JP2004281085A - フレキシブル有機elデバイスおよびフレキシブル有機elディスプレイ - Google Patents

フレキシブル有機elデバイスおよびフレキシブル有機elディスプレイ Download PDF

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Abstract

【課題】実用可能なフレキシブル化されたフレキシブル有機ELデバイスおよびフレキシブル有機ELディスプレイを提供する。
【解決手段】フレキシブル有機ELデバイス10は、有機発光層12が陽極14および陰極16で挟まれるとともに、陽極14の外側にプラスチックフィルム基板18が設けられ、陰極16の外側にプラスチックフィルム20が設けられる。プラスチックフィルム基板18およびプラスティックフィルム20の周縁部は張り合わされ、有機発光層12等を封止する。有機発光層12には、有機発光層12の厚み寸法T1以上の高さ寸法T2を有する構造体22が配設される。構造体22は、フレキシブル有機ELデバイス10を曲げたときに有機発光層12にかかりうる応力に抗する、いわば障壁として機能する。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ELデバイスおよび有機ELディスプレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
米国の企業の論文に端を発した有機EL(electroluminescence)の研究において、その後の基礎研究およびディスプレイ開発の両面において日本の企業が果たした役割は非常に大きく、世界初の有機ELディスプレイの実用化は日本の企業によって実現されている。この有機ELディスプレイは、ガラス基板上に画素を構成するRGB3原色の有機EL素子(デバイス)がマトリクス状に形成されたフラットパネルディスプレイである(非特許文献1参照。)。
【0003】
この実用化を機に、有機ELディスプレイへの関心は益々高まり、現在では、有機ELディスプレイは次世代の有力なフラットパネルディスプレイ候補としてして認められつつある。
【0004】
フラットパネルディスプレイとしては、既に商品化されたものとして液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)があり、また、電界放出ディスプレイ(FED)も実用化に向けた取り組みが行われている。
【0005】
これら他のフラットパネルディスプレイに比較したときの有機ELディスプレイの特徴は次のような点にある。
【0006】
まず、有機ELディスプレイは、他のフラットパネルディスプレイに比べて、非常に薄型、軽量に形成することができるとともに、例えば液晶ディスプレイがバックライトを必要とする非自発光型であるのに対して自発光型であるため、視野角依存性がなく視認性に優れ、かつ、表示速度が大きいために動画表示に適している点に特徴がある。
【0007】
また、有機ELディスプレイは、他のフラットパネルディスプレイに比べて、構造が簡単であり、コスト面でも優位であるとされている。
【0008】
有機EL素子は、発光体として用いる有機材料成分によって、低分子EL素子と高分子EL素子とに分類される。
【0009】
低分子EL素子は、一般的には、例えば図1(a)に示すように、ガラス基板1上に、陽極2、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層5および陰極6がこの順に積層された構成を有する。発光層4は、発光材料成分として低分子有機化合物を用いている。なお、陽極2および陰極6を除く、正孔輸送層3、発光層4および電子輸送層5の各層は、いずれも有機薄膜で形成されており、これら有機薄膜で形成される、正孔輸送層3、発光層4および電子輸送層5の全体を発光層と呼ぶこともある。有機薄膜であるこれらの層3〜5は、それぞれ数十nm程度の厚みであり、全体としての厚みも100〜200nm程度と非常に薄い。これらの層3〜5は、通常、真空装置のなかで有機材料を加熱、蒸発させて基板上に成膜する真空蒸着法で作製される。
【0010】
一方、高分子EL素子は、一般的には、例えば図1(b)に示すように、ガラス基板1上に、陽極2、導電性高分子層3a、発光層4aおよび陰極6がこの順に積層された構成を有する。すなわち、有機薄膜(広義の発光層)としては、それぞれ厚みが数十nm程度の導電性高分子層3aおよび発光材料成分として高分子有機化合物を用いた発光層4aの2層構造となっている。有機薄膜は、水または有機溶剤に溶解した溶液をガラス基板上に塗布することにより、簡便に形成することができる。このように、高分子EL素子は、素子構造が上記低分子EL素子に比べて簡易であり、また、一般的に真空装置を必要としないため、安価に素子を製造することができる可能性がある。
【0011】
これらの有機EL素子は、陽極2と陰極6との間に電圧を印加することにより、電子および正孔をそれぞれの電極から放出し、各層を介して発光層(狭義の発光層、図1(a)、(b)中、発光層4、4a)に電子および正孔を注入して再結合させ、これにより有機分子が励起されることにより発光を生じさせる。そして、この発光を外部に取り出して、視認するものである。なお、図1(a)、(b)では、これらの作用を模式的に示している。
【0012】
有機EL素子を用いたディスプレイ(以下、有機ELディスプレイという。)をフルカラー表示可能とするためには、有機EL素子から放出される光を3原色(RGB)に変換する必要がある。この変換方式には、次の3つの型がある。
【0013】
塗り分け方式は、図2(a)に示すように、3原色のうちのいずれか1色を呈することができる発光層4b〜4dを同一のガラス基板1上に形成するものである。なお、図2(a)中、参照符号2aは透明電極(陽極)を、参照符号6bは金属電極(陰極)をそれぞれ示す。図2(b)、(c)においても同様である。
【0014】
この他にも、図2(b)に示すように、例えば青色発光を呈する発光層4eの発光側に陽極2aを介して色変換層7a〜7cを設け、青色発光の高い励起エネルギにより緑色と赤色の色変換層の蛍光色素を励起して緑色と赤色の光を得る色変換方式や、図2(c)に示すように、白色発光を呈する発光層4fの発光側に陽極2aを介してカラーフィルタ8a〜8cを設け、それぞれのカラーフィルタで所定の色成分を透過させて3原色の光を得るカラーフィルタ方式等も提案されている。
【0015】
有機ELディスプレイの画素を駆動する方式には、マトリクス状に配列された画素を線順次駆動するパッシブ型と、画素単位に複数個配設するTFT(薄膜トランジスタ)で駆動するアクティブ型とがある。前者のパッシブ型が装置の構造が比較的簡易であるという利点を有するのに対して、後者のアクティブ型は高速動作が可能である等の利点を有する。初期の有機ELディスプレイにおいては、パッシブ型を中心として開発が進められてきたが、最近では、アクティブ型が主流となりつつある。
【0016】
アクティブ型の駆動方式を用いる有機ELディスプレイは、ガラス基板側から発光を取り出すボトムエミッション型の場合、画素形成領域全体に対する開口の比率を表す、開口率が20%程度に止まる。これに対して透明金属で形成した陰極側から発光を取り出すトップエミッション型の場合、開口率をかなり大きくとることができる。
【0017】
ところで、有機ELディスプレイは、寿命の延長が大きな課題であり、例えば、水分による特性の劣化を防止するために、通常は、金属やガラスのキャップを使って封止される。封止工程は不活性ガスで満たされたグローブボックス内で行われ、ディスプレイ内は不活性ガスで満たされた状態となる。場合によっては、吸湿剤等をディスプレイに内蔵させて。ディスプレイ作製工程中に混入した水分を除去することも行われている。
【0018】
有機ELディスプレイは、上記のような課題を抱えるものの、前記したように、他のフラットパネルディスプレイに比べて、種々の点で優位であり、特に、非常に薄型に形成することができるために、フレキシブル化の点において最も期待されるディスプレイであるといえる。
【0019】
すなわち、LCDでは一般に数μmの程度の厚みを有する液晶セルの作り込みが必要であるとともにバックライトを設けることが必須であり、また、PDPやFEDではガスを封入しあるいは真空に保持したセルが必要である。これに対して、有機ELディスプレイでは、数十〜200nmの厚みの薄い発光層を含め、基本的に各部が薄膜の積層構造で形成され、TFTも含めてせいぜい数μmの厚みに止まるため、極度に薄膜化することが可能である。
【0020】
【非特許文献1】
Displays,22,pp.43、(2001)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フレキシブル化された有機ELディスプレイは、実用可能なものが開発されていないのが現状である。
【0022】
最大の課題は、図3に示すように、フレキシブル化された有機ELディスプレイを曲げたとき、フィルム基板9aおよびカバーフィルム9bの変形に伴って発光層9cに応力(図3中、矢印で示す。)がかかり、発光層9cが変形することで素子の機能が損傷、破壊されうることである。特に、折り曲げ回数が多いときには、そのおそれが大きい。
【0023】
また、金属キャップ等の封止構造を設けることなく、ガラス基板に変えて樹脂シート基板を用いてフレキシブル化された有機ELディスプレイを作製する場合、樹脂シート基板を透過して有機発光層に侵入しうる水分等をいかにして防ぐかという点も考慮する必要がある。
【0024】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、実用可能なフレキシブル化されたフレキシブル有機ELデバイスおよびそのフレキシブル有機ELデバイスを用いたフレキシブル有機ELディスプレイを提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るフレキシブル有機ELデバイスは、1対の電極と該1対の電極に挟まれる有機発光層とを備え、該有機発光層の厚み寸法以上の高さ寸法を有する構造体が該有機発光層を貫通して配設され、該1対の電極のうちのいずれか一方の電極側にプラスチックフィルム基板が設けられるとともに、他方の電極側にカバーフィルムが設けられ、該プラスチックフィルム基板および該カバーフィルムの周縁部が張り合わされてなることを特徴とする。
【0026】
ここで、有機発光層は、電子輸送層等とは別に輸送された電子と正孔の再結合により発光する機能のみを分担する狭義の意味での発光層のみではなく、電子輸送層等の他の有機薄膜層と有機薄膜層からなる狭義の発光層を含む有機薄膜の積層構造も含む意である。したがって、上記有機発光層の厚みは、狭義の意味での発光層の厚みのみでなく、電子輸送層等の他の有機薄膜層を含む広義の発光層全体の厚みも含まれ得る。また、構造体は、プラスチックフィルム基板およびカバーフィルムの間にあって、例えば、スペーサあるいは障壁として機能するものをいう。
【0027】
本発明の上記の構成により、デバイスを曲げたときにプラスチックフィルム基板およびカバーフィルムの変形により発光層にかかる応力を構造体がいわば障壁として受けとめ、発光層にかかる応力が緩和されるため、デバイスの機能の損傷、破壊を軽減することができ、実用可能なフレキシブル化されたフレキシブル有機ELデバイスを得ることができる。
【0028】
この場合、前記プラスチックフィルム基板の表裏面のいずれか1方または双方の側にガスバリア性を有する層が設けられるとともに、前記カバーフィルムがガスバリア性を有する単一層に形成され、または該ガスバリア性を有する層を含む積層フィルム構造に形成されてなると、封止構造を格別に設ける必要がない。
【0029】
また、この場合、前記構造体の高さ寸法が前記有機発光層の厚み寸法の1.1〜1000倍であると、プラスチックフィルム基板等と有機発光層との接触をより確実に防止することができる。
【0030】
また、本発明に係るフレキシブル有機ELディスプレイは、上記のフレキシブル有機ELデバイスを有することを特徴とする。
【0031】
これにより、上記した本発明のフレキシブル有機ELデバイスの効果を好適に得ることができる。
【0032】
この場合、前記構造体が画素単位に設けられてなると、各画素を保護することができて好適である。
【0033】
このとき、前記構造体が隣り合う画素を構成する部分の間の隙間に設けられてなると、構造体の存在が開口率を損なうことがない。
【0034】
また、この場合、画素単位に駆動源として少なくとも2個以上の薄膜トランジスタが設けられてなると、高速の動画表示を得ることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明に係るフレキシブル有機ELデバイスおよびフレキシブル有機ELディスプレイの好適な実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0036】
まず、本実施の形態例に係るフレキシブル有機ELデバイスについて、図4を参照して説明する。
【0037】
本実施の形態例に係るフレキシブル有機ELデバイス10は、図4に示すように、有機発光層12が陽極14および陰極16で挟まれるとともに、陽極14の外側にプラスチックフィルム基板18が設けられ、陰極16の外側にプラスチックフィルム(カバーフィルム)20が設けられる。プラスチックフィルム基板18およびプラスティックフィルム20の周縁部は張り合わされ、有機発光層12等を封止する。この場合、貼り合わせは、プラスチックフィルム基板18およびプラスティックフィルム20を接着剤を用いて接着する方法で行ってもよく、また、プラスチックフィルム基板18およびプラスティックフィルム20を加熱して溶着(融着)させる方法で行ってもよい。
【0038】
有機発光層12は、有機化合物からなる母材に発光体としての有機化合物が添加された、例えば数十〜数百nm程度の厚みに形成される薄膜である。
【0039】
母材の有機化合物は、低分子化合物であってもよく、また、高分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、例えば、アルミキノリール錯体等を用いることができ、また、高分子化合物としては、例えば、ポリフルオレンやポリフェニレンビニレンの誘導体等を用いることができる。
【0040】
発光体の有機化合物は、蛍光発光を呈するものであってもよく、また、燐光発光を呈するものであってもよい。後者の燐光発光を呈する有機化合物としては、イリジウムや白金原子を有する金属錯体等を用いることができる。
【0041】
なお、有機発光層12は、図4の例のような単一層であってもよく、また、母材あるいは発光体の材料を異ならせた複数の有機発光層の積層構造であってもよく、さらにまた、電子輸送層や正孔輸送層等の有機薄膜を含む積層構造であってもよい。
【0042】
有機発光層12には、有機発光層12の厚み寸法T1以上の高さ寸法T2を有する構造体22が有機発光層12を貫通して配設される。構造体22の高さ寸法T2は、発光層12の厚み寸法T1と同一またはそれ以上とし、好ましくは、有機発光層12の厚み寸法T1の1.1〜1000倍であると、プラスチックフィルム基板やプラスティックフィルムと有機発光層との接触をより確実に防止することができる。図4に示す例では、構造体22の高さ寸法T2を有機発光層12の厚み寸法T1の約3倍としており、これにより、プラスティックフィルム20と陰極16との間に空間Aが形成される。この空間Aに例えば窒素等の活性の低い、あるいは不活性のガスが満たされる。また、図4に示す例のように、構造体22は、一端部が陽極14と面一(同一平面)におよび他端部が陰極16を貫通してプラスチックフィルム基板18およびプラスティックフィルム20の対向する面に、構造体22の上下端部を接続しているが、これに限らず、陽極14および陰極16に食い込んだ形態で構造体22の上下端部を接続してもよい。
【0043】
構造体22の材料は、難導電性あるいは非導電性を有する物である限り、特に限定するものではなく、プラスチック材料や無機材料等の材料のなかから適宜選択して用いることができる。
【0044】
構造体22の形状は、特に限定するものではなく、相互に独立して形成される棒状(突起状)、格子状、ハニカム構造状等の適宜の形状とすることができる。
【0045】
例えば、構造体を格子状に形成する場合、格子の間隔(有機発光層12の面方向の格子壁間の間隔)は、デバイスを曲げたときに、応力が直接に有機発光層に作用しない範囲で適宜の寸法とすることができる。
【0046】
また、フレキシブル有機ELデバイス10を用いてフレキシブル有機ELディスプレイを作製する場合、例えば格子状に形成する構造体の格子が、画素単位に位置するように設ける。
【0047】
このとき、図6に示すように、有機発光層の隣り合う画素となる部分(有機発光層分割部10b)の間の隙間(図6中、矢印X)に格子壁(あるいは棒状部分等)22aが位置するように設けると、開口率を損なうことがない。
【0048】
プラスチックフィルム基板18は、フレキシブル性を有する限り、その厚みを特に限定するものではないが、フレキシブル性と破断、損傷等に耐え、あるいは形状保持性を確保しうる剛性とのバランスをとる観点からは、好ましくは0.1〜0.5mm程度の厚みに形成する。
【0049】
プラスチックフィルム20は、外力によって容易に破断、穴明き等するものでない限りその厚みを特に限定するものではなく、例えば、10〜200μm程度の厚みに形成する。
【0050】
プラスチックフィルム基板およびプラスチックフィルムの材料は、いずれも、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリエチレンスルホン酸、およびこれらの誘導体、さらにはその他のエンジニアリングプラスチック等を用いることができる。
【0051】
上記のように構成したフレキシブル有機ELデバイス10は、所望の形態に折り曲げて使用することができる。このとき、フレキシブル有機ELデバイス10を所望の形態に折り曲げた状態で、封止構造を有する適宜の筐体に収容することで、有機発光層12への水分や酸素の侵入を防止することができる。
【0052】
また、図5に示すフレキシブル有機ELデバイス10aのように、例えばプラスチックフィルム基板18と陽極14との間およびプラスチックフィルム20と陰極16との間に水分や酸素等の透過を阻止するバリア層24、26を設けてもよい。このようなバリア層24、26は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン等の無機材料や、アルミニウム、銅、クロム等の金属材料を用い、例えば0.01〜10μmの厚みに形成することができる。この場合、バリア層24、26は単一層に形成してもよく、また、積層構造としてもよい。また、このとき、バリア層24は、プラスチックフィルム基板18の下面側に設けてもよい。また、陰極16の上には、プラスチックフィルム20およびバリア層26を任意の順で積層した構造を設けてもよく、あるいはまた、プラスチックフィルム20を省略してバリア層26のみを設けてもよい。
【0053】
また、上記のバリア層24、26を、上記無機材料等の層と高分子プラスチック層との積層構造とし、プラスチックフィルム基板18またはプラスチックフィルム20に接する側に高分子プラスチック層を配置する構造としてもよい。これにより、バリア層24、26とプラスチックフィルム基板18やプラスチックフィルム20との熱膨張率の差や密着性の不良等に起因する剥離を防止することができる。また、高分子プラスチック層を平滑に形成することで、例えばプラスチックフィルム基板18の上面の凹凸によって生じ得る有機発光層12の不具合を軽減することができる。
【0054】
上記のように構成される本実施の形態例に係るフレキシブル有機ELデバイスは、陽極14および陰極16については、基本的に通常の有機ELデバイスと同様の材料で各層を形成することができ、また、通常の有機ELデバイスと同様の方法で作製することができる。
【0055】
以下、本実施の形態例に係るフレキシブル有機ELデバイスの作製方法について、構造体22の配設される有機発光層12、プラスチックフィルム基板18およびプラスチックフィルム20の作製方法を説明する。
【0056】
構造体22は、有機発光層12を形成するまえに予めプラスチックフィルム基板18上に形成しておく。これは、つぎに説明するように、構造体22をフォトリソグラフィー法により形成する場合、先に有機発光層12を形成しておくと、その後のフォトリソプロセスにおいて有機発光層12がダメージを受けるためである。
【0057】
構造体22は、例えば、フォトリソグラフィー法により、電極14または電極16の全面にレジスト剤を塗布し、構造体22となる部分に紫外線を照射してレジスト剤を硬化させ、レジスト剤の未硬化部分を溶剤で除去することで、形成することができる。このとき、レジスト剤として含水量が極力小さい材料を用いることにより、完成したデバイスが水分によって受ける劣化を軽減することができる。なお、構造体22の寸法精度や位置精度については厳密である必要はない。
【0058】
例えば、発光材料として低分子有機化合物を用いる場合は、スパッタ法や蒸着法により電極14または電極16上に成膜して有機発光層12を形成することができる。
【0059】
一方、発光材料として高分子有機化合物を用いる場合は、高分子有機化合物を水や有機溶剤等に溶解した溶液を印刷法等の塗布法により塗布して有機発光層12を形成することができる。特に、フレキシブル有機ELデバイスをディスプレイに用いるときは、インクジェット法を用いることにより、画素間(図6中、矢印Xで示す隙間)を精度良く分離できる(図6参照。)。また、これらの塗布法を用いることにより、低コストで大面積、高精細のディスプレイを得ることができる。
【0060】
以上説明した本実施の形態例に係るフレキシブル有機ELデバイスは、図7に示すように、デバイスを折り曲げることにより、プラスチックフィルム基板18およびプラスチックフィルム20に変形が生じて有機発光層12に向けて応力が生じるときであっても、構造体22が応力を阻止する障壁となって有機発光層12に応力がかかることが防止される。このため、有機発光層12の変形が軽減され、有機発光層12の変形に起因する素子性能の低下等の不具合を生じるおそれが軽減される。
【0061】
また、本実施の形態例に係るフレキシブル有機ELデバイスは、バリア層(ガスバリア性を有する層)を有し、格別な封止構造を設ける必要がないため、デバイスのフレキシブル性を自在に発揮することができる。
【0062】
また、既に説明したように、本実施の形態例に係るフレキシブル有機ELデバイスを用いたフレキシブル有機ELディスプレイは、上記したフレキシブル有機ELデバイスの効果を得ることができ、このとき、画素ごとに構造体を設けることで、各画素(有機EL発光層部)の損傷を防止することができ、また、このとき、画素間の隙間に構造体を設けることで、構造体が開口率を損なうことがない。
【0063】
また、上記本実施の形態例に係るフレキシブル有機ELディスプレイにおいて、画素単位に駆動源として少なくとも2個以上の薄膜トランジスタ(TFT)を設けると、高速な動画表示を得ることができる。
【0064】
ここで、複数の薄膜トランジスタは、例えば図8に示すように、TFT1はスイッチング作用を有し、TFT2は駆動作用を有する。さらに設けられる他の薄膜トランジスタは、パネル内でのTFT特性のばらつきを補正する作用を有する。なお、図8中、記号OLEDは、有機発光層を有機ダイオードとして表示したものである。
【0065】
このとき、薄膜トランジスタは、低温ポリシリコンやアモルファスシリコンを用いた形成したものであってもよく、また、有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタであってもよい。有機半導体材料としては、ペンタセン誘導体、ペリレン誘導体等の低分子系と、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェン誘導体等の高分子系を挙げることができる。低分子系を用いる場合は真空蒸着法により、また、高分子系を用いる場合は塗布法により、それぞれ活性層を形成する。
【0066】
以上説明した本実施の形態例に係るフレキシブル有機ELデバイスは、その用途として、例えば省電力の携帯電話やPDA等の情報機器や、あるいは、小型のテレビ、さらには壁掛け大型テレビにも適用することができる有機ELディスプレイについて説明したが、これに限らず、照明機器等にも適用することができる。
【0067】
【実施例】
実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0068】
厚み200μmのポリカーボネートフィルム(プラスチックフィルム基板)に、スパッタ法により、厚み5μmのSiOのバリア層を形成した。
【0069】
つぎに、RFマグネトロンスパッタ法により、バリア層の全面にITOを成膜した。そして、フォトリソプロセスで、ITO層を幅700μmでパターン化し、ストライプ状に配列される64本の陽極をバリア層上に形成した。
【0070】
さらに、陽極を含むポリカーボネートフィルムの全面にレジスト剤を塗布した後、紫外線照射により、構造体となるレジスト剤部分を硬化させ、未硬化部分を除去して、陽極間の隙間および端列の陽極の外側に、幅100μm、高さ10μの構造体を65本形成した。
【0071】
つぎに、真空蒸着法により、陽極上に緑色の燐光発光を呈する、厚みが150nmの有機発光層を形成した。有機発光層は、陽極側から順に、正孔輸送層材料、発光機能のみを分担する狭義の発光層およびホールブロック兼電荷輸送層材料からなる3層積層構造とし、全体の厚みを250nmに形成した。
【0072】
このとき、発光体(ドーパント)材料には、イリジウム錯体である下記式(1)を有するIr(ppy)を、母体(ホスト)材料には、低分子有機化合物である下記式(2)を有するフェニルカルバゾール2量体(CBP)を、正孔輸送層材料には下記式(3)を有するα−NPDを、ホールブロック兼電荷輸送層材料には下記式(4)を有するBAlqを、それぞれ用いた。
【0073】
【化1】
Figure 2004281085
【0074】
【化2】
Figure 2004281085
【0075】
【化3】
Figure 2004281085
【0076】
【化4】
Figure 2004281085
つぎに、蒸着法により、ホールブロック兼電荷輸送層の上に、LiFおよびAlの積層構造の厚み100nmの陰極を形成した。
【0077】
最後に、窒素置換したグローブボックス内でSiO層とAl層の多層膜構造の封止フィルムを貼り付け、封止フィルムおよびポリカーボネートフィルムが重なる周縁部を紫外線硬化樹脂で接着し、有機ELデバイスを完成した。
【0078】
得られた有機ELデバイスにTFT等を付加して作製した有機ELディスプレイを、曲率半径3cmに曲げ、さらにこの曲げを繰り返した状態でも、動画の表示が可能であった。また、ディスプレイの損傷も見られなかった。
【0079】
【発明の効果】
本発明に係るフレキシブル有機ELデバイスによれば、1対の電極と1対の電極に挟まれる有機発光層とを備え、有機発光層の厚み寸法以上の高さ寸法を有する構造体が該有機発光層を貫通して配設され、1対の電極のうちのいずれか一方の電極側にプラスチックフィルム基板が設けられるとともに、他方の電極側にカバーフィルムが設けられ、該プラスチックフィルム基板および該カバーフィルムが張り合わされてなるため、デバイスを曲げたときに生じ得る、デバイスの機能の損傷、破壊を軽減することができ、実用可能なフレキシブル化されたフレキシブル有機ELデバイスを得ることができる。
【0080】
また、本発明に係るフレキシブル有機ELデバイスによれば、プラスチックフィルム基板の表裏面のいずれか1方または双方の側にガスバリア性を有する層が設けられるとともに、カバーフィルムがガスバリア性を有する単一層に形成され、または該ガスバリア性を有する層を含む積層フィルム構造に形成されてなるため、封止構造を格別に設ける必要がない。
【0081】
また、本発明に係るフレキシブル有機ELディスプレイによれば、上記のフレキシブル有機ELデバイスを有するため、上記した本発明のフレキシブル有機ELデバイスの効果を好適に得ることができる。
【0082】
また、本発明に係るフレキシブル有機ELディスプレイによれば、構造体が画素単位に設けられてなるため、各画素を保護することができる。
【0083】
また、本発明に係るフレキシブル有機ELディスプレイによれば、構造体が隣り合う画素を構成する部分の間の隙間に設けられてなるため、構造体の存在が開口率を損なうことがない。
【0084】
また、本発明に係るフレキシブル有機ELディスプレイによれば、画素単位に駆動源として少なくとも2個以上の薄膜トランジスタが設けられてなるため、高速の動画表示を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機ELデバイスの概略構成を示す図であり、(a)および(b)は、広義の発光層の構成の異なる2例を示す。
【図2】白色発光可能な有機ELディスプレイの概略構成を示す図であり、(a)は発光層自体が3色発光可能な3つの分離層で構成される例を、(b)は単一の発光層に3色の色変換層を設けた例を、(c)は単一の発光層に3色のカラーフィルタを設けた例を、それぞれ示す。
【図3】従来の有機EL素子のガラス基板に変えてプラスチックフィルム基板を用いた素子を曲げたときの状態を説明するための図である。
【図4】本実施の形態例に係るフレキシブル有機ELデバイスの概略構成を示す図である。
【図5】変形例のフレキシブル有機ELデバイスの概略構成を示す図である。
【図6】図6とは別の構成の変形例のフレキシブル有機ELデバイスの構成を説明するための図である。
【図7】本実施の形態例に係るフレキシブル有機ELデバイスを曲げたときの状態を説明するための図である。
【図8】本実施の形態例に係る有機ELディスプレイの駆動回路の1画素分の構成を示す図である。
【符号の説明】
10、10a フレキシブル有機ELデバイス
12 有機発光層
14 陽極
16 陰極
18 プラスチックフィルム基板
20 プラスチックフィルム
22 構造体
22a 格子壁
24、26 バリア層

Claims (7)

  1. 1対の電極と該1対の電極に挟まれる有機発光層とを備え、
    該有機発光層の厚み寸法以上の高さ寸法を有する構造体が該有機発光層を貫通して配設され、
    該1対の電極のうちのいずれか一方の電極側にプラスチックフィルム基板が設けられるとともに、他方の電極側にカバーフィルムが設けられ、該プラスチックフィルム基板および該カバーフィルムが張り合わされてなることを特徴とするフレキシブル有機ELデバイス。
  2. 前記プラスチックフィルム基板の表裏面のいずれか1方または双方の側にガスバリア性を有する層が設けられるとともに、前記カバーフィルムがガスバリア性を有する単一層に形成され、または該ガスバリア性を有する層を含む積層フィルム構造に形成されてなることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル有機ELデバイス。
  3. 前記構造体の高さ寸法が前記有機発光層の厚み寸法の1.1〜1000倍であることを特徴とする請求項1または2記載のフレキシブル有機ELデバイス。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブル有機ELデバイスを有することを特徴とするフレキシブル有機ELディスプレイ。
  5. 前記構造体が画素単位に設けられてなることを特徴とする請求項4記載のフレキシブル有機ELディスプレイ。
  6. 前記構造体が隣り合う画素を構成する部分の間の隙間に設けられてなることを特徴とする請求項5記載のフレキシブル有機ELディスプレイ。
  7. 画素単位に駆動源として少なくとも2個以上の薄膜トランジスタが設けられてなることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のフレキシブル有機ELディスプレイ。
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