JP2004265672A - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 Download PDF

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伸弥 林
Masaaki Tsuzaki
真彰 津崎
Shuichi Okamoto
秀一 岡本
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Abstract

【課題】有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において用い得る有用な溶媒を提供すること。
【解決手段】2層の電極層とその電極層の間に設けられた発光層を含む少なくとも1層の有機材料層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記有機材料層の少なくとも1つの層を、形成する該有機材料層の下層となる層の表面に有機材料と含フッ素アルコールとを含む組成物を塗布して該組成物の塗膜を形成し、次いで該塗膜より含フッ素アルコールを蒸発除去することにより、形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高度情報化に伴い、薄型、低消費電力、軽量の表示素子が要望されており、それを実現するものとして有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう。)が注目を集めている。特に、近年の有機材料の開発速度は著しく速く、高輝度、高寿命な有機EL素子が開発されている。有機EL素子の実用化にあたって、有機材料から構成される発光層等の有機材料層のパターニング工程が重要である。有機EL素子は、その特徴から、自動車、自転車などの方向指示機やテールランプなど、パーソナルコンピューターなどのディスプレイ、液晶表示装置のバックライト、玩具用発光素子、道路工事用夜間表示灯、屋内灯などの用途に用いられる。
【0003】
有機材料層を形成する方法としては、蒸着法などのドライプロセスと、有機材料を溶媒に溶解または分散させて塗布し乾燥させる湿式法等が挙げられ、湿式法の方が、成膜が容易であるというメリットがある。湿式法としては、例えば塩化メチレン、クロロホルムなどの塩素系溶剤や、トルエンなどの炭化水素系溶剤を溶媒として用いて有機材料層を形成する方法は知られている(例えば、特許文献1〜4参照。)。しかし、前記の溶媒を用いた場合、該溶媒に可溶な有機材料が限定されるため、従来用いられていた有機材料を溶媒に溶解させるために該有機材料に置換基を導入する必要があるなどの問題があった。また、該溶媒は、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリエーテルサルフォン基板、ポリイミド基板などの樹脂基板に対して、膨潤や溶解などの悪い影響を及ぼす問題があった。
【0004】
溶媒の蒸発速度が、速すぎると、例えばインクジェット方式で塗布する場合、有機材料がインクジェットのノズル部で閉塞しやすくなる問題があり、遅すぎると、各有機材料層形成時の乾燥時間が長くなるため大幅に生産効率が下がる問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−2096号公報(実施例)
【特許文献2】
特開平3−137186号公報(実施例)
【特許文献3】
特開平3−269995号公報(実施例)
【特許文献4】
特開平10−77467号公報([0022]、実施例参照。)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術が有する前述の欠点を解消することである。すなわち、より多くの有機材料に可溶で、樹脂基板に対する影響が少なく、蒸発速度が適度な溶媒を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2層の電極層とその電極層の間に設けられた発光層を含む少なくとも1層の有機材料層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記有機材料層の少なくとも1つの層を、形成する該有機材料層の下層となる層の表面に有機材料と含フッ素アルコールとを含む組成物を塗布して該組成物の塗膜を形成し、次いで該塗膜より含フッ素アルコールを蒸発除去することにより、形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における有機EL素子は、2層の電極層の間に少なくとも1層の有機材料層を有する。本発明において該有機材料層の少なくとも1つの層は、有機材料と含フッ素アルコールとを含む組成物を、形成する有機材料層の下層となる層の表面に塗布し該組成物の塗膜を形成し、次いで該塗膜より含フッ素アルコールを蒸発除去することにより形成される。
【0009】
本発明における含フッ素アルコールは、有機材料層を構成する有機材料を溶解させるための溶剤として用いられる。本発明における含フッ素アルコールは、溶解度パラメーター(δ値)が8以上20以下であることが好ましく、10以上15以下であることがより好ましい。
【0010】
ここで、溶解度パラメーターは以下の式で表される。
SP={(ΔH−RT)/V}1/2
SPは溶解度パラメーター(単位cal/cm)であり、ΔHは蒸発熱(単位cal/mol)であり、Rは気体定数(cal/(mol・K))であり、Tは絶対温度(単位K)であり、Vはモル体積(単位cm/mol)である。
【0011】
具体的には2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(δ値=11.3)、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブタノール(δ値=10.0)、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等が好ましく挙げられ、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブタノール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノールがより好ましい。
【0012】
本発明における有機材料を溶解させるための溶剤としては、含フッ素アルコールのみからなることが好ましいが、他の溶剤を含んでいてもよい。他の溶剤としては、含フッ素アルコール以外のフッ素原子を有するハロゲン系有機溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、トランス−1,2−ジクロロエチレンなどの塩素原子を有するハロゲン系有機溶剤、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1−オクテン、n−ヘプタン、n−ノナン、1−ノネン、n−デカン、1−デセンなどの炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどの一価アルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。他の溶剤の、含フッ素アルコールに対する量は、含フッ素アルコールと他の溶剤との混合溶剤が樹脂基板に対して悪影響を及ぼさない量であれば特に限定されないが、90質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0013】
本発明における有機EL素子は、2層の電極層(陽極と陰極)とその電極層の間に設けられた発光層を含む少なくとも1層の有機材料層とを有する。有機材料層として、さらに必要に応じて、正孔輸送層、電子輸送層、界面層、その他の中間層を有していてもよい。
【0014】
有機材料層に用いられる有機材料としては、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、シロール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリノン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリル(DCM)誘導体、ポルフィリン、スクアリリウム誘導体、キナクリドン誘導体等の色素系化合物、キノリノールアルミニウム錯体、アゾメチン亜鉛錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、オキサジアゾール亜鉛錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体等の金属錯体系化合物、ポリ(パラフェニレンビニレン)系化合物、ポリパラフェニレン系化合物、ポリカーボネート系化合物、ポリナフチレンビニレン系化合物、ポリチオフェン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリアセチレン系化合物、ポリシラン系化合物等の高分子系材料が挙げられる。
【0015】
本発明における有機材料層には、上記の化合物以外にさらに他の化合物を含むことができる。例えば、正孔輸送層にバインダー樹脂として、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリエステルなどをさらに含むこともできる。また、本発明における有機材料層には、さらに金属カルコゲン化物、金属ハロゲン化物、金属炭化物、金属酸化物、ニッケル酸化物、鉛酸化物、銅のヨウ化物、鉛の硫化物、p型水素化非晶質シリコン、p型水素化非晶質炭化シリコンなどの無機化合物を含むことができる。
【0016】
本発明における有機材料の含フッ素アルコールに対する溶解比率は、0.5〜8.0質量%であることが好ましい。該有機材料含有含フッ素アルコールを用いて、製膜を行なうと、該有機材料層の膜厚を30〜100nmとすることができるため好ましい。
【0017】
有機材料層の形成方法としては、スピンコート法、インクジェットプリンティング法、浸漬法、キャスティング法、ブレードコート法、スプレイコート法、ロール法などの通常の湿式法が挙げられる。また、湿式法だけでなく、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法などのドライ法を併用してもよい。
【0018】
本発明における有機EL素子の2層の電極層の間には、有機材料層だけでなく、金属カルコゲン化物、金属ハロゲン化物、金属炭化物、金属酸化物、ニッケル酸化物、鉛酸化物、銅のヨウ化物、鉛の硫化物、p型水素化非晶質シリコン、p型水素化非晶質炭化シリコンなどの無機化合物からなる層を含んでいてもよい。
【0019】
陽極は透明電極であり、インジウム錫酸化物(ITO)薄膜、錫酸化膜、ヨウ化銅、硫化銅、金、銀、クロムなどの無機導電性物質やポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーが挙げられる。
【0020】
陰極に用い得る材料としては、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−マグネシウム合金、アルミニウム−リチウム合金、金属カルシウムなどが挙げられる。
【0021】
電極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法、スピンコート法、インクジェットプリンティング法、浸漬法、キャスティング法、ブレードコート法、スプレイコート法、ロール法等の方法が挙げられる。
【0022】
有機EL素子は、通常基板上に形成される。該基板は有機EL素子の支持体であり、透明な基板が通常使用される。使用される材料としては、ガラス、石英、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリメタアクリレートなどが挙げられる。
【0023】
次に本発明の有機EL素子の製造方法の一例を説明するが、本発明は、これに限定されない。
【0024】
ガラス等の透明な基板上にITO膜を蒸着により製膜し陽極を形成する。次に、正孔輸送層として、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブタノールに溶解させたポリ(N−ビニルカルバゾール)をスピンコート法により塗布し、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブタノールを乾燥除去して正孔輸送層を形成する。次に、発光層を形成した後、該発光層の上に、必要に応じて電子輸送層および/または界面層を湿式法やドライ法で形成する。次にマグネシウム−銀合金を真空蒸着により製膜し、陰極を形成し、有機EL素子を得ることができる。
【0025】
上記の有機EL素子の製造方法において、有機材料層を湿式法で形成する場合には、その湿式法で形成する有機材料層の下の層を形成する化合物は、湿式法に用いられる溶剤に不溶である。
【0026】
【実施例】
[例1]〜[例5]は実施例であり、[例6]は比較例である。
【0027】
[例1]
銅フタロシアニン1mgと2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール3mlとを20ml三角フラスコ中で混合し撹拌した。銅フタロシアニンは2,2,3,3,4,4,5,5,−オクタフルオロペンタノールに可溶であった。
【0028】
[例2]
トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)1mgと2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール3mlとを20ml三角フラスコ中で混合し撹拌した。トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)は2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノールに可溶であった。
【0029】
[例3]
α−NPD1mgと2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール3mlとを20ml三角フラスコ中で混合し撹拌した。α−NPDは2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノールに可溶であった。
【0030】
[例4]
ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリイミド樹脂のテストピース(25×30×2mm)をガラス製耐圧瓶中の沸騰した2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール80gに5分間浸漬した。ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリイミド樹脂それぞれのテストピースは、外観は変化せず、溶媒への溶出なども見られなかった。
【0031】
[例5]
ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリイミド樹脂のテストピース(25×30×2mm)をガラス製耐圧瓶中の沸騰した2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブタノール80gに5分間浸漬した。ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリイミド樹脂それぞれのテストピースは、外観は変化せず、溶媒への溶出なども見られなかった。
【0032】
[例6]
ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリイミド樹脂のテストピース(25×30×2mm)をガラス製耐圧瓶中の沸騰した塩化メチレン80gに5分間浸漬した。ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリイミド樹脂それぞれのテストピースは、外観は白化し、溶媒への溶出が見られた。
【0033】
【発明の効果】
本発明の製造方法では、含フッ素アルコールを用いて湿式法により有機材料層を形成する。含フッ素アルコールは、有機材料に対して適度な溶解性を有するため、多くの有機材料について薄膜層を容易にかつ効率よく形成することができる。また含フッ素アルコールは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリイミドなどの樹脂に対して、ほとんど影響を及ぼさないため、本発明における有機EL素子には、石英やガラス等の無機材料基板だけでなく、樹脂基板などあらゆる材質の基板を使用し得る。

Claims (2)

  1. 2層の電極層とその電極層の間に設けられた発光層を含む少なくとも1層の有機材料層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記有機材料層の少なくとも1つの層を、形成する該有機材料層の下層となる層の表面に有機材料と含フッ素アルコールとを含む組成物を塗布して該組成物の塗膜を形成し、次いで該塗膜より含フッ素アルコールを蒸発除去することにより、形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  2. 含フッ素アルコールが、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブタノールから選ばれる1種または2種の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
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