JP2004269421A - リン酸ジエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般式(I):
【化1】
(式中、R1 a、R1 bおよびR1 cは、同一または異なって、C4−10の直鎖または分岐状のアルキル基を示す)で表されるリン酸トリエステルを、一般式(I)の定義に含まれかつ目的とするリン酸ジエステルと同一または異なるリン酸ジエステルの存在下で、無機塩基水溶液で加水分解して、対応するリン酸ジエステルを得ることを特徴とするリン酸ジエステルの製造方法により、上記の課題を解決する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リン酸ジエステルの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、リン酸トリエステルやリン酸モノエステルといった不純物の含量が少ない高純度のリン酸ジエステルを高収率で、かつ経済的に得ることができるリン酸ジエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リン酸ジエステルは、例えば、洗浄剤、乳化剤、帯電防止剤、繊維油剤、希土類金属などの金属抽出剤などとして広く用いられている。
リン酸ジエステルは、例えば、所定のアルコールと、オキシ塩化リンなどのオキシハロゲン化リン、五酸化リン、ポリリン酸などとを反応させて製造するのが一般的である。しかし、この方法では主としてリン酸モノエステルとリン酸ジエステルとの混合物が得られてしまい、高純度のリン酸ジエステルを得ることは困難である。
【0003】
そこで、高純度のリン酸ジエステルを得るために様々な技術が開発されてきた。
特開昭56−103188号公報(特許文献1)および特開昭59−48493号公報(特許文献2)には、有機ヒドロキシ化合物と三塩化リンとを反応させ、次いで反応生成物に塩素を反応させてリン酸ジエステルのホスホロクロリデートを得、さらにホスホロクロリデートを加水分解して、リン酸ジエステルを得る方法が開示されている。
しかしながら、このような方法は、反応操作が繁雑であることに加え、規制の厳しい有毒な塩素を使用する必要があり、さらに塩素を大気中に放出させない設備を必要とするので、工業的に好ましくない。
【0004】
また、特開平1−143881号公報(特許文献3)には、ハロゲン化水素捕捉剤として3級アミンを使用するリン酸ジエステルの製造方法が開示されている。
しかしながら、3級アミンの使用量が触媒量ではなく化学量論量であるため、反応の進行に伴って3級アミンのハロゲン化水素塩が多量に生成する。その結果、ハロゲン化水素塩の分散性を向上させるために多量の溶媒を必要とするので、生産効率(バッチ処理の場合の釜効率)が低下するという生産面での問題があり、さらに得られるリン酸ジエステルの純度が低いという品質面における問題もある。
【0005】
上記の問題を解決する方法として、特開平4−41498号公報(特許文献4)には、反応工程においてアルコールを分割添加することにより、トリエチルアミンのような3級アミンを使用することなく高純度のリン酸ジエステルを得る技術が開示されている。
しかしながら、3級アミンのようなハロゲン化水素捕捉剤を用いない場合には、副生成物のハロゲン化水素が主生成物のリン酸エステル中のエステル結合を分解させるので、目的物であるリン酸ジエステルの収率が低下し、かつ得られたリン酸ジエステルが着色し易いという品質面における問題がある。
【0006】
また、特開平8−92262号公報(特許文献5)には、ハロゲン化水素捕捉剤として高価な3級アミンの代わりに安価な金属塩を用いる方法が開示され、そして有機酸の金属塩として酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウム、無機酸の金属塩としてリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムが例示されている。
しかしながら、これらの金属塩は一般に常温で固体であるので、上記の反応を円滑に進めるためには溶剤を使用する必要があり、溶剤による問題が生じる。例えば、有機酸の金属塩を使用した場合には、反応終了後に硫酸による処理を行った後に、溶剤と酢酸が混入する。これらの分別回収は非常に困難であり、回収品のリサイクル可能な使用用途が制限され、生産効率の点でも問題がある。一方、無機酸の金属塩を使用した場合には、金属塩の多量使用により、目的物であるリン酸ジエステル中に金属塩が残存するという品質面における問題がある。水による洗浄回数を増すことで金属塩を除去することができるが、生産効率が低下してしまう。
【0007】
さらに、特開平11−310587号公報(特許文献6)には、オキシ塩化リンにメタノールを反応させて得られるジクロロリン酸メチルを2−エチルヘキサノールなどのアルコールと反応させ、副生成物である塩酸ガスを利用してメチルエステル部分を分解させることによりリン酸ジエステルを得る方法が開示されている。
しかしながら、この方法において生成する塩化メチルは、原料として再利用できず、原料として用いたメタノールが無駄になるという経済面での問題がある。
【0008】
【特許文献1】
特開昭56−103188号公報
【特許文献2】
特開昭59−48493号公報
【特許文献3】
特開平1−143881号公報
【特許文献4】
特開平4−41498号公報
【特許文献5】
特開平8−92262号公報
【特許文献6】
特開平11−310587号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、リン酸トリエステルやリン酸モノエステルといった不純物の含量が少ない高純度のリン酸ジエステルを高収率で、かつ経済的に得ることができるリン酸ジエステルの製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究の結果、リン酸トリエステルを、目的とするリン酸ジエステルと同一または異なるリン酸ジエステルの存在下で、無機塩基水溶液で加水分解することにより、高純度のリン酸ジエステルを、簡便に高収率で、かつ経済的に得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
かくして、本発明によれば、一般式(I):
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R1 a、R1 bおよびR1 cは、同一または異なって、C4−10の直鎖または分岐状のアルキル基を示す)
で表されるリン酸トリエステルを、一般式(I)の定義に含まれかつ目的とするリン酸ジエステルと同一または異なるリン酸ジエステルの存在下で、無機塩基水溶液で加水分解して、対応するリン酸ジエステルを得ることを特徴とするリン酸ジエステルの製造方法が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のリン酸ジエステルの製造方法は、一般式(I)で表されるリン酸トリエステルを、一般式(I)の定義に含まれかつ目的とするリン酸ジエステルと同一または異なるリン酸ジエステルの存在下で、無機塩基水溶液で加水分解して、対応するリン酸ジエステルを得ることを特徴とする。
【0015】
次に、本発明の製造方法の各工程について詳しく説明する。
本発明の原料として用いられるリン酸トリエステルは、一般式(I)で表される。式中の置換基R1 a、R1 bおよびR1 cは、同一または異なって、C4−10の直鎖または分岐状のアルキル基であり、具体的には、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、neo−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどが挙げられる。
C1−3のアルキル基を有するリン酸ジエステルは、水に対する溶解度が大きく、水溶液からの回収が困難となることから、本発明の方法は、C4−10、好ましくはC4−8のアルキル基を有するリン酸ジエステルの製造に適している。
【0016】
一般式(I)のリン酸トリエステルとしては、
▲1▼3個のアルキル基が全て同じであるトリエステル(R1 a=R1 b=R1 c)
リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリヘキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)など;
▲2▼2個のアルキル基が同じであり、残りの1個が異なるトリエステル(R1 a=R1 b≠R1 c)
リン酸ジブチルモノペンチル、リン酸ジブチルモノヘキシル、リン酸ジブチルモノヘプチル、リン酸ジブチルモノオクチル、リン酸ジブチルモノ(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)モノブチル、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)モノペンチル、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)モノヘキシル、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)モノヘプチルなど;および
▲3▼3個のアルキル基が全て異なるトリエステル(R1 a≠R1 b≠R1 cかつR1 a≠R1 c)
リン酸(ブチル)(ペンチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(ブチル)(ヘキシル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(ブチル)(ヘプチル)(2−エチルヘキシル)など
が挙げられる。最終的に得られるリン酸ジエステルの物性および原料価格などの経済性の点から、一般式(I)の置換基R1 a、R1 bおよびR1 cが、すべて同一である▲1▼が最も好ましい。
【0017】
加水分解の際に存在させるリン酸ジエステルは、一般式(I)の定義に含まれかつ目的とするリン酸ジエステルと同一または異なるリン酸ジエステルであり、これが加水分解反応を促進するものと考えられる。
このリン酸ジエステルとしては、原料として使用されるリン酸トリエステル中のアルキル基と同じアルキル基を有するものが好ましい。これにより最終的により高純度のリン酸ジエステルを得ることができる。
具体的には、リン酸トリエステルとリン酸ジエステルの組み合わせとして、例えば、リン酸トリ−n−ブチルとリン酸ジ−n−ブチルの組み合わせ、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)とリン酸ビス(2−エチルヘキシル)の組み合わせが挙げられる。前者ではリン酸ジ−n−ブチルが、後者ではリン酸ビス(2−エチルヘキシル)がそれぞれ高純度で得られる。
【0018】
存在させるリン酸ジエステルが、原料のリン酸トリエステル100重量部当たり2〜10重量部、好ましくは3〜5重量部使用されるのが好ましい。
リン酸ジエステルが2重量部を下回ると、触媒的な活性が十分発揮されないおそれがあり、加水分解反応が急激に起こり、発熱を制御することが不可能となり、副生成物であるアルコールが突沸して大事故に繋がる危険があるので好ましくない。また、リン酸ジエステルが10重量部を上回ると、反応の制御は容易となって安全ではあるが、原料であるリン酸トリエステルの使用量を減少させる必要があり、生産効率が低下するので好ましくない。
【0019】
加水分解に用いられる無機塩基水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムなどの水溶液が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。また、無機塩基水溶液としては、加水分解力が大きく、かつ水に対する溶解度の大きい無機塩基の水溶液が好ましく、水酸化ナトリウム水溶液および水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
【0020】
無機塩基水溶液は、原料のリン酸トリエステル1当量当たり1〜2当量、好ましくは1.01〜1.5当量の無機塩基を含む水溶液であるのが好ましい。
無機塩基が1当量を下回ると、リン酸トリエステルの加水分解が不十分となり、その結果、リン酸トリエステルが残存してリン酸ジエステルの純度が低下するので好ましくない。また、無機塩基が2当量を上回ると、必要以上に加水分解反応が促進され、その結果、リン酸モノエステルの生成比率が高まり、リン酸ジエステルの純度が低下するだけでなく、リン酸モノエステルが水相側に移行し易く、その結果、収率も低下するので好ましくない。
【0021】
無機塩基水溶液の濃度は、使用する無機塩基の水への溶解度によって異なるが、10〜40重量%が好ましく、25〜35重量%がより好ましい。
無機塩基水溶液の濃度が10重量%を下回ると、反応速度が遅くなり、かつ反応溶媒である水の量の増加により、生産効率が低下するので好ましくない。また、無機塩基水溶液の濃度が40重量%を上回ると、必要以上に加水分解反応が促進され、リン酸モノエステルの生成比率が高くなり、結果としてリン酸ジエステルの収率が低下するので好ましくない。
【0022】
加水分解の反応温度は、60〜130℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。反応温度が60℃を下回ると、加水分解反応が完結しないか、あるいは完結するのに長時間を要するので好ましくない。また、反応温度が130℃を超えると、加水分解反応が促進されすぎ、リン酸モノエステルの生成比率が高まり、目的とするリン酸ジエステルの純度および収率が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0023】
加水分解の反応時間は、反応温度などの条件にもよるが、通常、3〜10時間程度で十分である。例えば、原料としてリン酸トリ−n−ブチルを使用した場合には3時間程度、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)を使用した場合には6時間程度で加水分解反応が完結する。
【0024】
加水分解は、実質的に無溶媒下で行われる。すなわち、本発明において原料として使用されるリン酸トリエステルおよびその加水分解の際に存在させるリン酸ジエステルは、一般に常温で液状の化合物が多く、また無機塩基水溶液を用いるので、通常、水以外の溶媒を必要としない。
水以外の溶媒を使用した場合であっても、減圧蒸留などの公知の方法で除去することにより、目的とするリン酸ジエステルを得ることができる。
【0025】
加水分解で得られた反応液から、公知の方法により対応するリン酸ジエステルを得る。例えば、加水分解で得られた反応液中に存在するリン酸ジエステルの塩を無機酸水溶液で酸処理し、リン酸ジエステルを単離するのが好ましい。
加水分解反応完結後、過剰の無機塩基を水洗などの簡便な方法により除去してもよいが、そのまま連続して酸処理を行ってもよい。
【0026】
酸処理に用いられる無機酸水溶液としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの水溶液が挙げられるが、腐食性のガスが発生せず、取り扱い易いという点で硫酸水溶液が特に好ましい。
【0027】
無機酸水溶液は、加水分解反応完結後に過剰の無機塩基を水洗などの簡便な方法により除去できる場合には、原料であるリン酸トリエステル1当量に対して1〜1.3当量が好ましく、1.01〜1.2当量がより好ましい。また、過剰の無機塩基を除去し難い場合には、使用した無機塩基1当量に対して1〜1.3当量が好ましく、1.01〜1.2当量がより好ましい。
【0028】
無機酸がリン酸トリエステルまたは無機塩基1当量に対して1当量を下回ると、加水分解工程で得られたリン酸ジエステルの塩の酸処理が不完全になり、最終製品中に塩が残存してリン酸ジエステルの純度が低下するか、あるいは水洗により塩を除去することが可能であるとしても最終製品の収率が低下するという、いずれかの問題があるので好ましくない。また、無機酸がリン酸トリエステルまたは無機塩基1当量に対して1.3当量を上回ると、酸処理は完結し易くなるが、無機酸は一般的に腐食性が強く、例えば、材質がステンレス鋼の反応缶を使用した場合には、反応缶の腐食によりリン酸ジエステルの金属錯体などの不純物が混入するおそれがあり、また反応缶の老朽化が促進されるという設備面の問題も発生するおそれがあるので好ましくない。ガラス製の反応缶を使用することで上記の問題は解消されるが、いずれにせよ未反応の無機酸の量が多くなるので好ましくない。
【0029】
無機酸水溶液の濃度は、使用する無機酸の水への溶解度によって異なるが、20〜50重量%が好ましく、30〜40重量%がより好ましい。
無機酸水溶液の濃度が20重量%を下回ると、反応速度が遅くなり、かつ反応溶媒である水の量の増加により生産効率が低下するので好ましくない。また、無機酸水溶液の濃度が50重量%を上回ると、リン酸ジエステルの塩と無機酸との反応によって生成する塩濃度が高くなり、無機酸による処理が不十分となってリン酸ジエステルの塩が残存するおそれがあるため、好ましくない。
【0030】
酸処理の温度は、特に制限されないが、材質がステンレス鋼の反応缶を使用する場合には、反応缶の腐食の問題を回避するため、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましく、50℃以下が特に好ましい。
酸処理の時間は、処理温度などの条件にもよるが、通常、0.5〜2時間程度で十分である。
【0031】
無機酸水溶液による酸処理後、例えば、無機塩基水溶液として水酸化ナトリウム水溶液を用いてリン酸トリエステルを加水分解し、無機酸水溶液として硫酸水溶液を用いて酸処理した場合には、硫酸ナトリウムが反応溶液中に存在することになる。原料として用いられるリン酸トリエステルの種類によっては、この硫酸ナトリウムが酸処理阻害の原因になることがある。そのような場合には、加水分解および酸処理により生成されたリン酸ジエステルとアルコールが混合している有機相と硫酸ナトリウムが溶解している水相とを分離した後、有機相を再び硫酸水溶液で酸処理するのが好ましい。すなわち、酸処理で得られた処理液をさらに無機酸水溶液で酸処理するのが好ましい。これにより、リン酸ジエステルの純度が向上し、最終製品であるリン酸ジエステル中のナトリウム含量を低減できる。
【0032】
リン酸ジエステルを単離する方法としては、減圧蒸留、例えば、水蒸気蒸留が挙げられる。除去する化合物(例えば、アルコールなど)の種類によって異なるが、蒸留時の圧力は8kPa以下程度、温度は60〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。水蒸気蒸留の温度が60℃を下回ると、アルコールなどの低沸点成分の除去が不十分になるので好ましくない。また、水蒸気蒸留の温度が150℃を上回ると、リン酸ジエステルの分解によりリン酸モノエステルが生成し、目的化合物の純度および収率が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0033】
本発明の製造方法により得られるリン酸ジエステルは、例えば、洗浄剤、乳化剤、帯電防止剤、繊維油剤、希土類金属などの金属抽出剤などとして広範な用途に用いることができる。
【0034】
【実施例】
本発明を以下の実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
【0035】
実施例1(リン酸ジ−n−ブチルの合成)
攪拌機、還流管および温度計を備えた1リットルの四つ口フラスコに、リン酸トリ−n−ブチル266.3g(1当量)、30.0重量%水酸化ナトリウム水溶液142.9g(水酸化ナトリウムとして1.07当量、リン酸トリ−n−ブチル1当量に対して7%過剰)およびリン酸ジ−n−ブチル8.0g(リン酸トリ−n−ブチルに対して3重量%)を充填し、この混合溶液を攪拌しながら80℃まで1時間かけて加熱昇温した。混合溶液は加水分解反応により発熱し、最高105℃まで上昇した。発熱による温度上昇が認められなくなった時点よりさらに同温度(105℃)で3時間攪拌し、反応を完結させた。
【0036】
分析機器としてガスクロマトグラフィー(GC)を用いて、反応の完結を確認した。すなわち、100mlの三角フラスコにサンプル(反応溶液)を約1gおよびトルエンを約3g加え、これを6規定の塩酸水溶液で中和させた。さらに、これに適量の水を加えて分液漏斗に注ぎ込み、水相を除去した。次いで、有機相にジアゾメタンを徐々に加えてメチル化反応させ、窒素ガスの発生が認められなくなった時点を反応の終点とした。反応後の有機相の約0.2μlをGCの注入口に注入し、下記の条件でGC分析を行った。
GC分析条件
GC分析装置:株式会社島津製作所製 GC−14B
検出器:FID
カラム:Silicone SE−52 chromosorb 2M
カラム温度:80→250℃(昇温速度10℃/分)+3分間保持
注入口温度:270℃
検出器温度:270℃
キャリアガス:N2
分析結果から、原料として使用したリン酸トリ−n−ブチルの残存量が0.5面積%となった時点を反応の完結とした。
【0037】
次いで、反応溶液を60℃まで冷却し、36.6重量%硫酸水溶液151.1g(硫酸として1.12当量、水酸化ナトリウム1当量に対して12%過剰)を加え、この混合溶液を同温度(60℃)で1時間攪拌した。同温度で10分間静置分離し、水相を除去した後に、再度5.0重量%硫酸水溶液156.7g(硫酸として0.16当量)を加え、この混合溶液を60℃で1時間攪拌した。同温度(60℃)で10分間静置分離し、水相を除去した。得られた有機相を最後に水洗した。さらに80℃の減圧下(約2.7kPa)で水蒸気蒸留を行い、反応生成物から低沸点成分を除去し、無色の透明な液体265.8gを得た。この液体の全てが目的化合物のリン酸ジ−n−ブチルであると仮定した場合の粗収率は96.8%で、電位差滴定により測定した純度は99.9%であった。
なお、上記工程の水蒸気蒸留ににおいて除去した低沸点成分の主成分のn−ブタノールを回収し、分析したところ、n−ブタノールとして工業的に使用できることがわかった。
【0038】
比較例1
リン酸ジ−n−ブチルを用いないこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸ジ−n−ブチルの合成を試みたが、混合溶液を80℃まで加熱しても全く反応しなかった。さらに混合溶液を90℃まで加熱したところ、反応が急激に進行し副生成物であるn−ブタノールが突沸状態になったため、合成を継続できないと判断し、合成を中断した。
【0039】
実施例2(リン酸ビス(2−エチルヘキシル)の合成)
攪拌機、還流管および温度計を備えた1リットルの四つ口フラスコに、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)434.0g(1当量)、30.0重量%水酸化ナトリウム水溶液200.0g(水酸化ナトリウムとして1.50当量、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)1当量に対して50%過剰)およびリン酸ビス(2−エチルヘキシル)13.0g(リン酸トリス(2−エチルヘキシル)に対して3重量%)を充填し、この混合溶液を攪拌しながら115℃まで1時間かけて加熱昇温した。加水分解反応による発熱は認められなかった。さらに同温度(115℃)で6時間攪拌し、反応を完結させた。実施例1と同様の方法により反応の完結を確認した。
【0040】
次いで、反応溶液を90℃まで冷却し、水157gを加え、この混合溶液を同温度(90℃)で5分間攪拌した。同温度で10分間静置分離し、水相を除去した。さらに、30.0重量%硫酸水溶液196.0g(硫酸として1.2当量、リン酸トリス(2エチルヘキシル)1当量に対して20%過剰)を加え、この混合溶液を60℃で2時間攪拌した。同温度で10分間静置分離し、水相を除去した後に、再度5.0重量%硫酸水溶液183.7g(硫酸として0.19当量)を加え、この混合溶液を60℃で1時間攪拌した。同温度(60℃)で10分間静置分離し、水相を除去した。得られた有機相を最後に水洗した。さらに117℃の減圧下(約3.3kPa)で水蒸気蒸留を行い、反応生成物から低沸点成分を除去し、淡黄色の透明な液体325.3gを得た。この液体の全てが目的化合物のリン酸ビス(2−エチルヘキシル)であると仮定した場合の粗収率は97.0%で、電位差滴定により測定した純度は98.7%であった。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、リン酸トリエステルやリン酸モノエステルといった不純物の含量が少ない高純度のリン酸ジエステルを高収率で、かつ経済的に得ることができるリン酸ジエステルの製造方法を提供することができる。
Claims (8)
- 一般式(I)の置換基R1 a、R1 bおよびR1 cが、すべて同一である請求項1に記載のリン酸ジエステルの製造方法。
- 存在させるリン酸ジエステルが、原料のリン酸トリエステル100重量部当たり2〜10重量部使用される請求項1または2に記載のリン酸ジエステルの製造方法。
- 無機塩基水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液である請求項1〜3のいずれか1つに記載のリン酸ジエステルの製造方法。
- 無機塩基水溶液が、原料のリン酸トリエステル1当量当たり1.01〜1.5当量の無機塩基を含む水溶液である請求項1〜4のいずれか1つに記載のリン酸ジエステルの製造方法。
- 加水分解が、60〜130℃で行われる請求項1〜5のいずれか1つに記載のリン酸ジエステルの製造方法。
- 加水分解が、実質的に無溶媒下で行われる請求項1〜6のいずれか1つに記載のリン酸ジエステルの製造方法。
- 加水分解で得られた反応液を無機酸水溶液で酸処理し、リン酸ジエステルを単離する請求項1〜7のいずれか1つに記載のリン酸ジエステルの製造方法。
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