JP2004286193A - ダイヤフラムおよびそれを用いたアキュムレータ - Google Patents
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Abstract
【課題】低温での良好なオイルシール性および低ガス透過性を備え、しかもこれらの耐久性に優れた低コストのダイヤフラムを提供する。
【解決手段】ガス遮蔽用の樹脂層21と、この樹脂層21の両面に形成されるガス室側ゴム層22および油室側ゴム層23とを備えてなるダイヤフラムである。そして、上記ガス室側ゴム層22が、エピクロロヒドリンゴムにより形成され、上記油室側ゴム層23が、低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムにより形成されている。
【選択図】図2
【解決手段】ガス遮蔽用の樹脂層21と、この樹脂層21の両面に形成されるガス室側ゴム層22および油室側ゴム層23とを備えてなるダイヤフラムである。そして、上記ガス室側ゴム層22が、エピクロロヒドリンゴムにより形成され、上記油室側ゴム層23が、低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムにより形成されている。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、産業車両等の油圧装置(油圧サスペンション,油圧自動クラッチ,パワーステアリング等)等に利用されるダイヤフラムおよびそれを用いたアキュムレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の油圧装置(例えば、油圧サスペンション,油圧自動クラッチ,パワーステアリング等)には、ガスの負荷圧力により体積が膨張,圧縮する特性を利用した、油圧のアキュムレータが使用されている。このアキュムレータは蓄圧機能を持つものであり、一般的に、金属製のシェルと、このシェル内に配設されシェルの内部空間を2室(ガス室および油室)に区画するダイヤフラムとで構成されており、窒素ガス等のガスがガス室に封入され、油室が流通孔を介して油圧装置の油圧回路に接続されて使用に供される。そして、上記アキュムレータは、流通孔から油室に流入する作動油により油室の圧力がガス室の圧力よりも大きくなると、上記ダイヤフラムが湾曲して弾性変形し、これによりガス室が圧縮され体積が小さくなるとともに、油室は拡大され作動油が蓄圧される。
【0003】
上記アキュムレータに用いられるダイヤフラムとしては、体積効率,重量およびコストの点から、ゴム製ダイヤフラムが使用されてきた。また、近年、上記ゴム製ダイヤフラムを通じてガスの浸透および漏洩を防止するため、ガス遮蔽用の、例えば、ポリアミド樹脂やエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等からなる樹脂層と、この樹脂層を介してガス室側に形成されるガス室側ゴム層と、上記樹脂層を介して油室側に形成される油室側ゴム層とから構成された、樹脂とゴムとの複合材料からなるダイヤフラムが量産化されている。そして、上記両ゴム層を形成するゴム材料は、その油圧回路に使用される油の種類により選定され、例えば、鉱物油の場合は、その鉱物油に対する耐油性という観点から、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)や水添NBR(H−NBR)、エピクロロヒドリンゴム等のゴム材料が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−254701号公報
【0005】
上記エピクロロヒドリンゴムは、低温性(低温時の耐久性,低温圧縮永久歪み)に関しては良好であるが、上記鉱物油に配合される各種添加剤(酸化防止剤,摩耗防止剤等)により著しく劣化する場合があり、使用する鉱物油の種類が制限されるという問題を有していた。
【0006】
一方、上記NBRやH−NBR、特にH−NBRに関しては、耐油性,耐熱性および強度的には良好であるが、低温性に劣るため、その対策として、上記H−NBRに可塑剤を配合し、低温性の改良を図っていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近では、上記鉱物油等の作動油に対して低温特性の向上要求が一層厳しくなり、粘度上昇防止剤等の各種添加剤を添加することにより対応している。しかし、上記添加剤は、ダイヤフラムを形成するゴムに配合された上記可塑剤を抽出する作用を有するため、高温下で長時間、上記添加剤が添加された作動油にてH−NBRを用いたダイヤフラムを作動させると、作動油中に上記可塑剤が抽出され、その結果、低温性が低下するという問題が生じた。このような問題に対して、可塑剤の配合という手段ではなく、H−NBRのアクリロニトリル量を低減することにより、H−NBRそのものの低温性を向上させることが提案されているが、アクリロニトリル量の低いH−NBRは非常に高価であり、またダイヤフラムの低温シール性に関して−30〜−35℃が限界であり、より低温領域における低温シール性の向上が要求されている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低温での良好なシール性および低ガス透過性を備え、しかもこれらの耐久性に優れた低コストのダイヤフラムおよびそれを用いたアキュムレータの提供をその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、ガス遮蔽用の樹脂層と、この樹脂層の両面に形成されるガス室側ゴム層および油室側ゴム層とを備えてなるダイヤフラムであって、上記ガス室側ゴム層が、エピクロロヒドリンゴムにより形成され、かつ上記油室側ゴム層が、低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムにより形成されているダイヤフラムを第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、シェルと、このシェルの内部空間をガス室および油室に区画する上記ダイヤフラムとを備えたアキュムレータを第2の要旨とする。
【0011】
すなわち、この発明者は、ダイヤフラムにおける低温での耐久性(シール性,低ガス透過性)について研究を重ねた結果、ガス室側ゴム層を、エピクロロヒドリンゴムを用いて形成し、また油室側ゴム層を、低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムを用いて形成すると、双方の有する特性のバランスが良好に保たれ、例えば、−40℃以下のような低温下での低温シール性の耐久性能が向上し、所期の目的が達成できることを見出し本発明に到達した。
【0012】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0013】
本発明のダイヤフラムを用いたアキュムレータの一例を図1に示す。このアキュムレータは、シェル1,2と、シェル1,2の内部空間をガス室3および油室4に区画するダイヤフラム20とを用いて構成されている。図1において、5はリング状保持材、6はポペット、7は油ポート8を持つプラグ、9はガスプラグ、10は電子ビーム溶接部である。また、図1において、一点鎖線はダイヤフラム20が弾性変形する前の状態を示している。
【0014】
上記シェル1,2は、金属製のものであれば特に限定するものではなく、例えば鉄製、アルミニウム系合金製等のものが好適に用いられる。
【0015】
上記ダイヤフラム20は、図1および図2に示すように、ガス遮蔽用の樹脂層21と、この樹脂層21の両面に一体的に形成されたガス室側ゴム層22および油室側ゴム層23の3層から構成されている。そして、このダイヤフラム20には、図1に示すように、ガス室側ゴム層22の表面に、所定間隔で周方向に耐久性向上用の溝24が複数形成されている(図4参照)。
【0016】
上記樹脂層21は、前記ガス室3に封入されたガスが透過するのを防止するものであり、その形成材料としては、ガス透過性の低い材料であれば特に限定はなく、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエチレンナフタレート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、上記樹脂層21は、上記形成材料を用いてなる単層構造であってもよいし、上記形成材料をそれぞれ単独で用いた2層以上の多層構造であってもよい。
【0017】
上記EVOHとしては、特に限定するものではないが、エチレン含有量が20〜65重量%で、残りがビニルアルコールからなるものを用いることが好ましい。なかでもエチレン含有量が32重量%のものが好適である。
【0018】
上記ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン6−12等があげられ、単独でもしくは併せて用いられる。このようなポリアミド樹脂は、上記ナイロン6もしくはナイロン66がベースに入っていれば、EVOHの融点と近似するようになることから、ナイロン6と他のナイロン樹脂等との各種の混合物を使用することが可能である。特に、上記ポリアミド樹脂と、ポリオレフィン樹脂とをブレンドして用いることが好ましい。このようにすると、ポリオレフィン樹脂が、吸水性に乏しいことから、EVOHに対する吸水を防止するようになる。すなわち、EVOHは吸水すると、耐ガスバリアー性が低下するからであり、ポリオレフィン樹脂はこれを防止する。
【0019】
上記ガス室側ゴム層22の形成材料としては、低温でのガスシール性はもちろん、耐油性に関しても良好な特性を示すエピクロロヒドリンゴムが用いられる。上記エピクロロヒドリンゴムとしては、具体的には、エピクロロヒドリンのホモポリマー、エチレンオキシド−エピクロルヒドリン共重合体(ECO)があげられる。
【0020】
上記ガス室側ゴム層22の形成材料には、上記エピクロロヒドリンゴムに加えて、さらに充填剤を配合することができる。上記充填剤としては特に限定はなく、例えばカーボンブラックがあげられる。上記充填剤の配合割合は、ゴム材料の硬度(JIS A)が50〜70の範囲になるよう設定することが好ましい。すなわち、硬度(JIS A)が50未満になると、ダイヤフラム20の樹脂層21の剛性に対する補強効果が不充分で、ダイヤフラム20の変形時に樹脂の座屈変形を防止することができなくなり、硬度(JIS A)が70を超えると、ゴム材料自体の破断伸びが低下するからである。
【0021】
上記ガス室側ゴム層22の形成材料には、上記ゴム材料であるエピクロロヒドリンゴムに加えて、さらに加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤等の添加剤を適宜配合することが可能である。
【0022】
前記油室側ゴム層23の形成材料としては、低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムが用いられる。この「低アクリロニトリル」とは、ゴム全体に対するアクリロニトリルから誘導される構造部分の割合(AN量)が小さいことをいい、具体的には、AN量が25重量%以下のアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムをいう。なお、一般に、AN量の下限値は17重量%である。そして、上記アクリロニトリル−ブタジエン系ゴムのなかでも、特に優れた耐油性,耐熱性を備えるという点から、水添NBR(H−NBR)が好適に用いられる。
【0023】
上記油室側ゴム層23の形成材料には、上記ゴム材料である低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムに加えて、さらに、カーボンブラック等の充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤等の添加剤を適宜配合することが可能である。
【0024】
本発明のダイヤフラム20は、例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、前記EVOH、ポリアミド樹脂等のガス透過性の低い樹脂膜を、単独であるいは2種以上重ね合わせてガス遮蔽用の樹脂層(樹脂フィルム)21を作製する。ついで、上記樹脂層(樹脂フィルム)21の上下両面に従来公知の接着剤を塗布し、上記ガス室側ゴム層22および油室側ゴム層23の両層形成材料をプレス機によってプレス成形し加硫接着する。このようにして、図2に示すような3層構造のダイヤフラム20を製造することができる。
【0025】
このようにして得られた本発明のダイヤフラム20は、上記樹脂層(樹脂フィルム)21の厚みは、通常50〜210μmである。また、上記ガス室側ゴム層22および油室側ゴム層23のそれぞれの厚みは、通常、各々1〜4mmであり、好ましくは各々1〜1.5mmである。
【0026】
本発明のアキュムレータは、上記構成からなるダイヤフラム20を用い、例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、上記のようにして製造したダイヤフラム20を、図1に示すように、略半球殻状の2個の分割シェル1,2のうち下側の分割シェル2の開口部の内周縁にその周縁部を位置決めし、その周縁部をリング状保持材5の外周と下側の分割シェル2の開口部内周縁とで挟持固定して、下側の分割シェル2に取り付ける。ついで、この下側の分割シェル2の開口に上側の分割シェル1の開口を突き合わし、電子ビーム溶接等を行う。このようにして、図1に示すようなアキュムレータを製造することができる。
【0027】
そして、本発明においては、図4に示すように、ダイヤフラム20のガス室側ゴム層22の表面に、断面が凹状の溝24を所定間隔で周方向に複数形成して、リブ25を形成することが好ましい。このような凹状の溝24を形成することにより、ダイヤフラム20の変形時の内部樹脂の座屈を防止する結果、ダイヤフラム20およびこれを用いたアキュムレータの耐久性がさらに向上するようになる。なお、上記断面が凹状の溝24とは、断面が略凹状であればよく、V字状等も含む意味である。
【0028】
また、本発明のアキュムレータにおけるシェルの形状としては、図1に示したような略半球殻状の2個の分割シェル1,2を突き合わせて略球殻に仕上げたものに限定されるものではなく、例えば、略殻状、筒状、箱状等各種形状のものを用いることが可能である。
【0029】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0030】
まず、実施例および比較例に先立ち、後記の表1に示す各成分を同表に示す割合で配合して、ゴム組成物1〜5を作製した。そして、得られた各ゴム組成物について、常態物性、耐鉱物油・耐熱性、低温捩じりおよび低温圧縮永久歪みを下記の基準に従って測定した。その結果を、後記の表2に示した。
【0031】
〔常態物性〕
JIS K 6250に記載の方法に準じて、破断点強度:TB(MPa)、破断点伸び:EB(%)および硬度:Hs(JIS A)を測定した。
【0032】
〔耐鉱物油・耐熱性〕
上記各ゴム組成物を用い、その試験片をオイル(Pentosin CHF11S)に120℃×168時間の条件で浸漬した。これについて、JIS K 6258に記載の方法に準じて、破断点強度変化率:ΔTB(%)、破断点伸び変化率:ΔEB(%)、硬度変化率:ΔHsおよび体積変化率ΔV(%)を測定した。
【0033】
〔低温捩じり〕
各ゴム組成物の低温における柔軟性を評価するため、JIS K 6261に記載の方法に準じて低温捩じり試験を行った。
【0034】
〔低温圧縮永久歪み〕
各ゴム組成物の試験片を用いて、−30℃×70時間での弾性保持率(%)を、JIS K 6261の記載に準じて測定・算出した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
上記表2の結果から、ECOは、低温性は良好であるが、H−NBRよりも耐鉱物油・耐熱性に劣ることがわかる。また、H−NBRは、AN量が多くなると、耐鉱物油・耐熱性が良好になるのに対して、低温圧縮永久歪みは悪化することがわかる。なかでも、AN量36重量%のゴム組成物5品は、耐鉱物油・耐熱性試験時、含有している可塑剤が鉱物油中に抽出される結果、ΔVの低下ならびにΔHsの上昇がみられる。
【0038】
【実施例1〜3、比較例1〜5】
まず、EVOH(クラレ社製F−101、エチレン含有量32%)およびポリアミド樹脂(デュポン社製、スーパータフナイロンST811HS)を準備し、これらを押出成形機を用い共押出して5層構造の樹脂層を形成し、それを所定のダイヤフラム形状に成形することにより、図3に示すような樹脂層21を作製した。図3において、21aはポリアミド樹脂層(厚み20μm)、21bはEVOH層(厚み20μm)、21cはポリアミド樹脂層(厚み40μm)である。つぎに、上記樹脂層21の上下両面に従来公知の接着剤を塗布した後、ガス室側ゴム層22および油室側ゴム層23の形成材料として、上記表1に示す各ゴム組成物を用い、これらをプレス機でプレス成形したのち加硫接着した。このようにして、ガス室側ゴム層22の厚みが1.5mmであり、油室側ゴム層23の厚みが1.5mmのダイヤフラムを製造した(図2参照)。なお、上記ガス室側ゴム層22の表面には、図4に示すように、断面が凹状の溝24を周方向に形成した。
【0039】
このようにして得られた実施例品および比較例品のダイヤフラムを用いて、下記の基準に従い、低温条件下(−25℃、−30℃、−35℃、−40℃)での耐久性試験を行った。その結果を、後記の表3および表4に併せて示した。
【0040】
〔低温条件下での耐久性試験〕
上記各ダイヤフラムを用いて、つぎのようにしてアキュムレータを作製した。すなわち、図1に示すように、略半球殻状の2個の分割シェルとして、金属製の上分割シェル1と下分割シェル2を準備するとともに、上記実施例および比較例で作製した、その周縁部を厚肉部に形成したダイヤフラム20を準備した。そして、図示のように、上記ダイヤフラム20をリング状保持材5を用いて下分割シェル2の開口部内周面に固定した。この場合、図5に示すように、下分割シェル2の開口部内周面には、予め円周方向に溝11が形成されているとともに、その下側に段部12が形成されている。上記リング状保持材5は、リング状の上部側が大径で下部側が小径になった段付構造になっており、その上部側を図5に示すように上記下分割シェル2の開口部内周面に位置決めし、段部12をダイヤフラム20の厚肉部の端面に位置決めするとともに、下部をダイヤフラム20の厚肉部の上に位置決めした。
【0041】
ついで、その状態で、かしめ装置(図示せず)を用い、リング状保持材5を図6に示すようにかしめた。これにより、ダイヤフラム20の内周厚肉部を、リング状保持材5の下部外周部と、下分割シェル2の開口部内周面とで挟持固定した。このようにして、下分割シェル2にダイヤフラム20を取り付け、ついで、この下分割シェル2の開口に上分割シェル1の開口を図1に示すように合わせ、全体として略球殻状のシェルに仕上げた。そして、上記上分割シェル1の開口と下分割シェル2の開口の接合は、両開口の接合部を電子ビーム溶接することによって行った。このようにして、図1に示すように、ダイヤフラム20によってシェル1,2の内部空間がガス室3と油室4に区画されたアキュムレータを製造した。
【0042】
なお、上記ガス室3内に封入ガスとしてN2 ガスを5MPaの封入圧で封入するとともに油室4内に粘度上昇防止剤含有のオイル(Pentosin CHF11S)を充填した。そして、低温条件下(−25℃、−30℃、−35℃、−40℃)での0MPaと10MPaの圧力を交互に油室4に繰り返しかけて(最高1万回サイクル)、異常の発生の有無を測定・評価した。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
上記結果から、実施例品のダイヤフラムを用いた場合は、−40℃の低温条件下でも1万回のサイクル試験にあっても何ら異常は発生しなかった。
【0046】
これに対して、ガス室側ゴム層および油室側ゴム層ともAN量が36重量%の高アクリロニトリルのH−NBRを用いた比較例品1は、−25℃の温度条件下、0.1万回以下のサイクル試験において、ダイヤフラムのシール部から封入ガス(N2 ガス)およびオイルの漏れが発生し、耐久性に劣ることがわかる。同様に、ガス室側ゴム層および油室側ゴム層ともAN量が25重量%の高アクリロニトリルのH−NBRを用いた比較例品2は、−25℃〜−30℃の温度条件下、1万回のサイクル試験において、異常は発生しなかったが、−35℃の温度条件下では、1万回のサイクル試験において、ダイヤフラムのシール部から封入ガス(N2 ガス)およびオイルの漏れが発生し、耐久性に劣ることがわかる。また、ガス室側ゴム層および油室側ゴム層とも低アクリロニトリル(AN量が17重量%、23重量%)のH−NBRを用いた比較例品3,4は、−35℃の温度条件下では1万回のサイクル試験において何ら異常は発生しなかったが、さらに低温の−40℃の温度条件下では、0.2〜0.5万回のサイクル試験において、ダイヤフラムのシール部から微少の封入ガス(N2 ガス)およびオイルの漏れが発生し、耐久性に劣ることがわかる。そして、ガス室側ゴム層がECOで、油室側ゴム層が高アクリロニトリル(AN量が36重量%)のH−NBRを用いた比較例5品は、−25℃〜−30℃の温度条件下、1万回のサイクル試験において、異常は発生しなかったが、−35℃〜−40℃の温度条件下では、1万回のサイクル試験において、ダイヤフラムのシール部から封入ガス(N2 ガス)およびオイルの漏れが発生し、耐久性に劣ることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明のダイヤフラムは、ガス室側ゴム層がECOにより形成され、かつ上記油室側ゴム層が低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムにより形成されているため、低温領域でのシール性が向上し、優れた耐久性を備えるようになる。しかも、高価な低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムを油室側ゴム層のみに使用するため、コストの低減が実現する。したがって、上記ダイヤフラムを用いた本発明のアキュムレータは、従来よりもさらに低温領域での使用においても長寿命となる。このことから、本発明のダイヤフラムは、寒冷地での使用にも充分耐えうるものである。
【0048】
そして、上記ダイヤフラムのガス室側ゴム層が、ECOにより形成され、上記油室側ゴム層が、AN量17〜25重量%のH−NBRにより形成されると、より一層低温領域でのシール性が向上し、優れた耐久性を備えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアキュムレータの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のダイヤフラムの一例の構成を示す要部拡大断面図である。
【図3】本発明のダイヤフラムの樹脂層の構成を示す要部拡大断面図である。
【図4】本発明のダイヤフラムの他の例の構成を示す要部拡大断面図である。
【図5】図1において、リング状保持材を下分割シェルにかしめ付ける前の状態の要部断面図である。
【図6】図1において、リング状保持材を下分割シェルにかしめ付けた後の状態の要部断面図である。
【符号の説明】
20 ダイヤフラム
21 樹脂層
22 ガス室側ゴム層
23 油室側ゴム層
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、産業車両等の油圧装置(油圧サスペンション,油圧自動クラッチ,パワーステアリング等)等に利用されるダイヤフラムおよびそれを用いたアキュムレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の油圧装置(例えば、油圧サスペンション,油圧自動クラッチ,パワーステアリング等)には、ガスの負荷圧力により体積が膨張,圧縮する特性を利用した、油圧のアキュムレータが使用されている。このアキュムレータは蓄圧機能を持つものであり、一般的に、金属製のシェルと、このシェル内に配設されシェルの内部空間を2室(ガス室および油室)に区画するダイヤフラムとで構成されており、窒素ガス等のガスがガス室に封入され、油室が流通孔を介して油圧装置の油圧回路に接続されて使用に供される。そして、上記アキュムレータは、流通孔から油室に流入する作動油により油室の圧力がガス室の圧力よりも大きくなると、上記ダイヤフラムが湾曲して弾性変形し、これによりガス室が圧縮され体積が小さくなるとともに、油室は拡大され作動油が蓄圧される。
【0003】
上記アキュムレータに用いられるダイヤフラムとしては、体積効率,重量およびコストの点から、ゴム製ダイヤフラムが使用されてきた。また、近年、上記ゴム製ダイヤフラムを通じてガスの浸透および漏洩を防止するため、ガス遮蔽用の、例えば、ポリアミド樹脂やエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等からなる樹脂層と、この樹脂層を介してガス室側に形成されるガス室側ゴム層と、上記樹脂層を介して油室側に形成される油室側ゴム層とから構成された、樹脂とゴムとの複合材料からなるダイヤフラムが量産化されている。そして、上記両ゴム層を形成するゴム材料は、その油圧回路に使用される油の種類により選定され、例えば、鉱物油の場合は、その鉱物油に対する耐油性という観点から、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)や水添NBR(H−NBR)、エピクロロヒドリンゴム等のゴム材料が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−254701号公報
【0005】
上記エピクロロヒドリンゴムは、低温性(低温時の耐久性,低温圧縮永久歪み)に関しては良好であるが、上記鉱物油に配合される各種添加剤(酸化防止剤,摩耗防止剤等)により著しく劣化する場合があり、使用する鉱物油の種類が制限されるという問題を有していた。
【0006】
一方、上記NBRやH−NBR、特にH−NBRに関しては、耐油性,耐熱性および強度的には良好であるが、低温性に劣るため、その対策として、上記H−NBRに可塑剤を配合し、低温性の改良を図っていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近では、上記鉱物油等の作動油に対して低温特性の向上要求が一層厳しくなり、粘度上昇防止剤等の各種添加剤を添加することにより対応している。しかし、上記添加剤は、ダイヤフラムを形成するゴムに配合された上記可塑剤を抽出する作用を有するため、高温下で長時間、上記添加剤が添加された作動油にてH−NBRを用いたダイヤフラムを作動させると、作動油中に上記可塑剤が抽出され、その結果、低温性が低下するという問題が生じた。このような問題に対して、可塑剤の配合という手段ではなく、H−NBRのアクリロニトリル量を低減することにより、H−NBRそのものの低温性を向上させることが提案されているが、アクリロニトリル量の低いH−NBRは非常に高価であり、またダイヤフラムの低温シール性に関して−30〜−35℃が限界であり、より低温領域における低温シール性の向上が要求されている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低温での良好なシール性および低ガス透過性を備え、しかもこれらの耐久性に優れた低コストのダイヤフラムおよびそれを用いたアキュムレータの提供をその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、ガス遮蔽用の樹脂層と、この樹脂層の両面に形成されるガス室側ゴム層および油室側ゴム層とを備えてなるダイヤフラムであって、上記ガス室側ゴム層が、エピクロロヒドリンゴムにより形成され、かつ上記油室側ゴム層が、低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムにより形成されているダイヤフラムを第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、シェルと、このシェルの内部空間をガス室および油室に区画する上記ダイヤフラムとを備えたアキュムレータを第2の要旨とする。
【0011】
すなわち、この発明者は、ダイヤフラムにおける低温での耐久性(シール性,低ガス透過性)について研究を重ねた結果、ガス室側ゴム層を、エピクロロヒドリンゴムを用いて形成し、また油室側ゴム層を、低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムを用いて形成すると、双方の有する特性のバランスが良好に保たれ、例えば、−40℃以下のような低温下での低温シール性の耐久性能が向上し、所期の目的が達成できることを見出し本発明に到達した。
【0012】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0013】
本発明のダイヤフラムを用いたアキュムレータの一例を図1に示す。このアキュムレータは、シェル1,2と、シェル1,2の内部空間をガス室3および油室4に区画するダイヤフラム20とを用いて構成されている。図1において、5はリング状保持材、6はポペット、7は油ポート8を持つプラグ、9はガスプラグ、10は電子ビーム溶接部である。また、図1において、一点鎖線はダイヤフラム20が弾性変形する前の状態を示している。
【0014】
上記シェル1,2は、金属製のものであれば特に限定するものではなく、例えば鉄製、アルミニウム系合金製等のものが好適に用いられる。
【0015】
上記ダイヤフラム20は、図1および図2に示すように、ガス遮蔽用の樹脂層21と、この樹脂層21の両面に一体的に形成されたガス室側ゴム層22および油室側ゴム層23の3層から構成されている。そして、このダイヤフラム20には、図1に示すように、ガス室側ゴム層22の表面に、所定間隔で周方向に耐久性向上用の溝24が複数形成されている(図4参照)。
【0016】
上記樹脂層21は、前記ガス室3に封入されたガスが透過するのを防止するものであり、その形成材料としては、ガス透過性の低い材料であれば特に限定はなく、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエチレンナフタレート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、上記樹脂層21は、上記形成材料を用いてなる単層構造であってもよいし、上記形成材料をそれぞれ単独で用いた2層以上の多層構造であってもよい。
【0017】
上記EVOHとしては、特に限定するものではないが、エチレン含有量が20〜65重量%で、残りがビニルアルコールからなるものを用いることが好ましい。なかでもエチレン含有量が32重量%のものが好適である。
【0018】
上記ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン6−12等があげられ、単独でもしくは併せて用いられる。このようなポリアミド樹脂は、上記ナイロン6もしくはナイロン66がベースに入っていれば、EVOHの融点と近似するようになることから、ナイロン6と他のナイロン樹脂等との各種の混合物を使用することが可能である。特に、上記ポリアミド樹脂と、ポリオレフィン樹脂とをブレンドして用いることが好ましい。このようにすると、ポリオレフィン樹脂が、吸水性に乏しいことから、EVOHに対する吸水を防止するようになる。すなわち、EVOHは吸水すると、耐ガスバリアー性が低下するからであり、ポリオレフィン樹脂はこれを防止する。
【0019】
上記ガス室側ゴム層22の形成材料としては、低温でのガスシール性はもちろん、耐油性に関しても良好な特性を示すエピクロロヒドリンゴムが用いられる。上記エピクロロヒドリンゴムとしては、具体的には、エピクロロヒドリンのホモポリマー、エチレンオキシド−エピクロルヒドリン共重合体(ECO)があげられる。
【0020】
上記ガス室側ゴム層22の形成材料には、上記エピクロロヒドリンゴムに加えて、さらに充填剤を配合することができる。上記充填剤としては特に限定はなく、例えばカーボンブラックがあげられる。上記充填剤の配合割合は、ゴム材料の硬度(JIS A)が50〜70の範囲になるよう設定することが好ましい。すなわち、硬度(JIS A)が50未満になると、ダイヤフラム20の樹脂層21の剛性に対する補強効果が不充分で、ダイヤフラム20の変形時に樹脂の座屈変形を防止することができなくなり、硬度(JIS A)が70を超えると、ゴム材料自体の破断伸びが低下するからである。
【0021】
上記ガス室側ゴム層22の形成材料には、上記ゴム材料であるエピクロロヒドリンゴムに加えて、さらに加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤等の添加剤を適宜配合することが可能である。
【0022】
前記油室側ゴム層23の形成材料としては、低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムが用いられる。この「低アクリロニトリル」とは、ゴム全体に対するアクリロニトリルから誘導される構造部分の割合(AN量)が小さいことをいい、具体的には、AN量が25重量%以下のアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムをいう。なお、一般に、AN量の下限値は17重量%である。そして、上記アクリロニトリル−ブタジエン系ゴムのなかでも、特に優れた耐油性,耐熱性を備えるという点から、水添NBR(H−NBR)が好適に用いられる。
【0023】
上記油室側ゴム層23の形成材料には、上記ゴム材料である低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムに加えて、さらに、カーボンブラック等の充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤等の添加剤を適宜配合することが可能である。
【0024】
本発明のダイヤフラム20は、例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、前記EVOH、ポリアミド樹脂等のガス透過性の低い樹脂膜を、単独であるいは2種以上重ね合わせてガス遮蔽用の樹脂層(樹脂フィルム)21を作製する。ついで、上記樹脂層(樹脂フィルム)21の上下両面に従来公知の接着剤を塗布し、上記ガス室側ゴム層22および油室側ゴム層23の両層形成材料をプレス機によってプレス成形し加硫接着する。このようにして、図2に示すような3層構造のダイヤフラム20を製造することができる。
【0025】
このようにして得られた本発明のダイヤフラム20は、上記樹脂層(樹脂フィルム)21の厚みは、通常50〜210μmである。また、上記ガス室側ゴム層22および油室側ゴム層23のそれぞれの厚みは、通常、各々1〜4mmであり、好ましくは各々1〜1.5mmである。
【0026】
本発明のアキュムレータは、上記構成からなるダイヤフラム20を用い、例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、上記のようにして製造したダイヤフラム20を、図1に示すように、略半球殻状の2個の分割シェル1,2のうち下側の分割シェル2の開口部の内周縁にその周縁部を位置決めし、その周縁部をリング状保持材5の外周と下側の分割シェル2の開口部内周縁とで挟持固定して、下側の分割シェル2に取り付ける。ついで、この下側の分割シェル2の開口に上側の分割シェル1の開口を突き合わし、電子ビーム溶接等を行う。このようにして、図1に示すようなアキュムレータを製造することができる。
【0027】
そして、本発明においては、図4に示すように、ダイヤフラム20のガス室側ゴム層22の表面に、断面が凹状の溝24を所定間隔で周方向に複数形成して、リブ25を形成することが好ましい。このような凹状の溝24を形成することにより、ダイヤフラム20の変形時の内部樹脂の座屈を防止する結果、ダイヤフラム20およびこれを用いたアキュムレータの耐久性がさらに向上するようになる。なお、上記断面が凹状の溝24とは、断面が略凹状であればよく、V字状等も含む意味である。
【0028】
また、本発明のアキュムレータにおけるシェルの形状としては、図1に示したような略半球殻状の2個の分割シェル1,2を突き合わせて略球殻に仕上げたものに限定されるものではなく、例えば、略殻状、筒状、箱状等各種形状のものを用いることが可能である。
【0029】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0030】
まず、実施例および比較例に先立ち、後記の表1に示す各成分を同表に示す割合で配合して、ゴム組成物1〜5を作製した。そして、得られた各ゴム組成物について、常態物性、耐鉱物油・耐熱性、低温捩じりおよび低温圧縮永久歪みを下記の基準に従って測定した。その結果を、後記の表2に示した。
【0031】
〔常態物性〕
JIS K 6250に記載の方法に準じて、破断点強度:TB(MPa)、破断点伸び:EB(%)および硬度:Hs(JIS A)を測定した。
【0032】
〔耐鉱物油・耐熱性〕
上記各ゴム組成物を用い、その試験片をオイル(Pentosin CHF11S)に120℃×168時間の条件で浸漬した。これについて、JIS K 6258に記載の方法に準じて、破断点強度変化率:ΔTB(%)、破断点伸び変化率:ΔEB(%)、硬度変化率:ΔHsおよび体積変化率ΔV(%)を測定した。
【0033】
〔低温捩じり〕
各ゴム組成物の低温における柔軟性を評価するため、JIS K 6261に記載の方法に準じて低温捩じり試験を行った。
【0034】
〔低温圧縮永久歪み〕
各ゴム組成物の試験片を用いて、−30℃×70時間での弾性保持率(%)を、JIS K 6261の記載に準じて測定・算出した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
上記表2の結果から、ECOは、低温性は良好であるが、H−NBRよりも耐鉱物油・耐熱性に劣ることがわかる。また、H−NBRは、AN量が多くなると、耐鉱物油・耐熱性が良好になるのに対して、低温圧縮永久歪みは悪化することがわかる。なかでも、AN量36重量%のゴム組成物5品は、耐鉱物油・耐熱性試験時、含有している可塑剤が鉱物油中に抽出される結果、ΔVの低下ならびにΔHsの上昇がみられる。
【0038】
【実施例1〜3、比較例1〜5】
まず、EVOH(クラレ社製F−101、エチレン含有量32%)およびポリアミド樹脂(デュポン社製、スーパータフナイロンST811HS)を準備し、これらを押出成形機を用い共押出して5層構造の樹脂層を形成し、それを所定のダイヤフラム形状に成形することにより、図3に示すような樹脂層21を作製した。図3において、21aはポリアミド樹脂層(厚み20μm)、21bはEVOH層(厚み20μm)、21cはポリアミド樹脂層(厚み40μm)である。つぎに、上記樹脂層21の上下両面に従来公知の接着剤を塗布した後、ガス室側ゴム層22および油室側ゴム層23の形成材料として、上記表1に示す各ゴム組成物を用い、これらをプレス機でプレス成形したのち加硫接着した。このようにして、ガス室側ゴム層22の厚みが1.5mmであり、油室側ゴム層23の厚みが1.5mmのダイヤフラムを製造した(図2参照)。なお、上記ガス室側ゴム層22の表面には、図4に示すように、断面が凹状の溝24を周方向に形成した。
【0039】
このようにして得られた実施例品および比較例品のダイヤフラムを用いて、下記の基準に従い、低温条件下(−25℃、−30℃、−35℃、−40℃)での耐久性試験を行った。その結果を、後記の表3および表4に併せて示した。
【0040】
〔低温条件下での耐久性試験〕
上記各ダイヤフラムを用いて、つぎのようにしてアキュムレータを作製した。すなわち、図1に示すように、略半球殻状の2個の分割シェルとして、金属製の上分割シェル1と下分割シェル2を準備するとともに、上記実施例および比較例で作製した、その周縁部を厚肉部に形成したダイヤフラム20を準備した。そして、図示のように、上記ダイヤフラム20をリング状保持材5を用いて下分割シェル2の開口部内周面に固定した。この場合、図5に示すように、下分割シェル2の開口部内周面には、予め円周方向に溝11が形成されているとともに、その下側に段部12が形成されている。上記リング状保持材5は、リング状の上部側が大径で下部側が小径になった段付構造になっており、その上部側を図5に示すように上記下分割シェル2の開口部内周面に位置決めし、段部12をダイヤフラム20の厚肉部の端面に位置決めするとともに、下部をダイヤフラム20の厚肉部の上に位置決めした。
【0041】
ついで、その状態で、かしめ装置(図示せず)を用い、リング状保持材5を図6に示すようにかしめた。これにより、ダイヤフラム20の内周厚肉部を、リング状保持材5の下部外周部と、下分割シェル2の開口部内周面とで挟持固定した。このようにして、下分割シェル2にダイヤフラム20を取り付け、ついで、この下分割シェル2の開口に上分割シェル1の開口を図1に示すように合わせ、全体として略球殻状のシェルに仕上げた。そして、上記上分割シェル1の開口と下分割シェル2の開口の接合は、両開口の接合部を電子ビーム溶接することによって行った。このようにして、図1に示すように、ダイヤフラム20によってシェル1,2の内部空間がガス室3と油室4に区画されたアキュムレータを製造した。
【0042】
なお、上記ガス室3内に封入ガスとしてN2 ガスを5MPaの封入圧で封入するとともに油室4内に粘度上昇防止剤含有のオイル(Pentosin CHF11S)を充填した。そして、低温条件下(−25℃、−30℃、−35℃、−40℃)での0MPaと10MPaの圧力を交互に油室4に繰り返しかけて(最高1万回サイクル)、異常の発生の有無を測定・評価した。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
上記結果から、実施例品のダイヤフラムを用いた場合は、−40℃の低温条件下でも1万回のサイクル試験にあっても何ら異常は発生しなかった。
【0046】
これに対して、ガス室側ゴム層および油室側ゴム層ともAN量が36重量%の高アクリロニトリルのH−NBRを用いた比較例品1は、−25℃の温度条件下、0.1万回以下のサイクル試験において、ダイヤフラムのシール部から封入ガス(N2 ガス)およびオイルの漏れが発生し、耐久性に劣ることがわかる。同様に、ガス室側ゴム層および油室側ゴム層ともAN量が25重量%の高アクリロニトリルのH−NBRを用いた比較例品2は、−25℃〜−30℃の温度条件下、1万回のサイクル試験において、異常は発生しなかったが、−35℃の温度条件下では、1万回のサイクル試験において、ダイヤフラムのシール部から封入ガス(N2 ガス)およびオイルの漏れが発生し、耐久性に劣ることがわかる。また、ガス室側ゴム層および油室側ゴム層とも低アクリロニトリル(AN量が17重量%、23重量%)のH−NBRを用いた比較例品3,4は、−35℃の温度条件下では1万回のサイクル試験において何ら異常は発生しなかったが、さらに低温の−40℃の温度条件下では、0.2〜0.5万回のサイクル試験において、ダイヤフラムのシール部から微少の封入ガス(N2 ガス)およびオイルの漏れが発生し、耐久性に劣ることがわかる。そして、ガス室側ゴム層がECOで、油室側ゴム層が高アクリロニトリル(AN量が36重量%)のH−NBRを用いた比較例5品は、−25℃〜−30℃の温度条件下、1万回のサイクル試験において、異常は発生しなかったが、−35℃〜−40℃の温度条件下では、1万回のサイクル試験において、ダイヤフラムのシール部から封入ガス(N2 ガス)およびオイルの漏れが発生し、耐久性に劣ることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明のダイヤフラムは、ガス室側ゴム層がECOにより形成され、かつ上記油室側ゴム層が低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムにより形成されているため、低温領域でのシール性が向上し、優れた耐久性を備えるようになる。しかも、高価な低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムを油室側ゴム層のみに使用するため、コストの低減が実現する。したがって、上記ダイヤフラムを用いた本発明のアキュムレータは、従来よりもさらに低温領域での使用においても長寿命となる。このことから、本発明のダイヤフラムは、寒冷地での使用にも充分耐えうるものである。
【0048】
そして、上記ダイヤフラムのガス室側ゴム層が、ECOにより形成され、上記油室側ゴム層が、AN量17〜25重量%のH−NBRにより形成されると、より一層低温領域でのシール性が向上し、優れた耐久性を備えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアキュムレータの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のダイヤフラムの一例の構成を示す要部拡大断面図である。
【図3】本発明のダイヤフラムの樹脂層の構成を示す要部拡大断面図である。
【図4】本発明のダイヤフラムの他の例の構成を示す要部拡大断面図である。
【図5】図1において、リング状保持材を下分割シェルにかしめ付ける前の状態の要部断面図である。
【図6】図1において、リング状保持材を下分割シェルにかしめ付けた後の状態の要部断面図である。
【符号の説明】
20 ダイヤフラム
21 樹脂層
22 ガス室側ゴム層
23 油室側ゴム層
Claims (3)
- ガス遮蔽用の樹脂層と、この樹脂層の両面に形成されるガス室側ゴム層および油室側ゴム層とを備えてなるダイヤフラムであって、上記ガス室側ゴム層が、エピクロロヒドリンゴムにより形成され、かつ上記油室側ゴム層が、低アクリロニトリルのアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムにより形成されていることを特徴とするダイヤフラム。
- 上記ガス室側ゴム層が、エチレンオキシド−エピクロルヒドリン共重合体により形成され、上記油室側ゴム層が、アクリロニトリル量17〜25重量%の水添アクリロニトリル−ブタジエンゴムにより形成されている請求項1記載のダイヤフラム。
- シェルと、このシェルの内部空間をガス室および油室に区画するダイヤフラムとを備えたアキュムレータであって、上記ダイヤフラムが、請求項1または2記載のダイヤフラムからなることを特徴とするアキュムレータ。
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JP2009085338A (ja) * | 2007-09-28 | 2009-04-23 | Tokai Rubber Ind Ltd | ダイヤフラムおよびそれを用いたアキュムレータ |
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WO2019004284A1 (ja) | 2017-06-29 | 2019-01-03 | イーグル工業株式会社 | アキュムレータ |
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-
2003
- 2003-03-25 JP JP2003082473A patent/JP2004286193A/ja active Pending
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