすることができ、これを用いた感熱記録材料の保存安定性を向上させることができる。なお、ここで上記化合物の含有量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置などを用いて測定することができる。
なお、上記一般式[1]で示される化合物以外の成分としては特に限定されないが、例えば、上記一般式[1]で示される化合物が一部オリゴマー化した副生成物などを含有していてもよい。
【0012】
次に、本発明の感熱記録材料用顕色剤の製造方法について説明する。
本発明の感熱記録材料用顕色剤の製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある)は、上記本発明の顕色剤の製造する方法であって、下記一般式[2]で示されるフェノール化合物とクロトンアルデヒドとを酸性触媒の存在下で反応させることを特徴とする。
【化6】
【0013】
上記一般式[2]中、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、あるいは、置換または無置換フェニル基、置換または無置換アラルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子である。
炭素数1〜6のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
置換または無置換フェニル基としては例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、トリメチルフェニル基などのアリール基が挙げられる。
置換または無置換アラルキル基としては例えば、ベンジル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる
そして、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
これらのR同士は、一分子内に存在するものは同じであっても異なっていても良い。
【0014】
上記一般式[2]で表される化合物の中でも、特に、フェノール、クレゾールを用いることが好ましい。これにより、クロトンアルデヒドとの反応時に高収率とすることができる。また、得られる顕色剤を発色性に優れたものとすることができる。
【0015】
フェノール化合物(P)とクロトンアルデヒド(C)との反応モル比(P/C)は特に限定されないが、6/1〜30/1とすることが好ましい。さらに好ましくは、8/1〜30/1である。これにより、反応生成物中の、上記一般式[1]で表される化合物の含有量を高くすることができ、顕色剤としての純度を向上させることができる。
【0016】
上記反応において使用される酸性触媒も特に限定されないが、一例を挙げると蓚酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機カルボン酸、塩酸、硫酸などの無機酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機スルホン酸、有機ホスホン酸、あるいは、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸などのヘテロポリ酸などが使用できる。
これらの中でも、クロトンアルデヒドが有する二重結合への付加反応を効率よく進行させるためには、無機酸、有機スルホン酸、ヘテロポリ酸などの強酸であることが好ましく、中でもヘテロポリ酸が好ましい。
酸性触媒の使用量は特に限定されないが、反応制御及び反応速度の点から、フェノール化合物に対して0.1〜10重量%が好ましい。
【0017】
次に反応順序に従って、本発明の製造方法を説明する。
攪拌装置、冷却管(コンデンサー)、加熱装置、温度計などを備えた反応容器にフェノール化合物と酸性触媒を仕込み、クロトンアルデヒドを所定の温度で逐次添加する。逐次添加する温度は特に限定されないが、反応速度等の点から室温〜120℃程度が好ましい。添加の時間も特に限定されないが、反応の制御、速度、及び、得られる化合物の純度の点から、0.5時間〜6時間が好ましい。
その後、50℃〜120℃程度で反応を1〜8時間行う。その後、塩基性物質により酸性触媒を中和し、水洗の後、常圧下で脱水、さらに減圧下で脱モノマ−を行い、目的とする化合物を得ることができる。中和に使用する塩基性物質としては特に限定されないが、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような無機塩基性物質、トリエチルアミンなどのアミン類を使用することができる。好ましくは、水洗により除去しやすい塩が得られるよう、相手の酸性触媒により塩基性物質を選定することが好ましい。また、水洗の回数や水の量については特に限定されず、中和により生成した塩が顕色剤の機能を損ねないようなレベルまで取り除くことが好ましい。
【0018】
以上の方法により得られた化合物は、さらに純度を向上するために、適切な溶媒を使用して再結晶することも可能である。使用できる溶媒は特に限定されないが、温めたときに十分に溶解し、冷やしたときに目的の化合物が結晶化するもので、モノマーなどが容易に溶解除去できるものが好ましい。また、フェノール化合物の種類により、上記の特性を有する溶媒を適宜選定することが大切である。
【0019】
次に、本発明の感熱記録材料について説明する。
本発明の感熱記録材料は、上記本発明の顕色剤と、ロイコ染料とを含有することを特徴とする。
【0020】
本発明の感熱記録材料において用いられるロイコ染料としては特に限定されないが、例えば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロ系の各ロイコ染料を使用することができる。
トリフェニルメタン系としては例えば、トリフェニルメタンなどが挙げられる。
フルオラン系としては例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名:クリスタルバイオレットラクトン,CVL)、p,p’−ベンジリデンビス(N,N’−ジメチルアニリン(ロイコマラカイトグリ−ン)、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチルシクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、などが挙げられる。
フェノチアジン系としては例えば、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなどが挙げられる。
オ−ラミン系としては例えば、4,4‘−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオ−ラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミンなどが挙げられる。
スピロ系としては例えば、3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、ベンゾ−β−ナフトスピロピランなどが挙げられる。
これらのロイコ染料は、色相や発色性により適宜選択することができ、必要に応じて単独、若しくは2種以上を混合物として使用することができる。
【0021】
本発明の感熱記録材料には、本発明の顕色剤とロイコ染料のほか、必要により各種の添加剤を加えることが可能である。添加剤としては主に、バインダー、顔料、増感剤、などが挙げられる
バインダーとしては特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、でん粉、でん粉誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体などの水溶性高分子、スチレン−ブタジエンラテックス、スチレン−アクリルエステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョンなどの水性エマルジョンを加えることができ、これにより、顕色剤組成物を支持体に強く粘着させることができる。
顔料としては特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、焼成カオリン、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
増感剤としては特に限定されないが、例えば、ステアリン酸アマイド、パルチン酸アマイド、オレイン酸アマイド、ラウリン酸アマイド、エチレンビスステアロアマイド、メチロールステアロアマイドなどが挙げられる。
このほかさらに、ヘッドマッチング性、筆記性、地肌の白色化などを改良するために、一般に知られているワックス、ワックス類似物質や有機フィラー、無機フィラー等を加えることもできる。
【0022】
本発明の感熱記録材料において、本発明の顕色剤と上記ロイコ染料との配合比率は特に限定されないが、通常、感熱記録材料中の固形分全体に対して、顕色剤1〜30重量%、ロイコ染料1〜15重量%およびバインダー1〜30重量%の割合で配合することができる。
【0023】
本発明の感熱記録材料の調製方法としては特に限定されないが、例えば、上記一般式[1]で示される顕色剤、ロイコ染料のほか、バインダー等の添加剤を加え、これを水に溶解した溶液、もしくは分散した混合溶液として調製し、これを支持体に塗工するのに用いることができる。
また、このほかにも例えば、ロイコ染料をバインダー溶液と混合し、別に顕色剤をバインダー溶液と混合しておくこともできる。このような形態で用いる場合は、各々の混合液を混ぜ合わせてから塗工する方法、各々の混合液を同一支持体の同一面に順次塗工する方法、あるいは、各々の混合液を同一支持体の表裏面に別々に塗工する方法などがあり、特に限定されるものではない。
【0024】
次に、本発明の感熱記録材について説明する。
本発明の感熱記録材は、上記本発明の感熱記録材料を支持体上に塗布してなるものである。
ここで支持体としては特に限定されないが、一般的には紙、合成紙、合成樹脂フィルム、金属ラミネートフィルムなどを使用することができる。支持体は、感熱記録材が使用される用途、目的により適時選択できる。本発明の感熱記録材は、上記本発明の感熱記録材料を、これらの支持体上に例えば上記の方法で塗工して、必要に応じて平滑化処理等を行い、これを乾燥することにより得られるものである。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、ここで「部」は全て「重量部」、「%」は全て「重量%」を表すものとする。
【0026】
1.顕色剤の合成
(1)実施例1
攪拌装置、冷却管、加熱装置、温度計を備えた反応容器に、フェノ−ル300部、酸性触媒として12−タングスト(VI)リン酸水和物0.75部を仕込み、クロトンアルデヒド27.9部(モル比P/C=8/1)を100℃で4時間かけて逐次添加した後、100〜105℃で反応を4時間行った。その後、塩基性物質(25%水酸化ナトリウム水溶液)を0.5部添加して酸性触媒を中和し、水を400部加えて水洗し、これを3回行った。次いで、常圧下で脱水、さらに減圧下で脱モノマーを行い、フェノール−クロトンアルデヒド反応物110部を得た。
【0027】
(2)実施例2
実施例1において、フェノール300部のかわりに、o−クレゾール345部(モル比P/C=8/1)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で反応を行い、o−クレゾール−クロトンアルデヒド反応物121部を得た。
【0028】
2.感熱記録材料の調製
(1)実施例11
下記の原材料及び配合で、それぞれ別々にボールミルで24時間湿式粉砕して、分散混合液(A液、B液)を調製した。
【0029】
(1.1)A液
・クリスタルバイオレットラクトン 10部
・ステアリン酸アミド 20部
・10重量%ポリビニルアルコール水溶液 60部
(クラレ社製・「#105」)
・炭酸カルシウム 50部
・水 150部
【0030】
(1.2)B液
・実施例1で得られたフェノール/クロトンアルデヒド反応物 10部
・10重量%ポリビニルアルコール水溶液 20部
(クラレ社製・「#105」)
・炭酸カルシウム 20部
・水 50部
【0031】
上記で得られたA液、B液を用い、下記の割合で配合して感熱記録材料を調製した。
(1.3)感熱記録材料
・A液 20部
・B液 20部
・10重量%ポリビニルアルコール水溶液 15部
(クラレ社製・「#105」)
【0032】
(2)実施例12
実施例11において、実施例1で得られたフェノール/クロトンアルデヒド反応物の代わりに、実施例2で得られたo−クレゾール/クロトンアルデヒド反応物を用いた以外は、実施例11と同様に行い、感熱記録材料を得た。
【0033】
(3)比較例11
実施例11において、実施例1で得られたフェノール/クロトンアルデヒド反応物の代わりに、ビスフェノールAを用いた以外は、実施例11と同様に行い、感熱記録材料を得た。
【0034】
3.感熱記録材の作製
実施例11、12、及び、比較例11で得られた感熱記録材料を、乾燥後塗布量が7〜9g/m2になるように、上質紙に塗布、乾燥し、感熱記録材を作製した。
【0035】
上記で得られた感熱記録材について、表1に記載した項目の評価を行った。実施例1、2で得られたフェノール類−クロトンアルデヒド反応物の評価とともに、結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表の注:測定方法
(1)含有量:実施例1、2で得られたフェノール類−クロトンアルデヒド反応物について、GPC装置を用い、一般式[1]で表される化合物の含有量を測定した。GPC装置は、検量線としてポリスチレン標準物質を用いて作成したものを使用した。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で測定した。装置は、
・本体:東ソー社製・「HLC−8020」
・分析用カラム:東ソー社製・「TSKgelG1000HXL 1本、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本」
をそれぞれ使用した。
(2)発色性:200℃の熱盤上に、厚み1.2mmのガラスプレートを2枚置き、この温度まで加熱した。次いで、上記で得られた感熱記録材をこのガラスプレートで挟み、3秒間保持して、発色させた感熱記録材試料を作製した。これを肉眼で観察し、比較例と同等の発色であったものを○とした。
(3)耐水性:上記発色性の評価と同様の方法で、発色させた感熱記録材試料を作製した。これを、25℃の純水中に2時間浸漬したあと風乾して、発色像の変化を肉眼で観察した。退色または変色がほとんど認められないものを○とした。
(4)耐油性:上記発色性の評価と同様の方法で、発色させた感熱記録材試料を作製した。これをPVCラップフィルムで挟み、発色面上側から200g/cm2の荷重を加えた状態で、40℃で24時間放置して、発色像の変化を肉眼で観察した。退色または変色がほとんど認められないものを○、 変色または退色が少し認められるものを△とした。
(5)耐光性:上記発色性の評価と同様の方法で、発色させた感熱記録材試料を作製した。これに、紫外線フェードメーター(スガ試験機製 FAL−5)で24時間照射した後、発色像の変化を肉眼で観察した。退色または変色がほとんど認められないものを○、 変色または退色が少し認められるものを△とした。
【0038】
実施例1、2は、上記一般式[1]で示される化合物を含有する本発明の顕色剤である。そして、実施例11、12はこれらを配合した本発明の感熱記録材料であり、ビスフェノールAを用いた顕色剤を配合した比較例11と比べて、耐水性、耐油性、及び耐光性のいずれにおいても、同等以上の特性を有する感熱記録材を得ることができた。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、上記一般式[1]で示される化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料用顕色剤及びこれを含有する感熱記録材料である。本発明の感熱記録材料用顕色剤及び感熱記録材料は、環境上の問題が指摘されているビスフェノールAを原料として用いたものと同等以上の耐水性、耐油性、及び耐光性を有する感熱記録材を製造することができる。
従って本発明は、ファクシミリ、計測機器、医療機器、POSシステムなどに利用されるバーコードラベル、レジスターのレシートなどの感熱記録材用として好適に用いることができるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱記録材料用顕色剤とその製造方法、及び、この感熱記録材料用顕色剤を含有する感熱記録材料とこれを用いた感熱記録材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
感熱記録材は、主にファクシミリ、計測機器、医療機器などに使用され、最近では、POSシステムなどに利用されるバーコードラベル、レジスターのレシートなどへと展開され、使用量が増大している。利用用途が多岐にわたるに従い、耐水性、耐油性、耐黄変性及び耐可塑性など様々な特性が感熱記録材に要求されている。
【0003】
感熱記録材は、一般に発色前駆体であるロイコ染料と、酸性化合物である顕色剤とを基本成分とする感熱記録材料を支持体上に塗布して製造される。顕色剤には、古くからフェノール化合物が使用され、ビスフェノ−ルAに代表されるビスフェノール化合物が最も一般的に使用されている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかしながら、ビスフェノールAは、生殖機能に弊害を及ぼす環境ホルモン物質としての疑いが最近報告され、代替え化合物の要求が非常に高い。
【0004】
この問題解決のために、様々なフェノール骨格を有する酸性化合物が検討されているが、未だビスフェノールAに代わる、耐水性、耐油性、及び耐光性などに優れる顕色剤が得られていないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】
特開昭56−15394号公報
【特許文献2】
特開昭57−151394号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ビスフェノールAを原料として用いたものと同等以上に、発色感度、耐水性、耐油性、及び耐光性に優れた感熱記録材料用顕色剤とその製造方法、及び、この感熱記録材料用顕色剤を含有する感熱記録材料とこれを用いた感熱記録材を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、以下の本発明(1)〜(8)により達成される。
(1)下記一般式[1]で示される化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料用顕色剤。
【化3】
(前記一般式[1]中、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、あるいは、置換または無置換フェニル基、置換または無置換アラルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、一分子内に存在するR同士は同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数を示し、一分子内において同一であっても異なってもよい。)
(2)前記一般式[1]中、Rが水素又はメチル基で、nが1〜2である上記(1)に記載の感熱記録材料用顕色剤。
(3)前記一般式[1]で示される化合物を、70重量%以上含有する上記(1)又は(2)に記載の感熱記録材料用顕色剤。
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載された感熱記録材料用顕色剤の製造方法であって、下記一般式[2]で示されるフェノ−ル化合物とクロトンアルデヒドとを、酸性触媒の存在下で反応させることを特徴とする、感熱記録材料用顕色剤の製造方法。
【化4】
(前記一般式[2]中、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、あるいは、置換または無置換フェニル基、置換または無置換アラルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子である。nは1〜4の整数を示し、nが2〜4のとき、一分子内に存在するR同士は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
(5)前記フェノ−ル化合物(P)と前記クロトンアルデヒド(C)とを、反応モル比(P/C)6/1〜30/1で反応させる、上記(4)に記載の感熱記録材料用顕色剤の製造方法。
(6)上記酸性触媒として、ヘテロポリ酸を用いる上記(4)ないし(5)のいずれかに記載の感熱記録材料用顕色剤の製造方法。
(7)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載された感熱記録材料用顕色剤と、ロイコ染料とを含有することを特徴とする感熱記録材料。
(8)上記(7)に記載の感熱記録材料を支持体上に塗布してなる感熱記録材。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の感熱記録材料用顕色剤とその製造方法、及び、この感熱記録材料用顕色剤を含有する感熱記録材料とこれを用いた感熱記録材について説明する。
まず、本発明の感熱記録材料用顕色剤について説明する。本発明の感熱記録材料用顕色剤(以下、単に「顕色剤」ということがある)は、下記一般式[1]で示される化合物を含有することを特徴とする。
【化5】
【0009】
上記一般式[1]中、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、あるいは、置換または無置換フェニル基、置換または無置換アラルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子である。
炭素数1〜6のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
置換または無置換フェニル基としては例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、トリメチルフェニル基などのアリール基が挙げられる。
置換または無置換アラルキル基としては例えば、ベンジル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる
そして、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
これらのR同士は、一分子内に存在するものは同じであっても異なっていても良い。
これらのRの中でも、水素、メチル基が好ましい。これにより、顕色剤として用いた際の発色性を良好なものにすることができる。
【0010】
また、上記一般式[1]中、nは1〜4の整数を示し、一分子内において同一であっても異なってもよい。このnを調整することにより、得られる化合物の融点や酸性度を制御することができるが、nは1又は2が好ましい。これにより、高酸性度とすることができるので、発色性を良好にすることができる。
【0011】
本発明の顕色剤は特に限定されないが、上記一般式[1]で示される化合物を、70重量%以上含有することが好ましい。より好ましくは80重量%以上である。これにより、顕色剤の融点を高くすることができ、これを用いた感熱記録材料の保存安定性を向上させることができる。なお、ここで上記化合物の含有量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置などを用いて測定することができる。
なお、上記一般式[1]で示される化合物以外の成分としては特に限定されないが、例えば、上記一般式[1]で示される化合物が一部オリゴマー化した副生成物などを含有していてもよい。
【0012】
次に、本発明の感熱記録材料用顕色剤の製造方法について説明する。
本発明の感熱記録材料用顕色剤の製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある)は、上記本発明の顕色剤の製造する方法であって、下記一般式[2]で示されるフェノール化合物とクロトンアルデヒドとを酸性触媒の存在下で反応させることを特徴とする。
【化6】
【0013】
上記一般式[2]中、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、あるいは、置換または無置換フェニル基、置換または無置換アラルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子である。
炭素数1〜6のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
置換または無置換フェニル基としては例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、トリメチルフェニル基などのアリール基が挙げられる。
置換または無置換アラルキル基としては例えば、ベンジル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる
そして、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
これらのR同士は、一分子内に存在するものは同じであっても異なっていても良い。
【0014】
上記一般式[2]で表される化合物の中でも、特に、フェノール、クレゾールを用いることが好ましい。これにより、クロトンアルデヒドとの反応時に高収率とすることができる。また、得られる顕色剤を発色性に優れたものとすることができる。
【0015】
フェノール化合物(P)とクロトンアルデヒド(C)との反応モル比(P/C)は特に限定されないが、6/1〜30/1とすることが好ましい。さらに好ましくは、8/1〜30/1である。これにより、反応生成物中の、上記一般式[1]で表される化合物の含有量を高くすることができ、顕色剤としての純度を向上させることができる。
【0016】
上記反応において使用される酸性触媒も特に限定されないが、一例を挙げると蓚酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機カルボン酸、塩酸、硫酸などの無機酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機スルホン酸、有機ホスホン酸、あるいは、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸などのヘテロポリ酸などが使用できる。
これらの中でも、クロトンアルデヒドが有する二重結合への付加反応を効率よく進行させるためには、無機酸、有機スルホン酸、ヘテロポリ酸などの強酸であることが好ましく、中でもヘテロポリ酸が好ましい。
酸性触媒の使用量は特に限定されないが、反応制御及び反応速度の点から、フェノール化合物に対して0.1〜10重量%が好ましい。
【0017】
次に反応順序に従って、本発明の製造方法を説明する。
攪拌装置、冷却管(コンデンサー)、加熱装置、温度計などを備えた反応容器にフェノール化合物と酸性触媒を仕込み、クロトンアルデヒドを所定の温度で逐次添加する。逐次添加する温度は特に限定されないが、反応速度等の点から室温〜120℃程度が好ましい。添加の時間も特に限定されないが、反応の制御、速度、及び、得られる化合物の純度の点から、0.5時間〜6時間が好ましい。
その後、50℃〜120℃程度で反応を1〜8時間行う。その後、塩基性物質により酸性触媒を中和し、水洗の後、常圧下で脱水、さらに減圧下で脱モノマ−を行い、目的とする化合物を得ることができる。中和に使用する塩基性物質としては特に限定されないが、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような無機塩基性物質、トリエチルアミンなどのアミン類を使用することができる。好ましくは、水洗により除去しやすい塩が得られるよう、相手の酸性触媒により塩基性物質を選定することが好ましい。また、水洗の回数や水の量については特に限定されず、中和により生成した塩が顕色剤の機能を損ねないようなレベルまで取り除くことが好ましい。
【0018】
以上の方法により得られた化合物は、さらに純度を向上するために、適切な溶媒を使用して再結晶することも可能である。使用できる溶媒は特に限定されないが、温めたときに十分に溶解し、冷やしたときに目的の化合物が結晶化するもので、モノマーなどが容易に溶解除去できるものが好ましい。また、フェノール化合物の種類により、上記の特性を有する溶媒を適宜選定することが大切である。
【0019】
次に、本発明の感熱記録材料について説明する。
本発明の感熱記録材料は、上記本発明の顕色剤と、ロイコ染料とを含有することを特徴とする。
【0020】
本発明の感熱記録材料において用いられるロイコ染料としては特に限定されないが、例えば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロ系の各ロイコ染料を使用することができる。
トリフェニルメタン系としては例えば、トリフェニルメタンなどが挙げられる。
フルオラン系としては例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名:クリスタルバイオレットラクトン,CVL)、p,p’−ベンジリデンビス(N,N’−ジメチルアニリン(ロイコマラカイトグリ−ン)、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチルシクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、などが挙げられる。
フェノチアジン系としては例えば、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなどが挙げられる。
オ−ラミン系としては例えば、4,4‘−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオ−ラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミンなどが挙げられる。
スピロ系としては例えば、3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、ベンゾ−β−ナフトスピロピランなどが挙げられる。
これらのロイコ染料は、色相や発色性により適宜選択することができ、必要に応じて単独、若しくは2種以上を混合物として使用することができる。
【0021】
本発明の感熱記録材料には、本発明の顕色剤とロイコ染料のほか、必要により各種の添加剤を加えることが可能である。添加剤としては主に、バインダー、顔料、増感剤、などが挙げられる
バインダーとしては特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、でん粉、でん粉誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体などの水溶性高分子、スチレン−ブタジエンラテックス、スチレン−アクリルエステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョンなどの水性エマルジョンを加えることができ、これにより、顕色剤組成物を支持体に強く粘着させることができる。
顔料としては特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、焼成カオリン、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
増感剤としては特に限定されないが、例えば、ステアリン酸アマイド、パルチン酸アマイド、オレイン酸アマイド、ラウリン酸アマイド、エチレンビスステアロアマイド、メチロールステアロアマイドなどが挙げられる。
このほかさらに、ヘッドマッチング性、筆記性、地肌の白色化などを改良するために、一般に知られているワックス、ワックス類似物質や有機フィラー、無機フィラー等を加えることもできる。
【0022】
本発明の感熱記録材料において、本発明の顕色剤と上記ロイコ染料との配合比率は特に限定されないが、通常、感熱記録材料中の固形分全体に対して、顕色剤1〜30重量%、ロイコ染料1〜15重量%およびバインダー1〜30重量%の割合で配合することができる。
【0023】
本発明の感熱記録材料の調製方法としては特に限定されないが、例えば、上記一般式[1]で示される顕色剤、ロイコ染料のほか、バインダー等の添加剤を加え、これを水に溶解した溶液、もしくは分散した混合溶液として調製し、これを支持体に塗工するのに用いることができる。
また、このほかにも例えば、ロイコ染料をバインダー溶液と混合し、別に顕色剤をバインダー溶液と混合しておくこともできる。このような形態で用いる場合は、各々の混合液を混ぜ合わせてから塗工する方法、各々の混合液を同一支持体の同一面に順次塗工する方法、あるいは、各々の混合液を同一支持体の表裏面に別々に塗工する方法などがあり、特に限定されるものではない。
【0024】
次に、本発明の感熱記録材について説明する。
本発明の感熱記録材は、上記本発明の感熱記録材料を支持体上に塗布してなるものである。
ここで支持体としては特に限定されないが、一般的には紙、合成紙、合成樹脂フィルム、金属ラミネートフィルムなどを使用することができる。支持体は、感熱記録材が使用される用途、目的により適時選択できる。本発明の感熱記録材は、上記本発明の感熱記録材料を、これらの支持体上に例えば上記の方法で塗工して、必要に応じて平滑化処理等を行い、これを乾燥することにより得られるものである。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、ここで「部」は全て「重量部」、「%」は全て「重量%」を表すものとする。
【0026】
1.顕色剤の合成
(1)実施例1
攪拌装置、冷却管、加熱装置、温度計を備えた反応容器に、フェノ−ル300部、酸性触媒として12−タングスト(VI)リン酸水和物0.75部を仕込み、クロトンアルデヒド27.9部(モル比P/C=8/1)を100℃で4時間かけて逐次添加した後、100〜105℃で反応を4時間行った。その後、塩基性物質(25%水酸化ナトリウム水溶液)を0.5部添加して酸性触媒を中和し、水を400部加えて水洗し、これを3回行った。次いで、常圧下で脱水、さらに減圧下で脱モノマーを行い、フェノール−クロトンアルデヒド反応物110部を得た。
【0027】
(2)実施例2
実施例1において、フェノール300部のかわりに、o−クレゾール345部(モル比P/C=8/1)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で反応を行い、o−クレゾール−クロトンアルデヒド反応物121部を得た。
【0028】
2.感熱記録材料の調製
(1)実施例11
下記の原材料及び配合で、それぞれ別々にボールミルで24時間湿式粉砕して、分散混合液(A液、B液)を調製した。
【0029】
(1.1)A液
・クリスタルバイオレットラクトン 10部
・ステアリン酸アミド 20部
・10重量%ポリビニルアルコール水溶液 60部
(クラレ社製・「#105」)
・炭酸カルシウム 50部
・水 150部
【0030】
(1.2)B液
・実施例1で得られたフェノール/クロトンアルデヒド反応物 10部
・10重量%ポリビニルアルコール水溶液 20部
(クラレ社製・「#105」)
・炭酸カルシウム 20部
・水 50部
【0031】
上記で得られたA液、B液を用い、下記の割合で配合して感熱記録材料を調製した。
(1.3)感熱記録材料
・A液 20部
・B液 20部
・10重量%ポリビニルアルコール水溶液 15部
(クラレ社製・「#105」)
【0032】
(2)実施例12
実施例11において、実施例1で得られたフェノール/クロトンアルデヒド反応物の代わりに、実施例2で得られたo−クレゾール/クロトンアルデヒド反応物を用いた以外は、実施例11と同様に行い、感熱記録材料を得た。
【0033】
(3)比較例11
実施例11において、実施例1で得られたフェノール/クロトンアルデヒド反応物の代わりに、ビスフェノールAを用いた以外は、実施例11と同様に行い、感熱記録材料を得た。
【0034】
3.感熱記録材の作製
実施例11、12、及び、比較例11で得られた感熱記録材料を、乾燥後塗布量が7〜9g/m2になるように、上質紙に塗布、乾燥し、感熱記録材を作製した。
【0035】
上記で得られた感熱記録材について、表1に記載した項目の評価を行った。実施例1、2で得られたフェノール類−クロトンアルデヒド反応物の評価とともに、結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表の注:測定方法
(1)含有量:実施例1、2で得られたフェノール類−クロトンアルデヒド反応物について、GPC装置を用い、一般式[1]で表される化合物の含有量を測定した。GPC装置は、検量線としてポリスチレン標準物質を用いて作成したものを使用した。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で測定した。装置は、
・本体:東ソー社製・「HLC−8020」
・分析用カラム:東ソー社製・「TSKgelG1000HXL 1本、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本」
をそれぞれ使用した。
(2)発色性:200℃の熱盤上に、厚み1.2mmのガラスプレートを2枚置き、この温度まで加熱した。次いで、上記で得られた感熱記録材をこのガラスプレートで挟み、3秒間保持して、発色させた感熱記録材試料を作製した。これを肉眼で観察し、比較例と同等の発色であったものを○とした。
(3)耐水性:上記発色性の評価と同様の方法で、発色させた感熱記録材試料を作製した。これを、25℃の純水中に2時間浸漬したあと風乾して、発色像の変化を肉眼で観察した。退色または変色がほとんど認められないものを○とした。
(4)耐油性:上記発色性の評価と同様の方法で、発色させた感熱記録材試料を作製した。これをPVCラップフィルムで挟み、発色面上側から200g/cm2の荷重を加えた状態で、40℃で24時間放置して、発色像の変化を肉眼で観察した。退色または変色がほとんど認められないものを○、 変色または退色が少し認められるものを△とした。
(5)耐光性:上記発色性の評価と同様の方法で、発色させた感熱記録材試料を作製した。これに、紫外線フェードメーター(スガ試験機製 FAL−5)で24時間照射した後、発色像の変化を肉眼で観察した。退色または変色がほとんど認められないものを○、 変色または退色が少し認められるものを△とした。
【0038】
実施例1、2は、上記一般式[1]で示される化合物を含有する本発明の顕色剤である。そして、実施例11、12はこれらを配合した本発明の感熱記録材料であり、ビスフェノールAを用いた顕色剤を配合した比較例11と比べて、耐水性、耐油性、及び耐光性のいずれにおいても、同等以上の特性を有する感熱記録材を得ることができた。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、上記一般式[1]で示される化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料用顕色剤及びこれを含有する感熱記録材料である。本発明の感熱記録材料用顕色剤及び感熱記録材料は、環境上の問題が指摘されているビスフェノールAを原料として用いたものと同等以上の耐水性、耐油性、及び耐光性を有する感熱記録材を製造することができる。
従って本発明は、ファクシミリ、計測機器、医療機器、POSシステムなどに利用されるバーコードラベル、レジスターのレシートなどの感熱記録材用として好適に用いることができるものである。
Claims (8)
- 前記一般式[1]中、Rが水素又はメチル基で、nが1〜2である請求項1に記載の感熱記録材料用顕色剤。
- 前記一般式[1]で示される化合物を、70重量%以上含有する請求項1又は2に記載の感熱記録材料用顕色剤。
- 前記フェノ−ル化合物(P)と前記クロトンアルデヒド(C)とを、反応モル比(P/C)6/1〜30/1で反応させる、請求項4に記載の感熱記録材料用顕色剤の製造方法。
- 上記酸性触媒として、ヘテロポリ酸を用いる請求項4ないし5のいずれかに記載の感熱記録材料用顕色剤の製造方法。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載された感熱記録材料用顕色剤と、ロイコ染料とを含有することを特徴とする感熱記録材料。
- 請求項7に記載の感熱記録材料を支持体上に塗布してなる感熱記録材。
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