JP2004268370A - フレキシブルケーブル、及び液体噴射ヘッド - Google Patents

フレキシブルケーブル、及び液体噴射ヘッド Download PDF

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隆義 勝村
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Abstract

【課題】配置対象部材に突設された位置決めピンから離脱し難くしたフレキシブルケーブル及びこれを用いた液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】フレキシブルケーブル5は、位置決めピン30が挿通する位置決め孔5´を厚さ方向に貫通させて開設し、この位置決め孔5´の内周の一部を位置決め孔中心方向に突出させることで干渉舌片部31を設け、この干渉舌片部31の先端から反対側までの長さを、位置決めピン30の外径よりも短く設定し、位置決め孔5´内に位置決めピン3が挿通して干渉舌片部31が変形すると、弾性によって干渉舌片部31が位置決めピン30を押圧して締り嵌め状態となるようにした。
【選択図】 図7

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フレキシブルケーブル、及びこれを用いた液体噴射ヘッドに係り、特に、配置対象部材に突設された位置決めピンから離脱し難くしたフレキシブルケーブル、及びこれを用いた液体噴射ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器等の内部の回路間で信号伝送を行うためには、信号伝送用ケーブルが用いられている。そのケーブルとして近年では、電子機器の小型化や高密度化に応じて、小型で薄く、且つ、柔軟性を有するシート状のフレキシブルケーブルが使用されることが多くなっている。このフレキシブルケーブルは、例えば、ポリイミド等のベースフィルムの表面に銅箔等で導体パターンを形成し、この導体パターンをレジストで被覆した構成とされる。このフレキシブルケーブルが利用される機器の一例として、圧力発生素子を駆動することで圧力室内の液体に圧力変動を生じさせ、これによりノズル開口から液滴として吐出させる液体噴射ヘッドが挙げられる。
【0003】
この液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等がある。
【0004】
このような液体噴射ヘッドの中には、圧力発生素子に駆動信号を供給する配線基板(プリント基板)をケースヘッドに備え、フレキシブルケーブルを介して配線基板から各圧力発生素子に駆動信号を供給する構成を採るものがある(例えば、特許文献1参照)。そして、このフレキシブルケーブルの一端側の端子部は圧力発生素子の端子部に接続され、他端側の端子部は配線基板上の基板端子部に接続される。
【0005】
このような液体噴射ヘッドの製造においては、製造効率の向上や人件費削減の観点からオートメーション化が図られており、配線基板へのフレキシブルケーブルの配線工程(半田付け)についても半田付け用ツールの自動制御によって行われる。
【0006】
図12〜14は、従来の液体噴射ヘッドの製造におけるフレキシブルケーブルの配線基板への接続工程の一例を説明する図である。なお、図12は、液体噴射ヘッドの斜視図、図13は、液体噴射ヘッドの側面図、図14は、図13の一部を拡大して示した要部断面図である。この液体噴射ヘッド35の製造において、フレキシブルケーブル36の配線基板37への接続は、台座(治具)38上で行われる。この台座38の上面には、位置決めピン39が上方に向けて突設されており、この位置決めピン39は、配線基板37に設けられた貫通孔37´とフレキシブルケーブル36に設けられた位置決め孔36´に挿通して、配線基板37とフレキシブルケーブル36の位置決めをするようになっている。
【0007】
フレキシブルケーブル36の一端部はヘッドユニット40の圧力発生素子に予め接続され、残りの部分は破線で示すようにヘッドユニット40から上方に起立した状態にされる。そして、フレキシブルケーブル36の他端部は、吸引ツール(図示せず)により吸引されて配線基板37側に屈曲されると共に、押圧ツール(図示せず)によって上方から配線基板37側に押圧される。この際、位置決め孔36´に位置決めピン39が挿通することで、フレキシブルケーブル36側の接続端子部と配線基板37側の接続端子部とが互いに位置を合わされた状態で重合する。
ここで、屈曲した状態のフレキシブルケーブル36は、元の起立した状態に戻ろうとする復元力が働くため、位置決めピン39から離脱し易い。そのため配線作業が終了するまでは、上記の押圧ツールによってフレキシブルケーブル36を配線基板37側に押圧した状態で作業が行われる。
【0008】
そして、重合された端子部分を、加熱されたヒートツール(半田鏝)41によってフレキシブルケーブル36側から配線基板37側に押圧することで、フレキシブルケーブル36が配線基板37に接続固定される。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−211131号公報(第5頁、第3図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように、配線作業時において、押圧ツールによってフレキシブルケーブルを押圧した状態でヒートツールが接続作業を行うため、その分の作業スペースを確保する必要がある。このため、漏出した液体が配線基板に浸入するのを防止するための壁の立設や、液体噴射ヘッドの小型化への対応を困難にしていた。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、配置対象部材に突設された位置決めピンから離脱し難くしたフレキシブルケーブル、及びこれを用いた液体噴射ヘッドを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のフレキシブルケーブルは、上記目的を達成するために提案されたものであり、位置決めピンが突設された配置対象部材の表面に位置決めされた状態で配置されるフレキシブルケーブルにおいて、
前記位置決めピンが挿通する位置決め孔を厚さ方向に貫通させて開設し、
該位置決め孔の内周の一部を位置決め孔中心方向に突出させることで干渉部を設け、
該干渉部の先端から反対側までの長さを、前記位置決めピンの外径よりも短く設定し、
前記位置決め孔内に前記位置決めピンが挿通して前記干渉部が変形することにより、弾性によって前記干渉部が位置決めピンを押圧して締り嵌め状態にしたことを特徴とする。
なお、「締り嵌め状態」とは、位置決め孔において干渉部からその対向する部位までの長さが短くなることによって位置決めピンに止着された状態を意味し、位置決め孔全体の内径が小さくなる場合をも含む。
【0013】
これにより、一旦位置決め孔に位置決めピンが挿通するとフレキシブルケーブルが位置決めピンから離脱し難くなる。
また、この締り嵌め状態では、干渉部と、この干渉部とは位置決めピンを挟んで反対側の位置決め孔内周とで位置決めピンを挟時した状態となるので、位置決めピンと位置決め孔の間でガタツキが生じ難く、このガタツキに起因する位置ずれを抑制することができる。このため精度の高い位置決めが可能となる。
【0014】
上記構成において、前記干渉部を除く位置決め孔の内径を位置決めピンの外径よりも大きく設定することもできる。これにより、干渉部を設けた場合でも組み付け時には位置決め孔に位置決めピンを挿通し易くすることができる。
【0015】
また、上記構成において、前記干渉部の両側部を前記位置決め孔の外側へ切り欠いて切欠部を設ける構成とすることもできる。この構成において、前記干渉部の根本部分を結ぶ仮想屈曲線が挿通状態における位置決めピンよりも外側に位置するように、前記切欠部の切欠長さを設定するのが好ましい。
なお、「仮想屈曲線」とは、位置決めピン挿通時における干渉部の屈曲予定箇所を示す仮想線を意味する。
これにより、位置決め孔に位置決めピンが挿通する際に、干渉部は仮想屈曲線で折れ曲がり、他の部分は殆ど変形しないので、ケーブル全体の歪みを抑制することが可能となる。
【0016】
また、前記干渉部を、取り付けた状態におけるフレキシブルケーブルの長手方向に沿って且つ位置決め孔中心を通る仮想線上に配置した構成を採ると、位置決めピンが位置決め孔に挿通した際、干渉部が変形することによりフレキシブルケーブルが長手方向に多少変形したとしても、ケーブル長手方向に長尺な接続端子部ではケーブル長手方向の位置決めについては多少の誤差は許容される。したがって支障なくフレキシブルケーブルの位置決めが可能となる。
【0017】
また、前記干渉部を前記位置決め孔に複数設ける構成を採ることも可能である。この構成により、複数の干渉部が位置決めピンを押圧して締り嵌め状態となるので、フレキシブルケーブルを位置決めピンからより離脱し難くすることが出来ると共に、位置決めピンと位置決め孔のガタツキをより抑制することが可能となる。
【0018】
また、本発明の液体噴射ヘッドは、液体導入口から共通液体室及び圧力室を通ってノズル開口に至る一連の液体流路が形成され、液体導入口から導入した液体を圧力発生素子を駆動することにより液滴として前記ノズル開口から吐出する液体噴射ヘッドにおいて、
前記駆動信号を前記圧力発生素子に供給するフレキシブルケーブルとして上記の何れかに記載のフレキシブルケーブルを用いたことを特徴とする。
【0019】
この構成によると、フレキシブルケーブルが位置決めピンから離脱し難いので、配置対象部材上でフレキシブルケーブルを位置決めした状態で端子部の接続作業を行う際に押圧ツール等によりフレキシブルケーブルを配置対象部材側に常に押さえ付けておく必要がなくなり、その分の作業スペースを確保することができる。このため、配置対象部材の周囲に液体の浸入を防止するための壁を立設することが可能と共に、液体噴射ヘッドの小型化への対応も可能となる。また、位置決めピンと位置決め孔の間のガタツキに起因する端子部の位置ずれを抑制することができる。これにより接続不良を防止することが可能となり、歩留りが向上する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のフレキシブルケーブルを用いた液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド1(以下、記録ヘッド1と略す)を右前上方から見た分解斜視図、図2は、記録ヘッド1を右後下方から見た分解斜視図、図3は、記録ヘッド1を真上から見た平面図である。また、図4は、図3におけるA−A線断面図である。なお、説明の便宜上、供給針ベース部8側を記録ヘッド1の前方、基板ベース部10側を記録ヘッド1の後方とし、ノズル列直交方向を左右方向として説明する。
【0021】
記録ヘッド1は、インク(本発明の液体の一種)を吐出して画像等を記録するために用いられるものであり、図示しないインクカートリッジ内のインクを記録ヘッド1内に導入するインク供給針2と、圧力発生素子として機能する圧電振動子3を有するヘッドユニット4と、フレキシブルケーブル5を介して圧電振動子3に駆動信号を供給する配線基板6とをケースヘッド7に備えて概略構成される。
【0022】
ケースヘッド7は、複数のインク供給針2を左右横並びに配設する供給針ベース部8と、この供給針ベース部8の底面から下方に向けて突設されたヘッドユニット取付部9と、このヘッドユニット取付部9の後壁から後方に向けて延在し、配線基板6を配設する基板ベース部10とを有する。本実施形態においては、ケースヘッド7の材料として、例えば、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂等の熱可塑性樹脂にガラス繊維を混入して強度を向上させたものを使用している。
【0023】
供給針ベース部8は、左右方向に長尺な板状部材であり、インク供給針2を配設する部分である。この供給針ベース部8に配設されるインク供給針2の先端部は円錐状に尖っており、インクカートリッジ内に挿入し易くなっている。また、このインク供給針2の先端部には、インク供給針2の内外を連通するインク導入孔が複数穿設されており、これらのインク導入孔(液体導入口)を通じてインクカートリッジ内に貯留されたインクが記録ヘッド1内に導入される。そして、本実施形態の記録ヘッド1は4種類のインクを吐出可能であるため、供給針ベース部8には、合計4本のインク供給針2が先端が上方に向けて突出した姿勢で、左右横並びに配設される。
【0024】
ヘッドユニット取付部9は、内部に空部9´を有する中空箱体状の部材である。このヘッドユニット取付部9の空部9´内には、インク供給針2からヘッドユニット4にインクを供給するインク供給路の一部と、フレキシブルケーブル5の大部分が収納される。また、この空部9´内には、供給針ベース部8の底面、即ち、ヘッドユニット取付部9の天井側から先端側(ヘッドユニット4取付面側)に向けて延出する案内リブ13が形成されている。この案内リブ13の先端部は、ヘッドユニット取付部9先端側から基板ベース部10側に向けて傾斜しており、基板ベース部10側の傾斜終端13´が、基板ベース部10側に臨むように形成されている(図6参照)。この案内リブ13は、ヘッドユニット取付部9へのヘッドユニット4の取付時において、フレキシブルケーブル5を、ヘッドユニット取付部9の空部9´内から基板ベース部10側に案内する役目を果たす。
【0025】
フレキシブルケーブル5は、圧電振動子3に駆動信号を供給するための配線パターンが形成されたフィルム状の配線部材である。このフレキシブルケーブル5の一端側には、圧電振動子3の素子端子部(図示せず)と電気的に接続される一端側端子部15が形成され、また、他端側には、配線基板6の基板端子部16と電気的に接続される他端側端子部17が形成されている。また、フレキシブルケーブル5には、厚さ方向を貫通して位置決め孔5´が開設されている。同様に、後述する配線基板6には、厚さ方向を貫通して基板貫通孔6´が設けられている。そして、この基板貫通孔6´と位置決め孔5´との位置を合致させると、基板端子部16の各端子と他端側端子部17の各端子との互いの位置が合致するように孔の開設位置や寸法等が設定されている。
本実施形態におけるフレキシブルケーブル5は、位置決め孔5´の形状及び機能に特徴を有している。この位置決め孔5´の詳細については後述する。
【0026】
ヘッドユニット4は、アクチュエータユニット18と流路ユニット19とから構成されており、アクチュエータユニット18と流路ユニット19とを重ね合わせた状態で一体化してある。アクチュエータユニット18は、各ノズル開口に対応する圧力室を形成した圧力室プレート、連通口を形成した連通口プレート、及び、圧電振動子3を実装した振動プレート(何れも図示せず)を積層し、焼成等により一体化することで構成されている。
【0027】
流路ユニット19は、インク供給口20とリザーバの圧力変動を緩和するコンプライアンス部21とを形成した供給口プレート22、複数のリザーバ23(共通液体室)を形成したリザーバプレート24、及び、複数のノズル開口を列設してなるノズル列25が形成されたノズルプレート26を積層して一体化することで構成されている。
【0028】
アクチュエータユニット18の圧電振動子3は、所謂撓み振動モードの圧電振動子であり、この圧電振動子3を駆動、即ち、撓み振動させると、圧力室の容積が変化し、ノズル開口からインク滴が吐出される。圧電振動子3には、駆動電極に駆動信号を給電するための素子端子部(図示せず)が形成されており、この接続端子にフレキシブルケーブル5の一端側端子部15が半田付け等によって電気的に接続される。ここで、圧電振動子3に一端側端子部15が接続されたフレキシブルケーブル5は、圧電振動子3に対して起立した状態に折り曲げられる。そして、ヘッドユニット4は、ノズルプレート26を下側にした姿勢でヘッドユニット取付部9の先端側(底面)に取り付けられ、ヘッドカバー27によって縁部が保護されるようになっている。
【0029】
次に、基板ベース部10と配線基板6について説明する。この基板ベース部10は、左右方向(ノズル列直交方向)に長尺な板状部材であり、上面(基板配設面)に配線基板6を配設する。この配線基板6にはフレキシブルケーブル5が接続されるので、基板ベース部10は、フレキシブルケーブル5が配置される配置対象部材の一種といえる。
基板ベース部10の周囲には囲繞壁10Wが立設されている。この囲繞壁10Wは、万一供給針ベース部8側でインクの漏出が発生した場合において、漏出インクが基板ベース部10へ側方から浸入するのを阻止するようになっている。囲繞壁10Wとヘッドユニット取付部9との間には、開口部が開設されており、フレキシブルケーブル5の他端側をヘッドユニット取付部9の空部9´側から開口部を通じて基板ベース部10側へ案内できるように構成されている。
また囲繞壁10Wの上部開口は、蓋部材10Lが取付可能に構成されている。この蓋部材10Lを囲繞壁10Wの上部開口に取り付けると、供給針ベース部8側で万一インク漏れが発生した場合に、漏出したインクが囲繞壁10Wの上部開口から基板ベース10側へ浸入するのを防止することができる。
【0030】
配線基板6は、ヘッドユニット4の圧電振動子3に供給する各種駆動信号用の導体パターンや電気部品が実装されると共に、フレキシブルケーブル5の他端側端子部15が接続される基板端子部16が形成された基板である。この配線基板6はコネクタ28を備えており、このコネクタ28には、制御装置からのFFC(フレキシブルフラットケーブル)等の制御ケーブル(何れも図示せず)の先端が挿入されるようになっている。
【0031】
ここで、図5は、図3における領域Xを拡大した平面図であり、図6(a)は、図4における領域Zを拡大した要部断面図である。また、図6(b)は、図6(a)における領域Wを拡大した要部断面図である。これらの図に示すように、基板ベース部10には、先端を上方に向けた姿勢で位置決めピン30が突設されている。この位置決めピン30は、配線基板6の基板貫通孔6´とフレキシブルケーブル5の位置決め孔5´に挿通することで、配線基板6とフレキシブルケーブル5を基板ベース部10の表面(上面)に位置決めした状態で配置するようになっている。
【0032】
上記フレキシブルケーブル5の位置決め孔5´は、一旦位置決めピン30が挿通すると、位置決めピン30から外れ難いように構成されている。以下、この位置決め孔5´について説明する。
【0033】
図7は、位置決め孔5´の平面拡大図である。この位置決め孔5´には、内周の一部を位置決め孔5´の中心C方向に突出させることで干渉舌片部(本発明の干渉部の一種)31が設けられている。本実施形態の干渉舌片部31は、この干渉舌片部31を除く位置決め孔5´の内周(以下、弧部と称す)に対して弦状に突出した形状に形成されている。この干渉舌片部31の先端から反対側までの長さ、即ち、干渉舌片部31の先端から中心Cを通って反対側の弧部までの仮想線VLの長さXは、位置決めピン30の外径Yよりも短く設定されている。この仮想線VLの長さXは、位置決めピン30の外径Yを1とすると0.85〜0.95の割合に設定するのが好ましい。
なお、弧部の内径、即ち干渉舌片部31を除く位置決め孔5´の内径Zは、位置決めピン30の外径Yよりも若干大きく設定されている。これにより、干渉舌片部31を設けた場合でも位置決め孔5´に位置決めピン30を挿通し易くすることができる。
【0034】
位置決め孔5´内に位置決めピン30が挿通すると干渉舌片部31が変形し、即ちピン挿通方向に折れ曲がり(図6(b)参照)、変形した干渉舌片部31が元の形状に戻ろうとする弾性によって恰も支え棒のように位置決めピン30を押圧することにより、締り嵌め状態となる。この締り嵌め状態とは、位置決め孔5´において干渉舌片部31からその対向する部位までの長さが短くなることによって位置決めピン30に止着された状態を意味し、この例では、干渉舌片部31と、この干渉舌片部31とは位置決めピン30を挟んで反対側の弧部とで位置決めピン30が挟持された状態である。この状態では、干渉舌片部31の変形に伴って位置決め孔5´の内周(弧部)が干渉舌片部31側に引っ張られ、これにより位置決め孔5´全体の内径が縮小して干渉舌部31と弧部とで位置決めピン30を締り付ける。
これにより、フレキシブルケーブル5を位置決めピン30から離脱し難くすることができると共に、位置決めピン30と位置決め孔5´間のガタツキを抑制することができ、精度の高い位置決めが可能となる。
【0035】
ここで、図5に示すように、フレキシブルケーブル5の他端側端子部17は、ケーブル長手方向に長尺な短冊型の端子がケーブル幅方向(短尺方向)に複数列設されているため、ケーブル幅方向の各端子の位置決めについては比較的高い位置精度が求められるが、ケーブル長手方向の位置決めについては多少の誤差が許容される。そのため、上記仮想線VLが、フレキシブルケーブル5の長手方向と平行となるように、位置決め孔5´における干渉舌片部31の形成位置が設定されている。即ち、干渉舌片部31は、取り付けた状態におけるフレキシブルケーブル5の長手方向に沿って且つ位置決め孔5´の中心Cを通る仮想線上に配置されている。これにより、位置決めピン30が位置決め孔5´に挿通する際、干渉舌片部31が変形することによりフレキシブルケーブル5が長手方向に多少変形したとしても、配線基板6の基板端子部16とフレキシブルケーブル5の他端側端子部5´の位置決めが支障なく行える。
また、この場合において、仮想線VL上の他端側端子部5´側(フレキシブルケーブル5の折り曲げ線BLから遠い方)に干渉舌片部31を設けるのが好ましい。即ち、フレキシブルケーブル5が折り曲げ線BLで折り曲げられた状態から起立した状態に戻ろうとする力は折り曲げ線BLから離隔する程弱くなるので、上記位置に干渉舌片部31を設けることで、フレキシブルケーブル5を位置決めピン30からより離脱し難くさせることが出来る。
【0036】
なお、フレキシブルケーブル5の位置決め孔5´は、図7に示したものには限らない。図8は、フレキシブルケーブル5の位置決め孔5´の第2実施形態について説明する図である。この位置決め孔5´の基本構成は図7で示したものと同様であるが、干渉舌片部31の形状が異なる。本実施形態においては、干渉舌片部31を爪状に突出した形状に形成している。この干渉舌片部31は、首部31´を有する形状であるので、この首部31´の根本から折れ曲がり易く、位置決めピン30の挿通が容易である。
【0037】
位置決め孔5´の干渉舌片部31は、図9に示す第3実施形態のように、複数設けることもできる。図9の例では、第2実施形態において示した形状の2つの干渉舌片部31a,31bを位置決め孔5´に形成してある。これにより、複数(図9の場合2つ)の干渉舌片部31が位置決めピン30を押圧するので、フレキシブルケーブル5を位置決めピン30からより離脱し難くすることが出来ると共に、位置決めピン30と位置決め孔5´間のガタツキをより抑制することが可能となる。
【0038】
また、図10は、フレキシブルケーブル5の位置決め孔5´の第4実施形態を示す平面図である。この位置決め孔5´には、干渉舌片部31の両側部を、位置決め孔5´の外側へ切り欠いた切欠部32a,32bが形成されている。そして、干渉舌片部31の根本部分Rを結ぶ仮想屈曲線VL2(干渉舌片部31の屈曲予定箇所を示す仮想線)が挿通状態における位置決めピン30よりも外側に位置するように切欠部32a,32bの切欠長さが設定されている。これにより、位置決め孔5´に位置決めピン30が挿通する際に、干渉舌片部31が仮想屈曲線VL2で屈曲し、他の部分は殆ど変形しないので、ケーブル全体の歪みを抑制することが可能となる。
【0039】
上記切欠部32は、図10に例示した形状のものには限らず、例えば、図11に示す第5実施形態のように、円形の切欠部32とすることもできる。この場合においても、干渉舌片部31の根本部分Rを結ぶ仮想屈曲線VL2が挿通状態における位置決めピン30よりも外側に位置するように切欠部32a,32bとしての円の寸法が設定されている。本実施形態における位置決め孔5´は、先ず第1実施形態(図7)で示した形状の位置決め孔5´を開設し、その後、切欠部32a,32bとして2つの円形の孔をパンチによって打ち抜くことで形成することができるので作成が容易である。
【0040】
次に、配線基板6及びフレキシブルケーブル5間の端子部の接続について説明する。
まず、配線基板6を、基板貫通孔6´に位置決めピン30を挿通した状態で基板ベース部10上に配設する。次に、ヘッドユニット4をヘッドユニット取付部9に取り付ける。これにより、フレキシブルケーブル5の他端側は、案内リブ13の傾斜にしたがって、ヘッドユニット取付部9の空部9´側から基板ベース部10側へと案内される。
【0041】
そして、フレキシブルケーブル5の他端側は、案内リブ13によって基板ベース部10側に若干傾倒した姿勢となる。この傾倒した部分を押圧ツールが上方から基板ベース部10側に押圧すると、フレキシブルケーブル5の位置決め孔5´に位置決めピン30が挿通し、フレキシブルケーブル5の他端側端子部17の端子位置と配線基板6の基板端子部16の端子位置とが合致した状態で、フレキシブルケーブル5の他端側が配線基板6上に重合される。その後、押圧ツールによる押圧は解除されるが、上述したように、フレキシブルケーブル5の位置決め孔5´は、位置決めピン30に対して締り嵌めとなっているので、押圧を解除してもフレキシブルケーブル5が位置決めピン30から離脱し難い。
【0042】
そして、フレキシブルケーブル5の他端側端子部17と配線基板6の基板端子部16との重合部分をヒートツールによって加熱することによって両者を電気的に接続、即ち、半田付けする。
【0043】
以上のように、フレキシブルケーブル5の位置決め孔5´に、位置決めピン30に対して締り嵌めとなる干渉舌片部31を設けて、フレキシブルケーブル5が位置決めピン30から離脱し難くなるようにしたので、基板ベース部10上において配線基板6とフレキシブルケーブル5を位置決めした状態で端子部の接続作業(配線作業)を行う際に押圧ツールによりフレキシブルケーブル5を基板ベース部10側に常に押さえ付けておく必要がなくなり、その分の作業スペースを確保することができる。したがって、基板ベース部10の周囲に囲繞壁10Wを立設することが可能となり、これによりインク浸入対策が可能となると共に、記録ヘッド1の小型化にも対応することが可能となる。
【0044】
また、締り嵌め状態では、干渉舌片部31と、この干渉舌片部31とは位置決めピン30を挟んで反対側の弧部とで位置決めピン30が挟時されるので、位置決めピン30と位置決め孔5´との間でガタツキが生じ難くなり、このガタツキに起因する端子部の位置ずれを抑制することができる。これにより接続不良を防止することが可能となり、歩留りが向上する。
【0045】
ところで、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0046】
例えば、圧力発生素子に関し、以上においては圧電振動子を例示したが、これに限定されるものではない。圧力発生素子は、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせ得るものであればよく、例えば、電気機械変換素子の一種である磁歪素子であってもよいし、圧力室内のインクを突沸させる発熱素子であってもよい。
【0047】
また、フレキシブルケーブル5の位置決め孔5´の形状は上記各実施形態において例示したものには限らない。例えば、この位置決め孔5´の形状を楕円、長円、多角形等とすることも可能である。要は、位置決め孔5´に、位置決めピン30に対して締り嵌めとなる干渉部があればよい。
【0048】
なお、上記実施形態では、インクジェット式記録ヘッドに本発明を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。本発明は、例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップの製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等の他の液体噴射ヘッドにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット式記録ヘッドを右前上方から見た分解斜視図である。
【図2】インクジェット式記録ヘッドを右後下方から見た分解斜視図である。
【図3】インクジェット式記録ヘッドを真上から見た平面図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である。
【図5】図3における領域Xを拡大した平面図である。
【図6】(a)は、図4における領域Zを拡大した要部断面図であり、(b)は、(a)における領域Wを拡大した要部断面図である。
【図7】フレキシブルケーブルの位置決め孔の形状を説明する図である。
【図8】フレキシブルケーブルの位置決め孔の第2実施形態を説明する図である。
【図9】フレキシブルケーブルの位置決め孔の第3実施形態を説明する図である。
【図10】フレキシブルケーブルの位置決め孔の第4実施形態を説明する図である。
【図11】フレキシブルケーブルの位置決め孔の第5実施形態を説明する図である。
【図12】従来の液体噴射ヘッドの斜視図である。
【図13】従来の液体噴射ヘッドの側面図である。
【図14】図13の一部を拡大して示した要部断面図である。
【符号の説明】
1…記録ヘッド,2…インク供給針,3…圧電振動子,4…ヘッドユニット,5…フレキシブルケーブル,5´…位置決め孔5´,6…配線基板,6´…基板貫通孔,7…ケースヘッド,8…供給針ベース部,9…ヘッドユニット取付部,10…基板ベース部,13…案内リブ,15…一端側端子部,16…基板端子部,17…他端側端子部,18…アクチュエータユニット,19…流路ユニット,20…インク供給口,21…コンプライアンス部,22…供給口プレート,23…リザーバ,24…リザーバプレート,25…ノズル列,26…ノズルプレート,27…ヘッドカバー,28…コネクタ,30…位置決めピン,31…干渉舌片部,32…切欠部

Claims (7)

  1. 位置決めピンが突設された配置対象部材の表面に位置決めされた状態で配設されるフレキシブルケーブルにおいて、
    前記位置決めピンが挿通する位置決め孔を厚さ方向に貫通させて開設し、
    該位置決め孔の内周の一部を位置決め孔中心方向に突出させることで干渉部を設け、
    該干渉部の先端から反対側までの長さを、前記位置決めピンの外径よりも短く設定し、
    前記位置決め孔内に前記位置決めピンが挿通して前記干渉部が変形することにより、弾性によって前記干渉部が位置決めピンを押圧して締り嵌め状態にしたことを特徴とするフレキシブルケーブル。
  2. 前記干渉部を除く位置決め孔の内径を位置決めピンの外径よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルケーブル。
  3. 前記干渉部の両側部を前記位置決め孔の外側へ切り欠いて切欠部を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフレキシブルケーブル。
  4. 前記干渉部の根本部分を結ぶ仮想屈曲線が挿通状態における位置決めピンよりも外側に位置するように、前記切欠部の切欠長さを設定したことを特徴とする請求項3に記載のフレキシブルケーブル。
  5. 前記干渉部は、取り付けた状態におけるフレキシブルケーブルの長手方向に沿って且つ位置決め孔中心を通る仮想線上に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のフレキシブルケーブル。
  6. 前記干渉部を前記位置決め孔に複数設けたことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のフレキシブルケーブル。
  7. 液体導入口から共通液体室及び圧力室を通ってノズル開口に至る一連の液体流路が形成され、液体導入口から導入した液体を圧力発生素子を駆動することにより液滴として前記ノズル開口から吐出する液体噴射ヘッドにおいて、
    前記駆動信号を前記圧力発生素子に供給するフレキシブルケーブルとして、請求項1から請求項6の何れかに記載のフレキシブルケーブルを用いたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
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