JP2004284481A - バラスト水処理装置 - Google Patents

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Kazumasa Hara
原  和正
Kiyoshi Aida
清 相田
Mitsuharu Kon
光春 昆
Kazunori Sato
一教 佐藤
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Abstract

【課題】バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物を殺滅できるバラスト水処理装置を提供する。
【解決手段】船舶のバラストタンク1に一端及び他端が連結されるバラスト水循環流路5、このバラスト水循環流路5に設けられた、ポンプ11、廃熱源19からの冷却水とバラスト水3との間で熱交換を行う冷却水熱交換器13、廃熱源19からの排気とバラスト水3との間で熱交換を行う排気熱交換器15、及びバラスト水が収容される処理タンク17、さらに、処理タンク17に設けられてバラスト水3に空気を混合して処理タンク17内に噴出し、処理タンク17内に収容されたバラスト水3中にキャビテーション気泡を発生させるノズル25、このノズル25にバラスト水3に混合される空気を供給する空気供給部27、31を備えた構成とする。これにより、バラストタンク1内のバラスト水3をバラスト水循環流路5に循環させることで、熱とキャビテーションにより処理し、バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物を殺滅できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、船舶のバラストタンク内に収容されたバラスト水中の有害生物の殺滅を行うバラスト水処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶のバラストタンク内に収容されたバラスト水の排出により、バラスト水に含まれていた有害生物が流出して水質汚染などの有害生物の影響が拡大するのを抑制するため、沿岸海域といった水生生物などが比較的多い場所で船舶のバラストタンクに注入されたバラスト水を、一度、水生生物の比較的少ない大洋上で交換するといった対策が行われている。これは、沿岸などでバラスト水を排出するとき、水生生物の比較的少ない大洋上で注入されたバラスト水を排出することにより、有害生物の影響の拡大を抑制しようとするものである。
【0003】
ところが、このように大洋上でバラスト水の入れ替えを行ったとしても、バラストタンク内の有害生物を完全に排出することはできず、バラストタンク内に有害生物が残留してしまう。このため、水生生物の比較的少ない大洋水をバラストタンクに注入したとしても、バラストタンク内に有害生物が残留した状態では、有害生物の影響の拡大を抑制することは難しい。そこで、バラストタンク内に残留する有害生物の殺滅を行うことが考えられている。
【0004】
このようなバラストタンク内に残留する有害生物の殺滅を行う方法として、バラストタンク内のバラスト水を排出した後、バラスト水として汲み上げた海水をエンジンの冷却水の熱で加熱し、この加熱された海水を、バラストタンク内に注入してバラストタンクの底部に張ったり、バラストタンクの側壁に向けて噴出することで、バラストタンク内の底部に沈殿した有害生物や、壁面に付着した有害生物などを熱により殺滅することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、廃熱源の廃熱を利用して有害生物を殺滅できるため、有害生物の殺滅のために消費するエネルギーを抑えることができる。
【0005】
【特許文献1】
実開平8−91288号公報(第3−6頁、第1図、第2図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、バラストタンク内に残留する有害生物の殺滅後に大洋水をバラスト水として導入したとき、水生生物が比較的少ない大洋水であっても有害生物が含まれていれば、バラスト水の排出により、バラスト水を排出した海域に有害生物を放出してしまうことになり、有害生物の影響の拡大を抑制できない場合がある。したがって、特許文献1のような方法では、バラスト水の排出後にバラストタンク内に残留する有害生物の殺滅を行うことはできるが、バラスト水自体に含まれている有害生物の殺滅を行うことはできないため、有害生物の影響の拡大を抑制できない場合が生じる。このように、特許文献1のような方法を用いても、水質汚染が拡大してしまう場合があるため、バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物を殺滅できるバラスト水処理装置が必要とされている。
【0007】
本発明の課題は、バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物を殺滅することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のバラスト水処理装置は、船舶のバラストタンクに一端及び他端が連結されるバラスト水循環流路と、このバラスト水循環流路に設けられ、バラスト水をこのバラスト水循環流路に通流させるポンプと、このバラスト水循環流路に設けられ、廃熱源の廃熱によりこのバラスト水循環流路を通流するバラスト水を加熱するバラスト水加熱手段とを備えた構成とすることにより上記課題を解決する。
【0009】
このような構成とすることにより、バラストタンク内のバラスト水は、ポンプの駆動によりバラスト水循環流路を循環し、バラスト水循環流路を循環する間に、バラスト水加熱手段で廃熱源の廃熱により加熱される。このように、バラスト水を加熱することでバラスト水中に含まれる有害生物が、その熱により殺滅される。つまり、バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物を殺滅できる。
【0010】
また、バラスト水加熱手段は、廃熱源の廃熱を回収した廃熱源の冷却水とバラスト水循環流路を通流するバラスト水との間で熱交換を行う冷却水熱交換器、及び廃熱源の排気とバラスト水循環流路を通流するバラスト水との間で熱交換を行う排気熱交換器の少なくとも一方である構成とすることにより、廃熱源の廃熱によりバラスト水を加熱できる。
【0011】
また、冷却水熱交換器と排気熱交換器との双方を備えた構成とすれば、いずれか一方の熱交換器のみの場合よりもバラスト水を高温に加熱できるため、バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物の殺滅能力を向上できる。
【0012】
さらに、バラスト水循環流路に設けられ、廃熱源の廃熱で加熱されたバラスト水循環流路を通流するバラスト水と、バラストタンクからバラスト水循環流路に流入した未加熱のバラスト水との間で熱交換を行う予熱用熱交換器を備えた構成とする。このような構成とすれば、予熱したバラスト水を冷却水熱交換器などで加熱することになるため、バラスト水をより高温に加熱でき、バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物の殺滅能力をより向上できる。
【0013】
また、バラスト水循環流路に設けられ、キャビテーションによりバラスト水を処理するキャビテーション処理手段を備え、このキャビテーション処理手段は、バラスト水が収容される処理タンクと、バラスト水に空気を混合して処理タンク内に噴出し、処理タンク内に収容されたバラスト水中にキャビテーション気泡を発生させるノズルと、このノズルにバラスト水に混合される空気を供給する空気供給部とを有する構成とする。このような構成とすれば、熱による有害生物の殺滅に加えて、キャビテーションの作用、つまり、キャビテーション気泡の崩壊による衝撃圧などによっても有害生物を殺滅できるため、バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物の殺滅能力をさらに向上できる。
【0014】
さらに、空気供給部は、加熱された空気をノズルに供給する構成とすれば、ノズルから噴出される気泡の容積の膨張が増大することにより、キャビテーション気泡の崩壊による衝撃圧も増大し、キャビテーションによる有害生物の殺滅能力を向上できる。
【0015】
また、空気供給部は、廃熱源の排気とノズルに供給する空気との間で熱交換を行う空気加熱用熱交換器を有する構成とすれば、加熱された空気をノズルに供給する構成としても、加熱された空気の供給で消費されるエネルギーを抑えることができる。
【0016】
さらに、冷却水熱交換器よりも排気熱交換器がバラスト水の流れに対して下流側に位置しており、前記バラスト水循環流路の、前記冷却水熱交換器よりもバラスト水の流れに対して下流側の部分のバラスト水の温度を検出する温度検出手段と、この温度検出手段で検出した温度に応じて開閉する弁を有し、バラスト水循環流路の冷却水熱交換器と排気熱交換器との間の部分と、バラスト水循環流路の排気熱交換器よりもバラスト水の流れに対して下流側の部分とを連通させ、排気熱交換器をバイパスするバイパス流路とを備えた構成とする。このような構成とすれば、温度検出手段で検出した温度に応じて、排気熱交換器にバラスト水を通流させるか否かを切り換えることができるため、排気熱交換器を通流することでバラスト水が蒸発して塩分やその他の固体分が析出するのを抑制できる。
【0017】
また、バラストタンクを複数備え、バラスト水循環流路は、バラスト水循環流路へバラストタンク内のバラスト水が流入する側の端部であり、複数の管路に分岐した流入側分岐管管路部と、バラスト水循環流路からバラストタンク内へバラスト水を流出する側の端部であり、複数の管路に分岐した流出側分岐管路部とを有し、1つの流入側分岐管路部及び流出側分岐管路部は、1つのバラストタンクに連結され、流入側分岐管路部及び流出側分岐管路部は、各々、流入側分岐管路部内及び流出側分岐管路部内の流路を開閉する弁を有している構成とする。このような構成とすれば、複数のバラストタンクを備えている場合、弁の切り換えにより、各バラストタンクに対して有害生物の殺滅処理を個別に行えるため、排注水したバラストタンクのみを処理することができ、有害生物の殺滅処理効率を向上できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用してなるバラスト水処理装置の一実施形態について図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなるバラスト水処理装置の該略構成を示すフロー図である。図2は、本発明を適用してなるバラスト水処理装置の処理タンクに設けられたノズルの一部を拡大して示す断面図である。
【0019】
本実施形態のバラスト水処理装置は、図1に示すように、船舶に設けられた複数のバラストタンク1に対して設けられており、バラストタンク1内に収容されたバラスト水3が流入して通流し、バラスト水3を再びバラストタンク1内に流出させて戻すバラスト水循環管路5を備えている。
【0020】
バラスト水循環管路5は、バラストタンク1内のバラスト水3が流入する側の端部、及びバラストタンク1内へバラスト水3を流出する側の端部が、各々、バラストタンク1の数に対応した数に分岐され、複数の流入側分岐管路部5a及び流出側分岐管路部5bとなっている。1つの流入側分岐管路部5a及び流出側分岐管路部5bが1つのバラストタンク1に連結されており、流入側分岐管路部5a及び流出側分岐管路部5bは、各々バラストタンク1内で開口している。また、流入側分岐管路部5a及び流出側分岐管路部5bには、各々、流入側分岐管路部5a及び流出側分岐管路部5b内のバラスト水3の通流を制御する弁7、9が設けられている。
【0021】
このようなバラスト水循環管路5には、バラスト水3の流れに対して上流側から、ポンプ11、バラスト水加熱手段となる冷却水熱交換器13及び排気熱交換器15、処理タンク17などが設けられている。ポンプ11は、バラスト水3をバラスト水循環管路5に通流させる送液用のポンプである。冷却水熱交換器13は、バラスト水循環管路5内を通流するバラスト水3と、本実施形態の廃熱源である船舶に搭載されたエンジン19の冷却水との間で熱交換を行うものである。したがって、冷却水熱交換器13には、エンジン19との間に冷却水を循環させる冷却水循環管路21が設けられている。排気熱交換器15は、バラスト水循環管路5内を通流するバラスト水3と、エンジン19の排気管路23を通流するエンジン19からの排気との間で熱交換を行うものである。
【0022】
処理タンク17は、バラスト水3を収容し、収容したバラスト水3中に発生させたキャビテーション気泡により、収容したバラスト水3を処理するものである。処理タンク17の1つの側壁には、処理タンク17内に収容したバラスト水3中にキャビテーション気泡を発生させるためのノズル25が設けられている。ノズル25には、排気熱交換器15のバラスト水3の出口側からのバラスト水循環管路5が連結されている。
【0023】
また、ノズル25には、ノズル25に空気を供給する空気供給管路27の一端が連結されている。空気供給管路27の他端は、エンジン19の排気管路23を通流するエンジン19からの排気と、空気吸入口部28から吸入して空気供給管路27に供給する空気との間で熱交換を行う空気加熱用熱交換器29に連結されている。空気供給管路27には、空気加熱用熱交換器29側からノズル25に向けて空気を通流させる送気用のポンプ31が設けられている。
【0024】
ノズル25は、図2に示すように、内部の流路が、バラスト水循環管路5が連結された側から中央部分に向けて漸次縮径し、中央部分から処理タンク17がわの噴出口25aに向けて漸次拡径している。本実施形態では、ノズル25の流路が最も縮径した最縮径部25bは、ノズル25の流路の中央部分の噴出口25a寄りに位置している。また、ノズル25の流路内には、空気供給管路27の一端部が挿入された状態となっている。空気供給管路27のノズル25の流路内に挿入された端部は、開口に向けて漸次縮径した形状になっており、その開口は、最縮径部25bのバラスト水循環管路5側近傍に位置している。
【0025】
このようにノズル25は、2重管構造になっており、バラスト水3を処理タンク17に噴出するとき、最縮径部25bよりもバラスト水3の流れに対して上流側の比較的高圧のバラスト水3に空気を混合して撹拌すると共に、最縮径部25bよりもバラスト水3の流れに対して下流側で空気が混入されたバラスト水3を減圧することによってバラスト水3中にキャビテーション気泡を発生させ、このキャビテーション気泡を伴うバラスト水3をウオータージェットとして処理タンク17中に噴出させるものである。処理タンク17内では、ノズル25からのウオータージェットの噴出によって発生したキャビテーション気泡が成長と圧縮・崩壊を繰り返す現象、すなわちキャビテーションが発生する。
【0026】
また、本実施形態では、図1に示すように、ノズル25の噴出口25aから噴出したウオータージェットが衝突する処理タンク17内の位置に、底部から上方に向けて突設された衝突板17aが設けられている。ノズル25から噴出されたウオータージェットが処理タンク17内の衝突板17aに衝突することで、処理タンク17内でのキャビテーション気泡の発生が促進される。このように、処理タンク17、ノズル25、空気供給管路27、空気加熱用熱交換器29、そしてポンプ31などが、キャビテーションによりバラスト水を処理するキャビテーション処理手段を構成している。
【0027】
バラスト水循環管路5には、ポンプ11、冷却水熱交換器13、排気熱交換器15、処理タンク17などの他、予熱用熱交換器35、温度センサ37、バイパス管路39なども設けられている。予熱用熱交換器35は、冷却水熱交換器13よりもバラスト水3の流れに対して上流側のバラスト水循環管路5の部分を通流するバラスト水3と、処理タンク17よりもバラスト水3の流れに対して下流側のバラスト水循環管路5の部分を通流するバラスト水3との間で熱交換を行うものである。
【0028】
温度センサ37は、排気熱交換器15よりもバラスト水3の流れに対して下流側のバラスト水循環管路5の部分に設けられており、このバラスト水循環管路5の部分内を通流するバラスト水3の温度を検出する。バイパス管路39は、冷却水熱交換器13と排気熱交換器15との間のバラスト水循環管路5の部分で分岐し、排気熱交換器15と処理タンク17との間のバラスト水循環管路5の部分に合流する管路であり、排気熱交換器15をバイパスする流路を形成する。バイパス管路39には、このバイパス管路39内のバラスト水3の通流及び遮断を切り換える弁41が設けられている。
【0029】
なお、弁41に電磁弁を用い、この電磁弁からなる弁41と温度センサ37とを図示していない制御部に配線を介して電気的に接続し、温度センサ37に対して予め設定した温度以上になったら弁41を開き、この予め設定した温度未満のときには、弁41を閉じる制御を行わせることができる。また、このような制御は、作業者が温度センサ37の検出温度を確認し、弁41を操作するといった手動操作で行うこともできる。
【0030】
このような構成のバラスト水処理装置の動作と本発明の特徴部について説明する。本実施形態では、複数のバラストタンク1を備えており、バラスト水3の処理は、1つのバラストタンク1毎に行って行く。このため、バラスト水3の処理は、バラスト水3の処理を行うバラストタンク1に対応する流入側分岐管路部5aの弁7、及び流出側分岐管路部5bの弁9を開き、その他のバラストタンク1に対応する流入側分岐管路部5aの弁7、及び流出側分岐管路部5bの弁9は閉じた状態で行われる。ポンプ11によってバラスト水循環管路5に流入したバラスト水3は、予熱用熱交換器35で、既に処理を終えたバラスト水3との間で熱交換を行い、既に処理を終えたバラスト水3の熱で予熱され温度上昇する。
【0031】
予熱されたバラスト水3は、冷却水熱交換器13に流入し、ここでエンジン19の廃熱を回収した冷却水との熱交換により加熱される。冷却水熱交換器13で加熱されたバラスト水3は、排気熱交換器15に流入し、ここでエンジン19の排気との熱交換により、さらに加熱される。これにより、冷却水熱交換器13と排気熱交換器15での加熱によりバラスト水3の温度が上昇し、バラスト水3中に含まれる有害生物、例えば水質汚染などを招くプランクトンや細菌類などの微生物が熱により殺滅される。
【0032】
排気熱交換器15から出たバラスト水3は、処理タンク17に送られ、ノズル25から、空気加熱用熱交換器29で加熱された空気と共に、処理タンク17内に噴出される。このとき、ノズル25から処理タンク17内に噴出されるバラスト水の水流は、ノズル25によって比較的高圧の状態から減圧されることによってキャビテーション気泡を含むウオータージェットとして噴出される。さらに、本実施形態では、昇温されたバラスト水3に、昇温された空気を混合して噴出しているため、気泡の容積の膨張が増大して気泡の加速が大きくなり、キャビテーション気泡の崩壊による衝撃圧も増大する。このようなキャビテーションにより生じた衝撃圧により有害生物の細胞が破壊されるため、処理タンク17内では、熱で殺滅できなかった有害生物が、キャビテーションの作用により殺滅される。
【0033】
なお、処理タンク17内での処理は、バラスト水3を通流させながら行う連続処理で行なうこともでき、また、処理タンク17よりもバラスト水3の流れに対して下流側に設けられた弁、例えば開いていた流出側分岐管路部5bの弁9を一旦閉じて、バラスト水3の通流を止めて処理タンク17にバラスト水3を貯留した状態で行うバッチ処理で行うこともできる。連続処理で行うか、バッチ処理で行うかは、バラスト水3中に含まれる有害生物の種類や量、キャビテーションによる有害生物の殺滅能力などにより適宜選択する。
【0034】
処理タンク17で処理されたバラスト水3は、予熱用熱交換器35で、バラストタンク1からバラスト水循環流路5に流入したバラスト水3と熱交換を行った後、流出側分岐管路部5bを介してバラストタンク1に戻される。このような、バラストタンク1に収容されたバラスト水3のバラスト水循環管路5による循環により、バラスト水3中の有害生物が、熱とキャビテーションにより殺滅される。
【0035】
ところで、バラスト水3は海水であるため、冷却水熱交換器13と排気熱交換器15とでの加熱により温度が高くなり過ぎて蒸発すると、塩分などの固体分を析出することになる。析出した塩分などの固体分は、バラスト水処理装置を構成する配管や機器類の腐食の促進や、配管、ノズル、ポンプなどの目詰まりの発生など、バラスト水処理装置に不具合を引き起こす場合がある。そこで、本実施形態では、固体分の析出を抑制するため、温度センサ37、そしてバイパス管路39及び弁41が設けられている。すなわち、温度センサ37で検出した温度が予め設定した温度以上になると、排気熱交換器15でバラスト水3が加熱されないように、弁41を開いてバイパス管路39にバラスト水3を流す。これにより、バラスト水3の不要な加熱を抑制し、固体分の析出を抑制している。
【0036】
また、バラストタンク1は、図示していないが、船倉から荷を下ろしたときに船舶のバランスを取るため、荷の代わりとなるバラスト水が船体と船倉の間を埋めるような位置に設けられた空間である。つまり、バラストタンク1は、船体の海水や外気と接触する船底や船側の壁面と船倉との間に位置しており、船底や船側の壁面によって画成されていることになる。このため、バラストタンク1は、保温構造にはなっておらず、バラストタンク1内のバラスト水3を加熱しても船底や船側の壁面から海水や外気に放熱されるため、絶えず冷却されていることになる。したがって、バラストタンク1内で加熱やウオータジェットによる有害生物の殺滅を行うことは難しく、本実施形態のように、バラスト水循環流路5に冷却水熱交換器13や排気熱交換器15、そして処理タンク17などを設けることでバラスト水3中の有害生物の殺滅が可能になる。
【0037】
このように、本実施形態のバラスト水処理装置では、バラストタンク1内のバラスト水3は、ポンプ11の駆動によりバラスト水循環流路5を循環し、このバラスト水循環流路5を循環する間に、エンジン19の廃熱を回収した冷却水の熱により冷却水熱交換器13で加熱される。したがって、バラスト水3中に含まれる有害生物が熱により殺滅されるため、バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物を殺滅できる。
【0038】
さらに、排気熱交換器15を備えており、バラスト水循環流路5を通流するバラスト水は、排気熱交換器15によりエンジン19からの排気によっても加熱されるため、冷却水熱交換器13のみの場合よりもバラスト水3を高温に加熱できるため、バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物の殺滅能力を向上できる。加えて、予熱用熱交換器35を備えており、バラスト水3は、冷却水熱交換器13に流入する前に、予熱用熱交換器35において、処理が終わった昇温されたバラスト水3によって予熱される。このため、冷却水熱交換器13や排気熱交換器15でバラスト水をより高温に加熱でき、バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物の殺滅能力をより向上できる。
【0039】
さらに、本実施形態のバラスト水処理装置では、処理タンク17、ノズル25、空気供給管路27、そしてポンプ31などで構成されたキャビテーションによりバラスト水を処理するキャビテーション処理手段を備えている。このため、熱による有害生物の殺滅に加えて、キャビテーション気泡の崩壊による衝撃圧などによっても有害生物を殺滅でき、バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物の殺滅能力をさらに向上できる。
【0040】
加えて、空気供給管路27やポンプ31などを含む空気供給部は、空気加熱用熱交換器29で加熱された空気をノズル25に供給するため、ノズルから噴出される気泡の容積の膨張が増大することにより、キャビテーション気泡の崩壊による衝撃圧も増大し、キャビテーションによる有害生物の殺滅能力を向上できる。さらに、空気加熱用熱交換器29は、エンジン19の排気との間の熱交換により空気を加熱するため、加熱された空気の供給のために消費されるエネルギーを抑えることができる。
【0041】
さらに、本実施形態のバラスト水処理装置では、排気熱交換器15よりも下流側に温度センサ37、そしてバイパス管路39及び弁41が設けられており、この温度センサ37で検出した温度に応じて弁41を開閉している。このため、バラスト水循環流路5内のバラスト水3の温度が必要以上に高い温度になると弁41を開いてバイパス管路39にバラスト水3を通流させ、排気熱交換器15でバラスト水3が加熱されないようにすることができる。したがって、バラスト水が過剰な加熱により蒸発して塩分やその他の固体分が析出するのを抑制でき、これにより、バラスト水処理装置に不具合が生じるのを抑制できる。
【0042】
加えて、バラスト水循環流路5は、複数の流入側分岐管管路部5a及び流出側分岐管路部5bに分岐しており、流入側分岐管路部5a及び流出側分岐管路部5bには、各々、流入側分岐管路部5a及び流出側分岐管路部5b内の流路を開閉する弁7、9を設けている。このため、複数のバラストタンク1を備えている場合、弁7、9の切り換えにより、各バラストタンク1に対して有害生物の殺滅処理を個別に行えるため、排注水したバラストタンク1のみを処理することができ、有害生物の殺滅処理効率を向上できる。
【0043】
さらに、従来のようにバラストタンク内に残留した有害生物を殺滅する場合は、大洋上でバラスト水の交換を行うことになるため、ある地域特有の水生生物を大洋上に放出してしまったり、バラスト水交換中は船舶の安定性が低下するといった問題もある。しかし、本実施形態のバラスト水処理装置では、大洋上でバラスト水の交換を行う必要がないため、このような問題は生じない。
【0044】
また、本実施形態では、バラスト水加熱手段として冷却水熱交換器13に加えて、排気熱交換器15や予熱用熱交換器35を設けているが、エンジンなどの廃熱源からの廃熱によりバラスト水を有害生物の殺滅に必要な温度に昇温できれば、冷却水熱交換器13または排気熱交換器15のいずれか一方のみを設けた構成や、却水熱交換器13または排気熱交換器15と予熱用熱交換器35とを設け構成などに適宜できる。さらに、本実施形態では、温度センサ37、バイパス管路39及び弁41を設けているが、バラスト水加熱手段で加熱してもバラスト水が蒸発する様な温度にならない場合には、温度センサ37、バイパス管路39及び弁41を設けていない構成にすることもできる。
【0045】
また、本実施形態では、処理タンク17、ノズル25、空気供給管路27、そしてポンプ31などで構成されたキャビテーション処理手段を備えているが、バラスト水加熱手段のみを設けた構成にすることもできる。ただし、バラスト水には熱では殺滅できない有害生物が含まれる可能性があるため、キャビテーション処理手段を設けておく方が望ましい。さらに、本実施形態のキャビテーション処理手段は、空気加熱用熱交換器29を含んでいるが、空気加熱用熱交換器29を含まない構成にすることもできる。ただし、キャビテーションによる有害生物の殺滅能力を向上する上では、空気加熱用熱交換器29を設けることが望ましい。
【0046】
また、本実施形態では、船舶にバラスト水処理装置を搭載した場合について説明しているが、バラスト水処理装置は、陸上に、例えば港湾施設などとして設置することもできる。このとき、バラスト水処理装置は、例えば、寄港した船舶のバラストタンクにバラスト水循環流路のに連通する管路を連結して、このバラストタンク内のバラスト水を装置内のバラスト水循環流路に導入する。そして、船舶のバラストタンク内のバラスト水を陸上に設置されたバラスト水処理装置のバラスト水循環流路に通流し、循環させることで、船舶のバラストタンク内のバラスト水中の有害生物を殺滅する。この後、船舶のバラストタンクから港湾内にバラスト水を排出する。このように、陸上にバラスト水処理装置を設置する場合、廃熱源は、船舶用エンジンに限らず、ごみ焼却炉、発電用ボイラなどを廃熱源とすることもできる。
【0047】
このように、本発明のバラスト水処理装置は、本実施形態の構成に限らず、様々な構成にできる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、バラストタンク内に収容されたバラスト水中に含まれる有害生物を殺滅できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用してなるバラスト水処理装置の一実施形態の該略構成及び動作を示すフローである。
【図2】本発明を適用してなるバラスト水処理装置の一実施形態の処理タンクに設けられたノズルの一部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
1 バラストタンク
3 バラスト水
5 バラスト水循環流路
11、31 ポンプ
13 冷却水熱交換器
15 排気熱交換器
17 処理タンク
19 エンジン
25 ノズル
27 空気供給管路

Claims (6)

  1. 船舶のバラストタンクに一端及び他端が連結されるバラスト水循環流路と、該バラスト水循環流路に設けられ、バラスト水を該バラスト水循環流路に通流させるポンプと、該バラスト水循環流路に設けられ、廃熱源の廃熱により該バラスト水循環流路を通流するバラスト水を加熱するバラスト水加熱手段とを備えたバラスト水処理装置。
  2. 前記バラスト水加熱手段は、廃熱源の廃熱を回収した廃熱源からの冷却水と前記バラスト水循環流路を通流するバラスト水との間で熱交換を行う冷却水熱交換器、及び廃熱源からの排気と前記バラスト水循環流路を通流するバラスト水との間で熱交換を行う排気熱交換器の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載のバラスト水処理装置。
  3. 前記バラスト水循環流路に設けられ、キャビテーションによりバラスト水を処理するキャビテーション処理手段を備え、該キャビテーション処理手段は、バラスト水が収容される処理タンクと、バラスト水に空気を混合して前記処理タンク内に噴出し、前記処理タンク内に収容されたバラスト水中にキャビテーション気泡を発生させるノズルと、該ノズルにバラスト水に混合される空気を供給する空気供給部とを有することを特徴とする請求項1または2に記載のバラスト水処理装置。
  4. 前記空気供給部は、加熱された空気を前記ノズルに供給することを特徴とする請求項3に記載のバラスト水処理装置。
  5. 前記冷却水熱交換器よりも前記排気熱交換器がバラスト水の流れに対して下流側に位置しており、前記バラスト水循環流路の、前記冷却水熱交換器よりもバラスト水の流れに対して下流側の部分のバラスト水の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段で検出した温度に応じて開閉する弁を有し、前記バラスト水循環流路の前記冷却水熱交換器と前記排気熱交換器との間の部分と、前記バラスト水循環流路の前記排気熱交換器よりもバラスト水の流れに対して下流側の部分とを連通させて前記排気熱交換器をバイパスするバイパス流路とを備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置。
  6. 前記バラストタンクを複数備え、前記バラスト水循環流路は、前記バラスト水循環流路へバラストタンク内のバラスト水が流入する側の端部であり、複数の管路に分岐した流入側分岐管管路部と、前記バラスト水循環流路からバラストタンク内へバラスト水を流出する側の端部であり、複数の管路に分岐した流出側分岐管路部とを有し、1つの前記流入側分岐管路部及び前記流出側分岐管路部は、1つの前記バラストタンクに連結され、前記流入側分岐管路部及び前記流出側分岐管路部は、各々、前記流入側分岐管路部内及び前記流出側分岐管路部内の流路を開閉する弁を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置。
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