JP2004264412A - ハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物及びこれを用いる処理方法並びに濃縮組成物包装体 - Google Patents
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Abstract
【課題】実際の使用条件下である長期保管後の使用に際して補充液タンク内部の析出物の発生を防止し、ランニング処理においても自動現像機内部の処理ラック界面、ローラ部等の析出物の発生を防止し、良好な処理性能が得られる感光材料用漂白定着濃縮組成物及びこれを用いる処理方法並びに濃縮組成物包装体を提供する。
【解決手段】少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体及びチオ硫酸塩を含有する感光材料用漂白定着濃縮組成物において、該漂白定着濃縮組成物が、少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する第1の組成物とチオ硫酸塩を含有する第2の組成物との少なくとも2パートに分別され、かつ前記アミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する第1の組成物が、亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする感光材料用漂白定着濃縮組成物である。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体及びチオ硫酸塩を含有する感光材料用漂白定着濃縮組成物において、該漂白定着濃縮組成物が、少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する第1の組成物とチオ硫酸塩を含有する第2の組成物との少なくとも2パートに分別され、かつ前記アミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する第1の組成物が、亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする感光材料用漂白定着濃縮組成物である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、感光材料または感材とも略す。)用の漂白定着濃縮組成物及びこれを用いる処理方法並びに濃縮組成物包装体に関し、詳しくは実際の使用条件下である長期間の保管後のランニング処理において、ランニングにおける写真品質の劣化を防止し、良好な処理性能が得られる感光材料用漂白定着濃縮組成物及びこれを用いる処理方法並びに濃縮組成物包装体に関する。
【0002】
【従来技術】
漂白定着組成物は感光材料の処理において、画像銀を除去するのに用いられる。一般に画像銀を除去する工程は、銀を酸化剤作用によって感光材料中に含まれる銀粒子を銀イオンに酸化する漂白工程と酸化体によって生成した銀イオンを感光材料から溶解除去する定着工程の2つの工程を含んでいる。このため、漂白定着処理剤は漂白剤と定着剤を含み、一般的に定着剤は還元性を有しており、両者は保恒剤が存在しない場合には、容易に反応して失活する事が知られている。
【0003】
通常、保恒剤として亜硫酸塩などが用いられているが、保恒剤は経時で分解が進行し、また保恒剤が存在する場合でも高濃度に濃縮した場合には少なからず両者は反応し、本来の性能を損なう結果に至る事から、従来は漂白剤パートと定着剤パートの2パート構成として独立形態に設計されている。
【0004】
ところが、近年、廃液量を低減することを目的に処理液の低補充化が進んでいる。しかしながら低補充化することで、補充液を一時的に保管する自動現像機の補充液タンクの更新率が低下し、特に漂白定着液の場合、濃縮タイプから作成した補充液が補充タンク内部で保恒剤である亜硫酸塩の分解が進行し、劣化した補充液が処理タンクに補充されるため、漂白剤パートと定着剤パートの2パート構成の濃縮組成物(キット)でさえも、実際の使用条件下である長期間の保管後のランニング処理をする場合、補充液を一時的に貯蔵する補充タンク内部での析出物の発生による給水ポンプの目詰まりや自動現像機内部の処理ラック界面、ローラー部等に析出物が発生し、最悪の場合に写真品質の劣化や自動現像機の故障を招くといった問題が生じることが新たに判明した。
【0005】
また、一方で2パート以上の複数パートを取り扱う場合、ユーザーの煩雑さが増え、ましてや溶解時の誤溶解等により、目的の補充濃度が得られないといった問題が起こる。このため、ユーザーからは補充成分が1つのパート内に全て入っており、そのまま補充液として使用できる、いわゆるシングルパート(1パート)構成の補充液が望まれている。1パートで有れば、煩雑さは解消され、従来の複数パートに比べて溶解ミスを起こす可能性は圧倒的に小さい。そして、そのまま補充液として使用できる、いわゆる使用液タイプ、或いは水と一定の割合で希釈してから補充液として使用する、いわゆる濃縮液タイプと呼ばれる2種類のものが知られている。近年は、店舗面積の小さい、小規模の現像処理店、いわゆるミニラボ店が増加しているが、これらの店では補充液の保管スペースが非常に限られており、多大な保管スペースを必要とする使用液タイプのものよりも、小さな保管スペースで済む濃縮タイプのものがより望まれている。
【0006】
漂白定着濃縮組成物の1パート構成に関しては、高温での処理液の安定性、容器着色性及び保存後の漂白安定性の改良効果についての技術(特許文献1参照)が知られており、一方、低温での析出性、高温での処理液安定性やランニング処理での漂白安定性についての改良技術(特許文献2参照)が知られている。また、高温及び低温での保存性安定性に関する改良技術(特許文献3参照)も知られている。
【0007】
しかしながら、これら1パートの漂白定着濃縮組成物でも、前記2パートの漂白定着濃縮組成物と同様に保存後の処理液安定性や漂白安定性以外にも実際の使用条件下である長期間の保管後にランニング処理する場合、補充タンク内部に析出物が発生したり、自動現像機内部の処理ラック界面、ローラー部等に析出物が発生し、最悪の場合に写真品質の劣化や自動現像機の故障を招くといった問題は改善されていないことが新たに判明した。
【0008】
【特許文献1】特開2000−98553
【特許文献2】特開2002−169253
【特許文献3】特開2002−1449
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、実際の使用条件下である長期保管後の使用に際して補充液タンク内部の析出物の発生を防止し、ランニング処理においても自動現像機内部の処理ラック界面、ローラー部等の析出物の発生を防止し、良好な処理性能が得られる感光材料用漂白定着濃縮組成物及びこれを用いる処理方法並びに濃縮組成物包装体を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
1.少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体及びチオ硫酸塩を含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物において、該漂白定着濃縮組成物が、少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する第1の組成物とチオ硫酸塩を含有する第2の組成物との少なくとも2パートに分別され、かつ前記アミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する第1の組成物が、亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物。
【0011】
2.少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体及びチオ硫酸塩を含有する1パート構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物において、該漂白定着濃縮組成物が、亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物。
【0012】
3.前記アミノポリカルボン酸鉄錯体[X(モル%)]と前記亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物[Y(モル%)]の含有比率(Z)が
Z=Y/X 0.2〈 Z 〈 2.0
であることを特徴とする前記1又は2に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物。
【0013】
4.前記1、2又は3に記載の濃縮組成物が酸素透過度50ml/(m2・day・atm)以下の包装材料で包装されている事を特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物包装体。
【0014】
5.ハロゲン化銀カラー写真感光材料を漂白定着処理を含む工程によって処理する方法において、該漂白定着処理に用いられる漂白定着液として、前記1〜4のいずれかに記載の濃縮組成物を用いる事を特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のアミノポリカルボン酸鉄錯体における、主なアミノポリカルボン酸としてはエチレンジアミン四酢酸が挙げられる。キレート構造の安定、処理の迅速化からその他のアミノポリカルボン酸を含んでも良い。その他のアミノポリカルボン酸としては、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン−N−(β−オキシエチル)−N,N′,N′−三酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、エチルエーテルジアミンテトラ酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミン四プロピオン酸、フェニレンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパノール−N,N,N′,N′−四メチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−四メチレンホスホン酸、1,3−プロピレンジアミン−N,N,N′,N′−四メチレンホスホン酸、ニトリロ二酢酸モノプロピオン酸、ニトリロモノ酢酸ジプロピオン酸、2−(ビス−カルボキシメチル−アミノ)−プロピオン酸、2ーヒドロキシ−3−アミノプロピオン酸−N,N−二酢酸、セリン−N,N−二酢酸、2−メチル−セリン−N,N−二酢酸、2−ヒドロキシメチル−セリン−N,N−二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、メチルイミノ二酢酸、N−(2−アセトアミド)−イミノ二酢酸、ニトリロトリプロピオン酸、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、1,4−ジアミノブタン四酢酸、2−メチル−1,3−ジアミノプロパン四酢酸、2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン四酢酸などであるが、これらに限定されるものではない。また、その他のアミノポリカルボン酸を2種以上併用して用いてもよい。
【0016】
本発明に係る濃縮組成物1リットル当りのアミノポリカルボン酸鉄錯体の量は、0.05〜2.0molが好ましく、更に好ましくは0.1〜1.0molの範囲である。
【0017】
また、本発明の漂白定着濃縮組成物に使用される定着剤としては、公知の定着剤を特別の制限なく使用でき、例えば、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムなどチオ硫酸塩のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。
【0018】
チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムなどのチオシアン酸塩を併用しても良い。
【0019】
また、溶解性の点からチオ硫酸塩の中では、特にチオ硫酸アンモニウム塩が好ましい。また漂白定着濃縮組成物1リットル当りの定着剤の量は、0.5〜5.0molが好ましく、更に好ましくは0.5〜3.0molの範囲である。
【0020】
漂白定着濃縮組成物には、定着促進などの目的で副次的に他のハロゲン化銀溶解剤を加えてもよい。副次的に添加できる適当なハロゲン化銀溶解剤は、エチレンビスチオグリコール酸、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールなどのチオエーテル化合物およびチオ尿素、エチレンチオ尿素などのチオ尿素類などの水溶性ハロゲン化銀溶解剤があり、これらを1種あるいは2種以上処理剤成分として添加して使用することができる。
【0021】
本発明の漂白定着濃縮組成物において、少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する組成物が、亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが必要である。
【0022】
具体的には亜二チオン酸、アスコルビン酸は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩を含み亜二チオン酸ナトリウムやアスコルビン酸ナトリウムが好ましく用いられることができる。またヒドロキルアミンには硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミンを含んでなる。
【0023】
また、本発明の漂白定着濃縮組成物において、アミノポリカルボン酸鉄錯体[X(モル%)]と亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物[Y(モル%)]の含有比率(Z)が
Z=Y/X 0.2 〈 Z 〈 2.0
であることが好ましく、含有比率Zが0.2以下であれば、本発明の効果である補充タンク内部での析出物の発生による給水ポンプの目詰まりや自動現像機内部の処理ラック界面、ローラー部等に析出物の発生防止効果が望めなく、2.0以上の場合、漂白定着液の処理特性である脱銀性能、復色性能に影響を与えることが判っている。
【0024】
また、含有比率Zは、本発明の漂白定着濃縮組成物を製造した直後の値であり、漂白定着濃縮組成物を経時した後の含有率とは、異なり、本発明者は、この点において特に驚くべき効果があることを見出すことができた。
【0025】
本発明者の研究によれば、より好ましい含有比率Zは、0.4<Z<1.2であり、最も好ましい含有比率Zは、0.6<Z<1.0である。
【0026】
本発明の漂白定着濃縮組成物は、少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する第1の組成物とチオ硫酸塩を含有する第2の組成物との少なくとも2パートに分別されている場合には、該分別された漂白定着濃縮組成物を実際にユーザーが使用する時に分別された漂白定着濃縮組成物を混合して作成する補充液を一時的に貯蔵する補充タンク内部での析出物の発生による給水ポンプの目詰まりや自動現像機内部の処理ラック界面、ローラー部等に析出物の発生防止に効果を発揮し、そして、本発明の漂白定着濃縮組成物が少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体及びチオ硫酸塩を含有する1パート構成の漂白定着濃縮組成物である場合においても、同様の効果を発揮することが判った。
【0027】
本発明の漂白定着濃縮組成物には、緩衝剤を添加するのも好ましい。緩衝剤は意図するpHにより選択され、好ましい化合物としては、一般式(I)で表されるジカルボン酸、酢酸等の化合物が挙げられる。
【0028】
一般式(I) R(COOM)2
一般式(I)において、Rは単結合又は2価の基を表し、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基を表す。Rが表す好ましい2価の基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキレンオキシアルキレン基、アルキレンチオアルキレン基、シクロアルキレン基およびフェニレン基である。これらのアルキレン基およびアルケニレン基の炭素数は、1〜6で、更に水酸基又はカルボキシル基が置換していてもよい。また、アルキレンオキシアルキレン基及びアルキレンチオアルキレン基を構成するアルキレン基は炭素数が1〜4で、さらに単素数1〜3のアルキル基が1〜2個置換していてもよい。シクロアルキレン基およびフェニレン基には、単素数1〜3のアルキル基、水酸基、カルボキシル基が1〜2個置換していてもよく、そのシクロアルキレン基の炭素数は、1〜7である。
【0029】
一般式(I)で表されるジカルボン酸の具体例には、グリコール酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸等が挙げられるが、本発明に好ましく用いられる一般式(I)の化合物はこれらに限定されない。また、これらは2種以上の化合物を併用してもよい。緩衝剤の化合物の添加量は漂白定着濃縮組成物1リットル当り0.005mol〜4.0molが好ましく、さらに好ましくは0.05mol〜1.5molである。
【0030】
漂白定着濃縮組成物には、脱銀促進性を有する化合物を添加して、処理の迅速化と銀除去性能の向上を図ることができる。この目的に適した化合物には、特開平8−297356号及び特開平8−137070号の各公報に開示された1,2,4−トリアゾリウム−3−スルフィド型のメソイオン化合物(代表例として、1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−スルフィドなど)、特開平8−292510号公報に開示されたRSO2M(Rはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキル、アリ−ルの各基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基を表す。)型のスルフィン酸類(代表例として、フェニルスルフィン酸など)および特開平9−005964号公報に開示された3−メルカプト−1,2,4−トリアゾ−ル型のメルカプト化合物(代表例として、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾ−ル−1−メチルスルホン酸など)であり、これらの1つ以上を0.001〜0.1モル/Lの濃度で添加することができる。
【0031】
また、漂白定着濃縮組成物には、銀スラッジの生成を防止するために、銀塩形成性の化合物を添加することができる。この目的に適した化合物には、特開平8−204980号公報に開示されたグアニジンのN−アミノ置換又はN−アルコキシ置換誘導体(そのほかにアルキル基などが置換してもよい。)、(代表例として、N−(ジ−n−ブチルアミノプロピル)グアニジン、N−(ジ−n−プロピルアミノエチル)グアニジンなど)、特開平9−211820号公報に開示された2−メルカプトアゾール誘導体及び2−メルカプトピリミジン誘導体(代表例として、2−メルカプト−5−アセトアミドチアジアゾール、2−メルカプト−4−メチル−5−アミノ−ピリミジンなど)であり、これらの1つ以上を0.001〜0.1mol/Lの濃度で漂白定着濃縮組成物中に添加することができる。
【0032】
次に漂白定着濃縮組成物の濃縮率について述べる。濃厚液体処理組成物の濃厚化の度合いを示す実用的な尺度として「濃縮率」が通常用いられる。濃縮率は、処理組成物を水で希釈して目的とする処理液を調製したときに完成した処理液のもとの液体処理組成物に対する体積比によって表す。したがって、同一組成の濃縮型処理組成物であっても、その「濃縮率」は、厳密には使用液の濃度によって異なることになる。本明細書では、とくに断らない限り、「濃縮率」の基準となる使用液として、鉄イオンが0.2mol/L濃度になる漂白定着液を基準として用い、濃縮率は、この基準濃度の漂白定着液を調製するための希釈倍率で示している。また、本発明のにおける漂白定着濃縮組成物の好ましい濃縮率は少なくとも1以上5.0以下であり、より好ましくは1.2〜2.5の濃縮率である。
【0033】
本発明に係わる漂白定着濃縮組成物のpHは3〜8が好ましく、4〜7がより好ましい。pHがこれより低いと漂白能は向上するが、液の劣化及びシアン色素のロイコ化が促進される。逆にpHがこれより高いと漂白が遅れる。pHを調整するためには、必要に応じて塩酸、硫酸、硝酸、重炭酸塩、アンモニア、苛性カリ、苛性ソーダ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を添加することができる。また、漂白定着濃縮組成物には、その他各種の蛍光増白剤や消泡剤或いは界面活性剤、ポリビニルピロリドン、メタノール等の有機溶媒を含有させることができる。
【0034】
漂白定着濃縮組成物には、保恒剤として亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウムなど)、重亜硫酸塩(例えば、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムなど)やメタ重亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸アンモニウムなど)等の亜硫酸イオン放出性化合物、前記記載のp−トルエンスルフィン酸、m−カルボキシベンゼンスルフィン酸などのアリ−ルスルフィン酸などを含有させてもよい。その場合は、これらの化合物の添加量は亜硫酸イオンやスルフィン酸イオンに換算して約0.02〜0.8mol/Lであることが好ましい。漂白定着濃縮組成物の保恒剤としては、上記のほか、カルボニル重亜硫酸付加物又はその他のカルボニル化合物等を添加しても良い。
【0035】
次に漂白定着濃縮組成物を充填する包材について説明する。本発明の漂白定着濃縮組成物の包材は、50ml/(m2・day・atm)以下である事が、本発明の目的の効果の点から好ましい。包材の材質は紙、プラスチックなどいかなる材質のものでもよいが、酸素透過度が、より好ましくは20ml/(m2・day・atm)以下のプラスチック材料である。なお、ここでいう酸素透過度の測定は常法に従い、JIS1707記載の方法により測定した。
【0036】
本発明の包材で好ましく用いられるプラスチック材料としては、例えば次に示す包材が挙げられる。
【0037】
(一群)
A ポリオレフィン系樹脂
B ポリエチレンー酢酸ビニル共重合体系樹脂
C エチレンービニルアルコール共重合体系樹脂
D ポリアミド系樹脂
E セラミック
F アクリロニトリル系樹脂
G ポリエチレンテレフタレート系樹脂
H ポリハロゲン化ビニリデン系樹脂
I ポリハロゲン化ビニル系樹脂
【0038】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレン(以下、LDPEと略す。)、中密度ポリエチレン(以下、MDPEと略す。)および高密度ポリエチレン(以下、HDPEと略す。)のいずれも使用することができる。本発明に好ましく使用されるHDPEは、密度が0.941〜0.969のものである。また、LDPEは、高圧重合法で合成され、その密度は、0.910〜0.925である。
【0039】
本発明に用いられる包材(容器)としては、上記の密度範囲のHDPEを用いるのがよいが、さらにそのHDPEのメルトインデックス(ASTM D1238に規定された方法で、温度190°Cで押し出し圧力2.16kgで測定)が、0.3〜7.0g/10min、好ましくは0.3〜5.0g/10minであるものが好ましい。この範囲にあると漂白定着濃縮組成物用の包材(容器)として安定である。本発明における好ましい包材(容器)の厚みは、材質によって異なるが、好ましくは0.1〜2.0mm、とくに好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.4〜1.0mmである。
【0040】
ポリアミド系樹脂は突き刺し強度や耐ピンホール性からナイロンが好ましく用いられる、厚みは3〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜30μmである。とりわけ延伸ナイロンが本発明の目的の効果から好ましい。セラミックは酸化珪素を主体とする無機質であり、ポリエチレンとかポリエチレンフタレートに真空中でコートしても良い。これらの具体的なものは凸版印刷社製のGLタイプ(セラミック蒸着フィルム)等が挙げられる。
【0041】
またエチレンービニルアルコール共重合体樹脂としては、クラレ社製のクラレ、エバーフィルム(EF−XL,EF−F、EF−K)等が挙げられる。
【0042】
また、ポリハロゲン化ビニリデン系樹脂及びポリハロゲン化ビニル系樹脂のハロゲンとしては塩素、フッ素、臭素等が挙げられる、具体的にはポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等の樹脂が挙げられる。
【0043】
しかしながら、本発明においては、環境適正の観点から焼却処理時に有害ガスの発生が好ましくないため、前記一群の中でも、A〜Gが好ましく用いられ、特に好ましくはA〜Fのものである。
【0044】
本発明において用いられる各樹脂は、「プラスチックフィルム」(日刊工業新聞社発行、高橋儀作、昭和51年12月20日増補版)に記載のある中から本発明の条件を満足するものを用いることができる。
【0045】
これらの材料は、単一で成型して使用しても良いが、2種類以上の材料をフィルム状にして貼り会わせたいわゆる多層フィルムを使用しても良い。包材の形状も、瓶タイプ、ピロータイプ等あらゆる構成を取ることができる。本発明の包材の材料として多層フィルムを使用する場合、層構成としては例えば、下記に示す構成が挙げられる。
【0046】
(1) LLDPE/Ny(ナイロン)PET(ポリエチレンテレフタレート)
(2) LLDPE/Ny/EVOH(エバール)/Ny/ONy(延伸ナイロン)
(3) LLDPE/EVA(ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体)/Ny
(4) LLDPE/S・PE(サンドポリエチレン)/HDPE(高密度ポリエチレン)/NY/EVOH/NY/PET
(5) LLDPE/KOH(塩化ビニリデンコートナイロン)
(6) LLDPE/GLPET(セラミックコーティングポリエチレンテレフタレート)
(7) PE(ポリエチレン)/EVOH/OPP(延伸ポリプロピレン)
【0047】
(8) LDPE(低密度ポリエチレン)/EVOH/PET
(9) LDPE/EVOH/ONy
(10) PE/KPE(塩化ビニリデンポリエチレンポリエステル)
(11) PE/Ny
(12) PE/EVOH/Ny
(13) PE/EVOH/KPE
(14) PE/EVOH/KPET(塩化ビニリデンコートPET)
(15) LDPE/EVOH/KPET
(16) EVA(ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体)/Ny
【0048】
(17) EVA/ONy
(18) EVA/EVOH/ONy
(19) LDPE/AN(アクリロニトリル)/Ny
(20) LLDPE/S・PE/LLDPE/Ny/EVOH/Ny/ONy
(21) LLDPE/S・PE/HDPE/S・PE/LLDPE/Ny/EVOH/Ny/PET
(22) LLDPE/S・PE/LLDPE/Ny/EVOH/Ny/ONy
(23) LLDPE/S・PE/LLDPE/Ny/EVOH/Ny/PET
【0049】
多層フィルムの製法は特に限定されないが、例えばフィルムとフィルムを接着剤で貼り合わせる方法や、フィルムとフィルムを溶融した樹脂で貼り合わせる方法、2種以上の樹脂をスリットから一緒に押し出すいわゆる共押し出しといわれる方法、その他一般的に用いられるフィルム積層法などを単独又は組み合わせて用いられる。
【0050】
本発明にかかわる漂白定着濃縮組成物から得られる漂白定着補充液の補充量は、感光材料1m2当たり20ml〜250ml、好ましくは30ml〜200mlである。処理される感光材料がカラ−ペーパーの場合の漂白定着時間は、10秒から1分である。処理温度はカラ−ペーパーの場合、25℃〜60℃、好ましくは30℃〜50℃である。
【0051】
カラー現像処理、処理液および工程について説明する。現像処理工程は、発色現像、脱銀、水洗又は安定化、および安定化の各工程からなる。発色現像工程には、発色現像処理組成物から現像補充液および現像液が調製されて用いられる。その中には、カラー現像主薬を含有するが、好ましい例は公知の芳香族第1級アミン発色現像主薬、とくにp−フェニレンジアミン誘導体であり、代表例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
【0052】
1)N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン
2)4−アミノ−N,N−ジエチル−3−メチルアニリン
3)4−アミノ−N−(β−ヒドロキシエチル)−N−メチルアニリン
4)4−アミノ−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
5)4−アミノ−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)−3−メチルアニリン
6)4−アミノ−N−エチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)−3−メチルアニリン
【0053】
7)4−アミノ−N−エチル−N−(4−ヒドロキシブチル)−3−メチルアニリン
8)4−アミノ−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)−3−メチルアニリン
9)4−アミノ−N,N−ジエチル−3−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
10)4−アミノ−N−エチル−N−(β−メトキシエチル)−3メチル−アニリン
11)4−アミノ−N−(β−エトキシエチル)−N−エチル−3−メチルアニリン
12)4−アミノ−N−(3−カルバモイルプロピル−N−n−プロピル−3−メチルアニリン
13)4−アミノ−N−(4−カルバモイルブチル−N−n−プロピル−3−メチルアニリン
【0054】
上記p−フェニレンジアミン誘導体のうち特に好ましい主薬としては、例示化合物5),6),7),8)及び12)があり、その中でも化合物5)と8)が多用される。また、これらのp−フェニレンジアミン誘導体は、固体素材の状態では、通常硫酸塩、塩酸塩、亜硫酸塩、ナフタレンジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの塩の形である。
【0055】
発色現像処理剤組成物は、使用に際して水と定められた比率で混合されて現像補充液(またはさらに希釈した現像液)の形の使用液にして用いるが、使用液中の該芳香族第1級アミン現像主薬の濃度は現像液1リットル当り好ましくは2mmol〜200mmol、より好ましくは12mmol〜200mmol、更に好ましくは12mmol〜150mmolである。
【0056】
発色現像液には、通常ヒドロキシルアミン誘導体又はその塩あるいは、N−アルキルヒドロキシルアミン又はその塩を加えることが多いが、保恒剤としては、アルカノールアミン類、ヒドロキシルアミン誘導体、ヒドロキサム酸類、ヒドラジド類、フェノール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、糖類、ポリエチレンイミン類、モノアミン類、ジアミン類、ポリアミン類、四級アンモニウム塩類、ニトロキシラジカル類、アルコール類、オキシム類、ジアミド化合物類、縮環式アミン類などが特に有効である。
【0057】
これらは、特開昭63−4235号、同63−30845号、同63−21647号、同63−44655号、同63−53551号、同63−43140号、同63−56654号、同63−58346号、同63−43138号、同63−146041号、同63−44657号、同63−44656号、米国特許第3,615,503号、同2,494,903号、特開昭52−143020号、特公昭48−30496号などの各公報又は明細書に開示されている。処理剤組成物を構成する場合に、これらの補恒剤は主薬とは別のパートとして構成するのが好都合のことが多い。
【0058】
発色現像液は、通常塩素イオンを3.5×10−2〜1.5×10−1mol/L含有することが多いが、塩素イオンは、通常現像の副生成物として現像液に放出されるので補充液には添加不要のことが多い。臭素イオンの含有に関しても塩素イオンの場合と同じ事情にある。発色現像液中の臭素イオンは、プリント材料の処理では、1.0×10−3mol/L以下である。
【0059】
現像処理される感光材料がカラ−印画紙の場合は、画面の背景の白地が白いことが重要な画質特性なので、スチルベン系蛍光増白剤、とくにジ(トリアジルアミノ)スチルベン系や、4、4′−ジアミノ−2,2′−ジスルホスチルベン系の蛍光増白剤を発色現像液に添加することもある。このスチルベン系蛍光増白剤は、発色現像液のほか、脱銀液あるいは感光材料のいずれにも添加できる。発色現像液中に含ませる場合は、その好適濃度は1×10−4〜5×10−2mol/Lであり、より好ましくは2×10−4〜1×10−2mol/Lである。
【0060】
発色現像液や現像補充液はpH9.5以上、より好ましくは10.0〜12.5で用いられる。pHを安定に保持するためには、各種緩衝剤を用いるのが好ましい。緩衝剤としては、上記の炭酸塩の外に、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、グリシル塩、N,N−ジメチルグリシン塩、ロイシン塩、ノルロイシン塩、グアニン塩、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン塩、アラニン塩、アミノ酪酸塩、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール塩、バリン塩、プロリン塩、トリスヒドロキシアミノメタン塩、リシン塩などを用いることができる。該緩衝剤の量は、希釈調製した発色現像補充液中の濃度が、0.01〜2mol/L以上、特に0.1mol/L〜 0.5mol/Lとなるように組成物中に添加される。
【0061】
発色現像組成物には、その他の発色現像液成分、例えばカルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤であり、あるいはカラー現像液の安定性向上剤でもある各種キレート剤を添加することもできる。例えば、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、N,N,N−トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−テトラメチレンスルホン酸、エチレンジアミンN,N−ジ琥珀酸、N,N−ジ(カルボキシラート)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ琥珀酸、トランスシロヘキサンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンオルトヒドロキシフェニル酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、N,N′−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N′−ジ酢酸、1,2−ジヒドロキシベンゼン−4,6−ジスルホン酸等が挙げられる。
【0062】
これらのキレート剤は必要に応じて2種以上併用しても良い。これらのキレート剤の量は発色現像液中の金属イオンを封鎖するのに充分な量であれば良い。例えば1リットル当り0.1g〜10g程度になるように添加する。発色現像液には、必要により任意の現像促進剤を添加できる。現像促進剤としては、数多くの公報に表わされる公知のチオエーテル系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、4級アンモニウム塩類、アミン系化合物、ポリアルキレンオキサイド、その他1−フェニル−3−ピラゾリドン類、イミダゾール類等を必要に応じて添加することができる。
【0063】
また、発色現像液には、必要に応じて、任意のカブリ防止剤を添加できる。カブリ防止剤としては、アルカリ金属ハロゲン化物及び有機カブリ防止剤が使用できる。有機カブリ防止剤としては、例えばベンゾトリアゾール、6−ニトロベンズイミダゾール、5−ニトロイソインダゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−ニトロベンゾトリアゾール、5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−チアゾリル−ベンズイミダゾール、2−チアゾリルメチル−ベンズイミダゾール、インダゾール、ヒドロキシアザインドリジン、アデニンの如き含窒素ヘテロ環化合物を代表例として挙げることができる。
【0064】
又、ポリアルキレングリコール類、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の各種界面活性剤を添加しても良い。以上、本発明の漂白定着濃縮組成物による処理の場合に、好ましく用いられる発色現像組成物及びそれから調製される発色現像補充液又は現像液について説明した。
【0065】
発色現像の処理温度は、現像処理される感光材料がカラーペーパーの場合は、30〜55℃であり、好ましくは35〜55℃であり、より好ましくは38〜45℃である。現像処理時間は、5〜90秒であり、好ましくは、15〜60秒である。補充量は少ない方が好ましいが、感光材料1m2当り15〜600mlが適当であり、好ましくは30〜180mlである。
【0066】
また、本発明の漂白定着濃縮組成物は、カラー現像処理の脱銀工程に用いられるが、脱銀工程の構成は、つぎに示すように色々な形態を取ることが可能である。本発明の漂白定着濃縮組成物は、漂白定着補充液に調製されて漂白定着槽に添加され、通常この工程のみで脱銀工程が構成されるが、下記に示すように漂白あるいは定着工程が付加されることもある。
【0067】
代表的なカラー現像処理の脱銀工程の構成
(工程1) 漂白定着
(工程2) 漂白−漂白定着
(工程3) 漂白−漂白定着−定着
(工程4) 定着−漂白定着
(工程5) 漂白定着−定着
【0068】
また、これらの漂白、漂白定着、定着工程の個々の工程は、必要により複数浴に仕切られて、カスケード方式を採用することもある。漂白定着濃縮組成物およびそれから得られる処理液の組成、漂白定着工程の温度、処理時間などの条件についてはすでに説明したが、この工程について若干の補足を行う。
【0069】
本発明の処理方法に用いられる漂白定着液は、長時間、連続的な処理を行う場合は、エアレーションを実施することが写真性能を安定に保持するので好ましい。エアレーションには当業界で公知の手段が使用でき、空気の吹き込みやエゼクターを利用した空気の吸収などが実施できる。空気の吹き込みに際しては、微細なポアを有する散気管を通じて、液中に空気を放出させることが好ましい。このような散気管は、活性汚泥処理における曝気槽等に、広く使用されている。しかし、過度のエアレーションは、処理液成分の無用な酸化をもたらすので避ける必要がある。
【0070】
エアレーションに関しては、イーストマン・コダック社発行のZ−121、ユージング・プロセス・C−41第3版(1982年)、BL−1〜BL−2頁に記載の事項を利用できる。漂白定着液を用いた処理に於いては、攪拌がされていることが好ましく、その実施には特開平3−33847号公報の第8頁、右上欄、第6行〜左下欄、第2行に記載の内容が、そのまま利用できる。
【0071】
脱銀工程においては、攪拌ができるだけ強化されていることが好ましい。
攪拌強化の具体的な方法としては、特開昭62−183460号に記載の感光材料の乳剤面に処理液の噴流を衝突させる方法や、特開昭62−183461号の回転手段を用いて攪拌効果を上げる方法、更には液中に設けられたワイパーブレードと乳剤面を接触させながら感光材料を移動させ、乳剤表面を乱流化することによってより攪拌効果を向上させる方法、処理液全体の循環流量を増加させる方法が挙げられる。
【0072】
このような攪拌向上手段は、漂白液、漂白定着液、定着液のいずれにおいても有効である。攪拌の向上は乳剤膜中への漂白剤、定着剤の供給を速め、結果として脱銀速度を高めるものと考えられる。また、前記の攪拌向上手段は、漂白促進剤を使用した場合により有効であり、促進効果を著しく増加させたり漂白促進剤による定着阻害作用を解消させることができる。
【0073】
本発明に用いられる自動現像機は、特開昭60−191257号、同60−191258号、同60−191259号に記載の感光材料搬送手段を有していることが好ましい。前記の特開昭60−191257号に記載のとおり、このような搬送手段は前浴から後浴への処理液の持込みを著しく削減でき、処理液の性能劣化を防止する効果が高い。このような効果は各工程における処理時間の短縮や、処理液補充量の低減に特に有効である。
【0074】
定着又は漂白定着等の脱銀処理後、水洗又は水洗代替安定液処理、安定液処理あるいはその両方を行うのが一般的である。水洗又は水洗代替安定処理(以下まとめて水洗処理として述べる)工程での水洗水量は、感光材料の特性(例えばカプラー等使用素材による)や用途、水洗水温、水洗タンクの数(段数)、その他種々の条件によって広範囲に設定し得る。このうち、多段向流方式における水洗タンク数と水量の関係は、ジャーナル・オブ・ザ・ソサエティ・オブ・モーション・ピクチャー・アンド・テレヴィジョン・エンジニアズ(Journal of the Society of Motion Picture and Television Engineers)第64巻、p.248〜253(1955年5月号)に記載の方法で、求めることができる。通常多段向流方式における段数は3〜15が好ましく、特に3〜10が好ましい。多段向流方式によれば、水洗水量を大巾に減少でき、タンク内での水の滞留時間増加により、バクテリアが繁殖し、生成した浮遊物が感光材料に付着する等の問題が生じる。
【0075】
この様な問題の解決策として、特開昭62−288838号公報に記載のカルシウム、マグネシウムを低減させる方法を極めて有効に用いることができる。
【0076】
また、特開昭57−8542号公報に記載のイソチアゾロン化合物やサイアベンダゾール類、同61−120145号公報に記載の塩素化イソシアヌール酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤、特開昭61−267761号公報に記載のベンゾトリアゾール、銅イオン、その他堀口博著「防菌防黴の化学」(1986年)三共出版、衛生技術会編、「微生物の減菌、殺菌、防黴技術」(1982年)工業技術会、日本防菌防黴学会編「防菌防黴剤事典」(1986年)に記載の殺菌剤を用いることもできる。
【0077】
更に、水洗水には、水切り剤として界面活性剤や、硬水軟化剤としてEDTAに代表されるキレート剤を用いることができる。以上の水洗工程に続くか、又は水洗工程を経ずに直接安定液で処理することも出来る。安定液には、画像安定化機能を有する化合物が添加され、例えばホルマリンに代表されるアルデヒド化合物や、色素安定化に適した膜pHに調製するための緩衝剤や、アンモニウム化合物があげられる。
【0078】
また、残存するマゼンタカプラーを不活性化して色素の褪色やステインの生成を防止するホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ピルビンアルデヒドなどのアルデヒド類、米国特許第4786583号に記載のメチロール化合物やヘキサメチレンテトラミン、特開平2−153348号に記載のヘキサヒドロトリアジン類、米国特許第4921779号に記載のホルムアルデヒド重亜硫酸付加物、欧州特許公開公報第504609号、同519190号などに記載のアゾリルメチルアミン類などが添加される。又、液中でのバクテリアの繁殖防止や処理後の感光材料に防黴性を付与するため、前記した各種殺菌剤や防黴剤を用いることができる。更に、界面活性剤、蛍光増白剤、硬膜剤を加えることもできる。
【0079】
本発明に係わる処理において、安定化が水洗工程を経ることなく直接行われる場合、特開昭57−8543号、同58−14834号、同60−220345号公報等に記載の公知の方法をすべて用いることができる。その他、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミン四メチレンホスホン酸等のキレート剤、マグネシウムやビスマス化合物を用いることも好ましい態様である。
【0080】
脱銀処理後に用いられる水洗液又は安定液としていわゆるリンス液も同様に用いられる。水洗水又は安定液の好ましいpHは4〜10であり、更に好ましくは5〜8である。温度は感光材料の用途・特性等で種々設定し得るが、一般には20℃〜50℃、好ましくは25℃〜45℃である。水洗又は安定液処理の工程に続いて乾燥が行われる。画像膜への水分の持込み量を減じる観点から水洗浴から出た後すぐにスクイズローラや布などで水を吸収することで乾燥を早めることも可能である。乾燥機側からの改善手段としては、当然のことではあるが、温度を高くすることや吹きつけノズルの形状を変更し乾燥風を強くすることなどで乾燥を早めることが可能である。更に、特開平3−157650号公報に記載されているように、乾燥風の感光材料への送風角度の調整や、排出風の除去方法によっても乾燥を早めることができる。
【0081】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
実施例1
・漂白定着濃縮組成物(2パート)の作成:
以下に示す漂白定着濃縮組成物を調整し、表1に示す酸素透過率の異なる素材で構成された包材に漂白定着濃縮組成物を空隙率20%で充填し、2パート漂白定着濃縮組成物包装体(キット)を作成した。
【0083】
漂白定着濃縮組成物の調整
水を加えて335mlとする。このときpHは5.30であった。
【0084】
水を加えて365mlとし、pHはアンモニア水溶液又は50%硫酸を用いて5.5となるように調整した。
【0085】
【表1】
【0086】
これらの漂白定着濃縮組成物キットを、室温(18〜22℃)で3ヶ月間保管し、保管後のキットを下記の如く、調整し各々漂白定着液補充液(10L用)を40L分作成した。
【0087】
漂白定着液補充液(10L用)
純水 3000ml
漂白定着濃縮組成物パートA 3350ml
漂白定着濃縮組成物パートB 3650ml
【0088】
さらに、これらの補充液をコニカ社製自動現像機NPS−808GOLDの漂白定着液用補充タンクに5Lづつ充填し、常温(22〜25℃)下で2週間貯蔵した後、各補充液中の亜硫酸イオンの残存率及びEDTA−Fe・NH4:エチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウムの存在率及び補充タンク壁面及び底部の析出物の様子を観察した。
【0089】
析出物評価
◎・・・析出物等の発生なく問題なし
○・・・僅かに液界面に析出物が発生
△・・・液界面に析出物が多量に発生
×・・・液界面及び補充タンク底部に析出物が多量発生
【0090】
【表2】
【0091】
表2から明らかなように、本発明の構成を用いることで、補充液タンク内の析出物の発生が抑制され、尚かつ保恒剤である亜硫酸の残存率も高く硫化の耐性も向上される。また、本発明の組み合わせの中でも、アミノポリカルボン酸鉄錯体[X(モル%)]と亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物[Y(モル%)]の含有比率(Z)が0.2〈 Z〈 2.0である場合に処理液の保存性を意味する亜硫酸残存率と処理性に影響するエチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウムの存在率の観点から好ましいことが判り、0.4〈 Z 〈 1.2がさらに好ましく、最も好ましいのが0.6〈 Z 〈 1.0であることが判った。
【0092】
さらに、酸素透過率が50ml/(m2・day・atm)以下の包装材料で包装することで効果がより良く発揮されている事が判る。
【0093】
実施例2
実施例1で作成した各補充液を用いて実際のカラーペーパー感光材料でのランニング処理を行った。また、この漂白定着液補充液をタンク液にも使用した。
・露光及び現像処理
現像処理のカラーペーパー感光材料には、コニカカラーQAペーパータイプA7(コニカ社製)を用い、ネガフィルムから像様像露光して使用した。
【0094】
現像処理は、上記露光済み試料を下記に示す工程で処理した。また、現像処理機はコニカ社製自動現像機NPS−808GOLDを使用した。処理としては1日あたり0.2Rづつ、2Rになるまでランニング処理を行い、以下について評価した。2Rとは漂白定着液タンク容量分の漂白定着補充液が2倍量補充されることを意味する。
【0095】
処理工程
安定化は(3)→(2)→(1)への向流方式である
発色現像及び安定化のタンク液処方及び補充液処方について以下に示す。
【0096】
発色現像液:1L当り
水を加えて1Lとし、pHは水酸化カリウムまたは50%硫酸を用いて調整した。
【0097】
安定化液:1L当り
水を加えて1Lとし、pHはアンモニア水溶液または50%硫酸を用いて調整した。
【0098】
評価
ランニング処理のスタート時にウェッジ露光したコニカカラーQAペーパータイプA7ペーパーを処理し、レッド濃度の最大濃度(Dmax−Red)をX−rite濃度計により測定した。さらに、ランニング処理の終了後に、ランニングスタート時と同様のウェッジ露光した感光材料を再度処理し、レッド濃度の最大濃度を、スタート時同様、X−rite濃度計により測定を行い、ランニング処理によるレッド濃度の最大濃度の変化量(ΔDmax−Red)、すなわち復色性を評価した。
また、ランニング終了時点での自現機内の漂白定着液タンク壁面及び底部の析出物の様子を観察した。
【0099】
析出物評価
◎・・・析出物等の発生なく問題なし
○・・・僅かに液界面に析出物が発生
△・・・液界面に析出物が多量に発生
×・・・液界面及び補充タンク底部に析出物が多量発生
以上の結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
表3から明らかなように、本発明の構成を用いることで、ランニング処理における復色不良を最小限にすることが可能となり、自現機内の漂白定着液タンク壁面及び底部の析出物も問題ないレベルに軽減できる。
【0102】
実施例3
実施例1の漂白定着濃縮組成物(2パート)の作成におけるパートB中のEDTA−Fe・NH4:エチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウムに変えて表4に示すアミノポリカルボン酸鉄錯体化合物に変化させた以外は実施例1と同様の実験を行った。
結果を表4に示す。
【0103】
【表4】
【0104】
表4から明らかなように、本発明のアミノポリカルボン酸鉄錯体化合物はEDTA−Fe・NH4:エチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウム、s,s−EDDS−Fe・NH4:s,s−エチレンジアミンジコハク酸鉄(III)アンモニウム、DTPA−Fe・NH4:ジエチレントリアミン五酢酸鉄(III)アンモニウムの順に本発明の必須化合物の一つである亜二チオン酸ナトリウムを添加したときの、亜硫酸残存量の改善効果が顕著になることから好ましいことが判った。
【0105】
実施例4
実施例1の漂白定着濃縮組成物を下記に示すシングルパートキットに変えた以外は実施例1と同様に表1に示す酸素透過率の異なる素材で構成された包材に漂白定着濃縮組成物を空隙率20%で充填し、シングルパート漂白定着濃縮組成物包装体(キット)を作成し実施例1と同様の実験を行った。
【0106】
漂白定着濃縮組成物(シングルパートキット)の調整
水を加えて500mlとし、pHはアンモニア水溶液又は50%硫酸を用いて5.5となるように調整した。
【0107】
これらの漂白定着濃縮組成物キットを、室温(18〜22℃)で3ヶ月間保管し、保管後のキットを下記の如く、調整し各々漂白定着液補充液(10L用)を40L分作成した。
【0108】
漂白定着液補充液(10L用)
純水 5000ml
漂白定着濃縮組成物(シングルパートキット) 5000ml
結果を表5に示す。
【0109】
【表5】
【0110】
表5から明らかなように、本発明の構成を用いることで、シングルパートキット型漂白定着濃縮キットでも補充液タンク内の析出物の発生が抑制され、尚かつ保恒剤である亜硫酸の残存率も高く硫化の耐性も向上される。また、本発明の組み合わせの中でも、アミノポリカルボン酸鉄錯体[X(モル%)]と亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物[Y(モル%)]の含有比率(Z)が0.2〈 Z 〈 2.0である場合に処理液の保存性を意味する亜硫酸残存率と処理性に影響するエチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウムの存在率の観点から好ましいことが判り、0.4〈Z 〈 1.2がさらに好ましく、最も好ましいのが0.6〈 Z 〈 1.0であることが判った。
【0111】
さらに、酸素透過率が50ml/(m2・day・atm)以下の包装材料で包装することで効果がより良く発揮されている事が判る。
【0112】
実施例5
実施例4で作成した各補充液を用いて実施例2と同様のカラーペーパー感光材料でのランニング処理を行った。
結果を表6に示す。
【0113】
【表6】
【0114】
表6から明らかなように、本発明の構成を用いることで、シングルパートキット型漂白定着濃縮組成物キットにおいてもランニング処理における復色不良を最小限にすることが可能となり、自現機内の漂白定着液タンク壁面及び底部の析出物も問題ないレベルに軽減できる。
【0115】
実施例6
実施例4で作成したシングルパートタイプの漂白定着濃縮組成物キットにおいて実験No.5−10,5−21及び5−22の添加剤の残存率をキット作成後、常温化で経時させながら測定した。
結果を図1に示す。
【0116】
図1から、本発明の添加物は通常の漂白定着濃縮組成物キットの貯蔵において容易に分解することが判り、尚かつ、本発明の効果を得られる化合物であることが判り、言い換えれば、写真用漂白定着濃縮組成物キットとして必須の現像性能に影響がない化合物であると言える。
【0117】
従って、本発明の添加剤のうち亜二チオン酸が分解が速やかである観点から好ましい化合物であり、次いでアスコルビン酸の序列となる。
【0118】
【発明の効果】
本発明によれば、実際の使用条件下である長期保管後の使用に際して補充液タンク内部の析出物の発生を防止し、ランニング処理においても自動現像機内部の処理ラック界面、ローラー部等の析出物の発生を防止し、良好な処理性能が得られる感光材料用漂白定着濃縮組成物及びこれを用いる処理方法並びに濃縮組成物包装体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例6で得られた添加物残存量を示すグラフ
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、感光材料または感材とも略す。)用の漂白定着濃縮組成物及びこれを用いる処理方法並びに濃縮組成物包装体に関し、詳しくは実際の使用条件下である長期間の保管後のランニング処理において、ランニングにおける写真品質の劣化を防止し、良好な処理性能が得られる感光材料用漂白定着濃縮組成物及びこれを用いる処理方法並びに濃縮組成物包装体に関する。
【0002】
【従来技術】
漂白定着組成物は感光材料の処理において、画像銀を除去するのに用いられる。一般に画像銀を除去する工程は、銀を酸化剤作用によって感光材料中に含まれる銀粒子を銀イオンに酸化する漂白工程と酸化体によって生成した銀イオンを感光材料から溶解除去する定着工程の2つの工程を含んでいる。このため、漂白定着処理剤は漂白剤と定着剤を含み、一般的に定着剤は還元性を有しており、両者は保恒剤が存在しない場合には、容易に反応して失活する事が知られている。
【0003】
通常、保恒剤として亜硫酸塩などが用いられているが、保恒剤は経時で分解が進行し、また保恒剤が存在する場合でも高濃度に濃縮した場合には少なからず両者は反応し、本来の性能を損なう結果に至る事から、従来は漂白剤パートと定着剤パートの2パート構成として独立形態に設計されている。
【0004】
ところが、近年、廃液量を低減することを目的に処理液の低補充化が進んでいる。しかしながら低補充化することで、補充液を一時的に保管する自動現像機の補充液タンクの更新率が低下し、特に漂白定着液の場合、濃縮タイプから作成した補充液が補充タンク内部で保恒剤である亜硫酸塩の分解が進行し、劣化した補充液が処理タンクに補充されるため、漂白剤パートと定着剤パートの2パート構成の濃縮組成物(キット)でさえも、実際の使用条件下である長期間の保管後のランニング処理をする場合、補充液を一時的に貯蔵する補充タンク内部での析出物の発生による給水ポンプの目詰まりや自動現像機内部の処理ラック界面、ローラー部等に析出物が発生し、最悪の場合に写真品質の劣化や自動現像機の故障を招くといった問題が生じることが新たに判明した。
【0005】
また、一方で2パート以上の複数パートを取り扱う場合、ユーザーの煩雑さが増え、ましてや溶解時の誤溶解等により、目的の補充濃度が得られないといった問題が起こる。このため、ユーザーからは補充成分が1つのパート内に全て入っており、そのまま補充液として使用できる、いわゆるシングルパート(1パート)構成の補充液が望まれている。1パートで有れば、煩雑さは解消され、従来の複数パートに比べて溶解ミスを起こす可能性は圧倒的に小さい。そして、そのまま補充液として使用できる、いわゆる使用液タイプ、或いは水と一定の割合で希釈してから補充液として使用する、いわゆる濃縮液タイプと呼ばれる2種類のものが知られている。近年は、店舗面積の小さい、小規模の現像処理店、いわゆるミニラボ店が増加しているが、これらの店では補充液の保管スペースが非常に限られており、多大な保管スペースを必要とする使用液タイプのものよりも、小さな保管スペースで済む濃縮タイプのものがより望まれている。
【0006】
漂白定着濃縮組成物の1パート構成に関しては、高温での処理液の安定性、容器着色性及び保存後の漂白安定性の改良効果についての技術(特許文献1参照)が知られており、一方、低温での析出性、高温での処理液安定性やランニング処理での漂白安定性についての改良技術(特許文献2参照)が知られている。また、高温及び低温での保存性安定性に関する改良技術(特許文献3参照)も知られている。
【0007】
しかしながら、これら1パートの漂白定着濃縮組成物でも、前記2パートの漂白定着濃縮組成物と同様に保存後の処理液安定性や漂白安定性以外にも実際の使用条件下である長期間の保管後にランニング処理する場合、補充タンク内部に析出物が発生したり、自動現像機内部の処理ラック界面、ローラー部等に析出物が発生し、最悪の場合に写真品質の劣化や自動現像機の故障を招くといった問題は改善されていないことが新たに判明した。
【0008】
【特許文献1】特開2000−98553
【特許文献2】特開2002−169253
【特許文献3】特開2002−1449
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、実際の使用条件下である長期保管後の使用に際して補充液タンク内部の析出物の発生を防止し、ランニング処理においても自動現像機内部の処理ラック界面、ローラー部等の析出物の発生を防止し、良好な処理性能が得られる感光材料用漂白定着濃縮組成物及びこれを用いる処理方法並びに濃縮組成物包装体を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
1.少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体及びチオ硫酸塩を含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物において、該漂白定着濃縮組成物が、少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する第1の組成物とチオ硫酸塩を含有する第2の組成物との少なくとも2パートに分別され、かつ前記アミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する第1の組成物が、亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物。
【0011】
2.少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体及びチオ硫酸塩を含有する1パート構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物において、該漂白定着濃縮組成物が、亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物。
【0012】
3.前記アミノポリカルボン酸鉄錯体[X(モル%)]と前記亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物[Y(モル%)]の含有比率(Z)が
Z=Y/X 0.2〈 Z 〈 2.0
であることを特徴とする前記1又は2に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物。
【0013】
4.前記1、2又は3に記載の濃縮組成物が酸素透過度50ml/(m2・day・atm)以下の包装材料で包装されている事を特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物包装体。
【0014】
5.ハロゲン化銀カラー写真感光材料を漂白定着処理を含む工程によって処理する方法において、該漂白定着処理に用いられる漂白定着液として、前記1〜4のいずれかに記載の濃縮組成物を用いる事を特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のアミノポリカルボン酸鉄錯体における、主なアミノポリカルボン酸としてはエチレンジアミン四酢酸が挙げられる。キレート構造の安定、処理の迅速化からその他のアミノポリカルボン酸を含んでも良い。その他のアミノポリカルボン酸としては、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン−N−(β−オキシエチル)−N,N′,N′−三酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、エチルエーテルジアミンテトラ酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミン四プロピオン酸、フェニレンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパノール−N,N,N′,N′−四メチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−四メチレンホスホン酸、1,3−プロピレンジアミン−N,N,N′,N′−四メチレンホスホン酸、ニトリロ二酢酸モノプロピオン酸、ニトリロモノ酢酸ジプロピオン酸、2−(ビス−カルボキシメチル−アミノ)−プロピオン酸、2ーヒドロキシ−3−アミノプロピオン酸−N,N−二酢酸、セリン−N,N−二酢酸、2−メチル−セリン−N,N−二酢酸、2−ヒドロキシメチル−セリン−N,N−二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、メチルイミノ二酢酸、N−(2−アセトアミド)−イミノ二酢酸、ニトリロトリプロピオン酸、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、1,4−ジアミノブタン四酢酸、2−メチル−1,3−ジアミノプロパン四酢酸、2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン四酢酸などであるが、これらに限定されるものではない。また、その他のアミノポリカルボン酸を2種以上併用して用いてもよい。
【0016】
本発明に係る濃縮組成物1リットル当りのアミノポリカルボン酸鉄錯体の量は、0.05〜2.0molが好ましく、更に好ましくは0.1〜1.0molの範囲である。
【0017】
また、本発明の漂白定着濃縮組成物に使用される定着剤としては、公知の定着剤を特別の制限なく使用でき、例えば、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムなどチオ硫酸塩のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。
【0018】
チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムなどのチオシアン酸塩を併用しても良い。
【0019】
また、溶解性の点からチオ硫酸塩の中では、特にチオ硫酸アンモニウム塩が好ましい。また漂白定着濃縮組成物1リットル当りの定着剤の量は、0.5〜5.0molが好ましく、更に好ましくは0.5〜3.0molの範囲である。
【0020】
漂白定着濃縮組成物には、定着促進などの目的で副次的に他のハロゲン化銀溶解剤を加えてもよい。副次的に添加できる適当なハロゲン化銀溶解剤は、エチレンビスチオグリコール酸、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールなどのチオエーテル化合物およびチオ尿素、エチレンチオ尿素などのチオ尿素類などの水溶性ハロゲン化銀溶解剤があり、これらを1種あるいは2種以上処理剤成分として添加して使用することができる。
【0021】
本発明の漂白定着濃縮組成物において、少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する組成物が、亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが必要である。
【0022】
具体的には亜二チオン酸、アスコルビン酸は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩を含み亜二チオン酸ナトリウムやアスコルビン酸ナトリウムが好ましく用いられることができる。またヒドロキルアミンには硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミンを含んでなる。
【0023】
また、本発明の漂白定着濃縮組成物において、アミノポリカルボン酸鉄錯体[X(モル%)]と亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物[Y(モル%)]の含有比率(Z)が
Z=Y/X 0.2 〈 Z 〈 2.0
であることが好ましく、含有比率Zが0.2以下であれば、本発明の効果である補充タンク内部での析出物の発生による給水ポンプの目詰まりや自動現像機内部の処理ラック界面、ローラー部等に析出物の発生防止効果が望めなく、2.0以上の場合、漂白定着液の処理特性である脱銀性能、復色性能に影響を与えることが判っている。
【0024】
また、含有比率Zは、本発明の漂白定着濃縮組成物を製造した直後の値であり、漂白定着濃縮組成物を経時した後の含有率とは、異なり、本発明者は、この点において特に驚くべき効果があることを見出すことができた。
【0025】
本発明者の研究によれば、より好ましい含有比率Zは、0.4<Z<1.2であり、最も好ましい含有比率Zは、0.6<Z<1.0である。
【0026】
本発明の漂白定着濃縮組成物は、少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する第1の組成物とチオ硫酸塩を含有する第2の組成物との少なくとも2パートに分別されている場合には、該分別された漂白定着濃縮組成物を実際にユーザーが使用する時に分別された漂白定着濃縮組成物を混合して作成する補充液を一時的に貯蔵する補充タンク内部での析出物の発生による給水ポンプの目詰まりや自動現像機内部の処理ラック界面、ローラー部等に析出物の発生防止に効果を発揮し、そして、本発明の漂白定着濃縮組成物が少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体及びチオ硫酸塩を含有する1パート構成の漂白定着濃縮組成物である場合においても、同様の効果を発揮することが判った。
【0027】
本発明の漂白定着濃縮組成物には、緩衝剤を添加するのも好ましい。緩衝剤は意図するpHにより選択され、好ましい化合物としては、一般式(I)で表されるジカルボン酸、酢酸等の化合物が挙げられる。
【0028】
一般式(I) R(COOM)2
一般式(I)において、Rは単結合又は2価の基を表し、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基を表す。Rが表す好ましい2価の基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキレンオキシアルキレン基、アルキレンチオアルキレン基、シクロアルキレン基およびフェニレン基である。これらのアルキレン基およびアルケニレン基の炭素数は、1〜6で、更に水酸基又はカルボキシル基が置換していてもよい。また、アルキレンオキシアルキレン基及びアルキレンチオアルキレン基を構成するアルキレン基は炭素数が1〜4で、さらに単素数1〜3のアルキル基が1〜2個置換していてもよい。シクロアルキレン基およびフェニレン基には、単素数1〜3のアルキル基、水酸基、カルボキシル基が1〜2個置換していてもよく、そのシクロアルキレン基の炭素数は、1〜7である。
【0029】
一般式(I)で表されるジカルボン酸の具体例には、グリコール酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸等が挙げられるが、本発明に好ましく用いられる一般式(I)の化合物はこれらに限定されない。また、これらは2種以上の化合物を併用してもよい。緩衝剤の化合物の添加量は漂白定着濃縮組成物1リットル当り0.005mol〜4.0molが好ましく、さらに好ましくは0.05mol〜1.5molである。
【0030】
漂白定着濃縮組成物には、脱銀促進性を有する化合物を添加して、処理の迅速化と銀除去性能の向上を図ることができる。この目的に適した化合物には、特開平8−297356号及び特開平8−137070号の各公報に開示された1,2,4−トリアゾリウム−3−スルフィド型のメソイオン化合物(代表例として、1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−スルフィドなど)、特開平8−292510号公報に開示されたRSO2M(Rはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキル、アリ−ルの各基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基を表す。)型のスルフィン酸類(代表例として、フェニルスルフィン酸など)および特開平9−005964号公報に開示された3−メルカプト−1,2,4−トリアゾ−ル型のメルカプト化合物(代表例として、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾ−ル−1−メチルスルホン酸など)であり、これらの1つ以上を0.001〜0.1モル/Lの濃度で添加することができる。
【0031】
また、漂白定着濃縮組成物には、銀スラッジの生成を防止するために、銀塩形成性の化合物を添加することができる。この目的に適した化合物には、特開平8−204980号公報に開示されたグアニジンのN−アミノ置換又はN−アルコキシ置換誘導体(そのほかにアルキル基などが置換してもよい。)、(代表例として、N−(ジ−n−ブチルアミノプロピル)グアニジン、N−(ジ−n−プロピルアミノエチル)グアニジンなど)、特開平9−211820号公報に開示された2−メルカプトアゾール誘導体及び2−メルカプトピリミジン誘導体(代表例として、2−メルカプト−5−アセトアミドチアジアゾール、2−メルカプト−4−メチル−5−アミノ−ピリミジンなど)であり、これらの1つ以上を0.001〜0.1mol/Lの濃度で漂白定着濃縮組成物中に添加することができる。
【0032】
次に漂白定着濃縮組成物の濃縮率について述べる。濃厚液体処理組成物の濃厚化の度合いを示す実用的な尺度として「濃縮率」が通常用いられる。濃縮率は、処理組成物を水で希釈して目的とする処理液を調製したときに完成した処理液のもとの液体処理組成物に対する体積比によって表す。したがって、同一組成の濃縮型処理組成物であっても、その「濃縮率」は、厳密には使用液の濃度によって異なることになる。本明細書では、とくに断らない限り、「濃縮率」の基準となる使用液として、鉄イオンが0.2mol/L濃度になる漂白定着液を基準として用い、濃縮率は、この基準濃度の漂白定着液を調製するための希釈倍率で示している。また、本発明のにおける漂白定着濃縮組成物の好ましい濃縮率は少なくとも1以上5.0以下であり、より好ましくは1.2〜2.5の濃縮率である。
【0033】
本発明に係わる漂白定着濃縮組成物のpHは3〜8が好ましく、4〜7がより好ましい。pHがこれより低いと漂白能は向上するが、液の劣化及びシアン色素のロイコ化が促進される。逆にpHがこれより高いと漂白が遅れる。pHを調整するためには、必要に応じて塩酸、硫酸、硝酸、重炭酸塩、アンモニア、苛性カリ、苛性ソーダ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を添加することができる。また、漂白定着濃縮組成物には、その他各種の蛍光増白剤や消泡剤或いは界面活性剤、ポリビニルピロリドン、メタノール等の有機溶媒を含有させることができる。
【0034】
漂白定着濃縮組成物には、保恒剤として亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウムなど)、重亜硫酸塩(例えば、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムなど)やメタ重亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸アンモニウムなど)等の亜硫酸イオン放出性化合物、前記記載のp−トルエンスルフィン酸、m−カルボキシベンゼンスルフィン酸などのアリ−ルスルフィン酸などを含有させてもよい。その場合は、これらの化合物の添加量は亜硫酸イオンやスルフィン酸イオンに換算して約0.02〜0.8mol/Lであることが好ましい。漂白定着濃縮組成物の保恒剤としては、上記のほか、カルボニル重亜硫酸付加物又はその他のカルボニル化合物等を添加しても良い。
【0035】
次に漂白定着濃縮組成物を充填する包材について説明する。本発明の漂白定着濃縮組成物の包材は、50ml/(m2・day・atm)以下である事が、本発明の目的の効果の点から好ましい。包材の材質は紙、プラスチックなどいかなる材質のものでもよいが、酸素透過度が、より好ましくは20ml/(m2・day・atm)以下のプラスチック材料である。なお、ここでいう酸素透過度の測定は常法に従い、JIS1707記載の方法により測定した。
【0036】
本発明の包材で好ましく用いられるプラスチック材料としては、例えば次に示す包材が挙げられる。
【0037】
(一群)
A ポリオレフィン系樹脂
B ポリエチレンー酢酸ビニル共重合体系樹脂
C エチレンービニルアルコール共重合体系樹脂
D ポリアミド系樹脂
E セラミック
F アクリロニトリル系樹脂
G ポリエチレンテレフタレート系樹脂
H ポリハロゲン化ビニリデン系樹脂
I ポリハロゲン化ビニル系樹脂
【0038】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレン(以下、LDPEと略す。)、中密度ポリエチレン(以下、MDPEと略す。)および高密度ポリエチレン(以下、HDPEと略す。)のいずれも使用することができる。本発明に好ましく使用されるHDPEは、密度が0.941〜0.969のものである。また、LDPEは、高圧重合法で合成され、その密度は、0.910〜0.925である。
【0039】
本発明に用いられる包材(容器)としては、上記の密度範囲のHDPEを用いるのがよいが、さらにそのHDPEのメルトインデックス(ASTM D1238に規定された方法で、温度190°Cで押し出し圧力2.16kgで測定)が、0.3〜7.0g/10min、好ましくは0.3〜5.0g/10minであるものが好ましい。この範囲にあると漂白定着濃縮組成物用の包材(容器)として安定である。本発明における好ましい包材(容器)の厚みは、材質によって異なるが、好ましくは0.1〜2.0mm、とくに好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.4〜1.0mmである。
【0040】
ポリアミド系樹脂は突き刺し強度や耐ピンホール性からナイロンが好ましく用いられる、厚みは3〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜30μmである。とりわけ延伸ナイロンが本発明の目的の効果から好ましい。セラミックは酸化珪素を主体とする無機質であり、ポリエチレンとかポリエチレンフタレートに真空中でコートしても良い。これらの具体的なものは凸版印刷社製のGLタイプ(セラミック蒸着フィルム)等が挙げられる。
【0041】
またエチレンービニルアルコール共重合体樹脂としては、クラレ社製のクラレ、エバーフィルム(EF−XL,EF−F、EF−K)等が挙げられる。
【0042】
また、ポリハロゲン化ビニリデン系樹脂及びポリハロゲン化ビニル系樹脂のハロゲンとしては塩素、フッ素、臭素等が挙げられる、具体的にはポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等の樹脂が挙げられる。
【0043】
しかしながら、本発明においては、環境適正の観点から焼却処理時に有害ガスの発生が好ましくないため、前記一群の中でも、A〜Gが好ましく用いられ、特に好ましくはA〜Fのものである。
【0044】
本発明において用いられる各樹脂は、「プラスチックフィルム」(日刊工業新聞社発行、高橋儀作、昭和51年12月20日増補版)に記載のある中から本発明の条件を満足するものを用いることができる。
【0045】
これらの材料は、単一で成型して使用しても良いが、2種類以上の材料をフィルム状にして貼り会わせたいわゆる多層フィルムを使用しても良い。包材の形状も、瓶タイプ、ピロータイプ等あらゆる構成を取ることができる。本発明の包材の材料として多層フィルムを使用する場合、層構成としては例えば、下記に示す構成が挙げられる。
【0046】
(1) LLDPE/Ny(ナイロン)PET(ポリエチレンテレフタレート)
(2) LLDPE/Ny/EVOH(エバール)/Ny/ONy(延伸ナイロン)
(3) LLDPE/EVA(ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体)/Ny
(4) LLDPE/S・PE(サンドポリエチレン)/HDPE(高密度ポリエチレン)/NY/EVOH/NY/PET
(5) LLDPE/KOH(塩化ビニリデンコートナイロン)
(6) LLDPE/GLPET(セラミックコーティングポリエチレンテレフタレート)
(7) PE(ポリエチレン)/EVOH/OPP(延伸ポリプロピレン)
【0047】
(8) LDPE(低密度ポリエチレン)/EVOH/PET
(9) LDPE/EVOH/ONy
(10) PE/KPE(塩化ビニリデンポリエチレンポリエステル)
(11) PE/Ny
(12) PE/EVOH/Ny
(13) PE/EVOH/KPE
(14) PE/EVOH/KPET(塩化ビニリデンコートPET)
(15) LDPE/EVOH/KPET
(16) EVA(ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体)/Ny
【0048】
(17) EVA/ONy
(18) EVA/EVOH/ONy
(19) LDPE/AN(アクリロニトリル)/Ny
(20) LLDPE/S・PE/LLDPE/Ny/EVOH/Ny/ONy
(21) LLDPE/S・PE/HDPE/S・PE/LLDPE/Ny/EVOH/Ny/PET
(22) LLDPE/S・PE/LLDPE/Ny/EVOH/Ny/ONy
(23) LLDPE/S・PE/LLDPE/Ny/EVOH/Ny/PET
【0049】
多層フィルムの製法は特に限定されないが、例えばフィルムとフィルムを接着剤で貼り合わせる方法や、フィルムとフィルムを溶融した樹脂で貼り合わせる方法、2種以上の樹脂をスリットから一緒に押し出すいわゆる共押し出しといわれる方法、その他一般的に用いられるフィルム積層法などを単独又は組み合わせて用いられる。
【0050】
本発明にかかわる漂白定着濃縮組成物から得られる漂白定着補充液の補充量は、感光材料1m2当たり20ml〜250ml、好ましくは30ml〜200mlである。処理される感光材料がカラ−ペーパーの場合の漂白定着時間は、10秒から1分である。処理温度はカラ−ペーパーの場合、25℃〜60℃、好ましくは30℃〜50℃である。
【0051】
カラー現像処理、処理液および工程について説明する。現像処理工程は、発色現像、脱銀、水洗又は安定化、および安定化の各工程からなる。発色現像工程には、発色現像処理組成物から現像補充液および現像液が調製されて用いられる。その中には、カラー現像主薬を含有するが、好ましい例は公知の芳香族第1級アミン発色現像主薬、とくにp−フェニレンジアミン誘導体であり、代表例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
【0052】
1)N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン
2)4−アミノ−N,N−ジエチル−3−メチルアニリン
3)4−アミノ−N−(β−ヒドロキシエチル)−N−メチルアニリン
4)4−アミノ−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
5)4−アミノ−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)−3−メチルアニリン
6)4−アミノ−N−エチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)−3−メチルアニリン
【0053】
7)4−アミノ−N−エチル−N−(4−ヒドロキシブチル)−3−メチルアニリン
8)4−アミノ−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)−3−メチルアニリン
9)4−アミノ−N,N−ジエチル−3−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
10)4−アミノ−N−エチル−N−(β−メトキシエチル)−3メチル−アニリン
11)4−アミノ−N−(β−エトキシエチル)−N−エチル−3−メチルアニリン
12)4−アミノ−N−(3−カルバモイルプロピル−N−n−プロピル−3−メチルアニリン
13)4−アミノ−N−(4−カルバモイルブチル−N−n−プロピル−3−メチルアニリン
【0054】
上記p−フェニレンジアミン誘導体のうち特に好ましい主薬としては、例示化合物5),6),7),8)及び12)があり、その中でも化合物5)と8)が多用される。また、これらのp−フェニレンジアミン誘導体は、固体素材の状態では、通常硫酸塩、塩酸塩、亜硫酸塩、ナフタレンジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの塩の形である。
【0055】
発色現像処理剤組成物は、使用に際して水と定められた比率で混合されて現像補充液(またはさらに希釈した現像液)の形の使用液にして用いるが、使用液中の該芳香族第1級アミン現像主薬の濃度は現像液1リットル当り好ましくは2mmol〜200mmol、より好ましくは12mmol〜200mmol、更に好ましくは12mmol〜150mmolである。
【0056】
発色現像液には、通常ヒドロキシルアミン誘導体又はその塩あるいは、N−アルキルヒドロキシルアミン又はその塩を加えることが多いが、保恒剤としては、アルカノールアミン類、ヒドロキシルアミン誘導体、ヒドロキサム酸類、ヒドラジド類、フェノール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、糖類、ポリエチレンイミン類、モノアミン類、ジアミン類、ポリアミン類、四級アンモニウム塩類、ニトロキシラジカル類、アルコール類、オキシム類、ジアミド化合物類、縮環式アミン類などが特に有効である。
【0057】
これらは、特開昭63−4235号、同63−30845号、同63−21647号、同63−44655号、同63−53551号、同63−43140号、同63−56654号、同63−58346号、同63−43138号、同63−146041号、同63−44657号、同63−44656号、米国特許第3,615,503号、同2,494,903号、特開昭52−143020号、特公昭48−30496号などの各公報又は明細書に開示されている。処理剤組成物を構成する場合に、これらの補恒剤は主薬とは別のパートとして構成するのが好都合のことが多い。
【0058】
発色現像液は、通常塩素イオンを3.5×10−2〜1.5×10−1mol/L含有することが多いが、塩素イオンは、通常現像の副生成物として現像液に放出されるので補充液には添加不要のことが多い。臭素イオンの含有に関しても塩素イオンの場合と同じ事情にある。発色現像液中の臭素イオンは、プリント材料の処理では、1.0×10−3mol/L以下である。
【0059】
現像処理される感光材料がカラ−印画紙の場合は、画面の背景の白地が白いことが重要な画質特性なので、スチルベン系蛍光増白剤、とくにジ(トリアジルアミノ)スチルベン系や、4、4′−ジアミノ−2,2′−ジスルホスチルベン系の蛍光増白剤を発色現像液に添加することもある。このスチルベン系蛍光増白剤は、発色現像液のほか、脱銀液あるいは感光材料のいずれにも添加できる。発色現像液中に含ませる場合は、その好適濃度は1×10−4〜5×10−2mol/Lであり、より好ましくは2×10−4〜1×10−2mol/Lである。
【0060】
発色現像液や現像補充液はpH9.5以上、より好ましくは10.0〜12.5で用いられる。pHを安定に保持するためには、各種緩衝剤を用いるのが好ましい。緩衝剤としては、上記の炭酸塩の外に、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、グリシル塩、N,N−ジメチルグリシン塩、ロイシン塩、ノルロイシン塩、グアニン塩、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン塩、アラニン塩、アミノ酪酸塩、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール塩、バリン塩、プロリン塩、トリスヒドロキシアミノメタン塩、リシン塩などを用いることができる。該緩衝剤の量は、希釈調製した発色現像補充液中の濃度が、0.01〜2mol/L以上、特に0.1mol/L〜 0.5mol/Lとなるように組成物中に添加される。
【0061】
発色現像組成物には、その他の発色現像液成分、例えばカルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤であり、あるいはカラー現像液の安定性向上剤でもある各種キレート剤を添加することもできる。例えば、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、N,N,N−トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−テトラメチレンスルホン酸、エチレンジアミンN,N−ジ琥珀酸、N,N−ジ(カルボキシラート)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ琥珀酸、トランスシロヘキサンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンオルトヒドロキシフェニル酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、N,N′−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N′−ジ酢酸、1,2−ジヒドロキシベンゼン−4,6−ジスルホン酸等が挙げられる。
【0062】
これらのキレート剤は必要に応じて2種以上併用しても良い。これらのキレート剤の量は発色現像液中の金属イオンを封鎖するのに充分な量であれば良い。例えば1リットル当り0.1g〜10g程度になるように添加する。発色現像液には、必要により任意の現像促進剤を添加できる。現像促進剤としては、数多くの公報に表わされる公知のチオエーテル系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、4級アンモニウム塩類、アミン系化合物、ポリアルキレンオキサイド、その他1−フェニル−3−ピラゾリドン類、イミダゾール類等を必要に応じて添加することができる。
【0063】
また、発色現像液には、必要に応じて、任意のカブリ防止剤を添加できる。カブリ防止剤としては、アルカリ金属ハロゲン化物及び有機カブリ防止剤が使用できる。有機カブリ防止剤としては、例えばベンゾトリアゾール、6−ニトロベンズイミダゾール、5−ニトロイソインダゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−ニトロベンゾトリアゾール、5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−チアゾリル−ベンズイミダゾール、2−チアゾリルメチル−ベンズイミダゾール、インダゾール、ヒドロキシアザインドリジン、アデニンの如き含窒素ヘテロ環化合物を代表例として挙げることができる。
【0064】
又、ポリアルキレングリコール類、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の各種界面活性剤を添加しても良い。以上、本発明の漂白定着濃縮組成物による処理の場合に、好ましく用いられる発色現像組成物及びそれから調製される発色現像補充液又は現像液について説明した。
【0065】
発色現像の処理温度は、現像処理される感光材料がカラーペーパーの場合は、30〜55℃であり、好ましくは35〜55℃であり、より好ましくは38〜45℃である。現像処理時間は、5〜90秒であり、好ましくは、15〜60秒である。補充量は少ない方が好ましいが、感光材料1m2当り15〜600mlが適当であり、好ましくは30〜180mlである。
【0066】
また、本発明の漂白定着濃縮組成物は、カラー現像処理の脱銀工程に用いられるが、脱銀工程の構成は、つぎに示すように色々な形態を取ることが可能である。本発明の漂白定着濃縮組成物は、漂白定着補充液に調製されて漂白定着槽に添加され、通常この工程のみで脱銀工程が構成されるが、下記に示すように漂白あるいは定着工程が付加されることもある。
【0067】
代表的なカラー現像処理の脱銀工程の構成
(工程1) 漂白定着
(工程2) 漂白−漂白定着
(工程3) 漂白−漂白定着−定着
(工程4) 定着−漂白定着
(工程5) 漂白定着−定着
【0068】
また、これらの漂白、漂白定着、定着工程の個々の工程は、必要により複数浴に仕切られて、カスケード方式を採用することもある。漂白定着濃縮組成物およびそれから得られる処理液の組成、漂白定着工程の温度、処理時間などの条件についてはすでに説明したが、この工程について若干の補足を行う。
【0069】
本発明の処理方法に用いられる漂白定着液は、長時間、連続的な処理を行う場合は、エアレーションを実施することが写真性能を安定に保持するので好ましい。エアレーションには当業界で公知の手段が使用でき、空気の吹き込みやエゼクターを利用した空気の吸収などが実施できる。空気の吹き込みに際しては、微細なポアを有する散気管を通じて、液中に空気を放出させることが好ましい。このような散気管は、活性汚泥処理における曝気槽等に、広く使用されている。しかし、過度のエアレーションは、処理液成分の無用な酸化をもたらすので避ける必要がある。
【0070】
エアレーションに関しては、イーストマン・コダック社発行のZ−121、ユージング・プロセス・C−41第3版(1982年)、BL−1〜BL−2頁に記載の事項を利用できる。漂白定着液を用いた処理に於いては、攪拌がされていることが好ましく、その実施には特開平3−33847号公報の第8頁、右上欄、第6行〜左下欄、第2行に記載の内容が、そのまま利用できる。
【0071】
脱銀工程においては、攪拌ができるだけ強化されていることが好ましい。
攪拌強化の具体的な方法としては、特開昭62−183460号に記載の感光材料の乳剤面に処理液の噴流を衝突させる方法や、特開昭62−183461号の回転手段を用いて攪拌効果を上げる方法、更には液中に設けられたワイパーブレードと乳剤面を接触させながら感光材料を移動させ、乳剤表面を乱流化することによってより攪拌効果を向上させる方法、処理液全体の循環流量を増加させる方法が挙げられる。
【0072】
このような攪拌向上手段は、漂白液、漂白定着液、定着液のいずれにおいても有効である。攪拌の向上は乳剤膜中への漂白剤、定着剤の供給を速め、結果として脱銀速度を高めるものと考えられる。また、前記の攪拌向上手段は、漂白促進剤を使用した場合により有効であり、促進効果を著しく増加させたり漂白促進剤による定着阻害作用を解消させることができる。
【0073】
本発明に用いられる自動現像機は、特開昭60−191257号、同60−191258号、同60−191259号に記載の感光材料搬送手段を有していることが好ましい。前記の特開昭60−191257号に記載のとおり、このような搬送手段は前浴から後浴への処理液の持込みを著しく削減でき、処理液の性能劣化を防止する効果が高い。このような効果は各工程における処理時間の短縮や、処理液補充量の低減に特に有効である。
【0074】
定着又は漂白定着等の脱銀処理後、水洗又は水洗代替安定液処理、安定液処理あるいはその両方を行うのが一般的である。水洗又は水洗代替安定処理(以下まとめて水洗処理として述べる)工程での水洗水量は、感光材料の特性(例えばカプラー等使用素材による)や用途、水洗水温、水洗タンクの数(段数)、その他種々の条件によって広範囲に設定し得る。このうち、多段向流方式における水洗タンク数と水量の関係は、ジャーナル・オブ・ザ・ソサエティ・オブ・モーション・ピクチャー・アンド・テレヴィジョン・エンジニアズ(Journal of the Society of Motion Picture and Television Engineers)第64巻、p.248〜253(1955年5月号)に記載の方法で、求めることができる。通常多段向流方式における段数は3〜15が好ましく、特に3〜10が好ましい。多段向流方式によれば、水洗水量を大巾に減少でき、タンク内での水の滞留時間増加により、バクテリアが繁殖し、生成した浮遊物が感光材料に付着する等の問題が生じる。
【0075】
この様な問題の解決策として、特開昭62−288838号公報に記載のカルシウム、マグネシウムを低減させる方法を極めて有効に用いることができる。
【0076】
また、特開昭57−8542号公報に記載のイソチアゾロン化合物やサイアベンダゾール類、同61−120145号公報に記載の塩素化イソシアヌール酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤、特開昭61−267761号公報に記載のベンゾトリアゾール、銅イオン、その他堀口博著「防菌防黴の化学」(1986年)三共出版、衛生技術会編、「微生物の減菌、殺菌、防黴技術」(1982年)工業技術会、日本防菌防黴学会編「防菌防黴剤事典」(1986年)に記載の殺菌剤を用いることもできる。
【0077】
更に、水洗水には、水切り剤として界面活性剤や、硬水軟化剤としてEDTAに代表されるキレート剤を用いることができる。以上の水洗工程に続くか、又は水洗工程を経ずに直接安定液で処理することも出来る。安定液には、画像安定化機能を有する化合物が添加され、例えばホルマリンに代表されるアルデヒド化合物や、色素安定化に適した膜pHに調製するための緩衝剤や、アンモニウム化合物があげられる。
【0078】
また、残存するマゼンタカプラーを不活性化して色素の褪色やステインの生成を防止するホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ピルビンアルデヒドなどのアルデヒド類、米国特許第4786583号に記載のメチロール化合物やヘキサメチレンテトラミン、特開平2−153348号に記載のヘキサヒドロトリアジン類、米国特許第4921779号に記載のホルムアルデヒド重亜硫酸付加物、欧州特許公開公報第504609号、同519190号などに記載のアゾリルメチルアミン類などが添加される。又、液中でのバクテリアの繁殖防止や処理後の感光材料に防黴性を付与するため、前記した各種殺菌剤や防黴剤を用いることができる。更に、界面活性剤、蛍光増白剤、硬膜剤を加えることもできる。
【0079】
本発明に係わる処理において、安定化が水洗工程を経ることなく直接行われる場合、特開昭57−8543号、同58−14834号、同60−220345号公報等に記載の公知の方法をすべて用いることができる。その他、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミン四メチレンホスホン酸等のキレート剤、マグネシウムやビスマス化合物を用いることも好ましい態様である。
【0080】
脱銀処理後に用いられる水洗液又は安定液としていわゆるリンス液も同様に用いられる。水洗水又は安定液の好ましいpHは4〜10であり、更に好ましくは5〜8である。温度は感光材料の用途・特性等で種々設定し得るが、一般には20℃〜50℃、好ましくは25℃〜45℃である。水洗又は安定液処理の工程に続いて乾燥が行われる。画像膜への水分の持込み量を減じる観点から水洗浴から出た後すぐにスクイズローラや布などで水を吸収することで乾燥を早めることも可能である。乾燥機側からの改善手段としては、当然のことではあるが、温度を高くすることや吹きつけノズルの形状を変更し乾燥風を強くすることなどで乾燥を早めることが可能である。更に、特開平3−157650号公報に記載されているように、乾燥風の感光材料への送風角度の調整や、排出風の除去方法によっても乾燥を早めることができる。
【0081】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
実施例1
・漂白定着濃縮組成物(2パート)の作成:
以下に示す漂白定着濃縮組成物を調整し、表1に示す酸素透過率の異なる素材で構成された包材に漂白定着濃縮組成物を空隙率20%で充填し、2パート漂白定着濃縮組成物包装体(キット)を作成した。
【0083】
漂白定着濃縮組成物の調整
水を加えて335mlとする。このときpHは5.30であった。
【0084】
水を加えて365mlとし、pHはアンモニア水溶液又は50%硫酸を用いて5.5となるように調整した。
【0085】
【表1】
【0086】
これらの漂白定着濃縮組成物キットを、室温(18〜22℃)で3ヶ月間保管し、保管後のキットを下記の如く、調整し各々漂白定着液補充液(10L用)を40L分作成した。
【0087】
漂白定着液補充液(10L用)
純水 3000ml
漂白定着濃縮組成物パートA 3350ml
漂白定着濃縮組成物パートB 3650ml
【0088】
さらに、これらの補充液をコニカ社製自動現像機NPS−808GOLDの漂白定着液用補充タンクに5Lづつ充填し、常温(22〜25℃)下で2週間貯蔵した後、各補充液中の亜硫酸イオンの残存率及びEDTA−Fe・NH4:エチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウムの存在率及び補充タンク壁面及び底部の析出物の様子を観察した。
【0089】
析出物評価
◎・・・析出物等の発生なく問題なし
○・・・僅かに液界面に析出物が発生
△・・・液界面に析出物が多量に発生
×・・・液界面及び補充タンク底部に析出物が多量発生
【0090】
【表2】
【0091】
表2から明らかなように、本発明の構成を用いることで、補充液タンク内の析出物の発生が抑制され、尚かつ保恒剤である亜硫酸の残存率も高く硫化の耐性も向上される。また、本発明の組み合わせの中でも、アミノポリカルボン酸鉄錯体[X(モル%)]と亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物[Y(モル%)]の含有比率(Z)が0.2〈 Z〈 2.0である場合に処理液の保存性を意味する亜硫酸残存率と処理性に影響するエチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウムの存在率の観点から好ましいことが判り、0.4〈 Z 〈 1.2がさらに好ましく、最も好ましいのが0.6〈 Z 〈 1.0であることが判った。
【0092】
さらに、酸素透過率が50ml/(m2・day・atm)以下の包装材料で包装することで効果がより良く発揮されている事が判る。
【0093】
実施例2
実施例1で作成した各補充液を用いて実際のカラーペーパー感光材料でのランニング処理を行った。また、この漂白定着液補充液をタンク液にも使用した。
・露光及び現像処理
現像処理のカラーペーパー感光材料には、コニカカラーQAペーパータイプA7(コニカ社製)を用い、ネガフィルムから像様像露光して使用した。
【0094】
現像処理は、上記露光済み試料を下記に示す工程で処理した。また、現像処理機はコニカ社製自動現像機NPS−808GOLDを使用した。処理としては1日あたり0.2Rづつ、2Rになるまでランニング処理を行い、以下について評価した。2Rとは漂白定着液タンク容量分の漂白定着補充液が2倍量補充されることを意味する。
【0095】
処理工程
安定化は(3)→(2)→(1)への向流方式である
発色現像及び安定化のタンク液処方及び補充液処方について以下に示す。
【0096】
発色現像液:1L当り
水を加えて1Lとし、pHは水酸化カリウムまたは50%硫酸を用いて調整した。
【0097】
安定化液:1L当り
水を加えて1Lとし、pHはアンモニア水溶液または50%硫酸を用いて調整した。
【0098】
評価
ランニング処理のスタート時にウェッジ露光したコニカカラーQAペーパータイプA7ペーパーを処理し、レッド濃度の最大濃度(Dmax−Red)をX−rite濃度計により測定した。さらに、ランニング処理の終了後に、ランニングスタート時と同様のウェッジ露光した感光材料を再度処理し、レッド濃度の最大濃度を、スタート時同様、X−rite濃度計により測定を行い、ランニング処理によるレッド濃度の最大濃度の変化量(ΔDmax−Red)、すなわち復色性を評価した。
また、ランニング終了時点での自現機内の漂白定着液タンク壁面及び底部の析出物の様子を観察した。
【0099】
析出物評価
◎・・・析出物等の発生なく問題なし
○・・・僅かに液界面に析出物が発生
△・・・液界面に析出物が多量に発生
×・・・液界面及び補充タンク底部に析出物が多量発生
以上の結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
表3から明らかなように、本発明の構成を用いることで、ランニング処理における復色不良を最小限にすることが可能となり、自現機内の漂白定着液タンク壁面及び底部の析出物も問題ないレベルに軽減できる。
【0102】
実施例3
実施例1の漂白定着濃縮組成物(2パート)の作成におけるパートB中のEDTA−Fe・NH4:エチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウムに変えて表4に示すアミノポリカルボン酸鉄錯体化合物に変化させた以外は実施例1と同様の実験を行った。
結果を表4に示す。
【0103】
【表4】
【0104】
表4から明らかなように、本発明のアミノポリカルボン酸鉄錯体化合物はEDTA−Fe・NH4:エチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウム、s,s−EDDS−Fe・NH4:s,s−エチレンジアミンジコハク酸鉄(III)アンモニウム、DTPA−Fe・NH4:ジエチレントリアミン五酢酸鉄(III)アンモニウムの順に本発明の必須化合物の一つである亜二チオン酸ナトリウムを添加したときの、亜硫酸残存量の改善効果が顕著になることから好ましいことが判った。
【0105】
実施例4
実施例1の漂白定着濃縮組成物を下記に示すシングルパートキットに変えた以外は実施例1と同様に表1に示す酸素透過率の異なる素材で構成された包材に漂白定着濃縮組成物を空隙率20%で充填し、シングルパート漂白定着濃縮組成物包装体(キット)を作成し実施例1と同様の実験を行った。
【0106】
漂白定着濃縮組成物(シングルパートキット)の調整
水を加えて500mlとし、pHはアンモニア水溶液又は50%硫酸を用いて5.5となるように調整した。
【0107】
これらの漂白定着濃縮組成物キットを、室温(18〜22℃)で3ヶ月間保管し、保管後のキットを下記の如く、調整し各々漂白定着液補充液(10L用)を40L分作成した。
【0108】
漂白定着液補充液(10L用)
純水 5000ml
漂白定着濃縮組成物(シングルパートキット) 5000ml
結果を表5に示す。
【0109】
【表5】
【0110】
表5から明らかなように、本発明の構成を用いることで、シングルパートキット型漂白定着濃縮キットでも補充液タンク内の析出物の発生が抑制され、尚かつ保恒剤である亜硫酸の残存率も高く硫化の耐性も向上される。また、本発明の組み合わせの中でも、アミノポリカルボン酸鉄錯体[X(モル%)]と亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物[Y(モル%)]の含有比率(Z)が0.2〈 Z 〈 2.0である場合に処理液の保存性を意味する亜硫酸残存率と処理性に影響するエチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウムの存在率の観点から好ましいことが判り、0.4〈Z 〈 1.2がさらに好ましく、最も好ましいのが0.6〈 Z 〈 1.0であることが判った。
【0111】
さらに、酸素透過率が50ml/(m2・day・atm)以下の包装材料で包装することで効果がより良く発揮されている事が判る。
【0112】
実施例5
実施例4で作成した各補充液を用いて実施例2と同様のカラーペーパー感光材料でのランニング処理を行った。
結果を表6に示す。
【0113】
【表6】
【0114】
表6から明らかなように、本発明の構成を用いることで、シングルパートキット型漂白定着濃縮組成物キットにおいてもランニング処理における復色不良を最小限にすることが可能となり、自現機内の漂白定着液タンク壁面及び底部の析出物も問題ないレベルに軽減できる。
【0115】
実施例6
実施例4で作成したシングルパートタイプの漂白定着濃縮組成物キットにおいて実験No.5−10,5−21及び5−22の添加剤の残存率をキット作成後、常温化で経時させながら測定した。
結果を図1に示す。
【0116】
図1から、本発明の添加物は通常の漂白定着濃縮組成物キットの貯蔵において容易に分解することが判り、尚かつ、本発明の効果を得られる化合物であることが判り、言い換えれば、写真用漂白定着濃縮組成物キットとして必須の現像性能に影響がない化合物であると言える。
【0117】
従って、本発明の添加剤のうち亜二チオン酸が分解が速やかである観点から好ましい化合物であり、次いでアスコルビン酸の序列となる。
【0118】
【発明の効果】
本発明によれば、実際の使用条件下である長期保管後の使用に際して補充液タンク内部の析出物の発生を防止し、ランニング処理においても自動現像機内部の処理ラック界面、ローラー部等の析出物の発生を防止し、良好な処理性能が得られる感光材料用漂白定着濃縮組成物及びこれを用いる処理方法並びに濃縮組成物包装体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例6で得られた添加物残存量を示すグラフ
Claims (5)
- 少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体及びチオ硫酸塩を含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物において、該漂白定着濃縮組成物が、少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する第1の組成物とチオ硫酸塩を含有する第2の組成物との少なくとも2パートに分別され、かつ前記アミノポリカルボン酸鉄錯体を含有する第1の組成物が、亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物。
- 少なくともアミノポリカルボン酸鉄錯体及びチオ硫酸塩を含有する1パート構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物において、該漂白定着濃縮組成物が、亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物。
- 前記アミノポリカルボン酸鉄錯体[X(モル%)]と前記亜二チオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物[Y(モル%)]の含有比率(Z)が
Z=Y/X 0.2〈 Z 〈 2.0
であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物。 - 請求項1、2又は3に記載の濃縮組成物が酸素透過度50ml/(m2・day・atm)以下の包装材料で包装されている事を特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物包装体。
- ハロゲン化銀カラー写真感光材料を漂白定着処理を含む工程によって処理する方法において、該漂白定着処理に用いられる漂白定着液として、請求項1〜4のいずれかに記載の濃縮組成物を用いる事を特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法。
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JP2003052920A Pending JP2004264412A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | ハロゲン化銀カラー写真感光材料用漂白定着濃縮組成物及びこれを用いる処理方法並びに濃縮組成物包装体 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004264412A (ja) |
-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003052920A patent/JP2004264412A/ja active Pending
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