JP2004288964A - GaN結晶の成長方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属Ga蒸気と窒素プラズマを利用するGaN結晶成長方法において、結晶成長速度を向上させる。
【解決手段】上方から窒素ガスが導入される反応管(1)内において、その反応管の下方に金属Ga(12)を配置し、その金属Gaの上方においてGaN結晶を成長させるための基板(11)を配置し、反応管内に導入された窒素ガス(13)にマイクロ波(4a)を印加して生じさせた窒素プラズマ(13a)と金属Gaから蒸発させられたGa蒸気とを基板上で反応させることによってGaN結晶を成長させる方法において、窒素ガスの導入側と基板の下側との間に高周波パルス電界(21、22a、22b)を印加しつつGaN結晶を成長させる。
【選択図】 図1
【解決手段】上方から窒素ガスが導入される反応管(1)内において、その反応管の下方に金属Ga(12)を配置し、その金属Gaの上方においてGaN結晶を成長させるための基板(11)を配置し、反応管内に導入された窒素ガス(13)にマイクロ波(4a)を印加して生じさせた窒素プラズマ(13a)と金属Gaから蒸発させられたGa蒸気とを基板上で反応させることによってGaN結晶を成長させる方法において、窒素ガスの導入側と基板の下側との間に高周波パルス電界(21、22a、22b)を印加しつつGaN結晶を成長させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はGaN結晶の気相成長方法に関し、特に、金属Ga蒸気と窒素プラズマとを利用するGaN結晶成長法における成長速度の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年周知のように、青色光や紫外光を射出するための半導体発光ダイオードや半導体レーザなどに利用し得るGaN半導体結晶の需要が高まっている。したがって、GaN結晶を簡便かつ迅速に低コストで製造することが望まれている。
【0003】
GaN結晶の成長方法として、たとえばハイドライド気相成長法、有機金属気相成長法、化学蒸気輸送法などを利用することができる。
【0004】
ここで、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法では、反応室内に導入される原料ガスの反応においてGaN結晶内にその構成成分として取り込まれないHCl、NH3、H2等が反応室内に滞るので、これらのガスを反応室から外部へ排出する必要がある。すなわち、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法では、原料ガスの大半がGaN結晶成長に寄与することなく捨てられることになり、原料収率が悪いという問題がある。また、大量のHCl、NH3、H2等を廃棄するためには大規模の除害設備が必要であり、プロセスのコスト高を招くことになる。
【0005】
他方、閉管内の高温部において気化された原料ガスを低温部に輸送してその低温部で結晶成長させる化学蒸気輸送法によれば、反応管の外部にガスを排出しないので、原料収率は良好である。しかし、外部から原料ガスが供給されない化学蒸気輸送法では、原料ガスの輸送量を増大させることができないので、GaN結晶の成長速度を高めることは望めない。
【0006】
上述のようなハイドライド気相成長法、有機金属気相成長法、化学蒸気輸送法などのそれぞれが含む課題に鑑みて、特許文献1の特開2001−77038号広報は、反応管内で金属Gaの蒸気と窒素プラズマを反応させて基板上にGaN結晶を成長させる気相成長方法を開示している。
【0007】
図3は、反応管内で金属Ga蒸気と窒素プラズマを反応させてGaN結晶を成長させる先行技術の一例を模式的な断面図で図解している。なお、本願の各図において、長さや高さのような寸法関係は、図面の簡略化と明瞭化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。
【0008】
図3において、反応管1の上部には窒素ガス導入管1aが設けられている。反応管1の底部には金属Ga12を蒸発させるために坩堝2が設けられており、この坩堝2の上方において基板11を保持するための基板保持台3が配置されている。この基板保持台3は、円筒部3aと網板3bを含んでいる。基板保持面として働くこの網板3bは、複数の開口3cを含んでいる。これらの反応管1、坩堝2、および基板保持台3は、好ましくは石英にて形成され得る。また、窒素ガス導入管1aは、それらのフランジ部を伴ってたとえばステンレス鋼で形成することができ、反応管1に結合され得る。
【0009】
反応管1の内部は、真空ポンプ(図示せず)によって一旦高真空度に減圧される。高真空度に減圧された反応管1内には、その上部に設けられた窒素ガス導入管1aから、窒素ガス13が所定圧まで導入される。その際に、反応管1の上部に設けられたマイクロ波導入管4を介して、マイクロ波4aが窒素ガス13に印加され、窒素プラズマ13aが生成させられる。
【0010】
坩堝2内に入れられた金属Ga12は、反応管1の外部に設けられた加熱装置(図示せず)によって加熱されて溶融させられる。そのGa融液からのGa蒸気は基板保持面3bの開口3cを通過して、加熱された基板11の上面上に至る。そして、そのGa蒸気が窒素プラズマと反応して、基板11の上面上にGaN結晶が成長し得る。
【0011】
Ga蒸気と窒素プラズマとが反応してGaN結晶の成長が進行すれば、反応管1内の窒素ガスが消費されて反応管1内の圧力が所定圧から低下するので、窒素ガス導入管1aを介して窒素ガス13が追加導入される。すなわち、反応管1内の圧力は真空計(図示せず)によってモニタされており、所定圧力に保たれるように窒素ガス13が補充される。
【0012】
図3に図解されたGaN結晶成長方法では、外部から反応管1内に窒素ガスが導入されるが、実質的にGa蒸気や窒素ガスが反応管1外へ排出される必要がない(ただし、好ましい反応ガス圧を維持するために、少量のGa蒸気や窒素ガスが反応管外へ排出されてもよいことは言うまでもない)。したがって、図3に示されているような気相成長法では、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法の場合のように大規模な排ガス処理設備を必要とせず、GaN結晶成長の際の原料収率も良好になる。また、図3に示されているような気相成長法ではGa融液から大量のGa蒸気を発生させることができ、また消費された窒素ガスは外部から導入することができるので、化学蒸気輸送法に比べてGaN結晶の成長速度を高めることができる。
【0013】
【特許文献1】
特開2001−77038号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、図3に示されているような気相成長法では、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法の場合のように大規模な排ガス処理設備を必要としなくてGaN結晶成長の際の原料収率も良好になり、かつまた化学蒸気輸送法に比べてGaN結晶の成長速度を高めることができる。
【0015】
しかし、図3に示されているような気相成長法は、GaN結晶の成長速度のみに注目すれば、化学蒸気輸送法に比べれば速いがハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法に比べれば遅い。すなわ、金属Ga蒸気と窒素プラズマを利用する気相成長法において、GaN結晶の成長速度を高めることが望まれる。
【0016】
そこで、本発明は、金属Ga蒸気と窒素プラズマを利用する気相成長法においてGaN結晶の成長速度を高めることを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上方から窒素ガスが導入される反応管内において、その反応管の下方に金属Gaを配置し、その金属Gaの上方においてGaN結晶を成長させるための基板を配置し、反応管内に導入された窒素ガスにマイクロ波を印加して生じさせた窒素プラズマと金属Gaから蒸発させられたGa蒸気とを基板上で反応させることによってGaN結晶を成長させる方法において、窒素ガスの導入側と基板の下側との間に高周波パルス電界を印加しつつGaN結晶を成長させることを特徴としている。
【0018】
なお、高周波パルス電界は、10−100kHzの範囲内の周波数を有することが好ましい。また、パルス電界は窒素ガス導入側に比べて基板下側が正の電位になるように印加されることが好ましい。さらに、パルス電界はインパルス電界であることが好ましい。さらにまた、パルス電界を印加するための電極はW電極であることが好ましい。
【0019】
反応管内のガス圧は50−400Paの範囲内の圧力にに設定されるとが好ましく、50−200Paの範囲内の圧力に設定されるとがより好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
まず、本発明者は、図3に示されているようにGa蒸気と窒素プラズマを利用するGaN結晶成長法を実施した場合に、何が結晶成長速度を限定しているかについて検討した。その結果、本発明者は、以下のような問題を見出した。
【0021】
まず、通常の窒素ガス分子は化学的に安定であり、そのままではGa蒸気と直接には反応しない。したがって、GaN結晶の成長速度を高めるためには、Ga蒸気を基板近傍へ迅速に供給するとともに、十分な窒素プラズマを供給することが望まれる。ここで、図3のような結晶成長装置において、Ga蒸気の供給を迅速に行うためには坩堝2の温度を高めに設定すればよいと考えられ、これは比較的容易に行い得ると考えられる。
【0022】
他方、マイクロ波の印加によって生じた窒素プラズマは、基板11側に移動するにしたがって、その一部は安定な窒素分子ガスに戻ってしまうと考えられる。そして、このようにプラズマ状態から安定な分子状態に戻った窒素はGaN結晶の成長に寄与しない。以上のことから、基板11上におけるGa結晶の成長速度は、基板11近傍への窒素プラズマの供給量に依存していると考えられる。
【0023】
ここで、基板近傍に十分な窒素プラズマを供給するためには、窒素ガスに対して印加するマイクロ波のパワーを増大させることが考えられる。なぜならば、マイクロ波のパワーの増大によって多量の窒素プラズマを生成すれば、それが基板側に移動しても多量の窒素プラズマが残存し得ると考えられるからである。しかし、そのパワーをあまり増大させれば、マイクロ波印加位置近傍において反応容器1の温度が上昇しすぎるという問題を生じる。
【0024】
基板11近傍に十分な窒素プラズマを供給するための次の可能性としては、マイクロ波を印加する位置を基板に対して近づけることが考えられる。しかし、Ga蒸気と窒素プラズマとを反応させて基板上にGaN結晶を成長させるためには、その基板を1000℃近くに加熱しなければならない。すなわち、図3の反応管の外周には坩堝2から基板11までにかけて図示されていないヒータ(電気炉)が設けられている。そして、基板11の近傍では、反応管1も当然に約1000℃の温度に加熱されている。したがって、マイクロ波導波管をそのような高温部に近づけることはできない。
【0025】
そこで、本発明者は、反応管1に悪影響を及ぼすほどマイクロ波パワーを高めることなく、かつ基板11近傍の高温によって悪影響を受けるほどにはマイクロ波導波管を基板に近接させることもなく、基板11近傍に十分な窒素プラズマを供給することを可能ならしめる工夫を考えた。
【0026】
図1は、本発明にしたがってGa蒸気と窒素プラズマとを利用してGaN結晶を成長させる方法の一例を模式的な断面図で図解している。図1の結晶成長方法においても、図3の場合と同様に、反応管1の上部には窒素ガス導入管1aが設けられている。反応管1の底部には金属Ga12を蒸発させるために、坩堝台2b上に載置された坩堝2aが設けられている。この坩堝2aと坩堝台2bはいずれもドーナツ状の形状をしており、それらの中央の穴部は電気的配線を通過させることができる。この坩堝2aの上方において、基板11を保持するための基板保持台3が配置されている。この基板保持台3は、円筒部3aと網板3bを含んでいる。基板保持面として働くこの網板3bは、複数の開口3cを含んでいる。これらの反応管1、坩堝2a、坩堝台2b、および基板保持台3は、好ましくは石英にて形成され得る。また、窒素ガス導入管1aは、それらのフランジ部を伴ってたとえばステンレス鋼で形成することができ、反応管1に結合され得る。
【0027】
図1の結晶成長装置は、さらに、高周波パルス電界印加手段を含んでいる。すなわち、高周波パルス発生装置21に接続された第1電極22aと第2電極22bを含んでいる。第1電極22aは基板11の下側に配置され、第2電極22bは窒素ガス導入管1aの開口部近傍に配置されている。減圧空間内の電極22a、22bと大気中の高周波パルス発生装置21と間の電気的接続は、その減圧空間壁部に設けられた開口を封止するハーメッチックシール23を介して行うことができるし、その壁部を介する容量接続によって行われてもよい。
【0028】
電極22a、22bとしては種々の材料を使用し得るが、W電極が好ましい。なぜならば、W電極は高温に耐え得るし、Ga蒸気と反応しにくいからである。他方、MoはWと同様に高温に耐え得るが、Ga蒸気と反応しやすいので、Ga蒸気が存在する雰囲気中で電極として用いるのは好ましくない。また、黒鉛電極はGa蒸気と反応しにくいが、窒素プラズマと反応して腐食されるので好ましくない。
【0029】
反応管1の内部は、真空ポンプ(図示せず)によって、たとえば10−5Paの高真空度まで一旦排気される。その後、反応管1の上部に設けられた窒素ガス導入管1aから、たとえば10Paから1000Paの範囲内で設定された所定圧力の窒素ガス13が反応管1内に導入される。その際に、反応管1の上部に設けられたマイクロ波導入管4を介して、たとえば周波数2.45GHzで出力250−500Wのマイクロ波4aが窒素ガス13に印加され、窒素プラズマ13bが生成させられる。
【0030】
このとき同時に、高周波パルス発生装置21から第1電極22aと第2電極22bとの間に約10−100kHzの範囲内の高周波パルス電界が印加される。そのような高周波パルス電界は、図3と図1中におけるプラズマ領域3aと3bとの比較から分かるように、窒素プラズマ密度の高い領域を基板11側に拡大させるように作用すると期待される。
【0031】
坩堝2a内に入れられた金属Ga12は、反応管1の外部に設けられた加熱装置(図示せず)によってたとえば1100℃に加熱されて溶融させられる。そのGa融液からのGa蒸気は基板保持面3bの開口3cを通過して、例えば970−980℃に加熱された基板11の上面上に至る。そして、そのGa蒸気が窒素プラズマと反応して、基板11の上面上にGaN結晶が成長し得る。なお、基板11としては、たとえば結晶学的(0001)面を主面とするサファイヤ基板またはGaN種結晶基板が好ましく用いられ得る。ただし、基板11はこれらに限定されず、AlN、SiC、GaAs、Siなどの基板をも適宜に選択することができる。
【0032】
Ga蒸気と窒素プラズマとが反応してGaN結晶の成長が進行すれば、反応管1内の窒素ガスが消費されて反応管1内の圧力が所定圧から低下するので、窒素ガス導入管1aを介して窒素ガス13が追加導入される。すなわち、反応管1内の圧力は真空計(図示せず)によってモニタされており、所定圧力に保たれるように窒素ガス13が補充される。この際に、圧力の制御は、窒素ガスの流量制御器におけるPID(比例積分微分)制御によって行われる。
【0033】
すなわち、図1に図解されたGaN結晶成長方法では、外部から反応管1内に窒素ガスが導入されるが、実質的にGa蒸気や窒素ガスが反応管1外へ排出される必要がない(ただし、好ましい反応ガス圧を維持するために、少量のGa蒸気や窒素ガスが反応管外へ排出されてもよいことは言うまでもない)。したがって、図1に示されているようなGa蒸気と窒素プラズマを利用するGaN結晶成長法では、図3の場合と同様に、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法の場合のように大規模な排ガス処理設備を必要としなくてGaN結晶成長の際の原料収率も良好になり、かつまた化学蒸気輸送法に比べてGaN結晶の成長速度を高めることができる。
【0034】
さらに、図1に示されているGaN結晶成長方法では、高周波パルス発生装置21から第1電極22aと第2電極22bとの間に高周波パルス電界が印加されるので、窒素プラズマ密度の高い領域13bが基板11側に大きく拡大させられる。すなわち、図1の場合には、図3の場合に比べて基板11近傍において窒素プラズマが多量に供給され、基板11上のGaN結晶成長の速度が顕著に改善され得る。
【0035】
図2のグラフは、図1に示されているような結晶成長装置において実際にGaN結晶を成長させた結果を示している。このグラフの横軸は、高周波パルス発生装置21から電極22a、22b間に印加された70kHzのインパルス電圧(kV)を示している。このときの電極22a、22b間距離は、約30cmであった。他方、縦軸は反応管1内に注入された窒素ガス流量(sccm)を表している。ここで、インパルス電圧とは、すばやくピーク値に立ち上がり、その後に立ち上がりよりは遅い速さで0Vになる電圧変化を意味する。なお、電界方向は、基板側の第1電極22aが窒素ガス導入側の第2電極22bに対して正電位になるように印加された。また、グラフ中の○印と□印は、それぞれ反応管1内の圧力が100Paと300Paに設定されたことを表している。
【0036】
前述のように、反応管1内においてGaN結晶が成長することによって窒素が消費されれば内圧が低下するので、それを補うように窒素ガスが導入管1aから導入される。すなわち、反応管1内の設定圧力を維持するための窒素ガス流量は、GaN結晶の成長速度に比例する。
【0037】
図2のグラフにおいて、反応管1内の圧力が100Paと300Paのいずれの場合でも、高周波パルス電圧の増大に伴ってGaN結晶の成長速度が増大していることが分かる。より具体的には、高周波パルス電圧が印加されていない0kVの場合に比べて、4kVのパルス電圧印加の場合には窒素消費量が4−5倍に増大している。そして、実際に基板11上に成長したGaN結晶の厚さは、2−3倍程度に増大していた。ここで、窒素消費量の増大に比べて基板11上の結晶成長速度の増大割合が小さいのは、基板11上以外の反応管1の内壁上などに形成されるGaN結晶の量も顕著に増大するからである。
【0038】
他方、高周波パルス電圧が印加されていない0kVの場合には反応管1内の圧力が100Paと300Paのいずれの場合でもほぼ同様の結晶成長速度を示しているが、印加電圧の増大に伴う成長速度の増大割合は低圧の100Paの場合の方が高くなっている。この理由としては、低圧の場合の方がプラズマ中の粒子間の衝突が少なくなって、活性窒素の寿命が伸びてGa蒸気と反応する窒素量が増大し得るからであると考えられる。
【0039】
本発明者によるさらなる検討によれば、反応管1内の圧力が400Pa以下であれば、高周波パルス電圧の印加による結晶成長速度の改善が明らかである。他方、プラズマ中の粒子間の衝突を減らして活性窒素の寿命を伸ばすためには、反応管1内の圧力が200Pa以下であることが好ましい。しかし、反応管1内の圧力が50Pa未満であれば、活性窒素の密度自体が低くなりすぎるので好ましくない。
【0040】
なお、図1におけるように電極22a、22b間に高周波パルス電界を印加した場合に窒素プラズマ領域が基板11側に拡大する理由は必ずしも明らかではないが、基板11側に正電位を印加することによってプラズマ中の電子が基板側に引き寄せられ、それにつられて窒素プラズマ領域13bが基板11側に拡大すると考えられる。また、マイクロ波ほどではないが、高周波電界自体も窒素ガスを活性化するように作用し、窒素プラズマの寿命を伸ばすように作用することから、窒素プラズマ領域13bが基板11側に拡大すると考えられる。
【0041】
なお、図2の例ではインパルス電圧が高周波で印加されたが、その高周波パルス電圧の波形は、矩形波、三角波、サイン波などの他の任意の波形であってもよいことは言うまでもない。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ハイドライド気相成長法、有機金属気相成長法、および化学蒸気輸送法などに比べて優れた利点を有し得るGaN蒸気と窒素プラズマとを利用するGaN結晶成長において、その成長速度を顕著に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるGaN結晶成長方法を模式的に図解する断面図である。
【図2】本発明によるGaN結晶成長方法において、印加される高周波パルス電圧と窒素ガス消費量との関係を示すグラフである。
【図3】先行技術によるGaN結晶成長方法を模式的に図解する断面図である。
【符号の説明】
1 反応管、1a 窒素ガス導入管、2、2a 金属Gaを蒸発させるための坩堝、2b 坩堝台、3 基板保持台、3a基板保持台の円筒部、3b 基板保持台の網板、3c 網板3bに含まれる開口、4 マイクロ波導入管、4a マイクロ波、11 GaN結晶を成長させるための基板、12 金属Ga、13 窒素ガス、13a 窒素プラズマ、21 高周波パルス電圧発生装置、21a、21b 電極。
【発明の属する技術分野】
本発明はGaN結晶の気相成長方法に関し、特に、金属Ga蒸気と窒素プラズマとを利用するGaN結晶成長法における成長速度の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年周知のように、青色光や紫外光を射出するための半導体発光ダイオードや半導体レーザなどに利用し得るGaN半導体結晶の需要が高まっている。したがって、GaN結晶を簡便かつ迅速に低コストで製造することが望まれている。
【0003】
GaN結晶の成長方法として、たとえばハイドライド気相成長法、有機金属気相成長法、化学蒸気輸送法などを利用することができる。
【0004】
ここで、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法では、反応室内に導入される原料ガスの反応においてGaN結晶内にその構成成分として取り込まれないHCl、NH3、H2等が反応室内に滞るので、これらのガスを反応室から外部へ排出する必要がある。すなわち、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法では、原料ガスの大半がGaN結晶成長に寄与することなく捨てられることになり、原料収率が悪いという問題がある。また、大量のHCl、NH3、H2等を廃棄するためには大規模の除害設備が必要であり、プロセスのコスト高を招くことになる。
【0005】
他方、閉管内の高温部において気化された原料ガスを低温部に輸送してその低温部で結晶成長させる化学蒸気輸送法によれば、反応管の外部にガスを排出しないので、原料収率は良好である。しかし、外部から原料ガスが供給されない化学蒸気輸送法では、原料ガスの輸送量を増大させることができないので、GaN結晶の成長速度を高めることは望めない。
【0006】
上述のようなハイドライド気相成長法、有機金属気相成長法、化学蒸気輸送法などのそれぞれが含む課題に鑑みて、特許文献1の特開2001−77038号広報は、反応管内で金属Gaの蒸気と窒素プラズマを反応させて基板上にGaN結晶を成長させる気相成長方法を開示している。
【0007】
図3は、反応管内で金属Ga蒸気と窒素プラズマを反応させてGaN結晶を成長させる先行技術の一例を模式的な断面図で図解している。なお、本願の各図において、長さや高さのような寸法関係は、図面の簡略化と明瞭化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。
【0008】
図3において、反応管1の上部には窒素ガス導入管1aが設けられている。反応管1の底部には金属Ga12を蒸発させるために坩堝2が設けられており、この坩堝2の上方において基板11を保持するための基板保持台3が配置されている。この基板保持台3は、円筒部3aと網板3bを含んでいる。基板保持面として働くこの網板3bは、複数の開口3cを含んでいる。これらの反応管1、坩堝2、および基板保持台3は、好ましくは石英にて形成され得る。また、窒素ガス導入管1aは、それらのフランジ部を伴ってたとえばステンレス鋼で形成することができ、反応管1に結合され得る。
【0009】
反応管1の内部は、真空ポンプ(図示せず)によって一旦高真空度に減圧される。高真空度に減圧された反応管1内には、その上部に設けられた窒素ガス導入管1aから、窒素ガス13が所定圧まで導入される。その際に、反応管1の上部に設けられたマイクロ波導入管4を介して、マイクロ波4aが窒素ガス13に印加され、窒素プラズマ13aが生成させられる。
【0010】
坩堝2内に入れられた金属Ga12は、反応管1の外部に設けられた加熱装置(図示せず)によって加熱されて溶融させられる。そのGa融液からのGa蒸気は基板保持面3bの開口3cを通過して、加熱された基板11の上面上に至る。そして、そのGa蒸気が窒素プラズマと反応して、基板11の上面上にGaN結晶が成長し得る。
【0011】
Ga蒸気と窒素プラズマとが反応してGaN結晶の成長が進行すれば、反応管1内の窒素ガスが消費されて反応管1内の圧力が所定圧から低下するので、窒素ガス導入管1aを介して窒素ガス13が追加導入される。すなわち、反応管1内の圧力は真空計(図示せず)によってモニタされており、所定圧力に保たれるように窒素ガス13が補充される。
【0012】
図3に図解されたGaN結晶成長方法では、外部から反応管1内に窒素ガスが導入されるが、実質的にGa蒸気や窒素ガスが反応管1外へ排出される必要がない(ただし、好ましい反応ガス圧を維持するために、少量のGa蒸気や窒素ガスが反応管外へ排出されてもよいことは言うまでもない)。したがって、図3に示されているような気相成長法では、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法の場合のように大規模な排ガス処理設備を必要とせず、GaN結晶成長の際の原料収率も良好になる。また、図3に示されているような気相成長法ではGa融液から大量のGa蒸気を発生させることができ、また消費された窒素ガスは外部から導入することができるので、化学蒸気輸送法に比べてGaN結晶の成長速度を高めることができる。
【0013】
【特許文献1】
特開2001−77038号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、図3に示されているような気相成長法では、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法の場合のように大規模な排ガス処理設備を必要としなくてGaN結晶成長の際の原料収率も良好になり、かつまた化学蒸気輸送法に比べてGaN結晶の成長速度を高めることができる。
【0015】
しかし、図3に示されているような気相成長法は、GaN結晶の成長速度のみに注目すれば、化学蒸気輸送法に比べれば速いがハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法に比べれば遅い。すなわ、金属Ga蒸気と窒素プラズマを利用する気相成長法において、GaN結晶の成長速度を高めることが望まれる。
【0016】
そこで、本発明は、金属Ga蒸気と窒素プラズマを利用する気相成長法においてGaN結晶の成長速度を高めることを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上方から窒素ガスが導入される反応管内において、その反応管の下方に金属Gaを配置し、その金属Gaの上方においてGaN結晶を成長させるための基板を配置し、反応管内に導入された窒素ガスにマイクロ波を印加して生じさせた窒素プラズマと金属Gaから蒸発させられたGa蒸気とを基板上で反応させることによってGaN結晶を成長させる方法において、窒素ガスの導入側と基板の下側との間に高周波パルス電界を印加しつつGaN結晶を成長させることを特徴としている。
【0018】
なお、高周波パルス電界は、10−100kHzの範囲内の周波数を有することが好ましい。また、パルス電界は窒素ガス導入側に比べて基板下側が正の電位になるように印加されることが好ましい。さらに、パルス電界はインパルス電界であることが好ましい。さらにまた、パルス電界を印加するための電極はW電極であることが好ましい。
【0019】
反応管内のガス圧は50−400Paの範囲内の圧力にに設定されるとが好ましく、50−200Paの範囲内の圧力に設定されるとがより好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
まず、本発明者は、図3に示されているようにGa蒸気と窒素プラズマを利用するGaN結晶成長法を実施した場合に、何が結晶成長速度を限定しているかについて検討した。その結果、本発明者は、以下のような問題を見出した。
【0021】
まず、通常の窒素ガス分子は化学的に安定であり、そのままではGa蒸気と直接には反応しない。したがって、GaN結晶の成長速度を高めるためには、Ga蒸気を基板近傍へ迅速に供給するとともに、十分な窒素プラズマを供給することが望まれる。ここで、図3のような結晶成長装置において、Ga蒸気の供給を迅速に行うためには坩堝2の温度を高めに設定すればよいと考えられ、これは比較的容易に行い得ると考えられる。
【0022】
他方、マイクロ波の印加によって生じた窒素プラズマは、基板11側に移動するにしたがって、その一部は安定な窒素分子ガスに戻ってしまうと考えられる。そして、このようにプラズマ状態から安定な分子状態に戻った窒素はGaN結晶の成長に寄与しない。以上のことから、基板11上におけるGa結晶の成長速度は、基板11近傍への窒素プラズマの供給量に依存していると考えられる。
【0023】
ここで、基板近傍に十分な窒素プラズマを供給するためには、窒素ガスに対して印加するマイクロ波のパワーを増大させることが考えられる。なぜならば、マイクロ波のパワーの増大によって多量の窒素プラズマを生成すれば、それが基板側に移動しても多量の窒素プラズマが残存し得ると考えられるからである。しかし、そのパワーをあまり増大させれば、マイクロ波印加位置近傍において反応容器1の温度が上昇しすぎるという問題を生じる。
【0024】
基板11近傍に十分な窒素プラズマを供給するための次の可能性としては、マイクロ波を印加する位置を基板に対して近づけることが考えられる。しかし、Ga蒸気と窒素プラズマとを反応させて基板上にGaN結晶を成長させるためには、その基板を1000℃近くに加熱しなければならない。すなわち、図3の反応管の外周には坩堝2から基板11までにかけて図示されていないヒータ(電気炉)が設けられている。そして、基板11の近傍では、反応管1も当然に約1000℃の温度に加熱されている。したがって、マイクロ波導波管をそのような高温部に近づけることはできない。
【0025】
そこで、本発明者は、反応管1に悪影響を及ぼすほどマイクロ波パワーを高めることなく、かつ基板11近傍の高温によって悪影響を受けるほどにはマイクロ波導波管を基板に近接させることもなく、基板11近傍に十分な窒素プラズマを供給することを可能ならしめる工夫を考えた。
【0026】
図1は、本発明にしたがってGa蒸気と窒素プラズマとを利用してGaN結晶を成長させる方法の一例を模式的な断面図で図解している。図1の結晶成長方法においても、図3の場合と同様に、反応管1の上部には窒素ガス導入管1aが設けられている。反応管1の底部には金属Ga12を蒸発させるために、坩堝台2b上に載置された坩堝2aが設けられている。この坩堝2aと坩堝台2bはいずれもドーナツ状の形状をしており、それらの中央の穴部は電気的配線を通過させることができる。この坩堝2aの上方において、基板11を保持するための基板保持台3が配置されている。この基板保持台3は、円筒部3aと網板3bを含んでいる。基板保持面として働くこの網板3bは、複数の開口3cを含んでいる。これらの反応管1、坩堝2a、坩堝台2b、および基板保持台3は、好ましくは石英にて形成され得る。また、窒素ガス導入管1aは、それらのフランジ部を伴ってたとえばステンレス鋼で形成することができ、反応管1に結合され得る。
【0027】
図1の結晶成長装置は、さらに、高周波パルス電界印加手段を含んでいる。すなわち、高周波パルス発生装置21に接続された第1電極22aと第2電極22bを含んでいる。第1電極22aは基板11の下側に配置され、第2電極22bは窒素ガス導入管1aの開口部近傍に配置されている。減圧空間内の電極22a、22bと大気中の高周波パルス発生装置21と間の電気的接続は、その減圧空間壁部に設けられた開口を封止するハーメッチックシール23を介して行うことができるし、その壁部を介する容量接続によって行われてもよい。
【0028】
電極22a、22bとしては種々の材料を使用し得るが、W電極が好ましい。なぜならば、W電極は高温に耐え得るし、Ga蒸気と反応しにくいからである。他方、MoはWと同様に高温に耐え得るが、Ga蒸気と反応しやすいので、Ga蒸気が存在する雰囲気中で電極として用いるのは好ましくない。また、黒鉛電極はGa蒸気と反応しにくいが、窒素プラズマと反応して腐食されるので好ましくない。
【0029】
反応管1の内部は、真空ポンプ(図示せず)によって、たとえば10−5Paの高真空度まで一旦排気される。その後、反応管1の上部に設けられた窒素ガス導入管1aから、たとえば10Paから1000Paの範囲内で設定された所定圧力の窒素ガス13が反応管1内に導入される。その際に、反応管1の上部に設けられたマイクロ波導入管4を介して、たとえば周波数2.45GHzで出力250−500Wのマイクロ波4aが窒素ガス13に印加され、窒素プラズマ13bが生成させられる。
【0030】
このとき同時に、高周波パルス発生装置21から第1電極22aと第2電極22bとの間に約10−100kHzの範囲内の高周波パルス電界が印加される。そのような高周波パルス電界は、図3と図1中におけるプラズマ領域3aと3bとの比較から分かるように、窒素プラズマ密度の高い領域を基板11側に拡大させるように作用すると期待される。
【0031】
坩堝2a内に入れられた金属Ga12は、反応管1の外部に設けられた加熱装置(図示せず)によってたとえば1100℃に加熱されて溶融させられる。そのGa融液からのGa蒸気は基板保持面3bの開口3cを通過して、例えば970−980℃に加熱された基板11の上面上に至る。そして、そのGa蒸気が窒素プラズマと反応して、基板11の上面上にGaN結晶が成長し得る。なお、基板11としては、たとえば結晶学的(0001)面を主面とするサファイヤ基板またはGaN種結晶基板が好ましく用いられ得る。ただし、基板11はこれらに限定されず、AlN、SiC、GaAs、Siなどの基板をも適宜に選択することができる。
【0032】
Ga蒸気と窒素プラズマとが反応してGaN結晶の成長が進行すれば、反応管1内の窒素ガスが消費されて反応管1内の圧力が所定圧から低下するので、窒素ガス導入管1aを介して窒素ガス13が追加導入される。すなわち、反応管1内の圧力は真空計(図示せず)によってモニタされており、所定圧力に保たれるように窒素ガス13が補充される。この際に、圧力の制御は、窒素ガスの流量制御器におけるPID(比例積分微分)制御によって行われる。
【0033】
すなわち、図1に図解されたGaN結晶成長方法では、外部から反応管1内に窒素ガスが導入されるが、実質的にGa蒸気や窒素ガスが反応管1外へ排出される必要がない(ただし、好ましい反応ガス圧を維持するために、少量のGa蒸気や窒素ガスが反応管外へ排出されてもよいことは言うまでもない)。したがって、図1に示されているようなGa蒸気と窒素プラズマを利用するGaN結晶成長法では、図3の場合と同様に、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法の場合のように大規模な排ガス処理設備を必要としなくてGaN結晶成長の際の原料収率も良好になり、かつまた化学蒸気輸送法に比べてGaN結晶の成長速度を高めることができる。
【0034】
さらに、図1に示されているGaN結晶成長方法では、高周波パルス発生装置21から第1電極22aと第2電極22bとの間に高周波パルス電界が印加されるので、窒素プラズマ密度の高い領域13bが基板11側に大きく拡大させられる。すなわち、図1の場合には、図3の場合に比べて基板11近傍において窒素プラズマが多量に供給され、基板11上のGaN結晶成長の速度が顕著に改善され得る。
【0035】
図2のグラフは、図1に示されているような結晶成長装置において実際にGaN結晶を成長させた結果を示している。このグラフの横軸は、高周波パルス発生装置21から電極22a、22b間に印加された70kHzのインパルス電圧(kV)を示している。このときの電極22a、22b間距離は、約30cmであった。他方、縦軸は反応管1内に注入された窒素ガス流量(sccm)を表している。ここで、インパルス電圧とは、すばやくピーク値に立ち上がり、その後に立ち上がりよりは遅い速さで0Vになる電圧変化を意味する。なお、電界方向は、基板側の第1電極22aが窒素ガス導入側の第2電極22bに対して正電位になるように印加された。また、グラフ中の○印と□印は、それぞれ反応管1内の圧力が100Paと300Paに設定されたことを表している。
【0036】
前述のように、反応管1内においてGaN結晶が成長することによって窒素が消費されれば内圧が低下するので、それを補うように窒素ガスが導入管1aから導入される。すなわち、反応管1内の設定圧力を維持するための窒素ガス流量は、GaN結晶の成長速度に比例する。
【0037】
図2のグラフにおいて、反応管1内の圧力が100Paと300Paのいずれの場合でも、高周波パルス電圧の増大に伴ってGaN結晶の成長速度が増大していることが分かる。より具体的には、高周波パルス電圧が印加されていない0kVの場合に比べて、4kVのパルス電圧印加の場合には窒素消費量が4−5倍に増大している。そして、実際に基板11上に成長したGaN結晶の厚さは、2−3倍程度に増大していた。ここで、窒素消費量の増大に比べて基板11上の結晶成長速度の増大割合が小さいのは、基板11上以外の反応管1の内壁上などに形成されるGaN結晶の量も顕著に増大するからである。
【0038】
他方、高周波パルス電圧が印加されていない0kVの場合には反応管1内の圧力が100Paと300Paのいずれの場合でもほぼ同様の結晶成長速度を示しているが、印加電圧の増大に伴う成長速度の増大割合は低圧の100Paの場合の方が高くなっている。この理由としては、低圧の場合の方がプラズマ中の粒子間の衝突が少なくなって、活性窒素の寿命が伸びてGa蒸気と反応する窒素量が増大し得るからであると考えられる。
【0039】
本発明者によるさらなる検討によれば、反応管1内の圧力が400Pa以下であれば、高周波パルス電圧の印加による結晶成長速度の改善が明らかである。他方、プラズマ中の粒子間の衝突を減らして活性窒素の寿命を伸ばすためには、反応管1内の圧力が200Pa以下であることが好ましい。しかし、反応管1内の圧力が50Pa未満であれば、活性窒素の密度自体が低くなりすぎるので好ましくない。
【0040】
なお、図1におけるように電極22a、22b間に高周波パルス電界を印加した場合に窒素プラズマ領域が基板11側に拡大する理由は必ずしも明らかではないが、基板11側に正電位を印加することによってプラズマ中の電子が基板側に引き寄せられ、それにつられて窒素プラズマ領域13bが基板11側に拡大すると考えられる。また、マイクロ波ほどではないが、高周波電界自体も窒素ガスを活性化するように作用し、窒素プラズマの寿命を伸ばすように作用することから、窒素プラズマ領域13bが基板11側に拡大すると考えられる。
【0041】
なお、図2の例ではインパルス電圧が高周波で印加されたが、その高周波パルス電圧の波形は、矩形波、三角波、サイン波などの他の任意の波形であってもよいことは言うまでもない。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ハイドライド気相成長法、有機金属気相成長法、および化学蒸気輸送法などに比べて優れた利点を有し得るGaN蒸気と窒素プラズマとを利用するGaN結晶成長において、その成長速度を顕著に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるGaN結晶成長方法を模式的に図解する断面図である。
【図2】本発明によるGaN結晶成長方法において、印加される高周波パルス電圧と窒素ガス消費量との関係を示すグラフである。
【図3】先行技術によるGaN結晶成長方法を模式的に図解する断面図である。
【符号の説明】
1 反応管、1a 窒素ガス導入管、2、2a 金属Gaを蒸発させるための坩堝、2b 坩堝台、3 基板保持台、3a基板保持台の円筒部、3b 基板保持台の網板、3c 網板3bに含まれる開口、4 マイクロ波導入管、4a マイクロ波、11 GaN結晶を成長させるための基板、12 金属Ga、13 窒素ガス、13a 窒素プラズマ、21 高周波パルス電圧発生装置、21a、21b 電極。
Claims (7)
- 上方から窒素ガスが導入される反応管内において、
前記反応管の下方に金属Gaを配置し、
前記金属Gaの上方においてGaN結晶を成長させるための基板を配置し、
前記反応管内に導入された窒素ガスにマイクロ波を印加して生じさせた窒素プラズマと前記金属Gaから蒸発させられたGa蒸気とを前記基板上で反応させることによってGaN結晶を成長させる方法において、
前記窒素ガスの導入側と前記基板の下側との間に高周波パルス電界を印加しつつ前記GaN結晶を成長させることを特徴とするGaN結晶の成長方法。 - 前記高周波パルス電界は10−100kHzの範囲内の周波数を有することを特徴とする請求項1に記載のGaN結晶の成長方法。
- 前記パルス電界は前記窒素ガス導入側に比べて前記基板下側が正電位になるように印加されることを特徴とする請求項1または2に記載のGaN結晶の成長方法。
- 前記パルス電界はインパルス電界であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のGaN結晶の成長方法。
- 前記パルス電界を印加するための電極はW電極であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のGaN結晶の成長方法。
- 前記反応管内のガス圧は50−400Paの範囲内の圧力にに設定されるとを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のGaN結晶の成長方法。
- 前記反応管内のガス圧は50−200Paの範囲内の圧力にに設定されるとを特徴とする請求項6に記載のGaN結晶の成長方法。
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