以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る蒸発器10の構成について説明する。蒸発器10は、空調装置用の冷凍サイクル(不図示)の一部として用いられるものである。従来の蒸発器と同様に、蒸発器10は、外部を流れる空気との熱交換により、内部で冷媒を蒸発させるための装置として構成されている。
蒸発器10は、第1蒸発部100と、第2蒸発部200と、接続タンク30とを備えている。第1蒸発部100と第2蒸発部200は、互いに略同一な構成の熱交換器であって、矢印Xで示される空気の流れ方向に沿って並ぶように配置されている。接続タンク30は、第1蒸発部100及び第2蒸発部200の下方側において、これらを接続する冷媒流路を形成している部分である。後に詳しく説明するように、蒸発器10の外部から供給された冷媒は、第1蒸発部100、接続タンク30、及び第2蒸発部200を順に通った後、蒸発器10の外部へと排出される。
第1蒸発部100は、熱交換コア部110と、上部タンク120と、下部タンク130とを有している。
熱交換コア部110は、冷媒が流れる複数本のチューブ115を、それぞれの間にフィン116を介して積層することにより構成された部分である。チューブ115は、内部を冷媒が通るよう筒状に形成された金属製の配管である。冷媒の流れ方向に対して垂直な(つまり水平な)断面におけるチューブ115の形状は扁平形状となっており、その長手方向は空気の流れ方向(矢印X)に沿っている。
チューブ115は上下方向に沿って伸びる配管となっている。チューブ115の上端は、後述の上部タンク120に接続されている。また、チューブ115の下端は、後述の下部タンク130に接続されている。これにより、上部タンク120の内部空間と、下部タンク130の内部空間とが、複数のチューブ115によって連通されている。
フィン116は、波状に折り曲げられた金属板であって、隣り合うチューブ115の間に挿入されている。波状となっているフィン116のそれぞれの頂部は、チューブ115の側面にろう付けされている。冷凍サイクルの動作中においては、通過する空気の熱がチューブ115に直接伝達される他、フィン116を介してもチューブ115に伝達される。つまり、空気との接触面積がフィン116によって大きくなっており、これにより空気と冷媒との熱交換が効率的に行われる。
積層された全てのチューブ115及びフィン116が配置された部分、すなわち熱交換コア部110は、上記のように空気と冷媒との熱交換が行われる部分となっている。空気の流れ方向に沿って見た場合において、熱交換コア部110の左右両側となる位置には、平坦な金属板であるサイドプレート117が設けられている。サイドプレート117は、熱交換コア部110を左右両側から挟み込むことにより、熱交換コア部110を補強してその形状を維持するためのものである。
上部タンク120は、冷媒を内部に貯えるための円筒形状の容器である。上部タンク120は、その中心軸を水平方向に略沿わせた状態で、熱交換コア部110の上方側に配置されている。既に述べたように、上部タンク120には、それぞれのチューブ115の上端が接続されている。上部タンク120の長手方向は、チューブ115の積層方向と一致している。
上部タンク120の長手方向における一端側(図1では左側)には、入口部121が形成されている。入口部121は、冷凍サイクルの絞り弁(不図示)から伸びる配管が接続される部分であって、冷凍サイクルを循環する冷媒が蒸発器10に供給される際の入口として機能する部分である。冷凍サイクルの動作中においては、入口部121から上部タンク120の内部に冷媒が供給される。このとき、冷媒は低温となっており、そのほぼ全体が液相の状態となっている。
冷媒は、上部タンク120からそれぞれのチューブ115に分配され、チューブ115の内部を下部タンク130側に向かって流れることとなる。このとき、既に述べたように空気と冷媒との熱交換が行われる。当該熱交換により、冷媒は空気によって加熱され、その温度を上昇させる。その際、一部の冷媒がチューブ115の内部において液相から気相へと変化することがある。気相に変化する冷媒の量は、蒸発器10に供給される冷媒の流量(冷凍サイクルに設けられた圧縮機の回転数といってもよい)によって変化する。
下部タンク130は、上部タンク120と同様に、冷媒を内部に貯えるための円筒形状の容器である。下部タンク130は、その中心軸を上部タンク120の中心軸と平行とした状態で、熱交換コア部110の下方側に配置されている。既に述べたように、下部タンク130には、それぞれのチューブ115の下端が接続されている。
下部タンク130には、それぞれのチューブ115を下方側に向かって流れた冷媒が流入する。その後、冷媒は接続タンク30によって形成された流路(接続流路)を通り、第2蒸発部200へと供給される。接続タンク30の内部の構成については、後に説明する。
第2蒸発部200は、上記のような第1蒸発部100と概ね同一に構成された熱交換器である。第2蒸発部200は、空気の流れ方向において第1蒸発部100よりも上流側となる位置に配置されている。
第2蒸発部200は、熱交換コア部210と、下部タンク230と、上部タンク220とを有している。
熱交換コア部210は、冷媒が流れる複数本のチューブ215を、それぞれの間にフィン216を介して積層することにより構成された部分である。熱交換コア部210の構成は、既に説明した熱交換コア部110の構成と同一であるから、その具体的な説明を省略する。
熱交換コア部210は、熱交換コア部110と同様に空気と冷媒との熱交換が行われる部分となっている。熱交換コア部210は、空気の流れ方向に沿って見た場合におけるその外形が、熱交換コア部110の外形と完全に重なるような位置に配置されている。
空気の流れ方向に沿って見た場合において、熱交換コア部210の左右両側となる位置には、平坦な金属板であるサイドプレート217が設けられている。サイドプレート217は、熱交換コア部210を左右両側から挟み込むことにより、熱交換コア部210を補強してその形状を維持するためのものである。
下部タンク230は、冷媒を内部に貯えるための円筒形状の容器である。下部タンク230は、その中心軸を水平方向に略沿わせた状態で、熱交換コア部210の下方側に配置されている。下部タンク230には、それぞれのチューブ215の下端が接続されている。下部タンク230の長手方向は、チューブ215の積層方向と一致している。
接続タンク30を介して第1蒸発部100から第2蒸発部200へと供給される冷媒は、先ず下部タンク230の内部に流入する。その後、冷媒は下部タンク230からそれぞれのチューブ215に分配され、チューブ215の内部を上部タンク220側に向かって流れることとなる。
このとき、熱交換コア部110の場合と同様に、チューブ215を流れる冷媒と空気との熱交換が行われる。当該熱交換により、冷媒は空気によって加熱され、その温度を上昇させる。その際、一部又は全ての冷媒がチューブ215の内部において液相から気相へと変化する。気相に変化する冷媒の量は、蒸発器10に供給される冷媒の流量によって変化する。
上部タンク220は、下部タンク230と同様に、冷媒を内部に貯えるための円筒形状の容器である。上部タンク220は、その中心軸を下部タンク230の中心軸と平行とした状態で、熱交換コア部210の上方側に配置されている。上部タンク220には、それぞれのチューブ215の上端が接続されている。
上部タンク220の長手方向における一端側(図1では左側)には、出口部221が形成されている。出口部221は、冷凍サイクルの圧縮機へと延びる配管が接続される部分であって、冷凍サイクルを循環する冷媒が蒸発器10から排出される際の出口として機能する部分である。冷凍サイクルの動作中においては、蒸発器10において熱交換が行われた後の冷媒が、出口部221から圧縮機に向けて排出される。このとき、排出される冷媒の一部又は全部が気相の状態となっている。
図2を参照しながら、蒸発器10の具体的な内部構成について説明する。下部タンク130の内部のうち、下部タンク130の長手方向における中央となる位置には、円板状のセパレータ135が設けられている。下部タンク130の内部空間は、このセパレータ135によって2つの空間(第1空間131、第2空間132)に分けられている。第1空間131は図2における左側の空間であり、第2空間132は図2における右側の空間である。つまり、第1空間131の位置は、第2空間132の位置よりも入口部121寄りとなっている。第1空間131及び第2空間132の一方から他方へと冷媒が直接移動することは、セパレータ135によりできなくなっている。
下部タンク130には、下部タンク130から接続タンク30に向かう冷媒の出口となる開口133及び開口134が形成されている。開口133は第1空間131側に形成されており、開口134は第2空間132側に形成されている。
熱交換コア部110を構成する複数のチューブ115は、下部タンク130の第1空間131に繋がる一群のチューブと、第2空間132に繋がる一群のチューブとに分類することができる。以下の説明においては、熱交換コア部110のうち第1空間131に繋がるチューブ群で構成された部分を「第1コア部111」とも表記する。また、熱交換コア部110のうち第2空間132に繋がるチューブ群で構成された部分を「第2コア部112」とも表記する。第1コア部111の位置は、第2コア部112よりも入口部121寄りとなる位置となっている。
下部タンク230の内部のうち、下部タンク230の長手方向における中央となる位置には、円板状のセパレータ235が設けられている。下部タンク230の内部空間は、このセパレータ235によって2つの空間(第3空間233、第4空間234)に分けられている。第3空間233は図2における右側の空間であり、第4空間234は図2における左側の空間である。つまり、第4空間234の位置は、第3空間233の位置よりも出口部221寄りとなっている。第3空間233及び第4空間234の一方から他方へと冷媒が直接移動することは、セパレータ235によりできなくなっている。
下部タンク230には、接続タンク30から下部タンク230に向かう冷媒の入口となる開口231及び開口232が形成されている。開口231は第3空間233側に形成されており、開口232は第4空間234側に形成されている。
熱交換コア部210を構成する複数のチューブ215は、下部タンク230の第3空間233に繋がる一群のチューブと、第4空間234に繋がる一群のチューブとに分類することができる。以下の説明においては、熱交換コア部210のうち第3空間233に繋がるチューブ群で構成された部分を「第3コア部213」とも表記する。また、熱交換コア部210のうち第4空間234に繋がるチューブ群で構成された部分を「第4コア部214」とも表記する。第3コア部213は、空気の流れ方向に沿って第2コア部112の全体と重なる位置に配置されている。第4コア部214は、空気の流れ方向に沿って第1コア部111の全体と重なる位置に配置されている。
下部タンク230の内部には、円板状の絞りプレート236が設けられている。第3空間233は、この絞りプレート236によって更に2つの空間(上流側空間233a、下流側空間233b)に分けられている。上流側空間233aは図2における右側の空間であり、下流側空間233bは図2における左側、つまりセパレータ235側の空間である。尚、絞りプレート236は、セパレータ235と開口231との間となる位置に設けられている。つまり、開口231は上流側空間233a側に形成されている。
図3に示されるように、絞りプレート236には円形の貫通穴237が形成されている。このため、上流側空間233aと下流側空間233bとは貫通穴237によって連通されており、両者の間で冷媒が行き来することが可能となっている。貫通穴237は、その下端部が絞りプレート236の下端部よりも高い位置となるように形成されている。図3では、絞りプレート236の下端部から貫通穴237の下端部までの高さが符号「g」で示されている。
図2を再び参照しながら、接続タンク30の構成について説明する。接続タンク30は、下部タンク130や下部タンク230と同様な円筒形状の容器である。接続タンク30は、その中心軸を下部タンク130等の中心軸と平行とした状態で、下部タンク130と下部タンク230との間となる位置(且つ、これらよりも僅かに下方となる位置)に設けられている。
接続タンク30の内部空間は、下部タンク130から下部タンク230へと向かう冷媒が通る接続流路となっている。接続タンク30の内部空間は、当該空間内に配置された仕切り部材305によって2つの空間(第5空間325、第6空間326)に分けられている。第5空間325及び第6空間326の一方から他方へと冷媒が直接移動することは、仕切り部材305によりできなくなっている。
接続タンク30のうち、第5空間325を区画する壁面の一部には、開口311と開口312とが形成されている。接続タンク30のうち開口311の縁と、下部タンク130のうち開口133の縁とは、互いに重ね合わせられた状態で接合されている。このため、第1空間131と第5空間325とは、開口133及び開口311を介して連通されている。尚、開口133と開口311との接続が、例えば金属製の配管を介して行われることとしてもよい。
同様に、接続タンク30のうち開口312の縁と、下部タンク230のうち開口231の縁とは、互いに重ね合わせられた状態で接合されている。このため、第5空間325と第3空間233(上流側空間233a)とは、開口312及び開口231を介して連通されている。開口312と開口231との接続が、例えば金属製の配管を介して行われることとしてもよい。
以上のような構成により、第1空間131と上流側空間233aとが、接続タンク30の第5空間325を介して連通されている。このため、第1空間131から開口133を通じて排出された冷媒は、開口231を通じて上流側空間233aに流入することとなる。その後、当該冷媒は貫通穴237を通って下流側空間233bにも流入する。つまり、上流側空間233aには接続タンク30を通った冷媒が直接流入する一方で、下流側空間233bには接続タンク30を通った冷媒が直接流入せず、上流側空間233aから貫通穴237を通った冷媒のみが流入するような構成となっている。
接続タンク30のうち、第6空間326を区画する壁面の一部には、開口313と開口314とが形成されている。接続タンク30のうち開口313の縁と、下部タンク130のうち開口134の縁とは、互いに重ね合わせられた状態で接合されている。このため、第2空間132と第6空間326とは、開口134及び開口313を介して連通されている。尚、開口134と開口313との接続が、例えば金属製の配管を介して行われることとしてもよい。
同様に、接続タンク30のうち開口314の縁と、下部タンク230のうち開口232の縁とは、互いに重ね合わせられた状態で接合されている。このため、第6空間326と第4空間234とは、開口314及び開口232を介して連通されている。開口314と開口232との接続が、例えば金属製の配管を介して行われることとしてもよい。
以上のような構成により、第2空間132と第4空間234とが、接続タンク30の第6空間326を介して連通されている。このため、第2空間132から開口134を通じて排出された冷媒は、開口232を通じて第4空間234に流入することとなる。
冷凍サイクルが動作しているときにおける冷媒の流れについて、図4を参照しながら説明する。図4では、冷媒の流れる経路が複数の矢印で示されている。尚、経路が見やすくなるように、接続タンク30や開口133等の図示は省略されている。
入口部121から上部タンク120に流入した冷媒は、その一部が第1コア部111を通って第1空間131に流入する。当該冷媒は、接続タンク30を介して第3空間233に流入した後、第3コア部213を通って上部タンク220に流入し、出口部221から外部へと排出される。
入口部121から上部タンク120に流入した冷媒のうち上記以外のものは、第2コア部112を通って第2空間132に流入する。当該冷媒は、接続タンク30を介して第4空間234に流入した後、第4コア部214を通って上部タンク220に流入する。ここで、第3空間233を通った冷媒の流れに合流し、出口部221から外部へと排出される。
以上のように、接続タンク30によって形成される接続流路は、第1コア部111を流れた冷媒が第3コア部213を流れ、第2コア部112を流れた冷媒が第4コア部214を流れるように、下部タンク130と下部タンク230との間を接続している。
蒸発器10を通過した直後における空気の温度、すなわち空調風の吹き出し温度は、第1コア部111等を液相の状態で流れている冷媒の温度に応じて定まる。このため、吹き出し温度を適切な温度とするには、蒸発器10の内部における液相冷媒の温度を調整する必要がある。
液相冷媒の温度は、冷凍サイクルを循環する冷媒の流量によって調整することができる。例えば、圧縮機の回転数を増加させて冷媒の流量を大きくすれば、蒸発器10の内部における液相冷媒の温度が低下する。逆に、圧縮機の回転数を低下させて冷媒の流量を小さくすれば、蒸発器10の内部における液相冷媒の温度が上昇する。
尚、空気が蒸発器10を通過して冷却される際には、当該空気に含まれる水分の一部が熱交換コア部110や熱交換コア部210の表面において結露する。これにより、空気の除湿が行われる。このため、蒸発器を循環する冷媒の温度が上記のように調節されることにより、蒸発器10の除湿性能が維持されている、ということができる。
本実施形態では、液相冷媒の温度を測定するための温度センサ40が設けられている。これにより、液相冷媒の温度をフィードバックしながら圧縮機の回転数を制御することが可能となっている。このような制御、すなわち、温度センサ40の測定値に基づいて圧縮機の回転数を調整する制御は、冷凍サイクルに設けられた不図示の制御装置によって行われる。尚、これまでの説明に用いた図1乃至図4においては、温度センサ40の図示が省略されている。図3及び図4に符号「MP1」で示されているのは、温度センサ40によって温度測定が行われる測定点である。以下、当該測定点のことを「測定点MP1」と表記する。測定点MP1は、第3コア部213に含まれる複数のチューブ215のうち、特定のチューブ215の表面上の点として設定されている。
温度センサ40の構成について、図5を参照しながら説明する。温度センサ40は、サーミスタ41と、ケーシング42と、一対の信号線43とを有している。サーミスタ41は、所謂測温抵抗体であり、その温度に応じて抵抗値を変化させる素子である。
ケーシング42は、金属によって形成された細長い容器である。ケーシング42の外径は、第2コア部112におけるチューブ115間の隙間、及び第3コア部213におけるチューブ215間の隙間のいずれよりも、僅かに大きい程度となっている。ケーシング42の先端部分には、先に説明したサーミスタ41が内部に固定されている。このため、ケーシング42のうちサーミスタ41が固定されている先端部分と、その内部のサーミスタ41とを合わせたものは、接触した物体の表面温度を検知する検知部として機能する。
信号線43は、サーミスタ41に電圧を印加して電流を流すための導線である。このとき、サーミスタ41及び信号線43に流れる電流に基づいて、上記検知部が接触している物体の表面温度を測定することが可能となっている。このため、信号線43は、上記表面温度に基づく電気信号(以下、「冷媒温度信号」ともいう)を外部に出力するためのもの、ということもできる。それぞれの信号線43は、その一端がサーミスタ41に接続されており、ケーシング42の内部を通り外側に向かって伸びている。
図6に示されるように、温度センサ40は、サーミスタ41が設けられている先端部分を風上側に向けた状態で、第2コア部112側から第3コア部213側に向けて水平に挿入されている。温度センサ40が取り付けられた状態においては、ケーシング42のうちサーミスタ41が固定されている部分(検知部)が、第3コア部213における2本のチューブ215間に挟まれており、且つ測定点MP1に当接した状態となっている。
また、ケーシング42のうち検知部よりも風下側の部分は、第2コア部112における2本のチューブ115間に挟まれており、且つ当該チューブ115に当接した状態となっている。以下では、チューブ115の表面のうちケーシング42に当接している部分に含まれる任意の点のことを、測定点MP2とも表記する。
一対の信号線43は、風下側から、第2コア部112におけるチューブ115の間の隙間を通ってサーミスタ41(検知部)に繋がっている。このような構成においては、温度センサ40は蒸発器10のうち風上側(図6では右側)に向けては露出しておらず、風下側(図6では左側)に向けてのみその一部が露出している。例えば、外気と共に導入された酸性成分(酸性雨等)に触れて温度センサ40が腐食してしまうようなことが防止されるので、温度センサ40を長期間に亘り使用することが可能となっている。
温度センサ40のうち、サーミスタ41が設けられた部分である検知部は、接触した物体の表面温度を検知する部分である。このような検知部が測定点MP1に当接しているのであるから、信号線43から出力される冷媒温度信号は、概ね測定点MP1の表面温度を示す信号となっている。測定点MP1の表面温度のことを、以下では「主温度」とも称する。
上記のように、温度センサ40の一部は測定点MP2に当接している。このため、測定点MP2の表面温度と、測定点MP1の表面温度とが異なっているときには、測定点MP1と測定点MP2との間における伝熱が、温度センサ40(ケーシング42)を介して行われることとなる。測定点MP2の表面温度のことを、以下では「副温度」とも称する。副温度は、第2コア部112を流れている冷媒の温度にほぼ等しい。
上記のような伝熱の影響を受けるので、サーミスタ41により実際に測定される温度は正確には主温度に一致しない。例えば、主温度よりも副温度の方が高いときには、冷媒温度信号で示される温度は主温度に概ね一致するのであるが、主温度よりも僅かに高く、且つ副温度よりも低い温度となる。つまり、主温度を示す信号である冷媒温度信号は、副温度に基づいて補正された信号として信号線43から出力される。このような補正が行われることの利点については後述する。
更に具体的な温度センサ40の取り付け位置、すなわち測定点MP1の詳細な位置について、図7を参照しながら説明する。図7は、第2蒸発部200を、空気の流れ方向における下流側から見て模式的に描いた図である。測定点MP1は、第3コア部213を構成する複数のチューブ215のうち、下流側空間233bに接続されたチューブ215の表面上に設定されている。つまり、絞りプレート236の位置(図7では点線DLで示される位置)よりも出口部221側に配置されたチューブ215の表面温度を測定し得るような位置に、温度センサ40の検知部が配置されている。また、この測定点MP1は、チューブ215の上下方向における中央よりも下方側、すなわち下部タンク230寄りとなる部分に設定されている。
測定点MP1が上記のような位置に設定されている理由について説明する。図8には、冷凍サイクルの動作中において液相冷媒が存在する領域が斜線で示されている。図8(A)に示されるのは、圧縮機の回転数が比較的大きく、蒸発器10の内部における冷媒の流量及び圧力が大きいときにおける液相冷媒の存在範囲である。同図に示されるように、圧縮機の回転数が大きいときには、第1コア部111、第2コア部112、第3コア部213、第4コア部214のいずれにおいても、そのほぼ全体を液相冷媒が流れる状態となっている。このため、第3コア部213のうち測定点MP1の箇所においても当然に液相冷媒が流れている。また、第2コア部112のうち測定点MP2の箇所においても液相冷媒が流れている。
図8(B)に示されるのは、圧縮機の回転数が図8(A)の場合よりも小さくなっているときにおける液相冷媒の存在範囲である。図8(B)の例でも、第1コア部111及び第3コア部213においては、そのほぼ全体を液相冷媒が流れる状態となっている。一方、第2コア部112の一部においては液相冷媒が流れておらず、気相冷媒が流れる状態となっている。それに伴い、第4コア部214の一部においても気相冷媒が流れる状態となっている。これは、圧縮機の回転数が減少したことに伴って冷媒の温度が上昇し、冷凍サイクル全体における液相冷媒の比率が低下した結果として生じる現象である。ただし、この場合であっても、第3コア部213のうち測定点P1の箇所では液相冷媒が流れている。また、第2コア部112のうち測定点MP2の箇所においても液相冷媒が流れている。
図8(C)に示されるのは、圧縮機の回転数が図8(B)の場合よりも更に小さくなっているときにおける液相冷媒の存在範囲である。このときにおける圧縮機の回転数は、冷凍サイクルの通常動作中において変化し得る回転数の範囲のうち、最も小さな回転数となっている。図8(C)の例では、第2コア部112及び第4コア部214では液相冷媒が流れておらず、ほぼ全ての冷媒が気相の状態で流れている。また、第1コア部111の一部においても液相冷媒が流れておらず、気相冷媒が流れる状態となっている。それに伴い、第3コア部213の一部においても気相冷媒が流れる状態となっている。
第3コア部213では、第3空間233に一旦貯えられた冷媒が上方に向かって流れる。このため、第3コア部213のうち少なくとも高さ方向の中央よりも下方側の部分、すなわち測定点MP1を含む部分では、図8(C)の例においても液相冷媒が流れる状態となっている。一方、第2コア部112のうち測定点MP2の箇所においては液相冷媒が流れておらず、気相冷媒が流れる状態となっている。
仮に、測定点MP1の箇所を気相冷媒が流れてしまうと、温度センサ40によって測定される主温度は、他の部分を流れている液相冷媒の温度よりも高くなる。その場合、冷媒の温度を下げるために、圧縮機の回転数を増加させる制御が行われることとなるので、冷媒の温度は更に低くなる。つまり、循環している液相冷媒の温度が適温であるにも拘らず、冷媒の温度を更に下げるような制御が行われてしまう。その結果、冷媒の温度が低下し過ぎてしまい、チューブ115、215の表面に付着した凝縮水が凍結する現象、所謂フロストが生じてしまう。
本実施形態に係る蒸発器10においては、第3コア部213の下方側部分に設定された測定点MP1、の温度を主温度として測定し得るような位置に温度センサ40が設けられている。冷媒の流量が変化したとしても、当該位置では気相冷媒が流れることが無い。これにより、液相冷媒の温度が常に正確に測定されるので、フロストの発生が防止される。
尚、本実施形態では、温度センサ40による液相冷媒の温度測定が、チューブ215の壁面を介して行われる。このような態様に替えて、チューブ215にろう付けされたフィン216の表面温度を温度センサ40によって測定し、測定された温度を液相冷媒の温度として用いるような態様であってもよい。同様に、当該部分を通過する空気の温度を温度センサ40によって測定し、測定された温度を液相冷媒の温度として用いるような態様であってもよい。
更に、第3コア部213を流れる液相冷媒の温度が、上記のようにチューブ215の壁面等を介して間接的に測定されるのではなく、直接的に測定されるような態様であってもよい。すなわち、温度センサ40が液相冷媒に直接触れるような構成としてもよい。
冷凍サイクルの動作が停止し、冷媒の循環が止まった直後においては、蒸発器10の内部に存在していた液相冷媒は蒸発し、その殆どが気相になる。しかしながら、一部の液相冷媒は、液相の状態のままで蒸発器10の内部に残留する。冷凍サイクルの再始動時の制御を適切に行うこと等に鑑みれば、冷凍サイクルの動作が停止した後においても、上記のように残留している液相冷媒の温度を計測し続けることが望ましい。
図9は、冷凍サイクルの動作が停止した直後における第2蒸発部200を、空気の流れ方向における下流側から見て模式的に描いた図である。本実施形態では、下部タンク230の内部に、貫通穴237が形成された絞りプレート236が設けられている。このため、下流側空間233bから上流側空間233aに向かうような液相冷媒の流れが、絞りプレート236によって抑制される。従って、下流側空間233b及びこれに繋がるチューブ215の内部は、上記のような液相冷媒の残留が最も生じやすい部分となっている。特に、貫通穴237の下端部の位置が、絞りプレート236の下端部よりも高い位置となっているので、下流側空間233bの内部には液相冷媒が残留しやすい。図9では、液相冷媒が残留している範囲が斜線で示されている。
本実施形態では、測定点MP1の位置が、絞りプレート236の位置(図7では点線DLで示される位置)よりも出口部221側に配置されたチューブ215の表面温度を測定し得るような位置となるように設定されている。すなわち、上記のような液相冷媒の残留が最も生じやすい部分において、温度センサ40による温度測定が行われる。このため、冷凍サイクルの動作が停止した後においても、残留している液相冷媒の温度を計測し続けることが可能となっている。
尚、絞りプレート236は、冷凍サイクルの動作中においても効果を発揮する。冷凍サイクルの動作中においては、上部タンク220に貯えられた冷媒が外部の圧縮機によって引き込まれる。この影響により、第3コア部213を上方に向かって流れる冷媒の流量は、第4コア部214に近い部分(図9では左側)に配置されたチューブ215において大きくなり、他の部分においては小さくなる傾向がある。その結果、第4コア部214に近いチューブ215においては、冷媒が蒸発することなく(液相のままで)上部タンク220に到達してしまい、空気の冷却が効率的に行われなくなる可能性がある。
しかしながら、本実施形態では、上流側空間233aから下流側空間233bへと向かう冷媒の流量が絞りプレート236によって低減される。このため、第3コア部213を上方に向かって流れる冷媒の流量が概ね均一となり、上記のように一部のチューブ215において蒸発が生じない現象の発生が防止される。
本実施形態では、蒸発器10に設けられたチューブ115、215の全てが、第1コア部111、第2コア部112、第3コア部213、及び第4コア部214のいずれか一つに属する構成となっている。このような態様に替えて、上記のいずれにも属さないチューブが更に設けられたような構成としてもよい。
例えば、図2において、第1コア部111の左側部分に追加のチューブ115を設け、第4コア部214の左側部分にも追加のチューブ215を設けた構成とした上で、これら追加のチューブ同士が接続タンク30を介して接続されているような態様であってもよい。このように、第1コア部111、第2コア部112、第3コア部213、及び第4コア部214に含まれない経路を冷媒が通るような構成においても、以上に説明した蒸発器10の効果を奏することができる。
既に述べたように、副温度に基づく補正が行われることにより、冷媒温度信号により示される温度は主温度とは異なる温度となっている。このような補正が行われることの利点について、図8を再び参照しながら説明する。
図8(A)の例のように、ほぼ全てのチューブを液相冷媒が流れている状態においては、第1コア部111、第2コア部112、第3コア部213、及び第4コア部214の全てにおいて結露が生じやすくなっている。換言すれば、蒸発器10の除湿性能が高い状態となっている。
これに対し、図8(C)の例のように、気相冷媒が流れるチューブの数が比較的多くなっている状態においては、第2コア部112等の表面においては結露が生じにくくなっている。換言すれば、蒸発器10の除湿性能が低い状態となっている。
車両用の空調装置では、空調風による防曇が行われることがあるので、上記のような除湿性能の低下は好ましくない。しかしながら、仮に測定点MP1の温度(主温度)のみに基づいて圧縮機の回転数の制御が行われる場合には、気相冷媒が流れるチューブの数が多い図8(C)のような状態になったとしても、冷媒温度信号によって示される温度は殆ど変わらない。このため、圧縮機の回転数が増加することは無い。
これに対し、本実施形態では、主温度のみに基づいて圧縮機の回転数の制御が行われるのではなく、主温度と副温度との両方に基づいて圧縮機の回転数の制御が行われる。
図8(C)の状態においては測定点MP2の温度(副温度)が高くなる。このとき、ケーシング42を介した伝熱により、冷媒温度信号は、主温度よりも高い温度を示す信号となるように補正される。この冷媒温度信号に基づいて圧縮機の回転数が調整されることとなるので、圧縮機の回転数は、図8(A)に示される場合の回転数よりも大きくなる。その結果、循環する冷媒の温度が低くなり、除湿性能が高められる。
このように、本実施形態では、副温度が主温度よりも高くなると、冷媒温度信号が、実際の前記主温度よりも高い温度を示す信号となるように補正される構成となっている。これにより、必要に応じて除湿性能を高めるような圧縮機の制御が行われる。
本発明の第2実施形態について、図10を参照しながら説明する。本実施形態では、主温度等を測定するための温度センサ50の構成についてのみ第1実施形態と異なっており、他の構成については第1実施形態と同一である。
図10に示されるように、本実施形態に係る温度センサ50は、第1サーミスタ51aと、第2サーミスタ51bと、ケーシング52と、制御部54とを備えている。
第1サーミスタ51a及び第2サーミスタ51bは、いずれも所謂測温抵抗体であり、その温度に応じて抵抗値を変化させる素子である。
ケーシング52は、金属によって形成された細長い容器である。ケーシング52の外径は、第2コア部112におけるチューブ115間の隙間、及び第3コア部213におけるチューブ215間の隙間のいずれよりも、僅かに大きい程度となっている。ケーシング52の先端部分には、先に説明した第1サーミスタ51aが内部に固定されている。ケーシング52の他の部分(図10では第1サーミスタ51aよりも左側の部分)には、先に説明した第2サーミスタ51bが内部に固定されている。
図6を参照しながら説明した第1実施形態の場合と同様に、温度センサ50は、第1サーミスタ51aが設けられている先端部分を風上側に向けた状態で、第2コア部112側から第3コア部213側に向けて水平に挿入される。温度センサ50が蒸発器10に取り付けられた状態においては、ケーシング52のうち第1サーミスタ51aが収納されている部分が測定点MP1に当接し、ケーシング52のうち第2サーミスタ51bが収納されている部分が測定点MP2に当接する。これにより、第1サーミスタ51aが、測定点MP1の主温度を測定するためのセンサとして機能する。また、第2サーミスタ51bが、測定点MP2の副温度を測定するためのセンサとして機能する。
制御部54は、第1サーミスタ51aから入力される主温度を示す信号、及び、第2サーミスタ51bから入力される副温度を示す信号、の両方に基づいて冷媒温度信号を生成し、これを外部に出力するための装置である。信号線53aは、第1サーミスタ51aに電圧を印加して電流を流すための一対の導線であって、制御部54と第1サーミスタ51aとの間を繋いでいる。信号線53bは、第2サーミスタ51bに電圧を印加して電流を流すための一対の導線であって、制御部54と第2サーミスタ51bとの間を繋いでいる。制御部54は、それぞれのサーミスタに電圧を印加して流れる電流を測定しながら、主温度と副温度とを取得する。
制御部54から外部の制御装置に出力される冷媒温度信号は、概ね主温度に等しい温度を示す信号となっている。ただし、副温度の方が主温度よりも高くなっているときには、実際の主温度よりも高い温度を示す信号となるように補正された後、外部へと出力される。このような補正は、例えば、制御部54が以下のような演算を行うことにより行われる。
冷媒温度信号=主温度+(副温度−主温度)×α
上記の式におけるαは措定の係数であり、その値は例えば0.1である。
このように、温度センサ50は、主温度を測定するための第1サーミスタ51aと、副温度を測定するための第2サーミスタ51bとが、一体に形成されたセンサとして構成されている。尚、このような態様に替えて、第1サーミスタ51aと第2サーミスタ51bとが、それぞれ別のケーシング内に収納された構成としてもよい。この場合、互いに別体のセンサとして形成された2つの温度センサが、測定点MP1と測定点MP2とにそれぞれ取り付けられることとなる。
第3コア部213を流れる液相冷媒の温度が、上記のようにチューブ215の壁面等を介して間接的に測定されるのではなく、第1サーミスタ51aによって直接的に測定されるような態様であってもよい。
同様に、第2コア部112を流れる液相冷媒又は気相冷媒の温度が、上記のようにチューブ115の壁面等を介して間接的に測定されるのではなく、第2サーミスタ51bによって直接的に測定されるような態様であってもよい。
制御部54のような装置は、本実施形態のように温度センサ50の一部として設けられてもよいのであるが、他の制御装置の一部として設けられてもよい。例えば、冷媒温度信号に基づいて圧縮機の制御を行う制御装置が、制御部54の機能を有しているような態様であってもよい。この場合、第1サーミスタ51aで測定された主温度と、第2サーミスタ51bで測定された副温度とが、それぞれ上記制御装置に入力されることとなる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。