JP2004286412A - 空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置 - Google Patents

空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置 Download PDF

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Yoshihiro Ishibashi
義弘 石橋
Tetsuji Okada
哲治 岡田
Kunihiro Morishita
国博 森下
Yasuhide Hayamaru
靖英 早丸
Akinori Toyoda
明徳 豊田
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Abstract

【課題】ブラインの戻水温度で床温度を検出する場合、床暖房部の床表面温度の温度変化は、循環するブラインの温度変化よりも遅いため、床暖房面積が小さくなったり、流路回路数が増えた場合は、ブラインの温度変化が早くなることで未だ床が暖まっていないのに暖まったと誤認して圧縮機回転数が下がり、床温設定温度まで床温が到達しなかったり、到達時間が遅くなるという問題がある。
【解決手段】冷媒回路を有し、この冷媒回路に床暖房用のブラインと冷媒とを熱交換させる温水熱交換部、循環ポンプ、タンクおよび床暖房パネルからなる温水回路を備えた空気調和装置において、室温設定温度と実際の室温との温度差または送りと戻りのブライン平均温度による設定ブライン平均温度と実際のブライン平均温度との温度差とこの温度差の時間変化量の関係に応じて圧縮機回転数を制御する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ヒートポンプにより加熱された温水が床暖房パネルを循環する空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のヒートポンプ式温水床暖房装置としては、圧縮機、凝縮器としての温水熱交換器、電動膨張弁および蒸発器が環状に接続された冷媒回路と、上記温水熱交換器を介して循環ポンプにより温水が循環する床暖房パネルとを備えている。この冷媒回路によるヒートポンプ運転により温水熱交換器で温水を加熱し、その加熱された温水は温水熱交換器から循環ポンプにより床暖房パネルへ循環する。
【0003】
そして、上記床暖房パネルの温水循環流路下流側にこの床暖房パネルから流出する放熱後の温水の温度を検出する温度センサを配置し、入力装置(リモートコントローラ)と上記温度センサによる戻り水温の検出信号を受けて、圧縮機を駆動するインバータの出力と電動膨張弁などを制御し、温度センサにより検出された戻り水温度が目標温度になるようにインバータの出力を制御している。すなわち、目標温度よりも所定温度だけ高いサーモオフレベルと所定温度だけ低いサーモオンレベルを設定し、温度センサにより検出された戻り水温度がサーモオンレベルより低い時に圧縮機を駆動して運転する一方、戻り水温度がサーモオフレベルより高い時に圧縮機を停止させている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
また、別の従来のヒートポンプ式温水暖房装置では、外気温度検出用サーミスタと、温水配管を循環する温水の温水温度検出用サーミスタを配設し、外気温度が高い場合は温水温度を低く、外気温度が低い場合は温水温度が高くなるように室外機の圧縮機を制御している。(例えば、特許文献2参照)
【0005】
また、さらに別の従来の温水床暖房システムでは、床暖房パネルに温水を供給する温水加熱装置において、温水を往来させる循環ポンプと冷めた温水を温める加熱機とその前後に各々配設して温水の温度を測定する温度検知部を備え、床暖房パネルに用いられる床材の熱貫流率と2ヶ所の温度検知部データの平均温度とから床温を算出して、加熱機のON−OFFと強弱といった運転を制御している。(例えば、特許文献3参照)
【0006】
【特許文献1】
特開2000−46417号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】
特開2001−124349号公報(第2頁、第1図)
【特許文献3】
特開平9−14678号公報(第3−4頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように構成された従来のヒートポンプ式温水床暖房装置においては、床暖房を設置した部屋で、床暖房パネルの全体床暖房時と部分床暖房時とでは、図6(1)の戻り水温度における起動時からの経時変化に示すように、全体床暖房時(床暖房面積が大きい場合)に比べて、部分床暖房時(床暖房面積が小さい場合)は熱容量も放熱量も小さいため、戻り水温度の上昇は早く短時間で目標の戻り水温度に到達する。このため、図6(2)の圧縮機回転数における起動時からの経時変化に示すように、圧縮機回転数は全体床暖房時よりも部分床暖房時の方が早く圧縮機回転数の降下が始まり、全体床暖房時よりも低い回転数で安定することになる。
【0008】
一般には床暖房面積の増減に応じて床暖房パネルの温水回路長さは増減するが、床暖房パネルに必要とする暖房能力と床暖房パネル内を流れるブラインの流量が対応できていないために、熱容量も放熱能力も小さくなる床暖房パネルの面積が小さくなるほど送水と戻水とのブライン温度差が小さくなり、そのため戻水温度が上がり、図6(3)の床温度における起動時からの経時変化に示すように、未だ床温度が必要な温度まで上がっていないのに圧縮機回転数を下げていってしまう。そのため、床暖房パネルの面積が小さい部分床暖房時の方が全体床暖房の時よりも床暖房パネルの表面温度が上がるのに時間がかからないはずなのに、逆に時間がかかってしまうという問題があった。
【0009】
また、部分床暖房時は圧縮機動作が安定する回転数レベルも能力減にともなって低回転で安定することによる送水温度の低下により、同じ設定であっても床温度が下がってしまうため、据え付け時に個々の床暖房システムに合わせて微調整しなければならず、非常に据付けが面倒であるといった問題もあった。
【0010】
この発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、接続される床暖房パネルの面積が小さくなっても、床暖房の立ち上げ時間が遅くなることなく、また床温度が下がることがない空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置は、少なくとも回転数可変の圧縮機、温水熱交換器、膨張手段および室外熱交換器が順次環状に接続された冷媒回路と、前記温水熱交換器を介して循環ポンプによりブライン温水が循環する床暖房パネルと、前記温水熱交換器と前記床暖房パネルの間に設けられ前記床暖房パネルに流入するブライン温水の温度を検出する送水温度センサと、前記床暖房パネルと前記循環ポンプの間に設けられ前記床暖房パネルから流出する戻り水の温度を検出する戻水温度センサと、を備え、前記送水温度センサにより検出した送水温度と前記戻水温度センサにより検出した戻り水温度の平均とするブライン側平均温度における目標設定温度との温度差とこの温度差の変化時間量との関係に応じて圧縮機の回転数を制御するものである。
【0012】
また、回転数可変の圧縮機、温水熱交換器、室内熱交換器、膨張手段および室外熱交換器が順次環状に接続された冷媒回路と、前記温水熱交換器を介して循環ポンプによりブライン温水が循環する床暖房パネルと、前記温水熱交換器と前記床暖房パネルの間に設けられ前記床暖房パネルに流入するブライン温水の温度を検出する送水温度センサと、前記床暖房パネルと前記循環ポンプの間に設けられ前記床暖房パネルから流出する戻り水の温度を検出する戻水温度センサと、前記室内熱交換器を通過して熱交換される室内空気の流入温度を検出する室内温度センサと、を備え、前記送水温度センサにより検出した送水温度と前記戻水温度センサにより検出した戻り水温度の平均温度における目標設定温度との温度差であるブライン側平均温度差と前記室内温度センサにより検出される温度と目標設定室温との温度差である室温側温度差とのどちらか大きい方の温度差と、この温度差の変化時間量との関係に応じて圧縮機の回転数を制御するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置の実施例を図により詳細に説明する。
【0014】
図1はこの発明の実施の形態1における空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置を示す冷媒回路・水回路図である。図において、室外ユニットに備え付けられた、1は圧縮機、2は上記圧縮機1の吐出側に一端が接続され冷房回路と暖房回路を切換えるための四路弁、3は上記四路弁2の他端に一端が接続された室外熱交換器、4は上記室外熱交換器3の他端に一端が接続された絞り装置としての電動膨張弁、5は上記電動膨張弁4の他端に接続されて室内ユニットに備え付けられた室内熱交換器、上記室内熱交換器5の他端は3つの回路に分かれて接続されており、7は冷房回路運転時に冷媒が流れるように上記室内熱交換器5の他端に一端が接続された逆止弁、10は暖房回路時に二段凝縮回路とするために上記室内熱交換器5の他端に一端が接続された絞り装置、9は暖房回路時に通常の一段凝縮回路と二段凝縮回路とを切換えるために上記室内熱交換器5の他端に一端が接続された電磁弁、11は上記絞り装置10と電磁弁9の他端が接続された温水熱交換器、6は上記逆止弁7と温水熱交換器11の他端に四路弁2を介して一端が接続され、他端が圧縮機1の吸入側に接続されたアキュムレータであり、これらから冷媒回路を形成している。
【0015】
上記室外熱交換器3の近傍には室外ファン21が、上記室内熱交換器5の近傍には室内ファン22および熱交換された空気の吹出し方向をかえるフラップ24が配設されている。また、上記冷媒回路には冷媒回路の運転状態を監視するために、温水熱交換器11の冷媒回路出口側配管に設けられた温水熱交換器温度センサ8、室内熱交換器5の配管に設けられた室内熱交換器温度センサ25、室外熱交換器3の配管に設けられた室外熱交換器温度センサ27を備えている。
【0016】
また、12は温水熱交換器11の水回路に一端が接続され室内の床面に配設されて床面から室内空間を加熱する床暖房パネル、30は上記床暖房パネル12の他端に一端が接続され、ブラインの膨張収縮を吸収するためのタンク、13はタンク30の他端に一端が接続され、他端が温水熱交換器11の他端に接続されてタンク30内のブラインを温水熱交換器11へ搬送する循環ポンプであり、これらよりブラインが循環する水回路を形成している。
【0017】
上記空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置の水回路には、タンク30に配設された水位センサ19、床暖房パネル12を通過して熱交換したブラインの戻水温度を検知するために床暖房パネル12とタンク30を接続する配管に設けられた戻水温度センサ20、温水熱交換器11にて熱交換されて床暖房パネル12へ送り込まれるブラインの送水温度を検知するために温水熱交換器11と床暖房パネル12を直接接続する配管に設けられた送水温度センサ29とを備えている。
【0018】
また、上記空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置の制御部は、利用者が温度・湿度・風量などの所望する空調条件を入力するワイヤレスリモートコントローラ等の入力装置16、室内ファン22やフラップ24の駆動制御や室内機の吸込み空気が流通する部分に設けられた室内温度センサ23と室内熱交換器温度センサ25により検知される各データの演算処理を制御するとともに他のユニットへの制御信号を送信する室内ユニット用制御装置17、循環ポンプ13や電磁弁9の制御を行なうとともに他のユニットへの制御信号を伝送する床暖房制御装置18、圧縮機駆動用のインバータ15を含み、圧縮機1や四路弁2や電動膨張弁4の制御をするとともに他のユニットへの制御信号を伝送する室外ユニット用制御装置14から成る。
【0019】
次に、上記構成の空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房における動作を説明する。
まず、入力装置16からの運転内容(暖房、冷房、床暖房、暖房+床暖房、等)や設定温度等の空調条件の信号を室内ユニット用制御装置17が受信すると、室内ユニット用制御装置17から床暖房制御装置18へその制御信号が送信され、床暖房制御装置18にて運転内容に応じて制御信号が置換された後、床暖房制御装置18から室外ユニット用制御装置14へその運転内容に応じて加工された置換制御信号が送られ運転が開始される。
【0020】
冷媒回路の動作では、四路弁2が暖房回路の位置(図1における実線表示位置)に固定され、圧縮機1が運転する。圧縮機1から吐出された冷媒は逆止弁7が配設された室内熱交換器5側へ接続した冷媒配管を通れないので、最初に温水熱交換器11に流入し凝縮して放熱する。次に電磁弁9が閉じている時は、絞り装置10を通って減圧された後、室内熱交換器5で温水熱交換器11よりも低い凝縮温度で凝縮して放熱し、電磁弁9が開いている時は、電磁弁9が配設されているバイパス配管を通り、室内熱交換器5にて温水熱交換器11と同じ温度で凝縮して放熱する。そして、温水熱交換器11と直列に接続された室内熱交換器5を通過した冷媒は、電動膨張弁4で減圧された後、室外熱交換器3で蒸発して外気から吸熱し、アキュムレータ6を介して圧縮機1の吸入側に戻り、この循環で暖房と床暖房との併用運転の冷凍サイクルを構成する。
【0021】
一方、水回路の動作は、循環ポンプ13が運転すると、タンク30に貯留しているブラインが温水熱交換器11に送り込まれ、冷媒とブラインとの間で熱交換させる温水熱交換器11内で冷媒の凝縮熱で加熱された後、床暖房パネル12へ送り込まれていく。そして、床暖房パネル12に送られた加熱ブラインは床暖房パネル12内の回路を流通しながら床面を加熱することで室内空間に放熱した後、再びタンク30に戻って循環が繰り返される。
【0022】
また、床暖房を行なわない暖房単独運転の場合は、床暖房用の水回路は使用しないので循環ポンプ13は駆動せず停止した状態で、冷媒回路だけの運転となる。四路弁2は暖房回路の位置に固定されるとともに電磁弁9が開状態となり、圧縮機1から吐出した冷媒は温水熱交換器11を素通りして、電磁弁9が配設されているバイパス流路を通って室内熱交換器5へ流入する。この室内熱交換器5で高温高圧の冷媒は室内空気と熱交換し凝縮する。その後、室内熱交換器5から室外側の電動膨張弁4で減圧されて室外熱交換器3で蒸発してアキュムレータ6を介して圧縮機1へ再び戻り循環を繰り返し、暖房単独運転を行なう。
【0023】
また、冷房単独運転の場合は、温水床暖房は使用せず水回路の循環ポンプ13は停止した状態で、冷媒回路だけの運転となる。四路弁2は切換えられ冷房回路の位置(図1の点線表示位置)に固定されるとともに電磁弁9は閉止状態となる。圧縮機1から吐出した高温高圧の冷媒は上記四路弁2により室外熱交換器3へ流入し、室外空気と熱交換して凝縮した後、電動膨張弁4で減圧されて低温低圧の冷媒となり室内熱交換器5で蒸発して室内空気を冷やして室内熱交換器5から出て行く。そして流出した冷媒は、室内機側から室外機側へのみ流通可能とする逆止弁7(冷房回路時のバイパス流路)を通過することにより、床暖房用の温水熱交換器11へは流通することなく、四路弁2を介してアキュムレータ6から圧縮機1へ戻り、冷房運転の循環を繰り返すことにより冷房単独運転を行なう。
【0024】
そして、上述の冷媒回路における要求負荷に応じた圧縮機回転数の制御は、ワイヤレスリモートコントローラ等の入力装置16により使用者が希望する室内空調温度を入力して定められた室温の目標設定温度と室内温度センサ23により検出された実際の室温との室温側温度差(dT1)に加えて、床暖房用の水回路に設けたブラインの送水温度センサ20および戻水温度センサ29により検出される送水温度と戻水温度との平均温度を用いて、予め設定された目標設定ブライン平均温度と上述の温度センサにより検出された実際のブライン平均温度との差であるブライン側平均温度差(dT2)を用いた関係によって、高温の冷媒を得るために圧縮機の回転数を上昇させ、逆に低温の冷媒とするためにその回転数を下降させるといった圧縮機回転数の制御を行なう。
【0025】
また、運転モードによりその制御が異なり、暖房と床暖房の併用運転時は、室温側温度差(dT1)とブライン側平均温度差(dT2)のどちらか大きい方の温度差およびその変化時間量(変化における単位温度当たりの時間量)に応じて圧縮機回転数の増減制御を行ない、一方、空調機のみの冷房単独または暖房単独運転時は室温側温度差(dT1)だけを用い、床暖房のみの運転ではブライン側平均温度差(dT2)だけを用いて圧縮機制御を行なう。
【0026】
再起動時を除くと、暖房と床暖房の併用運転開始時での立ち上げ運転では、熱容量の大きな床暖房側のブライン温度変化は室内空気温度と比べると変化が非常に遅いため、立ち上げ初期ではほとんど、室温側温度差(dT1)よりもブライン側平均温度差(dT2)によって圧縮機回転数を制御している場合に近くなる。
【0027】
図2は、立ち上げ運転時におけるブラインの送水温度と戻水温度とこれらの平均温度および圧縮機回転数の経時変化を示す立上特性図である。図において、縦軸に温度および回転数、横軸に時間をとり、実線が圧縮機回転数、上側一点鎖線がブラインの送水温度、下側一点鎖線がブラインの戻水温度、そして点線がブライン側の送水温度と戻水温度との平均温度を示している。この図2において、圧縮機回転数は、ブラインの送水と戻水の平均温度における目標とする設定温度(Tm)より所定温度(例えば、約6deg)だけ低くした設定温度下限値(Tma)にそのブライン側平均温度が到達するまでは高出力の最大回転数で圧縮機の運転を続け(図2中のA点)、到達した後はブライン側平均温度の上昇に伴い、図3の圧縮機回転数制御マップ図に示した室温又はブライン平均温度差と変化時間に対応した増減量に従って圧縮機駆動用の運転周波数を変えながら、段階的に圧縮機回転数を下げて目標とするブライン側平均温度の設定温度(Tm)に近づき(図2中のB点)、床暖房パネル12の熱負荷と温水熱交換器11における熱交換量とがバランスして圧縮機回転数ほぼ一定となった安定状態となる。
【0028】
ここで、図3の圧縮機回転数制御マップ図について説明する。室温側温度差(dT1)またはブライン側平均温度差(dT2)のどちらか大きい方の温度差ΔTが、T1,T2,T3の3レベルの温度値から、ΔT≦T1、T1<ΔT<T2、T2≦ΔT<T3、T3≦ΔTの4つの領域に分割したどのエリアに属するか、そしてさらに、その温度差ΔTの変化時間量を所定基準値dtからの+−大小より、ΔT≦−dt、−dt<ΔT<+dt、+dt≦ΔTの3つの領域に分割した該当する領域を求め、そこに指定された制御数値(例えば、+5%では回転数5%上昇のこと)を用いて圧縮機の回転数を制御するものである。従って、所定時間内の温度差変化が、プラス大の場合は圧縮機回転数を大幅に下降させ、マイナス大の場合は圧縮機回転数を大幅に上昇、プラス小の場合は僅かに下降、マイナス小の場合は僅かに上昇させるといった方向に圧縮機回転数を制御するものである。また、T1<ΔT<T2かつ−dt<ΔT<+dtの領域に存在している時は、圧縮機回転数を増減することなく現状維持として継続運転を行なう。
【0029】
従来の温水床暖房装置の戻水温度だけによる圧縮機の回転数制御では、この戻水温度が目標とする設定温度の下限値に到達して圧縮機の回転数を下げても、温水熱交換器にて温められた温水を送水して床暖房パネルを通過して温水熱交換器へ戻って来るのにある程度の時間を要し、これにより温度変化における応答に時間が掛かることになり戻水温度が上がりつづけるため圧縮機の回転数降下が早まり、安定までに相当の時間が必要となる。しかし、本発明による送水温度と戻水温度とからのブライン側平均温度を用いると、送水温度の上昇が圧縮機の回転数低下に即応して鈍るため、それに伴いブライン側平均温度の上昇も鈍り、圧縮機の回転数を段階的に下げる時間を稼ぐ運転ができ、所望する床暖房パネルの温度(目標設定温度)へ早く到達して快適性の向上が図れる。
【0030】
また、上述のように圧縮機の回転数を制御することで、図2に示すようにブライン側平均温度が設定温度(Tm)を少し超えたところまで一旦上昇させた部分を形成するように圧縮機の回転数を制御できるため、床暖房パネルの面積が小さくなっても面積が大きい床暖房パネルよりも立ち上げ時間が掛かるといった逆転現象を無くすことができる。
【0031】
上記実施例では、室温側温度差(dT1)またはブライン側平均温度差(dT2)とその変化時間量の関係によって圧縮機回転数を制御する場合を示したが、室内機に床温度を検知する輻射センサを設けた空気調和機では、床暖房運転時にブライン側平均温度の設定温度との差であるブライン側平均温度差(dT2)とこの輻射センサにより検知される床温度と目標設定床温度との床温度差(dT3)のどちらか大きい方とその変化時間量の関係を用いて圧縮機回転数の制御を行なっても良く、同様の効果が得られるとともに、輻射センサによる床の検出エリアは広いため床暖房のほぼ全体としての温度を直接的に捉えることができ実使用に則した温調制御ができる。
【0032】
さらに、暖房と床暖房との併用運転時には、室温設定温度と実際の室温との差である室温側温度差(dT1)と、送りと戻りのブライン平均温度による設定ブライン平均温度との差であるブライン側平均温度差(dT2)と、前記室内機に配設された輻射センサによる床温度と設定床温度との差である床温側温度差(dT3)のうち大きい値を用いることにより上述と同様に圧縮機の回転数制御を行なえば、より精度の高い床温度制御と圧縮機回転数制御を実施することができる。
【0033】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2に係わる空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房について、図4および図5を用いて説明する。図4はブライン側平均温度差(dT2)と室温側温度差(dT1)による絞り装置の制御マップ図、図5は暖房と床暖房の併用運転時の二段凝縮回路動作を示すモリエル線図である。
【0034】
上述の実施の形態1は室温側温度差(dT1)またはブライン側平均温度差(dT2)とその変化時間の関係によって圧縮機の回転数制御を行なうものであるが、本実施の形態2では圧縮機の回転数だけでなく床暖房用ユニットの冷媒回路に設けた絞り装置10の絞り量も制御するものである。前記絞り装置10の絞り量は、図4に示すように、室温側温度差(dT1)のレベルを3段階の範囲に分割し、一方ブライン側平均温度差(dT2)のレベルを4段階の範囲に分割して、室温側温度差とブライン側平均温度差を両軸として作成されたマトリックス表を用いて、検出・演算された現在の室温側温度差とブライン側平均温度差から選定される絞り量となる。そして、図5に示す電磁弁9の開閉による一段凝縮回路と二段凝縮回路の切換え等を含む絞り量調整の絞り制御を上述の圧縮機の回転数制御と併せて行なうことで床暖房パネルの表面温度を制御するものである。
【0035】
この絞り量調整の絞り制御としては、室温側温度差(dT1)が大つまり室温が低い時は室内熱交換器5での凝縮温度を高くするために電磁弁9を開いて一段凝縮回路とし、逆に室温側温度差が小つまり室温が高い時は室内熱交換器5での凝縮温度を低くするために電磁弁9を閉じて二段凝縮回路とする。一方、ブライン側平均温度差(dT2)が大つまり床温が低い時は床暖房優先として電磁弁9を閉じて二段凝縮回路とし、逆にブライン側平均温度差が小つまり床温が高い時は床暖房はほぼ十分として電磁弁9を開いて一段凝縮回路とするように作動するものである。
【0036】
上述のように制御することで、床暖房パネルの面積の大きさが変わることによる負荷変化や水回路の流路抵抗が変わることによる流量変化による床暖房パネルの表面温度の変化を、ブラインの送水温度と戻水温度との平均温度により床暖房パネルの表面温度の代用として設定することで送水温度と戻水温度の温度差を変えて熱負荷変動を吸収することができるため、同じ設定であっても床暖房パネルの大きさによる負荷変化によって床温度が変ってしまうという不具合を防止でき、快適な環境を提供する効果が得られる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明による空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置によれば、少なくとも回転数可変の圧縮機、温水熱交換器、膨張手段および室外熱交換器が順次環状に接続された冷媒回路と、前記温水熱交換器を介して循環ポンプによりブライン温水が循環する床暖房パネルと、前記温水熱交換器と前記床暖房パネルの間に設けられ前記床暖房パネルに流入するブライン温水の温度を検出する送水温度センサと、前記床暖房パネルと前記循環ポンプの間に設けられ前記床暖房パネルから流出する戻り水の温度を検出する戻水温度センサと、を備え、前記送水温度センサにより検出した送水温度と前記戻水温度センサにより検出した戻り水温度の平均とするブライン側平均温度における目標設定温度との温度差とこの温度差の変化時間量との関係に応じて圧縮機の回転数を制御するので、所望する床暖房パネルの温度へ早く到達して快適性の向上が図れる効果がある。
【0038】
また、回転数可変の圧縮機、温水熱交換器、室内熱交換器、膨張手段および室外熱交換器が順次環状に接続された冷媒回路と、前記温水熱交換器を介して循環ポンプによりブライン温水が循環する床暖房パネルと、前記温水熱交換器と前記床暖房パネルの間に設けられ前記床暖房パネルに流入するブライン温水の温度を検出する送水温度センサと、前記床暖房パネルと前記循環ポンプの間に設けられ前記床暖房パネルから流出する戻り水の温度を検出する戻水温度センサと、前記室内熱交換器を通過して熱交換される室内空気の流入温度を検出する室内温度センサと、を備え、前記送水温度センサにより検出した送水温度と前記戻水温度センサにより検出した戻り水温度の平均温度における目標設定温度との温度差であるブライン側平均温度差と前記室内温度センサにより検出される温度と目標設定室温との温度差である室温側温度差とのどちらか大きい方の温度差と、この温度差の変化時間量との関係に応じて圧縮機の回転数を制御するので、送水温度の上昇が圧縮機の回転数低下によって鈍るため、ブライン側平均温度の上昇も鈍り、圧縮機の回転数を段階的に下げる時間を稼ぐことができ、所望する床暖房パネルの温度へ早く到達して快適性の向上が図れる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置の冷媒回路・水回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係わり、立ち上げ特性図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係わり、圧縮機回転数制御マップ図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係わる絞り装置の制御マップ図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係わり、二段凝縮回路動作を示すモリエル線図である。
【図6】従来のヒートポンプ式温水床暖房装置の経時変化特性図である。
【符号の説明】
1 圧縮機、 2 四路弁、 3 室外熱交換器、 4 電動膨張弁(絞り装置)、 5 室内熱交換器、 6 アキュムレータ、 7 逆止弁、 8 温水熱交換器温度センサ、 9 電磁開閉弁(絞り調整弁)、 10 絞り装置、 11 温水熱交換器、 12 床暖房パネル、 13 循環ポンプ、 14 室外ユニット用制御装置、 15 インバータ、 16 入力装置、 17 室内ユニット用制御装置、 18 床暖房制御装置、 19 水位センサ、 20 戻水温度センサ、 21 室外ファン、 22 室内ファン、 23 室内温度センサ、 24 フラップ、 25 室内熱交換器温度センサ、 26 水温ユニット外気温センサ、 27 室外熱交換器温度センサ、 28 室外ユニット外気温センサ、 29 送水温度センサ、 30 タンク。

Claims (5)

  1. 少なくとも回転数可変の圧縮機、温水熱交換器、膨張手段および室外熱交換器が順次環状に接続された冷媒回路と、前記温水熱交換器を介して循環ポンプによりブライン温水が循環する床暖房パネルと、前記温水熱交換器と前記床暖房パネルの間に設けられ前記床暖房パネルに流入するブライン温水の温度を検出する送水温度センサと、前記床暖房パネルと前記循環ポンプの間に設けられ前記床暖房パネルから流出する戻り水の温度を検出する戻水温度センサとを備え、前記送水温度センサにより検出した送水温度と前記戻水温度センサにより検出した戻り水温度の平均とするブライン側平均温度における目標設定温度との温度差とこの温度差の変化時間量との関係に応じて圧縮機の回転数を制御することを特徴とする空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置。
  2. 回転数可変の圧縮機、温水熱交換器、室内熱交換器、膨張手段および室外熱交換器が順次環状に接続された冷媒回路と、前記温水熱交換器を介して循環ポンプによりブライン温水が循環する床暖房パネルと、前記温水熱交換器と前記床暖房パネルの間に設けられ前記床暖房パネルに流入するブライン温水の温度を検出する送水温度センサと、前記床暖房パネルと前記循環ポンプの間に設けられ前記床暖房パネルから流出する戻り水の温度を検出する戻水温度センサと、前記室内熱交換器を通過して熱交換される室内空気の流入温度を検出する室内温度センサとを備え、前記送水温度センサにより検出した送水温度と前記戻水温度センサにより検出した戻り水温度の平均温度における目標設定温度との温度差であるブライン側平均温度差と前記室内温度センサにより検出される温度と目標設定室温との温度差である室温側温度差とのどちらか大きい方の温度差と、この温度差の変化時間量との関係に応じて圧縮機の回転数を制御することを特徴とする空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置。
  3. 前記室内熱交換器を内設した室内ユニットに設けられ、床温度を検出する輻射センサを備え、前記室温側温度差に代えて前記輻射センサにより検出される床温度と目標設定床温度との床温側温度差を用いることを特徴とする請求項2記載の空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置。
  4. 前記温水熱交換器と前記室内熱交換器を直列に接続した中間に絞り装置を備え、前記ブライン側平均温度差と前記室温側温度差に応じて前記絞り装置の絞り量を制御することを特徴とする請求項2記載の空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置。
  5. 前記床暖房パネルへ循環するブラインの送水温度と戻水温度の平均温度が目標設定温度より所定量低い設定温度下限値に達するまでは高出力の回転数で圧縮機を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の空気調和機能付きヒートポンプ式温水床暖房装置。
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