JP2004262703A - 光学ガラス及び光学素子 - Google Patents

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和俊 中山
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    • C03C3/00Glass compositions
    • C03C3/12Silica-free oxide glass compositions
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Abstract

【課題】Pb化合物を実質的に含有せず、中屈折率・低分散であって、しかもTg及びTが低く精密プレス成形に適した光学ガラスを提供する。。
【解決手段】重量%で、P:40〜50%、B:0.1〜5%、ZnO:1〜30%、BaO:15〜49%、SrO:0〜15%(ただし、ゼロを含む)、CaO:0〜5%(ただし、ゼロを含む)、MgO:0〜5%(ただし、ゼロを含む)、RO(R=Zn,Ba,Sr,Ca,Mg)の総量:35〜50%、LiO:0〜0.5%(ただし、ゼロを含む)、NaO:1〜12%、KO:0〜10%(ただし、ゼロを含む)、R’O(R’=Li,Na,K)の総量:2〜15%、Al:1〜5%、Bi:0.1〜4%の各ガラス成分を含有する構成とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学ガラス及びこの光学ガラスからなる光学素子に関し、より詳細には中屈折率で低分散で、ガラス転移温度および液相温度が比較的低く、精密プレス成形に適した光学ガラス及びこの光学ガラスからなる光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、急速に普及してきたデジタルカメラや家庭用ムービーカメラ等の光学機器においては、よりコンパクトで高性能な撮影光学系やファインダ光学系等が要望されている。このような光学系を実現するための光学設計上の要請から、中屈折率(Nd:1.55〜1.65)で低分散(νd:55〜65)の光学恒数を有する光学ガラスの需要が高まっている。
【0003】
また、光学機器の小型・軽量化を図るために上記撮影光学系やファインダ光学系等にも、非球面レンズを使用することが近年多くなってきた。しかし、従来の切削・研磨によってレンズを非球面形状に加工することは難しく、必然的に生産コストが高くなっていた。そこで、非球面形状など加工困難な形状のガラスの成形を比較的容易にできる技術として、モールド成形法(精密プレス成形法)が注目されている。この成形法によれば、従来は必要であったレンズの研磨および切削工程などが不要となり低コスト化が図れる。したがって、精密プレス成形法を用いて前述の中屈折率で低分散の光学恒数を有する光学ガラスを、非球面レンズにすることができれば、低コストでコンパクトかつ高性能な撮影光学系やファインダ光学系が実現でき非常に効果的である。
【0004】
この精密プレス成形法は再加熱方式とダイレクトプレス方式とに大別できる。再加熱方式は、ほぼ最終製品形状を有するゴブプリフオームあるいは研磨プリフォームを作成した後、これらのプリフオームを軟化点以上に再び加熱し、加熱した上下金型によりプレス成形して最終製品形状とする方式である。一方、ダイレクトプレス方式は、加熱した金型上にガラス溶融炉から溶融ガラス滴を直接滴下し、プレス成形することに最終品形状とする方式である。これらいずれの方式における精密プレス成形法でもガラスを成形する場合に、プレス金型をガラス転移温度(以下「Tg」と記すことがある)近傍またはそれ以上の温度にする必要がある一方、ガラスのTgが高いほどプレス金型の表面酸化や金属組成の変化が生じ、金型の劣化が激しくなって金型寿命が短くなる。金型劣化を抑制するための方策としては、成形雰囲気を窒素などの不活性雰囲気に制御することが考えられるが、生産コストの上昇を招く。したがって、精密プレス成形法に用いるガラスとしてはTgのできるだけ低いものが望ましい。また、液相温度(以下「T」と記すことがある)についてもTg同様に低い方が望ましい。
【0005】
そこで、中屈折率で低分散の光学恒数を有する光学ガラスにおいてもTg、Tを低くする開発研究がこれまでから種々行われている。例えば、特許文献1では、P−ZnO−LiO系の光学ガラスにGdを添加することにより液相温度を下げて、中屈折率・低分散、比較的低Tg、Tにする技術が提案されている。また特許文献2では、P−ZnO−RO−La系の光学ガラスにおいてそのガラス組成比を特定範囲にすることにより低Tgとする技術が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−72474号公報(特許請求の範囲、
【0006】〜
【0007】)
【特許文献2】
特開平9−278479号公報(特許請求の範囲、
【0013】〜
【0015】)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2で提案されている光学ガラスはTg、Tを低くすることにはある程度成功しているが、LiOを多く含有するため、Tを低くすることに伴ってTにおけるガラスの粘性が低くなりすぎる問題があった。
【0008】
ガラスの粘性の問題をさらに詳しく説明する。精密プレス成形におけるガラスの粘性については許容範囲が存在し、その範囲をはずれた粘性状態では精密なレンズを得ることは困難であった。すなわち、ミクロ的な金型表面の転写(面の粗さ)という意味では、滴の粘性が低いほどよい傾向をもつ一方、マクロ的な全体のレンズ形状という観点では、低粘性でプレスした場合はプレス時のひけ量が大きくなり曲面形状がうまく転写されないからである。その他、ガラスの粘性がプレスに与える影響としては、金型への焼きつき心厚等がある。
【0009】
また、特にダイレクトプレス方式では、Tにおけるガラスの粘性が低いと、プレスに最適な粘性まで冷却する際に時間がかかり、ガラス滴内部の温度分布が大きくなるため、中心部がプレスに適当な粘性になった時には周辺部が既に固化してしまっていて成形が困難になってしまう。したがって、ガラス粘性の問題は、再加熱方式よりもダイレクトプレス方式の方がより顕著に影響する。
【0010】
このように、精密プレス成形では、精密プレス成形に適した粘性状態が必要であるが、上記従来技術に記載された光学ガラスでは、精密プレス成形に適した粘性状態を低い液相温度Tで実現することができなかった。
【0011】
なお、従来から液相温度を低くすると共に液相温度における粘性を高くするには光学ガラスにPb化合物を含有させるのが有効であることが知られていた。ところが、近年の環境問題への意識の高まりを受けて、人体への悪影響が懸念されているPb化合物を使用しないことが精密プレス成形用の光学ガラスについても強く要望されている。
【0012】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところはガラス転移温度Tgが450℃以下、液相温度Tが900℃以下で液相温度におけるガラス粘性が高く、屈折率nが1.55〜1.65の範囲、アッベ数νが55〜65の範囲で、Pb化合物を実質的に含有していない光学ガラスを提供することにある。
【0013】
また本発明の目的は、上記の屈折率及びアッベ数を有し、生産性が高く低コスト化が図れる光学素子を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は前記目的を達成すべく、Tを上げるLaを使用せず、また粘性を低下させるLiOの添加量を最小限に留めることを前提に鋭意研究を行った結果、NaOを添加することにより低Tgと高粘性を同時に実現でき、またAlを添加すると共にPの添加量を50%以下に制限することにより高耐候性を実現でき、さらにはBiを添加することにより低Tを実現できることを見出し本発明をなすに至った。
【0015】
すなわち、本発明の光学ガラスは、重量%で、P:40〜50%、B:0.1〜5%、ZnO:1〜30%、BaO:15〜49%、SrO:0〜15%(ただし、ゼロを含む)、CaO:0〜5%(ただし、ゼロを含む)、MgO:0〜5%(ただし、ゼロを含む)、RO(R=Zn,Ba,Sr,Ca,Mg)の総量:35〜50%、LiO:0〜0.5%(ただし、ゼロを含む)、NaO:1〜12%、KO:0〜10%(ただし、ゼロを含む)、R’O(R’=Li,Na,K)の総量:2〜15%、Al:1〜5%、Bi:0.1〜4%の各ガラス成分を有することを特徴とする。なお、以下「%」は特に断りのない限り「重量%」を意味するものとする。
【0016】
ここでガラスの化学的耐久性の一層の向上や光学恒数の調整などの観点から、前記ガラス成分の総量は95%以上であるのが好ましく、前記ガラス成分の他、Y:5%以下、Gd:5%以下、Nb:5%以下、WO:5%以下、Sb:0.5%以下のガラス成分の1種または2種以上をさらに含有させてもよい。
【0017】
ここで、溶融生産性及び成形性などの観点から、ガラス転移温度Tgを450℃以下、液相温度Tを900℃以下、屈折率nを1.55〜1.65の範囲、アッベ数νを55〜65の範囲とするのが好ましい。なお、ガラス転移温度Tgは、熱機械的分析装置を用いて毎分5℃の昇温条件で行った値である。液相温度Tは、900℃で5時間保持し急冷した後、ガラスの表面及び内部に失透物の発生の有無を目視で確認し判定したものである。
【0018】
また本発明によれば、前記光学ガラスからなる光学素子及び前記光学ガラスを精密プレス成形して作製したことを特徴とする光学素子が提供される。このような光学素子としてはレンズやプリズム、ミラーが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の光学ガラスの各成分を前記のように限定した理由について以下説明する。まず、Pはガラス骨格を構成する成分(ガラスフォーマー)であり、その含有量が40%未満であるとガラスが不安定となり、また本発明の目的とする光学恒数が得られない。他方、含有量を多くすると耐失透性及びガラスの安定性は向上するものの、含有量が50%を超えると耐候性が劣悪となる。そこでPの含有量を40〜50%の範囲と定めた。より好ましい含有量は42〜50%の範囲である。
【0020】
はPと同様にガラス骨格を構成する成分であり、Bの含有量が0.1%未満であるとガラスが失透しやすくなる。他方、含有量が5%を超えるとガラスの安定性が低下する。そこで含有量を0.1〜5%の範囲と定めた。より好ましい含有量は0.4〜3%の範囲である。
【0021】
RO(R:Zn、Ba、Sr、Ca、Mg)成分は、ガラスの安定性を向上させるとともに耐失透性を向上させ、且つ、屈折率を調整する効果を奏する。RO成分の総量が35%より少ないと前記効果が得られない。他方、総量が50%を超えると耐候性が悪化するとともに本発明の目的とする光学恒数が得られなくなる。そこでRO成分の総量を35〜50%の範囲と定めた。前記総量のより好ましい範囲は37〜48%の範囲である。
【0022】
RO成分のうちZnOは、ガラスの安定性を向上させると共に、ガラス転移温度を低下させ、またガラスの耐候性を向上させる効果を奏する。ZnOの含有量が1%より少ないと前記効果が十分には得られない。他方、含有量が30%を超えるとガラスの安定性が低下し液相温度が上昇する。そこでZnOの含有量を1〜30%の範囲と定めた。より好ましい含有量は1〜27%の範囲である。
【0023】
またRO成分のうちBaOはガラスの安定性を向上させる効果を奏する。BaOの含有量が15%より少ないと前記効果が十分には得られない。他方、含有量が49%を超えると耐候性が悪化するとともに本発明の目的とする光学恒数が得られなくなる。そこでBaOの含有量を15〜49%の範囲と定めた。より好ましい含有量は15〜45%の範囲である。
【0024】
またSrO、CaO、MgOは、その含有量がそれぞれ15%、5%、5%を超えると液相温度が上昇するので、これらの成分を含有させる場合はそれ以下の含有量とする。
【0025】
R’O(R’=Li,Na,K)成分はガラス転移温度を低下させる効果を奏するが、R’O成分の総量が2%より少ないと前記効果が得られない。他方、R’O成分の総量が15%を超えると、ガラスの粘性が極端に低下し、液相温度が高くなり、耐候性が悪化する。そこで、R’Oの総量を2〜15%の範囲と定めた。より好ましい含有量は2〜12%の範囲である。
【0026】
R’O成分のうちLiOは、一般的にガラス転移温度を極端に低下させる成分として有用であるが、反面、液相温度を上昇させ、且つガラスの粘性特性を変化させる。このため、LiOを大量に含有したガラスは、液相温度での粘性が非常に低くなってしまう。そこで、LiOの含有量を0.5%以下の範囲と定めた。より好ましい含有量は0.3%以下である。
【0027】
またR’O成分のうちNaOはガラス転移温度を低下させる成分として有用であるが、LiOのようには極端にガラスの粘性を低下させない。そこでNaOを本発明の光学ガラスの必須成分の一つとした。しかしその含有量が1%より少ないと前記効果が十分には得られない。他方、含有量が12%を超えると、液相温度が上昇すると共にガラスの粘性が低下し、耐候性も悪化する。そこで、NaOの含有量を1〜12%の範囲と定めた。より好ましい含有量は1〜10%の範囲である。
【0028】
R’O成分のうちKOはNaOと同様の効果を奏するが、その含有量が10%を超えると耐失透性が悪化し、液相温度が上昇する。そこでKOの含有量を10%以下の範囲とした。より好ましい含有量は8%以下である。
【0029】
Alは、ガラスの粘性を増大させ、ガラスの耐候性を飛躍的に向上させる効果を奏する。Alの含有量が1%より少ないと前記効果が十分には得られない。他方、含有量が5%を超えると所望の液相温度が得られなくなる。そこで、Alの含有量を1〜5%の範囲とした。より好ましい含有量は1%〜3%の範囲である。
【0030】
Biは液相温度を飛躍的に低下させる効果を奏する。Biの含有量が0.1%より少ないと前記効果が十分には得られない。他方、含有量が4%を超えると、ガラスの光透光性が極端に悪くなる。そこで、Biの含有量を0.1〜4%の範囲と定めた。より好ましい含有量は0.1〜3%の範囲である。
【0031】
また、本発明の光学ガラスでは、Y、Gd、Nb、WO、Sbのガラス成分の1種または2種以上を必要によりさらに特定量含有させてもよい。これら成分に限定した理由をそれぞれ以下に説明する。
【0032】
とGdとはガラスの化学的耐久性を向上させる効果を奏するが、5%を超えて含有させると所望の液相温度が得られなくなることがある。したがってその含有量は5%以下が好ましい。
【0033】
Nbは、ガラスの化学的耐久性を向上させる効果を奏するが、5%を超えて含有させると所望の光学恒数が得られなくなるおそれがある。したがってその含有量は5%以下が好ましい。
【0034】
WOは光学恒数を調整するために含有させてもよいが、その含有量が5%を超えるとガラスの光透過性が悪化するとともに、所望の光学恒数が得られなくなる。したがって含有量は5%以下が好ましい。
【0035】
Sbは、清澄作用を向上させるために含有させてもよいが、その含有量は0.5%以下で十分である。
【0036】
その他必要により、SiOやGeO、TiO、ZrO、Ta、Asなどの従来公知のガラス成分及び添加剤を本発明の効果を害しない範囲で屈折率の調整等を目的として5%まで添加してももちろん構わない。
【0037】
本発明の光学素子は前記光学ガラスを精密プレス成形することによって作製される。この精密プレス成形法としては、溶融したガラスをノズルから、所定温度に加熱された金型へ滴下しプレス成形するダイレクトプレス成形法、及びプリフォーム材を金型に載置してガラス軟化点以上に加熱してプレス成形する再加熱成形法が挙げられる。このような方法によれば研磨、研削工程が不要となり、生産性が向上し、また自由曲面や非球面といった加工困難な形状の光学素子を得ることができる。前述のように前記光学ガラスは液相温度における粘性が高いので、本発明の光学素子の製造方法として前記成形法の中でもダイレクトプレス成形法が好適である。
【0038】
成形条件としては、ガラス成分や成形品の形状などにより異なるが一般に、金型温度は350〜600℃の範囲が好ましく、中でもガラス転移温度に近い高温域が好ましい。プレス時間は数秒〜数十秒の範囲が好ましい。またプレス圧力はレンズの形状や大きさにより200kgf/cm〜600kgf/cmの範囲が好ましく、高圧力でプレスするほど高精度の成形ができる。成形時のガラスの粘性としては10〜1012poiseの範囲が好ましい。
【0039】
本発明の光学素子は、例えばデジタルカメラのレンズやレーザービームプリンタなどのコリメータレンズ、プリズム、ミラーなどとして用いることができる。
【0040】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
実施例1〜13、比較例1〜6
原料としてメタリン酸塩又はピロリン酸塩を用い、他の成分については、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、炭酸塩、硝酸塩、酸化物等を原料として使用し、表1及び表2に示す目標組成となるようにガラスの原料を調合し、粉末で十分に混合して調合原料とした。これを1,000〜1,250℃に加熱された電気炉中の白金坩堝に投入し、溶融清澄後、撹拌均質化して予め加熱された金属製の鋳型に鋳込み、室温まで徐冷して各サンプルを製造した。これら各サンプルについてのd線に対する屈折率(n)およびアッベ数(ν)、ガラス転移温度(Tg)を測定すると共に失透性試験及び耐候性試験を行った。測定結果を表1及び表2に合わせて示す。
【0042】
なお、これらの測定は日本光学硝子工業会規格(JOGIS)の試験方法に準じて行った。屈折率(n)とアッベ数(ν)とは−25℃/時間で徐冷した時の値である。Tgの測定は熱機械的分析装置「TMA/SS6000」(Seiko Instruments Inc.社製)を用いて毎分5℃の昇温条件で行った。失透試験は、溶融したガラスを、900℃に保った炉内にて5時間保持した後、目視にて失透の有無を確認して行った。失透が確認できなかった場合を「○」、失透が確認できた場合を「×」と記した。耐候性試験は、温度80℃/湿度95%の高温高湿槽において200時間保持した後、表面を実態顕微鏡により観察して行った。表面に曇り等の変化が見られなかった場合を「○」、表面に曇り等が確認された場合を「×」と記した。
【0043】
【表1】
Figure 2004262703
【0044】
【表2】
Figure 2004262703
【0045】
実施例1〜13の光学ガラスでは、屈折率nが1.580〜1.595の範囲、アッベ数νが59.3〜61.8の範囲、Tgが438℃以下、液相温度Tが900℃以下と精密プレス成形に適したものであった。またいずれの光学ガラスも優れた耐候性を示した。これに対して、Pの含有が多い比較例1及び比較例2の光学ガラスは耐候性に問題があった。NaO又はKOの含有量が多い比較例3および比較例4の光学ガラスも耐候性に問題があった。Alを含有していない比較例5の光学ガラスも耐候性に問題があった。CaOの含有量が多い比較例6の光学ガラスは、液相温度が1,000℃以上となり精密プレス成形に適さないものであった。
【0046】
また、実施例13の光学ガラスと比較例1の光学ガラスの各温度における粘度を測定し粘性曲線を求めた。結果を図1に示す。図1から明らかなように、温度1,100℃以下の領域において同一温度であれば実施例13の光学ガラスの方が比較例1の光学ガラスよりも粘度が高い。特に温度900℃以下の領域では両者の粘度の差は大きくなっている。したがって、実施例13の光学ガラスでは、適正に成形可能な温度領域を比較例1の光学ガラスよりも低くでき、成形金型の温度を低くして金型の寿命を長くできる。
【0047】
【発明の効果】
本発明の光学ガラスでは、P、B、ZnO、BaO、SrO、CaO、MgO、LiO、NaO、KO、Al、Biの各ガラス成分を特定量含有させることにより、人体への悪影響が懸念されるPb化合物を用いることなく中屈折率・低分散(n:1.55〜1.65,ν:55〜65)を達成でき、しかも低Tg及び低T(Tg:450℃以下,T:900℃以下)とすることができ優れた精密プレス成形性が得られる。
【0048】
また本発明の光学素子は、前記光学ガラスを精密プレス成形することにより作製するので、生産効率が高く低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例13と比較例1の光学ガラスの粘性曲線である。

Claims (5)

  1. 重量%で、
    :40〜50%、
    :0.1〜5%、
    ZnO:1〜30%、
    BaO:15〜49%、
    SrO:0〜15%(ただし、ゼロを含む)、
    CaO:0〜5%(ただし、ゼロを含む)、
    MgO:0〜5%(ただし、ゼロを含む)、
    RO(R=Zn,Ba,Sr,Ca,Mg)の総量:35〜50%、
    LiO:0〜0.5%(ただし、ゼロを含む)、
    NaO:1〜12%、
    O:0〜10%(ただし、ゼロを含む)、
    R’O(R’=Li,Na,K)の総量:2〜15%、
    Al:1〜5%、
    Bi:0.1〜4%
    の各ガラス成分を有することを特徴とする光学ガラス。
  2. 重量%で、
    :5%以下、
    Gd:5%以下、
    Nb:5%以下、
    WO:5%以下、
    Sb:0.5%以下
    のガラス成分の1種または2種以上をさらに含有する請求項1記載の光学ガラス。
  3. ガラス転移温度Tgが450℃以下、液相温度Tが900℃以下、屈折率nが1.55〜1.65の範囲、アッベ数νが55〜65の範囲である請求項1又は2に記載の光学ガラス。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の光学ガラスからなることを特徴とする光学素子。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の光学ガラスを精密プレス成形して作製されたことを特徴とする光学素子。
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