JP2004268769A - 車両用冷凍サイクル装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】蒸発器の確実なフロスト防止と、冷え不足の解消による快適性確保とを両立させる。
【解決手段】蒸発器の空気吹出側のうち、蒸発器温度が最低温となる低温側領域に第1蒸発器温度センサを、また、蒸発器温度が最高温となる高温側領域に第2蒸発器温度センサをそれぞれ配置し、低温側領域の蒸発器温度Te1がオフ側目標温度TEOaまで低下すると、電磁クラッチを遮断状態にして圧縮機を停止する(S130、S150)。これに対し、高温側領域の蒸発器温度Te2がオフ側目標温度TEOaよりも所定温度だけ高いオン側目標温度TEObまで上昇すると、電磁クラッチを接続状態にして圧縮機11を作動状態に復帰させる。
【選択図】 図4
【解決手段】蒸発器の空気吹出側のうち、蒸発器温度が最低温となる低温側領域に第1蒸発器温度センサを、また、蒸発器温度が最高温となる高温側領域に第2蒸発器温度センサをそれぞれ配置し、低温側領域の蒸発器温度Te1がオフ側目標温度TEOaまで低下すると、電磁クラッチを遮断状態にして圧縮機を停止する(S130、S150)。これに対し、高温側領域の蒸発器温度Te2がオフ側目標温度TEOaよりも所定温度だけ高いオン側目標温度TEObまで上昇すると、電磁クラッチを接続状態にして圧縮機11を作動状態に復帰させる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両エンジンにより駆動される圧縮機の作動を断続制御して、蒸発器の温度を制御する車両用冷凍サイクル装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置の冷凍サイクル装置においては、圧縮機を車両エンジンにより駆動しているので、圧縮機の作動を電磁クラッチにより断続して、蒸発器の温度を制御するようにしている。
【0003】
より具体的には、蒸発器の空気吹出直後の代表的な部位にサーミスタ等の温度センサを配置し、温度センサの検出温度が蒸発器のフロスト防止のためのオフ側目標温度(例えば、3℃)より低下すると、圧縮機の作動を停止し、そして、温度センサの検出温度がオフ側目標温度に所定のヒステリシス幅を加えたオン側目標温度(例えば、4℃)より高くなると、圧縮機を再起動するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、蒸発器のフロスト防止を最優先すると、蒸発器の空気吹出直後のうち、最低温度部位に温度センサを配置して、この最低温度部位の温度がオフ側目標温度に低下したことを判定して圧縮機の作動を停止すればよい。
【0005】
しかし、このようにすると、蒸発器全体の温度が十分低下しないうちに圧縮機が停止するという現象が起きる。また、圧縮機が一旦停止した後に、蒸発器のかなりの部分の温度がオン側目標温度を超える温度に上昇しても、温度センサが最低温度部位の低温を検出するため、温度センサの検出温度がオン側目標温度以上に上昇するのに時間がかかり、圧縮機の停止時間が過度に長くなる。これらの結果、蒸発器吹出空気の冷え不足が発生する。
【0006】
このため、フロスト防止の制御性を多少犠牲にしながら、最低温度部位よりも若干高温側の適切な温度センサ配置場所を実験により試行錯誤的に求めることにより蒸発器吹出空気の冷え不足を抑制するようにしている。
【0007】
しかし、このように苦労して選定した温度センサ配置場所であっても、冷凍サイクル運転条件が変動すると、例えば、冷媒低流量条件の下では蒸発器冷媒流路における液相冷媒と気相冷媒の密度差に起因して、蒸発器冷媒流路での液相冷媒と気相冷媒の分布に大きなバラツキが発生する。
【0008】
その結果、蒸発器冷媒流路の各部位相互間での吹出空気温度差が拡大するので、特定の1箇所のみに配置した温度センサの検出温度では蒸発器全体の冷却度合を適切に代表することができない。そのため、冷媒低流量時に温度センサが蒸発器冷媒流路の低温側部位の吹出空気温度を検出する場合には、圧縮機の停止時間が過度に長くなって、蒸発器の最高温度部位の吹出空気温度Te2が後述の図6の破線に示すように過度に上昇して、この最高温度部位付近の冷風が主に吹き出される車室内領域では冷え不足の問題が生じる。
【0009】
逆に、温度センサが蒸発器冷媒流路の高温側部位の吹出空気温度を検出する場合には圧縮機の停止時間が過小となって、蒸発器が部分的に冷えすぎるという現象が発生し、これが契機となって蒸発器の全面フロストが生じることもある。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、圧縮機の作動を断続制御して蒸発器の温度を制御する車両用冷凍サイクル装置において、蒸発器の確実なフロスト防止と、冷え不足の解消による快適性確保とを両立させることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両エンジンによりクラッチ手段(11a)を介して駆動される圧縮機(11)と、圧縮機(11)の吸入側に接続され、低圧冷媒を蒸発させる蒸発器(9)と、蒸発器(9)の低温側領域に配置された第1蒸発器温度検出手段(41a)と、蒸発器(9)の高温側領域に配置された第2蒸発器温度検出手段(41b)と、第1蒸発器温度検出手段(41a)および第2蒸発器温度検出手段(41b)の検出信号が入力され、クラッチ手段(11a)を断続制御して圧縮機(11)の作動を断続する制御手段(40)とを備え、
第1蒸発器温度検出手段(41a)により検出される低温側領域の蒸発器温度(Te1)が所定のオフ側目標温度(TEOa)まで低下すると、クラッチ手段(11a)を遮断状態にして圧縮機(11)を停止し、第2蒸発器温度検出手段(41b)により検出される高温側領域の蒸発器温度(Te2)がオフ側目標温度(TEOa)よりも所定温度だけ高いオン側目標温度(TEOb)まで上昇すると、クラッチ手段(11a)を接続状態にして圧縮機(11)を作動状態に復帰させることを特徴とする。
【0012】
これによると、低温側領域の蒸発器温度(Te1)を第1蒸発器温度検出手段(41a)により検出し、低温側領域の蒸発器温度(Te1)が所定のオフ側目標温度(TEOa)以下に低下すると、圧縮機(11)を停止状態とすることができる。そのため、常に低温側領域の蒸発器温度(Te1)の低下に基づいて圧縮機(11)を停止させ、それにより、低温側領域の蒸発器温度(Te1)がフロスト危険域まで過度に低下することを防止できるので、蒸発器(9)のフロストを確実に防止できる。
【0013】
そして、圧縮機(11)が停止した後、圧縮機(11)が作動状態に復帰するタイミングは、低温側領域の蒸発器温度(Te1)でなく、高温側領域の蒸発器温度(Te2)の上昇に基づいて決定するから、高温側領域の蒸発器温度(Te2)を必ずオン側目標温度(TEOb)以下に抑制できる。
【0014】
従って、冷凍サイクル運転条件が変動しても、高温側領域の蒸発器温度(Te2)を常にオン側目標温度(TEOb)以下に抑制できるので、高温側領域の蒸発器温度(Te2)が過度に上昇して冷え不足が生じることを防止できる。
【0015】
請求項2に記載の発明のように、請求項1において、第1蒸発器温度検出手段(41a)を、蒸発器(9)の空気吹出側のうち、蒸発器温度が最低温となる部位に配置し、第2蒸発器温度検出手段(41b)を、蒸発器(9)の空気吹出側のうち、蒸発器温度が最高温となる部位に配置することが実用上より好ましい。
【0016】
請求項2によると、最低温度部位の蒸発器温度に基づいて圧縮機停止を行うから、蒸発器(9)のフロスト防止制御をより一層的確に行うことができる。また、最高温度部位の蒸発器温度に基づいて圧縮機(11)の作動状態への復帰制御を行うから、蒸発器(9)の冷え不足解消のための制御をより一層的確に行うことができる。
【0017】
請求項3に記載の発明のように、請求項2において、オフ側目標温度(TEOa)を氷点下の所定温度に設定してもよい。
【0018】
ところで、請求項2のように最低温度部位の蒸発器温度を常に第1蒸発器温度検出手段(41a)により検出して圧縮機(11)を停止させる場合には、最低温度部位の蒸発器温度をフロスト発生の限界付近の温度域まで低下させても、蒸発器(9)のフロスト発生を防止できる。そのため、請求項3のようにオフ側目標温度(TEOa)を氷点下の所定温度に設定しても、フロスト発生を防止できる。そして、オフ側目標温度(TEOa)を氷点下の所定温度に設定することにより、蒸発器(9)温度を低温側に最大限引き下げて、蒸発器(9)の冷却除湿能力を高めることができる。
【0019】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1は本実施形態の全体構成の概要を示すもので、車両用空調装置は車室内最前部の計器盤(図示せず)の内側部に配設される空調ユニット1を備えている。この空調ユニット1はケース2を有し、このケース2内に車室内へ向かって空気が送風される空気通路を構成する。このケース2の空気通路の最上流部に内気導入口3および外気導入口4を有する内外気切替箱5を配置している。この内外気切替箱5内に、内外気切替手段としての内外気切替ドア6を回転自在に配置している。
【0021】
この内外気切替ドア6はサーボモータ7によって駆動されるもので、内気導入口3より内気(車室内空気)を導入する内気導入モードと外気導入口4より外気(車室外空気)を導入する外気導入モードとを切り替える。
【0022】
内外気切替箱5の下流側には車室内に向かう空気流を発生させる電動式の送風機8を配置している。この送風機8は、遠心式の送風ファン8aをモータ8bにより駆動するようになっている。送風機8の下流側にはケース2内を流れる空気を冷却する蒸発器9を配置している。この蒸発器9は送風機8の送風空気を冷却する冷房用熱交換器であって、冷凍サイクル10を構成する要素の一つである。
【0023】
なお、冷凍サイクル10は、圧縮機11の吐出側から、凝縮器12、受液器13および減圧手段をなす温度式膨張弁14を介して蒸発器9に冷媒が循環するように構成された周知のものである。圧縮機11は、電磁クラッチ11a、ベルト等を介して車両エンジン(図示せず)の回転動力が伝達されることにより回転駆動される。
【0024】
冷凍サイクル10においては、圧縮機11により冷媒が高温高圧に圧縮され、この圧縮機11から吐出された高圧ガス冷媒は凝縮器(放熱器)12に導入され、この凝縮器12にてガス冷媒は図示しない冷却ファンにより送風される外気と熱交換して放熱し凝縮する。凝縮器12を通過した冷媒を受液器13にて液相冷媒と気相冷媒とに分離するとともに、液相冷媒を受液器13内に貯留する。
【0025】
受液器13からの高圧液冷媒を温度式膨張弁14にて低圧の気液2相状態に減圧し、この減圧後の低圧冷媒を上記の蒸発器9において空調空気から吸熱して蒸発させるようになっている。温度式膨張弁14は周知のごとく蒸発器9出口の冷媒過熱度が所定値に維持されるように弁開度を自動調節するものである。
【0026】
蒸発器9において蒸発した後のガス冷媒は再度、圧縮機11に吸入され、圧縮される。なお、冷凍サイクル10のうち、圧縮機11、凝縮器12、受液器13等の機器は、車両エンジンルーム(図示せず)内に配置されている。
【0027】
一方、空調ユニット1において、蒸発器9の下流側にはケース2内を流れる空気を加熱するヒータコア15を配置している。このヒータコア15は車両エンジンの温水(エンジン冷却水)を熱源として、蒸発器9通過後の空気(冷風)を加熱する暖房用熱交換器であり、その側方にはヒータコア15をバイパスして空気が流れるバイパス通路16が形成してある。
【0028】
蒸発器9とヒータコア15との間にエアミックスドア17を回転自在に配置してある。このエアミックスドア17はサーボモータ18により駆動されて、その回転位置(開度)が連続的に調節可能になっている。エアミックスドア17の開度によりヒータコア15を通る空気量(温風量)と、バイパス通路16を通過してヒータコア15をバイパスする空気量(冷風量)との風量割合を調節し、これにより、車室内に吹き出す空気の温度を調節するようになっている。
【0029】
ケース2の空気通路の最下流部には、車両の前面窓ガラスWに向けて空調風を吹き出すためのデフロスタ吹出口19、乗員の顔部に向けて空調風を吹き出すためのフェイス吹出口20、および乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すためのフット吹出口21の計3種類の吹出口が設けられている。
【0030】
これら吹出口19〜21の上流部にはデフロスタドア22、フェイスドア23およびフットドア24が回転自在に配置されている。これらのドア22〜24は、図示しないリンク機構を介して共通のサーボモータ25によって駆動される。
【0031】
次に、図2により本実施形態における蒸発器9の冷媒流路構成および蒸発器温度センサの具体的配置形態を説明する。蒸発器9はその左右の側面部の一方(図示左側)の上方部に冷媒出入口ジョイント9aを一体に接合し、この冷媒出入口ジョイント9aに、膨張弁14にて減圧された低圧冷媒が流入する冷媒入口9bと蒸発器9にて蒸発したガス冷媒が圧縮機11吸入側へ向かって流出する冷媒出口9cが設けてある。
【0032】
蒸発器9は、多数の偏平チューブ9d相互間にコルゲートフィン9fを一体に接合し、この偏平チューブ9dとコルゲートフィン9fとにより冷媒と送風空気との間で熱交換を行う熱交換コア部を構成している。この熱交換コア部の上下両端部に偏平チューブ9d内の冷媒流路への冷媒分配あるいは偏平チューブ9d内の冷媒流路からの冷媒集合を行うタンク部9g〜9jを構成している。このタンク部9g〜9jは図示の例では偏平チューブ9dと一体成形しているが、タンク部9g〜9jを偏平チューブ9dと別体で成形し、タンク部9g〜9jを偏平チューブ9dと一体に接合(ろう付け)してもよい。
【0033】
タンク部9g〜9jのうちタンク部9g、9iは蒸発器9への空気流れ方向Aの上流側に位置する風上側タンク部であり、これに対し、タンク部9h、9jは蒸発器9への空気流れ方向Aの下流側に位置する風下側タンク部である。
【0034】
上側の両タンク部9g、9h相互間の冷媒流路、および下側の両タンク部9i、9j相互間の冷媒流路はそれぞれ空気流れ方向Aの風上側と風下側とで仕切られている。これに伴って、偏平チューブ9d内の冷媒流路も空気流れ方向Aの風上側と風下側とで仕切られている。
【0035】
このように偏平チューブ9d内の冷媒流路および上下のタンク部9g〜9j内の冷媒流路を空気流れ方向Aの前後で仕切ることにより、蒸発器9の風下側部位に、冷媒入口9bからの冷媒が流れる入口側冷媒流路部9kを形成し、蒸発器9の風上側部位に、入口側冷媒流路部9kからの冷媒が冷媒出口9cに向かって流れる出口側冷媒流路部9mを形成している。従って、冷媒入口9bからの冷媒が最初に蒸発器9の風下側に流れ、その後、蒸発器9の風上側に流れるという対向流型の前後Uターン流路を形成する。
【0036】
冷媒入口9bからの冷媒は蒸発器9の左側面部流路9nを矢印aのように通過(降下)して、入口側冷媒流路部9kの下側タンク9jに流入する。この下側タンク9jの左右方向の中央部には仕切り板9pが配置されているので、冷媒はその後、入口側冷媒流路部9kを矢印b、c、dのように蛇行状に流れて、入口側冷媒流路部9kの出口部(右側下端部)に到達する。
【0037】
この右側下端部の冷媒は蒸発器9の右側面部流路9qを矢印eのように通過(上昇)して、出口側冷媒流路部9mの上側タンク9gの右側上端部に流入する。この上側タンク9gの左右方向の中央部には仕切り板9rが配置されているので、冷媒はその後、出口側冷媒流路部9mを矢印f、g、hのように蛇行状に流れて冷媒出口9cに到達する。
【0038】
図2に示す本実施形態における蒸発器9の冷媒流路構成であると、風下側の入口側冷媒流路部9kでは蒸発器9の左側から右側へと冷媒が流れ、これに対し、風上側の出口側冷媒流路部9mでは蒸発器9の右側から左側へと逆方向に冷媒が流れる。そして、蒸発器9の左側部では入口側冷媒流路部9kと出口側冷媒流路部9mの冷媒流れ方向がともに矢印b、hに示す上昇流となり、蒸発器9の右側部では入口側冷媒流路部9kと出口側冷媒流路部9mの冷媒流れ方向がともに矢印d、fに示す下降流となる。
【0039】
このように、風下側の入口側冷媒流路部9kと風上側の出口側冷媒流路部9mとで、冷媒流れ方向が左右逆転しているとともに、蒸発器9の空気流れ方向Aの前後において重合する冷媒流路部分(矢印b、h部分および矢印d、f部分)では冷媒流れ方向が一致している。
【0040】
これにより、蒸発器9の空気流れ方向Aの前後において重合する冷媒流路部分では、液相冷媒の分布の偏りを相殺して、蒸発器9の吹出空気温度のバラツキを抑制している。
【0041】
ところで、本発明者らの実験検討によると、圧縮機11の高回転時や膨張弁14の開度が大きくてサイクル内循環冷媒流量が大きい場合には、蒸発器9の上記した冷媒流路構成によって蒸発器9の吹出空気温度のバラツキを十分小さい範囲に低減できる。
【0042】
しかし、圧縮機11の低回転時や膨張弁14の小開度時のようにサイクル内循環冷媒流量が減少する場合等には、蒸発器9内部の冷媒流路における冷媒流速の低下、液相冷媒と気相冷媒の密度差等に起因して、蒸発器9内冷媒流路での液相冷媒と気相冷媒の偏在が顕著となることが分かった。
【0043】
そして、気相冷媒のみが存在する部位では顕熱分のみの吸熱となり、蒸発潜熱を吸熱できないので、気相冷媒部位の蒸発器吹出空気温度が液相冷媒の集中部位に比較して大幅に高い温度となって、蒸発器吹出空気温度のバラツキが増大する。
【0044】
本発明者らの実験検討によると、蒸発器9の熱交換コア部において、冷媒入口9bから左側面部流路9nを通過した直後の冷媒が流れる、冷媒入口側領域▲1▼付近が最も低温側部位となり、そして、風下側の入口側冷媒流路部9kのうち、最も冷媒出口側領域▲2▼付近が最も高温側部位となることが分かった。
【0045】
そこで、本実施形態においては、蒸発器9の熱交換コア部の空気吹出側(風下側)のうち、最も低温側領域▲1▼に第1温度センサ41aを配置し、この第1温度センサ41aにより最も低温側領域▲1▼の蒸発器吹出温度Te1を検出するようにしてある。
【0046】
また、蒸発器9の熱交換コア部の空気吹出側(風下側)のうち、最も高温側領域▲2▼に第2温度センサ41bを配置し、この第2温度センサ41bにより最も高温側領域▲2▼の蒸発器吹出温度Te2を検出するようにしてある。
【0047】
次に、図3により本実施形態の電気制御部の概要を説明すると、空調制御装置40はCPU、ROMおよびRAM等を含んで構成される周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されるもので、ROM内に空調制御のための制御プログラムを記憶しており、その制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。空調制御装置40の入力側にはセンサ群41からのセンサ検出信号、空調パネル42からの操作信号が入力される。
【0048】
センサ群41には、上記した第1、第2蒸発器温度センサ41a、41bが備えられている。この両温度センサ41a、41bにより検出される蒸発器吹出空気温度Te1、Te2に応じて電磁クラッチ11aの通電を断続制御し、これにより、圧縮機11の作動を断続して蒸発器9の冷却能力を制御するようになっている。
【0049】
この第1、第2蒸発器温度センサ41a、41bの他に、外気温Tam、内気温Tr、日射量Ts、温水温度Tw等を検出する各種のセンサ41c〜41f等がセンサ群41に備えられている。
【0050】
空調パネル42は、車室内の運転席前方の計器盤(図示せず)付近に配置されるものであって、乗員により操作される以下の操作スイッチ42a〜42eを有している。温度設定スイッチ42aは車室内の設定温度Tsetの信号を出すものであり、内外気切替スイッチ42bは内外気切替ドア6による内気モードと外気モードをマニュアル設定する信号を出すものである。
【0051】
吹出モードスイッチ42cは吹出モードとして周知のフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、およびデフロスタモードをマニュアル設定するための信号を出すものである。風量切替スイッチ42dは送風機8のオンオフおよび送風機8の風量切替をマニュアル設定するための信号を出すものであり、エアコンスイッチ42eは電磁クラッチ11aの通電のオンオフ信号を出して圧縮機11の作動を断続するものである。
【0052】
空調制御装置40の出力側には、圧縮機11の電磁クラッチ11a、送風機8の駆動用モータ8b、および各機器の電気駆動手段をなすサーボモータ7、18、25等が接続され、これらの機器の作動が空調制御装置40の出力信号により制御される。
【0053】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。最初に、車両用空調装置としての作動の概要を説明すると、空調パネル42の風量切替スイッチ42dを投入して送風機8を作動させることにより、空調ユニット1のケース2内の通風路に空気が送風される。
【0054】
そして、空調パネル42の圧縮機作動スイッチであるエアコンスイッチ42eを投入すると、空調制御装置40により電磁クラッチ11aに通電されて電磁クラッチ11aが接続状態となり、圧縮機11が車両エンジンにより回転駆動される。これにより、冷凍サイクル10において蒸発器9に冷媒が循環するので、送風空気を蒸発器9により冷却、除湿して、車室内へ空調風を吹き出すことができる。
【0055】
次に、圧縮機11の作動の断続制御を図4により説明すると、図4は空調制御装置40により実行される圧縮機制御ルーチンであり、エアコンスイッチ42eの投入によりスタートし、先ず、ステップS100にてフラグF=0に初期化する。次に、ステップS110にてセンサ群41の検出信号、空調パネル42からの操作信号等を読み込む。
【0056】
次に、ステップS120にてフラグF=0であるか判定する。フラグFは初期化により0になっているので、ステップS130に進み、低温側領域▲1▼の蒸発器吹出温度Te1がオフ側目標温度TEOa以下に低下したか判定する。ここで、オフ側目標温度TEOaは後述の図5に示すように氷点下の温度、例えば、−2℃である。エアコンスイッチ42eの投入直後は蒸発器吹出温度Te1がオフ側目標温度TEOaより高いので、ステップS130の判定がNOとなり、ステップS140に進む。
【0057】
ステップS140では、電磁クラッチ11aに通電して電磁クラッチ11aをON状態、すなわち、圧縮機11を作動状態にするとともに、フラグF=0にする。従って、低温側領域▲1▼の蒸発器吹出温度Te1がオフ側目標温度TEOaより高い間は圧縮機11の作動状態が継続されて、蒸発器吹出温度が次第に低下していく。
【0058】
そして、低温側領域▲1▼の蒸発器吹出温度Te1がオフ側目標温度TEOa以下に低下すると、ステップS130の判定がYESとなり、ステップS150に進み、電磁クラッチ11aへの通電を遮断して電磁クラッチ11aをOFF状態、すなわち、圧縮機11を停止状態にするとともに、フラグF=1にする。
【0059】
このようにフラグFが1になると、ステップS120からステップS160に進み、高温側領域▲2▼の蒸発器吹出温度Te2がオン側目標温度TEOb以下であるか判定する。ここで、オン側目標温度TEObはオフ側目標温度TEOaより所定値α高い温度、すなわち、TEOb=TEOa+αであり、具体的には、後述の図5に示すように9℃である。
【0060】
従って、圧縮機11の停止後もしばらくの間、蒸発器9の熱容量により高温側領域▲2▼の蒸発器吹出温度Te2がオン側目標温度TEObより低い状態に維持され、ステップS160の判定はYESとなる。このため、ステップS170にて電磁クラッチ11aをOFF状態にして圧縮機11を停止状態にするとともに、フラグF=1にする。
【0061】
そして、圧縮機停止状態の時間経過により高温側領域▲2▼の蒸発器吹出温度Te2がオン側目標温度TEObより高くなると、ステップS160の判定がNOとなり、ステップS180にて電磁クラッチ11aを再びON状態にして圧縮機11を作動状態に復帰させるとともに、フラグF=0にする。
【0062】
以下、低温側領域▲1▼のTe1がTEOa以下に低下すると圧縮機11を停止状態とし、これに対し、高温側領域▲2▼のTe2がTEObより高くなると圧縮機11を作動状態とする、圧縮機作動断続制御を繰り返す。
【0063】
図5は上記した本実施形態による圧縮機作動の断続制御を示すものであり、横軸は圧縮機11の起動後の経過時間であり、縦軸は蒸発器吹出温度および電磁クラッチ11a(圧縮機11)のON、OFFを示す。
【0064】
Te1がTEOa以下に低下すると圧縮機11を停止状態とし、これ以後、Te1、Te2がともに上昇し、そして、Te2がTEObより高くなると、圧縮機11を作動状態とするため、Te1、Te2がともに下降する。これ以後、このような温度変化を繰り返す。なお、図5において、Te3は蒸発器吹出側の代表的な部位(最低温度部位よりも若干高温側の部位)における蒸発器吹出温度の変化である。
【0065】
本実施形態によると、蒸発器吹出側の最低温度部位の吹出空気温度Te1を第1温度センサ41aにより検出し、また、蒸発器吹出側の最高温度部位の吹出空気温度Te2を第2温度センサ41bにより検出し、最低温度部位の吹出空気温度Te1が所定のオフ側目標温度TEOa以下に低下すると、圧縮機11を停止状態とするから、常に最低温度部位の吹出空気温度Te1を判定して圧縮機11を停止させ、蒸発器吹出温度が過度に低下することを防止できるから、蒸発器9のフロストを確実に防止できる。
【0066】
なお、本実施形態ではオフ側目標温度TEOaを氷点下の−2℃に設定しているが、蒸発器吹出温度が氷点下の温度となる部位はごく一部のみであり、代表的な蒸発器吹出温度Te3は図5の実線にて示すように+2℃程度までしか低下しないから、蒸発器9のフロスト発生の心配はない。むしろ、代表的な蒸発器吹出温度Te3の下限値を0℃に接近させることにより、蒸発器9の冷却除湿能力を向上させることができる。
【0067】
そして、最低温度部位の吹出空気温度Te1の低下により圧縮機11が停止した後、圧縮機11が作動状態に復帰するタイミングは、最低温度部位の吹出空気温度Te1でなく、最高温度部位の吹出空気温度Te2の上昇に基づいて決定するから、最高温度部位の吹出空気温度Te2を必ずオン側目標温度TEOb以下に抑制できる。
【0068】
従って、冷凍サイクル運転条件が変動しても、最高温度部位の吹出空気温度Te2を常にオン側目標温度TEOb以下に抑制できるので、最高温度部位の吹出空気温度Te2が過度に上昇して冷え不足が生じることを防止できる。
【0069】
しかるに、従来技術のように、蒸発器吹出側の特定の1箇所のみに温度センサを配置し、その検出温度に基づいて圧縮機作動を断続制御するものでは、温度センサの検出温度が冷凍サイクルのある運転条件にて蒸発器全体の冷却度合を適切に代表することができても、別の冷凍サイクル運転条件では温度センサの検出温度が蒸発器全体の冷却度合を適切に代表できないという事態が発生する。
【0070】
従って、冷凍サイクルの冷媒流量が高流量であるときに、温度センサの検出温度が蒸発器全体の冷却度合を適切に代表していても、低流量条件では温度センサの検出温度が蒸発器全体の冷却度合を適切に代表できないという事態が発生する。
【0071】
図6は従来技術による圧縮機作動の断続制御の具体例を示すものであり、図6の横軸、縦軸は図5と同じである。図6において、実線Te3は温度センサの検出温度であり、1点鎖線Te1は蒸発器吹出側の最低温度部位の吹出温度であり、破線Te2は蒸発器吹出側の最高温度部位の吹出温度である。
【0072】
図6の従来技術による制御例では、センサ検出温度Te3がオフ側目標温度TEOa(例えば、2℃)以下に低下すると、圧縮機11を停止状態とし、そして、センサ検出温度Te3がオン側目標温度TEOb(例えば、5℃)に上昇すると、圧縮機11を作動状態にする。
【0073】
図6は温度センサの検出温度Te3が蒸発器全体の冷却度合を適切に代表できない場合であり、最低温度部位の吹出温度Te1が−7℃という低温まで低下してしまうので、このような低温部位の発生が契機となって蒸発器9のフロストが発生する。
【0074】
一方、蒸発器吹出側の最高温度部位の吹出温度Teが圧縮機11の停止時に11℃という高温レベルまで上昇してしまい、この最高温度部位付近の冷風が主に吹き出される車室内領域では冷え不足の問題が生じる。
【0075】
(他の実施形態)
なお、上記の一実施形態では、オフ側目標温度TEOaおよびオン側目標温度TEObをともに予め設定された固定値としているが、オフ側目標温度TEOaおよびオン側目標温度TEObを空調装置の作動条件に応じて可変するようにしてもよい。
【0076】
具体的には、空調ユニット1から車室内へ吹き出す空気の目標吹出温度TAOを、温度設定スイッチ42aにより設定した設定温度Tset、および空調熱負荷を表す外気温Tam、内気温Tr、日射量Ts等に基づいて算出し、現実の吹出空気温度がこの目標吹出温度TAOとなるようにエアミックスドア17等の温度調節手段を自動制御する車両用空調装置において、目標吹出温度TAOの上昇に応じてオフ側目標温度TEOaおよびオン側目標温度TEObを高温側へ補正するようにしてもよい。
【0077】
また、春秋の中間期においては、蒸発器9の冷却除湿能力を低下させても空調機能上支障がないので、外気温が中間温度域にあることを判定したときにオフ側目標温度TEOaおよびオン側目標温度TEObを高温側へ補正するようにしてもよい。
【0078】
このようにオフ側目標温度TEOaおよびオン側目標温度TEObを高温側へ補正すると、圧縮機11の稼働率が低下して圧縮機11の駆動動力を低減できる。
【0079】
また、上記の一実施形態では、蒸発器9の空気吹出側において低温側領域▲1▼および高温側領域▲2▼にそれぞれ吹出空気温度Te1、Te2を検出する吹出温度センサ41a、41bを配置し、この吹出温度センサ41a、41bを第1、第2蒸発器温度検出手段として用いているが、第1、第2蒸発器温度検出手段として、空気吹出側のフィン表面温度等を検出する温度検出手段を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用空調装置の概略全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いる蒸発器の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態における電気制御部の概略ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による圧縮機断続制御のフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態による圧縮機断続制御の作動特性図である。
【図6】従来技術による圧縮機断続制御の作動特性図である。
【符号の説明】
1…空調ユニット、8…送風機、9…蒸発器、10…冷凍サイクル、
11…圧縮機、11a…電磁クラッチ(クラッチ手段)、
40…空調用制御装置(制御手段)、
41a…蒸発器低温側領域の温度センサ(第1蒸発器温度検出手段)、
41b…蒸発器高温側領域の温度センサ(第2蒸発器温度検出手段)。
【発明の属する技術分野】
本発明は車両エンジンにより駆動される圧縮機の作動を断続制御して、蒸発器の温度を制御する車両用冷凍サイクル装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置の冷凍サイクル装置においては、圧縮機を車両エンジンにより駆動しているので、圧縮機の作動を電磁クラッチにより断続して、蒸発器の温度を制御するようにしている。
【0003】
より具体的には、蒸発器の空気吹出直後の代表的な部位にサーミスタ等の温度センサを配置し、温度センサの検出温度が蒸発器のフロスト防止のためのオフ側目標温度(例えば、3℃)より低下すると、圧縮機の作動を停止し、そして、温度センサの検出温度がオフ側目標温度に所定のヒステリシス幅を加えたオン側目標温度(例えば、4℃)より高くなると、圧縮機を再起動するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、蒸発器のフロスト防止を最優先すると、蒸発器の空気吹出直後のうち、最低温度部位に温度センサを配置して、この最低温度部位の温度がオフ側目標温度に低下したことを判定して圧縮機の作動を停止すればよい。
【0005】
しかし、このようにすると、蒸発器全体の温度が十分低下しないうちに圧縮機が停止するという現象が起きる。また、圧縮機が一旦停止した後に、蒸発器のかなりの部分の温度がオン側目標温度を超える温度に上昇しても、温度センサが最低温度部位の低温を検出するため、温度センサの検出温度がオン側目標温度以上に上昇するのに時間がかかり、圧縮機の停止時間が過度に長くなる。これらの結果、蒸発器吹出空気の冷え不足が発生する。
【0006】
このため、フロスト防止の制御性を多少犠牲にしながら、最低温度部位よりも若干高温側の適切な温度センサ配置場所を実験により試行錯誤的に求めることにより蒸発器吹出空気の冷え不足を抑制するようにしている。
【0007】
しかし、このように苦労して選定した温度センサ配置場所であっても、冷凍サイクル運転条件が変動すると、例えば、冷媒低流量条件の下では蒸発器冷媒流路における液相冷媒と気相冷媒の密度差に起因して、蒸発器冷媒流路での液相冷媒と気相冷媒の分布に大きなバラツキが発生する。
【0008】
その結果、蒸発器冷媒流路の各部位相互間での吹出空気温度差が拡大するので、特定の1箇所のみに配置した温度センサの検出温度では蒸発器全体の冷却度合を適切に代表することができない。そのため、冷媒低流量時に温度センサが蒸発器冷媒流路の低温側部位の吹出空気温度を検出する場合には、圧縮機の停止時間が過度に長くなって、蒸発器の最高温度部位の吹出空気温度Te2が後述の図6の破線に示すように過度に上昇して、この最高温度部位付近の冷風が主に吹き出される車室内領域では冷え不足の問題が生じる。
【0009】
逆に、温度センサが蒸発器冷媒流路の高温側部位の吹出空気温度を検出する場合には圧縮機の停止時間が過小となって、蒸発器が部分的に冷えすぎるという現象が発生し、これが契機となって蒸発器の全面フロストが生じることもある。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、圧縮機の作動を断続制御して蒸発器の温度を制御する車両用冷凍サイクル装置において、蒸発器の確実なフロスト防止と、冷え不足の解消による快適性確保とを両立させることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両エンジンによりクラッチ手段(11a)を介して駆動される圧縮機(11)と、圧縮機(11)の吸入側に接続され、低圧冷媒を蒸発させる蒸発器(9)と、蒸発器(9)の低温側領域に配置された第1蒸発器温度検出手段(41a)と、蒸発器(9)の高温側領域に配置された第2蒸発器温度検出手段(41b)と、第1蒸発器温度検出手段(41a)および第2蒸発器温度検出手段(41b)の検出信号が入力され、クラッチ手段(11a)を断続制御して圧縮機(11)の作動を断続する制御手段(40)とを備え、
第1蒸発器温度検出手段(41a)により検出される低温側領域の蒸発器温度(Te1)が所定のオフ側目標温度(TEOa)まで低下すると、クラッチ手段(11a)を遮断状態にして圧縮機(11)を停止し、第2蒸発器温度検出手段(41b)により検出される高温側領域の蒸発器温度(Te2)がオフ側目標温度(TEOa)よりも所定温度だけ高いオン側目標温度(TEOb)まで上昇すると、クラッチ手段(11a)を接続状態にして圧縮機(11)を作動状態に復帰させることを特徴とする。
【0012】
これによると、低温側領域の蒸発器温度(Te1)を第1蒸発器温度検出手段(41a)により検出し、低温側領域の蒸発器温度(Te1)が所定のオフ側目標温度(TEOa)以下に低下すると、圧縮機(11)を停止状態とすることができる。そのため、常に低温側領域の蒸発器温度(Te1)の低下に基づいて圧縮機(11)を停止させ、それにより、低温側領域の蒸発器温度(Te1)がフロスト危険域まで過度に低下することを防止できるので、蒸発器(9)のフロストを確実に防止できる。
【0013】
そして、圧縮機(11)が停止した後、圧縮機(11)が作動状態に復帰するタイミングは、低温側領域の蒸発器温度(Te1)でなく、高温側領域の蒸発器温度(Te2)の上昇に基づいて決定するから、高温側領域の蒸発器温度(Te2)を必ずオン側目標温度(TEOb)以下に抑制できる。
【0014】
従って、冷凍サイクル運転条件が変動しても、高温側領域の蒸発器温度(Te2)を常にオン側目標温度(TEOb)以下に抑制できるので、高温側領域の蒸発器温度(Te2)が過度に上昇して冷え不足が生じることを防止できる。
【0015】
請求項2に記載の発明のように、請求項1において、第1蒸発器温度検出手段(41a)を、蒸発器(9)の空気吹出側のうち、蒸発器温度が最低温となる部位に配置し、第2蒸発器温度検出手段(41b)を、蒸発器(9)の空気吹出側のうち、蒸発器温度が最高温となる部位に配置することが実用上より好ましい。
【0016】
請求項2によると、最低温度部位の蒸発器温度に基づいて圧縮機停止を行うから、蒸発器(9)のフロスト防止制御をより一層的確に行うことができる。また、最高温度部位の蒸発器温度に基づいて圧縮機(11)の作動状態への復帰制御を行うから、蒸発器(9)の冷え不足解消のための制御をより一層的確に行うことができる。
【0017】
請求項3に記載の発明のように、請求項2において、オフ側目標温度(TEOa)を氷点下の所定温度に設定してもよい。
【0018】
ところで、請求項2のように最低温度部位の蒸発器温度を常に第1蒸発器温度検出手段(41a)により検出して圧縮機(11)を停止させる場合には、最低温度部位の蒸発器温度をフロスト発生の限界付近の温度域まで低下させても、蒸発器(9)のフロスト発生を防止できる。そのため、請求項3のようにオフ側目標温度(TEOa)を氷点下の所定温度に設定しても、フロスト発生を防止できる。そして、オフ側目標温度(TEOa)を氷点下の所定温度に設定することにより、蒸発器(9)温度を低温側に最大限引き下げて、蒸発器(9)の冷却除湿能力を高めることができる。
【0019】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1は本実施形態の全体構成の概要を示すもので、車両用空調装置は車室内最前部の計器盤(図示せず)の内側部に配設される空調ユニット1を備えている。この空調ユニット1はケース2を有し、このケース2内に車室内へ向かって空気が送風される空気通路を構成する。このケース2の空気通路の最上流部に内気導入口3および外気導入口4を有する内外気切替箱5を配置している。この内外気切替箱5内に、内外気切替手段としての内外気切替ドア6を回転自在に配置している。
【0021】
この内外気切替ドア6はサーボモータ7によって駆動されるもので、内気導入口3より内気(車室内空気)を導入する内気導入モードと外気導入口4より外気(車室外空気)を導入する外気導入モードとを切り替える。
【0022】
内外気切替箱5の下流側には車室内に向かう空気流を発生させる電動式の送風機8を配置している。この送風機8は、遠心式の送風ファン8aをモータ8bにより駆動するようになっている。送風機8の下流側にはケース2内を流れる空気を冷却する蒸発器9を配置している。この蒸発器9は送風機8の送風空気を冷却する冷房用熱交換器であって、冷凍サイクル10を構成する要素の一つである。
【0023】
なお、冷凍サイクル10は、圧縮機11の吐出側から、凝縮器12、受液器13および減圧手段をなす温度式膨張弁14を介して蒸発器9に冷媒が循環するように構成された周知のものである。圧縮機11は、電磁クラッチ11a、ベルト等を介して車両エンジン(図示せず)の回転動力が伝達されることにより回転駆動される。
【0024】
冷凍サイクル10においては、圧縮機11により冷媒が高温高圧に圧縮され、この圧縮機11から吐出された高圧ガス冷媒は凝縮器(放熱器)12に導入され、この凝縮器12にてガス冷媒は図示しない冷却ファンにより送風される外気と熱交換して放熱し凝縮する。凝縮器12を通過した冷媒を受液器13にて液相冷媒と気相冷媒とに分離するとともに、液相冷媒を受液器13内に貯留する。
【0025】
受液器13からの高圧液冷媒を温度式膨張弁14にて低圧の気液2相状態に減圧し、この減圧後の低圧冷媒を上記の蒸発器9において空調空気から吸熱して蒸発させるようになっている。温度式膨張弁14は周知のごとく蒸発器9出口の冷媒過熱度が所定値に維持されるように弁開度を自動調節するものである。
【0026】
蒸発器9において蒸発した後のガス冷媒は再度、圧縮機11に吸入され、圧縮される。なお、冷凍サイクル10のうち、圧縮機11、凝縮器12、受液器13等の機器は、車両エンジンルーム(図示せず)内に配置されている。
【0027】
一方、空調ユニット1において、蒸発器9の下流側にはケース2内を流れる空気を加熱するヒータコア15を配置している。このヒータコア15は車両エンジンの温水(エンジン冷却水)を熱源として、蒸発器9通過後の空気(冷風)を加熱する暖房用熱交換器であり、その側方にはヒータコア15をバイパスして空気が流れるバイパス通路16が形成してある。
【0028】
蒸発器9とヒータコア15との間にエアミックスドア17を回転自在に配置してある。このエアミックスドア17はサーボモータ18により駆動されて、その回転位置(開度)が連続的に調節可能になっている。エアミックスドア17の開度によりヒータコア15を通る空気量(温風量)と、バイパス通路16を通過してヒータコア15をバイパスする空気量(冷風量)との風量割合を調節し、これにより、車室内に吹き出す空気の温度を調節するようになっている。
【0029】
ケース2の空気通路の最下流部には、車両の前面窓ガラスWに向けて空調風を吹き出すためのデフロスタ吹出口19、乗員の顔部に向けて空調風を吹き出すためのフェイス吹出口20、および乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すためのフット吹出口21の計3種類の吹出口が設けられている。
【0030】
これら吹出口19〜21の上流部にはデフロスタドア22、フェイスドア23およびフットドア24が回転自在に配置されている。これらのドア22〜24は、図示しないリンク機構を介して共通のサーボモータ25によって駆動される。
【0031】
次に、図2により本実施形態における蒸発器9の冷媒流路構成および蒸発器温度センサの具体的配置形態を説明する。蒸発器9はその左右の側面部の一方(図示左側)の上方部に冷媒出入口ジョイント9aを一体に接合し、この冷媒出入口ジョイント9aに、膨張弁14にて減圧された低圧冷媒が流入する冷媒入口9bと蒸発器9にて蒸発したガス冷媒が圧縮機11吸入側へ向かって流出する冷媒出口9cが設けてある。
【0032】
蒸発器9は、多数の偏平チューブ9d相互間にコルゲートフィン9fを一体に接合し、この偏平チューブ9dとコルゲートフィン9fとにより冷媒と送風空気との間で熱交換を行う熱交換コア部を構成している。この熱交換コア部の上下両端部に偏平チューブ9d内の冷媒流路への冷媒分配あるいは偏平チューブ9d内の冷媒流路からの冷媒集合を行うタンク部9g〜9jを構成している。このタンク部9g〜9jは図示の例では偏平チューブ9dと一体成形しているが、タンク部9g〜9jを偏平チューブ9dと別体で成形し、タンク部9g〜9jを偏平チューブ9dと一体に接合(ろう付け)してもよい。
【0033】
タンク部9g〜9jのうちタンク部9g、9iは蒸発器9への空気流れ方向Aの上流側に位置する風上側タンク部であり、これに対し、タンク部9h、9jは蒸発器9への空気流れ方向Aの下流側に位置する風下側タンク部である。
【0034】
上側の両タンク部9g、9h相互間の冷媒流路、および下側の両タンク部9i、9j相互間の冷媒流路はそれぞれ空気流れ方向Aの風上側と風下側とで仕切られている。これに伴って、偏平チューブ9d内の冷媒流路も空気流れ方向Aの風上側と風下側とで仕切られている。
【0035】
このように偏平チューブ9d内の冷媒流路および上下のタンク部9g〜9j内の冷媒流路を空気流れ方向Aの前後で仕切ることにより、蒸発器9の風下側部位に、冷媒入口9bからの冷媒が流れる入口側冷媒流路部9kを形成し、蒸発器9の風上側部位に、入口側冷媒流路部9kからの冷媒が冷媒出口9cに向かって流れる出口側冷媒流路部9mを形成している。従って、冷媒入口9bからの冷媒が最初に蒸発器9の風下側に流れ、その後、蒸発器9の風上側に流れるという対向流型の前後Uターン流路を形成する。
【0036】
冷媒入口9bからの冷媒は蒸発器9の左側面部流路9nを矢印aのように通過(降下)して、入口側冷媒流路部9kの下側タンク9jに流入する。この下側タンク9jの左右方向の中央部には仕切り板9pが配置されているので、冷媒はその後、入口側冷媒流路部9kを矢印b、c、dのように蛇行状に流れて、入口側冷媒流路部9kの出口部(右側下端部)に到達する。
【0037】
この右側下端部の冷媒は蒸発器9の右側面部流路9qを矢印eのように通過(上昇)して、出口側冷媒流路部9mの上側タンク9gの右側上端部に流入する。この上側タンク9gの左右方向の中央部には仕切り板9rが配置されているので、冷媒はその後、出口側冷媒流路部9mを矢印f、g、hのように蛇行状に流れて冷媒出口9cに到達する。
【0038】
図2に示す本実施形態における蒸発器9の冷媒流路構成であると、風下側の入口側冷媒流路部9kでは蒸発器9の左側から右側へと冷媒が流れ、これに対し、風上側の出口側冷媒流路部9mでは蒸発器9の右側から左側へと逆方向に冷媒が流れる。そして、蒸発器9の左側部では入口側冷媒流路部9kと出口側冷媒流路部9mの冷媒流れ方向がともに矢印b、hに示す上昇流となり、蒸発器9の右側部では入口側冷媒流路部9kと出口側冷媒流路部9mの冷媒流れ方向がともに矢印d、fに示す下降流となる。
【0039】
このように、風下側の入口側冷媒流路部9kと風上側の出口側冷媒流路部9mとで、冷媒流れ方向が左右逆転しているとともに、蒸発器9の空気流れ方向Aの前後において重合する冷媒流路部分(矢印b、h部分および矢印d、f部分)では冷媒流れ方向が一致している。
【0040】
これにより、蒸発器9の空気流れ方向Aの前後において重合する冷媒流路部分では、液相冷媒の分布の偏りを相殺して、蒸発器9の吹出空気温度のバラツキを抑制している。
【0041】
ところで、本発明者らの実験検討によると、圧縮機11の高回転時や膨張弁14の開度が大きくてサイクル内循環冷媒流量が大きい場合には、蒸発器9の上記した冷媒流路構成によって蒸発器9の吹出空気温度のバラツキを十分小さい範囲に低減できる。
【0042】
しかし、圧縮機11の低回転時や膨張弁14の小開度時のようにサイクル内循環冷媒流量が減少する場合等には、蒸発器9内部の冷媒流路における冷媒流速の低下、液相冷媒と気相冷媒の密度差等に起因して、蒸発器9内冷媒流路での液相冷媒と気相冷媒の偏在が顕著となることが分かった。
【0043】
そして、気相冷媒のみが存在する部位では顕熱分のみの吸熱となり、蒸発潜熱を吸熱できないので、気相冷媒部位の蒸発器吹出空気温度が液相冷媒の集中部位に比較して大幅に高い温度となって、蒸発器吹出空気温度のバラツキが増大する。
【0044】
本発明者らの実験検討によると、蒸発器9の熱交換コア部において、冷媒入口9bから左側面部流路9nを通過した直後の冷媒が流れる、冷媒入口側領域▲1▼付近が最も低温側部位となり、そして、風下側の入口側冷媒流路部9kのうち、最も冷媒出口側領域▲2▼付近が最も高温側部位となることが分かった。
【0045】
そこで、本実施形態においては、蒸発器9の熱交換コア部の空気吹出側(風下側)のうち、最も低温側領域▲1▼に第1温度センサ41aを配置し、この第1温度センサ41aにより最も低温側領域▲1▼の蒸発器吹出温度Te1を検出するようにしてある。
【0046】
また、蒸発器9の熱交換コア部の空気吹出側(風下側)のうち、最も高温側領域▲2▼に第2温度センサ41bを配置し、この第2温度センサ41bにより最も高温側領域▲2▼の蒸発器吹出温度Te2を検出するようにしてある。
【0047】
次に、図3により本実施形態の電気制御部の概要を説明すると、空調制御装置40はCPU、ROMおよびRAM等を含んで構成される周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されるもので、ROM内に空調制御のための制御プログラムを記憶しており、その制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。空調制御装置40の入力側にはセンサ群41からのセンサ検出信号、空調パネル42からの操作信号が入力される。
【0048】
センサ群41には、上記した第1、第2蒸発器温度センサ41a、41bが備えられている。この両温度センサ41a、41bにより検出される蒸発器吹出空気温度Te1、Te2に応じて電磁クラッチ11aの通電を断続制御し、これにより、圧縮機11の作動を断続して蒸発器9の冷却能力を制御するようになっている。
【0049】
この第1、第2蒸発器温度センサ41a、41bの他に、外気温Tam、内気温Tr、日射量Ts、温水温度Tw等を検出する各種のセンサ41c〜41f等がセンサ群41に備えられている。
【0050】
空調パネル42は、車室内の運転席前方の計器盤(図示せず)付近に配置されるものであって、乗員により操作される以下の操作スイッチ42a〜42eを有している。温度設定スイッチ42aは車室内の設定温度Tsetの信号を出すものであり、内外気切替スイッチ42bは内外気切替ドア6による内気モードと外気モードをマニュアル設定する信号を出すものである。
【0051】
吹出モードスイッチ42cは吹出モードとして周知のフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、およびデフロスタモードをマニュアル設定するための信号を出すものである。風量切替スイッチ42dは送風機8のオンオフおよび送風機8の風量切替をマニュアル設定するための信号を出すものであり、エアコンスイッチ42eは電磁クラッチ11aの通電のオンオフ信号を出して圧縮機11の作動を断続するものである。
【0052】
空調制御装置40の出力側には、圧縮機11の電磁クラッチ11a、送風機8の駆動用モータ8b、および各機器の電気駆動手段をなすサーボモータ7、18、25等が接続され、これらの機器の作動が空調制御装置40の出力信号により制御される。
【0053】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。最初に、車両用空調装置としての作動の概要を説明すると、空調パネル42の風量切替スイッチ42dを投入して送風機8を作動させることにより、空調ユニット1のケース2内の通風路に空気が送風される。
【0054】
そして、空調パネル42の圧縮機作動スイッチであるエアコンスイッチ42eを投入すると、空調制御装置40により電磁クラッチ11aに通電されて電磁クラッチ11aが接続状態となり、圧縮機11が車両エンジンにより回転駆動される。これにより、冷凍サイクル10において蒸発器9に冷媒が循環するので、送風空気を蒸発器9により冷却、除湿して、車室内へ空調風を吹き出すことができる。
【0055】
次に、圧縮機11の作動の断続制御を図4により説明すると、図4は空調制御装置40により実行される圧縮機制御ルーチンであり、エアコンスイッチ42eの投入によりスタートし、先ず、ステップS100にてフラグF=0に初期化する。次に、ステップS110にてセンサ群41の検出信号、空調パネル42からの操作信号等を読み込む。
【0056】
次に、ステップS120にてフラグF=0であるか判定する。フラグFは初期化により0になっているので、ステップS130に進み、低温側領域▲1▼の蒸発器吹出温度Te1がオフ側目標温度TEOa以下に低下したか判定する。ここで、オフ側目標温度TEOaは後述の図5に示すように氷点下の温度、例えば、−2℃である。エアコンスイッチ42eの投入直後は蒸発器吹出温度Te1がオフ側目標温度TEOaより高いので、ステップS130の判定がNOとなり、ステップS140に進む。
【0057】
ステップS140では、電磁クラッチ11aに通電して電磁クラッチ11aをON状態、すなわち、圧縮機11を作動状態にするとともに、フラグF=0にする。従って、低温側領域▲1▼の蒸発器吹出温度Te1がオフ側目標温度TEOaより高い間は圧縮機11の作動状態が継続されて、蒸発器吹出温度が次第に低下していく。
【0058】
そして、低温側領域▲1▼の蒸発器吹出温度Te1がオフ側目標温度TEOa以下に低下すると、ステップS130の判定がYESとなり、ステップS150に進み、電磁クラッチ11aへの通電を遮断して電磁クラッチ11aをOFF状態、すなわち、圧縮機11を停止状態にするとともに、フラグF=1にする。
【0059】
このようにフラグFが1になると、ステップS120からステップS160に進み、高温側領域▲2▼の蒸発器吹出温度Te2がオン側目標温度TEOb以下であるか判定する。ここで、オン側目標温度TEObはオフ側目標温度TEOaより所定値α高い温度、すなわち、TEOb=TEOa+αであり、具体的には、後述の図5に示すように9℃である。
【0060】
従って、圧縮機11の停止後もしばらくの間、蒸発器9の熱容量により高温側領域▲2▼の蒸発器吹出温度Te2がオン側目標温度TEObより低い状態に維持され、ステップS160の判定はYESとなる。このため、ステップS170にて電磁クラッチ11aをOFF状態にして圧縮機11を停止状態にするとともに、フラグF=1にする。
【0061】
そして、圧縮機停止状態の時間経過により高温側領域▲2▼の蒸発器吹出温度Te2がオン側目標温度TEObより高くなると、ステップS160の判定がNOとなり、ステップS180にて電磁クラッチ11aを再びON状態にして圧縮機11を作動状態に復帰させるとともに、フラグF=0にする。
【0062】
以下、低温側領域▲1▼のTe1がTEOa以下に低下すると圧縮機11を停止状態とし、これに対し、高温側領域▲2▼のTe2がTEObより高くなると圧縮機11を作動状態とする、圧縮機作動断続制御を繰り返す。
【0063】
図5は上記した本実施形態による圧縮機作動の断続制御を示すものであり、横軸は圧縮機11の起動後の経過時間であり、縦軸は蒸発器吹出温度および電磁クラッチ11a(圧縮機11)のON、OFFを示す。
【0064】
Te1がTEOa以下に低下すると圧縮機11を停止状態とし、これ以後、Te1、Te2がともに上昇し、そして、Te2がTEObより高くなると、圧縮機11を作動状態とするため、Te1、Te2がともに下降する。これ以後、このような温度変化を繰り返す。なお、図5において、Te3は蒸発器吹出側の代表的な部位(最低温度部位よりも若干高温側の部位)における蒸発器吹出温度の変化である。
【0065】
本実施形態によると、蒸発器吹出側の最低温度部位の吹出空気温度Te1を第1温度センサ41aにより検出し、また、蒸発器吹出側の最高温度部位の吹出空気温度Te2を第2温度センサ41bにより検出し、最低温度部位の吹出空気温度Te1が所定のオフ側目標温度TEOa以下に低下すると、圧縮機11を停止状態とするから、常に最低温度部位の吹出空気温度Te1を判定して圧縮機11を停止させ、蒸発器吹出温度が過度に低下することを防止できるから、蒸発器9のフロストを確実に防止できる。
【0066】
なお、本実施形態ではオフ側目標温度TEOaを氷点下の−2℃に設定しているが、蒸発器吹出温度が氷点下の温度となる部位はごく一部のみであり、代表的な蒸発器吹出温度Te3は図5の実線にて示すように+2℃程度までしか低下しないから、蒸発器9のフロスト発生の心配はない。むしろ、代表的な蒸発器吹出温度Te3の下限値を0℃に接近させることにより、蒸発器9の冷却除湿能力を向上させることができる。
【0067】
そして、最低温度部位の吹出空気温度Te1の低下により圧縮機11が停止した後、圧縮機11が作動状態に復帰するタイミングは、最低温度部位の吹出空気温度Te1でなく、最高温度部位の吹出空気温度Te2の上昇に基づいて決定するから、最高温度部位の吹出空気温度Te2を必ずオン側目標温度TEOb以下に抑制できる。
【0068】
従って、冷凍サイクル運転条件が変動しても、最高温度部位の吹出空気温度Te2を常にオン側目標温度TEOb以下に抑制できるので、最高温度部位の吹出空気温度Te2が過度に上昇して冷え不足が生じることを防止できる。
【0069】
しかるに、従来技術のように、蒸発器吹出側の特定の1箇所のみに温度センサを配置し、その検出温度に基づいて圧縮機作動を断続制御するものでは、温度センサの検出温度が冷凍サイクルのある運転条件にて蒸発器全体の冷却度合を適切に代表することができても、別の冷凍サイクル運転条件では温度センサの検出温度が蒸発器全体の冷却度合を適切に代表できないという事態が発生する。
【0070】
従って、冷凍サイクルの冷媒流量が高流量であるときに、温度センサの検出温度が蒸発器全体の冷却度合を適切に代表していても、低流量条件では温度センサの検出温度が蒸発器全体の冷却度合を適切に代表できないという事態が発生する。
【0071】
図6は従来技術による圧縮機作動の断続制御の具体例を示すものであり、図6の横軸、縦軸は図5と同じである。図6において、実線Te3は温度センサの検出温度であり、1点鎖線Te1は蒸発器吹出側の最低温度部位の吹出温度であり、破線Te2は蒸発器吹出側の最高温度部位の吹出温度である。
【0072】
図6の従来技術による制御例では、センサ検出温度Te3がオフ側目標温度TEOa(例えば、2℃)以下に低下すると、圧縮機11を停止状態とし、そして、センサ検出温度Te3がオン側目標温度TEOb(例えば、5℃)に上昇すると、圧縮機11を作動状態にする。
【0073】
図6は温度センサの検出温度Te3が蒸発器全体の冷却度合を適切に代表できない場合であり、最低温度部位の吹出温度Te1が−7℃という低温まで低下してしまうので、このような低温部位の発生が契機となって蒸発器9のフロストが発生する。
【0074】
一方、蒸発器吹出側の最高温度部位の吹出温度Teが圧縮機11の停止時に11℃という高温レベルまで上昇してしまい、この最高温度部位付近の冷風が主に吹き出される車室内領域では冷え不足の問題が生じる。
【0075】
(他の実施形態)
なお、上記の一実施形態では、オフ側目標温度TEOaおよびオン側目標温度TEObをともに予め設定された固定値としているが、オフ側目標温度TEOaおよびオン側目標温度TEObを空調装置の作動条件に応じて可変するようにしてもよい。
【0076】
具体的には、空調ユニット1から車室内へ吹き出す空気の目標吹出温度TAOを、温度設定スイッチ42aにより設定した設定温度Tset、および空調熱負荷を表す外気温Tam、内気温Tr、日射量Ts等に基づいて算出し、現実の吹出空気温度がこの目標吹出温度TAOとなるようにエアミックスドア17等の温度調節手段を自動制御する車両用空調装置において、目標吹出温度TAOの上昇に応じてオフ側目標温度TEOaおよびオン側目標温度TEObを高温側へ補正するようにしてもよい。
【0077】
また、春秋の中間期においては、蒸発器9の冷却除湿能力を低下させても空調機能上支障がないので、外気温が中間温度域にあることを判定したときにオフ側目標温度TEOaおよびオン側目標温度TEObを高温側へ補正するようにしてもよい。
【0078】
このようにオフ側目標温度TEOaおよびオン側目標温度TEObを高温側へ補正すると、圧縮機11の稼働率が低下して圧縮機11の駆動動力を低減できる。
【0079】
また、上記の一実施形態では、蒸発器9の空気吹出側において低温側領域▲1▼および高温側領域▲2▼にそれぞれ吹出空気温度Te1、Te2を検出する吹出温度センサ41a、41bを配置し、この吹出温度センサ41a、41bを第1、第2蒸発器温度検出手段として用いているが、第1、第2蒸発器温度検出手段として、空気吹出側のフィン表面温度等を検出する温度検出手段を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用空調装置の概略全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いる蒸発器の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態における電気制御部の概略ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による圧縮機断続制御のフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態による圧縮機断続制御の作動特性図である。
【図6】従来技術による圧縮機断続制御の作動特性図である。
【符号の説明】
1…空調ユニット、8…送風機、9…蒸発器、10…冷凍サイクル、
11…圧縮機、11a…電磁クラッチ(クラッチ手段)、
40…空調用制御装置(制御手段)、
41a…蒸発器低温側領域の温度センサ(第1蒸発器温度検出手段)、
41b…蒸発器高温側領域の温度センサ(第2蒸発器温度検出手段)。
Claims (3)
- 車両エンジンによりクラッチ手段(11a)を介して駆動される圧縮機(11)と、
前記圧縮機(11)の吸入側に接続され、低圧冷媒を蒸発させる蒸発器(9)と、
前記蒸発器(9)の低温側領域に配置された第1蒸発器温度検出手段(41a)と、
前記蒸発器(9)の高温側領域に配置された第2蒸発器温度検出手段(41b)と、
前記第1蒸発器温度検出手段(41a)および前記第2蒸発器温度検出手段(41b)の検出信号が入力され、前記クラッチ手段(11a)を断続制御して前記圧縮機(11)の作動を断続する制御手段(40)とを備え、
前記第1蒸発器温度検出手段(41a)により検出される低温側領域の蒸発器温度(Te1)が所定のオフ側目標温度(TEOa)まで低下すると、前記クラッチ手段(11a)を遮断状態にして前記圧縮機(11)を停止し、
前記第2蒸発器温度検出手段(41b)により検出される高温側領域の蒸発器温度(Te2)が前記オフ側目標温度(TEOa)よりも所定温度だけ高いオン側目標温度(TEOb)まで上昇すると、前記クラッチ手段(11a)を接続状態にして前記圧縮機(11)を作動状態に復帰させることを特徴とする車両用冷凍サイクル装置。 - 前記第1蒸発器温度検出手段(41a)は、前記蒸発器(9)の空気吹出側のうち、蒸発器温度が最低温となる部位に配置され、
前記第2蒸発器温度検出手段(41b)は、前記蒸発器(9)の空気吹出側のうち、蒸発器温度が最高温となる部位に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用冷凍サイクル装置。 - 前記オフ側目標温度(TEOa)は氷点下の所定温度であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用冷凍サイクル装置。
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- 2003-03-10 JP JP2003063397A patent/JP2004268769A/ja not_active Withdrawn
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