JP4039286B2 - GaN結晶の成長方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はGaN結晶の気相成長方法に関し、特に、金属Ga蒸気と窒素プラズマとを利用するGaN結晶成長法の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年周知のように、青色光や紫外光を射出するための半導体発光ダイオードや半導体レーザなどに利用し得るGaN半導体結晶の需要が高まっている。したがって、GaN結晶を簡便かつ迅速に低コストで製造することが望まれている。
【0003】
GaN結晶の成長方法として、たとえばハイドライド気相成長法、有機金属気相成長法、化学蒸気輸送法などを利用することができる。
【0004】
ここで、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法では、反応室内に導入される原料ガスの反応においてGaN結晶内にその構成成分として取り込まれないHCl、NH3、H2等が反応室内に滞るので、これらのガスを反応室から外部へ排出する必要がある。すなわち、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法では、原料ガスの大半がGaN結晶成長に寄与することなく捨てられることになり、原料収率が悪いという問題がある。また、大量のHCl、NH3、H2等を廃棄するためには大規模の除害設備が必要であり、プロセスのコスト高を招くことになる。
【0005】
他方、閉管内の高温部において気化された原料ガスを低温部に輸送してその低温部で結晶成長させる化学蒸気輸送法によれば、反応管の外部にガスを排出しないので、原料収率は良好である。しかし、外部から原料ガスが供給されない化学蒸気輸送法では、原料ガスの輸送量を増大させることができないので、GaN結晶の成長速度を高めることは望めない。
【0006】
上述のようなハイドライド気相成長法、有機金属気相成長法、化学蒸気輸送法などのそれぞれが含む課題に鑑みて、特許文献1の特開2001−77038号公報は、反応管内で金属Gaの蒸気と窒素プラズマを直接に反応させて基板上にGaN結晶を成長させる気相成長方法を開示している。
【0007】
図2は、反応管内で金属Ga蒸気と窒素プラズマを直接反応させてGaN結晶を成長させる先行技術の一例を模式的な断面図で図解している。なお、本願の各図において、長さや高さのような寸法関係は、図面の簡略化と明瞭化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。
【0008】
図2において、縦型反応管1の上部には窒素ガス導入管1aが設けられている。反応管1の底部には金属Ga12を蒸発させるために、坩堝2が設けられており、この坩堝2の上方において基板11を保持するための基板保持台3が配置されている。この基板保持台3は、円筒部3aと網板3bを含んでいる。基板保持面として働くこの網板3bは、複数の開口3cを含んでいる。これらの反応管1、坩堝2、および基板保持台3は、好ましくは石英にて形成され得る。また、窒素ガス導入管1aは、それらのフランジ部を伴ってたとえばステンレス鋼で形成することができ、反応管1に結合され得る。
【0009】
反応管1の内部は、真空ポンプ(図示せず)によって一旦高真空度に減圧される。高真空度に減圧された反応管1内には、その上部に設けられた窒素ガス導入管1aから、窒素ガス13が所定圧まで導入される。その際に、反応管1の上部に設けられたマイクロ波導入管4を介して、マイクロ波4aが窒素ガス13に印加され、窒素プラズマ13aが生成させられる。
【0010】
坩堝2内に入れられた金属Ga12は、反応管1の外部に設けられた加熱装置(図示せず)によって加熱されて溶融させられる。そのGa融液からのGa蒸気は基板保持面3bの開口3cを通過して、加熱された基板11の上面上に至る。そして、そのGa蒸気が窒素プラズマと反応して、基板11の上面上にGaN結晶が成長し得る。
【0011】
Ga蒸気と窒素プラズマとが反応してGaN結晶の成長が進行すれば、反応管1内の窒素ガスが消費されて反応管1内の圧力が所定圧から低下するので、窒素ガス導入管1aを介して窒素ガス13が追加導入される。すなわち、反応管1内の圧力は真空計(図示せず)によってモニタされており、所定圧力に保たれるように窒素ガス13が補充される。
【0012】
すなわち、図2に図解されたGaN結晶成長方法では、外部から反応管1内に窒素ガスが導入されるが、実質的にGa蒸気や窒素ガスが反応管1外へ排出される必要がない(ただし、好ましい反応ガス圧を維持するために、少量のGa蒸気や窒素ガスが反応管外へ排出されてもよいことは言うまでもない)。したがって、図2に示されているような気相成長法では、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法の場合のように大規模な排ガス処理設備を必要とせず、GaN結晶成長の際の原料収率も良好になる。また、図2に示されているような気相成長法ではGa融液から大量のGa蒸気を発生させることができ、また消費された窒素ガスは外部から導入することができるので、化学蒸気輸送法に比べてGaN結晶の成長速度を高めることができる。
【0013】
【特許文献1】
特開2001−77038号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、図2に示されているような気相成長法では、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法の場合のように大規模な排ガス処理設備を必要としなくてGaN結晶成長の際の原料収率も良好になり、かつまた化学蒸気輸送法に比べてGaN結晶の成長速度を高めることができる。
【0015】
ところが、図2に示されているような気相成長法を実施した場合、GaN結晶成長の初期においては順調な成長速度が得られるが、約1〜2時間程度の成長時間の後に成長速度が成長初期に比べて約1/3〜1/5程度に低下してしまうことを本発明者が見出した。
【0016】
そこで、本発明は、金属Ga蒸気と窒素プラズマを利用する気相成長法においてGaN結晶成長を継続的に維持し得るように、GaN結晶の成長方法を改善することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明によるGaN結晶の成長方法においては、ガス導入口を有する第1の端部と排気口を有する第2の端部とを含む横型の反応管を準備し、その反応管内に基板を配置するとともに第1端部にGa融液を保持する坩堝を配置し、排気口から排気することによって反応管内を所定圧力に維持し、ガス導入口から導入されるキャリヤガスによってGa融液からのGa蒸気を基板上に輸送し、基板の上方から窒素プラズマを導入し、Ga蒸気と窒素プラズマとを基板上で直接反応させてGaN結晶を成長させることを特徴としている。
【0018】
なお、キャリヤガスは、窒素、水素、および希ガスの少なくともいずれかを含み得る。また、窒素プラズマはマイクロ波による励起され得る。さらに、基板の材質は、サファイヤ、GaN、AlN、SiC、GaAs、およびSiから選択され得る。
【0019】
【発明の実施の形態】
まず、本発明者は、図2に示されているようにGa蒸気と窒素プラズマを利用するGaN結晶成長法を実施した場合に、約1〜2時間程度のGaN結晶成長の後にその成長速度が成長初期に比べて約1/3〜1/5程度まで低下してしまうことの原因について調査した。その結果、本発明者は、以下のような原因を見出した。
【0020】
すなわち、図2に図解されているような先行技術によるGaN結晶成長方法では、窒素プラズマ13aが基板保持面3bの開口3cを通過して金属Ga融液12の表面に到達し得る。そうすれば、窒素プラズマ13aと金属Ga融液12の表面とが直接反応して、その融液表面にGaN被膜を形成し得る。このようなGaN被膜は金属Ga融液12の蒸発を阻害し、基板11上に至るGa蒸気を減少させ、ついにはGaN結晶成長を停止させてしまうのである。
【0021】
そこで、本発明者は、坩堝2内の金属Ga融液12の表面にGaN被膜を形成させることなく、反応管1内でGa蒸気の継続的発生を可能ならしめる工夫を考えた。
【0022】
図1は、本発明にしたがってGa蒸気と窒素プラズマとを利用してGaN結晶を成長させる方法の一例を模式的な断面図で図解している。図1の結晶成長方法においは、横型の反応管1が用いられる。その横型反応管1は、第1の端部において、キャリヤガス21aを導入するためのガス導入口21を有している。また、横型反応管1は、第2の端部において、管内を所定の減圧圧力に維持するためにガスを排出する排気口22を有している。
【0023】
反応管1の内部においては、基板支持台3上に基板11が載置される。反応管1の第1端部のガス導入口21の近傍には、金属Ga12を蒸発させるために坩堝2が設けられている。基板11の上方には、窒素ガス導入菅1aとプラズマ生成室1bが設けられている。プラズマ生成室1bに導入された窒素ガスには、マイクロ波導入管4からマイクロ波4aが印加され、窒素プラズマ13aが生成される。これらの反応管1、坩堝2、および基板保持台3は、好ましくは石英にて形成され得る。また、窒素ガス導入管1aおよびプラズマ生成室1bは、そのフランジ部を伴ってたとえばステンレス鋼で形成することができ、反応管1に結合され得る。
【0024】
反応管1の内部は、排気口22を介して真空ポンプ(図示せず)によって、たとえば10-5Paの高真空度まで一旦排気される。その後、基板11の上方に設けられた窒素ガス導入管1aから、たとえば10Paから1000Paの範囲内で設定された所定圧力の窒素ガス13が反応管1内に導入される。その際に、マイクロ波導入管4を介して、たとえば周波数2.45GHzで出力250−500Wのマイクロ波4aがプラズマ生成室1b内の窒素ガス13に印加され、窒素プラズマ13aが生成させられる。
【0025】
坩堝2内に入れられた金属Ga12は、反応管1の外部に設けられた加熱装置(図示せず)によってたとえば1100℃に加熱されて溶融させられる。そのGa融液からのGa蒸気はガス導入口21から導入されたキャリヤガス21aによって輸送され、例えば970−980℃の温度に加熱された基板11の上面上に至る。そして、そのGa蒸気が窒素プラズマ13aと直接反応して、基板11の上面上にGaN結晶が成長し得る。
【0026】
図1に示されているようなGaN結晶成長方法においては、坩堝2が窒素プラズマ生成室1bから遠く離されている。さらに、キャリヤガス21aは、窒素プラズマ13aが坩堝2の方へ拡散することを防止するように作用する。したがって、窒素プラズマ13aが坩堝2内のGa融液12の表面と反応してGaN被膜を形成することがない。その結果、坩堝2からはGa蒸気が途絶えることなく継続的に供給され、キャリヤガスによって基板11に向けて輸送される。すなわち、図2に示されているような従来の結晶成長法の場合には約1〜2時間でGaN結晶成長速度が顕著に低下して最終的には成長が停止したのに対して、本発明による図1の方法では結晶成長の進行に伴って成長速度が低下するという問題を生じることがない。
【0027】
なお、反応管1内の圧力は真空計(図示せず)によってモニタされており、所定圧力に保たれるように窒素ガス13の導入量および排気口22からの排気量が調整される。キャリヤガス21aは、一定流量で供給されている。この際に、圧力の制御は、窒素ガスの流量制御器におけるPID(比例積分微分)制御によって行われ得る。
【0028】
また、基板11としては、たとえば結晶学的(0001)面を主面とするサファイヤ基板またはGaN種結晶基板が好ましく用いられ得る。ただし、基板11はこれらに限定されず、AlN、SiC、GaAs、Siなどの基板をも適宜に選択することができる。
【0029】
図1に図解されたGaN結晶成長方法では、外部から反応管1内に窒素ガスが導入されるが、Ga蒸気や窒素ガスの多くの部分はGaN結晶に取り込まれるので、反応管1外へ排出される必要がない。ただし、キャリヤガスは結晶を構成する成分ではないので、そのすべてが反応管1外に排出されなければならない。
【0030】
他方、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法の場合は、金属Gaと窒素ガスのような直接的な原料に比べて原料コストが高く、かつまたキャリヤガス以外に原料ガス自体が結晶を構成しない元素成分を含んでいるので、大規模な排ガス処理設備を必要する。さらに、そのような原料ガスに含まれる不要成分は有毒ガスになるものが多い。
【0031】
したがって、図1に図解されたGaN結晶成長方法では、ハイドライド気相成長法や有機金属気相成長法と同等以上の結晶成長速度を達成することができ、かつ原料コストおよび排ガス処理コストを低減させることができる。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ハイドライド気相成長法、有機金属気相成長法、および化学蒸気輸送法などに比べて優れた利点を有し得るGaN蒸気と窒素プラズマとを利用するGaN結晶成長において、その成長を継続的に維持し得るようにGaN結晶の成長方法を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるGaN結晶成長方法を模式的に図解する断面図である。
【図2】 先行技術によるGaN結晶成長方法を模式的に図解する断面図である。
【符号の説明】
1 反応管、1a 窒素ガス導入管、1b 窒素プラズマ生成室、2 金属Gaを蒸発させるための坩堝、3 基板保持台、3a 基板保持台の円筒部、3b基板保持台の網板、3c 網板3bに含まれる開口、4 マイクロ波導入管、4a マイクロ波、11 GaN結晶を成長させるための基板、12 金属Ga、13 窒素ガス、13a 窒素プラズマ、21 ガス導入口、21a キャリヤガス、22 排気口。

Claims (4)

  1. ガス導入口を有する第1の端部と排気口を有する第2の端部とを含む横型の反応管を準備し、
    前記反応管内に基板を配置するとともに前記第1端部にGa融液を保持する坩堝を配置し、
    前記排気口から排気することによって前記反応管内を所定圧力に維持し、
    前記ガス導入口から導入されるキャリヤガスによって前記Ga融液からのGa蒸気を前記基板上に輸送し、
    前記基板の上方から窒素プラズマを導入し、
    前記Ga蒸気と前記窒素プラズマとを基板上で反応させてGaN結晶を成長させることを特徴とするGaN結晶の成長方法。
  2. 前記キャリヤガスは窒素、水素、および希ガスの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載のGaN結晶の成長方法。
  3. 前記窒素プラズマはマイクロ波による励起によって生じさせられることを特徴とする請求項1または2に記載のGaN結晶の成長方法。
  4. 前記基板の材質は、サファイヤ、GaN、AlN、SiC、GaAs、およびSiから選択されたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のGaN結晶の成長方法。
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