JP2004278830A - 乾燥炉 - Google Patents
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Abstract
【課題】効率のよい昇温によってワークを短時間でかつ乾燥不良を起こすことなく乾燥させることができる乾燥炉を提供すること。
【解決手段】本発明の乾燥炉1は、搬送されるワーク2に熱風を吹き付けることによりワーク2の表面を乾燥させるものであり、炉殻3、排気ダクト、熱風誘導体21等を備えている。炉殻3はワーク搬送空間S1を区画している。排気ダクトはワーク搬送空間S1にて開口する排気口9を炉殻3の側壁4上部に有する。熱風誘導体21は、排気口9に設けられ、排気口9の奥側に行くに従って低くなる傾斜面を有する。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明の乾燥炉1は、搬送されるワーク2に熱風を吹き付けることによりワーク2の表面を乾燥させるものであり、炉殻3、排気ダクト、熱風誘導体21等を備えている。炉殻3はワーク搬送空間S1を区画している。排気ダクトはワーク搬送空間S1にて開口する排気口9を炉殻3の側壁4上部に有する。熱風誘導体21は、排気口9に設けられ、排気口9の奥側に行くに従って低くなる傾斜面を有する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車ボディ等に代表されるワークに熱風を吹き付けることにより当該ワークの表面を乾燥させる乾燥炉に係り、特にはその排気口付近の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、自動車ボディの塗装ラインにおいては、ワークである自動車ボディをコンベアの台車上に載置して搬送しながら塗装を行った後、さらに自動車ボディを台車ごと高温の塗装用乾燥炉内に搬入して塗膜の焼付乾燥を行う。このような塗装ラインに使用される塗装用乾燥炉としては、前段に輻射加熱ゾーンを備えかつ後段に対流加熱ゾーンを備えたものが従来よく知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで従来における塗装用乾燥炉51の一例を示す。図7はこの塗装用乾燥炉51における対流加熱ゾーンを示している。対流加熱ゾーンにおける炉殻52は左右一対の側壁53、上壁54及び底壁55によって区画され、その内部にはワーク搬送空間S1が形成されている。側壁53の内側の下部位置には熱風を供給するための熱風供給ダクト56が設けられ、これらの熱風供給ダクト56には吹出口57が設けられている。一方、側壁53の上部位置には排気口58が設けられ、その排気口58を介して図示しない排気ダクトとワーク搬送空間S1とが連通されている。
【0004】
このように構成された塗装用乾燥炉51の場合、吹出口57から吹き出された熱風は、自動車ボディ59の側面下端部(いわゆるロッカー部)に衝突してから自動車ボディ59の側面に沿って上昇し、その際に自動車ボディ59に熱を与えて昇温させる。その結果、自動車ボディ59表面の塗膜から溶剤成分が蒸発して、自動車ボディ59が全体的に乾燥される。一方、炉内の雰囲気は塗膜中の溶剤成分を多く含んで汚染された状態となるが、この汚染した空気(排ガス)は排気口58から吸い込まれて排気ダクト側に排出される。なお、図7中にて熱風の流れは曲線状矢印で表現されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−334367号公報(図5)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、側壁53の上部位置にて排気を行う従来の塗装用乾燥炉51の場合、自動車ボディ59の側面に沿って上昇する途中で、いくぶん熱風が排気口58から直に吸い込まれて(即ちショートカットして)しまう。つまり、自動車ボディ59の加熱に寄与せずに炉外に排出される熱風の量が多く、自動車ボディ59に十分に熱を与えることが難しいという欠点があった。また、側壁53の上部内側面近傍においては空気が滞留しやすいため、自動車ボディ59との接触による熱交換が効率よく行われず、やはり自動車ボディ59に十分に熱を与えることが難しいという欠点があった。以上のように、従来では効率のよい昇温を達成することができず、自動車ボディ59を短時間で乾燥させることができなかった。それゆえ、自動車ボディ59を完全に乾燥させるべく炉長を長くする必要が生じる。そしてこれに伴い、エネルギーの無駄が多くなる、ランニングコストが高くつく等の問題が生じていた。
【0007】
さらに従来においては、排ガスに含まれている溶剤成分が凝結してヤニとなり、そのヤニが排気口58から垂れて塗膜に付着することで、ブツ、ゴミと称する乾燥不良を引き起こす場合があった。よって、品質のよい塗膜を得るためには、この問題を解消しておく必要があった。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、効率のよい昇温によってワークを短時間でかつ乾燥不良を起こすことなく乾燥させることができる乾燥炉を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、搬送されるワークに熱風を吹き付けることにより前記ワークの表面を乾燥させる乾燥炉において、ワーク搬送空間を区画する炉殻と、前記ワーク搬送空間にて開口する排気口を前記炉殻の側壁上部に有する排気ダクトと、前記排気口に設けられ、前記排気口の奥側に行くに従って低くなる傾斜面を有する熱風誘導体とを備えたことを特徴とした乾燥炉をその要旨とする。
【0010】
従って、請求項1に記載の発明によると、炉殻の側壁上部付近の空気は、排気口の奥側に行くに従って低くなる熱風誘導体の傾斜面に沿って誘導されることで、排気ダクト側に吸い込まれやすくなる。つまり、炉殻の側壁上部付近の空気が確実に排出される結果、そこに空気が滞留しにくくなる。一方、炉殻の側壁を下方から上昇してくる熱風については、熱風誘導体に阻まれることによって、排気口に直に吸い込まれにくくなる。即ち、熱風のショートカットが起こりにくくなる。従って、本発明によれば、ワークの加熱に寄与せずに炉外に排出される熱風の量が減少し、かつ、熱風がワークに確実に接触するようになる結果、ワークに十分に熱を与えることが可能となる。ゆえに、効率のよい昇温によってワークを短時間で乾燥させることができる。
【0011】
また、炉内にて発生したヤニは、前記傾斜面に沿って流れた後に排気ダクト側に排出されるため、排気口からワーク搬送空間側に垂れにくくなる。従って、垂れたヤニがワークに付着する等の不具合が回避される。よって、本発明によれば、乾燥不良を起こすことなくワークを乾燥させることができる。
【0012】
なお、前記乾燥炉は、搬送される車両ボディに熱風を吹き付けることにより前記車両ボディの表面の塗膜を乾燥させる塗装用乾燥炉であることが好適である(請求項5)。かかる塗装用乾燥炉の具体例としては、下塗り塗装の塗膜を乾燥させる下塗り炉、中塗り炉、上塗り炉などがあるほか、塗装ゾーンに搬入して塗装を行う前に表面に付着している水分を乾燥除去する水切り炉などがある。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記熱風誘導体は、前記炉殻の側壁内面よりも前記ワーク搬送空間側に突出していることをその要旨とする。
【0014】
従って、請求項2に記載の発明によると、熱風誘導体をワーク搬送空間側に突出させたことにより、空気を誘導する作用が向上する結果、炉殻の側壁上部付近の空気の滞留をより確実に防止することができる。また、熱風のショートカットを防止する作用も向上する。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記熱風誘導体は、前記排気口において上下方向に離間して配設された複数枚の熱風誘導板を有することをその要旨とする。
【0016】
従って、請求項3に記載の発明によると、空気が複数枚の熱風誘導板間の隙間を通過する際に整流されるため、炉殻の側壁上部付近における気流がほぼ一定方向となり、気流がほぼ理想的な状態となる。ゆえに、その部分の空気をいっそう確実にかつ効率よく排出することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記熱風誘導板の前記炉殻の側壁内面からの突出量は、最下部に位置するものが最も大きいことをその要旨とする。
【0018】
従って、請求項4に記載の発明によると、最下部に位置する熱風誘導板が最も突出しているため、下方から上昇してくる熱風がワーク搬送空間の中央方向に誘導される。このため、熱風をワークの側面及び上面に確実に接触させることができ、ワークに十分に熱を与えることが可能となる。また、最下部に位置していない熱風誘導板の先端からヤニが垂れたとしても、それよりも突出している最下部に位置する熱風誘導板によってそのヤニが受け止められる。従って、垂れたヤニがワークに付着する等の不具合が回避される。
【0019】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
【0020】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態の塗装用乾燥炉1を図1〜図3に基づき詳細に説明する。図1は、塗装用乾燥炉1における対流加熱ゾーンを、ワーク搬送方向に直交する面で切った様子を概略的に示している。図2は、熱風誘導板ユニット21が取り付けられた排気口9の付近の様子を概略的に示している。図3は、熱風誘導板ユニット21の正面図である。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態の塗装用乾燥炉1は、ワークである自動車ボディ2に熱風を吹き付けることにより、自動車ボディ2の表面に形成された塗膜を乾燥させるための乾燥炉である。この塗装用乾燥炉1は数十mの長さを有するトンネル型に形成されていて、その両端には搬入口及び搬出口(いずれも図示略)が形成されている。塗装用乾燥炉1の主要部を構成する炉殻3は、左右一対の側壁4、上壁5及び床壁6によって構成されるとともに、その内部にはワーク搬送空間S1が区画形成されている。また、炉殻3の周囲は図示しない断熱材によって包囲されている。炉殻3内において床壁6の上には、炉殻3の長手方向に沿って延びるようにフロアコンベア7が敷設されている。このフロアコンベア7上には台車8が設置され、その台車8上には自動車ボディ2が水平状態で載置されている。フロアコンベア7は、自動車ボディ2が載置された台車8を搬入口から搬出口に向けて搬送するようになっている。
【0022】
図1に示されるように、炉殻3の下部内側の位置には、ワーク搬送空間S1に熱風を供給するための熱風供給ダクト12が配設されている。熱風供給ダクト12には、ノズル状をした複数の吹出口11がワーク搬送方向(炉殻3の長手方向)に沿って所定間隔を隔てて配設されている。これらの吹出口11は、熱風供給ダクト12とワーク搬送空間S1とを連通させている。吹出口11の先端部は、自動車ボディ2のロッカー部を狙うべく斜め上方向に向けられている。その結果、各吹出口11の先端部からロッカー部に向けて150℃〜170℃の熱風が勢いよく吹き出されるようになっている。
【0023】
図1,図2に示されるように、炉殻3を構成する側壁4の上部には、正面視で矩形状を呈する複数の排気口9がワーク搬送方向(炉殻3の長手方向)に沿って所定間隔を隔てて配設されている。これらの排気口9は、いずれもワーク搬送空間S1にて開口するとともに、炉殻3の外部にある図示しない排気ダクトに接続されている。従って、ワーク搬送空間S1内にて発生した汚染空気は、これらの排気口9を介して炉外に排出されるようになっている。
【0024】
図1,図2,図3に示されるように、これらの排気口9には、熱風誘導体である熱風誘導ユニット21が設置されている。本実施形態の熱風誘導ユニット21は、排気口9の開口形状にほぼ合致した形状(即ち矩形状)であり排気口9に対して着脱可能な構造の枠体24と、5枚の熱風誘導板L1〜L5とによって構成されている。5枚の熱風誘導板L1〜L5は同じ寸法を有する平板状部材であって、各熱風誘導板L1〜L5の両端は熱風誘導板支持体である枠体24に対して固定されている。これらの熱風誘導板L1〜L5は互いに等間隔となるように配置されている。そして、このような熱風誘導ユニット21を排気口9に装着した場合、5枚の熱風誘導板L1〜L5が上下方向に離間した状態で排気口9内に配設された状態となる。ゆえに、5枚の熱風誘導板L1〜L5の上面は、排気口9の奥側(言い換えると排気ダクト側、図2の右方向)に行くに従って低くなる傾斜面となっている。本実施形態では、前記傾斜面の傾斜角(鉛直方向を基準とした傾斜角)が約45°になるように設定されている。なお、熱風誘導ユニット21の装着状態においては、排気口9の開口部上方付近の空気のほうが、排気口9の開口部下方付近の空気よりも吸い込まれやすくなる。また、5枚の熱風誘導板L1〜L5は側壁4の内面よりもワーク搬送空間S1側に突出しており、その突出量はほぼ等しくなっている(図2参照)。
【0025】
次に、このように構成された塗装用乾燥炉1の作用について説明する。
【0026】
ワークである自動車ボディ2を対流加熱ゾーンに搬入して、吹出口11の先端部からロッカー部に向けて熱風を吹き付けると、熱風は自動車ボディ2の側面と側壁4の内面との隙間を通り抜けて上昇する。このような上昇過程において熱風は、熱風誘導ユニット21の有する各熱風誘導板L1〜L5に阻まれることによって、排気口9に直に吸い込まれにくくなる。即ち、熱風のショートカットが起こりにくくなる。その理由は、各熱風誘導板L1〜L5の下面側(特に最下部に位置する熱風誘導板L5の下面側)が、上昇してくる熱風をワーク搬送空間S1の中央方向に誘導するガイド面として機能しうるからである。このため、中央方向に進路を変えた熱風は、自動車ボディ2の側面から上面に到達し、その際に自動車ボディ2に確実に接触して効率よく熱交換を行う。その結果、自動車ボディ2が短時間で効率よく加熱される。さらに、側壁4の上部付近に到った汚染空気は、排気口9の奥側に行くに従って低くなる各熱風誘導板L1〜L5の傾斜面に沿って誘導され、排気ダクト側に速やかに吸い込まれる。よって、側壁4の上部付近の汚染空気が確実に排出される結果、そこに空気が滞留しにくくなる。
【0027】
また、乾燥時に炉内にてヤニ23が発生したとしても、そのヤニ23は前記傾斜面に沿って斜め下方に流れた後に排気ダクト側に排出されるため、排気口9からワーク搬送空間S1側に垂れにくいようになっている(図2参照)。
【0028】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0029】
(1)本実施形態の塗装用乾燥炉1は、上記構成の熱風誘導ユニット21を排気口9の箇所に備えている。よって、側壁4の上部付近の空気滞留を防止することができるため、車両ボディ2の加熱に寄与せずに炉外に排出される熱風の量が減少する。しかも、熱風のショートカットを防止することができるため、従来に比べて熱風が車両ボディ2に確実に接触するようになる。そしてこれらの理由により、少ないエネルギーでも効率よく車両ボディ2を昇温することができ、車両ボディ2表面の塗膜を短時間で乾燥させることができる。従って、特に炉長を長くしなくても自動車ボディ2を完全に乾燥させることが十分可能となり、エネルギーの節約及びランニングコストの削減を図ることができる。
【0030】
(2)また、本実施形態の塗装用乾燥炉1によれば、炉内にて発生したヤニが排気口9からワーク搬送空間S1側に垂れにくくなり、垂れたヤニが自動車ボディ2に付着する等の不具合が回避される。よって、ブツ、ゴミと称する乾燥不良を起こすことなく、自動車ボディ2を乾燥させることができる。
【0031】
(3)この塗装用乾燥炉1では、各熱風誘導板L1〜L5を側壁4の内面よりもワーク搬送空間S1側に突出させている。従って、各熱風誘導板L1〜L5を突出させない構成を採った場合に比べて空気を誘導する作用が向上する結果、側壁4の上部付近の空気の滞留をより確実に防止することができる。また、熱風のショートカットを防止する作用も向上させることができる。
【0032】
(4)本実施形態では、複数枚の熱風誘導板L1〜L5を有する熱風誘導ユニット21を、熱風誘導体として用いている。このような構成であると、空気が複数枚の熱風誘導板L1〜L5間の隙間を通過する際に整流される。そのため、側壁4の上部付近における気流がほぼ一定方向となり、気流が理想的な状態となる。ゆえに、その部分の空気をいっそう確実にかつ効率よく排出することができ、空気の滞留をより確実に防止することができる。
【0033】
(5)本実施形態にて使用した熱風誘導ユニット21は、複数枚の熱風誘導板L1〜L5を水平に支持する枠体24を含んで構成されている。従って、別個独立に形成された複数枚の熱風誘導板L1〜L5を1つの排気口9に対して取り付けるような構成に比べて、少ない労力で着脱作業を行うことができ、メインテナンス性にも優れている。
[第2の実施の形態]
【0034】
以下、本発明を具体化した第2の実施形態の塗装用乾燥炉1における熱風誘導板ユニット31を図4に基づいて詳細に説明する。図4は、第2の実施形態の熱風誘導板ユニット31が取り付けられた排気口9の付近の様子を概略的に示している。なお、ここでは第1の実施形態と相違している構成についてのみ言及し、共通している構成については同じ部材番号を付すのみとする。
【0035】
第1の実施形態では5枚の熱風誘導板L1〜L5の側壁4内面からの突出量がほぼ等しかったのに対し、本実施形態では前記突出量がみな異なっている(図4参照)。より具体的にいうと、最下部に位置する熱風誘導板L5の突出量が最も大きく、L4→L3→L2→L1となるに従って(下側から上側にいくに従って)突出量が徐々に小さくなっている。なお、最下部に位置する熱風誘導板L5の突出量は、最上部に位置する熱風誘導板L1の突出量の約2.5倍となっている。
【0036】
従って、本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0037】
(1)本実施形態の熱風誘導ユニット31では、側壁4の内面からの突出量に関しては、最下部に位置する熱風誘導板L5が最も大きくなっており、その突出量は第1の実施形態の約2.5倍となっている。従って、下方から上昇してくる熱風をワーク搬送空間S1の中央方向に誘導する作用が、前記第1の実施形態のときに比べて大きい。このため、熱風を自動車ボディ2の側面及び上面に確実に接触させることができ、自動車ボディ2に十分に熱を与えることが可能となる。それゆえ、より少ないエネルギーで効率よく車両ボディ2を昇温することができるようになる。
【0038】
(2)また、熱風誘導板L1の先端からヤニ23が垂れたとしても、そのすぐ下にある熱風誘導板L2によって受け止められる。同様に、熱風誘導板L2から垂れるヤニ23を熱風誘導板L3が受け止め、熱風誘導板L3から垂れるヤニ23を熱風誘導板L4が受け止め、熱風誘導板L4から垂れるヤニ23を最終的に熱風誘導板L5が受け止めることになる。従って、垂れたヤニ23が自動車ボディ2に付着する等の不具合を回避することができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0040】
・熱風誘導体である熱風誘導ユニットは、炉殻3の側壁4内面からワーク搬送空間S1側に突出していなくてもよい。例えば、図5に示す別の実施形態の熱風誘導ユニット41は、炉殻3の側壁4内面からいくぶん引っ込んだ状態で排気口9に設けられている。この構成であればワーク搬送空間S1側にヤニ23が垂れにくくなる。
【0041】
・また、図5に示す別の実施形態のように、各熱風誘導板L1〜L5の先端部の下方に、返し構造を有するヤニ受け部42を設け、そのヤニ受け部42によってヤニ23を受け止めるようにしてもよい。かかるヤニ受け部42は、上昇してくる熱風の流れを阻害しない形状であることが望ましく、また、炉殻3の側壁4内面から引っ込んだ状態で排気口9内に設けられることがよい。
【0042】
・各熱風誘導板L1〜L5の突出量は、上記各実施形態に限定されることはなく、任意に変更することが許容される。例えば、熱風誘導板L1,L2,L3,L4の突出量を等しくし、最下部に位置する熱風誘導板L5の突出量のみをそれらより大きくしてもよい。
【0043】
・上記各実施形態では、平板状部材からなる熱風誘導板L1〜L5を用いて熱風誘導ユニット21,31,41を構成していたが、例えば、図6に示す別の実施形態の熱風誘導ユニット46のように構成してもよい。即ち、最下部に位置する熱風誘導板L5について、湾曲状凹面を有する板状部材に変更してもよい。この場合には、図6のように当該湾曲状凹面をワーク搬送空間S1の側に向けて配置する。それにより、上昇してくる熱風をワーク搬送空間S1の中央方向に向けてよりスムーズに案内することができ、熱風の進路をより確実に変更させることができる。なお、それ以外の熱風誘導板L1,L2,L3,L4についても同様に湾曲状凹面を有する板状部材に変更しても構わない。
【0044】
・前記各実施形態では、5枚の熱風誘導板L1〜L5からなる熱風誘導ユニット21,31,41,46を用いた例を示したが、熱風誘導板L1〜L5の数は4枚以下または6枚以上であってもよいほか、1枚のみであってもよい。また、熱風誘導体は複数枚の熱風誘導板L1〜L5をユニット化したものでなくてもよい。
【0045】
・熱風誘導板L1〜L5の傾斜角は45°に限定されず、適宜変更することが可能である。また、熱風誘導ユニット21,31,41,46に、熱風誘導板L1〜L5の傾斜角を変更するための傾斜角調整機構を付加してもよい。
【0046】
・熱風誘導体は、前記各実施形態のように板状の部材(即ち熱風誘導板L1〜L5)を有するものばかりでなく、例えば、熱風を所定方向に誘導しうる管状の部材を有するものであっても構わない。
【0047】
・本発明の乾燥炉は、自動車ボディ2等のワークをほぼ一定の速度で搬送しながら乾燥を行う連続乾燥炉として具体化されてもよいほか、搬送と一旦停止とを繰り返しながらワークの乾燥を行うバッチ乾燥炉として具体化されてもよい。
【0048】
・前記実施形態では、本発明を自動車ボディ2を乾燥するための乾燥炉1として具体化したが、勿論これに限定されることはない。例えば、本発明を、列車ボディのように自動車ボディ2以外の車両ボディを乾燥するための乾燥炉として具体化してもよい。また、車両ボディ以外のもの(特に車両のように大きくて重いワーク)を乾燥するための乾燥炉として具体化してもよい。
【0049】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0050】
(1)前記複数枚の熱風誘導板の前記炉殻の側壁内面からの突出量は、最下部に位置するものが最も大きく、下側から上側にいくに従って徐々に小さくなるように設定されていることを特徴とした請求項1乃至5のいずれか1項に記載の乾燥炉。
【0051】
(2)前記複数枚の熱風誘導板のうち少なくとも最下部に位置するものは、前記ワーク搬送空間の側に湾曲状凹面を有することを特徴とした請求項3乃至5のいずれか1項に記載の乾燥炉。従って、この技術的思想によると、熱風をワーク搬送空間の中央方向に向けてよりスムーズに案内することができる。
【0052】
(3)前記熱風誘導体は、複数枚の熱風誘導板と、前記排気口に着脱可能な構造の熱風誘導板支持体とを含んで構成されていることを特徴とした請求項1乃至5のいずれか1項に記載の乾燥炉。従って、この技術的思想によると、着脱作業の省力化が可能であり、メインテナンス性も向上する。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1〜5に記載の発明によると、効率のよい昇温によってワークを短時間でかつ乾燥不良を起こすことなく乾燥させることができる乾燥炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第1の実施形態の塗装用乾燥炉を示す概略断面図。
【図2】第1の実施形態の塗装用乾燥炉において、熱風誘導ユニットが配設された排気口の付近の様子を示す概略断面図。
【図3】前記熱風誘導ユニットを示す正面図。
【図4】第2の実施形態の熱風誘導ユニットが配設された排気口の付近の様子を示す概略断面図。
【図5】別の実施形態の熱風誘導ユニットが配設された排気口の付近の様子を示す概略断面図。
【図6】別の実施形態の熱風誘導ユニットが配設された排気口の付近の様子を示す概略断面図。
【図7】従来の塗装用乾燥炉を示す概略断面図。
【符号の説明】
1…乾燥炉としての塗装用乾燥炉
2…ワークとしての自動車ボディ
3…炉殻
4…側壁
9…排気口
21,31,41,46…熱風誘導体としての熱風誘導ユニット
L1,L2,L3,L4,L5…熱風誘導板
S1…ワーク搬送空間
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車ボディ等に代表されるワークに熱風を吹き付けることにより当該ワークの表面を乾燥させる乾燥炉に係り、特にはその排気口付近の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、自動車ボディの塗装ラインにおいては、ワークである自動車ボディをコンベアの台車上に載置して搬送しながら塗装を行った後、さらに自動車ボディを台車ごと高温の塗装用乾燥炉内に搬入して塗膜の焼付乾燥を行う。このような塗装ラインに使用される塗装用乾燥炉としては、前段に輻射加熱ゾーンを備えかつ後段に対流加熱ゾーンを備えたものが従来よく知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで従来における塗装用乾燥炉51の一例を示す。図7はこの塗装用乾燥炉51における対流加熱ゾーンを示している。対流加熱ゾーンにおける炉殻52は左右一対の側壁53、上壁54及び底壁55によって区画され、その内部にはワーク搬送空間S1が形成されている。側壁53の内側の下部位置には熱風を供給するための熱風供給ダクト56が設けられ、これらの熱風供給ダクト56には吹出口57が設けられている。一方、側壁53の上部位置には排気口58が設けられ、その排気口58を介して図示しない排気ダクトとワーク搬送空間S1とが連通されている。
【0004】
このように構成された塗装用乾燥炉51の場合、吹出口57から吹き出された熱風は、自動車ボディ59の側面下端部(いわゆるロッカー部)に衝突してから自動車ボディ59の側面に沿って上昇し、その際に自動車ボディ59に熱を与えて昇温させる。その結果、自動車ボディ59表面の塗膜から溶剤成分が蒸発して、自動車ボディ59が全体的に乾燥される。一方、炉内の雰囲気は塗膜中の溶剤成分を多く含んで汚染された状態となるが、この汚染した空気(排ガス)は排気口58から吸い込まれて排気ダクト側に排出される。なお、図7中にて熱風の流れは曲線状矢印で表現されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−334367号公報(図5)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、側壁53の上部位置にて排気を行う従来の塗装用乾燥炉51の場合、自動車ボディ59の側面に沿って上昇する途中で、いくぶん熱風が排気口58から直に吸い込まれて(即ちショートカットして)しまう。つまり、自動車ボディ59の加熱に寄与せずに炉外に排出される熱風の量が多く、自動車ボディ59に十分に熱を与えることが難しいという欠点があった。また、側壁53の上部内側面近傍においては空気が滞留しやすいため、自動車ボディ59との接触による熱交換が効率よく行われず、やはり自動車ボディ59に十分に熱を与えることが難しいという欠点があった。以上のように、従来では効率のよい昇温を達成することができず、自動車ボディ59を短時間で乾燥させることができなかった。それゆえ、自動車ボディ59を完全に乾燥させるべく炉長を長くする必要が生じる。そしてこれに伴い、エネルギーの無駄が多くなる、ランニングコストが高くつく等の問題が生じていた。
【0007】
さらに従来においては、排ガスに含まれている溶剤成分が凝結してヤニとなり、そのヤニが排気口58から垂れて塗膜に付着することで、ブツ、ゴミと称する乾燥不良を引き起こす場合があった。よって、品質のよい塗膜を得るためには、この問題を解消しておく必要があった。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、効率のよい昇温によってワークを短時間でかつ乾燥不良を起こすことなく乾燥させることができる乾燥炉を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、搬送されるワークに熱風を吹き付けることにより前記ワークの表面を乾燥させる乾燥炉において、ワーク搬送空間を区画する炉殻と、前記ワーク搬送空間にて開口する排気口を前記炉殻の側壁上部に有する排気ダクトと、前記排気口に設けられ、前記排気口の奥側に行くに従って低くなる傾斜面を有する熱風誘導体とを備えたことを特徴とした乾燥炉をその要旨とする。
【0010】
従って、請求項1に記載の発明によると、炉殻の側壁上部付近の空気は、排気口の奥側に行くに従って低くなる熱風誘導体の傾斜面に沿って誘導されることで、排気ダクト側に吸い込まれやすくなる。つまり、炉殻の側壁上部付近の空気が確実に排出される結果、そこに空気が滞留しにくくなる。一方、炉殻の側壁を下方から上昇してくる熱風については、熱風誘導体に阻まれることによって、排気口に直に吸い込まれにくくなる。即ち、熱風のショートカットが起こりにくくなる。従って、本発明によれば、ワークの加熱に寄与せずに炉外に排出される熱風の量が減少し、かつ、熱風がワークに確実に接触するようになる結果、ワークに十分に熱を与えることが可能となる。ゆえに、効率のよい昇温によってワークを短時間で乾燥させることができる。
【0011】
また、炉内にて発生したヤニは、前記傾斜面に沿って流れた後に排気ダクト側に排出されるため、排気口からワーク搬送空間側に垂れにくくなる。従って、垂れたヤニがワークに付着する等の不具合が回避される。よって、本発明によれば、乾燥不良を起こすことなくワークを乾燥させることができる。
【0012】
なお、前記乾燥炉は、搬送される車両ボディに熱風を吹き付けることにより前記車両ボディの表面の塗膜を乾燥させる塗装用乾燥炉であることが好適である(請求項5)。かかる塗装用乾燥炉の具体例としては、下塗り塗装の塗膜を乾燥させる下塗り炉、中塗り炉、上塗り炉などがあるほか、塗装ゾーンに搬入して塗装を行う前に表面に付着している水分を乾燥除去する水切り炉などがある。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記熱風誘導体は、前記炉殻の側壁内面よりも前記ワーク搬送空間側に突出していることをその要旨とする。
【0014】
従って、請求項2に記載の発明によると、熱風誘導体をワーク搬送空間側に突出させたことにより、空気を誘導する作用が向上する結果、炉殻の側壁上部付近の空気の滞留をより確実に防止することができる。また、熱風のショートカットを防止する作用も向上する。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記熱風誘導体は、前記排気口において上下方向に離間して配設された複数枚の熱風誘導板を有することをその要旨とする。
【0016】
従って、請求項3に記載の発明によると、空気が複数枚の熱風誘導板間の隙間を通過する際に整流されるため、炉殻の側壁上部付近における気流がほぼ一定方向となり、気流がほぼ理想的な状態となる。ゆえに、その部分の空気をいっそう確実にかつ効率よく排出することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記熱風誘導板の前記炉殻の側壁内面からの突出量は、最下部に位置するものが最も大きいことをその要旨とする。
【0018】
従って、請求項4に記載の発明によると、最下部に位置する熱風誘導板が最も突出しているため、下方から上昇してくる熱風がワーク搬送空間の中央方向に誘導される。このため、熱風をワークの側面及び上面に確実に接触させることができ、ワークに十分に熱を与えることが可能となる。また、最下部に位置していない熱風誘導板の先端からヤニが垂れたとしても、それよりも突出している最下部に位置する熱風誘導板によってそのヤニが受け止められる。従って、垂れたヤニがワークに付着する等の不具合が回避される。
【0019】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
【0020】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態の塗装用乾燥炉1を図1〜図3に基づき詳細に説明する。図1は、塗装用乾燥炉1における対流加熱ゾーンを、ワーク搬送方向に直交する面で切った様子を概略的に示している。図2は、熱風誘導板ユニット21が取り付けられた排気口9の付近の様子を概略的に示している。図3は、熱風誘導板ユニット21の正面図である。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態の塗装用乾燥炉1は、ワークである自動車ボディ2に熱風を吹き付けることにより、自動車ボディ2の表面に形成された塗膜を乾燥させるための乾燥炉である。この塗装用乾燥炉1は数十mの長さを有するトンネル型に形成されていて、その両端には搬入口及び搬出口(いずれも図示略)が形成されている。塗装用乾燥炉1の主要部を構成する炉殻3は、左右一対の側壁4、上壁5及び床壁6によって構成されるとともに、その内部にはワーク搬送空間S1が区画形成されている。また、炉殻3の周囲は図示しない断熱材によって包囲されている。炉殻3内において床壁6の上には、炉殻3の長手方向に沿って延びるようにフロアコンベア7が敷設されている。このフロアコンベア7上には台車8が設置され、その台車8上には自動車ボディ2が水平状態で載置されている。フロアコンベア7は、自動車ボディ2が載置された台車8を搬入口から搬出口に向けて搬送するようになっている。
【0022】
図1に示されるように、炉殻3の下部内側の位置には、ワーク搬送空間S1に熱風を供給するための熱風供給ダクト12が配設されている。熱風供給ダクト12には、ノズル状をした複数の吹出口11がワーク搬送方向(炉殻3の長手方向)に沿って所定間隔を隔てて配設されている。これらの吹出口11は、熱風供給ダクト12とワーク搬送空間S1とを連通させている。吹出口11の先端部は、自動車ボディ2のロッカー部を狙うべく斜め上方向に向けられている。その結果、各吹出口11の先端部からロッカー部に向けて150℃〜170℃の熱風が勢いよく吹き出されるようになっている。
【0023】
図1,図2に示されるように、炉殻3を構成する側壁4の上部には、正面視で矩形状を呈する複数の排気口9がワーク搬送方向(炉殻3の長手方向)に沿って所定間隔を隔てて配設されている。これらの排気口9は、いずれもワーク搬送空間S1にて開口するとともに、炉殻3の外部にある図示しない排気ダクトに接続されている。従って、ワーク搬送空間S1内にて発生した汚染空気は、これらの排気口9を介して炉外に排出されるようになっている。
【0024】
図1,図2,図3に示されるように、これらの排気口9には、熱風誘導体である熱風誘導ユニット21が設置されている。本実施形態の熱風誘導ユニット21は、排気口9の開口形状にほぼ合致した形状(即ち矩形状)であり排気口9に対して着脱可能な構造の枠体24と、5枚の熱風誘導板L1〜L5とによって構成されている。5枚の熱風誘導板L1〜L5は同じ寸法を有する平板状部材であって、各熱風誘導板L1〜L5の両端は熱風誘導板支持体である枠体24に対して固定されている。これらの熱風誘導板L1〜L5は互いに等間隔となるように配置されている。そして、このような熱風誘導ユニット21を排気口9に装着した場合、5枚の熱風誘導板L1〜L5が上下方向に離間した状態で排気口9内に配設された状態となる。ゆえに、5枚の熱風誘導板L1〜L5の上面は、排気口9の奥側(言い換えると排気ダクト側、図2の右方向)に行くに従って低くなる傾斜面となっている。本実施形態では、前記傾斜面の傾斜角(鉛直方向を基準とした傾斜角)が約45°になるように設定されている。なお、熱風誘導ユニット21の装着状態においては、排気口9の開口部上方付近の空気のほうが、排気口9の開口部下方付近の空気よりも吸い込まれやすくなる。また、5枚の熱風誘導板L1〜L5は側壁4の内面よりもワーク搬送空間S1側に突出しており、その突出量はほぼ等しくなっている(図2参照)。
【0025】
次に、このように構成された塗装用乾燥炉1の作用について説明する。
【0026】
ワークである自動車ボディ2を対流加熱ゾーンに搬入して、吹出口11の先端部からロッカー部に向けて熱風を吹き付けると、熱風は自動車ボディ2の側面と側壁4の内面との隙間を通り抜けて上昇する。このような上昇過程において熱風は、熱風誘導ユニット21の有する各熱風誘導板L1〜L5に阻まれることによって、排気口9に直に吸い込まれにくくなる。即ち、熱風のショートカットが起こりにくくなる。その理由は、各熱風誘導板L1〜L5の下面側(特に最下部に位置する熱風誘導板L5の下面側)が、上昇してくる熱風をワーク搬送空間S1の中央方向に誘導するガイド面として機能しうるからである。このため、中央方向に進路を変えた熱風は、自動車ボディ2の側面から上面に到達し、その際に自動車ボディ2に確実に接触して効率よく熱交換を行う。その結果、自動車ボディ2が短時間で効率よく加熱される。さらに、側壁4の上部付近に到った汚染空気は、排気口9の奥側に行くに従って低くなる各熱風誘導板L1〜L5の傾斜面に沿って誘導され、排気ダクト側に速やかに吸い込まれる。よって、側壁4の上部付近の汚染空気が確実に排出される結果、そこに空気が滞留しにくくなる。
【0027】
また、乾燥時に炉内にてヤニ23が発生したとしても、そのヤニ23は前記傾斜面に沿って斜め下方に流れた後に排気ダクト側に排出されるため、排気口9からワーク搬送空間S1側に垂れにくいようになっている(図2参照)。
【0028】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0029】
(1)本実施形態の塗装用乾燥炉1は、上記構成の熱風誘導ユニット21を排気口9の箇所に備えている。よって、側壁4の上部付近の空気滞留を防止することができるため、車両ボディ2の加熱に寄与せずに炉外に排出される熱風の量が減少する。しかも、熱風のショートカットを防止することができるため、従来に比べて熱風が車両ボディ2に確実に接触するようになる。そしてこれらの理由により、少ないエネルギーでも効率よく車両ボディ2を昇温することができ、車両ボディ2表面の塗膜を短時間で乾燥させることができる。従って、特に炉長を長くしなくても自動車ボディ2を完全に乾燥させることが十分可能となり、エネルギーの節約及びランニングコストの削減を図ることができる。
【0030】
(2)また、本実施形態の塗装用乾燥炉1によれば、炉内にて発生したヤニが排気口9からワーク搬送空間S1側に垂れにくくなり、垂れたヤニが自動車ボディ2に付着する等の不具合が回避される。よって、ブツ、ゴミと称する乾燥不良を起こすことなく、自動車ボディ2を乾燥させることができる。
【0031】
(3)この塗装用乾燥炉1では、各熱風誘導板L1〜L5を側壁4の内面よりもワーク搬送空間S1側に突出させている。従って、各熱風誘導板L1〜L5を突出させない構成を採った場合に比べて空気を誘導する作用が向上する結果、側壁4の上部付近の空気の滞留をより確実に防止することができる。また、熱風のショートカットを防止する作用も向上させることができる。
【0032】
(4)本実施形態では、複数枚の熱風誘導板L1〜L5を有する熱風誘導ユニット21を、熱風誘導体として用いている。このような構成であると、空気が複数枚の熱風誘導板L1〜L5間の隙間を通過する際に整流される。そのため、側壁4の上部付近における気流がほぼ一定方向となり、気流が理想的な状態となる。ゆえに、その部分の空気をいっそう確実にかつ効率よく排出することができ、空気の滞留をより確実に防止することができる。
【0033】
(5)本実施形態にて使用した熱風誘導ユニット21は、複数枚の熱風誘導板L1〜L5を水平に支持する枠体24を含んで構成されている。従って、別個独立に形成された複数枚の熱風誘導板L1〜L5を1つの排気口9に対して取り付けるような構成に比べて、少ない労力で着脱作業を行うことができ、メインテナンス性にも優れている。
[第2の実施の形態]
【0034】
以下、本発明を具体化した第2の実施形態の塗装用乾燥炉1における熱風誘導板ユニット31を図4に基づいて詳細に説明する。図4は、第2の実施形態の熱風誘導板ユニット31が取り付けられた排気口9の付近の様子を概略的に示している。なお、ここでは第1の実施形態と相違している構成についてのみ言及し、共通している構成については同じ部材番号を付すのみとする。
【0035】
第1の実施形態では5枚の熱風誘導板L1〜L5の側壁4内面からの突出量がほぼ等しかったのに対し、本実施形態では前記突出量がみな異なっている(図4参照)。より具体的にいうと、最下部に位置する熱風誘導板L5の突出量が最も大きく、L4→L3→L2→L1となるに従って(下側から上側にいくに従って)突出量が徐々に小さくなっている。なお、最下部に位置する熱風誘導板L5の突出量は、最上部に位置する熱風誘導板L1の突出量の約2.5倍となっている。
【0036】
従って、本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0037】
(1)本実施形態の熱風誘導ユニット31では、側壁4の内面からの突出量に関しては、最下部に位置する熱風誘導板L5が最も大きくなっており、その突出量は第1の実施形態の約2.5倍となっている。従って、下方から上昇してくる熱風をワーク搬送空間S1の中央方向に誘導する作用が、前記第1の実施形態のときに比べて大きい。このため、熱風を自動車ボディ2の側面及び上面に確実に接触させることができ、自動車ボディ2に十分に熱を与えることが可能となる。それゆえ、より少ないエネルギーで効率よく車両ボディ2を昇温することができるようになる。
【0038】
(2)また、熱風誘導板L1の先端からヤニ23が垂れたとしても、そのすぐ下にある熱風誘導板L2によって受け止められる。同様に、熱風誘導板L2から垂れるヤニ23を熱風誘導板L3が受け止め、熱風誘導板L3から垂れるヤニ23を熱風誘導板L4が受け止め、熱風誘導板L4から垂れるヤニ23を最終的に熱風誘導板L5が受け止めることになる。従って、垂れたヤニ23が自動車ボディ2に付着する等の不具合を回避することができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0040】
・熱風誘導体である熱風誘導ユニットは、炉殻3の側壁4内面からワーク搬送空間S1側に突出していなくてもよい。例えば、図5に示す別の実施形態の熱風誘導ユニット41は、炉殻3の側壁4内面からいくぶん引っ込んだ状態で排気口9に設けられている。この構成であればワーク搬送空間S1側にヤニ23が垂れにくくなる。
【0041】
・また、図5に示す別の実施形態のように、各熱風誘導板L1〜L5の先端部の下方に、返し構造を有するヤニ受け部42を設け、そのヤニ受け部42によってヤニ23を受け止めるようにしてもよい。かかるヤニ受け部42は、上昇してくる熱風の流れを阻害しない形状であることが望ましく、また、炉殻3の側壁4内面から引っ込んだ状態で排気口9内に設けられることがよい。
【0042】
・各熱風誘導板L1〜L5の突出量は、上記各実施形態に限定されることはなく、任意に変更することが許容される。例えば、熱風誘導板L1,L2,L3,L4の突出量を等しくし、最下部に位置する熱風誘導板L5の突出量のみをそれらより大きくしてもよい。
【0043】
・上記各実施形態では、平板状部材からなる熱風誘導板L1〜L5を用いて熱風誘導ユニット21,31,41を構成していたが、例えば、図6に示す別の実施形態の熱風誘導ユニット46のように構成してもよい。即ち、最下部に位置する熱風誘導板L5について、湾曲状凹面を有する板状部材に変更してもよい。この場合には、図6のように当該湾曲状凹面をワーク搬送空間S1の側に向けて配置する。それにより、上昇してくる熱風をワーク搬送空間S1の中央方向に向けてよりスムーズに案内することができ、熱風の進路をより確実に変更させることができる。なお、それ以外の熱風誘導板L1,L2,L3,L4についても同様に湾曲状凹面を有する板状部材に変更しても構わない。
【0044】
・前記各実施形態では、5枚の熱風誘導板L1〜L5からなる熱風誘導ユニット21,31,41,46を用いた例を示したが、熱風誘導板L1〜L5の数は4枚以下または6枚以上であってもよいほか、1枚のみであってもよい。また、熱風誘導体は複数枚の熱風誘導板L1〜L5をユニット化したものでなくてもよい。
【0045】
・熱風誘導板L1〜L5の傾斜角は45°に限定されず、適宜変更することが可能である。また、熱風誘導ユニット21,31,41,46に、熱風誘導板L1〜L5の傾斜角を変更するための傾斜角調整機構を付加してもよい。
【0046】
・熱風誘導体は、前記各実施形態のように板状の部材(即ち熱風誘導板L1〜L5)を有するものばかりでなく、例えば、熱風を所定方向に誘導しうる管状の部材を有するものであっても構わない。
【0047】
・本発明の乾燥炉は、自動車ボディ2等のワークをほぼ一定の速度で搬送しながら乾燥を行う連続乾燥炉として具体化されてもよいほか、搬送と一旦停止とを繰り返しながらワークの乾燥を行うバッチ乾燥炉として具体化されてもよい。
【0048】
・前記実施形態では、本発明を自動車ボディ2を乾燥するための乾燥炉1として具体化したが、勿論これに限定されることはない。例えば、本発明を、列車ボディのように自動車ボディ2以外の車両ボディを乾燥するための乾燥炉として具体化してもよい。また、車両ボディ以外のもの(特に車両のように大きくて重いワーク)を乾燥するための乾燥炉として具体化してもよい。
【0049】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0050】
(1)前記複数枚の熱風誘導板の前記炉殻の側壁内面からの突出量は、最下部に位置するものが最も大きく、下側から上側にいくに従って徐々に小さくなるように設定されていることを特徴とした請求項1乃至5のいずれか1項に記載の乾燥炉。
【0051】
(2)前記複数枚の熱風誘導板のうち少なくとも最下部に位置するものは、前記ワーク搬送空間の側に湾曲状凹面を有することを特徴とした請求項3乃至5のいずれか1項に記載の乾燥炉。従って、この技術的思想によると、熱風をワーク搬送空間の中央方向に向けてよりスムーズに案内することができる。
【0052】
(3)前記熱風誘導体は、複数枚の熱風誘導板と、前記排気口に着脱可能な構造の熱風誘導板支持体とを含んで構成されていることを特徴とした請求項1乃至5のいずれか1項に記載の乾燥炉。従って、この技術的思想によると、着脱作業の省力化が可能であり、メインテナンス性も向上する。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1〜5に記載の発明によると、効率のよい昇温によってワークを短時間でかつ乾燥不良を起こすことなく乾燥させることができる乾燥炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第1の実施形態の塗装用乾燥炉を示す概略断面図。
【図2】第1の実施形態の塗装用乾燥炉において、熱風誘導ユニットが配設された排気口の付近の様子を示す概略断面図。
【図3】前記熱風誘導ユニットを示す正面図。
【図4】第2の実施形態の熱風誘導ユニットが配設された排気口の付近の様子を示す概略断面図。
【図5】別の実施形態の熱風誘導ユニットが配設された排気口の付近の様子を示す概略断面図。
【図6】別の実施形態の熱風誘導ユニットが配設された排気口の付近の様子を示す概略断面図。
【図7】従来の塗装用乾燥炉を示す概略断面図。
【符号の説明】
1…乾燥炉としての塗装用乾燥炉
2…ワークとしての自動車ボディ
3…炉殻
4…側壁
9…排気口
21,31,41,46…熱風誘導体としての熱風誘導ユニット
L1,L2,L3,L4,L5…熱風誘導板
S1…ワーク搬送空間
Claims (5)
- 搬送されるワークに熱風を吹き付けることにより前記ワークの表面を乾燥させる乾燥炉において、
ワーク搬送空間を区画する炉殻と、
前記ワーク搬送空間にて開口する排気口を前記炉殻の側壁上部に有する排気ダクトと、
前記排気口に設けられ、前記排気口の奥側に行くに従って低くなる傾斜面を有する熱風誘導体と
を備えたことを特徴とした乾燥炉。 - 前記熱風誘導体は、前記炉殻の側壁内面よりも前記ワーク搬送空間側に突出していることを特徴とした請求項1に記載の乾燥炉。
- 前記熱風誘導体は、前記排気口において上下方向に離間して配設された複数枚の熱風誘導板を有することを特徴とした請求項2に記載の乾燥炉。
- 前記複数枚の熱風誘導板の前記炉殻の側壁内面からの突出量は、最下部に位置するものが最も大きいことを特徴とした請求項3に記載の乾燥炉。
- 前記乾燥炉は、搬送される車両ボディに熱風を吹き付けることにより前記車両ボディの表面の塗膜を乾燥させる塗装用乾燥炉であることを特徴とした請求項1乃至4のいずれか1項に記載の乾燥炉。
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-
2003
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