JP2004270475A - 内燃機関のバルブタイミング制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電磁ブレーキの制動力受け部を保持する板状部材に対して連結用のゴム弾性体を確実に取り付けられるようにする。
【解決手段】極歯リング29,30から制動力を受けるヒステリシスリング31を板状部材33に取り付け、その板状部材33を軸受34を介して電磁コイル1に回転自在に支持させる。板状部材33にゴムブッシュ24を取り付け、組付角操作機構6の中間回転体19をそのゴムブッシュ24に連結する。このような装置において、挿入口37を有するリテーナ36を、その挿入口37が径方向内側に向くように板状部材33に溶接固定し、このリテーナ36の挿入口37から前記ゴムブッシュ24を挿入し、リテーナ36の壁36b,36cによってゴムブッシュ24に作用する回転方向の荷重と径方向外向きの荷重を支持するようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】極歯リング29,30から制動力を受けるヒステリシスリング31を板状部材33に取り付け、その板状部材33を軸受34を介して電磁コイル1に回転自在に支持させる。板状部材33にゴムブッシュ24を取り付け、組付角操作機構6の中間回転体19をそのゴムブッシュ24に連結する。このような装置において、挿入口37を有するリテーナ36を、その挿入口37が径方向内側に向くように板状部材33に溶接固定し、このリテーナ36の挿入口37から前記ゴムブッシュ24を挿入し、リテーナ36の壁36b,36cによってゴムブッシュ24に作用する回転方向の荷重と径方向外向きの荷重を支持するようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、内燃機関の吸気側または排気側の機関弁の開閉タイミングを運転状態に応じて可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のバルブタイミング制御装置として、次のようなものが案出されている(特許文献1参照。)。
【0003】
このバルブタイミング制御装置は、クランクシャフトに連係されたハウジング(駆動回転体)がカムシャフトの端部に回動可能に組み付けられ、カムシャフトに結合された従動軸部材(従動回転体)と前記ハウジングとがリンク等から成る組付角操作機構を介して連結されている。そして、組付角操作機構にはハウジングと従動軸部材に対して相対回動可能な中間回転体が設けられ、その中間回転体を適宜回動操作することによってハウジングと従動軸部材の組付角(相対回動位置)を調整できるようになっている。
【0004】
また、中間回転体に操作力を付与する操作力付与手段は、ゼンマイばねと電磁ブレーキとによって構成されている。即ち、中間回転体はゼンマイばねによって回転を進める方向に付勢されると共に、電磁ブレーキから適宜制動力を受けることによって回転を遅らせる方向の操作力を受けるようになっている。また、電磁ブレーキは、制動力を発生する電磁コイルと摩擦板がVTCカバー等の非回転部材に取り付けられ、電磁コイルが通電されることによって摩擦板が中間回転体に圧接されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−41013号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この従来のバルブタイミング制御装置においては、組付角操作機構の一部を成す中間回転体が電磁ブレーキの制動力受け部を成してため、機関運転中におけるカムシャフトの振動(回動方向の振動や傾斜)が直接制動力受け部に伝達されてしまう。このため、この制動力受け部の振動によって制動力発生部と制動力受け部の間の間隔や接触状態が変化し、それによって電磁ブレーキの制動性能が不安定になることが懸念される。
【0007】
これに対処するため、本出願人は、制動力受け部を中間回転体と独立して設け、その制動力受け部を軸受を介して電磁ブレーキの制動力発生部に回転可能に支持させると共に、制動力受け部側にゴム弾性体を取り付け、中間回転体側から突出させた操作力伝達部をそのゴム弾性体に挿入連結することを検討している。この場合、製造コストの削減や小型・軽量化の観点からは、制動力受け部は板状部材に一体に取り付け、その板状部材の中心部側を軸受を介して制動力発生部に支持させることが望ましい。
【0008】
しかし、このように制動力受け部を板状部材に取り付けるようにした場合には、板状部材が肉薄であることから、同部材に連結用のゴム弾性体を確実に取り付けることが難しくなる。
【0009】
そこでこの出願の発明は、電磁ブレーキの制動力受け部を保持する板状部材に対して連結用のゴム弾性体を確実に取り付けられるようにして、製造コストの高騰や装置の大型・重量化を招くことなく、電磁ブレーキの制動性能の安定化を図ることのできる内燃機関のバルブタイミング制御装置を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するための手段として、この出願の発明は、挿入口を有するリテーナを、その挿入口が径方向内側に向くように板状部材に溶接固定し、このリテーナの挿入口からゴム弾性体を挿入すると共に、そのリテーナの壁によってゴム弾性体に作用する回転方向の荷重と径方向外向きの荷重を支持するようにした。
【0011】
この発明の場合、リテーナは板状部材に溶接によって固定されるため、板状部材に確実かつ強固に固定されることとなるが、ゴム弾性体はリテーナの溶接後にその内部に挿入されるため、溶接の熱によって変形や劣化を招くことがない。また、ゴム弾性体はリテーナの壁によって回転方向の荷重を支持されるため、板状部材に作用する制動力を中間回転体に確実に伝達することができる。さらに、ゴム弾性体は径方向外向きの荷重をリテーナの壁によって確実に支持されるため、ゴム弾性体を組付けた状態で電磁ブレーキの作動試験を行うとき等にゴム弾性体が遠心力によって脱落する不具合も生じない。
【0012】
したがって、この発明によれば、不具合なくゴム弾性を板状部材に確実に取り付けることができるため、板状部材の採用によって製造コストの高騰や装置の大型・重量化を回避しつつ、電磁ブレーキの制動性能の安定化を図ることができる。
【0013】
また、前記リテーナの壁の内面には、ゴム弾性体の径方向内向きの変位を規制する係合部を設けることが望ましい。この場合、電磁ブレーキの作動試験の際等にゴム弾性体が挿入口から脱落する不具合をも確実に回避することができる。
【0014】
前記リテーナは金属平板を折り曲げて形成するようにしても良い。このようにした場合には、リテーナを安価に製造することが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、この出願の発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
この実施形態は、この出願の発明にかかるバルブタイミング制御装置を内燃機関の吸気側の動弁系に適用したものであるが、排気側の動弁系に同様に適用することも可能である。
【0017】
バルブタイミング制御装置は、図1に示すように内燃機関の吸気側のカムシャフト(図示せず)の前端部に結合された従動軸部材3(従動回転体)と、この従動軸部材3に必要に応じて相対回動できるように組み付けられ、チェーン(図示せず)を介してクランクシャフト(図示せず)に連係されるタイミングスプロケット4を外周に有する駆動リング5(駆動回転体)と、この駆動リング5の前方側(図1中左側)に配置され、駆動リング5と従動軸部材3を相対回動させて両者の組付角を操作する組付角操作機構6と、この組付角操作機構6に操作力を付与する操作力付与手段7と、を備えている。
【0018】
駆動リング5は、段差状の挿通孔8を備えた略円板状に形成され、この挿通孔8部分が従動軸部材3に回転可能に組み付けられている。そして、駆動リング5の前面(カムシャフトと逆側の面)には、図2,図3に示すように、対面する平行な側壁を有する3つの径方向溝9(径方向ガイド)が同リング5のほぼ半径方向に沿うように形成されている。尚、この実施形態の場合、駆動リング5は2つの部材が結合されて構成されている。
【0019】
また、従動軸部材3は、図1に示すように、カムシャフトの前端部に突き合される基部側の外周に拡径部が形成されると共に、その拡径部よりも前方側の外周面に放射状に突出する三つのレバー10が一体に形成され、軸芯部を貫通するボルト11によってカムシャフトに結合されている。各レバー10には、リンク12の基端がピン13によって枢支連結され、各リンク12の先端には前記各径方向溝9に摺動自在に係合する円柱状の突出部14が一体に形成されている。
【0020】
各リンク12は、突出部14が対応する径方向溝9に係合した状態において、ピン13を介して従動軸部材3に連結されているため、リンク12の先端側が外力を受けて径方向溝9に沿って変位すると、駆動リング5と従動軸部材3はリンク12の作用でもって突出部14の変位に応じた方向及び角度だけ相対回動する。
【0021】
また、各リンク12の先端部には、軸方向前方側に開口する収容穴15が形成され、この収容穴15に、後述する渦巻き溝16(渦巻き状ガイド)に係合する係合ピン17と、この係合ピン17を前方側(渦巻き溝16側)に付勢するコイルばね18とが収容されている。尚、この実施形態の場合、リンク12の先端の突出部14と係合ピン17、コイルばね18等によって径方向に変位可能な可動案内部が構成されている。
【0022】
一方、従動軸部材3のレバー10の突設位置よりも前方側には、円板状のフランジ壁を有する中間回転体19が軸受20を介して回転自在に支持されている。この中間回転体19のフランジ壁の後面側には断面半円状の前述の渦巻き溝16が形成され、この渦巻き溝16に、前記各リンク12の先端の係合ピン17が転動自在に案内係合されている。渦巻き溝16の渦巻きは、機関回転方向Rに沿って次第に縮径するように形成されている。したがって、各リンク12先端の係合ピン17が渦巻き溝16に係合した状態において、中間回転体19が駆動リング5に対して遅れ方向に相対回転すると、リンク12の先端部は径方向溝9に案内されつつ、渦巻き溝16の渦巻き形状に誘導されて半径方向内側に移動し、逆に、中間回転体19が進み方向に相対変位すると、半径方向外側に移動する。
【0023】
組付角操作機構6は、以上説明した駆動リング5の径方向溝9、リンク12、突出部14、係合ピン17、レバー10、中間回転体19、渦巻き溝16等によって構成されている。この組付角操作機構6は、後述する操作力付与手段7から中間回転体19に駆動リング5に対する相対的な回動操作力が入力されると、その操作力が渦巻き溝16と係合ピン17の係合部を通してリンク12の先端を径方向に変位させ、このときリンク12が揺動してその揺動量に応じて駆動リング5と従動軸部材3を相対回動させる。
【0024】
一方、操作力付与手段7は、中間回転体19を駆動リング5に対して機関回転方向Rに付勢する付勢手段としてのゼンマイばね21と、中間回転体19を駆動リング5に対して機関回転方向Rと逆方向に作動させる電磁ブレーキとしてのヒステリシスブレーキ2と、を備え、ゼンマイばね21の付勢力とヒステリシスブレーキ2の作動力のバランスによって中間回転体19を回動操作するようになっている。
【0025】
ゼンマイばね21は、駆動リング5に固定された円筒部材22にその外周端部が結合される一方、内周端部が中間回転体19の円筒状の基部に結合されている。
【0026】
ヒステリシスブレーキ2は、非回転部材である図示しないVTCカバーに支持固定される制動力発生部としての電磁コイル1と、この電磁コイル1の発生磁界による制動力を受ける被制動回転体23とを備え、この被制動回転体23がゴム弾性体であるゴムブッシュ24と操作力伝達部である連結ピン25を介して前記中間回転体19に連結されている。
【0027】
電磁コイル1は、通電によって磁界を発生するコイル巻線を主要素とするコイルブロック26と、このコイルブロック26の周域に配置されて磁束を誘導するヨーク27と、を有し、このヨーク27は、図4に示すように本体ブロック28と、この本体ブロック28に嵌合固定された内側極歯リング29と外側極歯リング30によって構成されている。また、内側極歯リング29と外側極歯リング30は環状の隙間を持って同心に配置され、両者の対向面には、軸方向に延出する複数の歯面が円周方向に沿って形成されている。そして、両極歯リング29,30の歯面相互は円周方向にオフセットされて配置されており、コイルブロック26のコイル巻線が通電されると、両リング29,30間にはオフセットした位置関係にある相手歯面に向かう磁界が生じるようになっている。
【0028】
また、被制動回転体23は、前記両極歯リング29,30間に非接触状態で挿入配置された制動力受け部としての円筒状のヒステリシスリング31と、外周端部がこのヒステリシスリング31に一体に結合される一方、内周端部に軸部32が連結された円板状の板状部材33とから成り、この板状部材33に連結された軸部32がヨーク27の本体ブロック28に軸受34を介して回転自在に支持されている。したがって、被制動回転体23は電磁コイル1によって常に軸受けされ、それによって回転中における揺動や径方向の振動が抑制されている。
【0029】
ヒステリシスリング31は、磁気的ヒステリシス特性を有するヒステリシス材から成り、ヒステリシスリング31の回転中に両極歯リング29,30間に磁界が発生すると、その磁界の向きとヒステリシスリング31内の磁束の向きとにずれが生じるようになっている。ヒステリシスブレーキ2は、このずれによって制動力を発生する。
【0030】
また、組付角操作機構6側に臨む板状部材33の背面には、図1及び図3,図4に示すように金属製の一対のリテーナ36が取り付けられ、この各リテーナ36の内部に前記ゴムブッシュ24が収容保持されている。
【0031】
リテーナ36は、図6に示すように短冊状の本体部aの中央から舌片部bが延設された略T字状の金属平板を適宜折り曲げることによって形成されている。具体的には、図7〜図10に示すように、短冊状の本体部a(図6参照)を、中央の基壁36aを中心に両側に階段状に折り曲げることによって、左右対称に側壁36bと外向きのフランジ36dが形成され、前記舌片部b(図6参照)を側壁36bと同側に折り曲げることによって、外側壁36cが形成されている。そして、これらの折り曲げにより、外側壁36cと対向する位置には略方形状の挿入口37が形成されている。また、基壁36aには前記連結ピン25の先端部が挿入される大径の遊挿孔38が形成され、両側壁36bには中央が円弧状に窪んだ係合部40が形成されている。
【0032】
こうして成形された各リテーナ36は、各挿入口37が径方向内側に向くように(回転中心方向に開口するように)フランジ36d部分が板状部材33に溶接固定されている。そして、板状部材33に溶接固定された各リテーナ36には、径方向内側の挿入口37からゴムブッシュ24が挿入され、そのゴムブッシュ24の外周面が側壁36bの係合部40内に係合されている。尚、この状態において、外側壁36cの内面にはゴムブッシュ24の外周面が当接している。
【0033】
また、ゴムブッシュ24には貫通孔41が形成され、リテーナ36の遊挿孔38を貫通した連結ピン25の先端がこの貫通孔41に圧入固定されるようになっている。尚、板状部材33のリテーナ取付部にはリテーナ36の遊挿孔38とほぼ同軸に逃し孔42が形成されており、ゴムブッシュ24を貫通した連結ピン25の先端部がその逃し孔42内に遊挿され、それによって連結ピン25と板状部材33の干渉を回避するようになっている。
【0034】
このバルブタイミング制御装置は以上のような構成であるため、クランクシャフトとカムシャフトの回転位相(機関弁の開閉タイミング)を最進角側に変更する場合には、ヒステリシスブレーキ2に適宜電流を通電することにより、ゼンマイばね21の力に抗する制動力が板状部材33から中間回転体19にゴムブッシュ24と連結ピン25を介して伝達される。これにより、中間回転体19が駆動リング5に対して逆方向に回転し、それによってリンク12の先端の係合ピン17が渦巻き溝16に誘導されてリンク12の先端部が径方向内側に変位し、このとき、図3に示すようにリンク12の作用によって駆動リング5と従動軸部材3の組付角が最進角位置に変更される。
【0035】
また、クランクシャフトとカムシャフトの回転位相(機関弁の開閉タイミング)を最遅角側に変更する場合には、ヒステリシスブレーキ2の通電電流をオフまたは微弱にすることにより、中間回転体19がゼンマイばね21の力によって機関回転方向に回転させられる。すると、渦巻き溝16による係合ピン17の誘導によってリンク12の先端部が径方向外側に変位し、このとき、図2に示すようにリンク12の作用によって駆動リング5と従動軸部材3の組付角が最遅角位置に変更される。
【0036】
このバルブタイミング制御装置においては、制動力受け部であるヒステリシスリング31が板状部材33と軸部32を介して電磁コイル1に軸受支持されると共に、板状部材33と中間回転体19がゴムブッシュ24を介して連結されているため、カムシャフトの回転変動等に伴なう従動軸部材3の振動はゴムブッシュ24によって確実に吸収され、ヒステリシスリング31部分にはほとんど伝達されることがない。このため、ヒステリシスブレーキ2の極歯リング29,30とヒステリシスリング2の間の隙間は常にほぼ一定に維持され、ヒステリシスブレーキ2はこれにより常時安定した制動性能を発揮する。
【0037】
また、この装置においては、ヒステリシスリング31を薄肉の板状部材33に取り付け、その板状部材33を電磁コイル1に軸受け支持させる一方でゴムブッシュ24を介して中間回転体19に連結したため、板状部材33部分をプレス成形によって形成して製造コストの低減を図ることができると共に、装置全体の小型・軽量化を図ることができる。
【0038】
さらに、この装置の場合、リテーナ36を板状部材33に溶接固定した後に、その内部にゴムブッシュ24を挿入保持させるようにしているため、溶接によってリテーナ36を確実に板状部材33に固定することができるうえ、溶接時の熱によってゴムブッシュが変形したり、その特性が変化する不具合を招くことがない。そして、リテーナ36は折り曲げによって形成した側壁36bと外側壁36cにより、ゴムブッシュ24に作用する回転方向の荷重や径方向外向きの荷重を確実に支持することができる。しかも、ゴムブッシュ24を挿入するためのリテーナ36の挿入口37は径方向内側に向いて形成されているため、ヒステリシスブレーキ2を装置本体部に連結する前の作動試験時(被制動回転体23を回転させての試験時)に、ゴムブッシュ24が遠心力を受けて挿入口37から脱落する不具合も生じない。
【0039】
また、ゴムブッシュ24は、凹状の係合部40によってリテーナ36の側壁36bに係止されるため、上記の作動試験時に、挿入口37が鉛直下方を向いて停止することがあっても挿入口37から脱落することもない。
【0040】
さらに、この実施形態の場合、リテーナ36は平板状の金属板を折り曲げて形成したものであるため、プレスによる打ち抜きと折り曲げによって効率良く製造することができる。
【0041】
また、この実施形態においては、リテーナ36の係合部40を、側壁36bに形成した円弧状の窪みによって構成したため、この窪み形状によってリテーナ36の側壁36b自体を補強できるという利点がある。
【0042】
尚、この出願の発明の実施形態は以上で説明したものに限るものでなく、例えば、上記の実施形態では電磁ブレーキとしてヒステリシスブレーキを用いたが、摩擦接触タイプ等の他のタイプの電磁ブレーキも採用可能である。
【0043】
次に、上記の各実施形態から把握し得る請求項に記載以外の発明について、以下にその作用効果と共に記載する。
【0044】
(イ) リテーナは、短冊状の本体部の中央部から舌片部が延設された略T字状の金属板から構成し、その金属板の本体部を中央の基壁を挟んで左右対称に階段状に折り曲げ、ゴム弾性体の回転方向の荷重を支持する側壁と取付用のフランジを両側に形成し、さらに前記舌片部を前記側壁と同側に折り曲げて、ゴム弾性体の径方向外向きの荷重を支持する外側壁を形成し、前記本体部の曲げによって形成された舌片部と対向する位置の開口をゴム弾性体の挿入口としたことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【0045】
この場合、金属板の打ち抜きと折り曲げによって極めて簡単にリテーナを形成することができる。
【0046】
(ロ) 前記本体部の側壁の一部を円弧状に窪ませ、その窪み部分をゴム弾性体の径方向の変位を規制する係合部としたことを特徴とする前記(イ)に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【0047】
この場合、ゴム弾性体をリテーナの側壁に確実に係止させることが可能になると共に、側壁に形成した窪みによって側壁自体の強度を高めることが可能となる。
【0048】
(ハ) 前記組付角操作機構は、
駆動回転体と従動回転体のいずれか一方に設けられた径方向ガイドと、
前記駆動回転体と従動回転体に対して相対回転可能に設けられ、前記径方向ガイドに対峙する側の面に渦巻き状ガイドを有する中間回転体と、
前記径方向ガイドと渦巻き状ガイドに変位可能に案内係合される可動案内部と、
前記駆動回転体と従動回転体のいずれか他方のものの回転中心から離間した部位と前記可動案内部とを揺動可能に連結するリンクと、を備え、
ゴム弾性体を介して中間回転体に入力された電磁ブレーキの制動力を、渦巻き状ガイドと可動案内部の係合部によって増幅して、駆動回転体と従動回転体の組付角操作力に変換することを特徴する請求項1〜3、前記(イ),(ロ)のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【0049】
この場合、電磁ブレーキ部分で発生した制動力を増幅して駆動回転体と従動回転体の組付角操作力に変換するため、操作力の伝達時にゴム弾性体を押し潰すように作用する荷重が小さくなり、その分、ゴム弾性体の劣化を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の一実施形態を示す縦断面図。
【図2】同実施形態を示す図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】同実施形態の作動状態を示す図2に対応の断面図。
【図4】同実施形態を示す分解斜視図。
【図5】同実施形態を示す別角度からの拡大した分解斜視図。
【図6】同実施形態を示す部品の展開図。
【図7】同部品の正面図。
【図8】同部品の図7のB−B線に沿う断面図。
【図9】同部品の図7のC矢視の側面図。
【図10】同部品の図9のD−D線に沿う断面図。
【符号の説明】
1…電磁コイル(制動力発生部)
2…ヒステリシスブレーキ(電磁ブレーキ)
3…従動軸部材(従動回転体)
5…駆動リング(駆動回転体)
6…組付角操作機構
19…中間回転体
24…ゴムブッシュ(ゴム弾性体)
25…連結ピン(操作力伝達部)
31…ヒステリシスリング(制動力受け部)
33…板状部材
34…軸受
36…リテーナ
36b…側壁(壁)
36c…外側壁(壁)
37…挿入口
40…係合部
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、内燃機関の吸気側または排気側の機関弁の開閉タイミングを運転状態に応じて可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のバルブタイミング制御装置として、次のようなものが案出されている(特許文献1参照。)。
【0003】
このバルブタイミング制御装置は、クランクシャフトに連係されたハウジング(駆動回転体)がカムシャフトの端部に回動可能に組み付けられ、カムシャフトに結合された従動軸部材(従動回転体)と前記ハウジングとがリンク等から成る組付角操作機構を介して連結されている。そして、組付角操作機構にはハウジングと従動軸部材に対して相対回動可能な中間回転体が設けられ、その中間回転体を適宜回動操作することによってハウジングと従動軸部材の組付角(相対回動位置)を調整できるようになっている。
【0004】
また、中間回転体に操作力を付与する操作力付与手段は、ゼンマイばねと電磁ブレーキとによって構成されている。即ち、中間回転体はゼンマイばねによって回転を進める方向に付勢されると共に、電磁ブレーキから適宜制動力を受けることによって回転を遅らせる方向の操作力を受けるようになっている。また、電磁ブレーキは、制動力を発生する電磁コイルと摩擦板がVTCカバー等の非回転部材に取り付けられ、電磁コイルが通電されることによって摩擦板が中間回転体に圧接されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−41013号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この従来のバルブタイミング制御装置においては、組付角操作機構の一部を成す中間回転体が電磁ブレーキの制動力受け部を成してため、機関運転中におけるカムシャフトの振動(回動方向の振動や傾斜)が直接制動力受け部に伝達されてしまう。このため、この制動力受け部の振動によって制動力発生部と制動力受け部の間の間隔や接触状態が変化し、それによって電磁ブレーキの制動性能が不安定になることが懸念される。
【0007】
これに対処するため、本出願人は、制動力受け部を中間回転体と独立して設け、その制動力受け部を軸受を介して電磁ブレーキの制動力発生部に回転可能に支持させると共に、制動力受け部側にゴム弾性体を取り付け、中間回転体側から突出させた操作力伝達部をそのゴム弾性体に挿入連結することを検討している。この場合、製造コストの削減や小型・軽量化の観点からは、制動力受け部は板状部材に一体に取り付け、その板状部材の中心部側を軸受を介して制動力発生部に支持させることが望ましい。
【0008】
しかし、このように制動力受け部を板状部材に取り付けるようにした場合には、板状部材が肉薄であることから、同部材に連結用のゴム弾性体を確実に取り付けることが難しくなる。
【0009】
そこでこの出願の発明は、電磁ブレーキの制動力受け部を保持する板状部材に対して連結用のゴム弾性体を確実に取り付けられるようにして、製造コストの高騰や装置の大型・重量化を招くことなく、電磁ブレーキの制動性能の安定化を図ることのできる内燃機関のバルブタイミング制御装置を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するための手段として、この出願の発明は、挿入口を有するリテーナを、その挿入口が径方向内側に向くように板状部材に溶接固定し、このリテーナの挿入口からゴム弾性体を挿入すると共に、そのリテーナの壁によってゴム弾性体に作用する回転方向の荷重と径方向外向きの荷重を支持するようにした。
【0011】
この発明の場合、リテーナは板状部材に溶接によって固定されるため、板状部材に確実かつ強固に固定されることとなるが、ゴム弾性体はリテーナの溶接後にその内部に挿入されるため、溶接の熱によって変形や劣化を招くことがない。また、ゴム弾性体はリテーナの壁によって回転方向の荷重を支持されるため、板状部材に作用する制動力を中間回転体に確実に伝達することができる。さらに、ゴム弾性体は径方向外向きの荷重をリテーナの壁によって確実に支持されるため、ゴム弾性体を組付けた状態で電磁ブレーキの作動試験を行うとき等にゴム弾性体が遠心力によって脱落する不具合も生じない。
【0012】
したがって、この発明によれば、不具合なくゴム弾性を板状部材に確実に取り付けることができるため、板状部材の採用によって製造コストの高騰や装置の大型・重量化を回避しつつ、電磁ブレーキの制動性能の安定化を図ることができる。
【0013】
また、前記リテーナの壁の内面には、ゴム弾性体の径方向内向きの変位を規制する係合部を設けることが望ましい。この場合、電磁ブレーキの作動試験の際等にゴム弾性体が挿入口から脱落する不具合をも確実に回避することができる。
【0014】
前記リテーナは金属平板を折り曲げて形成するようにしても良い。このようにした場合には、リテーナを安価に製造することが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、この出願の発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
この実施形態は、この出願の発明にかかるバルブタイミング制御装置を内燃機関の吸気側の動弁系に適用したものであるが、排気側の動弁系に同様に適用することも可能である。
【0017】
バルブタイミング制御装置は、図1に示すように内燃機関の吸気側のカムシャフト(図示せず)の前端部に結合された従動軸部材3(従動回転体)と、この従動軸部材3に必要に応じて相対回動できるように組み付けられ、チェーン(図示せず)を介してクランクシャフト(図示せず)に連係されるタイミングスプロケット4を外周に有する駆動リング5(駆動回転体)と、この駆動リング5の前方側(図1中左側)に配置され、駆動リング5と従動軸部材3を相対回動させて両者の組付角を操作する組付角操作機構6と、この組付角操作機構6に操作力を付与する操作力付与手段7と、を備えている。
【0018】
駆動リング5は、段差状の挿通孔8を備えた略円板状に形成され、この挿通孔8部分が従動軸部材3に回転可能に組み付けられている。そして、駆動リング5の前面(カムシャフトと逆側の面)には、図2,図3に示すように、対面する平行な側壁を有する3つの径方向溝9(径方向ガイド)が同リング5のほぼ半径方向に沿うように形成されている。尚、この実施形態の場合、駆動リング5は2つの部材が結合されて構成されている。
【0019】
また、従動軸部材3は、図1に示すように、カムシャフトの前端部に突き合される基部側の外周に拡径部が形成されると共に、その拡径部よりも前方側の外周面に放射状に突出する三つのレバー10が一体に形成され、軸芯部を貫通するボルト11によってカムシャフトに結合されている。各レバー10には、リンク12の基端がピン13によって枢支連結され、各リンク12の先端には前記各径方向溝9に摺動自在に係合する円柱状の突出部14が一体に形成されている。
【0020】
各リンク12は、突出部14が対応する径方向溝9に係合した状態において、ピン13を介して従動軸部材3に連結されているため、リンク12の先端側が外力を受けて径方向溝9に沿って変位すると、駆動リング5と従動軸部材3はリンク12の作用でもって突出部14の変位に応じた方向及び角度だけ相対回動する。
【0021】
また、各リンク12の先端部には、軸方向前方側に開口する収容穴15が形成され、この収容穴15に、後述する渦巻き溝16(渦巻き状ガイド)に係合する係合ピン17と、この係合ピン17を前方側(渦巻き溝16側)に付勢するコイルばね18とが収容されている。尚、この実施形態の場合、リンク12の先端の突出部14と係合ピン17、コイルばね18等によって径方向に変位可能な可動案内部が構成されている。
【0022】
一方、従動軸部材3のレバー10の突設位置よりも前方側には、円板状のフランジ壁を有する中間回転体19が軸受20を介して回転自在に支持されている。この中間回転体19のフランジ壁の後面側には断面半円状の前述の渦巻き溝16が形成され、この渦巻き溝16に、前記各リンク12の先端の係合ピン17が転動自在に案内係合されている。渦巻き溝16の渦巻きは、機関回転方向Rに沿って次第に縮径するように形成されている。したがって、各リンク12先端の係合ピン17が渦巻き溝16に係合した状態において、中間回転体19が駆動リング5に対して遅れ方向に相対回転すると、リンク12の先端部は径方向溝9に案内されつつ、渦巻き溝16の渦巻き形状に誘導されて半径方向内側に移動し、逆に、中間回転体19が進み方向に相対変位すると、半径方向外側に移動する。
【0023】
組付角操作機構6は、以上説明した駆動リング5の径方向溝9、リンク12、突出部14、係合ピン17、レバー10、中間回転体19、渦巻き溝16等によって構成されている。この組付角操作機構6は、後述する操作力付与手段7から中間回転体19に駆動リング5に対する相対的な回動操作力が入力されると、その操作力が渦巻き溝16と係合ピン17の係合部を通してリンク12の先端を径方向に変位させ、このときリンク12が揺動してその揺動量に応じて駆動リング5と従動軸部材3を相対回動させる。
【0024】
一方、操作力付与手段7は、中間回転体19を駆動リング5に対して機関回転方向Rに付勢する付勢手段としてのゼンマイばね21と、中間回転体19を駆動リング5に対して機関回転方向Rと逆方向に作動させる電磁ブレーキとしてのヒステリシスブレーキ2と、を備え、ゼンマイばね21の付勢力とヒステリシスブレーキ2の作動力のバランスによって中間回転体19を回動操作するようになっている。
【0025】
ゼンマイばね21は、駆動リング5に固定された円筒部材22にその外周端部が結合される一方、内周端部が中間回転体19の円筒状の基部に結合されている。
【0026】
ヒステリシスブレーキ2は、非回転部材である図示しないVTCカバーに支持固定される制動力発生部としての電磁コイル1と、この電磁コイル1の発生磁界による制動力を受ける被制動回転体23とを備え、この被制動回転体23がゴム弾性体であるゴムブッシュ24と操作力伝達部である連結ピン25を介して前記中間回転体19に連結されている。
【0027】
電磁コイル1は、通電によって磁界を発生するコイル巻線を主要素とするコイルブロック26と、このコイルブロック26の周域に配置されて磁束を誘導するヨーク27と、を有し、このヨーク27は、図4に示すように本体ブロック28と、この本体ブロック28に嵌合固定された内側極歯リング29と外側極歯リング30によって構成されている。また、内側極歯リング29と外側極歯リング30は環状の隙間を持って同心に配置され、両者の対向面には、軸方向に延出する複数の歯面が円周方向に沿って形成されている。そして、両極歯リング29,30の歯面相互は円周方向にオフセットされて配置されており、コイルブロック26のコイル巻線が通電されると、両リング29,30間にはオフセットした位置関係にある相手歯面に向かう磁界が生じるようになっている。
【0028】
また、被制動回転体23は、前記両極歯リング29,30間に非接触状態で挿入配置された制動力受け部としての円筒状のヒステリシスリング31と、外周端部がこのヒステリシスリング31に一体に結合される一方、内周端部に軸部32が連結された円板状の板状部材33とから成り、この板状部材33に連結された軸部32がヨーク27の本体ブロック28に軸受34を介して回転自在に支持されている。したがって、被制動回転体23は電磁コイル1によって常に軸受けされ、それによって回転中における揺動や径方向の振動が抑制されている。
【0029】
ヒステリシスリング31は、磁気的ヒステリシス特性を有するヒステリシス材から成り、ヒステリシスリング31の回転中に両極歯リング29,30間に磁界が発生すると、その磁界の向きとヒステリシスリング31内の磁束の向きとにずれが生じるようになっている。ヒステリシスブレーキ2は、このずれによって制動力を発生する。
【0030】
また、組付角操作機構6側に臨む板状部材33の背面には、図1及び図3,図4に示すように金属製の一対のリテーナ36が取り付けられ、この各リテーナ36の内部に前記ゴムブッシュ24が収容保持されている。
【0031】
リテーナ36は、図6に示すように短冊状の本体部aの中央から舌片部bが延設された略T字状の金属平板を適宜折り曲げることによって形成されている。具体的には、図7〜図10に示すように、短冊状の本体部a(図6参照)を、中央の基壁36aを中心に両側に階段状に折り曲げることによって、左右対称に側壁36bと外向きのフランジ36dが形成され、前記舌片部b(図6参照)を側壁36bと同側に折り曲げることによって、外側壁36cが形成されている。そして、これらの折り曲げにより、外側壁36cと対向する位置には略方形状の挿入口37が形成されている。また、基壁36aには前記連結ピン25の先端部が挿入される大径の遊挿孔38が形成され、両側壁36bには中央が円弧状に窪んだ係合部40が形成されている。
【0032】
こうして成形された各リテーナ36は、各挿入口37が径方向内側に向くように(回転中心方向に開口するように)フランジ36d部分が板状部材33に溶接固定されている。そして、板状部材33に溶接固定された各リテーナ36には、径方向内側の挿入口37からゴムブッシュ24が挿入され、そのゴムブッシュ24の外周面が側壁36bの係合部40内に係合されている。尚、この状態において、外側壁36cの内面にはゴムブッシュ24の外周面が当接している。
【0033】
また、ゴムブッシュ24には貫通孔41が形成され、リテーナ36の遊挿孔38を貫通した連結ピン25の先端がこの貫通孔41に圧入固定されるようになっている。尚、板状部材33のリテーナ取付部にはリテーナ36の遊挿孔38とほぼ同軸に逃し孔42が形成されており、ゴムブッシュ24を貫通した連結ピン25の先端部がその逃し孔42内に遊挿され、それによって連結ピン25と板状部材33の干渉を回避するようになっている。
【0034】
このバルブタイミング制御装置は以上のような構成であるため、クランクシャフトとカムシャフトの回転位相(機関弁の開閉タイミング)を最進角側に変更する場合には、ヒステリシスブレーキ2に適宜電流を通電することにより、ゼンマイばね21の力に抗する制動力が板状部材33から中間回転体19にゴムブッシュ24と連結ピン25を介して伝達される。これにより、中間回転体19が駆動リング5に対して逆方向に回転し、それによってリンク12の先端の係合ピン17が渦巻き溝16に誘導されてリンク12の先端部が径方向内側に変位し、このとき、図3に示すようにリンク12の作用によって駆動リング5と従動軸部材3の組付角が最進角位置に変更される。
【0035】
また、クランクシャフトとカムシャフトの回転位相(機関弁の開閉タイミング)を最遅角側に変更する場合には、ヒステリシスブレーキ2の通電電流をオフまたは微弱にすることにより、中間回転体19がゼンマイばね21の力によって機関回転方向に回転させられる。すると、渦巻き溝16による係合ピン17の誘導によってリンク12の先端部が径方向外側に変位し、このとき、図2に示すようにリンク12の作用によって駆動リング5と従動軸部材3の組付角が最遅角位置に変更される。
【0036】
このバルブタイミング制御装置においては、制動力受け部であるヒステリシスリング31が板状部材33と軸部32を介して電磁コイル1に軸受支持されると共に、板状部材33と中間回転体19がゴムブッシュ24を介して連結されているため、カムシャフトの回転変動等に伴なう従動軸部材3の振動はゴムブッシュ24によって確実に吸収され、ヒステリシスリング31部分にはほとんど伝達されることがない。このため、ヒステリシスブレーキ2の極歯リング29,30とヒステリシスリング2の間の隙間は常にほぼ一定に維持され、ヒステリシスブレーキ2はこれにより常時安定した制動性能を発揮する。
【0037】
また、この装置においては、ヒステリシスリング31を薄肉の板状部材33に取り付け、その板状部材33を電磁コイル1に軸受け支持させる一方でゴムブッシュ24を介して中間回転体19に連結したため、板状部材33部分をプレス成形によって形成して製造コストの低減を図ることができると共に、装置全体の小型・軽量化を図ることができる。
【0038】
さらに、この装置の場合、リテーナ36を板状部材33に溶接固定した後に、その内部にゴムブッシュ24を挿入保持させるようにしているため、溶接によってリテーナ36を確実に板状部材33に固定することができるうえ、溶接時の熱によってゴムブッシュが変形したり、その特性が変化する不具合を招くことがない。そして、リテーナ36は折り曲げによって形成した側壁36bと外側壁36cにより、ゴムブッシュ24に作用する回転方向の荷重や径方向外向きの荷重を確実に支持することができる。しかも、ゴムブッシュ24を挿入するためのリテーナ36の挿入口37は径方向内側に向いて形成されているため、ヒステリシスブレーキ2を装置本体部に連結する前の作動試験時(被制動回転体23を回転させての試験時)に、ゴムブッシュ24が遠心力を受けて挿入口37から脱落する不具合も生じない。
【0039】
また、ゴムブッシュ24は、凹状の係合部40によってリテーナ36の側壁36bに係止されるため、上記の作動試験時に、挿入口37が鉛直下方を向いて停止することがあっても挿入口37から脱落することもない。
【0040】
さらに、この実施形態の場合、リテーナ36は平板状の金属板を折り曲げて形成したものであるため、プレスによる打ち抜きと折り曲げによって効率良く製造することができる。
【0041】
また、この実施形態においては、リテーナ36の係合部40を、側壁36bに形成した円弧状の窪みによって構成したため、この窪み形状によってリテーナ36の側壁36b自体を補強できるという利点がある。
【0042】
尚、この出願の発明の実施形態は以上で説明したものに限るものでなく、例えば、上記の実施形態では電磁ブレーキとしてヒステリシスブレーキを用いたが、摩擦接触タイプ等の他のタイプの電磁ブレーキも採用可能である。
【0043】
次に、上記の各実施形態から把握し得る請求項に記載以外の発明について、以下にその作用効果と共に記載する。
【0044】
(イ) リテーナは、短冊状の本体部の中央部から舌片部が延設された略T字状の金属板から構成し、その金属板の本体部を中央の基壁を挟んで左右対称に階段状に折り曲げ、ゴム弾性体の回転方向の荷重を支持する側壁と取付用のフランジを両側に形成し、さらに前記舌片部を前記側壁と同側に折り曲げて、ゴム弾性体の径方向外向きの荷重を支持する外側壁を形成し、前記本体部の曲げによって形成された舌片部と対向する位置の開口をゴム弾性体の挿入口としたことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【0045】
この場合、金属板の打ち抜きと折り曲げによって極めて簡単にリテーナを形成することができる。
【0046】
(ロ) 前記本体部の側壁の一部を円弧状に窪ませ、その窪み部分をゴム弾性体の径方向の変位を規制する係合部としたことを特徴とする前記(イ)に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【0047】
この場合、ゴム弾性体をリテーナの側壁に確実に係止させることが可能になると共に、側壁に形成した窪みによって側壁自体の強度を高めることが可能となる。
【0048】
(ハ) 前記組付角操作機構は、
駆動回転体と従動回転体のいずれか一方に設けられた径方向ガイドと、
前記駆動回転体と従動回転体に対して相対回転可能に設けられ、前記径方向ガイドに対峙する側の面に渦巻き状ガイドを有する中間回転体と、
前記径方向ガイドと渦巻き状ガイドに変位可能に案内係合される可動案内部と、
前記駆動回転体と従動回転体のいずれか他方のものの回転中心から離間した部位と前記可動案内部とを揺動可能に連結するリンクと、を備え、
ゴム弾性体を介して中間回転体に入力された電磁ブレーキの制動力を、渦巻き状ガイドと可動案内部の係合部によって増幅して、駆動回転体と従動回転体の組付角操作力に変換することを特徴する請求項1〜3、前記(イ),(ロ)のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【0049】
この場合、電磁ブレーキ部分で発生した制動力を増幅して駆動回転体と従動回転体の組付角操作力に変換するため、操作力の伝達時にゴム弾性体を押し潰すように作用する荷重が小さくなり、その分、ゴム弾性体の劣化を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の一実施形態を示す縦断面図。
【図2】同実施形態を示す図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】同実施形態の作動状態を示す図2に対応の断面図。
【図4】同実施形態を示す分解斜視図。
【図5】同実施形態を示す別角度からの拡大した分解斜視図。
【図6】同実施形態を示す部品の展開図。
【図7】同部品の正面図。
【図8】同部品の図7のB−B線に沿う断面図。
【図9】同部品の図7のC矢視の側面図。
【図10】同部品の図9のD−D線に沿う断面図。
【符号の説明】
1…電磁コイル(制動力発生部)
2…ヒステリシスブレーキ(電磁ブレーキ)
3…従動軸部材(従動回転体)
5…駆動リング(駆動回転体)
6…組付角操作機構
19…中間回転体
24…ゴムブッシュ(ゴム弾性体)
25…連結ピン(操作力伝達部)
31…ヒステリシスリング(制動力受け部)
33…板状部材
34…軸受
36…リテーナ
36b…側壁(壁)
36c…外側壁(壁)
37…挿入口
40…係合部
Claims (3)
- 内燃機関のクランクシャフトによって回転駆動される駆動回転体と、カムシャフト若しくは同シャフトに結合された別体部材から成り、前記駆動回転体が必要に応じて相対回動できるように組み付けられた従動回転体と、前記駆動回転体と従動回転体に対して相対回転可能な中間回転体を有し、その中間回転体が回動操作されることによって駆動回転体と従動回転体の組付角を変更する組付角操作機構と、前記中間回転体に同中間回転体を回動操作すべく制動力を付与する電磁ブレーキと、を備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記電磁ブレーキが、非回転部材に支持固定された制動力発生部と、この制動力発生部から制動力を受ける制動力受け部と、この制動力受け部が一体に設けられると共に、前記制動力発生部に軸受を介して回転自在に支持された板状部材と、この板状部材に取り付けられ、前記中間回転体側の操作力伝達部が挿入連結されるゴム弾性体と、を備えた構成とされたものにおいて、
挿入口を有するリテーナを、その挿入口が径方向内側に向くように前記板状部材に溶接固定し、このリテーナの挿入口から前記ゴム弾性体を挿入すると共に、リテーナの壁によってゴム弾性体に作用する回転方向の荷重と径方向外向きの荷重を支持するようにしたことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 前記リテーナの壁の内面に、ゴム弾性体の径方向内向きの変位を規制する係合部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
- 前記リテーナは金属平板を折り曲げて形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
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JP2003059435A JP2004270475A (ja) | 2003-03-06 | 2003-03-06 | 内燃機関のバルブタイミング制御装置 |
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Cited By (2)
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JP2012062766A (ja) * | 2010-09-14 | 2012-03-29 | Hitachi Automotive Systems Ltd | 内燃機関のバルブタイミング制御装置 |
CN105569757A (zh) * | 2014-11-04 | 2016-05-11 | 日立汽车系统株式会社 | 内燃机的气门正时控制装置 |
-
2003
- 2003-03-06 JP JP2003059435A patent/JP2004270475A/ja active Pending
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