JP4106726B2 - 冷媒蒸発器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用の冷凍サイクルや、家屋、ビル、工場、店舗等の置型冷凍サイクルにおいて冷媒を蒸発させる冷媒蒸発器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の冷媒蒸発器として、1ターンの全パスタイプの冷媒蒸発器を例に説明する。この冷媒蒸発器は、複数のチューブの一端側が入口タンクで、他端側が出口タンクであるとともに、複数のチューブの各冷媒通路がUターンするもので、図1上段左図に示すように、入口タンク2および出口タンク3はそれぞれ単純な分配容器として作用するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記に示した従来の冷媒蒸発器では、入口タンク2の冷媒入口2aに近い側のチューブに渇き度の高い冷媒が供給され、逆に冷媒入口2aから遠い側のチューブに渇き度の低い冷媒(図1の棒グラフ中のハッチングで示される)が供給されてしまう。また、入口タンク2内において冷媒入口2aから遠い側の内圧が高くなってしまい、入口タンク2の冷媒入口2a側の冷媒流量(図1の棒グラフの高さで示される)が少なく、冷媒入口2aから遠い側の冷媒流量が多くなってしまう。
このように、冷媒入口2aに近い側のチューブへは、冷媒流量が少なく、且つ渇き度も高いため、図1上段右図に示すように、冷媒入口2aに近い側のチューブを通過した空気の冷却度合が低くなって、大きな冷却ムラができてしまう。
【0004】
そこで、図1中段左図に示すように、入口タンク2の内部に、冷媒流の抵抗になる絞り手段5を配置して、冷媒入口2aに近い側の内圧を高め、遠い側の内圧を下げて、渇き度の低い冷媒が供給される冷媒入口2aに近い側のチューブへの冷媒流量を増加させた。
すると、図1中段右図に示すように、冷媒入口2aに近い側のチューブを通過した空気の冷却度合を従来のものより高めることができたが、少量ではあるが冷媒入口2aに近い側のチューブを通過する空気の冷却度合が低くなり、少量の冷却ムラが発生する不具合が残る。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、各チューブの入口出口間の圧力差をコントロールして、各チューブに流れる冷媒の流量を細かく調節し、全チューブを通過する空気の温度ムラを極力抑えることが可能な冷媒蒸発器の提供にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の冷媒蒸発器は、次の技術的手段を採用した。
〔請求項1の手段〕
入口タンク内と出口タンク内のそれぞれに絞り手段を配置したことにより、各チューブの入口出口間の圧力差をコントロールすることが可能になり、各チューブに流れる冷媒の流量を細かく調節することができる。この結果、各チューブにおいて渇き度に応じた流量の冷媒を流すことが可能になり、全チューブを通過した空気の温度ムラを低く抑えることができる。
【0007】
〔請求項2の手段〕
全パスタイプの冷媒蒸発器は、入口タンク内の圧力差が大きく、また出口タンク内の圧力差も大きいため、温度ムラが大きくなり易いが、本発明を採用したことにより、全パスタイプであっても温度ムラを低く抑えることができる。
【0008】
〔請求項3の手段〕
1ターンタイプの冷媒蒸発器は、複数ターンタイプに比較して冷媒圧損が低く冷房能力も向上できるため、複数ターンタイプに比較して薄幅化が可能になる。そして、この1ターンタイプの冷媒蒸発器は、全パスタイプであるが、上述のように、本発明を採用したことにより、温度ムラを低く抑えることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を、実施例および変形例に基づき説明する。
〔実施例〕
冷媒蒸発器の概略を図2を用いて説明する。この冷媒蒸発器は、1ターンの全パスタイプで、冷媒通路がUターンする複数本(例えば、22本)のチューブ1と、各チューブ1の一端側に設けられて各チューブ1に冷媒を分配する入口タンク2と、各チューブ1の他端側に設けられて各チューブ1を通過した冷媒を収集する出口タンク3と、各チューブ1間に配置されたコルゲートフィン4とを備える。そして、入口タンク2には、内部に霧状冷媒を供給する冷媒入口2a(図1参照)が設けられ、出口タンク3には、熱交換後の気化冷媒を排出する冷媒出口3a(図1参照)が設けられており、この実施例では冷媒入口2aおよび冷媒出口3aは同方向に並設されている。
なお、入口タンク2および出口タンク3は、各チューブ1に対して別体に設けられたものであっても良いし、各チューブ1と一体的に設けられたものであっても良い。
【0010】
入口タンク2の内部には、この入口タンク2内を流れる冷媒の通路面積を絞る絞り手段5が2つ配置されている。具体的には、車両用の冷媒蒸発器を構成する22本のチューブ1の内、冷媒入口2aより2本目と3本目のチューブ間、および8本目と9本目のチューブ間の入口タンク2内に、縦長穴形状(例えば、3×18mmの楕円穴)の絞り手段5が配置されている。
一方、出口タンク3の内部にも、この出口タンク3内を流れる冷媒の通路面積を絞る絞り手段6が1つ配置されている。具体的には、22本のチューブ1の内、冷媒出口3aより8本目と9本目のチューブ間の出口タンク3内に、円穴形状(例えば、直径13mmの円穴)の絞り手段6が配置されている。
【0011】
ここで、入口タンク2内のみに2つの絞り手段5を設けた場合について説明する。各チューブ1の入口出口の圧力差は、図3の(a)に示すようになる。つまり、入口タンク2内の2つの絞り手段5により、入口タンク2内において冷媒入口2a側の2本目の内圧が高く、次いで冷媒入口2a側から3本目〜8本目の内圧が高く、9本目以降の内圧が低くなる。そして、出口タンク3の内圧は、冷媒出口3aに遠いほど高い。このため、各チューブ1の入口出口の圧力差は、冷媒入口2a側の2本のチューブ1の圧力差が3.9、冷媒入口2a側から3本目〜8本目のチューブ1の圧力差が2.6、9本目以降のチューブ1の圧力差が1.2となる。
しかるに、入口タンク2内のみに絞り手段5を設けた場合(図1の中段右図参照)では、従来技術の課題で示したように、絞り手段5がない場合(図1の上段右図参照)に比較して冷却ムラを減らすことができるが、冷媒入口2aに近い側において少量の冷却ムラが発生する。
【0012】
この実施例の冷媒蒸発器は、入口タンク2内に2つの絞り手段5を設けるとともに、出口タンク3部にも1つの絞り手段6が設けられているため、各チューブ1の入口出口の圧力差は、図3の(b)に示すようになる。つまり、出口タンク3内の絞り手段6により、9本目以降の内圧が0.5高くなり、各チューブ1の入口出口の圧力差は、冷媒入口2a側の2本のチューブ1の圧力差が4.4、冷媒入口2a側から3本目〜8本目のチューブ1の圧力差が3.1、9本目以降のチューブ1の圧力差が1.0となる。
この結果、図1の下段左図に示すように、渇き度の高い冷媒が流入する冷媒入口2aから2本目までのチューブ1には多くの冷媒が流れ、反対に渇き度の低い冷媒が流入する9本目以降のチューブ1には少量の冷媒が流れる。つまり、各チューブ1に流れる冷媒重量流量が均一化することになり、図1の下段右図に示すように、冷媒蒸発器を通過した空気の冷却ムラをほとんどなくすことができ、結果的に冷房能力を向上できる。
【0013】
一方、自動車用冷凍サイクルでは、使用環境の変動によって、冷媒蒸発器に供給される冷媒の渇き度が大きく変動する場合がある。
従来使用していた例えば90mm幅で4ターンタイプの冷媒蒸発器では、良好な冷媒ディストリビューションが得られていたため、供給される冷媒の渇き度が変動しても、安定した冷房能力を得ることができた(図4の一点鎖線A参照)。
【0014】
しかるに、薄型化と、タンク内の圧力損失低減による冷媒能力向上を図るべく、70mm幅で、1ターンの全パスタイプの冷媒蒸発器を開発する場合において、入口タンク2内のみに2つの絞り手段5を設けた場合では、図4の破線Bに示すように、供給される冷媒の渇き度が低いと、冷房能力が低下する不具合が発生してしまう。
【0015】
この実施例の冷媒蒸発器は、入口タンク2内に2つの絞り手段5を設けるとともに、供給される冷媒の渇き度の変化に影響されない出口タンク3内にも1つの絞り手段6が設けられているため、上述のように、各チューブ1の入口出口に適切な圧力差が生じ、各チューブ1に流れる冷媒重量流量が均一化する。このため、図4の実線Cに示すように、供給される冷媒の渇き度が変動しても、安定した冷房能力を得ることができる。また、4ターンタイプの冷媒蒸発器に比較して、本実施例の冷媒蒸発器は全パス化したことによる圧力損失の低減によって、冷房能力の向上が図れる。
【0016】
〔変形例〕
上記の実施例では、各チューブ1の冷媒通路がUターンする1ターンタイプの冷媒蒸発器を例に示したが、各チューブ1の冷媒通路がストレートなタイプの冷媒蒸発器に本発明を適用しても良い。また、この冷媒通路ストレートタイプの冷媒蒸発器を複数積層使用する場合においても本発明を適用しても良い。
上記の実施例では、全パスタイプの冷媒蒸発器を例に示したが、全パスタイプではない冷媒蒸発器に本発明を適用しても良い。つまり、複数のチューブ1の両端にあるタンクの少なくとも一方のタンク内を仕切板等で区画して入口タンク2、出口タンク3、あるいは中間タンク(入口タンク2と出口タンク3を兼ねるタンク)を形成した冷媒蒸発器に本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷媒の分配状態説明図および冷却ムラを示す温度分布図である。
【図2】冷媒蒸発器の概略図である。
【図3】各チューブの入口出口間の圧力差を示す図である。
【図4】供給冷媒の渇き度(高圧圧力)と冷房能力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 チューブ
2 入口タンク
3 出口タンク
4 コルゲートフィン
5 入口タンクの絞り手段
6 出口タンクの絞り手段
Claims (3)
- 内部に冷媒が流れる冷媒通路を備えた複数のチューブと、この複数のチューブに冷媒を分配する入口タンクと、前記複数のチューブを通過した冷媒を収集する出口タンクと、を備える冷媒蒸発器において、
前記入口タンクの内部には、この入口タンク内を流れる冷媒の通路面積を絞る絞り手段が少なくとも1つ配置されるとともに、
前記出口タンクの内部にも、この出口タンク内を流れる冷媒の通路面積を絞る絞り手段が少なくとも1つ配置されたことを特徴とする冷媒蒸発器。 - 請求項1の冷媒蒸発器において、
前記複数のチューブの一端側が前記入口タンクであるとともに、前記複数のチューブの他端側が前記出口タンクである全パスタイプであることを特徴とする冷媒蒸発器。 - 請求項2の冷媒蒸発器は、
前記複数のチューブの各冷媒通路がUターンする1ターンタイプであることを特徴とする冷媒蒸発器。
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