JP2004277222A - フラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板 - Google Patents

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Abstract

【目的】溶融や成形が容易であり、耐熱衝撃性に優れ、しかも、周辺材料と整合性がとりやすい熱膨張係数を有する高歪点ガラスからなるフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板を提供することである。
【構成】本発明のフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板は、質量百分率で、SiO 55〜74%、Al 0.5〜4%、MgO 1〜15%、CaO 0〜8%、SrO 1〜15%、BaO 0〜5%、RO(ROはMgO、CaO、SrO、BaOを表わす) 15〜27%、NaO 0〜8%、KO 2〜12%、ZrO 0〜7%、P 0〜0.5%の組成を含有し、RO/Alの値が6.5以上であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、フラットパネルディスプレイ装置、特にプラズマディスプレイ装置に適したガラス基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラズマディスプレイ装置は、前面ガラス基板表面にITO膜やネサ膜等からなる透明電極を成膜し、その上に誘電体層を形成し、また、背面ガラス基板表面には、Al、Ag、Ni等からなる電極が形成された背面ガラス基板表面に隔壁を形成してから、それぞれ500〜600℃程度の温度で焼成することにより回路を形成する。その後、前面ガラス基板と背面ガラス基板を対向させて電極等の位置合わせを行って、周囲を500〜600℃程度の温度でフリットシールすることにより作製される。
【0003】
一般に上記のガラス基板は、熱膨張係数が約84×10−7/℃のソーダ石灰ガラスや高歪点ガラス(歪点が570℃以上のガラス)からなり、フロート法、ロールアウト法等によって1.8〜3.0mmの肉厚に成形されたものが使用されている。
【0004】
尚、高歪点ガラスの方がソーダ石灰ガラスよりも歪点や体積電気抵抗率が高いため、熱処理工程において、ガラス基板の熱変形や熱収縮が小さく、前面ガラス基板と背面ガラス基板を対向させる際、精度良く電極等の位置合わせが行える。
しかも、ガラス中のアルカリ成分の移動度が小さく、ガラス中のアルカリ成分とITO膜やネサ膜等の薄膜電極との反応が小さく、電極材料の電気抵抗値の安定化が図れる。これらの理由から、現在では、ソーダ石灰ガラスよりも、高歪点ガラスがガラス基板として広く用いられるようになってきている。
【0005】
ところが、前記したソーダ石灰ガラスや高歪点ガラスからなるガラス基板は、ガラスの熱膨張係数が約84×10−7/℃と大きいため、500〜600℃の温度で熱処理した後、急冷すると熱応力に起因する割れが生じる。そのため、熱処理工程の冷却速度が制限され、工程の所要時間が長くなり、生産性を低下させていた。従って、生産性向上のため、急冷しても割れ難い耐熱衝撃性に優れたガラス基板が望まれている。
【0006】
そこで、誘電体、隔壁、フリット等の周辺材料との整合性が採れる範囲で、ガラスの熱膨張係数を小さくしたガラス基板が提案されている。(特許文献1〜3)
【0007】
【特許文献1】
特開2001−226138号
【特許文献2】
特開平11−314933号
【特許文献3】
特開2002−193635号
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1で開示されているガラスは、Pを必要とするため、溶融条件や成形条件の微妙な変動によってガラスが乳白する可能性があり、生産歩留まりを低下させる原因となる。また、特に、フロート成形の場合、Pが還元されて、ガラスが着色する可能性もある。
【0009】
また、特許文献2、3で開示されているガラスは、ガラスの高温粘度が高いため、ガラスの溶融温度や成形温度を高くしなければならなくなり、溶融や成形が困難である。特に、フロート成形の場合、ガラスの高温粘度が高いと、溶融ガラスを板状に成形するためのフロートバスの温度を高くしなければならず、フロートバスからのスズの揮発量が増加し、ガラス表面に悪影響を及ぼすことになる。
【0010】
本発明の目的は、溶融や成形が容易であり、耐熱衝撃性に優れ、しかも、周辺材料と整合性がとりやすい熱膨張係数を有する高歪点ガラスからなるフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板は、質量百分率で、SiO 55〜74%、Al 0.5〜4%、MgO 1〜15%、CaO0〜8%、SrO 1〜15%、BaO 0〜5%、RO(ROはMgO、CaO、SrO、BaOを表わす) 15〜27%、NaO 0〜8%、KO 2〜12%、ZrO 0〜7%、P 0〜0.5%の組成を含有し、RO/Alの値が6.5以上であることを特徴とする。
【0012】
【作用】
本発明のフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板は、ガラスの熱膨張係数を78×10−7/℃以下に設定しているため、熱衝撃性を向上させることができ、熱処理工程でのガラス基板の割れの発生を抑えることができる。尚、熱膨張係数が65×10−7/℃より低くなると、周辺材料の熱膨張係数との整合性が取り難くなる。
【0013】
熱膨張係数を小さくするには、ガラス中のSiO、Alを増やしたり、NaO、KOを少なくすることで調整することができる。しかし、SiO、Alを増やしたり、NaO、KOを少なくすると、ガラスの高温粘度が高くなって、溶融や成形が困難となる。
【0014】
そこで、本発明のフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板は、ガラス中のAlの含有量を4質量%以下に抑えると共に、ガラスの高温粘度を低下させて溶融性と成形性を向上させる成分であるRO(ROはMgO、CaO、SrO、BaOを表わす)の含有量を15質量%以上にし、且つ、RO/Alの値を6.5以上に制限している。このようにすることで、ガラスの熱膨張係数と高温粘度が低くなり、結果として、高い耐熱衝撃性と、優れた溶融性及び成形性を同時に得ることができる。
【0015】
また、10dPaの粘度に相当するガラス融液の温度を1180℃以下(好ましくは1170℃以下、より好ましくは1150℃以下)にすることが望ましい。この温度が1180℃より高くなると、成形装置に負担が掛かる。
【0016】
また、本発明のフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板は、ガラスの歪点を580℃以上に設定しているため、プラズマディスプレイ装置を製造する際の熱処理工程において、ガラス基板の熱変形や熱収縮を抑えることができる。
【0017】
本発明のガラス基板において、各成分の割合を上記のように限定した理由を以下に述べる。
【0018】
SiOは、ガラスのネットワークフォーマーである。SiOの含有量が多くなると、ガラスの高温粘度が高くなり、溶融、成形が難しくなったり、熱膨張係数が小さくなりすぎて周辺材料との整合性が取り難くなる。また、含有量が少なくなると、熱膨張係数が大きくなりガラスの耐熱衝撃性が低下したり、ガラスの歪点が低下する傾向にあり、プラズマディスプレイ装置を製造する際の熱工程で、ガラス基板に割れが発生したり、熱変形や熱収縮が起こりやすくなる。含有量が55〜74%であれば、ガラスの溶融性や成形性を悪化させることなく、周辺材料と整合する熱膨張係数を有し、耐熱衝撃性に優れたガラスを得ることができる。好ましい範囲は56〜70%であり、より好ましくは58〜70%である。
【0019】
Alは、ガラスの歪点を高くする成分である。Alの含有量が多くなると、ガラスの高温粘度が高くなり、溶融、成形が難しくなったり、熱膨張係数が小さくなり周辺材料との整合性が取り難くなる。また、含有量が少なくなると、熱膨張係数が大きくなりガラスの耐熱衝撃性が低下したり、ガラスの歪点が低下する傾向にあり、プラズマディスプレイ装置を製造する際の熱工程で、ガラス基板に割れが発生したり、熱変形や熱収縮が起こりやすくなる。含有量が0.5〜4%であれば、ガラスの溶融性や成形性を悪化させることなく、周辺材料と整合する熱膨張係数を有し、耐熱衝撃性に優れたガラスを得ることができる。好ましい範囲は0.5〜3.8%であり、より好ましくは0.5〜3.5%である。
【0020】
MgOは、ガラスの高温粘度を著しく低下させて溶融性や成形性を高める成分である。MgOの含有量が多くなると、ガラスが失透しやくなる。また、含有量が少なくなると、前記効果が得にくくなる。含有量が1〜15%であれば、ガラスの失透性を強めることなく、高温粘度を低くでき、溶融性と成形性を向上することができる。好ましい範囲は2〜13%であり、より好ましくは3〜12%である。
【0021】
CaOは、ガラスの高温粘度を低下させて溶融性や成形性を高める成分である。CaOの含有量が多くなると、著しくガラスが失透しやすくなる。含有量が8%以下であれば、ガラスの失透性を強めることなく、高温粘度を低くでき、溶融性と成形性を向上させることができる。好ましい範囲は1〜8%であり、より好ましくは1〜7%である。
【0022】
SrOは、ガラスの高温粘度を低下させて溶融性や成形性を高めたり、体積電気抵抗率を高める成分である。SrOの含有量が多くなると、ガラスが失透しやすくなる。また、含有量が少なくなると、前記効果が得にくくなる。含有量が1〜15%であれば、ガラスの失透性を強めることなく、高温粘度を低くでき、溶融性と成形性を向上させることができる。好ましい範囲は3〜15%であり、より好ましくは4〜15%である。
【0023】
BaOは、SrOと同様にガラスの高温粘度を低下させて溶融性や成形性を高めたり、体積電気抵抗率を高める成分である。BaOの含有量が多くなると、ガラスが失透しやすくなる。含有量が5%以下であれば、ガラスの失透性を強めることなく、高温粘度を低くでき、溶融性と成形性を向上させることができる。好ましい範囲は4%以下であり、より好ましくは3%である。
【0024】
尚、ガラスの失透性を強めることなく、ガラスの高温粘度を低くして、溶融性と成形性を向上させるためには、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量であるROを、15〜27%にする必要がある。ROの含有量が多くなると、ガラスが失透しやすくなる。また、含有量が少なくなると、ガラスの高温粘度が上昇し、溶融、成形が難しくなる。好ましい範囲は17〜27%であり、より好ましくは20〜27%である。
【0025】
また、基板ガラスの耐熱衝撃性と溶融性及び成形性を同時に向上させるためには、RO/Alの値を6.5以上(好ましくは7.0以上、より好ましくは7.5以上)に制限する必要がある。この値が低くなると、ガラスの高温粘度が上昇し、溶融、成形が難しくなる。尚、この値が大きくなりすぎると、歪点が低下する虞があるため、この値の上限は35に抑えることが望ましい。
【0026】
NaOは、ガラスの熱膨張係数を制御したり、ガラスの高温粘度を低下させて溶融性や成形性を高める成分である。NaOの含有量が多くなると、熱膨張係数が大きくなりガラスの耐熱衝撃性が低下する。また、ガラスの歪点が低下する傾向にある。そのため、プラズマディスプレイ装置を製造する際の熱工程で、ガラス基板に割れが発生したり、熱変形や熱収縮が起こりやすくなる。含有量が8%以下であれば、歪点を低下させることなく、周辺材料と整合する熱膨張係数を有し、耐熱衝撃性に優れたガラスを得ることができる。好ましい範囲は6%以下であり、より好ましくは5%以下である。
【0027】
Oは、NaOと同様にガラスの熱膨張係数を制御したり、ガラスの高温粘度を低下させて溶融性や成形性を高める成分である。KOの含有量が多くなると、熱膨張係数が大きくなりガラスの耐熱衝撃性が低下する。また、ガラスの歪点が低下する傾向にある。そのため、プラズマディスプレイ装置を製造する際の熱工程で、ガラス基板に割れが発生したり、熱変形や熱収縮が起こりやすくなる。一方、含有量が少なくなると、ガラスの熱膨張係数が小さくなり、周辺材料の熱膨張係数と整合し難くなる。また、ガラスの高温粘度が上昇する傾向にあり、溶融、成形が難しくなる。含有量が2〜12%であれば、歪点を低下させることなく、周辺材料と整合する熱膨張係数を有し、耐熱衝撃性に優れたガラスを得ることができる。好ましい範囲は3〜10%であり、より好ましくは4〜10%である。
【0028】
ZrOは、ガラスの歪点を高める成分である。ZrOの含有量が多くなると、失透ブツが発生する傾向にあり、成形が難しくなる。含有量が7%以下であれば、他の特性に悪影響を与えることなく、ガラスの歪点を上昇させることができる。好ましい範囲は6%以下であり、より好ましくは5%以下である。
【0029】
は、ガラスの失透を抑える成分である。Pの含有量が多くなると、ガラスが乳白しやすくなる。含有量が0.5%以下であれば、ガラスを乳白させることなく、ガラスの失透を抑える効果を得ることができる。好ましい範囲は0.4%以下、より好ましくは含有しないことである。
【0030】
尚、本発明において、上記成分以外にも、紫外線着色を防止するために、TiOを3%まで、液相温度を低下させて、成形性を向上させるために、Y、La、Nbを各3%まで、着色剤として、Fe、CoO、NiO、Cr、Ndを各2%まで、清澄剤として、As、Sb、SO、F、Cl等を合量で1%まで添加することが可能である。但し、フロート法で成形する場合、As、Sbはフロートバス中で還元されて金属異物となるため、導入は避けるべきである。
【0031】
また、本発明において、Bは歪点を著しく低下させるため、含有量は2%未満に抑えるべきであり、含有しないことが望ましい。
【0032】
次に、本発明のフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板を製造する方法を説明する。
【0033】
まず、上記のガラス組成範囲となるように原料を調合する。続いて、調合した原料を連続溶融炉で1520〜1680℃の温度で溶融する。その後、スロットダウンドロー法、オーバーフローダウンドロー法、フロート法、ロールアウト法等の成形方法を用いて、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷することでガラス基板を得ることができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0035】
表1及び2は、本発明の実施例(試料No.1〜7)と比較例(試料No.8及び9)を示すものである。
【0036】
【表1】
Figure 2004277222
【0037】
【表2】
Figure 2004277222
【0038】
表中の各試料は、次のようにして作製した。
【0039】
まず、表の組成となるようにガラス原料を調合し、白金ポットを用いて1450〜1600℃で4時間溶融した。その後、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して板状に成形し、徐冷後、板厚が2.8mmになるように両面研磨して、得られた板ガラスを200mm角の大きさに切断加工することで試料ガラスを作製した。
【0040】
このようして得られた各試料について、熱膨張係数、密度、体積電気抵抗率、歪点、10dPaの粘度に相当するガラス融液の温度を測定し、表に示した。
【0041】
表から明らかなように、実施例である試料No.1〜7の各試料は、熱膨張係数が68〜75×10−7/℃であるため、耐熱衝撃性に優れており、しかも、周辺材料と良好に整合する熱膨張係数を有していた。また、10dPa・sに相当するガラス融液の温度は1180℃以下と低く成形性にも優れていることが分かった。また、密度は、2.67g/cm以下であった。更に、歪点は580℃以上であり、熱処理工程におけるガラス基板の熱変形や熱収縮を抑えることができる。また、150℃における体積電気抵抗率(log ρ)は12.4Ω・cm以上であった。
【0042】
これに対して、比較例である試料No.8は、10dPa・sに相当するガラス融液の温度が1150℃であり、成形性に優れているが、熱膨張係数が83×10−7/℃であり、耐熱衝撃性が低い。また、試料No.9は、熱膨張係数が70×10−7/℃であり、耐熱衝撃性に優れているものの、10dPa・sに相当するガラス融液の温度は1220℃と高く、成形性が悪いと推測される。
【0043】
尚、熱膨張係数については、直径3.5mm、長さ50mmの円柱状の試料を作製し、ディラトメーターで30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した。
【0044】
密度については、周知のアルキメデス法により測定した。
【0045】
体積電気抵抗率については、ASTM C657−78に基づいて150℃における値を測定した。
【0046】
また、歪点については、ASTM C336−71に基づいて測定した。また、ガラスの粘度が10dPa・sに相当するガラス融液の温度は、白金球引き上げ法により測定した。この温度は、ガラスを板状に成形する際の目安になり、この温度が低い方が成形性が良いことになる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明のガラス基板は、歪点及び体積電気抵抗が高く、耐熱衝撃性及び成形性に優れ、しかも、周辺材料との整合性が取れる熱膨張係数を有するため、フラットパネルディスプレイ装置、特に、プラズマディスプレイ装置のガラス基板として好適である。

Claims (2)

  1. 質量百分率で、SiO 55〜74%、Al 0.5〜4%、MgO 1〜15%、CaO 0〜8%、SrO 1〜15%、BaO0〜5%、RO(ROはMgO、CaO、SrO、BaOを表わす) 15〜27%、NaO 0〜8%、KO 2〜12%、ZrO 0〜7%、P0〜0.5%の組成を含有し、RO/Alの値が6.5以上であることを特徴とするフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板。
  2. 30〜380℃における熱膨張係数が65〜78×10−7/℃であり、歪点が580℃以上であり、10dPaの粘度に相当するガラス融液の温度が1180℃以下であることを特徴とする請求項1記載のフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板。
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