JP2004291079A - 非鉄溶融金属用耐溶損性部材 - Google Patents

非鉄溶融金属用耐溶損性部材 Download PDF

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Abstract

【課題】製造コストが比較的安価で、耐摩耗性および耐溶損性に優れた非鉄溶融金属用耐溶損性部材を提供する。
【解決手段】非鉄溶融金属用耐溶損性部材は、鉄系または鋼系材料からなる基材の表面の少なくとも一部分に、ハイス系合金からなる被覆層を設け、該被覆層の表面に窒化層を形成したことを特徴とする。被覆層に含まれるMC系、MC系、MC系、M系、M系およびM23系炭化物などの炭化物の面積率の総和が25%以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金等の非鉄溶融金属と接触して使用される耐摩耗性および耐溶損性に優れた部材に関する。特に、ダイカスト用として好適な部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金、マグネシウム合金などの非鉄溶融金属を扱う鋳造法の一つにダイカスト法がある。ダイカスト法は、アルミニウムなどの金属製品を高速、高精度に鋳造することができ、自動車製品、家電製品などの各種構成部材の製造に広く利用されている。そのダイカストマシンの溶融金属射出装置を構成する部材としてダイカスト用スリーブが装備されている。そして、ダイカスト用スリーブはプランジャチップの摺動に対する耐摩耗性や溶融金属に対する耐溶損性が特に要求される。
【0003】
従来のダイカスト用スリーブとしては、SKD61に代表される熱間金型用合金鋼からなるものが一般的に用いられるが、近年、生産性の向上や品質向上の観点から、さらなる耐摩耗性、耐溶損性が要求されている。そこで、溶融金属と接触する部分を耐摩耗性、耐溶損性に優れる材料で形成したダイカスト用スリーブが数多く提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、スリーブを本体部分と給湯口を開口した給湯筒に二分して形成し、両者を連結具によって着脱自在に連結したダイカスト用スリーブが記載されている。このスリーブ本体部分は外筒の内側に内筒を焼嵌めた二重構造で構成される。溶融金属が接触する部分にある内筒は、プランジャとの摩擦による摩耗と、高温の溶湯が繰り返し注入されて起こる熱応力疲労、射出圧による変形に耐えるために、SKD61鋼材料を焼入れ焼戻し後に窒化処理の表面処理を施したものである。
【0005】
また、特許文献2には、Fe−Ni−Co系合金の高強度低熱膨張性金属材料からなるスリーブ外筒の内面に、窒化珪素またはサイアロン等のセラミックス材料からなるスリーブ内筒を焼嵌めた二重構造のダイカスト用スリーブが記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特許第3008258号公報
【特許文献2】
特開平9−108811号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載されるようなダイカスト用スリーブは、中空円筒状のSKD61鋼材料の内面に窒化処理を施すことにより、厚さ数10〜数100μmの窒化層を形成している。窒化処理の手段としては、浸硫窒化、塩浴軟窒化、ガス窒化、ガス軟窒化、プラズマ窒化法などがあり、いずれの処理方法においてもビッカース硬さがHv700〜1200となり、表面の硬化と窒化により耐摩耗性および耐溶損性の向上が図られている。
【0008】
しかしながら、特許文献1のダイカスト用スリーブは、鋳造使用中に溶融金属の注入による急激な加熱と溶融金属の排出による急激な冷却が繰り返されることによる熱衝撃がかかり、これに起因してスリーブ内面の表層部に形成された窒化層に微細なヒートクラックが発生しやすかった。このヒートクラックが進展することにより、溶融金属が差込み侵入し、最終的には表層面の窒化層が脱落し寿命が短くなるという欠点があった。
【0009】
また、溶融金属との接触により徐々に窒化層が分解していき、溶融金属との化学的反応の抑止効果が薄れ、溶損が急速に進行するとともに、スリーブとプランジャチップとの摩擦による摩耗も発生しやすかった。
【0010】
一方、特許文献2に記載のような溶融金属と接触する部分のスリーブ内筒をセラミックスで形成した場合、溶融金属と反応し難いので溶融金属に対する化学的安定性の効果は期待できるものの、熱衝撃に伴う繰返し応力に対する強度不足の問題は払拭できず、依然ヒートクラックが発生する問題をかかえている。また、セラミックスの焼結体の内筒を嵌合させるため、焼結費が嵩みまた作業が煩雑となり製造コストが高くなるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、ダイカスト用スリーブの用途のみならず、非鉄溶融金属と接触して使用される各種の耐溶損性部材に適用できるものについて、製造コストが比較的安価で、耐摩耗性および耐溶損性に優れた非鉄溶融金属用耐溶損性部材を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の非鉄溶融金属用耐溶損性部材は、鉄系または鋼系材料からなる基材の表面の少なくとも一部分に、ハイス系合金からなる被覆層を設け、該被覆層の表面に窒化層を形成したことを特徴とする。
【0013】
前記本発明において、被覆層中に含まれる炭化物の面積率の総和が25%以下であることを特徴とする。被覆層中に含まれる炭化物としては、MC系、MC系、MC系、M系、M系およびM23系炭化物のうちいずれか一種以上が含有される。
【0014】
また、被覆層は重量比で、C:1.0〜3.0%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ni:0〜4.5%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:0〜9.0%、W:0〜10.0%、V:1.0〜10.0%を含有するFe基合金からなることが望ましい。さらに、これらに加えて、Co:10.0%以下、Nb:10.0%以下のうちいずれか一種以上を含有することが好ましい。
【0015】
また、本発明の被覆層を形成する手段としては、遠心力鋳造法、肉盛法、鋳ぐるみ法など公知の方法が適用できるが、なかでも遠心力鋳造法は製造コストを安価に抑えることができるので好ましい。特に、鉄系または鋼系材料からなる基材が中空円筒状の場合、基材の内周面に遠心力鋳造法により被覆層を容易に形成することができる。
【0016】
【作用】
本発明の非鉄溶融金属用耐溶損性部材は、鉄系または鋼系材料からなる基材の表面の少なくとも一部分にハイス系合金からなる被覆層を設けて、この被覆層の表面の非鉄溶融金属と接触する部分に窒化層を形成し、被覆層が直接には非鉄溶融金属とは接触しない構造としたものである。被覆層となるハイス系合金はSKD61鋼に比べVやCrを多量に含んだ高合金材であり、炭化物が微細に分散しているため耐摩耗性が十分得られる。また、後述の溶損試験による耐溶損性に示すように、ハイス系合金自体も耐溶損性にも優れている。これはハイス系合金に分散した炭化物が非鉄溶融金属と反応し難いことに起因している。さらに、VやCrの拡散係数がFeよりも小さいことからも、これらV、Crの合金を多量に含むハイス系合金材は非鉄溶融金属に対する耐溶損性効果に優れている。
【0017】
また、VやCrは窒素との親和力が強いため、ハイス系合金材への窒素の拡散を容易にし窒化物を多量に含んだ拡散層すなわち窒化層を形成しやすい。窒化物が富化されたこの窒化層は、窒化層の最表面に形成される鉄窒化物により溶融金属と反応が起こり難くなる。以上の理由から、耐溶損性に優れたハイス系合金からなる被覆層と非鉄溶融金属に接触する最表面部分に富化された窒化層をもつ構造体とすることにより、非鉄溶融金属との反応に起因する溶損を抑えることができる。また、たとえ窒化層の一部が使用中に消滅した場合にも、ハイス系合金の被覆層により溶融金属の侵入に基づく溶損が起こり難く、溶損が急速に進行することを抑えることができる。
【0018】
また、ハイス系合金からなる被覆層中には、MC系炭化物、MC系炭化物、MC系炭化物、M系炭化物、M系炭化物およびM23系炭化物のいずれか一種以上が比較的多く含まれるので耐摩耗性を著しく向上させることができる。これら炭化物の面積率の総和が多くなると被覆層が脆くなるので25%以下が望ましい。
【0019】
さらに、硬さを確保するために、特に硬質であるMC系炭化物およびMC系炭化物の面積率の総和は10%以上が好ましい。また、針状やネットワーク状の共晶炭化物量が過多になると必要な機械的特性、特に靭性が確保できなくなるが、MC系炭化物を適切に晶出させることで、MC系炭化物、M系炭化物のネットワークを分断し靭性を確保できる。
【0020】
また、溶融金属と接触する領域にある被覆層の表面に、浸硫窒化、塩浴軟窒化、ガス窒化、ガス軟窒化、プラズマ窒化等の窒化処理による窒化層を形成させることにより、窒化層のビッカース硬さがHv700〜1200となり、表面の硬化と窒化により耐溶損性および耐摩耗性をなお一層向上できる。その効果を十分得るために、窒化層の厚さは100〜200μmにするのが好ましい。
【0021】
本発明の非鉄溶融金属用耐溶損性部材に係わる被覆層の化学成分(重量%)は以下の範囲が望ましい。
【0022】
C:1.0〜3.0%
Cは、耐摩耗性向上のための炭化物の形成と、基地への固溶による焼入れ・焼戻し時の基地硬さの向上に必要である。Cは、耐摩耗性の向上に寄与するMC、MC、MC、M、M、M23系炭化物を生成する。Cが1.0%未満では耐摩耗性を向上させるために有効な炭化物の晶出が少なく、また基地に固溶するCが不足し、焼入れによっても十分な基地硬さが得られなくなる。一方、3.0%を超えると炭化物が粗大化しその晶出量も過大となり、靭性が劣化しやすい。
【0023】
Si:0.1〜2.0%
Siの含有量は0.1〜2.0%が好ましい。Siは、脱酸剤として作用し、またMC系炭化物中に固溶してW、Moなどの元素を置換して含有されるため、W、Moなどの高価な元素の節減を図るために有効である。Siが0.1%未満では脱酸効果が不足して鋳造欠陥を生じやすい。また、2.0%を超えると脆化が生じやすい。
【0024】
Mn:0.1〜2.0%
Mnの含有量は0.1〜2.0%が好ましい。Mnは、Siと同様に脱酸作用がある。また、不純物であるSをMnSとして固定する作用がある。Mnが0.1%未満では脱酸性に乏しい。また、2.0%を超えると残留オーステナイトを生じやすく、安定して十分な硬さを維持できない。
【0025】
Ni:0〜4.5%
Niは必ずしも添加を必要としないが、添加した場合、焼入性を向上させ高硬度化させる効果を有する。Ni含有量が4.5%を超えると残留オーステナイトが過剰となりかえって高硬度が得られなくなる。より好ましいNi含有量は0〜2.0%である。
【0026】
Cr:3.0〜10.0%
CrはCと結合し炭化物を晶出生成し、また基地に固溶し基地硬さを上げることで、耐摩耗性を向上させる。Crが3.0%未満ではその効果を十分確保できない。また、10.0%を超えると、常温での残留オーステナイトが多くなるので、焼戻し回数が多くなり不経済となる。さらに、Crは比較的硬さの低いMやM23系炭化物を形成し、多量の添加はこれらの炭化物が過剰となり耐摩耗性が劣化する。
【0027】
Mo:0〜9.0%
Moは必ずしも添加を必要としないが、添加した場合、Crと同様にCと結合して硬質のMC、MC系炭化物を生成する。また高温で焼戻しを行う場合、その二次硬化に強く寄与する元素である。Mo含有量が9.0%を超えると、CとVとMoのバランスにおいて、MC、MC系炭化物が多く晶出しすぎ、靭性が低下する。より好ましいMo含有量は1.0〜8.0%である。
【0028】
W:0〜10.0%
Wは必ずしも添加を必要としないが、添加した場合、基地の焼入れ性を上げ、Cと結合して硬質のMC、MC系炭化物を生成する。また、WはCrやMoと同様に硬い炭化物を生成するため、これらの元素に置換して添加することもできる。W含有量が10.0%を超えると、MC系炭化物が粗大化し脆性が劣化するので好ましくない。
【0029】
V:1.0〜10.0%
Vは、耐摩耗性の向上に最も寄与する硬質なMC系炭化物、M系炭化物を形成する。Vが1.0%未満では炭化物の生成が少なく耐摩耗性が不足する。Vが10.0%を超えると、C含有量とのバランスにより、初晶としてオーステナイト、もしくはMC、M系炭化物が晶出する。オーステナイトが初晶で晶出すれば硬さが不十分となる。また、MC、M系炭化物が初晶で晶出すれば凝固中に凝集偏析して脆性の劣化を引き起こすので好ましくない。より好ましいVの含有量は、2.0〜8.0%である。
【0030】
残部はFeおよび不純物元素とする。さらに、前記に加えてCo、Nbのいずれか一種以上を含有させることができる。
【0031】
Co:10.0%以下
Coは炭化物の生成とは無関係に基地に固溶し、強靭性を増すとともに高温硬さと耐摩耗性を向上する効果がある。Coが10.0%を超えるとその効果が飽和し、かつ高価になるのでこれを上限とした。
【0032】
Nb:10.0%以下
NbはVと同様に、耐摩耗性の向上に最も寄与する硬質なMC系炭化物、M系炭化物を形成する。Nbが10.0%を超えると、靭性が低下するとともに、C含有量とのバランスにより、初晶としてオーステナイト、もしくはMC、M系炭化物が晶出する。オーステナイトが初晶で晶出すれば硬さが不十分となる。また、MC、Mが初晶で晶出すれば凝固中に凝集偏析して脆性の劣化を引き起こす。また、NbはVと置換可能であり、より好ましいNbおよびVの合計含有量は、(Nb+V):2.0〜8.0%である。
【0033】
本発明の非鉄溶融金属用耐溶損性部材は、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金等の非鉄溶融金属と接触して使用される部材に好適であり、具体的にはダイカスト用スリーブ、プランジャチップ、ヒーターチューブ、ストーク、熱電対保護管、脱ガス用ロータ、鋳型、堰入れ子、ランスパイプ等の各種部材が挙げられる。
【0034】
また、本発明の非鉄溶融金属用耐溶損性部材は、従来のセラミックス製に比べ製造コストを安く抑えることができる。特にダイカスト用スリーブのように遠心力鋳造法で被覆層を形成する場合には製造コストを安く抑えることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
まず、アルミニウム合金溶湯に対する耐溶損性試験について述べる。供試材として、表1に示すものを用意した。供試材No.1〜No.10はハイス系合金材、供試材No.11〜No.12はSKD61鋼相当材である。表1において、これら供試材の炭化物の面積率の総和、4点曲げ強さ、破壊靭性値、硬さを併記した。
【0036】
これらの供試材をそれぞれ直径10mm、長さ100mmの丸棒形状に加工して、耐溶損性試験用の試験片を作製した。すなわち、本発明例の試験片として、供試材No.1〜No.5はハイス系合金材の表面に浸硫窒化法により窒化層を形成したものである。また比較例として、供試材No.6〜No.10はそのまま何も表面処理を施していないハイス系合金材の生材、供試材No.11はSKD61鋼相当材の表面に浸硫窒化法により窒化層を形成したもの、供試材No.12はそのまま何も表面処理を施していないSKD61鋼相当材の生材である。
【0037】
【表1】
Figure 2004291079
【0038】
これらの試験片について、アルミニウム合金溶湯に対する溶損試験を行い、耐溶損性を調べた。図1に溶損試験装置の概略図を示す。各試験片は、取り付け状況を図示した1個の試験片8のように、先端から50mmまでの部分をアルミニウム合金溶湯9へ浸漬するように円板状の試験片保持板10に取り付けた。
【0039】
720℃に保持したアルミニウム合金(ADC12)溶湯9に浸漬して、試験片保持板10に取り付けた試験片8を100rpmで回転させて、5時間経過後に溶損で減少した体積の割合(溶損率)を測定した。表1にこの溶損試験における溶損率の結果を示す。
【0040】
表1より、本発明の窒化層を形成した供試材No.1〜No.5は、比較例の窒化層を形成していない供試材No.6〜No.10に比べ溶損率が小さく耐溶損性が向上することを確認できた。また、非鉄溶融金属用耐溶損性部材として通常用いられるSKD61鋼相当材の表面に窒化層を形成した供試材No.11と比較すると、本発明の供試材No.1〜No.5は耐溶損性が格段に向上した。また、供試材No.1〜No.4は被覆層中に含まれる炭化物の面積率の総和が25%以下であり破壊靭性値を十分確保でき、強靭性を要求される非鉄溶融金属用耐溶損性部材としてより望ましい形態である。それに比べ供試材No.5は被覆層中に含まれる炭化物の面積率の総和が25%を超えるため、やや靭性に劣るものの耐摩耗性、耐溶損性は十分確保できる。
【0041】
次に、本発明例の非鉄溶融金属用耐溶損性部材として、アルミニウム合金鋳造に使用するダイカスト用スリーブを製作した。図2に、本発明例のダイカスト用スリーブの概略断面図を示す。図2において、ダイカスト用スリーブ1は、基材となる鋼製の外筒2の内面にハイス系合金からなる被覆層3が溶着してなり、さらに非鉄溶融金属と接触する被覆層3の最内面には窒化層7が形成されている。そして、使用時には外筒2、被覆層3および窒化層7を通して開けられた給湯口4からアルミニウム合金等の溶融金属が供給される。5はダイカスト用スリーブ1の射出口側、6は後端側である。
【0042】
このダイカスト用スリーブの製造方法について説明する。基材となる中空円筒状の外筒2をクロムモリブデン鋼SCM440で製作した。外筒2は外径130mm、内径68mm、長さ665mmである。外筒2の後端側6に鉄板を溶接して塞ぎ、この後端側6を下にして外筒2を長手鉛直方向に立て、加熱炉内へセットした後、1230℃に加熱した。
【0043】
被覆層3として、化学成分が重量比でC:1.9%、Si:0.8%、Mn:0.4%、Cr:4.7%、Mo:5.7%、V:6.5%、Fe:残部のハイス系合金材のインゴットを1450℃で溶解し、前述の1230℃に加熱した外筒2の射出口側5からハイス系合金溶湯を鋳込んだ。そして素早く射出口側5の穴に栓を打ち込み、遠心力鋳造機に移動させた。遠心力鋳造機には、長手方向が水平になるようにセットした。そして、遠心力鋳造機を作動させ、1000rpmで回転させ、外筒2の外表面温度が、450℃に達してから回転を停止させ、除冷炉へ入れた。
【0044】
回転を停止した後、所定の温度まで空冷し焼入れを行った。その後、この外筒2を徐冷炉に装入し、徐冷を200〜300℃まで行った。その後、歪取り焼鈍および焼きなましを400〜500℃で3回行なった。これにより、外筒2の内面に被覆層3を形成したダイカスト用スリーブ素材を得た。
【0045】
このようにして得られた本発明のダイカスト用スリーブ素材を炉に入れ、アンモニア気流中で500℃に加熱保持し、窒化処理を施してダイカスト用スリーブ素材の内周面の被覆層3の表層部に窒化層7を形成した。
【0046】
次いで、スリーブ素材の外周面、端面、内面および給湯口を所定の寸法に仕上げ加工して本発明例のダイカスト用スリーブ1を完成した。
【0047】
このスリーブ素材の調査を行ったところ、外筒2の最内面に形成した窒化層7の硬さはHs83であった。また、被覆層3中の炭化物は主にMC系炭化物が面積率で13%、MC系炭化物が5%であった。
【0048】
また、比較例のダイカスト用スリーブとして、SKD61鋼からなる中空円筒状の外筒を炉に入れ、アンモニア気流中で500℃に加熱保持し、窒化処理を施して外筒の内周面の表層部に窒化層を形成させたものを作製した。
【0049】
これらのダイカスト用スリーブをダイカストマシンに装備して、アルミニウム合金(ADC12)溶湯を用いて鋳造を行った。その結果、本発明例のダイカスト用スリーブはメンテナンス無しで連続して30万ショット使用できた。一方、比較例のダイカスト用スリーブは、溶損箇所のメンテナンスを途中で行いながら8万ショットで耐用できなくなった。
【0050】
【発明の効果】
本発明の非鉄溶融金属用耐溶損性部材によれば、耐摩耗性および耐溶損性に優れるので、ダイカスト用スリーブをはじめ、非鉄溶融金属と接触して使用される各種の耐溶損性部材が長期間安定して操業できる。また、比較的安価に製造できるとともに、メンテナンスの工数、コストを軽減することができ、生産効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶損試験装置の概略図である。
【図2】本発明の実施例に係るダイカスト用スリーブを示す断面図である。
【符号の説明】
1 ダイカスト用スリーブ、 2 外筒、 3 被覆層、 4 給湯口、
5 スリーブ射出口側、 6 スリーブ後端側、 7 窒化層、
8 試験片、 9 溶湯、 10 試験片保持板

Claims (6)

  1. 鉄系または鋼系材料からなる基材の表面の少なくとも一部分に、ハイス系合金からなる被覆層を設け、該被覆層の表面に窒化層を形成したことを特徴とする非鉄溶融金属用耐溶損性部材。
  2. 前記被覆層に含まれる炭化物の面積率の総和が25%以下であることを特徴とする請求項1に記載の非鉄溶融金属用耐溶損性部材。
  3. 前記被覆層が重量比で、C:1.0〜3.0%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ni:0〜4.5%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:0〜9.0%、W:0〜10.0%、V:1.0〜10.0%を含有するFe基合金からなることを特徴とする請求項1または2に記載の非鉄溶融金属用耐溶損性部材。
  4. 前記被覆層が重量比でさらに、Co:10.0%以下、Nb:10.0%以下のうちいずれか一種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の非鉄溶融金属用耐溶損性部材。
  5. 前記被覆層を遠心力鋳造法により設けたことを特徴とする請求項1に記載の非鉄溶融金属用耐溶損性部材。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の部材がダイカスト用スリーブであることを特徴とする非鉄溶融金属用耐溶損性部材。
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