JP2004266229A - 積層セラミックコンデンサの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セラミック粉体にポリビニルブチラール樹脂(PB)をバインダーとして混合させてセラミックスラリーを調製し、該スラリーを所定の厚さに塗布及び乾燥させてセラミックグリーンシート1,2を作製し、内部電極5を形成したシート1を積層して内部電極保持層10を形成すると共に、内部電極5が形成されていないシート2を内部電極保持層10の表裏面に積層して保護層11を形成して積層体とする。この場合、内部電極保持層10に用いるスラリーに含有するPBの重合度と、保護層11に用いるスラリーに含有するPBの重合度を異ならせる。内部電極保持層10に用いられるスラリーに含有されているPBの重合度は約650〜約1000であり、保護層11に用いられるスラリーに含有されているPBの重合度は約450以下であることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部電極パターンを形成したセラミックグリーンシートを積層して内部電極保持層を形成し、内部電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートを前記内部電極保持層の両主面に積層して保護層を形成する積層セラミックコンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術と課題】
近年、電子機器の小型化に伴い、積層セラミックコンデンサも小型大容量化が進められている。小型大容量化を促進する手法として、セラミック製誘電体シートの薄膜化と多層化が重要となっている。シートの薄膜化を進めた場合、膜厚が薄くなるにつれて、より微細なシート欠陥(例えば、ピンホールの発生)、異物の混入がコンデンサの特性に大きな影響を及ぼす。また、多層化を進めた場合、内部電極保持層間での密着性の向上が不可欠であり、密着性が不足するとデラミネーションを生じてコンデンサの信頼性が劣化するという問題点が発生する。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−106580号公報
【0004】
ところで、誘電体シートの薄膜化に対応して、セラミック原料としても微細な粉末が用いられている。このセラミック粉末は小径化に伴って充填密度が著しく増加し、その比表面積も同様に増加する。このため、セラミックグリーンシートを作製する際のバインダーの重合度も高いものが用いられる。例えば、特許文献1には、重合度が2400までのポリビニルアセタール樹脂を用いてセラミックスラリーを調製することが開示されている。
【0005】
これに対して、本発明者らは、セラミックスラリーに添加されるバインダー(ポリビニルブチラール)の重合度を内部電極保持層と保護層とで同じにし、種々の重合度で積層セラミックコンデンサを製作し、その短絡不良率と外観不良率を調べた。その結果を図2に示す。
【0006】
バインダーの重合度が低い場合には、セラミック粒子間の結合強度が弱くなり、シート成形時にピンホール等のシート欠陥が生じた。また、セラミックグリーンシートの加工時における引っ張りや曲げ等の応力に耐えられずに、破れや折れ等のシート欠陥が生じた。さらに、内部電極ペーストの印刷時にペーストの溶剤にセラミックグリーンシートのバインダーが溶解され、シートアタックと称されるシート欠陥を生じた。このようなシート欠陥は短絡不良に通じ、図2に示すように、重合度が低くなると短絡不良の発生率が大きくなった。
【0007】
一方、バインダーの重合度が高くなると前記短絡不良率は低下するが、逆にグリーンシートの硬度が高くなることに起因して、シート間の接着性が低下する問題点が生じた。接着性の低下は積層体の層間剥離等を招来して外観不良に通じ、図2に示すように、重合度が高くなると外観不良の発生率が大きくなった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、セラミック製誘電体シートの薄膜化と多層化に対処して、短絡不良及び外観不良の発生率の低い積層セラミックコンデンサを得ることのできる製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用】
以上の目的を達成するため、本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法は、セラミック粉体にポリビニルブチラール樹脂をバインダーとして混合させてセラミックスラリーを調製する工程と、前記セラミックスラリーを所定の厚さに塗布及び乾燥させてセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、前記内部電極パターンが形成された複数枚のセラミックグリーンシートを積層して内部電極保持層を形成すると共に、内部電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートを前記内部電極保持層の両主面に積層して保護層を形成する工程とを備え、前記内部電極保持層に用いるセラミックスラリーに含有するポリビニルブチラールの重合度と、前記保護層に用いるセラミックスラリーに含有するポリビニルブチラールの重合度を異ならせることを特徴とする。
【0010】
前記本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法においては、内部電極保持層及び保護層に用いるセラミックスラリーに含有するポリビニルブチラールの重合度をそれぞれ異なるように設定したため、セラミックグリーンシートの硬度を内部電極保持層及び保護層に関して最適な値にして、セラミックグリーンシートの薄膜化及び多層化を図った場合であっても、シート欠陥による内部電極間の短絡が生じ難く、かつ、層間剥離等の接着不良による外観不良が生じ難くなる。
【0011】
本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法にあっては、内部電極保持層に用いられるセラミックスラリーに含有されているポリビニルブチラールの重合度は約650〜約1000であり、保護層に用いられるセラミックスラリーに含有されているポリビニルブチラールの重合度は約450以下であることが好ましい。
【0012】
特に、内部電極保持層に用いられるセラミックスラリーに含有されているポリビニルブチラールの重合度が約800である場合、保護層に用いられるセラミックスラリーに含有されているポリビニルブチラールの重合度は約450以下であることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1に本発明に係る製造方法によって製造された積層セラミックコンデンサの断面を示す。このコンデンサは、まず、セラミックスラリーを所定の厚さに塗布及び乾燥させて作成した第1のセラミックグリーンシート1上に内部電極5を形成し、該シート1を積層して所定の静電容量を備えた内部電極保持層10を形成すると共に、内部電極が形成されていない無地の第2のセラミックグリーンシート2を前記内部電極保持層10の表裏面に積層して保護層11を形成し、この積層体を焼成後、積層体の両端部に外部電極6を形成したものである。
【0015】
ここで、本発明者らが行った製造方法の具体例について説明する。なお、以下に説明する具体例での材料、数値等はあくまで一例であり、本発明がこれらに限定されるものでないことは勿論である。
【0016】
まず、チタン酸バリウムを主成分とするセラミック粉体に有機バインダーとしてポリビニルブチラールを混合、分散させたセラミックスラリーを調整し、成形機を用いてセラミックグリーンシートを作製した。ポリビニルブチラールは重合度が300〜1100の異なるものを用い、それぞれ重合度の異なるポリビニルブチラールを含有するセラミックグリーンシートを作製した。
【0017】
セラミックグリーンシートの厚みは3.0μmとし、セラミック粉体重量に対するポリビニルブチラールの重量は、重合度の異なるセラミックグリーンシートごとに一定になるように調整した。
【0018】
なお、チタン酸バリウムを主成分とするセラミック粉体を用いたが、それ以外のセラミック粉体、例えば、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸亜鉛等を主成分とするセラミック粉体を用いてもよい。
【0019】
前記セラミックグリーンシート上に、有機バインダーを含むNiペーストをスクリーン印刷して乾燥させ、内部電極を形成した。内部電極の厚みは1.5μmになるように調整した。勿論、内部電極はスクリーン印刷以外の方法で形成することも可能である。
【0020】
内部電極が形成されたセラミックグリーンシートを500枚積層して内部電極保持層を形成し、その表裏面にそれぞれ無地のセラミックグリーンシートを40枚積層して保護層を形成した。
【0021】
以上の構成からなる内部電極保持層及び保護層からなる積層体に対して、脱バインダー処理及び焼成を行い、該積層体の両端部に外部電極を形成して積層セラミックコンデンサを得た。なお、積層体に外部電極を形成した後に焼成してもよい。
【0022】
以上の如く製造した積層セラミックコンデンサは、以下の表1に示す試料N0.1〜18であり、それぞれのセラミックグリーンシートに含有されたバインダー(ポリビニルブチラール)に対する評価として、シート欠陥による短絡不良発生率、層間剥離による外観不良(クラック)発生率を調べた。
【0023】
短絡不良については、横川・ヒューレット・パッカード社製の検査機4278Aを使用し、300個のサンプルに対して25℃、120Hz、1.0Vの条件で評価した。また、外観不良については、実体顕微鏡を用いて2000個のサンプルに対して外観検査を行った。
【0024】
【表1】
【0025】
ここで、表1に示されている重合度は平均値であり、バインダー粒子のそれぞれの重合度はバラツキを有する。例えば、重合度800のバインダーでは、700〜900の範囲のバラツキを有する。
【0026】
表1において、短絡不良率が15%以下、外観不良率を10%以下を量産における目安として良好なものと評価した。試料No.1〜4,9〜11,14,15は良好と評価されたものであり、*を付した試料No.5〜8,12,13,16〜18は好ましい評価を得ることはできなかった。
【0027】
表1から明らかなように、内部電極保持層に用いられるセラミックスラリーに含有されているポリビニルブチラールの重合度は650〜1000、保護層に用いられるセラミックスラリーに含有されているポリビニルブチラールの重合度は約450以下であり、内部電極保持層と保護層とでポリビニルブチラールの重合度を異ならせることが好ましい。
【0028】
特に、試料No.1〜4に見られるように内部電極保持層に用いられるセラミックスラリーに含有されているポリビニルブチラールの重合度が800である場合、保護層に用いられるセラミックスラリーに含有されているポリビニルブチラールの重合度は450以下であることが好ましい。
【0029】
ちなみに、保護層に使用されるセラミックスラリーに含有されるポリビニルブチラールの重合度は300より小さいものであってもよいことが推察される。しかし、ポリビニルブチラールはポリビニルアルコールをブチラール化したものであり、ポリビニルアルコールの重合度がもともと高いため、重合度が300より小さいポリビニルブチラールは現在のところ存在せず、このような重合度のポリビニルブチラールを用いて評価することはできなかった。
【0030】
なお、本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できることは勿論である。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、内部電極保持層及び保護層に用いるセラミックスラリーに含有するポリビニルブチラールの重合度をそれぞれ異なるように設定したため、セラミックグリーンシートの硬度を内部電極保持層及び保護層に関して最適な値にして、セラミックグリーンシートの薄膜化及び多層化を図った場合であっても、シート欠陥による内部電極間の短絡不良の発生率及び層間剥離等の接着不良による外観不良の発生率を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る方法によって製造された積層セラミックコンデンサを示す断面図である。
【図2】セラミックスラリーに添加されるポリビニルブチラールの重合度を内部電極保持層と保護層とで同じにした場合(比較例)の短絡不良率と外観不良率を示すグラフである。
【符号の説明】
1…内部電極保持層を形成するセラミックグリーンシート
2…保護層を形成するセラミックグリーンシート
5…内部電極
6…外部電極
10…内部電極保持層
11…保護層
Claims (3)
- セラミック粉体にポリビニルブチラール樹脂をバインダーとして混合させてセラミックスラリーを調製する工程と、
前記セラミックスラリーを所定の厚さに塗布及び乾燥させてセラミックグリーンシートを作製する工程と、
前記セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、
前記内部電極パターンが形成された複数枚のセラミックグリーンシートを積層して内部電極保持層を形成すると共に、内部電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートを前記内部電極保持層の両主面に積層して保護層を形成する工程と、
を備え、
前記内部電極保持層に用いるセラミックスラリーに含有するポリビニルブチラールの重合度と、前記保護層に用いるセラミックスラリーに含有するポリビニルブチラールの重合度を異ならせること、
を特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。 - 前記内部電極保持層に用いられるセラミックスラリーに含有されているポリビニルブチラールの重合度は約650〜約1000であり、前記保護層に用いられるセラミックスラリーに含有されているポリビニルブチラールの重合度は約450以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
- 前記内部電極保持層に用いられるセラミックスラリーに含有されているポリビニルブチラールの重合度は約800であり、前記保護層に用いられるセラミックスラリーに含有されているポリビニルブチラールの重合度は約450以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
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2003
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