JP2004270384A - 法面の盛り土工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溝部1aを有する複数の支持杭1 を法面2 に沿って所定間隔で地面3 に立設する。隣合う支持杭1 に亘って合成樹脂発泡体製の複数の残存型枠4 を配置してその両端部を溝部に嵌めて同型枠を支持杭で保持しておく。法面と残存型枠の間のスペースに土またはコンクリート8 を打設する。残存型枠の気泡は、厚み方向に長軸を有する紡錘状であることが好ましい。コンクリートは好ましくは気泡含有軽量コンクリートである。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、山道等の側部の法面において、地山の崩落を防ぐために盛り土を施す工法に関し、より詳細には、材料の軽量化により搬送および施工作業を楽に行うことを企図した盛り土工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、法面の盛り土工法としては、方形パネル状の残存型枠を縦横に並べて積上げ、この残存型枠と向き合うように背後には枠体を縦横に並べ、残存型枠と枠体間をセパレータによって連結しながら両者を起立させ、コンクリート製の残存型枠から地山までの間にセメント系気泡混合軽量土を打設してなる軽量盛土工法が提案されている(特許文献1参照)。また残存型枠を用いる工法としては、マット上に柱用の鉄骨を立設し、鉄骨の外側に枠状のコンクリートプレキャスト製の残存型枠を配置し、プレキャスト埋設型枠内にコンクリートを打設する施工方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−242189号公報。
【特許文献2】
特開2000−120982号公報。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記工法で用いる残存型枠はいずれもコンクリート製のものであるため、重量が大きく、盛り土施工の作業性が悪く、特に山間部ではその搬送に苦慮するという問題があった。
【0005】
この発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、残存型枠の軽量化を果たし、その搬送が容易で施工作業性のよい法面の盛り土工法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明による法面の盛り土工法は、溝部を有する複数の支持杭を法面に沿って所定間隔で地面に立設し、隣合う支持杭に亘って合成樹脂発泡体製の複数の残存型枠を配置してその両端部を溝部に嵌めて同型枠を支持杭で保持しておき、法面と残存型枠の間のスペースに土またはコンクリートを打設することを特徴とする方法である。
【0007】
支持杭は、隣合う支持杭に亘って残存型枠を配置した後、コンクリート打設前に、同型枠が反法面方向すなわち道路側へ倒れないように、好ましくは反法面側にも法面側にも倒れないように、コンクリート打設後は同型枠が反法面方向へ倒れないように、残存型枠の両側部を嵌込む溝部を有するものであればよい。溝部を有する支持杭としては、H鋼が好適であるが、断面C字状、断面U字状、断面Z字状の押出し材や、L型アングル材であってもよい。
【0008】
残存型枠は、通常は正面に見て長方形(例えば約180cm×約90cm)であって厚み1〜10cmを有するものであり、隣合う支持杭に亘って杭の長さ方向に複数枚連なって配置される。残存型枠を厚み方向に複数枚重ねて使用することもできる。
【0009】
残存型枠の気泡は、厚み方向に長軸を有する紡錘状のものであるものが好ましい。好ましい残存型枠は、ポリオレフィン系樹脂発泡体シートからなる芯層に、これをサンドイッチする熱可塑性樹脂シートからなる両表層が積層されてなる複合シートで構成され、密度が0.05〜0.5g/ccであり、芯層に内在する気泡のアスペクト比Dz/Dxyの平均値が1.1〜5.0であるものである。両表層は、ポリオレフィン系樹脂延伸シートからなり、二方向(直交またはそれ以外の角度)等に積層したものが好ましい。さらに好ましい残存型枠は、複合シートの表面にアルミニウム蒸着フィルムなどからなる耐候性フィルムが積層されてなるものである。
【0010】
コンクリートは気泡含有軽量コンクリートであることが好ましい。このようなコンクリートは、セメントに砂や泥土や粘土、或いは焼却灰などを骨材として投入し、これに水を混合し、更に発泡剤を添加し空気を混入して発泡させ、得られた発泡混合物を打設後に硬化させるものである。発泡剤としては、例えば高分子界面活性剤を主成分としたものが挙げられ、ポリビニルアルコール、セルロース、アリギン酸、動物性蛋白質を改質したものなどが用いられる。発泡剤の混入量は、セメントに対して好ましくは0.5〜5重量%である。このような発泡剤によって発泡した空気を多く含む気泡混合軽量コンクリートまたは土を残存型枠の背面と地山の法面との間のスペースに打設する。上記コンクリートと残存型枠とは、例えばホットメルト系接着剤によって接着される。この場合、上記熱可塑性樹脂シート表面に凹凸を設けることにより、残存型枠との接着性を向上することができる。さらに、残存型枠の表面に紙などのコンクリートとの親和性の良いシートを積層してもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
残存型枠が複合シートからなる場合、その芯層となる発泡体シートの材料ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン性モノマーの単独重合体、または主成分オレフィン性モノマーと他のモノマーとの共重合体であり、特に限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ホモタイプポリプロピレン、ランダムタイプポリプロピレン、ブロックタイプポリプロピレン等のポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレンを主成分とする共重合体などが例示され、またこれらの2以上の組合わせであってもよい。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂の主体をなすポリオレフィンとしては、上述したポリエチレンやポリプロピレンの1種もしくは2種以上の組みあわせが好ましい。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂とは上記ポリオレフィンの割合が70〜100重量%である樹脂組成物を指す。ポリオレフィン系樹脂を構成するポリオレフィン以外の樹脂は限定されないが、例えば、ポリスチレン、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂中のポリオレフィンの割合が70重量%を下回ると、ポリオレフィンの特徴である軽量性、耐薬品性、柔軟性、弾性等が発揮できないばかりか、発泡に必要な溶融粘度を確保することが困難となる場合があるので好ましくない。
【0014】
残存型枠において、ポリオレフィン系樹脂発泡体シートの密度が0.5を越えると、型枠の重量が重くなりすぎる上に、コストが高くつき型枠が実用的で無くなり、また密度が0.05を下回ると、曲げ弾性が不足する。特に好ましい密度は0.06〜0.15g/ccである。
【0015】
本明細書において用いられる用語「芯層」とは、発泡体シートの厚み方向の中心部を含み、両表層を含まない層を意味する。例えば、図3に示すサンドイッチ構造の複合シートにおいて、芯層(5) は、表裏一対の表層(8) (8) によってサンドイッチされている層である。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂発泡体シートからなる芯層に内在する気泡のアスペクト比Dz/Dxyの平均値は1.1〜5.0、好ましくは1.2〜2.5である。
【0017】
本明細書において用いられる用語「アスペクト比」は、熱可塑性樹脂発泡シート中の気泡における定方向最大径の比の個数(算術)平均値であり、シート厚み方向の直径Dzと面内方向の直径Dxyとの比Dz/Dxyとして表される。
【0018】
すなわち、図4に示すように、発泡体シート(a) のシート厚み方向(z方向と呼ぶ)に平行な任意な断面(b) の10倍の拡大写真(c) をとり、この写真(c) 中で無作為に選ばれる少なくとも50個の気泡における下記の2つの定方向最大径(Dz,Dxy)を測り、個数平均値を算出する。
【0019】
Dz:発泡体シート中の気泡のz方向に平行な最大径
Dxy:発泡体シート中の気泡のシート幅または長さ方向、すなわちz方向に垂直な面方向(xy方向と呼ぶ)に平行な最大径
【0020】
上記芯層に内在する気泡のDxyの平均値は、500μm以上であるのが好ましい。これにより、発泡体シートはその厚み方向に圧縮力を受けると、厚み方向に長い紡錘形のセルにその長軸方向に力がかかることになるので、発泡体シートは厚み方向に高い圧縮強度を示す。
【0021】
アスペクト比の平均値が1.1を下回ると、気泡がほぼ球形となり、紡錘形に起因する圧縮弾性率、圧縮強度の向上が得られず、コンクリート打設時に受ける圧力に耐えられず変形する可能性があるほか、芯層と両表層との三層サンドイッチ構造体からなる型枠が曲げ剛性に不足する。アスペクト比の平均値が5.0を越えると、型枠が衝撃を受けたときに破壊が起こり易く、耐久性が不足する。
【0022】
芯層を構成する発泡体には、化学発泡によって得られるものと、物理発泡によって得られるものがあるが、発泡体シートに樹脂シートを熱融着されるには、前者の方法が好ましい。
【0023】
化学発泡による発泡体は、加熱により分解ガスを発生する熱分解型化学発泡剤を予めポリオレフィン系樹脂組成物に分散させておき、得られた発泡性組成物を一旦シート状の原反に賦形した後、加熱して発泡剤より発生するガスにより発泡させることで製造されうる。熱分解型化学発泡剤の代表例としては、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等が挙げられる。化学発泡剤の添加量は樹脂組成物100重量部に対して好ましくは2〜20重量部である。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂発泡体シートを構成するポリオレフィン系樹脂は、ゲル分率5〜35重量%を有するものが好ましい。その理由は、発泡体シートと樹脂シートを熱により融着する際に、発泡体が軟化あるいは溶融して大きく変形することを避けることができるからである。ゲル分率が35重量%を上回ると、再溶融時の流動性が低下し、リサイクル性に悪影響を及ぼす可能性が高い。
【0025】
ゲル分率は、ポリオレフィン系樹脂発泡シートのサンプルを120℃熱キシレン中で24時間で溶解させ、そのうち分離乾燥させた不溶分(ゲル)の重量分率で示される。
【0026】
つぎに、芯層を構成する発泡体シートの製造法について、説明をする。
【0027】
発泡体シートを得る製造方法は特に限定されないが、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂および変性用モノマーを溶融混和して変性ポリオレフィンを得、変性ポリオレフィンに熱分解型化学発泡剤を分散させ、得られた発泡性樹脂組成物を一旦シート状の原反に賦形した後、得られた発泡性シートを熱分解型化学発泡剤の分解温度以上に加熱して化学発泡させる方法である。
【0028】
上記変性用モノマーは、ラジカル反応し得る官能基を分子内に2個以上有する化合物である。上記官能基としてはオキシム基、マレイミド基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基等が例示される。変性用モノマーは、好ましくは、ジオキシム化合物、ビスマレイミド化合物、ジビニルベンゼン、アリル系多官能モノマー、(メタ)アクリル系多官能モノマーである。また、変性用モノマーはキノン化合物のような、分子内に2個以上のケトン基を有する環状化合物であってもよい。
【0029】
上記のような樹脂変性方法をとることで、成形された発泡性シート原反架橋度が低いにも拘らず、これを常圧で発泡させることが可能となる。
【0030】
シート状発泡性原反の賦形方法としては、押出成型の他、プレス成型、ブロー成型、カレンダリング成型、射出成型など、プラスチックの成型加工で一般的に行われる方法が適用可能であるが、スクリュ押出機より吐出する発泡性樹脂組成物を直後賦形する方法が生産性の観点から好ましい。この方法では、一定寸法幅の連続原反シートを得ることができる。
【0031】
シート状原反の化学発泡は、通常、熱分解型化学発泡剤の分解温度以上、熱可塑性樹脂の熱分解温度以下の温度範囲で行われる。特に連続式発泡装置としては、加熱炉の出口側で発泡体を引き取りながら発泡させる引き取り式発泡機の他、ベルト式発泡機、縦型または横型発泡炉、熱風恒温槽など、あるいは熱浴中で発泡を行うオイルバス、メタルバス、ソルトバスなどが使用される。
【0032】
上述の紡錘形気泡からなる発泡体、すなわち、気泡のアスペクト比Dz/Dxyの平均値が1.1〜5.0である発泡体を得るには、発泡中に原反の面内方向の発泡を抑制して厚み方向にのみ発泡させるとともに、その後冷却するまでに発泡シートをその厚み方向に僅かに圧縮する。その結果、発泡体の気泡はその長軸を厚み方向に配向した紡錘形となる。
【0033】
発泡中に原反の面内方向の発泡を抑制するには、発泡前に原反の両面に、例えば熱可塑性樹脂からなる不織布のような熱可塑性樹脂シートを表層として積層しておく。熱可塑性樹脂シートをポリオレフィン系樹脂発泡体と熱融着させることも可能である。
【0034】
残存型枠を構成する複合シートの代表的な例は、図3に示すように、ポリオレフィン系樹脂発泡体シートを芯層(5) とし、その両面に熱可塑性樹脂シートが表層(8) として積層され、両表層(8) の外面にそれぞれポリオレフィン系樹脂延伸シート(6) が熱融着により接合されてなる複合シートである。
【0035】
熱可塑性樹脂シートを構成する樹脂の種類は限定されないが、発泡体シートと同様のポリオレフィン系樹脂であることが、接合、リサイクルの観点より好ましい。樹脂シートの厚みを含めた寸法、表面形態、成形方法等はいずれも限定されない。発泡体シートからなる芯層と熱可塑性樹脂シートからなる両表層との接合は、やはりリサイクルの観点より熱融着により達成されることが好ましい。
【0036】
残存型枠において、特に好ましい表層は熱可塑性樹脂シートからなるシート、とりわけポリオレフィン系樹脂からなる延伸シートである。
【0037】
つぎに、ポリオレフィン系樹脂延伸シートについて説明をする。
【0038】
ポリオレフィン系樹脂延伸シートの線膨張係数は、5×10−5(1/℃)以下、好ましくは3×10−5(1/℃)以下、さらに好ましくは2×10−5(1/℃)以下で、かつ−2×10−5(1/℃)以上である。ここで線膨張係数とは、物質の寸法が温度によって膨張していく割合を示す尺度である。線膨張係数の測定方法としては、TMA(機械分析)により、昇温中の物質の寸法を精密に測定する方法があるが、本発明においては、後述の実施例で示すように、5℃および80℃における寸法の差から簡易的に計算したものを線膨張係数とする。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂延伸シートは特に限定されないが、一般にポリオレフィン系樹脂シートの線膨張係数は5×10−5(1/℃)よりも大きいので、これに延伸または圧延等の処理を施して線膨張係数を5×10−5(1/℃)以下にしたポリオレフィン系樹脂延伸シートが用いられる。このような処理を施したポリオレフィン系樹脂延伸シートでは、延伸倍率を大きくするほど線膨張係数が低下する。
【0040】
複合シートの発泡体シート自体は、おおよそ5×10−5〜15×10−5(1/℃)の線膨張係数を示すが、発泡体シートの両面に上記表層を積層することにより、熱伸縮が抑えられ、結果として線膨張係数が小さい残存型枠が得られる。
【0041】
線膨張係数が重要なのはつぎの理由による。一般にコンクリート型枠の内側にコンクリートを打設すると、セメントの水和反応に伴って水和熱が発生し、型枠は60℃以上にも達する。そのためプラスチック製型枠はその熱で軟化するだけでなく、熱膨張を起こしタワミを生じる。ポリオレフィン系樹脂延伸シートは、延伸方向の引張強度や引張弾性率が大きい。圧縮剛性の高い上記発泡体シートを芯材としてこれを上記延伸シートで挟んでなる三層積層体では、サンドイッチ構造が成立するため曲げ剛性や曲げ強度が飛躍的に向上する。
【0042】
ポリオレフィン系樹脂延伸シートを構成するポリオレフィン系樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等を用いることができる。延伸後の弾性率を考慮すると、理論弾性率の高いポリエチレンを用いることが好ましく、結晶性の高い高密度ポリエチレンが特に好ましい。
【0043】
上記延伸シート用のポリオレフィンの分子量も特に限定されないが、好ましくは、重量平均分子量が50万以下のポリオレフィンが用いられる。重量平均分子量が50万を超えると、ポリオレフィン系樹脂延伸シートを得るに際し、延伸原反シートの成形が困難となり、また、延伸性も悪くなり、高倍率延伸が不可能となることがある。なお、ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量の下限も特に限定されるものではないが、10万より小さくなると、樹脂自体が脆くなるため、延伸性が損なわれることがある。したがって、重量平均分子量が10万〜50万の範囲にあるポリオレフィン、特に高密度ポリエチレンが好ましい。
【0044】
上記重量平均分子量の測定方法としては、加温したo−ジクロルベンゼンなどの溶剤に試料を溶かした後、溶液をカラムに注入し、溶出時間を測定する。いわゆるゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(高温GPC法)により測定する方法が一般的であり、本明細書においても、この方法により測定された重量平均分子量を記載することとする。
【0045】
また、上記重量平均分子量の範囲を、メルトインデックス(以下、MIと略記する)から考慮すると、MIが約0.1〜20の範囲にあるものが好ましい。MIがこの範囲外では、高倍率延伸が困難となることがある。なお、MIとは、JISK 6760に限定されている熱可塑性樹脂の溶融粘度を表す指標をいう。
【0046】
つぎに、ポリオレフィン系樹脂延伸シートの製造方法について説明をする。
【0047】
線膨張係数5×10−5(1/℃)以下のポリオレフィン系樹脂延伸シートを製造する方法は特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂シートに延伸や圧延等の処理を施すのが好ましい。
【0048】
上記ポリオレフィン系樹脂延伸シートを得るに際し、ポリオレフィンに、必要に応じて架橋助剤や光ラジカル重合開始剤等を添加しておいてもよい。架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジアリルフタレートなどの多官能モノマーを例示することができ、光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン、チオキサントン、アセトフェノン等を例示することができる。これらの架橋助剤や光ラジカル重合開始剤の添加量は特に限定されるものではないが、架橋を速やかに進行させるには、通常、ポリオレフィン系樹脂延伸シートを構成しているポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、1.0〜2.0重量部の範囲とすることが好ましい。
【0049】
延伸前のポリオレフィン系樹脂シートを得る方法も特に限定されるものではなく、上述したポリオレフィン系樹脂を押出機等で可塑化させた後、シートダイを通してシート状に押し出し、冷却する方法を採用することができる。延伸前のポリオレフィン系樹脂シートの厚みは、0.5〜4mmの範囲とすることが好ましい。0.5mm未満では、延伸後のシート厚みが薄くなりすぎ、取扱いに際して強度が十分でないことがあり、4mmを超えると延伸が困難となることがある。
【0050】
また、上記のようにして得た延伸前のポリオレフィン系樹脂シートを延伸し、ポリオレフィン系樹脂延伸シートを得るに際して、延伸倍率は、上記の線膨張係数を満たすよう設定する。具体的にはこの延伸倍率は、5〜40倍、好ましくは20〜40倍の範囲とされる。5倍未満の延伸では、ポリオレフィン系樹脂の種類の如何に関わらず、線膨張係数が低下せず、また機械的強度(引張特性)を高める効果も小さいことがある。延伸倍率が40倍を超えると、延伸操作の制御が困難となることがある。
【0051】
ポリオレフィン系樹脂延伸シートを得るための延伸温度は、特に限定されるものではないが、85〜120℃の範囲とすることが好ましい。延伸温度が85℃未満では、延伸シートが白化し易くなり高倍率延伸が困難となることがあり、120℃を超えると、シートが切れ易くなり、やはり高倍率延伸が困難となることがある。
【0052】
延伸方法も特に限定されるものではないが、通常の一軸延伸方法、特にロール延伸法が用いられる。ロール延伸法とは、速度の異なる2対のロール間に延伸すべき原反を挟み、これを加熱しつつ引っ張る方法であり、一軸延伸方向のみに強く分子配向させることができる。この場合、2対のロールの速度比が延伸倍率となる。
【0053】
比較的厚いシートの場合には、ロール延伸法のみでは円滑な延伸が困難となることがあり、そのような場合には、ロール延伸に先立ちロール圧延処理を行ってもよい。ロール圧延処理は、一対の反対方向に回転する圧延ロール間に、該圧延ロール間の間隔よりも厚い延伸原反を挿入し、原反の厚みを減少させると同時に長さ方向に伸長させることにより行われる。ロール圧延処理が施されたシートは、予め配向処理されているので、次のロール延伸により、一軸方向に円滑に延伸される。
【0054】
上記延伸工程において所定の延伸温度を実現するには、シートの予熱温度、ロール温度および/または雰囲気温度を調節すればよい。
【0055】
上記ポリオレフィン系樹脂延伸シートは、耐熱性を高めるために、あるいは、最終的なポリオレフィン成形体の耐熱性や耐クリープ性を高めるために、架橋処理されてもよい。架橋は、電子線照射あるいは紫外線照射によって行い得る。
【0056】
電子線照射量は、使用するポリオレフィン延伸シートの組成および厚みによっても異なるが、通常、1〜20Mrad、好ましくは3〜10Mradとされる。また、電子線照射により架橋する場合、架橋助剤をポリオレフィン延伸シートに加えておけば、架橋が円滑に進行する。
【0057】
紫外線照射量は、通常、50〜800mW/cm2 、好ましくは100〜500mW/cm2 とされる。紫外線照射により架橋をする場合には、光重合開始剤や架橋助剤を加えておけば、架橋を容易に行うことができる。
【0058】
架橋の程度は、後述する測定法によるゲル分率が50〜90%程度であるのが好ましい。
【0059】
ポリオレフィン系樹脂延伸シートをポリオレフィン系樹脂発泡体シートに積層する方法は特に限定されず、接着剤による接着、加熱による熱融着等が挙げられるが、熱融着が好適に用いられる。
【0060】
ポリオレフィン系樹脂延伸シートをポリオレフィン系樹脂発泡体シートを熱融着させる際、表面処理を施したりプライマー等を用いても構わない。両者の間に、ポリオレフィン系樹脂延伸シートが熱変形する温度以下の融点を持つポリオレフィン系樹脂フィルム等を介在させる方法が好適に用いられる。
【0061】
また、ポリオレフィン系樹脂延伸シートの積層方向は特に限定されないが、延伸された方向の機械的物性が特に向上するので、使用する用途に応じ、同シートを一方向あるいは二方向(直交またはそれ以外の角度)等に積層するのが好ましい。さらに積層するシートの枚数、厚みも目的の機械的物性等に応じて適宜決定される。
【0062】
熱融着に際しての加熱および加圧条件は、使用するポリオレフィン系樹脂延伸シートによって異なるため、一義的には定め得ないが、通常、0.1〜5kg/cm2 の範囲の圧力、およびポリオレフィン系樹脂の融点以下の温度が好ましい。圧力が上記範囲外であると、成形中に積層体の形状が乱れる恐れがあり、また接着に際しての加熱温度がポリオレフィンの融点を超えると、成形中に収縮等により積層体の形状が乱れる可能性があり、かつ線膨張係数にも悪影響を与えることがある。
【0063】
残存型枠のさらに好ましい形態は、残存型枠の両表層が、無機繊維で強化されたポリオレフィン系樹脂シートであるものである。
【0064】
無機繊維強化ポリオレフィン系樹脂シートは、曲げ弾性率が3.5GPa以上、曲げ強度が120MPa以上の何れかを満足することが好ましい。
【0065】
上述の延伸シートの場合と同様に、圧縮剛性の高い上記発泡体シートを芯材としてこれをサンドイッチしてなる山層積層体では、曲げ剛性や曲げ強度が飛躍的に向上する。
【0066】
残存型枠は、コンクリート打設時にコンクリート側圧によって変形する。一般に型枠パネルの変形は、仮設補強部材の局部圧縮変形の他に、パネルの長さ中間部の曲げ応力によるタワミが原因である。
【0067】
残存型枠は、計算上は連続梁として考えることができ、そのタワミは単純梁の場合の約1/2に、またその応力は単純梁の場合の約1/3に見積もることができる。即ち、仮設補強部材の間隔によって発生するタワミが異なるため、パネルの機械的物性は一義的には定まらない。しかし上記の性能を一つでも満足すれば実用上問題はない。
【0068】
強化用の無機繊維は、主にガラス繊維あるいは炭素繊維であるが、これと同等の性能を確保できるものであればよい。コスト面から有利なものはガラス繊維であり、特に長繊維のものが機械的物性を確保できるので好ましい。繊維の太さ、長さ、充填量、さらには繊維の配置、表面処理等は、無機繊維を含むべき樹脂シートの機械的物性と成形性によって適宜決定してよい。
【0069】
無機繊維の好ましい充填量は30〜70重量%である。この充填量が少な過ぎると弾性率と釘の保持力が不足しがちであり、多すぎると型枠としての加工性と表面性が悪くなることがある。
【0070】
無機繊維強化ポリオレフィン系樹脂に用いられるポリオレフィン系樹脂は、前述のポリオレフィン系樹脂発泡体シートに用いられるポリオレフィン系樹脂と同じであってよく、特に強度、弾性率、耐熱性の観点から有利なのはポリプロピレンである。
【0071】
ポリオレフィン系樹脂には、機械的物性のさらなる向上を目的として、炭酸カルシウムやタルクなどの無機フィラーを含ませてもよい。
【0072】
特に好ましい樹脂シートの製造方法では、ガラス不織布をポリプロピレンシートでサンドイッチしてなる三層積層体を、加熱の後、圧縮成形する。この多層樹脂シートは、両表層がポリプロピレンで構成されているため表面性に優れる。また五層、七層の積層体も有効である。
【0073】
さらにガラス不織布にポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂から成る繊維が混合されているものは特に強度の向上に寄与することが認められる。
【0074】
無機繊維強化ポリオレフィン系樹脂シートをポリオレフィン系樹脂発泡体シートに積層し接合する方法としては、接着剤による接着、加熱による熱融着等が挙げられるが、やはり熱融着が好ましい。両者を熱融着させる際、表面処理を施したりプライマー等を用いても構わない。
【0075】
上記ガラス不織布を含む多層樹脂シートを用いる場合、予備加熱の後、圧縮成形機の型内部で、多層樹脂シートの成形と、同シートと発泡体シートの熱融着とを同時に行うことができる。
【0076】
残存型枠のもう一つの好ましい形態は、芯材と両表層との間にそれぞれ薄い繊維成形シートが介在されているものである。
【0077】
ここで用語「薄い」とは相対的な意味であり、ポリオレフィン系樹脂発泡体シートの厚みに対して10%程度の厚みを意味する。
【0078】
このような繊維成形シートとしては、例えばポリエステル、ナイロン、ビニロン、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン等の合成樹脂からなる繊維や天然繊維を用いた織布や不織布や寒冷紗、またガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維からなるシート等を選ぶことができる。
【0079】
繊維成形シートと発泡体シートとの熱融着の方法は特に限定されないが、発泡体シートの製造に際して、発泡前あるいは発泡と同時、または冷却固化時に、発泡体シートとこれの両面に配した繊維成形シートとのサンドイッチ体に適切な圧力を加えてこれらを圧着積層する方法がエネルギー的に有利である。
【0080】
発泡体シートに繊維成形シートを積層することで、発泡体シートの曲げ剛性が自由にコントロールできるほか、樹脂シートを接合するに際して、熱融着の場合にはアンカー効果が働き、また接着剤を用いる場合には化学的極性が付与され、いずれも強固な接着を達成することが可能となる。
【0081】
【実施例】
つぎに、この発明を実施例に基づいて具体的に説明する。また、残存型枠を構成する複合シートの製造例を参考例として示す。
【0082】
図1から図3において、溝部を有する支持杭として複数本のH鋼(1) を法面(2) に沿って約180cm間隔で法面(2) と道路の間にて地面(3) に打ち込む。H鋼(1) の地上部分の高さは、ほぼ法面(2) の高さに等しい。H鋼(1) は横幅、縦幅とも約10cmのものである。隣合うH鋼(1) に亘って合成樹脂発泡体製の残存型枠(4) を配置してその両側部をH鋼(1) の溝部(1a)に嵌込む。残存型枠(4) は正面に見て長方形(180cm×90cm)であって厚み5cmを有するものであり、隣合う支持杭に亘って杭の長さ方向に複数枚連なって配置される。H鋼(1) の溝部(1a)に残存型枠(4) の両側部を嵌込むことにより、残存型枠(4) は反法面側すなわち道路側にも法面側にも倒れないようになされている。
【0083】
残存型枠(4) は、ポリオレフィン系樹脂発泡体シートからなる芯層(5) の両面に熱可塑性樹脂シートが表層(8) として積層され、両表層(3) の外面にそれぞれポリオレフィン系樹脂延伸シート(6) が熱融着により接合されてなる複合シート(1) である。この複合シートは、密度0.15g/ccであり、芯層に内在する気泡のアスペクト比Dz/Dxyの平均値2.2のものである。延伸シート(6) は超延伸シートが直交状に積層されたものである。複合シートの表面(反法面側の面)にはさらにアルミニウム蒸着フィルムからなる耐候性フィルム(7) が積層されている。
【0084】
H鋼(1) に支えられた残存型枠(4) の背面と地山の法面(2) との間のスペースに気泡含有軽量コンクリート(8) を打設する。気泡含有軽量コンクリート(8) はセメントに砂、泥土、粘土、焼却灰などを骨材として投入し、これに水を混合し、更に発泡剤として高分子界面活性剤を添加し空気を混入して発泡させることにより得られた発泡混合物である。
【0085】
参考例1
(1) 変性ポリオレフィン系樹脂の調製
変性用スクリュー押出機として、BT40(プラスチック工学研究所社製)同方向回転2軸スクリュー押出機を用いた。これはセルフワイピング2条スクリューを備え、そのL/Dは35、Dは39mmである。シリンダーバレルは押出機の上流から下流側へ第1〜6バレルからなり、ダイは3穴ストランドダイであり、揮発分を回収するため第4バレルに真空ベントが設置されている。
【0086】
操作条件は下記の通りである。
【0087】
・シリンダーバレル設定温度:220℃
・スクリュー回転数:150rpm
【0088】
上記構成の変性用スクリュー押出機に、まず、ポリオレフィン系樹脂を後端ホッパーから押出機内に投入し、第3バレルから変性用モノマーと有機過酸化物の混合物を押出機内に注入し、これらを溶融混和して変性樹脂を得た。このとき、押出機内で発生した揮発分は真空ベントにより真空引きした。
【0089】
ポリオレフィン系樹脂はポリプロピレンランダム共重合体(三菱化学製「ノバテックPP EG7」、MI;1.7g/10分、密度;0.9g/cm3 )であり、その供給量は100kg/hとした。変性用モノマーはトリメチルプロパントリメチルアクリレートであり、その供給量は1200g/hとした。
【0090】
ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーの溶融混和によって得られた変性樹脂を、ストランドダイから吐出し、水冷し、ペレタイザーで切断して、変性樹脂のペレットを得た。
【0091】
(2) 発泡性樹脂組成物の調製
発泡剤混練用スクリュー押出機はTEX−44型(日本製鋼所社製)同方向回転2軸スクリュー押出機であり、これはセルフワイピング2条スクリューを備え、そのL/Dは45.5、Dは47mmである。シリンダーバレルは押出機の上流から下流側へ第1〜12バレルからなり、成形ダイは出口幅700mmのTダイである。
【0092】
シートの冷却賦形装置として、直径220mm、幅1000mmの3本の冷却ロールからなる冷却装置(積水工機社製)を発泡剤混練用スクリュー押出機の下流に設けた。
【0093】
温度設定区分は下記の通りである。
【0094】
第1バレルは常時冷却
第1ゾーン;第2〜4バレル
第2ゾーン;第5〜8バレル
第3ゾーン;第9〜12バレル
第4ゾーン;ダイおよびアダプター部
【0095】
発泡剤を供給するために第6バレルにサイドフィーダーが設置され、揮発分を回収するため第11バレルに真空ベントが設置されている。
【0096】
操作条件は下記の通りである。
【0097】
・スクリュー回転数:50rpm
【0098】
上述のようにして得られた変性樹脂を100kg/hの供給量で、発泡剤混練用スクリュー押出機に供給した。また、同押出機にそのサイドフィーダーから発泡剤を供給した。発泡剤はアゾジカルボンミド(ADCA)であり、その供給量は6.0kg/hとした。こうして変性樹脂と発泡剤の混練によって発泡性樹脂組成物を得た。
【0099】
(3) ポリオレフィン系樹脂発泡性シートの調製
この発泡性樹脂組成物をTダイから押し出し、幅350mm×厚み0.5mmのポリオレフィン系樹脂発泡性シートを得た。
【0100】
(4) 複合シートの調製
このポリオレフィン系樹脂発泡性シートを上記冷却装置の3本の冷却ロールに通した。その際に、発泡性樹脂組成物シートの表裏両面に、ポリエチレンテレフタレート製の不織布(東洋紡績社製、「スパンポンド エクーレ 6301A」、秤量30g/m2 )を積層し、プレス成形機を用いて温度180℃、圧力19.6MPa(200kgf/cm2 )でプレス成形を行い、厚さ0.6mmの連続の発泡性複合シートを得た。
【0101】
(5) 発泡
予熱、発泡、冷却の3ゾーンと、上下2本のベルトからなる、全長6mのダブルベルト式発泡機(共和エンジニアリング社製)を用意した。同発泡機の予熱ゾーンおよび発泡ゾーンにはそれぞれ2インチの搬送ロール、そして冷却ゾーンには4インチの冷却水循環式ロールが設けられている。
【0102】
予熱ゾーンを170℃、発泡ゾーンを210℃、冷却ロールの表面温度を25℃にそれぞれ設定し、原反シートである上記発泡性複合シートを上記発泡機に供給した。
【0103】
シート供給の線速度は0.5m/min、よって予熱ゾーンおよび発泡ゾーンでの滞留時間は合計8分、冷却ゾーンのそれは4分に設定した。冷却ゾーンの上下冷却ロールの間隙を8mmに設定した。
【0104】
発泡機出口で幅700mm、厚み8mmの連続の複合シートを得た。
【0105】
参考例2
参考例1と同様に、(1) 変性ポリオレフィン系樹脂の調製、(2) 発泡性樹脂組成物の調製、(3) ポリオレフィン系樹脂発泡性シートの調製、(4) 発泡性複合シートの調製、(5) 発泡の各工程を経てポリオレフィン系樹脂発泡体シートを得た。
【0106】
(6) ポリオレフィン系樹脂延伸シートの調製
1)押出シートの調製
高密度ポリエチレン(商品名:HY540、三菱化学社製、MI=1.0、融点133℃、重量平均分子量30万)100重量部に対して、ベンゾフェノン(光重合開始剤)1重量部を配合し、この配合物を30mm二軸押出機にて樹脂温度200℃で溶融混練し、Tダイにてシート状に押出し、冷却ロールにて冷却し、厚み1.0mm、幅400mmの未延伸シートを得た。
【0107】
2)圧延・架橋
この未延伸シートを、表面温度100℃に設定された6インチロール(小平製作所製)を用いて圧延倍率10倍にロール圧延し、その後、得られた圧延シートを繰り出し速度2m/分のロールで繰り出し、雰囲気温度85℃に設定された加熱炉を通して、引き取り速度4m/分のロールで引き取り、4倍にロール延伸し、巻き取った。ついで、得られたシートに両面より高圧水銀灯を5秒間照射して架橋処理を施した。最後に、得られたシートに無張力下にて130℃で1分間の緩和処理を施した。
【0108】
上記操作を経て得られた延伸シートは、幅200mm、厚み0.40mmのサイズを有していた。このシートの総延伸倍率は約20倍であり、20℃と80℃の2水準で約150mmの標線間距離を測定することで求めた線膨張係数は、−1.5×10−5であった。この延伸シートの融点[DSC(示差走査熱量計)
におけるピーク温度]は149℃であり、引張弾性率は12GMPaであった。なお、サンプルの引張弾性率および線膨張係数は、いずれもJIS K 7113の引張試験方法に準じて測定した。
【0109】
3)積層・熱融着
先に得られたポリオレフィン系樹脂発泡体シートより幅200mm×長さ200mmのサンプルを切り出した。
【0110】
サンプルと同じ寸法の低密度ポリエチレンフィルム(厚み30μm、三菱化学社製、UF230)と、同じ寸法の上記延伸シートを、各4枚ずつ交互に重ねて、フィルム−シート積層体を得た。両面に繊維成形シートを積層した発泡体シートからなる芯層の両側に上記積層体をそれぞれ配し、3種9層の積層品を得た。ハンドプレス成形機において、温度125℃、圧力98kPa(1kgf/cm2 )にて2分間プレス成形を行い、その後水冷プレス(圧力98kPa)で水冷を行い、厚み5mmの複合シート(10)を得た。
【0111】
複合シートの評価試験
参考例で得られた複合シートを下記の項目について評価した。
【0112】
・見かけ密度:
JIS K 6767に基づき、見かけ密度を測定したところ、0.15g/ccであった。
【0113】
・気泡形状(平均アスペクト比):
複合シートを厚み方向(z方向)にカットし、断面の中央部を光学顕微鏡で観察しつつ15倍の拡大写真を撮った。写真に写った全ての気泡のDzとDxyをノギスで測り、気泡毎にアスペクト比を算出し、気泡100個分のアスペクト比の個数平均を算出し、平均アスペクト比とした。ただし測定中、Dz(実際の径)が0.05mm以下の気泡、および10mm以上の気泡は除外した。
【0114】
参考例1で得られた複合シートのアスペクト比は、2.2であつた。
【0115】
・曲げ弾性率
JIS K 7203に基づき、試験速度10mm/minで測定し、曲げ弾性率を算出したところ、8.1GPaであった。
【0116】
5%圧縮強度
JIS K 7220に基づき、試験速度10mm/minで測定したときの、歪み5%における圧縮応力を読みとったところ、0.95MPaであった。
【0117】
線膨張係数
20℃と80℃の2水準で約150mmの標線間距離を測定することで求めたところ、−1.2×10−5/℃であった。
【0118】
切断加工
得られた複合シートを竪型万能帯ノコ盤(ラクソー社製 L型)によって任意に切断したところ、微粉、粉塵等は発生しなかった。
【0119】
【発明の効果】
この発明による法面の盛り土工法では、残存型枠として合成樹脂発泡体製のものを用いるので、型枠の軽量化を果たし、その搬送が容易で施工作業性のよい法面の盛り土工法を提供することができる。
【0120】
厚み方向に長軸を有する紡錘状の気泡を内包する残存型枠を用いると、型枠は、軽量でありながら圧縮と曲げ方向の剛性に優れ、リブ等のよる補強が必要でない。
【0121】
気泡含有軽量コンクリートは土や通常のコンクリートより軽量であるので、盛り土施工の作業性がよく、特に山間部ではその搬送が楽である。加えて、残存型枠に課せられる負荷が小さいため、型枠の耐久性の点でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は地山の法面に盛り土を施す状態を示す垂直断面図である。
【図2】図2は隣合う支持杭に亘って残存型枠を配置する状態を示す斜視図である。
【図3】図3は残存型枠の断面図である。
【図4】図4(a) は発泡体シートの斜視図、図4(b) は図4(a) 中のz方向に平行な断面の一部拡大図である。
【符号の説明】
(1) :H鋼(支持杭)
(1a):H鋼の溝部
(2) :法面
(3) :地面
(4) :残存型枠
(5) :芯層
(6) :延伸シート
(7) :耐候性フィルム
(8) :表層
Claims (3)
- 溝部を有する複数の支持杭を法面に沿って所定間隔で地面に立設し、隣合う支持杭に亘って合成樹脂発泡体製の複数の残存型枠を配置してその両端部を溝部に嵌めて同型枠を支持杭で保持しておき、法面と残存型枠の間のスペースに土またはコンクリートを打設することを特徴とする法面の盛り土工法。
- 残存型枠の気泡が、厚み方向に長軸を有する紡錘状のものである請求項1記載の法面の盛り土工法。
- コンクリートが気泡含有軽量コンクリートである請求項1または2記載の法面の盛り土工法。
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