JP2004277493A - 含シリコン樹脂および感光性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れたインク転落性、撥インク性および現像性を奏する含フッ素樹脂、およびインク転落性、撥インク性、に優れた塗膜を形成することができ、さらには微細なパターン形成が可能な感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリシロキサン構造を有する基(a)と、ブロック化された酸性基(b)とを有する含シリコン樹脂(A)。該含シリコン樹脂(A)と、ブロック化された酸性基(b)を有する合成樹脂(B)と、光酸発生剤(C)とを含有する感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】ポリシロキサン構造を有する基(a)と、ブロック化された酸性基(b)とを有する含シリコン樹脂(A)。該含シリコン樹脂(A)と、ブロック化された酸性基(b)を有する合成樹脂(B)と、光酸発生剤(C)とを含有する感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、含シリコン樹脂および感光性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体集積回路(IC)、液晶ディスプレイ(LCD)用薄膜トランジスタ(TFT)回路等の回路製造用のマスクを作成するために感光性樹脂組成物が用いられており、より微細なパターン構造を形成することのできる感光性樹脂組成物が要求されている。
【0003】
一方、感光性樹脂組成物は、層間絶縁膜、回路保護膜、カラーフィルタ用隔壁材、有機ELディスプレイ用隔壁材等の永久膜形成材料としても注目されている。例えば、カラーフィルタの製造においては、微小画素内にインクを噴射塗布するインクジェット法が提案されており、感光性樹脂組成物を画素パターンの隔壁として形成することが行われている。
【0004】
この場合、画素隔壁上に僅かにはずれて噴射されたインクが目的の画素内に収まるためには、インク転落性が要求されている。さらに隣り合う画素領域間におけるインクの混色等が起こるのを防止するために、水や有機溶剤等のインク溶剤をはじく性質、いわゆる撥インク性が要求されている。
【0005】
特許文献1には、(イ)環状脂肪族炭化水素骨格を有し、酸の作用により分解してアルカリ可溶性となる重合体、(ロ)活性光線または放射線の照射により酸を発生する化合物、(ハ)アンモニウム塩、および、(ニ)フッ素系および/またはシリコン系界面活性剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物が開示されており、(ニ)成分としてフッ素原子とケイ素原子の両方を含有する界面活性剤やシリコン系界面活性剤が例示されている。しかし、特許文献1におけるフッ素原子とケイ素原子の両方を含有する界面活性剤やシリコン系界面活性剤は、露光した後、アルカリ溶解性が不足しているため、アルカリ現像を必須とするフォトリソグラフィーにおいて大量に使用すると、溶け残りを生じる傾向があった。一方、少量使用した場合、塗膜表面にインク転落性および撥インク性を充分に付与することができなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−6499号公報(特許請求の範囲、段落0045)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れたインク転落性、撥インク性および現像性を奏する含シリコン樹脂を提供することを課題とする。また、本発明は、インク転落性、撥インク性に優れた塗膜を形成することができ、さらには現像時に溶け残りが生じず、微細なパターン形成が可能な感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の手段を提供するものである。
(1)式1で示されるポリシロキサン構造を有する基(a)と、ブロック化された酸性基(b)とを有する含シリコン樹脂(A)であって、含シリコン樹脂(A)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量が1〜95%である含シリコン樹脂(A)。
−(SiR1R2−O)n−SiR1R2R3 ・・・式1
(ただし、R1、R2は独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、R3は水素または炭素数1〜10の有機基を表し、nは1〜200の整数を表す。)。
【0009】
(2)水素原子の少なくとも2つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(c)をさらに有する(1)に記載の含シリコン樹脂(A)。
【0010】
(3)(1)または(2)に記載の含シリコン樹脂(A)と、下記合成樹脂(B)と、光酸発生剤(C)とを含有する感光性樹脂組成物。
合成樹脂(B):ブロック化された酸性基(b)を有し、かつ式1で示されるポリシロキサン構造を有する基(a)および水素原子の少なくとも2つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(c)を有しない樹脂。
【0011】
【発明の実施の形態】
本明細書の具体的化合物名において(メタ)アクリレートと記載されたものは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。同様に、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。
【0012】
本明細書において、特に説明のない場合、%は質量%を表す。
【0013】
本発明におけるエネルギー線とは、可視光より波長の短い電磁波、電子線等を表す。本明細書における感光とは、上記エネルギー線に感応することを表す。また、本明細書における露光とは、上記エネルギー線に暴露されることを表す。
【0014】
本発明の含シリコン樹脂(A)は、式1で示されるポリシロキサン構造を有する基(a)を有する。以下、式1で示されるポリシロキサン構造を有する基(a)をpSi基(a)という。
−(SiR1R2−O)n−SiR1R2R3 ・・・式1
ただし、R1、R2は独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、R3は水素または炭素数1〜10の有機基を表し、nは1〜200の整数を表す。
【0015】
R1、R2は独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、またシロキシ単位毎に同一でも異なっていてもよい。含シリコン樹脂(A)が良好なインク転落性、撥インク性を奏することから、R1、R2は水素、メチル基またはフェニル基の場合が好ましく、さらには、すべてのシロキシ単位のR1、R2がメチル基の場合が好ましい。また、R3には、窒素原子、酸素原子等が含まれていてもよい。
【0016】
pSi基(a)の含シリコン樹脂(A)への導入方法としては、pSi基(a)を有する単量体を共重合させる方法、反応部位を有する重合体にpSi基(a)を有する化合物を反応させる各種変性方法、pSi基(a)を有する重合開始剤を使用する方法等が挙げられる。
【0017】
pSi基(a)を有する単量体としては、CH2=CHCOO(pSi)、CH2=C(CH3)COO(pSi)等が挙げられる。ただし、pSiはpSi基(a)を表す。pSi基(a)を有する単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
反応部位を有する重合体にpSi基(a)を有する化合物を反応させる各種変性方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0019】
エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にカルボキシル基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にアミノ基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にメルカプト基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。アミノ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にカルボキシル基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。
【0020】
アミノ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にエポキシ基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。カルボキシル基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にエポキシ基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。カルボキシル基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にアミノ基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。カルボキシル基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端に塩化シリル基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。水酸基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端に塩化シリル基を有し片末端にPSi基を有する化合物を反応させる方法。
【0021】
pSi基(a)を有する重合開始剤としては、開始剤分子主鎖中に2価のポリシロキサン構造を有する基が含まれていてもよいし、開始剤分子の末端部分または側鎖に1価のポリシロキサン構造を有する基が含まれていてもよい。開始剤分子主鎖中に2価のポリシロキサン構造を有する基が含まれている開始剤としては、2価のポリシロキサン構造を有する基とアゾ基とを交互に有する化合物等が挙げられる。市販品としては、VPS−1001、VPS−0501(以上、和光純薬工業社製)が挙げられる。
【0022】
含シリコン樹脂(A)におけるpSi基(a)の含有量は、0.1〜70%が好ましく、より好ましくは5〜50%である。当該範囲であると含シリコン樹脂(A)は良好なインク転落性を奏し、本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0023】
本発明の含シリコン樹脂(A)は、ブロック化された酸性基(b)を有する。ブロック化された酸性基(b)は、エネルギー線により発生した酸により分解し得る。
【0024】
ブロック化された酸性基(b)は、酸残基と酸残基をブロックする基との結合した基であり、酸性基としては、下記式2に記載の基が挙げられる。
−COOH ・・・式2。
【0025】
ブロック化された酸性基(b)において、酸残基をブロックする基としては、下記式3〜5で表される1価の基が挙げられる。
−(CH2)aCOOR4 ・・・式3
−CR5R6OR7 ・・・式4
−MR8R9R10 ・・・式5
(式中、R4、R7は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基等の1価炭化水素基を表し、R5、R6は水素原子、または炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を表す。R8〜R10は、水素原子または炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基等の1価炭化水素基を表す。R4〜R10は、酸素、硫黄、窒素などのヘテロ原子を含んでもよい。R5とR6、R5とR7、R6とR7、R8とR9、R8とR10、R9とR10はそれぞれ結合して環を形成してもよい。aは0〜10の整数であり、Mは炭素原子、ケイ素原子およびゲルマニウム原子からなる群から選ばれる1種である。)。
【0026】
式3において、R4は炭素数4〜20の三級アルキル基が好ましく、4〜15の三級アルキル基がさらに好ましい。式3で表される基の具体例としては、t−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0027】
式4で表される基の具体例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−(2−メチルプロポキシ)エチル基、1−(n−ブトキシ)プロピル基、1−(2−メトキシエトキシ)エチル基、1−メチル−1−エトキシエチル基、1−フェノキシエチル基、1−シクロペンチルオキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が挙げられる。
【0028】
式5に表される基の具体例としては、炭素数4〜20の三級アルキル基が好ましく、4〜15の三級アルキル基がさらに好ましい。三級アルキル基としての具体例としては、t−ブチル基、1−エチルノルボルニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、2−(2−メチル)アダマンチル基、2−(2−エチル)アダマンチル基等を挙げることができる。また、トリメチルシリル基も好ましい。
【0029】
ブロック化された酸性基(b)の含シリコン樹脂(A)への導入方法としては、ブロック化された酸性基(b)を有する単量体を共重合させる方法、反応部位を有する重合体にブロック化された酸性基(b)を有する化合物を反応させる各種変性方法が挙げられる。
【0030】
含シリコン樹脂(A)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量は、1〜95%であり、3〜50%が好ましく、5〜30%がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0031】
本発明の含シリコン樹脂(A)は、好ましくは、水素原子の少なくとも2つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(c)を有する。以下、水素原子の少なくとも2つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(c)をRf基(c)という。
【0032】
Rf基(c)は直鎖状でも、分岐状でもよく、エーテル性の酸素原子を含んでもよい。Rf基(c)の具体例としては、−CF3、−CF2CF3、−CF2CHF2、−(CF2)2CF3、−(CF2)3CF3、−(CF2)4CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)6CF3、−(CF2)7CF3、−(CF2)8CF3、−(CF2)9CF3、−(CF2)11CF3、−(CF2)15CF3、−CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)2CF3、−CF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)2CF3、−CF(CF3)O(CF2)5CF3が挙げられる。
【0033】
Rf基(c)は、パーフルオロアルキル基または水素原子1個を含むポリフルオロアルキル基であることが好ましく、パーフルオロアルキル基が特に好ましい。これによって、含シリコン樹脂(A)は良好な撥インク性を奏する。また、Rf基(c)の炭素数は3〜15であることが好ましい。これによって、含シリコン樹脂(A)は良好な撥インク性、特に撥有機溶剤性を奏する。また本発明の含シリコン樹脂(A)をRf基(c)を有する単量体と他の共重合成分である単量体との共重合によって合成する場合に両者の相溶性が良好となる。
【0034】
Rf基(c)の含シリコン樹脂(A)への導入方法としては、Rf基(c)を有する単量体を共重合させる方法、反応部位を有する重合体にRf基(c)を有する化合物を反応させる各種変性方法、Rf基(c)を有する重合開始剤を使用する方法等が挙げられる。
【0035】
Rf基(c)を有する単量体としては、CH2=CR11COOR12Rf、CH2=CR11COOR13NR11SO2Rf、CH2=CR11COOR13NR11CORf、CH2=CR11COOCH2CH(OH)R12Rf、CH2=CR11CR11=CFRf等が挙げられる。ただし、RfはRf基(c)を、R11は水素原子またはメチル基を、R12は単結合または炭素数1〜6の2価有機基を、R13は炭素数1〜6の2価有機基を、それぞれ表す。
【0036】
R12、R13の具体例としては、−CH2−、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH2CH2CH2−、−C(CH3)2−、−CH(CH2CH3)−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH(CH2CH2CH3)−、−CH2(CH2)3CH2−、−CH(CH2CH(CH3)2)−等が挙げられる。R12は単結合であってもよい。
【0037】
Rf基(c)を有する単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
反応部位を有する重合体にRf基(c)を有する化合物を反応させる各種変性方法としては、例えば、エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後にRf基(c)とカルボキシル基を有する化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0039】
Rf基(c)を有する重合開始剤としては、開始剤分子主鎖中に2価のRf基(c)が含まれていてもよいし、開始剤分子の末端部分または側鎖に1価のRf基(c)が含まれていてもよい。具体例としては、RfCOOOCORfが挙げられる。
【0040】
含シリコン樹脂(A)におけるRf基(c)の含有量は60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0041】
本明細書の含シリコン樹脂(A)が単量体の共重合により得られる共重合体である場合、pSi基(a)、ブロック化された酸性基(b)およびRf基(c)を有しない重合単位(その他の重合単位)を有していてもよい。その他の重合単位は、その他の重合単位を与える単量体を重合させることにより重合体に導入することが好ましい。
【0042】
その他の重合単位を与える単量体としては、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、共役ジエン類が挙げられる。これらの化合物には、官能基が含まれていてもよく、例えば水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、酸無水物の基、スルホン酸基等が挙げられる。ただし、これらの単量体が与える重合単位は、pSi基(a)、ブロック化された酸性基(b)およびRf基(c)を含まない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
炭化水素系オレフィン類の具体例としては、2−ノルボルネン等が挙げられる。
【0044】
アルキル(メタ)アクリル酸エステル類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチル−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
フェノール性水酸基を有する単量体としては、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。またこれらのベンゼン環の1個以上の水素原子が、メチル、エチル、n−ブチル等のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−ブトキシ等のアルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基の1個以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、アミド基に置換された化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、もしくはそれらの塩が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
酸無水物の基を有する単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、無水3−メチルフタル酸、無水メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、無水3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸、無水cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、2−ブテン−1−イルスシニックアンハイドライド等が挙げられる。
【0048】
スルホン酸基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アリルオキシプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸−2−スルホプロピル、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、もしくはそれらの塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
含シリコン樹脂(A)が、フェノール性水酸基、カルボキシル基、酸無水物の基、スルホン酸基等の酸性基を有している場合、露光部分のアルカリ溶解性を調整することができ、解像度が向上する場合があり好ましい。
【0050】
また、含シリコン樹脂(A)が、2−ノルボルネン、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の脂環式オレフィンからなる重合単位を有している場合、ドライエッチング耐性が向上する場合があり好ましい。
【0051】
含シリコン樹脂(A)において、その他の重合単位の割合は70%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0052】
含シリコン樹脂(A)あるいは含シリコン樹脂(A)の前駆体となる前記反応部位を有する重合体は、単量体を必要に応じて連鎖移動剤と共に、溶媒に溶解し、重合開始剤を加えて反応させる方法によって合成できる。単量体、重合開始剤、溶媒および連鎖移動剤は連続して添加しても良い。
【0053】
前記合成方法における溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ヘキサン等の鎖式炭化水素類、シクロヘキサン等の環式飽和炭化水素類、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール等の芳香族炭化水素類、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類、メチルアセテート、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、エチルラクテート、n−ブチルラクテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート等のエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
重合開始剤としては、公知の有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。有機過酸化物、無機過酸化物は、還元剤と組み合わせて、レドックス系触媒として使用することもできる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチル−α−クミルパーオキシド等が挙げられる。
【0056】
無機過酸化物としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過炭酸塩等が挙げられる。
【0057】
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等が挙げられる。
【0058】
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、ハロゲン化アルキル類等を挙げることができる。
【0059】
メルカプタン類としては、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトエタノール等が挙げられる。ハロゲン化アルキル類としては、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
本明細書における含シリコン樹脂(A)の数平均分子量は、500以上100000未満が好ましく、2000以上20000未満がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好である。
【0061】
次に、上記の含シリコン樹脂(A)を含有する、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、含シリコン樹脂(A)と、合成樹脂(B)と、光酸発生剤(C)とを含有する感光性樹脂組成物である。
【0062】
含シリコン樹脂(A)の配合量は、感光性樹脂組成物中の固形分に対し、0.1〜70%が好ましく、0.5〜60%がより好ましく、2%超50%以下が特に好ましい。当該範囲であると感光性樹脂組成物は良好なインク転落性、撥インク性を奏し、現像性が良好となる。
【0063】
本明細書における合成樹脂(B)は、ブロック化された酸性基(b)を有し、かつ式1で示されるpSi基(a)およびRf基(c)を有しない樹脂である。ブロック化された酸性基(b)は、含シリコン樹脂(A)の説明で述べたように、エネルギー線により発生した酸により分解し得る。
【0064】
合成樹脂(B)におけるブロック化された酸性基(b)の具体例としては、含シリコン樹脂(A)の説明で例示した基が挙げられる。
【0065】
ブロック化された酸性基(b)の合成樹脂(B)への導入方法としては、ブロック化された酸性基(b)を有する単量体を共重合させる方法、反応部位を有する重合体にブロック化された酸性基(b)を有する化合物を反応させる各種変性方法が挙げられる。
【0066】
合成樹脂(B)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量は、1〜95%が好ましく、より好ましくは5〜90%である。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
合成樹脂(B)が共重合体の場合、pSi基(a)、ブロック化された酸性基(b)およびRf基(c)を有する重合単位以外のその他の重合単位を有していてもよい。その他の重合単位は、その他の重合単位を与える単量体を重合させることにより重合体に導入することが好ましい。
【0067】
その他の重合単位を与える単量体としては、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、共役ジエン類が挙げられる。これらの化合物には、官能基が含まれていてもよく、例えば水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、酸無水物の基、エポキシ基、スルホン酸基等が挙げられる。ただし、これらの官能基には、pSi基(a)、ブロック化された酸性基(b)およびRf基(c)は含まれない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
合成樹脂(B)の数平均分子量は、500以上100000未満が好ましく、2000以上20000未満がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
合成樹脂(B)は、含シリコン樹脂(A)の合成方法と同様な手法にて合成することができる。
【0069】
本明細書における合成樹脂(B)の配合量は、組成物中の固形分に対し、10〜99.5%が好ましく、30〜98%がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となり、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の基材密着性が良好である。
【0070】
光酸発生剤(C)は、光により酸を発生する化合物である。
光酸発生剤(C)としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアジン系化合物、スルホニル化合物、スルホン酸エステル類等が挙げられる。
【0071】
ジアリールヨードニウム塩のカチオン部分の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム等が挙げられる。
【0072】
ジアリールヨードニウム塩のアニオン部分の具体例としては、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0073】
ジアリールヨードニウム塩は前記カチオン部分とアニオン部分とからなり、上記カチオン部分の具体例の1種とアニオン部分の具体例の1種との組み合わせからなる。例えば、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム トリフルオロメタンスルホネートが一例となる。
【0074】
トリアリールスルホニウム塩のカチオン部分の具体例としては、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウム、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0075】
トリアリールスルホニウム塩のアニオン部分の具体例としては、前記ジアリールヨードニウム塩のアニオン部分の具体例が挙げられる。
【0076】
トリアリールスルホニウム塩は前記カチオン部分とアニオン部分とからなり、上記カチオン部分の具体例の1種とアニオン部分の具体例の1種との組み合わせからなる。例えば、トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネートが一例となる。
【0077】
トリアジン系化合物の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−フリル)エテニル−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(5−メチル−2−フリル)エテニル−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0078】
スルホニル化合物の具体例としては、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(t−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0079】
スルホン酸エステル類の具体例としては、2−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル等が挙げられる。
【0080】
光酸発生剤(C)の配合量は、感光性樹脂組成物中の固形分に対し、0.01〜30%が好ましく、0.1〜10%がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0081】
本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じてシランカップリング剤(D)を使用することができる。
【0082】
シランカップリング剤(D)の具体例としては、テトラエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、へプタデカフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、ポリオキシアルキレン鎖含有トリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
シランカップリング剤(D)を使用すると本発明の感光性樹脂組成物から形成される基材密着性が向上する。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物においては、希釈剤(E)を使用することができる。希釈剤(E)の具体例としては、含シリコン樹脂(A)の合成用溶媒として例示した溶媒が挙げられる。
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じて着色剤を使用することができる。着色剤としては、染料、有機顔料、無機顔料、メタリック顔料等が例示される。例えば、カラーフィルタ作成時のブラックマトリックス用途に本発明のポジ型感光性樹脂組成物を適用する場合としては、カーボンブラック等の高い遮光性を有する着色剤が適用できる。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じて有機カルボン酸化合物または塩基性化合物を使用することができる。これらの化合物を使用することにより酸量を調節でき、感度、現像性が向上する場合がある。
本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じて増粘剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、ハジキ防止剤等を使用することができる。
【0087】
以下、本発明の感光性樹脂組成物を使用したフォトリソグラフィー工程を述べる。
まずは、基材に本発明の感光性樹脂組成物を塗装する。基材としては、その材質は特に限定されるものではないが、例えば、各種ガラス板、シリコン基板、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフイン等、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホンの熱可塑性プラスチックシート、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱硬化性プラスチックシート等を挙げることができる。本発明は、反射防止膜を有する基板に対して塗装することも好ましい。
【0088】
レジストの下層として用いられる反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0089】
本発明の感光性樹脂組成物の塗装方法としては、通常用いられる塗装方法が特に限定なく採用でき、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法などが挙げられる。
【0090】
次に、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置により加熱を行う(以下、当該操作を「プリベーク」という。)。プリベークすることにより溶媒が揮発し、流動性のない塗膜が得られる。加熱条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、好ましくは50〜150℃、10〜600秒間程度の幅広い範囲で使用できる。
【0091】
次に、エネルギー線を照射する。本発明におけるエネルギー線の具体例としては、可視光、紫外線、遠紫外線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、Kr2エキシマレーザー、KrArエキシマレーザー、Ar2エキシマレーザー等のエキシマレーザー、X線、電子線等が挙げられる。露光量は、1〜300mJ/cm2程度が好ましい。
【0092】
次に、発生した酸の拡散を促進し、ブロック化された酸性基の脱ブロック化反応を促進するため加熱を行う(以下、当該操作を「ポストエクスポージャーベーク」という。)。加熱条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、好ましくは50〜150℃、10〜300秒間程度の幅広い範囲で使用できる。
【0093】
次に、現像を行う。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンなどの第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、N−メチルピロリドンなどの第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンなどの第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジン等の環状アミン類のアルカリ類からなるアルカリ水溶液を用いることができる。また上記アルカリ水溶液に、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒、界面活性剤などを適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。0.01〜5%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液を現像液として使用し、現像時間は、10〜180秒間が好ましい。
【0094】
現像方法は液盛り法、ディッピング法などのいずれでもよい。現像後、流水洗浄を行い、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、基板上の水分を除去する。
【0095】
さらに、必要に応じホットプレート、オーブンなどの加熱装置により加熱を行う(以下、当該操作を「ポストキュア」という。)。好ましくは120〜250℃で、5〜180分間加熱処理をすることによって、パターンが形成される。
【0096】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物として使用することができる。すなわち、光の照射により光酸発生剤(C)から酸が発生し、主として含シリコン樹脂(A)および合成樹脂(B)におけるブロック化された酸性基(b)からブロック化剤が脱離して酸性基が発現する。生成した酸性基により、露光した部分はアルカリ可溶となり、アルカリ現像によって除去される。
【0097】
発明において、含シリコン樹脂(A)の奏する優れた現像性の理由は、必ずしも明確ではないが以下のように考えられる。含シリコン樹脂(A)は、ブロック化された酸性基(b)を有し、エネルギー線の照射によってアルカリ溶解性が増加する。含シリコン樹脂(A)のブロック化された酸性基(b)の割合が1〜95%の場合、好ましくは3〜50%の場合、より好ましくは5〜30%の場合、ラインまたはドット部分に溶け残りの樹脂を発生させることがなく、微細なパターンを形成することが可能である。具体的には100μm以下のパターン形成に好ましく用いられ、50μm以下のパターン形成により好ましく用いられる。
【0098】
本発明において、含シリコン樹脂(A)の奏する優れたインク転落性、撥インク性の機構は、必ずしも明確ではないが、以下のように考えられる。含シリコン樹脂(A)におけるpSi基(a)はインク転落性を付与する。Rf基(c)は、撥インク性、特に撥有機溶剤性をさらに向上させることができる。
【0099】
インク転落性は、水およびキシレンの転落角で見積もることができ、水の転落角は35度以下が好ましく、25度以下がより好ましい。また、キシレンの転落角は30度以下が好ましく、20度以下がより好ましい。
【0100】
撥インク性は、水およびキシレンの接触角で見積もることができ、水の接触角は80度以上が好ましく、90度以上がより好ましい。また、キシレンの接触角は30度以上が好ましく、35度以上がより好ましい。
【0101】
【実施例】
以下に実施例(例1〜7)、比較例(例8〜10)に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下において、特に断らない限り、部および%は質量基準である。また、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によりポリスチレンを標準物質として測定した値である。以下の各例において用いた化合物の略号を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
<ブロック化された酸性基(b)を有する単量体の合成>
[合成例1]
温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量1Lのガラス製フラスコに、2−メチル−2−アダマンタノールの83.1g、トリエチルアミンの101gおよびメチルイソブチルケトンの200gを仕込み、メタクリル酸クロライドの78.4gを20℃にて2時間かけて滴下し、10時間撹拌した。さらに、50℃にて3時間撹拌し、ろ過後、5%炭酸ナトリウム水溶液にて洗浄し、水洗を2回行い、有機層を凝縮した後、減圧蒸留して、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル(以下、MMAMという。)を得た。
【0104】
<含シリコン樹脂(A)の合成>
[合成例2]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、174DXの108.0g、MMAMの72.0g、C4FMAの60.0g、連鎖移動剤DSHの5.4gおよび重合開始剤V−70の1.6gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、含シリコン樹脂(A−1)の溶液を得た。得られた含シリコン樹脂(A−1)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、含シリコン樹脂(A−1)の240gを得た。含シリコン樹脂(A−1)の数平均分子量は9000であった。含シリコン樹脂(A−1)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量は11.6%であった。
【0105】
[合成例3]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、X−8201の96.0g、MAAの72.0g、C6FMAの72.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤V−70の3.2gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、重合体1の溶液を得た。得られた重合体1のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、重合体1の240gを得た。該重合体1の数平均分子量は5000であった。
【0106】
温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量500mLのガラス製フラスコに、アセトンの150g、重合体1の100gおよびトリエチルアミンの28.2gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、アセトンの100gに溶解させたトリメチルシリルクロリドの30.3gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、10時間撹拌し、さらに40℃で1時間撹拌し、含シリコン樹脂(A−2)の溶液を得た。得られた含シリコン樹脂(A−2)のアセトン溶液から析出物をろ過で除去し、濃縮した後水に投入し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをさらに石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、含シリコン樹脂(A−2)の120gを得た。該含シリコン樹脂(A−2)の数平均分子量は、6000であった。含シリコン樹脂(A−2)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量は16.7%であった。
【0107】
[合成例4]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、X−8201の96.0g、MMAMの96.0g、C8FAの48.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤V−70の1.8gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、含シリコン樹脂(A−3)の溶液を得た。得られた含シリコン樹脂(A−3)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、含シリコン樹脂(A−3)の240gを得た。含シリコン樹脂(A−3)の数平均分子量は5000であった。含シリコン樹脂(A−3)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量は15.5%であった。
【0108】
[合成例5]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、X−8201の96.0g、MMAMの2.0g、C6FMAの72.0g、CHMAの70.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤V−70の2.0gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、比較用樹脂1の溶液を得た。得られた比較用樹脂1のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、比較用の240gを得た。比較用樹脂1の数平均分子量は5000であった。比較用樹脂1におけるブロック化された酸性基(b)の含有量は0.32%であった。
【0109】
<合成樹脂(B)の合成>
[合成例6]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、MMAMの96.0g、CHMAの144.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤V−70の4.0gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、合成樹脂(B−1)の溶液を得た。得られた合成樹脂(B−1)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、合成樹脂(B−1)の240gを得た。合成樹脂(B−1)の数平均分子量は5000であった。
【0110】
[合成例7]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、MAAの96.0g、IBMAの144.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤V−70の5.5gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、重合体6の溶液を得た。得られた重合体6のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、重合体2の240gを得た。該重合体2の数平均分子量は5000であった。
【0111】
温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量500mLのガラス製フラスコに、アセトンの150g、重合体6の100gおよびトリエチルアミンの37.6gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、アセトンの100gに溶解させたトリメチルシリルクロリドの40.4gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、10時間撹拌し、さらに40℃で1時間撹拌し、合成樹脂(B−2)の溶液を得た。得られた合成樹脂(B−2)のアセトン溶液から析出物をろ過で除去し、濃縮した後水に投入し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをさらに石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、合成樹脂(B−2)の127gを得た。合成樹脂(B−2)の数平均分子量は、6400であった。
【0112】
<感光性樹脂組成物の評価>
表2および表3に示す割合で、含シリコン樹脂(A)、比較用樹脂、合成樹脂(B)、光酸発生剤(C)、シランカップリング剤(D)、希釈剤(E)を配合して感光性樹脂組成物を得た。
【0113】
例1〜4、8〜10に関しては、ガラス基板上にスピンナーを用いて、感光性樹脂組成物を塗布した後、100℃で2分間ホットプレート上でプリベークし、膜厚3.0μmの塗膜を形成した。次に塗膜にマスクを接触させ、超高圧水銀灯により紫外線(150mJ/cm2)を照射した。100℃で2分間PEB処理を行った。次に0.1重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に40秒間浸漬し現像し、水により洗い流し乾燥させた。次にホットプレート上、220℃で1時間加熱することにより、ライン/スペ−ス=20μm/20μmのパターンが形成されたガラス基板を得た。
【0114】
例5〜7に関しては、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に、反射防止膜(Brewer Science社製DUV−30)を60nmの膜厚で塗布し、190℃で硬化させた。この反射防止膜上にスピンナーを用いて、感光性樹脂組成物を塗布した後、100℃で2分間ホットプレート上でプリベークし、膜厚0.20μmの塗膜を形成した。この塗膜に縮小投影露光装置NSR−2005EX8A(ニコン社製)を用い、テストチャートマスクを介してArFエキシマレーザーを照射し、100℃で2分間PEB処理を行った。次に2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に60秒間浸漬し現像し、水により洗い流し乾燥させた。次にホットプレート上、220℃で1時間加熱することにより、ライン/スペ−ス=20μm/20μmのパターンが形成された基板を得た。
パターンが形成された基板の評価結果を表2および表3に示す。
【0115】
[インク転落性]
水平に保持したガラス基板に形成されたパターンの塗膜部分表面に50μLの水または10μLのキシレンを滴下し、ガラス基板の一辺を持ち上げて徐々に傾けていき、水滴またはキシレン滴が落下し始めたときのガラス基板表面と水平面との角度を転落角(度)として読み取った。この角度が小さいほど塗膜のインク転落性が優れることを意味する。なお、接触角が小さすぎる場合、濡れ拡がっている滴の先端は転がり落ちるが、滴の後部は残留し転落せず、転落角の測定はできない。この場合、「n.d.」と表記した。
【0116】
[撥インク性]
撥インク性として、ガラス基板に形成されたパターンの塗膜部分表面の水およびキシレンの接触角(度)を測定した。接触角とは、固体と液体が接触する点における液体表面に対する接線と固体表面がなす角で、液体を含む方の角度で定義した。この角度が大きいほど塗膜の撥インク性が優れることを意味する。
【0117】
[現像性]
完全に現像できたものを○、溶け残りがあったものを×と記載した。
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
【発明の効果】
本発明によれば、優れたインク転落性、撥インク性および現像性を奏する含フッ素樹脂が得られる。また、インク転落性、撥インク性に優れた塗膜を形成することができ、さらには微細なパターン形成が可能な感光性樹脂組成物が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、含シリコン樹脂および感光性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体集積回路(IC)、液晶ディスプレイ(LCD)用薄膜トランジスタ(TFT)回路等の回路製造用のマスクを作成するために感光性樹脂組成物が用いられており、より微細なパターン構造を形成することのできる感光性樹脂組成物が要求されている。
【0003】
一方、感光性樹脂組成物は、層間絶縁膜、回路保護膜、カラーフィルタ用隔壁材、有機ELディスプレイ用隔壁材等の永久膜形成材料としても注目されている。例えば、カラーフィルタの製造においては、微小画素内にインクを噴射塗布するインクジェット法が提案されており、感光性樹脂組成物を画素パターンの隔壁として形成することが行われている。
【0004】
この場合、画素隔壁上に僅かにはずれて噴射されたインクが目的の画素内に収まるためには、インク転落性が要求されている。さらに隣り合う画素領域間におけるインクの混色等が起こるのを防止するために、水や有機溶剤等のインク溶剤をはじく性質、いわゆる撥インク性が要求されている。
【0005】
特許文献1には、(イ)環状脂肪族炭化水素骨格を有し、酸の作用により分解してアルカリ可溶性となる重合体、(ロ)活性光線または放射線の照射により酸を発生する化合物、(ハ)アンモニウム塩、および、(ニ)フッ素系および/またはシリコン系界面活性剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物が開示されており、(ニ)成分としてフッ素原子とケイ素原子の両方を含有する界面活性剤やシリコン系界面活性剤が例示されている。しかし、特許文献1におけるフッ素原子とケイ素原子の両方を含有する界面活性剤やシリコン系界面活性剤は、露光した後、アルカリ溶解性が不足しているため、アルカリ現像を必須とするフォトリソグラフィーにおいて大量に使用すると、溶け残りを生じる傾向があった。一方、少量使用した場合、塗膜表面にインク転落性および撥インク性を充分に付与することができなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−6499号公報(特許請求の範囲、段落0045)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れたインク転落性、撥インク性および現像性を奏する含シリコン樹脂を提供することを課題とする。また、本発明は、インク転落性、撥インク性に優れた塗膜を形成することができ、さらには現像時に溶け残りが生じず、微細なパターン形成が可能な感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の手段を提供するものである。
(1)式1で示されるポリシロキサン構造を有する基(a)と、ブロック化された酸性基(b)とを有する含シリコン樹脂(A)であって、含シリコン樹脂(A)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量が1〜95%である含シリコン樹脂(A)。
−(SiR1R2−O)n−SiR1R2R3 ・・・式1
(ただし、R1、R2は独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、R3は水素または炭素数1〜10の有機基を表し、nは1〜200の整数を表す。)。
【0009】
(2)水素原子の少なくとも2つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(c)をさらに有する(1)に記載の含シリコン樹脂(A)。
【0010】
(3)(1)または(2)に記載の含シリコン樹脂(A)と、下記合成樹脂(B)と、光酸発生剤(C)とを含有する感光性樹脂組成物。
合成樹脂(B):ブロック化された酸性基(b)を有し、かつ式1で示されるポリシロキサン構造を有する基(a)および水素原子の少なくとも2つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(c)を有しない樹脂。
【0011】
【発明の実施の形態】
本明細書の具体的化合物名において(メタ)アクリレートと記載されたものは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。同様に、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。
【0012】
本明細書において、特に説明のない場合、%は質量%を表す。
【0013】
本発明におけるエネルギー線とは、可視光より波長の短い電磁波、電子線等を表す。本明細書における感光とは、上記エネルギー線に感応することを表す。また、本明細書における露光とは、上記エネルギー線に暴露されることを表す。
【0014】
本発明の含シリコン樹脂(A)は、式1で示されるポリシロキサン構造を有する基(a)を有する。以下、式1で示されるポリシロキサン構造を有する基(a)をpSi基(a)という。
−(SiR1R2−O)n−SiR1R2R3 ・・・式1
ただし、R1、R2は独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、R3は水素または炭素数1〜10の有機基を表し、nは1〜200の整数を表す。
【0015】
R1、R2は独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、またシロキシ単位毎に同一でも異なっていてもよい。含シリコン樹脂(A)が良好なインク転落性、撥インク性を奏することから、R1、R2は水素、メチル基またはフェニル基の場合が好ましく、さらには、すべてのシロキシ単位のR1、R2がメチル基の場合が好ましい。また、R3には、窒素原子、酸素原子等が含まれていてもよい。
【0016】
pSi基(a)の含シリコン樹脂(A)への導入方法としては、pSi基(a)を有する単量体を共重合させる方法、反応部位を有する重合体にpSi基(a)を有する化合物を反応させる各種変性方法、pSi基(a)を有する重合開始剤を使用する方法等が挙げられる。
【0017】
pSi基(a)を有する単量体としては、CH2=CHCOO(pSi)、CH2=C(CH3)COO(pSi)等が挙げられる。ただし、pSiはpSi基(a)を表す。pSi基(a)を有する単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
反応部位を有する重合体にpSi基(a)を有する化合物を反応させる各種変性方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0019】
エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にカルボキシル基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にアミノ基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にメルカプト基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。アミノ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にカルボキシル基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。
【0020】
アミノ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にエポキシ基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。カルボキシル基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にエポキシ基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。カルボキシル基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にアミノ基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。カルボキシル基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端に塩化シリル基を有し片末端にpSi基を有する化合物を反応させる方法。水酸基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端に塩化シリル基を有し片末端にPSi基を有する化合物を反応させる方法。
【0021】
pSi基(a)を有する重合開始剤としては、開始剤分子主鎖中に2価のポリシロキサン構造を有する基が含まれていてもよいし、開始剤分子の末端部分または側鎖に1価のポリシロキサン構造を有する基が含まれていてもよい。開始剤分子主鎖中に2価のポリシロキサン構造を有する基が含まれている開始剤としては、2価のポリシロキサン構造を有する基とアゾ基とを交互に有する化合物等が挙げられる。市販品としては、VPS−1001、VPS−0501(以上、和光純薬工業社製)が挙げられる。
【0022】
含シリコン樹脂(A)におけるpSi基(a)の含有量は、0.1〜70%が好ましく、より好ましくは5〜50%である。当該範囲であると含シリコン樹脂(A)は良好なインク転落性を奏し、本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0023】
本発明の含シリコン樹脂(A)は、ブロック化された酸性基(b)を有する。ブロック化された酸性基(b)は、エネルギー線により発生した酸により分解し得る。
【0024】
ブロック化された酸性基(b)は、酸残基と酸残基をブロックする基との結合した基であり、酸性基としては、下記式2に記載の基が挙げられる。
−COOH ・・・式2。
【0025】
ブロック化された酸性基(b)において、酸残基をブロックする基としては、下記式3〜5で表される1価の基が挙げられる。
−(CH2)aCOOR4 ・・・式3
−CR5R6OR7 ・・・式4
−MR8R9R10 ・・・式5
(式中、R4、R7は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基等の1価炭化水素基を表し、R5、R6は水素原子、または炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を表す。R8〜R10は、水素原子または炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基等の1価炭化水素基を表す。R4〜R10は、酸素、硫黄、窒素などのヘテロ原子を含んでもよい。R5とR6、R5とR7、R6とR7、R8とR9、R8とR10、R9とR10はそれぞれ結合して環を形成してもよい。aは0〜10の整数であり、Mは炭素原子、ケイ素原子およびゲルマニウム原子からなる群から選ばれる1種である。)。
【0026】
式3において、R4は炭素数4〜20の三級アルキル基が好ましく、4〜15の三級アルキル基がさらに好ましい。式3で表される基の具体例としては、t−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0027】
式4で表される基の具体例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−(2−メチルプロポキシ)エチル基、1−(n−ブトキシ)プロピル基、1−(2−メトキシエトキシ)エチル基、1−メチル−1−エトキシエチル基、1−フェノキシエチル基、1−シクロペンチルオキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が挙げられる。
【0028】
式5に表される基の具体例としては、炭素数4〜20の三級アルキル基が好ましく、4〜15の三級アルキル基がさらに好ましい。三級アルキル基としての具体例としては、t−ブチル基、1−エチルノルボルニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、2−(2−メチル)アダマンチル基、2−(2−エチル)アダマンチル基等を挙げることができる。また、トリメチルシリル基も好ましい。
【0029】
ブロック化された酸性基(b)の含シリコン樹脂(A)への導入方法としては、ブロック化された酸性基(b)を有する単量体を共重合させる方法、反応部位を有する重合体にブロック化された酸性基(b)を有する化合物を反応させる各種変性方法が挙げられる。
【0030】
含シリコン樹脂(A)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量は、1〜95%であり、3〜50%が好ましく、5〜30%がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0031】
本発明の含シリコン樹脂(A)は、好ましくは、水素原子の少なくとも2つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(c)を有する。以下、水素原子の少なくとも2つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(c)をRf基(c)という。
【0032】
Rf基(c)は直鎖状でも、分岐状でもよく、エーテル性の酸素原子を含んでもよい。Rf基(c)の具体例としては、−CF3、−CF2CF3、−CF2CHF2、−(CF2)2CF3、−(CF2)3CF3、−(CF2)4CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)6CF3、−(CF2)7CF3、−(CF2)8CF3、−(CF2)9CF3、−(CF2)11CF3、−(CF2)15CF3、−CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)2CF3、−CF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)2CF3、−CF(CF3)O(CF2)5CF3が挙げられる。
【0033】
Rf基(c)は、パーフルオロアルキル基または水素原子1個を含むポリフルオロアルキル基であることが好ましく、パーフルオロアルキル基が特に好ましい。これによって、含シリコン樹脂(A)は良好な撥インク性を奏する。また、Rf基(c)の炭素数は3〜15であることが好ましい。これによって、含シリコン樹脂(A)は良好な撥インク性、特に撥有機溶剤性を奏する。また本発明の含シリコン樹脂(A)をRf基(c)を有する単量体と他の共重合成分である単量体との共重合によって合成する場合に両者の相溶性が良好となる。
【0034】
Rf基(c)の含シリコン樹脂(A)への導入方法としては、Rf基(c)を有する単量体を共重合させる方法、反応部位を有する重合体にRf基(c)を有する化合物を反応させる各種変性方法、Rf基(c)を有する重合開始剤を使用する方法等が挙げられる。
【0035】
Rf基(c)を有する単量体としては、CH2=CR11COOR12Rf、CH2=CR11COOR13NR11SO2Rf、CH2=CR11COOR13NR11CORf、CH2=CR11COOCH2CH(OH)R12Rf、CH2=CR11CR11=CFRf等が挙げられる。ただし、RfはRf基(c)を、R11は水素原子またはメチル基を、R12は単結合または炭素数1〜6の2価有機基を、R13は炭素数1〜6の2価有機基を、それぞれ表す。
【0036】
R12、R13の具体例としては、−CH2−、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH2CH2CH2−、−C(CH3)2−、−CH(CH2CH3)−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH(CH2CH2CH3)−、−CH2(CH2)3CH2−、−CH(CH2CH(CH3)2)−等が挙げられる。R12は単結合であってもよい。
【0037】
Rf基(c)を有する単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
反応部位を有する重合体にRf基(c)を有する化合物を反応させる各種変性方法としては、例えば、エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後にRf基(c)とカルボキシル基を有する化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0039】
Rf基(c)を有する重合開始剤としては、開始剤分子主鎖中に2価のRf基(c)が含まれていてもよいし、開始剤分子の末端部分または側鎖に1価のRf基(c)が含まれていてもよい。具体例としては、RfCOOOCORfが挙げられる。
【0040】
含シリコン樹脂(A)におけるRf基(c)の含有量は60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0041】
本明細書の含シリコン樹脂(A)が単量体の共重合により得られる共重合体である場合、pSi基(a)、ブロック化された酸性基(b)およびRf基(c)を有しない重合単位(その他の重合単位)を有していてもよい。その他の重合単位は、その他の重合単位を与える単量体を重合させることにより重合体に導入することが好ましい。
【0042】
その他の重合単位を与える単量体としては、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、共役ジエン類が挙げられる。これらの化合物には、官能基が含まれていてもよく、例えば水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、酸無水物の基、スルホン酸基等が挙げられる。ただし、これらの単量体が与える重合単位は、pSi基(a)、ブロック化された酸性基(b)およびRf基(c)を含まない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
炭化水素系オレフィン類の具体例としては、2−ノルボルネン等が挙げられる。
【0044】
アルキル(メタ)アクリル酸エステル類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチル−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
フェノール性水酸基を有する単量体としては、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。またこれらのベンゼン環の1個以上の水素原子が、メチル、エチル、n−ブチル等のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−ブトキシ等のアルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基の1個以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、アミド基に置換された化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、もしくはそれらの塩が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
酸無水物の基を有する単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、無水3−メチルフタル酸、無水メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、無水3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸、無水cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、2−ブテン−1−イルスシニックアンハイドライド等が挙げられる。
【0048】
スルホン酸基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アリルオキシプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸−2−スルホプロピル、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、もしくはそれらの塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
含シリコン樹脂(A)が、フェノール性水酸基、カルボキシル基、酸無水物の基、スルホン酸基等の酸性基を有している場合、露光部分のアルカリ溶解性を調整することができ、解像度が向上する場合があり好ましい。
【0050】
また、含シリコン樹脂(A)が、2−ノルボルネン、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の脂環式オレフィンからなる重合単位を有している場合、ドライエッチング耐性が向上する場合があり好ましい。
【0051】
含シリコン樹脂(A)において、その他の重合単位の割合は70%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0052】
含シリコン樹脂(A)あるいは含シリコン樹脂(A)の前駆体となる前記反応部位を有する重合体は、単量体を必要に応じて連鎖移動剤と共に、溶媒に溶解し、重合開始剤を加えて反応させる方法によって合成できる。単量体、重合開始剤、溶媒および連鎖移動剤は連続して添加しても良い。
【0053】
前記合成方法における溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ヘキサン等の鎖式炭化水素類、シクロヘキサン等の環式飽和炭化水素類、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール等の芳香族炭化水素類、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類、メチルアセテート、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、エチルラクテート、n−ブチルラクテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート等のエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
重合開始剤としては、公知の有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。有機過酸化物、無機過酸化物は、還元剤と組み合わせて、レドックス系触媒として使用することもできる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチル−α−クミルパーオキシド等が挙げられる。
【0056】
無機過酸化物としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過炭酸塩等が挙げられる。
【0057】
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等が挙げられる。
【0058】
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、ハロゲン化アルキル類等を挙げることができる。
【0059】
メルカプタン類としては、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトエタノール等が挙げられる。ハロゲン化アルキル類としては、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
本明細書における含シリコン樹脂(A)の数平均分子量は、500以上100000未満が好ましく、2000以上20000未満がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好である。
【0061】
次に、上記の含シリコン樹脂(A)を含有する、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、含シリコン樹脂(A)と、合成樹脂(B)と、光酸発生剤(C)とを含有する感光性樹脂組成物である。
【0062】
含シリコン樹脂(A)の配合量は、感光性樹脂組成物中の固形分に対し、0.1〜70%が好ましく、0.5〜60%がより好ましく、2%超50%以下が特に好ましい。当該範囲であると感光性樹脂組成物は良好なインク転落性、撥インク性を奏し、現像性が良好となる。
【0063】
本明細書における合成樹脂(B)は、ブロック化された酸性基(b)を有し、かつ式1で示されるpSi基(a)およびRf基(c)を有しない樹脂である。ブロック化された酸性基(b)は、含シリコン樹脂(A)の説明で述べたように、エネルギー線により発生した酸により分解し得る。
【0064】
合成樹脂(B)におけるブロック化された酸性基(b)の具体例としては、含シリコン樹脂(A)の説明で例示した基が挙げられる。
【0065】
ブロック化された酸性基(b)の合成樹脂(B)への導入方法としては、ブロック化された酸性基(b)を有する単量体を共重合させる方法、反応部位を有する重合体にブロック化された酸性基(b)を有する化合物を反応させる各種変性方法が挙げられる。
【0066】
合成樹脂(B)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量は、1〜95%が好ましく、より好ましくは5〜90%である。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
合成樹脂(B)が共重合体の場合、pSi基(a)、ブロック化された酸性基(b)およびRf基(c)を有する重合単位以外のその他の重合単位を有していてもよい。その他の重合単位は、その他の重合単位を与える単量体を重合させることにより重合体に導入することが好ましい。
【0067】
その他の重合単位を与える単量体としては、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、共役ジエン類が挙げられる。これらの化合物には、官能基が含まれていてもよく、例えば水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、酸無水物の基、エポキシ基、スルホン酸基等が挙げられる。ただし、これらの官能基には、pSi基(a)、ブロック化された酸性基(b)およびRf基(c)は含まれない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
合成樹脂(B)の数平均分子量は、500以上100000未満が好ましく、2000以上20000未満がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
合成樹脂(B)は、含シリコン樹脂(A)の合成方法と同様な手法にて合成することができる。
【0069】
本明細書における合成樹脂(B)の配合量は、組成物中の固形分に対し、10〜99.5%が好ましく、30〜98%がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となり、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の基材密着性が良好である。
【0070】
光酸発生剤(C)は、光により酸を発生する化合物である。
光酸発生剤(C)としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアジン系化合物、スルホニル化合物、スルホン酸エステル類等が挙げられる。
【0071】
ジアリールヨードニウム塩のカチオン部分の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム等が挙げられる。
【0072】
ジアリールヨードニウム塩のアニオン部分の具体例としては、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0073】
ジアリールヨードニウム塩は前記カチオン部分とアニオン部分とからなり、上記カチオン部分の具体例の1種とアニオン部分の具体例の1種との組み合わせからなる。例えば、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム トリフルオロメタンスルホネートが一例となる。
【0074】
トリアリールスルホニウム塩のカチオン部分の具体例としては、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウム、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0075】
トリアリールスルホニウム塩のアニオン部分の具体例としては、前記ジアリールヨードニウム塩のアニオン部分の具体例が挙げられる。
【0076】
トリアリールスルホニウム塩は前記カチオン部分とアニオン部分とからなり、上記カチオン部分の具体例の1種とアニオン部分の具体例の1種との組み合わせからなる。例えば、トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネートが一例となる。
【0077】
トリアジン系化合物の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−フリル)エテニル−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(5−メチル−2−フリル)エテニル−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0078】
スルホニル化合物の具体例としては、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(t−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0079】
スルホン酸エステル類の具体例としては、2−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル等が挙げられる。
【0080】
光酸発生剤(C)の配合量は、感光性樹脂組成物中の固形分に対し、0.01〜30%が好ましく、0.1〜10%がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0081】
本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じてシランカップリング剤(D)を使用することができる。
【0082】
シランカップリング剤(D)の具体例としては、テトラエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、へプタデカフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、ポリオキシアルキレン鎖含有トリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
シランカップリング剤(D)を使用すると本発明の感光性樹脂組成物から形成される基材密着性が向上する。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物においては、希釈剤(E)を使用することができる。希釈剤(E)の具体例としては、含シリコン樹脂(A)の合成用溶媒として例示した溶媒が挙げられる。
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じて着色剤を使用することができる。着色剤としては、染料、有機顔料、無機顔料、メタリック顔料等が例示される。例えば、カラーフィルタ作成時のブラックマトリックス用途に本発明のポジ型感光性樹脂組成物を適用する場合としては、カーボンブラック等の高い遮光性を有する着色剤が適用できる。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じて有機カルボン酸化合物または塩基性化合物を使用することができる。これらの化合物を使用することにより酸量を調節でき、感度、現像性が向上する場合がある。
本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じて増粘剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、ハジキ防止剤等を使用することができる。
【0087】
以下、本発明の感光性樹脂組成物を使用したフォトリソグラフィー工程を述べる。
まずは、基材に本発明の感光性樹脂組成物を塗装する。基材としては、その材質は特に限定されるものではないが、例えば、各種ガラス板、シリコン基板、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフイン等、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホンの熱可塑性プラスチックシート、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱硬化性プラスチックシート等を挙げることができる。本発明は、反射防止膜を有する基板に対して塗装することも好ましい。
【0088】
レジストの下層として用いられる反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0089】
本発明の感光性樹脂組成物の塗装方法としては、通常用いられる塗装方法が特に限定なく採用でき、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法などが挙げられる。
【0090】
次に、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置により加熱を行う(以下、当該操作を「プリベーク」という。)。プリベークすることにより溶媒が揮発し、流動性のない塗膜が得られる。加熱条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、好ましくは50〜150℃、10〜600秒間程度の幅広い範囲で使用できる。
【0091】
次に、エネルギー線を照射する。本発明におけるエネルギー線の具体例としては、可視光、紫外線、遠紫外線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、Kr2エキシマレーザー、KrArエキシマレーザー、Ar2エキシマレーザー等のエキシマレーザー、X線、電子線等が挙げられる。露光量は、1〜300mJ/cm2程度が好ましい。
【0092】
次に、発生した酸の拡散を促進し、ブロック化された酸性基の脱ブロック化反応を促進するため加熱を行う(以下、当該操作を「ポストエクスポージャーベーク」という。)。加熱条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、好ましくは50〜150℃、10〜300秒間程度の幅広い範囲で使用できる。
【0093】
次に、現像を行う。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンなどの第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、N−メチルピロリドンなどの第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンなどの第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジン等の環状アミン類のアルカリ類からなるアルカリ水溶液を用いることができる。また上記アルカリ水溶液に、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒、界面活性剤などを適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。0.01〜5%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液を現像液として使用し、現像時間は、10〜180秒間が好ましい。
【0094】
現像方法は液盛り法、ディッピング法などのいずれでもよい。現像後、流水洗浄を行い、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、基板上の水分を除去する。
【0095】
さらに、必要に応じホットプレート、オーブンなどの加熱装置により加熱を行う(以下、当該操作を「ポストキュア」という。)。好ましくは120〜250℃で、5〜180分間加熱処理をすることによって、パターンが形成される。
【0096】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物として使用することができる。すなわち、光の照射により光酸発生剤(C)から酸が発生し、主として含シリコン樹脂(A)および合成樹脂(B)におけるブロック化された酸性基(b)からブロック化剤が脱離して酸性基が発現する。生成した酸性基により、露光した部分はアルカリ可溶となり、アルカリ現像によって除去される。
【0097】
発明において、含シリコン樹脂(A)の奏する優れた現像性の理由は、必ずしも明確ではないが以下のように考えられる。含シリコン樹脂(A)は、ブロック化された酸性基(b)を有し、エネルギー線の照射によってアルカリ溶解性が増加する。含シリコン樹脂(A)のブロック化された酸性基(b)の割合が1〜95%の場合、好ましくは3〜50%の場合、より好ましくは5〜30%の場合、ラインまたはドット部分に溶け残りの樹脂を発生させることがなく、微細なパターンを形成することが可能である。具体的には100μm以下のパターン形成に好ましく用いられ、50μm以下のパターン形成により好ましく用いられる。
【0098】
本発明において、含シリコン樹脂(A)の奏する優れたインク転落性、撥インク性の機構は、必ずしも明確ではないが、以下のように考えられる。含シリコン樹脂(A)におけるpSi基(a)はインク転落性を付与する。Rf基(c)は、撥インク性、特に撥有機溶剤性をさらに向上させることができる。
【0099】
インク転落性は、水およびキシレンの転落角で見積もることができ、水の転落角は35度以下が好ましく、25度以下がより好ましい。また、キシレンの転落角は30度以下が好ましく、20度以下がより好ましい。
【0100】
撥インク性は、水およびキシレンの接触角で見積もることができ、水の接触角は80度以上が好ましく、90度以上がより好ましい。また、キシレンの接触角は30度以上が好ましく、35度以上がより好ましい。
【0101】
【実施例】
以下に実施例(例1〜7)、比較例(例8〜10)に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下において、特に断らない限り、部および%は質量基準である。また、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によりポリスチレンを標準物質として測定した値である。以下の各例において用いた化合物の略号を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
<ブロック化された酸性基(b)を有する単量体の合成>
[合成例1]
温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量1Lのガラス製フラスコに、2−メチル−2−アダマンタノールの83.1g、トリエチルアミンの101gおよびメチルイソブチルケトンの200gを仕込み、メタクリル酸クロライドの78.4gを20℃にて2時間かけて滴下し、10時間撹拌した。さらに、50℃にて3時間撹拌し、ろ過後、5%炭酸ナトリウム水溶液にて洗浄し、水洗を2回行い、有機層を凝縮した後、減圧蒸留して、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル(以下、MMAMという。)を得た。
【0104】
<含シリコン樹脂(A)の合成>
[合成例2]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、174DXの108.0g、MMAMの72.0g、C4FMAの60.0g、連鎖移動剤DSHの5.4gおよび重合開始剤V−70の1.6gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、含シリコン樹脂(A−1)の溶液を得た。得られた含シリコン樹脂(A−1)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、含シリコン樹脂(A−1)の240gを得た。含シリコン樹脂(A−1)の数平均分子量は9000であった。含シリコン樹脂(A−1)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量は11.6%であった。
【0105】
[合成例3]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、X−8201の96.0g、MAAの72.0g、C6FMAの72.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤V−70の3.2gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、重合体1の溶液を得た。得られた重合体1のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、重合体1の240gを得た。該重合体1の数平均分子量は5000であった。
【0106】
温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量500mLのガラス製フラスコに、アセトンの150g、重合体1の100gおよびトリエチルアミンの28.2gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、アセトンの100gに溶解させたトリメチルシリルクロリドの30.3gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、10時間撹拌し、さらに40℃で1時間撹拌し、含シリコン樹脂(A−2)の溶液を得た。得られた含シリコン樹脂(A−2)のアセトン溶液から析出物をろ過で除去し、濃縮した後水に投入し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをさらに石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、含シリコン樹脂(A−2)の120gを得た。該含シリコン樹脂(A−2)の数平均分子量は、6000であった。含シリコン樹脂(A−2)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量は16.7%であった。
【0107】
[合成例4]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、X−8201の96.0g、MMAMの96.0g、C8FAの48.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤V−70の1.8gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、含シリコン樹脂(A−3)の溶液を得た。得られた含シリコン樹脂(A−3)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、含シリコン樹脂(A−3)の240gを得た。含シリコン樹脂(A−3)の数平均分子量は5000であった。含シリコン樹脂(A−3)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量は15.5%であった。
【0108】
[合成例5]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、X−8201の96.0g、MMAMの2.0g、C6FMAの72.0g、CHMAの70.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤V−70の2.0gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、比較用樹脂1の溶液を得た。得られた比較用樹脂1のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、比較用の240gを得た。比較用樹脂1の数平均分子量は5000であった。比較用樹脂1におけるブロック化された酸性基(b)の含有量は0.32%であった。
【0109】
<合成樹脂(B)の合成>
[合成例6]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、MMAMの96.0g、CHMAの144.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤V−70の4.0gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、合成樹脂(B−1)の溶液を得た。得られた合成樹脂(B−1)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、合成樹脂(B−1)の240gを得た。合成樹脂(B−1)の数平均分子量は5000であった。
【0110】
[合成例7]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、MAAの96.0g、IBMAの144.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤V−70の5.5gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、重合体6の溶液を得た。得られた重合体6のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、重合体2の240gを得た。該重合体2の数平均分子量は5000であった。
【0111】
温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量500mLのガラス製フラスコに、アセトンの150g、重合体6の100gおよびトリエチルアミンの37.6gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、アセトンの100gに溶解させたトリメチルシリルクロリドの40.4gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、10時間撹拌し、さらに40℃で1時間撹拌し、合成樹脂(B−2)の溶液を得た。得られた合成樹脂(B−2)のアセトン溶液から析出物をろ過で除去し、濃縮した後水に投入し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをさらに石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、合成樹脂(B−2)の127gを得た。合成樹脂(B−2)の数平均分子量は、6400であった。
【0112】
<感光性樹脂組成物の評価>
表2および表3に示す割合で、含シリコン樹脂(A)、比較用樹脂、合成樹脂(B)、光酸発生剤(C)、シランカップリング剤(D)、希釈剤(E)を配合して感光性樹脂組成物を得た。
【0113】
例1〜4、8〜10に関しては、ガラス基板上にスピンナーを用いて、感光性樹脂組成物を塗布した後、100℃で2分間ホットプレート上でプリベークし、膜厚3.0μmの塗膜を形成した。次に塗膜にマスクを接触させ、超高圧水銀灯により紫外線(150mJ/cm2)を照射した。100℃で2分間PEB処理を行った。次に0.1重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に40秒間浸漬し現像し、水により洗い流し乾燥させた。次にホットプレート上、220℃で1時間加熱することにより、ライン/スペ−ス=20μm/20μmのパターンが形成されたガラス基板を得た。
【0114】
例5〜7に関しては、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に、反射防止膜(Brewer Science社製DUV−30)を60nmの膜厚で塗布し、190℃で硬化させた。この反射防止膜上にスピンナーを用いて、感光性樹脂組成物を塗布した後、100℃で2分間ホットプレート上でプリベークし、膜厚0.20μmの塗膜を形成した。この塗膜に縮小投影露光装置NSR−2005EX8A(ニコン社製)を用い、テストチャートマスクを介してArFエキシマレーザーを照射し、100℃で2分間PEB処理を行った。次に2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に60秒間浸漬し現像し、水により洗い流し乾燥させた。次にホットプレート上、220℃で1時間加熱することにより、ライン/スペ−ス=20μm/20μmのパターンが形成された基板を得た。
パターンが形成された基板の評価結果を表2および表3に示す。
【0115】
[インク転落性]
水平に保持したガラス基板に形成されたパターンの塗膜部分表面に50μLの水または10μLのキシレンを滴下し、ガラス基板の一辺を持ち上げて徐々に傾けていき、水滴またはキシレン滴が落下し始めたときのガラス基板表面と水平面との角度を転落角(度)として読み取った。この角度が小さいほど塗膜のインク転落性が優れることを意味する。なお、接触角が小さすぎる場合、濡れ拡がっている滴の先端は転がり落ちるが、滴の後部は残留し転落せず、転落角の測定はできない。この場合、「n.d.」と表記した。
【0116】
[撥インク性]
撥インク性として、ガラス基板に形成されたパターンの塗膜部分表面の水およびキシレンの接触角(度)を測定した。接触角とは、固体と液体が接触する点における液体表面に対する接線と固体表面がなす角で、液体を含む方の角度で定義した。この角度が大きいほど塗膜の撥インク性が優れることを意味する。
【0117】
[現像性]
完全に現像できたものを○、溶け残りがあったものを×と記載した。
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
【発明の効果】
本発明によれば、優れたインク転落性、撥インク性および現像性を奏する含フッ素樹脂が得られる。また、インク転落性、撥インク性に優れた塗膜を形成することができ、さらには微細なパターン形成が可能な感光性樹脂組成物が得られる。
Claims (3)
- 式1で示されるポリシロキサン構造を有する基(a)と、ブロック化された酸性基(b)とを有する含シリコン樹脂(A)であって、含シリコン樹脂(A)におけるブロック化された酸性基(b)の含有量が1〜95%である含シリコン樹脂(A)。
−(SiR1R2−O)n−SiR1R2R3 ・・・式1
(ただし、R1、R2は独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、R3は水素または炭素数1〜10の有機基を表し、nは1〜200の整数を表す。) - 水素原子の少なくとも2つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(c)をさらに有する請求項1に記載の含シリコン樹脂(A)。
- 請求項1または2に記載の含シリコン樹脂(A)と、下記合成樹脂(B)と、光酸発生剤(C)とを含有する感光性樹脂組成物。
合成樹脂(B):ブロック化された酸性基(b)を有し、かつ式1で示されるポリシロキサン構造を有する基(a)および水素原子の少なくとも2つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(c)を有しない樹脂。
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