JP2004288826A - パッケージ素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】パッケージ素子1の強度に対する信頼性を高める。
【解決手段】基板2の表面2aにパッケージ本体11が接合して成るパッケージ素子1において、基板表面2aには、当該基板表面2aの中央領域を囲繞し素子動作関連パターン3,4a,4bを横断する形態で、接着層6を形成する。パッケージ本体11は、接着層6により、基板表面2aに接着接続する。この接着層6によるパッケージ本体11と基板表面2aとの接着接合によって、パッケージ本体11の内部空間を気密封止空間にすることができる。また、素子動作関連パターン3,4a,4bが形成されていない平坦な基板表面2aの部分(22)にパッケージ本体11を陽極接合する。つまり、基板2とパッケージ本体11を接着接合するだけでなく、接着接合よりも接合強度が強い陽極接合でも基板2とパッケージ本体11を接合する。
【選択図】 図1
【解決手段】基板2の表面2aにパッケージ本体11が接合して成るパッケージ素子1において、基板表面2aには、当該基板表面2aの中央領域を囲繞し素子動作関連パターン3,4a,4bを横断する形態で、接着層6を形成する。パッケージ本体11は、接着層6により、基板表面2aに接着接続する。この接着層6によるパッケージ本体11と基板表面2aとの接着接合によって、パッケージ本体11の内部空間を気密封止空間にすることができる。また、素子動作関連パターン3,4a,4bが形成されていない平坦な基板表面2aの部分(22)にパッケージ本体11を陽極接合する。つまり、基板2とパッケージ本体11を接着接合するだけでなく、接着接合よりも接合強度が強い陽極接合でも基板2とパッケージ本体11を接合する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板表面上にパッケージ本体が接合されて成るパッケージ素子に関するものである。
【0002】
【背景技術】
図5(a)にはパッケージ素子の一構成例が簡略化された断面図により示され、また、図5(b)には図5(a)のa−a部分の断面図が示されている(例えば特許文献1参照)。このパッケージ素子30は、基板(例えばガラス基板)31と、この基板31の表面を部分的に間隔を介して覆うパッケージ本体32とを有して構成されている。この例では、パッケージ本体32は、基板32a(例えばシリコン基板)と基板32b(例えばガラス基板)がフリットガラス等の溶着ガラス材から成る接着材料36により接着され一体化されて構成されている。このパッケージ本体32の基板32aが加工されて基板31の表面を部分的に覆う内部空間33が形成されている。パッケージ本体32は基板31の表面に接着材料(例えば溶着ガラス材)37によって接着されている。
【0003】
ところで、基板31の表面には、当該基板表面よりも突出した凸パターン(例えば配線パターン)34が、内部空間33からパッケージ本体32の外に引き出される態様で形成されている。この例では、パッケージ本体32には、その凸パターン34に対向する部分に、凸パターン34との接触を避けるための段差38が形成されている。この段差38と基板31に囲まれている空間部に接着材料(例えば溶着ガラス材)39が充填形成されて、段差38による隙間が塞がれている。
【0004】
接着材料37,39によって、パッケージ本体32は隙間無く基板31に接着されており、それら基板31とパッケージ本体32によって囲まれている内部空間33は、気密封止された気密封止空間となっている。
【0005】
上記構成を持つパッケージ素子30が例えば加速度センサやジャイロである場合には、気密封止空間33には、例えば加速度や角速度などを検知するセンサ検知部が収容される。また、パッケージ素子30が例えばスイッチ素子である場合には、気密封止空間33には、例えば信号の導通オン・オフを制御するためのスイッチング動作部が収容される。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−310648号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成のパッケージ素子30では、パッケージ本体32は基板31に接着材料37,39により接着接合されている。その接着材料37,39は、温度変動などの影響を受けて劣化し易いため、基板31からパッケージ本体32が剥離してしまうという問題が生じる虞がある。これにより、パッケージ素子30の強度に対する信頼性が低いという問題がある。
【0008】
また、基板31とパッケージ本体32間の間隔H(図5(b)参照)を精度良く設定通りの寸法にしなければならない場合があるが、接着材料37,39を利用して基板31とパッケージ本体32を接着接合した場合には、接着材料37,39の柔軟性のために、基板31とパッケージ本体32間の間隔Hを設定通りの寸法に高精度に制御することは非常に難しいという問題がある。また、接着材料37,39は温度変動によって膨張したり、収縮するので、基板31とパッケージ本体32間の間隔Hが、温度に応じて変動してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、素子動作関連パターンが形成されている部分も含めた基板表面部分にパッケージ本体を接合しなければならない場合であっても、強い接合強度でもって基板表面とパッケージ本体とを接合できると共に内部空間を気密封止することができ、また、基板表面に対するパッケージ本体の高さ制御を容易に行うことができるパッケージ素子を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は次に示す構成をもって前記課題を解決するための手段としている。すなわち、この発明は、基板表面部に素子動作関連パターンが部分的に形成されている基板と、基板表面の中央領域を囲繞し前記素子動作関連パターンを横断する形態で基板表面に形成された接着層の周回パターンと、基板表面上に配置され前記接着層によって基板表面に接着されているパッケージ本体とを有し、接着層により囲まれた内部空間は、基板表面とパッケージ本体との接着によって気密封止された気密封止空間と成しており、前記パッケージ本体は、前記接着層による基板表面との接合に加えて、素子動作関連パターンが形成されていない平坦な基板表面部分に陽極接合されていることを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1(a)には本発明に係るパッケージ素子の一実施形態例が模式的な平面図により示され、図1(b)には図1(a)のA−A部分の模式的な断面図が示され、また、図1(c)には図1(a)のB−B部分の模式的な断面図が示されている。
【0013】
この実施形態例のパッケージ素子1はシリコンから成る基板2を有しており、この基板2の表面2aには、素子動作関連パターンである高周波用配線パターン(導体パターン)3が、基板表面2aの一端側から直線状に中央領域を通って他端側に至る形態でもって形成されている。また、基板表面2aにはその高周波用配線パターン3の両側にそれぞれ間隔を介してグランドパターン(導体パターン)4a,4bが形成されている。つまり、それら高周波用配線パターン3とグランドパターン4a,4bによりコプレーナ線路5が形成されている。この実施形態例では、それら高周波用配線パターン3とグランドパターン4a,4bは、それぞれ、基板表面2aよりも突出した凸パターンとなっている。
【0014】
また、この実施形態例では、基板表面2aには、当該基板表面2aの中央領域を囲繞しコプレーナ線路5を横断する態様でもって接着層6の周回パターンが形成されている。この接着層6はコプレーナ線路5の厚みよりも厚い層と成している。この接着層6を構成する接着材料は、陽極接合工程での加熱の熱(例えば300℃〜400℃程度の熱)に耐え得る材料であれば、特に限定されるものではないが、その例を挙げると、例えば、ポリイミド系接着材料や、エポキシ系接着材料や、フリットガラスなどがある。なお、ポリイミド系接着材料により接着層6を形成した場合には、陽極接合時の熱を硬化の為に利用することができる。また、フリットガラスにより接着層6を形成した場合には、フリットガラスを融点以上に加熱して溶融した後に、冷却させて接着させることになる。
【0015】
この接着層6には、基板表面2aの中央領域を囲繞する側壁部7が接着接合されている。この実施形態例では、側壁部7は単結晶シリコンにより構成されている。
【0016】
また、この実施形態例では、基板表面2aの上方側にはガラス基板8が配置されており、このガラス基板8は、側壁部7に陽極接合して側壁部7および接着層6により囲まれている空間10の上部を塞いでいる。この実施形態例では、側壁部7とガラス基板8の陽極接合体によって、基板表面2aの中央領域を空間10を介して覆うパッケージ本体11が構成されている。このパッケージ本体11と基板表面2aとの接着層6による接着接合によって、パッケージ本体11の内部空間10は気密封止空間と成している。
【0017】
この実施形態例では、パッケージ素子1は高周波信号導通制御用スイッチと成しており、基板表面2aとパッケージ本体11により囲まれている気密封止空間10の内部には、高周波信号(例えば1GHz以上の周波数を持つ信号)の導通オン・オフ制御を行うためのスイッチング動作部が収容されている。
【0018】
つまり、気密封止空間10の内部には、コプレーナ線路5を構成する高周波用配線パターン3およびその両側のグランドパターン4a,4bに共通に対向する可動部13が収容配置されている。この可動部13は、梁14と固定部15を介してガラス基板8に、基板2に対して遠近方向に変位自在な状態で支持されている。この可動部13には、コプレーナ線路5と対向する面にスイッチング用導体部16が、また、ガラス基板8に対向する面に駆動用可動電極17が、それぞれ、形成されている。さらに、ガラス基板8には駆動用固定電極18が駆動用可動電極17に対向させて形成されている。
【0019】
さらにまた、ガラス基板8には、駆動用固定電極18を外部の電圧供給手段19に接続させるためのスルーホール20aおよび配線パターン21(図1(a)参照)が形成されている。また、この実施形態例では、可動部13および梁14および固定部15は単結晶シリコンにより構成されており、可動部13に形成されている駆動用可動電極17を、それら可動部13と梁14と固定部15を介して外部の電圧供給手段19に接続させるためのスルーホール20bがガラス基板8に形成されている。そのようなスルーホール20a,20bや配線パターン21などによって、外部の電圧供給手段19から、互いに対向し合う駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間に電圧を印加することができる。
【0020】
その駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間に電圧が印加されると、それら駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間に静電引力が発生し、この静電引力によって、可動部13がガラス基板8側へ変位する。つまり、可動部13は基板2(コプレーナ線路5)から離れる方向に変位する。この実施形態例では、駆動用可動電極17と駆動用固定電極18が、可動部13をコプレーナ線路5に対して遠近方向に変位させる駆動手段と成している。
【0021】
この実施形態例では、高周波用配線パターン3は、スイッチング用導体部16によって、次に示すようなLC共振回路を介しグランド(グランドパターン4a,4b)に接続されたような状態となる。そのLC共振回路とは、スイッチング用導体部16に基づいたインダクタンス成分と、スイッチング用導体部16と、高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bとの間に形成される容量とを有するものである。
【0022】
この実施形態例では、駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間に静電引力が発生していないとき(非駆動時)に、前記LC共振回路の共振周波数が、高周波用配線パターン3を通電する高周波信号の周波数とほぼ等しくなるように、スイッチング用導体部16と、高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bとの間の間隔(容量)が設定されている。このため、非駆動時には、LC共振回路の共振周波数と、高周波用配線パターン3を通電する高周波信号の周波数とがほぼ等しくなり、これにより、高周波用配線パターン3は、高周波的にグランドパターン4a,4bに接地された状態となる。よって、高周波用配線パターン3の高周波信号の導通はオフ状態となる。
【0023】
また、電圧供給手段19からの電圧供給によって、駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間に静電引力が発生して可動部13がガラス基板8側に変位し、これにより、スイッチング用導体部16と、高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bとの間の間隔が広がると、当該スイッチング用導体部16と、高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bとの間の容量が小さくなって、前記LC共振回路の共振周波数が、高周波用配線パターン3を通電する高周波信号の周波数とは異なるものとなる。これにより、高周波用配線パターン3は、高周波的にグランドパターン4a,4bと非接続状態となり、高周波用配線パターン3の高周波信号の導通はオン状態となる。
【0024】
この実施形態例のパッケージ素子1において最も特徴的なことは、パッケージ本体11が、接着層6による基板表面2aとの接着接合に加えて、コプレーナ線路5が形成されていない平坦な基板表面部分に陽極接合されていることである。
【0025】
すなわち、この実施形態例では、基板表面2aには、コプレーナ線路5の形成領域を避けた平坦な部分に、陽極接合用パターン22が形成されている。ここでは、接着層6により囲繞されている内側に、複数の陽極接合用パターン22(22a,2b)がコプレーナ線路5を間隔を介して挟み込むように配置されている。それら陽極接合用パターン22はガラス(例えばNaイオンやKイオンが含有されたSiO2(例えばパイレックス(登録商標)))により構成され、それら陽極接合用パターン22a,22bの高さ(厚み)は揃えられ、接着層6とほぼ同様な厚みとなっている。
【0026】
また、ガラス基板8には、その陽極接合用パターン22の配置位置に対応する位置に、陽極接合用突起部23が立設されている。この陽極接合用突起部23は単結晶シリコンにより構成されており、ガラス基板8とは別部材のものであり、当該陽極接合用突起部23はガラス基板8に陽極接合されている。このパッケージ本体11の陽極接合用突起部23と、陽極接合用パターン22とが陽極接合されて、パッケージ本体11は基板表面2aに陽極接合されている。
【0027】
この実施形態例では、その陽極接合用パターン22と陽極接合用突起部23によって、基板表面2aとガラス基板8間の間隔が定まる構成となっている。その陽極接合用パターン22は例えばスパッタ等の成膜形成技術を利用して作製され、また、陽極接合用突起部23は例えば単結晶シリコンをエッチング等により加工して作製されるものであり、陽極接合用パターン22および陽極接合用突起部23は両方共に、寸法精度高く形成することができる。また、陽極接合用パターン22は例えばガラスにより、また、陽極接合用突起部23は例えば単結晶シリコンによって、それぞれ、形成されるものであり、それら陽極接合用パターン22および陽極接合用突起部23は柔軟性や弾力性が低い。これら作製手法と材料により、陽極接合用パターン22および陽極接合用突起部23によって、基板表面2aとガラス基板8間の間隔をほぼ設定通りの寸法にすることができる。
【0028】
この実施形態例では、スイッチング用導体部16と、高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bとの間の間隔は、前述したように、高周波用配線パターン3の高周波信号の導通オン・オフ制御に非常に重要である。非駆動時(駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間に静電引力が発生していないとき)のスイッチング用導体部16と、高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bとの間の間隔Dは、基板表面2aとガラス基板8間の間隔によって定まる。この基板表面2aとガラス基板8間の間隔は前記したように、ほぼ設定通りの寸法とすることができることから、前記間隔Dをほぼ設定通りの間隔とすることができる。
【0029】
この実施形態例では、高周波用配線パターン3の高周波信号の導通オン・オフ制御を考慮して、前記間隔Dが、高周波用配線パターン3の高周波信号の導通をオフ状態とするための間隔となるように、基板表面2aとガラス基板8間の間隔(つまり、陽極接合用パターン22および陽極接合用突起部23の高さ)が設定されている。また、基板表面2aに対してガラス基板8が傾かないように、複数の陽極接合用パターン22および陽極接合用突起部23の高さが揃えられている。
【0030】
このように、この実施形態例では、陽極接合用パターン22を介したパッケージ本体11と基板表面2a間の陽極接合によって、前記高周波信号の導通オン・オフ制御に重要な間隔Dを、ほぼ設定通りの寸法とすることができるので、高性能で、損失が少ない高周波信号導通制御用スイッチを提供することができる。
【0031】
また、この実施形態例では、可動部13をガラス基板8に支持固定するための固定部15と、ガラス基板8とは、接着接合ではなく、陽極接合により接合されている。このため、可動部13とガラス基板8との間の間隔、換言すれば、駆動用可動電極17と駆動用固定電極18との間の間隔をほぼ設定通りとすることができる。駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間の間隔は可動部13を変位させるための駆動電圧の大きさに関与しているため、駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間の間隔が製品毎にばらついてしまう場合には、その駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間の間隔に応じて可動部変位用の駆動電圧を変化させなければならず、これに起因して、駆動電圧がばらつくという問題が発生する。これに対して、この実施形態例では、ガラス基板8と固定部15の陽極接合により駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間の間隔をほぼ設定通りにできるので、製品によらずに可動部変位用の駆動電圧をほぼ一定とすることができて、駆動電圧が安定化したパッケージ素子1を提供することができる。
【0032】
さらに、この実施形態例では、基板表面2aとパッケージ本体11とを接合して内部空間10を封止する部分には、基板表面2aとパッケージ本体11間にコプレーナ線路5が挟み込まれるような箇所があるが、その基板表面2aとパッケージ本体11を接着材料を利用して接着接合することにより、基板表面2aとパッケージ本体11間に隙間が生じることを防止しながら、基板表面2aとパッケージ本体11間を接着接合させて内部空間10を良好に気密封止することができる。その上、この実施形態例では、その接着接合に加えて、パッケージ本体11を基板表面2aに陽極接合しているので、基板表面2aとパッケージ本体11間の接合強度を、接着接合だけの場合よりも格段に向上させることができる。
【0033】
よって、この実施形態例において特徴的な構成を備えることによって、強度に対する信頼性が高く、かつ、性能に優れた高周波信号導通制御用スイッチを提供することができるというものである。
【0034】
以下に、この実施形態例のパッケージ素子1の製造工程の一例を説明する。例えば、まず、図2(a)に示されるように、シリコンから成る基板2の表面2aに高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bを形成してコプレーナ線路5を設ける。その高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bは、例えば、厚さ1μmのAuの導体パターンにより形成する。
【0035】
その後、図2(b)に示されるように、基板表面2aに例えばガラス(パイレックス(登録商標))によって陽極接合用パターン22をコプレーナ線路5の形成領域を避けた平坦な部分に形成する。この陽極接合用パターン22の厚みは、スイッチング用導体部16とコプレーナ線路5間の間隔が設定の間隔となるように、陽極接合用突起部23の高さや、コプレーナ線路5の厚み等を考慮して定められるものであり、特に限定されるものではないが、その一例として、例えば陽極接合用パターン22は厚さ約2μmに形成される。また、陽極接合用パターン22を形成するための手法には様々な手法があり、ここでは、何れの形成手法を採用して陽極接合用パターン22を形成してもよいが、その具体例を挙げると、例えば、スパッタ法や、電子線蒸着法などがある。
【0036】
陽極接合用パターン22を形成した後には、図2(c)に示されるように、例えばフォトリソグラフィ工法を利用して、基板表面2aに接着層6を形成する。つまり、基板2の全面に接着材料(例えば紫外線感光型のポリイミド系やエポキシ系の接着剤など)をスピン塗布手法やスプレー塗布手法を利用して形成する。そして、接着層形成用のマスクを利用して、接着層6となる部分だけに紫外線を照射させて当該紫外線が照射された接着材料部分だけを感光させる。その後、基板表面2aから、感光していない接着材料部分を除去する。これにより、基板表面2aの中央領域を囲繞する形態の周回パターンの接着層6が形成される。
【0037】
この実施形態例では、接着層6は、後工程で熱による硬化処理が施される。その熱硬化により接着層6は収縮するので、接着層6の形成工程では、後工程の熱硬化による収縮を考慮して、後工程の熱硬化による収縮後の接着層6が陽極接合用パターン22とほぼ同じ厚みとなるように、陽極接合用パターン22よりも厚い接着層6を形成する。例えば、陽極接合用パターン22の厚みが約2μmである場合に、接着層6がポリイミドにより構成される場合には、接着層6の形成工程では、接着層6の厚みを約2.2μmとする。
【0038】
一方、基板2に陽極接合用パターン22や接着層6を形成する工程とは別に、図2(d)に示すように、ガラス基板8に、スルーホール20a,20bを形成し、また、成膜技術等を利用して駆動用固定電極18や配線パターンを形成する。また、図2(e)に示すように、シリコン基板24において可動部13および梁14となる部分に凹部25をエッチング等によって形成し、その後、そのシリコン基板24にスイッチング用導体部16や駆動用可動電極17を形成する。
【0039】
そして、図2(f)に示すように、ガラス基板8とシリコン基板24を陽極接合する。然る後に、図2(g)に示すように、その陽極接合体のシリコン基板24を例えばエッチング加工して可動部13と梁14と固定部15と陽極接合用突起部23と側壁部7を形作る。これにより、パッケージ本体11が作製されると同時に、パッケージ本体11に支持固定された可動部13等が作製される。
【0040】
その後、図2(h)に示されるように、コプレーナ線路5等が形成された基板2と、パッケージ本体11とを次のように接合する。この接合工程では、まず、パッケージ本体11の側壁部7を、基板2の接着層6に、また、パッケージ本体11の陽極接合用突起部23を、基板2の陽極接合用パターン22に、それぞれ、位置合わせして、パッケージ本体11を基板2に重ね合わせる。そして、それら基板2およびパッケージ本体11を加熱する。この加熱温度は、接着層6の溶融温度や、陽極接合を行うための装置の能力や、陽極接合する部分の面積などを考慮して決定されるものである。その加熱温度の一例として、例えば、約400℃を挙げることができる。
【0041】
そのように加熱している状態で、基板2とパッケージ本体11間に直流電圧を印加する。これにより、基板2の陽極接合用パターン22と、パッケージ本体11の陽極接合用突起部23とが陽極接合する。具体例を挙げると、例えば、基板2とパッケージ本体11間に印加する直流電圧を500Vとし、この直流電圧を30分間印加する。
【0042】
この陽極接合工程での加熱の熱によって、接着層6が柔軟化してパッケージ本体11の側壁部7に接着する。その後、接着層6が熱硬化して、側壁部7は接着層6を介して基板2に接着接合する。なお、加熱温度の一例として、約400℃を例に挙げたが、例えば、400℃程度に加熱してしまうと、接着層6が分解して接着材料としての機能を果たさなくなってしまうような場合には、例えば、加熱温度を350℃程度に下げ、直流電圧を上げたり、直流電圧の印加時間を長くして陽極接合することができる。
【0043】
ところで、パッケージ素子1を1個ずつ上記したような工程を経て作製してもよいが、パッケージ素子1の製造効率を高めるために、例えば、複数の基板2を作り出すことができる親基板の状態のままで、その親基板の予め定めた各パッケージ素子形成領域にそれぞれコプレーナ線路5や陽極接合用パターン22等を同時に形成する。また同様に、複数のガラス基板8やシリコン基板24を作り出すことができる親基板の状態のままで、前記したような製造工程を経て複数のパッケージ本体11や可動部13等を同時に形成する。そして、親基板の状態のままで、基板2とパッケージ本体11の陽極接合を行って、複数のパッケージ素子1が形成された親基板接合体を作製する。その後、その親基板接合体を設定の切断ラインに沿って例えばダイシングにより切断して、各パッケージ素子1毎に分離分割する。このように製造することにより、複数のパッケージ素子1を同時に作製することができるので、製造効率を高めることができる。
【0044】
この実施形態例では、基板2とパッケージ本体11の接合部分に凸パターンであるコプレーナ線路5が形成されているが、そのコプレーナ線路5が形成されている接合部分は、接着層6を利用して接着接合しているので、コプレーナ線路5が形成されている部分であっても基板2とパッケージ本体11を隙間無く接着接合することができる。このため、親基板接合体をダイシングする際に、ダイシングに利用する水や、ダイシングにより発生した切削くずなどがパッケージ素子1の気密封止空間33内に侵入してしまうことを防止できる。
【0045】
また、基板2とパッケージ本体11は接着接合だけでなく、陽極接合によっても接合されているので、ダイシング工程において、ダイシングの衝撃で、基板2とパッケージ本体11が剥離してしまうという問題を回避することができる。
【0046】
なお、この発明はこの実施形態例の形態に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、この実施形態例では、陽極接合用パターン22は直線状であったが、例えば、陽極接合用パターン22は、図3(a)に示されるような円形状や、図3(b)に示すようなL字形状や、図3(c)に示されるようなコ字形状など、様々な形状を採り得り、その形状は特に限定されるものではない。また、その陽極接合用パターン22の形成位置や形成数も特に限定されるものではないが、例えば、可動部3の配置領域を囲むように、あるいは、挟み込むように、複数の陽極接合用パターン22を点在配置することが好ましい。これにより、基板2に対するガラス基板8の傾きを防止することができる。
【0047】
さらに、この実施形態例では、シリコンから成る基板2の表面2aに、ガラスの陽極接合用パターン22を形成し、当該陽極接合用パターン22に、パッケージ本体11のシリコンから成る陽極接合用突起部23を陽極接合させる構成であったが、例えば、基板2がガラス基板により構成されているような場合には、陽極接合用突起部23を、側壁部7よりも突出させて、その陽極接合用突起部23を直接的に基板2に陽極接合させてもよい。
【0048】
さらに、この実施形態例では、基板2の表面2aは平坦面であったが、例えば、図4(a)の斜視図に示されるように、基板2の表面2aに凹部26を形成し、この凹部26の底面にコプレーナ線路5を形成してもよい。このように、基板表面2aに凸パターンが形成されているだけでなく、基板表面2a自体にも凹凸がある構成であっても、その基板表面2aの中央領域を囲繞する形態の接着層6の周回パターンを基板表面2aに形成し、この接着層6を利用して、基板表面2aにパッケージ本体11を接着接合することにより、基板表面2aとパッケージ本体11を隙間無く接合させることができる。なお、もちろん、接着層6の厚みは、基板表面2aの凹凸の高低差よりも厚くする。
【0049】
また、この実施形態例では、コプレーナ線路5の高周波用配線パターン3とグランドパターン4a,4bは基板表面2aよりも突出した凸パターンであったが、図4(b)に示すように、それら高周波用配線パターン3とグランドパターン4a,4bは当該パターンの表面側部分を露出させた態様で基板2の表面部分に埋設されている構成としてもよい。また、図4(c)に示されるように、基板2の表面2aに凹部26を形成し、この凹部26の底面部分に高周波用配線パターン3とグランドパターン4a,4bが埋設されている構成としてもよい。このように、この発明を構成する素子動作関連パターンは基板表面に突出形成された凸パターンだけでなく、基板表面部分に一部を露出させて埋設されたパターンをも含むものである。また、素子動作関連パターンは導体パターンに限定されず、素子の動作に関連する絶縁体パターンをも含むものである。
【0050】
さらに、この実施形態例では、高周波用配線パターン3はコプレーナ線路を構成するものであったが、例えば、マイクロストリップ線路を構成する高周波用配線パターンが形成されていてもよい。
【0051】
さらに、この実施形態例では、パッケージ素子1は、高周波信号導通制御用スイッチであったが、この発明は、高周波信号導通制御用スイッチに限定されるものではなく、例えば、加速度センサやジャイロなどのセンサであるパッケージ素子にも適用することができる。この場合には、基板2とパッケージ本体11により形成される気密封止空間10の内部には、加速度や角速度などを検知するための可動部が収容配置される。
【0052】
さらに、この実施形態例では、基板2とパッケージ本体11の陽極接合部位は、接着層6により囲繞されている空間内に配置されていたが、接着層6よりも外側位置でパッケージ本体11が基板表面2aに陽極接合されている構成としてもよい。
【0053】
さらに、この実施形態例では、基板2とパッケージ本体11により構成される気密封止空間10の内部には、可動部が収容配置されている例を示したが、例えば、可動部を持たない例えば精巧な回路が形成されていてもよい。
【0054】
さらに、この実施形態例では、パッケージ本体11は、ガラス基板8と、シリコンから成る側壁部7との接合体により構成されていたが、例えば、パッケージ本体11は一つの材料により構成されていてもよい。
【0055】
【発明の効果】
この発明によれば、基板表面と、パッケージ本体とは、基板表面の中央領域を囲繞し基板表面部の素子動作関連パターンを横断する形態で基板表面に形成された接着層を介して、接着接合されている。その接着層の柔軟性によって、基板表面の接着接合部分に凹凸が有ったとしても、パッケージ本体を接着層を介して基板表面に隙間無く接合することができて、パッケージ本体内部の空間を気密封止することができる。
【0056】
その上、この発明では、パッケージ本体は、基板表面に接着接合するだけでなく、素子動作関連パターンが形成されていない平坦な基板表面部分に陽極接合されている。陽極接合は、原子・分子間の結合によるものであることから、接合強度が非常に強く、これにより、パッケージ本体を基板表面に接着接合するだけの場合に比べて、パッケージ本体と基板表面間の接合強度を格段に強めることができる。また、陽極接合は、温度変動などの環境からの影響を受け難いので、パッケージ本体と基板表面の接合は、環境の影響に対して強いものとなる。よって、パッケージ本体が基板表面から剥がれるという事態発生を抑制することができて、強度に対する信頼性の高いパッケージ素子を提供することができる。
【0057】
さらに、接着層は温度変動に応じて層の厚み(高さ)が変動してしまうので、パッケージ本体を基板表面に接着層だけで接合している場合には、例えば温度変動などによって、接着層を介したパッケージ本体と基板表面間の間隔が変動してしまうが、この発明では、パッケージ本体は接着接合に加えて陽極接合でもっても基板表面に接合しており、その陽極接合は温度変動の影響を受け難いので、当該陽極接合によって、接着層に起因したパッケージ本体と基板表面間の間隔変動を防止することができる。
【0058】
さらにまた、接着層によりパッケージ本体を基板表面に接着接合させる際に、接着層の柔軟性に起因して、パッケージ本体と基板表面間の間隔を設定通りの寸法とすることは難しいのに対して、陽極接合は、例えばガラスとシリコンというように、柔軟性が低い材料同士が接合するので、そのような材料の柔軟性に起因した問題を回避することができる。
【0059】
このため、例えば、接着層を介したパッケージ本体と基板表面間の予め定められた設定間隔と同じ高さ(厚み)を持つ陽極接合用パターンを、素子動作関連パターンが形成されていない平坦な基板表面部分に形成し、その陽極接合用パターンにパッケージ本体を陽極接合する構成とすることで、接着層を介したパッケージ本体と基板表面間の間隔を設定通りの寸法とすることができる。
【0060】
接着層が、加熱によって接着性が生ずる接着材料により構成されているものにあっては、パッケージ本体を基板表面に陽極接合すると同時に、接着層を介してパッケージ本体と基板表面を接着接合させることが可能となる。このため、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0061】
気密封止空間の内部に可動部が収容配置されているものにあっては、空気のダンピングの影響を無くして可動部の動作を円滑にするために、可動部を減圧した空間内に封止することが好ましい。この発明では、接着層によるパッケージ本体と基板表面間の接着接合によって、パッケージ本体の内部の空間に可動部を収容し当該空間を減圧した状態で気密封止することができる。可動部の動作はパッケージ素子の性能に関与するので、減圧した気密封止空間内に可動部を収容配置して可動部の動作を良好にできることによって、パッケージ素子の性能を高めることができる。
【0062】
パッケージ本体の内部空間と、パッケージ本体の外部との間で、導通損失を抑制しながら高周波信号を導通させるためには、例えばパッケージ本体や基板に形成されるスルーホールを用いることなく、素子動作関連パターンである高周波用配線パターンだけで、パッケージ本体の内部空間と外部間の高周波信号の導通を行うことが好ましい。この発明では、そのような素子動作関連パターンを形成しても、パッケージ本体の内部の空間を気密封止することができ、かつ、強いパッケージ本体と基板表面との接合強度を持たせながら、高周波信号の導通損失を抑制することができるという効果を得ることができる。
【0063】
また、パッケージ素子が高周波信号導通制御用スイッチと成しているものにあっては、高周波用配線パターンおよびその両側のグランドパターンと、それらに共通に対向するスイッチング用導体部との間の間隔が、高周波信号の導通制御にとって、非常に重要である。この発明では、陽極接合によって、その高周波信号の導通制御に大きく関与する間隔を精度高く制御することができる。これにより、高性能で、損失が少ない高周波信号導通制御用スイッチを提供することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るパッケージ素子の一実施形態例を説明するための図である。
【図2】図1に示すパッケージ素子の製造工程例を説明するための図である。
【図3】陽極接合用パターンのその他の形態例を示すモデル図である。
【図4】基板のその他の形態例を示す斜視図である。
【図5】パッケージ素子の一例を簡略化して表した断面図である。
【符号の説明】
1 パッケージ素子
2 基板
3 高周波用配線パターン
4a,4b グランドパターン
6 接着層
10 気密封止空間
11 パッケージ本体
13 可動部
16 スイッチング用導体部
22 陽極接合用パターン
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板表面上にパッケージ本体が接合されて成るパッケージ素子に関するものである。
【0002】
【背景技術】
図5(a)にはパッケージ素子の一構成例が簡略化された断面図により示され、また、図5(b)には図5(a)のa−a部分の断面図が示されている(例えば特許文献1参照)。このパッケージ素子30は、基板(例えばガラス基板)31と、この基板31の表面を部分的に間隔を介して覆うパッケージ本体32とを有して構成されている。この例では、パッケージ本体32は、基板32a(例えばシリコン基板)と基板32b(例えばガラス基板)がフリットガラス等の溶着ガラス材から成る接着材料36により接着され一体化されて構成されている。このパッケージ本体32の基板32aが加工されて基板31の表面を部分的に覆う内部空間33が形成されている。パッケージ本体32は基板31の表面に接着材料(例えば溶着ガラス材)37によって接着されている。
【0003】
ところで、基板31の表面には、当該基板表面よりも突出した凸パターン(例えば配線パターン)34が、内部空間33からパッケージ本体32の外に引き出される態様で形成されている。この例では、パッケージ本体32には、その凸パターン34に対向する部分に、凸パターン34との接触を避けるための段差38が形成されている。この段差38と基板31に囲まれている空間部に接着材料(例えば溶着ガラス材)39が充填形成されて、段差38による隙間が塞がれている。
【0004】
接着材料37,39によって、パッケージ本体32は隙間無く基板31に接着されており、それら基板31とパッケージ本体32によって囲まれている内部空間33は、気密封止された気密封止空間となっている。
【0005】
上記構成を持つパッケージ素子30が例えば加速度センサやジャイロである場合には、気密封止空間33には、例えば加速度や角速度などを検知するセンサ検知部が収容される。また、パッケージ素子30が例えばスイッチ素子である場合には、気密封止空間33には、例えば信号の導通オン・オフを制御するためのスイッチング動作部が収容される。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−310648号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成のパッケージ素子30では、パッケージ本体32は基板31に接着材料37,39により接着接合されている。その接着材料37,39は、温度変動などの影響を受けて劣化し易いため、基板31からパッケージ本体32が剥離してしまうという問題が生じる虞がある。これにより、パッケージ素子30の強度に対する信頼性が低いという問題がある。
【0008】
また、基板31とパッケージ本体32間の間隔H(図5(b)参照)を精度良く設定通りの寸法にしなければならない場合があるが、接着材料37,39を利用して基板31とパッケージ本体32を接着接合した場合には、接着材料37,39の柔軟性のために、基板31とパッケージ本体32間の間隔Hを設定通りの寸法に高精度に制御することは非常に難しいという問題がある。また、接着材料37,39は温度変動によって膨張したり、収縮するので、基板31とパッケージ本体32間の間隔Hが、温度に応じて変動してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、素子動作関連パターンが形成されている部分も含めた基板表面部分にパッケージ本体を接合しなければならない場合であっても、強い接合強度でもって基板表面とパッケージ本体とを接合できると共に内部空間を気密封止することができ、また、基板表面に対するパッケージ本体の高さ制御を容易に行うことができるパッケージ素子を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は次に示す構成をもって前記課題を解決するための手段としている。すなわち、この発明は、基板表面部に素子動作関連パターンが部分的に形成されている基板と、基板表面の中央領域を囲繞し前記素子動作関連パターンを横断する形態で基板表面に形成された接着層の周回パターンと、基板表面上に配置され前記接着層によって基板表面に接着されているパッケージ本体とを有し、接着層により囲まれた内部空間は、基板表面とパッケージ本体との接着によって気密封止された気密封止空間と成しており、前記パッケージ本体は、前記接着層による基板表面との接合に加えて、素子動作関連パターンが形成されていない平坦な基板表面部分に陽極接合されていることを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1(a)には本発明に係るパッケージ素子の一実施形態例が模式的な平面図により示され、図1(b)には図1(a)のA−A部分の模式的な断面図が示され、また、図1(c)には図1(a)のB−B部分の模式的な断面図が示されている。
【0013】
この実施形態例のパッケージ素子1はシリコンから成る基板2を有しており、この基板2の表面2aには、素子動作関連パターンである高周波用配線パターン(導体パターン)3が、基板表面2aの一端側から直線状に中央領域を通って他端側に至る形態でもって形成されている。また、基板表面2aにはその高周波用配線パターン3の両側にそれぞれ間隔を介してグランドパターン(導体パターン)4a,4bが形成されている。つまり、それら高周波用配線パターン3とグランドパターン4a,4bによりコプレーナ線路5が形成されている。この実施形態例では、それら高周波用配線パターン3とグランドパターン4a,4bは、それぞれ、基板表面2aよりも突出した凸パターンとなっている。
【0014】
また、この実施形態例では、基板表面2aには、当該基板表面2aの中央領域を囲繞しコプレーナ線路5を横断する態様でもって接着層6の周回パターンが形成されている。この接着層6はコプレーナ線路5の厚みよりも厚い層と成している。この接着層6を構成する接着材料は、陽極接合工程での加熱の熱(例えば300℃〜400℃程度の熱)に耐え得る材料であれば、特に限定されるものではないが、その例を挙げると、例えば、ポリイミド系接着材料や、エポキシ系接着材料や、フリットガラスなどがある。なお、ポリイミド系接着材料により接着層6を形成した場合には、陽極接合時の熱を硬化の為に利用することができる。また、フリットガラスにより接着層6を形成した場合には、フリットガラスを融点以上に加熱して溶融した後に、冷却させて接着させることになる。
【0015】
この接着層6には、基板表面2aの中央領域を囲繞する側壁部7が接着接合されている。この実施形態例では、側壁部7は単結晶シリコンにより構成されている。
【0016】
また、この実施形態例では、基板表面2aの上方側にはガラス基板8が配置されており、このガラス基板8は、側壁部7に陽極接合して側壁部7および接着層6により囲まれている空間10の上部を塞いでいる。この実施形態例では、側壁部7とガラス基板8の陽極接合体によって、基板表面2aの中央領域を空間10を介して覆うパッケージ本体11が構成されている。このパッケージ本体11と基板表面2aとの接着層6による接着接合によって、パッケージ本体11の内部空間10は気密封止空間と成している。
【0017】
この実施形態例では、パッケージ素子1は高周波信号導通制御用スイッチと成しており、基板表面2aとパッケージ本体11により囲まれている気密封止空間10の内部には、高周波信号(例えば1GHz以上の周波数を持つ信号)の導通オン・オフ制御を行うためのスイッチング動作部が収容されている。
【0018】
つまり、気密封止空間10の内部には、コプレーナ線路5を構成する高周波用配線パターン3およびその両側のグランドパターン4a,4bに共通に対向する可動部13が収容配置されている。この可動部13は、梁14と固定部15を介してガラス基板8に、基板2に対して遠近方向に変位自在な状態で支持されている。この可動部13には、コプレーナ線路5と対向する面にスイッチング用導体部16が、また、ガラス基板8に対向する面に駆動用可動電極17が、それぞれ、形成されている。さらに、ガラス基板8には駆動用固定電極18が駆動用可動電極17に対向させて形成されている。
【0019】
さらにまた、ガラス基板8には、駆動用固定電極18を外部の電圧供給手段19に接続させるためのスルーホール20aおよび配線パターン21(図1(a)参照)が形成されている。また、この実施形態例では、可動部13および梁14および固定部15は単結晶シリコンにより構成されており、可動部13に形成されている駆動用可動電極17を、それら可動部13と梁14と固定部15を介して外部の電圧供給手段19に接続させるためのスルーホール20bがガラス基板8に形成されている。そのようなスルーホール20a,20bや配線パターン21などによって、外部の電圧供給手段19から、互いに対向し合う駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間に電圧を印加することができる。
【0020】
その駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間に電圧が印加されると、それら駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間に静電引力が発生し、この静電引力によって、可動部13がガラス基板8側へ変位する。つまり、可動部13は基板2(コプレーナ線路5)から離れる方向に変位する。この実施形態例では、駆動用可動電極17と駆動用固定電極18が、可動部13をコプレーナ線路5に対して遠近方向に変位させる駆動手段と成している。
【0021】
この実施形態例では、高周波用配線パターン3は、スイッチング用導体部16によって、次に示すようなLC共振回路を介しグランド(グランドパターン4a,4b)に接続されたような状態となる。そのLC共振回路とは、スイッチング用導体部16に基づいたインダクタンス成分と、スイッチング用導体部16と、高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bとの間に形成される容量とを有するものである。
【0022】
この実施形態例では、駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間に静電引力が発生していないとき(非駆動時)に、前記LC共振回路の共振周波数が、高周波用配線パターン3を通電する高周波信号の周波数とほぼ等しくなるように、スイッチング用導体部16と、高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bとの間の間隔(容量)が設定されている。このため、非駆動時には、LC共振回路の共振周波数と、高周波用配線パターン3を通電する高周波信号の周波数とがほぼ等しくなり、これにより、高周波用配線パターン3は、高周波的にグランドパターン4a,4bに接地された状態となる。よって、高周波用配線パターン3の高周波信号の導通はオフ状態となる。
【0023】
また、電圧供給手段19からの電圧供給によって、駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間に静電引力が発生して可動部13がガラス基板8側に変位し、これにより、スイッチング用導体部16と、高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bとの間の間隔が広がると、当該スイッチング用導体部16と、高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bとの間の容量が小さくなって、前記LC共振回路の共振周波数が、高周波用配線パターン3を通電する高周波信号の周波数とは異なるものとなる。これにより、高周波用配線パターン3は、高周波的にグランドパターン4a,4bと非接続状態となり、高周波用配線パターン3の高周波信号の導通はオン状態となる。
【0024】
この実施形態例のパッケージ素子1において最も特徴的なことは、パッケージ本体11が、接着層6による基板表面2aとの接着接合に加えて、コプレーナ線路5が形成されていない平坦な基板表面部分に陽極接合されていることである。
【0025】
すなわち、この実施形態例では、基板表面2aには、コプレーナ線路5の形成領域を避けた平坦な部分に、陽極接合用パターン22が形成されている。ここでは、接着層6により囲繞されている内側に、複数の陽極接合用パターン22(22a,2b)がコプレーナ線路5を間隔を介して挟み込むように配置されている。それら陽極接合用パターン22はガラス(例えばNaイオンやKイオンが含有されたSiO2(例えばパイレックス(登録商標)))により構成され、それら陽極接合用パターン22a,22bの高さ(厚み)は揃えられ、接着層6とほぼ同様な厚みとなっている。
【0026】
また、ガラス基板8には、その陽極接合用パターン22の配置位置に対応する位置に、陽極接合用突起部23が立設されている。この陽極接合用突起部23は単結晶シリコンにより構成されており、ガラス基板8とは別部材のものであり、当該陽極接合用突起部23はガラス基板8に陽極接合されている。このパッケージ本体11の陽極接合用突起部23と、陽極接合用パターン22とが陽極接合されて、パッケージ本体11は基板表面2aに陽極接合されている。
【0027】
この実施形態例では、その陽極接合用パターン22と陽極接合用突起部23によって、基板表面2aとガラス基板8間の間隔が定まる構成となっている。その陽極接合用パターン22は例えばスパッタ等の成膜形成技術を利用して作製され、また、陽極接合用突起部23は例えば単結晶シリコンをエッチング等により加工して作製されるものであり、陽極接合用パターン22および陽極接合用突起部23は両方共に、寸法精度高く形成することができる。また、陽極接合用パターン22は例えばガラスにより、また、陽極接合用突起部23は例えば単結晶シリコンによって、それぞれ、形成されるものであり、それら陽極接合用パターン22および陽極接合用突起部23は柔軟性や弾力性が低い。これら作製手法と材料により、陽極接合用パターン22および陽極接合用突起部23によって、基板表面2aとガラス基板8間の間隔をほぼ設定通りの寸法にすることができる。
【0028】
この実施形態例では、スイッチング用導体部16と、高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bとの間の間隔は、前述したように、高周波用配線パターン3の高周波信号の導通オン・オフ制御に非常に重要である。非駆動時(駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間に静電引力が発生していないとき)のスイッチング用導体部16と、高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bとの間の間隔Dは、基板表面2aとガラス基板8間の間隔によって定まる。この基板表面2aとガラス基板8間の間隔は前記したように、ほぼ設定通りの寸法とすることができることから、前記間隔Dをほぼ設定通りの間隔とすることができる。
【0029】
この実施形態例では、高周波用配線パターン3の高周波信号の導通オン・オフ制御を考慮して、前記間隔Dが、高周波用配線パターン3の高周波信号の導通をオフ状態とするための間隔となるように、基板表面2aとガラス基板8間の間隔(つまり、陽極接合用パターン22および陽極接合用突起部23の高さ)が設定されている。また、基板表面2aに対してガラス基板8が傾かないように、複数の陽極接合用パターン22および陽極接合用突起部23の高さが揃えられている。
【0030】
このように、この実施形態例では、陽極接合用パターン22を介したパッケージ本体11と基板表面2a間の陽極接合によって、前記高周波信号の導通オン・オフ制御に重要な間隔Dを、ほぼ設定通りの寸法とすることができるので、高性能で、損失が少ない高周波信号導通制御用スイッチを提供することができる。
【0031】
また、この実施形態例では、可動部13をガラス基板8に支持固定するための固定部15と、ガラス基板8とは、接着接合ではなく、陽極接合により接合されている。このため、可動部13とガラス基板8との間の間隔、換言すれば、駆動用可動電極17と駆動用固定電極18との間の間隔をほぼ設定通りとすることができる。駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間の間隔は可動部13を変位させるための駆動電圧の大きさに関与しているため、駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間の間隔が製品毎にばらついてしまう場合には、その駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間の間隔に応じて可動部変位用の駆動電圧を変化させなければならず、これに起因して、駆動電圧がばらつくという問題が発生する。これに対して、この実施形態例では、ガラス基板8と固定部15の陽極接合により駆動用可動電極17と駆動用固定電極18間の間隔をほぼ設定通りにできるので、製品によらずに可動部変位用の駆動電圧をほぼ一定とすることができて、駆動電圧が安定化したパッケージ素子1を提供することができる。
【0032】
さらに、この実施形態例では、基板表面2aとパッケージ本体11とを接合して内部空間10を封止する部分には、基板表面2aとパッケージ本体11間にコプレーナ線路5が挟み込まれるような箇所があるが、その基板表面2aとパッケージ本体11を接着材料を利用して接着接合することにより、基板表面2aとパッケージ本体11間に隙間が生じることを防止しながら、基板表面2aとパッケージ本体11間を接着接合させて内部空間10を良好に気密封止することができる。その上、この実施形態例では、その接着接合に加えて、パッケージ本体11を基板表面2aに陽極接合しているので、基板表面2aとパッケージ本体11間の接合強度を、接着接合だけの場合よりも格段に向上させることができる。
【0033】
よって、この実施形態例において特徴的な構成を備えることによって、強度に対する信頼性が高く、かつ、性能に優れた高周波信号導通制御用スイッチを提供することができるというものである。
【0034】
以下に、この実施形態例のパッケージ素子1の製造工程の一例を説明する。例えば、まず、図2(a)に示されるように、シリコンから成る基板2の表面2aに高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bを形成してコプレーナ線路5を設ける。その高周波用配線パターン3およびグランドパターン4a,4bは、例えば、厚さ1μmのAuの導体パターンにより形成する。
【0035】
その後、図2(b)に示されるように、基板表面2aに例えばガラス(パイレックス(登録商標))によって陽極接合用パターン22をコプレーナ線路5の形成領域を避けた平坦な部分に形成する。この陽極接合用パターン22の厚みは、スイッチング用導体部16とコプレーナ線路5間の間隔が設定の間隔となるように、陽極接合用突起部23の高さや、コプレーナ線路5の厚み等を考慮して定められるものであり、特に限定されるものではないが、その一例として、例えば陽極接合用パターン22は厚さ約2μmに形成される。また、陽極接合用パターン22を形成するための手法には様々な手法があり、ここでは、何れの形成手法を採用して陽極接合用パターン22を形成してもよいが、その具体例を挙げると、例えば、スパッタ法や、電子線蒸着法などがある。
【0036】
陽極接合用パターン22を形成した後には、図2(c)に示されるように、例えばフォトリソグラフィ工法を利用して、基板表面2aに接着層6を形成する。つまり、基板2の全面に接着材料(例えば紫外線感光型のポリイミド系やエポキシ系の接着剤など)をスピン塗布手法やスプレー塗布手法を利用して形成する。そして、接着層形成用のマスクを利用して、接着層6となる部分だけに紫外線を照射させて当該紫外線が照射された接着材料部分だけを感光させる。その後、基板表面2aから、感光していない接着材料部分を除去する。これにより、基板表面2aの中央領域を囲繞する形態の周回パターンの接着層6が形成される。
【0037】
この実施形態例では、接着層6は、後工程で熱による硬化処理が施される。その熱硬化により接着層6は収縮するので、接着層6の形成工程では、後工程の熱硬化による収縮を考慮して、後工程の熱硬化による収縮後の接着層6が陽極接合用パターン22とほぼ同じ厚みとなるように、陽極接合用パターン22よりも厚い接着層6を形成する。例えば、陽極接合用パターン22の厚みが約2μmである場合に、接着層6がポリイミドにより構成される場合には、接着層6の形成工程では、接着層6の厚みを約2.2μmとする。
【0038】
一方、基板2に陽極接合用パターン22や接着層6を形成する工程とは別に、図2(d)に示すように、ガラス基板8に、スルーホール20a,20bを形成し、また、成膜技術等を利用して駆動用固定電極18や配線パターンを形成する。また、図2(e)に示すように、シリコン基板24において可動部13および梁14となる部分に凹部25をエッチング等によって形成し、その後、そのシリコン基板24にスイッチング用導体部16や駆動用可動電極17を形成する。
【0039】
そして、図2(f)に示すように、ガラス基板8とシリコン基板24を陽極接合する。然る後に、図2(g)に示すように、その陽極接合体のシリコン基板24を例えばエッチング加工して可動部13と梁14と固定部15と陽極接合用突起部23と側壁部7を形作る。これにより、パッケージ本体11が作製されると同時に、パッケージ本体11に支持固定された可動部13等が作製される。
【0040】
その後、図2(h)に示されるように、コプレーナ線路5等が形成された基板2と、パッケージ本体11とを次のように接合する。この接合工程では、まず、パッケージ本体11の側壁部7を、基板2の接着層6に、また、パッケージ本体11の陽極接合用突起部23を、基板2の陽極接合用パターン22に、それぞれ、位置合わせして、パッケージ本体11を基板2に重ね合わせる。そして、それら基板2およびパッケージ本体11を加熱する。この加熱温度は、接着層6の溶融温度や、陽極接合を行うための装置の能力や、陽極接合する部分の面積などを考慮して決定されるものである。その加熱温度の一例として、例えば、約400℃を挙げることができる。
【0041】
そのように加熱している状態で、基板2とパッケージ本体11間に直流電圧を印加する。これにより、基板2の陽極接合用パターン22と、パッケージ本体11の陽極接合用突起部23とが陽極接合する。具体例を挙げると、例えば、基板2とパッケージ本体11間に印加する直流電圧を500Vとし、この直流電圧を30分間印加する。
【0042】
この陽極接合工程での加熱の熱によって、接着層6が柔軟化してパッケージ本体11の側壁部7に接着する。その後、接着層6が熱硬化して、側壁部7は接着層6を介して基板2に接着接合する。なお、加熱温度の一例として、約400℃を例に挙げたが、例えば、400℃程度に加熱してしまうと、接着層6が分解して接着材料としての機能を果たさなくなってしまうような場合には、例えば、加熱温度を350℃程度に下げ、直流電圧を上げたり、直流電圧の印加時間を長くして陽極接合することができる。
【0043】
ところで、パッケージ素子1を1個ずつ上記したような工程を経て作製してもよいが、パッケージ素子1の製造効率を高めるために、例えば、複数の基板2を作り出すことができる親基板の状態のままで、その親基板の予め定めた各パッケージ素子形成領域にそれぞれコプレーナ線路5や陽極接合用パターン22等を同時に形成する。また同様に、複数のガラス基板8やシリコン基板24を作り出すことができる親基板の状態のままで、前記したような製造工程を経て複数のパッケージ本体11や可動部13等を同時に形成する。そして、親基板の状態のままで、基板2とパッケージ本体11の陽極接合を行って、複数のパッケージ素子1が形成された親基板接合体を作製する。その後、その親基板接合体を設定の切断ラインに沿って例えばダイシングにより切断して、各パッケージ素子1毎に分離分割する。このように製造することにより、複数のパッケージ素子1を同時に作製することができるので、製造効率を高めることができる。
【0044】
この実施形態例では、基板2とパッケージ本体11の接合部分に凸パターンであるコプレーナ線路5が形成されているが、そのコプレーナ線路5が形成されている接合部分は、接着層6を利用して接着接合しているので、コプレーナ線路5が形成されている部分であっても基板2とパッケージ本体11を隙間無く接着接合することができる。このため、親基板接合体をダイシングする際に、ダイシングに利用する水や、ダイシングにより発生した切削くずなどがパッケージ素子1の気密封止空間33内に侵入してしまうことを防止できる。
【0045】
また、基板2とパッケージ本体11は接着接合だけでなく、陽極接合によっても接合されているので、ダイシング工程において、ダイシングの衝撃で、基板2とパッケージ本体11が剥離してしまうという問題を回避することができる。
【0046】
なお、この発明はこの実施形態例の形態に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、この実施形態例では、陽極接合用パターン22は直線状であったが、例えば、陽極接合用パターン22は、図3(a)に示されるような円形状や、図3(b)に示すようなL字形状や、図3(c)に示されるようなコ字形状など、様々な形状を採り得り、その形状は特に限定されるものではない。また、その陽極接合用パターン22の形成位置や形成数も特に限定されるものではないが、例えば、可動部3の配置領域を囲むように、あるいは、挟み込むように、複数の陽極接合用パターン22を点在配置することが好ましい。これにより、基板2に対するガラス基板8の傾きを防止することができる。
【0047】
さらに、この実施形態例では、シリコンから成る基板2の表面2aに、ガラスの陽極接合用パターン22を形成し、当該陽極接合用パターン22に、パッケージ本体11のシリコンから成る陽極接合用突起部23を陽極接合させる構成であったが、例えば、基板2がガラス基板により構成されているような場合には、陽極接合用突起部23を、側壁部7よりも突出させて、その陽極接合用突起部23を直接的に基板2に陽極接合させてもよい。
【0048】
さらに、この実施形態例では、基板2の表面2aは平坦面であったが、例えば、図4(a)の斜視図に示されるように、基板2の表面2aに凹部26を形成し、この凹部26の底面にコプレーナ線路5を形成してもよい。このように、基板表面2aに凸パターンが形成されているだけでなく、基板表面2a自体にも凹凸がある構成であっても、その基板表面2aの中央領域を囲繞する形態の接着層6の周回パターンを基板表面2aに形成し、この接着層6を利用して、基板表面2aにパッケージ本体11を接着接合することにより、基板表面2aとパッケージ本体11を隙間無く接合させることができる。なお、もちろん、接着層6の厚みは、基板表面2aの凹凸の高低差よりも厚くする。
【0049】
また、この実施形態例では、コプレーナ線路5の高周波用配線パターン3とグランドパターン4a,4bは基板表面2aよりも突出した凸パターンであったが、図4(b)に示すように、それら高周波用配線パターン3とグランドパターン4a,4bは当該パターンの表面側部分を露出させた態様で基板2の表面部分に埋設されている構成としてもよい。また、図4(c)に示されるように、基板2の表面2aに凹部26を形成し、この凹部26の底面部分に高周波用配線パターン3とグランドパターン4a,4bが埋設されている構成としてもよい。このように、この発明を構成する素子動作関連パターンは基板表面に突出形成された凸パターンだけでなく、基板表面部分に一部を露出させて埋設されたパターンをも含むものである。また、素子動作関連パターンは導体パターンに限定されず、素子の動作に関連する絶縁体パターンをも含むものである。
【0050】
さらに、この実施形態例では、高周波用配線パターン3はコプレーナ線路を構成するものであったが、例えば、マイクロストリップ線路を構成する高周波用配線パターンが形成されていてもよい。
【0051】
さらに、この実施形態例では、パッケージ素子1は、高周波信号導通制御用スイッチであったが、この発明は、高周波信号導通制御用スイッチに限定されるものではなく、例えば、加速度センサやジャイロなどのセンサであるパッケージ素子にも適用することができる。この場合には、基板2とパッケージ本体11により形成される気密封止空間10の内部には、加速度や角速度などを検知するための可動部が収容配置される。
【0052】
さらに、この実施形態例では、基板2とパッケージ本体11の陽極接合部位は、接着層6により囲繞されている空間内に配置されていたが、接着層6よりも外側位置でパッケージ本体11が基板表面2aに陽極接合されている構成としてもよい。
【0053】
さらに、この実施形態例では、基板2とパッケージ本体11により構成される気密封止空間10の内部には、可動部が収容配置されている例を示したが、例えば、可動部を持たない例えば精巧な回路が形成されていてもよい。
【0054】
さらに、この実施形態例では、パッケージ本体11は、ガラス基板8と、シリコンから成る側壁部7との接合体により構成されていたが、例えば、パッケージ本体11は一つの材料により構成されていてもよい。
【0055】
【発明の効果】
この発明によれば、基板表面と、パッケージ本体とは、基板表面の中央領域を囲繞し基板表面部の素子動作関連パターンを横断する形態で基板表面に形成された接着層を介して、接着接合されている。その接着層の柔軟性によって、基板表面の接着接合部分に凹凸が有ったとしても、パッケージ本体を接着層を介して基板表面に隙間無く接合することができて、パッケージ本体内部の空間を気密封止することができる。
【0056】
その上、この発明では、パッケージ本体は、基板表面に接着接合するだけでなく、素子動作関連パターンが形成されていない平坦な基板表面部分に陽極接合されている。陽極接合は、原子・分子間の結合によるものであることから、接合強度が非常に強く、これにより、パッケージ本体を基板表面に接着接合するだけの場合に比べて、パッケージ本体と基板表面間の接合強度を格段に強めることができる。また、陽極接合は、温度変動などの環境からの影響を受け難いので、パッケージ本体と基板表面の接合は、環境の影響に対して強いものとなる。よって、パッケージ本体が基板表面から剥がれるという事態発生を抑制することができて、強度に対する信頼性の高いパッケージ素子を提供することができる。
【0057】
さらに、接着層は温度変動に応じて層の厚み(高さ)が変動してしまうので、パッケージ本体を基板表面に接着層だけで接合している場合には、例えば温度変動などによって、接着層を介したパッケージ本体と基板表面間の間隔が変動してしまうが、この発明では、パッケージ本体は接着接合に加えて陽極接合でもっても基板表面に接合しており、その陽極接合は温度変動の影響を受け難いので、当該陽極接合によって、接着層に起因したパッケージ本体と基板表面間の間隔変動を防止することができる。
【0058】
さらにまた、接着層によりパッケージ本体を基板表面に接着接合させる際に、接着層の柔軟性に起因して、パッケージ本体と基板表面間の間隔を設定通りの寸法とすることは難しいのに対して、陽極接合は、例えばガラスとシリコンというように、柔軟性が低い材料同士が接合するので、そのような材料の柔軟性に起因した問題を回避することができる。
【0059】
このため、例えば、接着層を介したパッケージ本体と基板表面間の予め定められた設定間隔と同じ高さ(厚み)を持つ陽極接合用パターンを、素子動作関連パターンが形成されていない平坦な基板表面部分に形成し、その陽極接合用パターンにパッケージ本体を陽極接合する構成とすることで、接着層を介したパッケージ本体と基板表面間の間隔を設定通りの寸法とすることができる。
【0060】
接着層が、加熱によって接着性が生ずる接着材料により構成されているものにあっては、パッケージ本体を基板表面に陽極接合すると同時に、接着層を介してパッケージ本体と基板表面を接着接合させることが可能となる。このため、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0061】
気密封止空間の内部に可動部が収容配置されているものにあっては、空気のダンピングの影響を無くして可動部の動作を円滑にするために、可動部を減圧した空間内に封止することが好ましい。この発明では、接着層によるパッケージ本体と基板表面間の接着接合によって、パッケージ本体の内部の空間に可動部を収容し当該空間を減圧した状態で気密封止することができる。可動部の動作はパッケージ素子の性能に関与するので、減圧した気密封止空間内に可動部を収容配置して可動部の動作を良好にできることによって、パッケージ素子の性能を高めることができる。
【0062】
パッケージ本体の内部空間と、パッケージ本体の外部との間で、導通損失を抑制しながら高周波信号を導通させるためには、例えばパッケージ本体や基板に形成されるスルーホールを用いることなく、素子動作関連パターンである高周波用配線パターンだけで、パッケージ本体の内部空間と外部間の高周波信号の導通を行うことが好ましい。この発明では、そのような素子動作関連パターンを形成しても、パッケージ本体の内部の空間を気密封止することができ、かつ、強いパッケージ本体と基板表面との接合強度を持たせながら、高周波信号の導通損失を抑制することができるという効果を得ることができる。
【0063】
また、パッケージ素子が高周波信号導通制御用スイッチと成しているものにあっては、高周波用配線パターンおよびその両側のグランドパターンと、それらに共通に対向するスイッチング用導体部との間の間隔が、高周波信号の導通制御にとって、非常に重要である。この発明では、陽極接合によって、その高周波信号の導通制御に大きく関与する間隔を精度高く制御することができる。これにより、高性能で、損失が少ない高周波信号導通制御用スイッチを提供することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るパッケージ素子の一実施形態例を説明するための図である。
【図2】図1に示すパッケージ素子の製造工程例を説明するための図である。
【図3】陽極接合用パターンのその他の形態例を示すモデル図である。
【図4】基板のその他の形態例を示す斜視図である。
【図5】パッケージ素子の一例を簡略化して表した断面図である。
【符号の説明】
1 パッケージ素子
2 基板
3 高周波用配線パターン
4a,4b グランドパターン
6 接着層
10 気密封止空間
11 パッケージ本体
13 可動部
16 スイッチング用導体部
22 陽極接合用パターン
Claims (7)
- 基板表面部に素子動作関連パターンが部分的に形成されている基板と、基板表面の中央領域を囲繞し前記素子動作関連パターンを横断する形態で基板表面に形成された接着層の周回パターンと、基板表面上に配置され前記接着層によって基板表面に接着されているパッケージ本体とを有し、接着層により囲まれた内部空間は、基板表面とパッケージ本体との接着によって気密封止された気密封止空間と成しており、前記パッケージ本体は、前記接着層による基板表面との接合に加えて、素子動作関連パターンが形成されていない平坦な基板表面部分に陽極接合されていることを特徴とするパッケージ素子。
- 素子動作関連パターンが形成されていない平坦な基板表面部分には陽極接合用パターンが形成されており、パッケージ本体はその陽極接合用パターンに陽極接合して基板に接合されていることを特徴とする請求項1記載のパッケージ素子。
- 接着層は、加熱によって接着する接着材料により形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のパッケージ素子。
- 気密封止空間の内部には、可動部が収容配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のパッケージ素子。
- 素子動作関連パターンは、導体パターンであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載のパッケージ素子。
- 素子動作関連パターンは、高周波信号を導通させるための高周波用配線パターンであることを特徴とする請求項5記載のパッケージ素子。
- 基板表面には、素子動作関連パターンとして、高周波信号を導通させるための高周波用配線パターンが形成されると共に、その高周波用配線パターンの両側には間隔を介してグランドパターンが形成されてコプレーナ線路が構成されており、そのコプレーナ線路を構成する高周波用配線パターンとその両側のグランドパターンに共通に対向するスイッチング用導体部が気密封止空間内の可動部に設けられ、また、気密封止空間には、そのスイッチング用導体部を高周波用配線パターンに対して遠近方向に変位させるための駆動手段が形成されており、その駆動手段によるスイッチング用導体部の変位によって、高周波用配線パターンがスイッチング用導体部を介して高周波的にグランドパターンに接続することにより高周波用配線パターンの高周波信号の導通をオフし、高周波用配線パターンとグランドパターン間を高周波的に非接続状態とすることにより高周波用配線パターンの高周波信号の導通をオンさせる構成と成し、パッケージ素子は、高周波信号導通制御用スイッチと成していることを特徴とする請求項4記載のパッケージ素子。
Priority Applications (1)
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JP2003078249A JP2004288826A (ja) | 2003-03-20 | 2003-03-20 | パッケージ素子 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN104682937A (zh) * | 2013-12-03 | 2015-06-03 | 株式会社东芝 | 半导体装置 |
CN110349931A (zh) * | 2018-04-08 | 2019-10-18 | 华为技术有限公司 | 封装结构、电子装置及封装方法 |
US11201098B2 (en) | 2017-01-23 | 2021-12-14 | Siemens Aktiengesellschaft | Semiconductor module having a base plate with a concave curvature |
-
2003
- 2003-03-20 JP JP2003078249A patent/JP2004288826A/ja active Pending
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