JP2004259425A - 磁気記録媒体用ポリエステルフィルム及び磁気記録テープ - Google Patents

磁気記録媒体用ポリエステルフィルム及び磁気記録テープ Download PDF

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一吉 深田
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Abstract

【課題】 S−AITシステム用の磁気テープとしても信頼性良く使用可能な磁気記録テープを提供する。そのために、DLC膜の耐久性がさらに向上された磁気記録テープを、生産性良く、安価に製造することが可能な磁気記録媒体用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 磁気記録媒体を製造する際に片側表面Aに強磁性金属薄膜層及びダイアモンドライクカーボン膜(DLC膜)が設けられる磁気記録媒体用ベースフィルムとしてのポリエステルフィルムであって、ポリエステルフィルム層と厚み1〜10nmの易滑被覆層とを含むフィルムであり、易滑被覆層は、前記片側表面Aとは反対側の片側表面Bに存在し、易滑被覆層の表面は、片側表面Aとの接触では実質的に帯電ゼロであり、ハードクロムとの接触ではプラスに帯電し、かつ、易滑被覆層の表面には0.5atomic%以下の量で潤滑剤が存在するものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、磁気記録媒体用ポリエステルフィルム、特にデジタルデータを高密度で記録できる強磁性金属薄膜型磁気記録媒体を、ビット当たりの製造コストを著しく安価にして製造するために好適なベースフィルム用ポリエステルフィルムに関する。
1995年に実用化された民生用デジタルビデオテープは、厚さ6〜7μmのベースフィルム上にCoの金属磁性薄膜を真空蒸着により設け、その表面にダイヤモンド状カーボン膜をコーティングしてなり、DVミニカセットを使用したカメラ一体型ビデオの場合には基本仕様(SD仕様)で1時間の録画時間をもつ。
このデジタルビデオカセット(DVC)は、家庭用で世界で初のデジタルビデオカセットであり、a.小型ボディながら、膨大な情報が記録できる、b.信号が劣化しないから、何年たっても画質・音質が劣化しない、c.雑音の妨害を受けないから高画質・高音質が楽しめる、d.ダビングを繰り返しても映像が劣化しない、等のメリットを持ち、市場の評価は高い。
また、この蒸着型デジタルビデオテープ、DVCをコンピューターのデータバックアップ用途に用いることが1996年より始まり、テープ幅8mmのデータ8mm(Exabyte社マンモス、ソニー社AITシステム)コンピューターデータバックアップ装置が実用化され、小型で大容量でデータ転送速度が速く好評である。
これらDVC、AITテープを高品質で生産性良く製造可能なポリエステルフィルムを与える事を目的として、層A及び層Bとからなる積層フィルムとその表面に形成された被覆層とからなる磁気記録媒体用ポリエステルフィルムであって、層B側の表面Bには、シリコーン及びメチルセルロース等の高分子を含有する厚み1〜10nmの被覆層を形成させ、層A側の表面には、微細粒子とメチルセルロース等の高分子を含有する被膜層を形成させ、この層A側の表面Aを磁気記録媒体製造時に強磁性金属薄膜層が設けられる面とすることが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながらコンピュータデータを保存するハードディスクの容量の増大のペースは極めて速く、100GBを超える容量のハードディスクが極めて安価に提供され続けており、コンピュータデータをバックアップする磁気テープバックアップ装置においても記録容量の増大のみならず、ビットあたりの価格も低下し続けることが強く要求されている。そのためには、高記録容量の磁気テープを安価に作ることが必要であり、前記蒸着型磁気テープの記録密度を更に上げ、テープ幅を12.7mmと広幅化し、テープ長さを600mとより長く巻き、単体で500GBと大容量化し、ビット当たりの記録コストを大幅に低下させたコンピューターデータテープ(S−AITテープ)、データストレージシステム(S−AITシステム)が実用化されようとしている。
特開2002−140812号公報
S−AITシステムにおいては、書き込み、読み込み用の磁気ヘッドの個数が増し、しかもより高速回転で磁気テープ磁性層表面と接触するため、磁気テープの磁性層の耐久性をDVCテープ、AITテープよりも向上しておくことが必要である。即ち、500GBという大量のデータをエラーフリーで書き込み、読みとり、かつ保存するためには、従来のDVCテープ、AITテープよりもDLC膜の耐久性を1桁向上させておくことが要求される。しかし、特許文献1で開示されたポリエステルフィルムから製造されたS−AITテープではDLC膜の耐久性が、S−AITシステム用磁気テープとして不満足であることが明らかになってきた。
従って本発明は、S−AITシステム用の磁気テープとしても信頼性良く使用可能となるように、DLC膜の耐久性がさらに向上された磁気記録テープを、生産性良く、安価に製造することが可能な磁気記録媒体用ポリエステルフィルムを提供する事を目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明は以下の構成からなる。
すなわち、
1. 磁気記録媒体を製造する際に片側表面Aに強磁性金属薄膜層及びダイアモンドライクカーボン膜(DLC膜)が設けられる磁気記録媒体用ベースフィルムとしてのポリエステルフィルムであって、ポリエステルフィルム層と厚み1〜10nmの易滑被覆層とを含むフィルムであり、易滑被覆層は、前記片側表面Aとは反対側の片側表面Bに存在し、易滑被覆層の表面は、片側表面Aとの接触では実質的に帯電ゼロであり、ハードクロムとの接触ではプラスに帯電し、かつ、易滑被覆層の表面には0.5atomic%以下の量で潤滑剤が存在する磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
2. 易滑被覆層を構成する主成分として、少なくとも、水溶性高分子及び/又は水分散性高分子と潤滑剤とが含まれ、かつ、易滑被覆層内における潤滑剤の含有量が6.0重量%以下である上記1に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
3. 易滑被覆層を構成する主成分が、水溶性高分子及び/又は水分散性高分子、潤滑剤及びシランカップリング剤であり、かつ、易滑被覆層内のシランカップリング剤の含有量が5〜20重量%である上記1又は2に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
4. 易滑被覆層中に、ハードクロムとの接触でプラスに帯電する化合物が含まれる上記1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
5. 易滑被覆層中の水溶性高分子及び/又は水分散性高分子の50%以上が、電子供与性の基を有する高分子である上記4に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
6. 易滑被覆層の表面に存在する潤滑剤が、シリコーン、フッ素化合物、ワックスのいずれかである上記1〜5のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
7. 片側表面AのRa値が0.5〜4.0nmである上記1〜6のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
8. 片側表面Aには、微細粒子と有機化合物とを主成分とする被膜が存在し、その有機化合物の主成分が、電子供与性の基を有する水溶性及び/又は水分散性の高分子である上記7に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
9. ポリエステルフィルム層が積層フィルム層であり、易滑被覆層が設けられる側の層Bには、片側表面Bに表面突起を形成するための微細粒子が含まれ、該微細粒子の平均粒径が50〜500nmであり、層B中の含有率が0.01〜1.0重量%である上記1〜8のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
10. ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートである上記1〜9のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
11. デジタル記録方式のビデオカセットレコーダーテープ、又はデータストレージテープのベースフィルムに用いられる上記1〜10のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
12. 上記1〜11のいずれかに記載のポリエステルフィルムの片側表面Aの外側に強磁性金属薄膜層を設け、さらにその外側にダイアモンドライクカーボン薄膜(DLC膜)を設けてなる磁気記録テープ。
とするものである。
以下に説明するように、本発明のポリエステルフィルムを磁気記録媒体用ベースフィルムに用いると、電磁変換特性が良好であって、かつ、DLC膜の耐久性が格段に向上された磁気記録テープを製造することができる。この磁気記録テープは、特にS−AITシステム用の磁気記録テープとして有効であり、大量のデジタルデータを信頼性良く磁気記録することができる。
即ち、本発明のポリエステルフィルムは、デジタルデータを高密度で記録できる強磁性金属薄膜型磁気テープを製造する際のビット当たりの製造コストを著しく安価にするために特に有効である。
また、本発明のポリエステルフィルムにおける表面B側の易滑被覆層は、蒸着工程における表面Bからのポリエステル分解物の析出を防止し、冷却キャンの汚れを防止するという効果を発揮することもできる。
本発明におけるポリエステルは、分子配向により高強度フィルムとなり得るポリエステルであればよいが、なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。即ち、その構成成分の80%以上がエチレンテレフタレート、又は、エチレンナフタレートであるポリエチレンテレフタレート、又は、ポリエチレンナフタレートである。エチレンテレフタレート、エチレンナフタレート以外のポリエステル共重合体成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能ジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などが挙げられる。
さらに、上記のポリエステルは、他にポリエステルと非反応性のスルホン酸のアルカリ金属塩誘導体、該ポリエステルに実質的に不溶なポリアルキレングリコールなどの少なくとも一つを5重量%を越えない程度の少量ならば混合してもよい。
本発明のポリエステルフィルムの片側表面Bには易滑被覆層が1〜10nmの厚みで設けられている。この被覆層がないと、ポリエステルフィルム上に磁性金属を高速度で真空蒸着させる際にベースフィルムの温度が上昇し、その表面Bより、フィルム中ポリマからの分解物が析出し、蒸着後、巻きとった際に該分解物が蒸着面側に転写したり、冷却キャンを汚したり、汚れ物が真空蒸着されたフィルムに付着し、蒸着面側に転写し、磁気テープの電磁変換特性やドロップアウトをおこすというトラブルを生じる。その被覆層は厚みが1〜10nmである。厚みが1nmを下回るとポリエステルフィルムの分解物が被覆層をこえて析出するので、また、厚みが10nmを超えると、被覆層が冷却キャンで削られ易く、冷却キャンを汚しがちとなるので、いずれも、蒸着工程における生産性が劣ることになる。易滑被覆層中には、その表面(表面B)に易滑性を付与するための潤滑剤が含まれていて、その表面Bには潤滑剤が0.5atomic%以下の量で、好ましくは0.1〜0.5atomic%の量で存在する。表面Bでの潤滑剤存在量が0.5atomic%を超えると、その潤滑剤がCo薄膜上に移動し、緻密なダイヤモンド状カーボン膜(DLC膜)が形成されにくくなり、またDLC膜とCo磁性薄膜との結合力が弱くなり、DLC膜の耐久性が落ちてしまう。その潤滑剤存在量の下限値は表面Bでの易滑性が付与できる水準であればよいが、具体的には0.1atomic%以上であることが好ましく、この量を下回ると、易滑性が低下し、ポリエステルフィルムの製膜工程、スリット工程、磁気テープ加工工程においてポリエステルフィルムのハンドリング性が不良となりがちである。
この易滑被膜層の表面は、片側表面Aとの接触では実質的に帯電ゼロである。実質的に帯電ゼロとは、磁気テープ加工前に、フィルム製品が巻かれたロール製品の表層からフィルムを引き出したときにフィルムが製品ロール表面に静電気で引きつけられることなく自重でフィルムが自然に離れることを言う。この帯電が実質的にゼロでない場合、Coを真空蒸着する際、フィルムが製品ロールから離れにくく、巻き出しし難いので、しわが入りやすく、蒸着機内の冷却キャン上にそのしわが残り、Co蒸気によりしわ部のフィルムの温度が急上昇し、熱負けを起こし、極端な場合、ポリエステルが溶けてしまうというトラブルが生じ易い。
さらに、その易滑被膜層の表面は、ハードクロムとの接触でプラスに帯電すること、即ち、ハードクロムとの摩擦帯電電位がプラスであることを要する。その摩擦帯電電位は、好ましくは2kV以上、さらに好ましくは2〜10kVのプラス帯電電位である。このようにハードクロム摩擦帯電電位がプラスであると、蒸着テープ製造工程において、ポリエステルフィルムの片側表面A上にCoの蒸着薄膜を形成した後に巻き取った際、Co金属薄膜層の表面と易滑被覆層の表面との間での接触帯電電位が低く、密着力が弱くなるので、その後の加工工程においてフィルムが巻きだしやすく、加工適性が向上する。また、易滑被覆層中の成分、特に易滑剤成分がCo薄膜上に移動すると緻密なダイヤモンド状カーボン膜(DLC膜)が形成されなくなるし、DLC膜とCo磁性薄膜との結合力が弱くなり、DLC膜の耐久性が落ちるという問題が生じるが、Co金属薄膜層の表面と易滑被覆層の表面との密着力が弱いと、その問題を防止することができる。
この易滑被覆層は、冷却キャンとの間で易滑性であって削られにくいもので、Co磁性薄膜層上に移動しにくいものであれば、さらに好ましくは、ポリエステルフィルムからの分解物を通さない機能を有するものであれば特に組成を限定するものではないが、好ましい一例として、水溶性高分子及び/又は水分散性高分子に、潤滑剤としてシリコーンまたはフッ素化合物、またはワックスのいずれかを配合した組成が挙げられ、さらに好ましくは、シランカップリング剤をさらに配合した組成が挙げられる。その際、易滑被覆層内における潤滑剤の含有量を6.0重量%以下とすることが、易滑被覆層の表面における潤滑剤存在量を0.5atomic%以下とするために好ましい。また、被覆層内におけるシランカップリング剤の含有量を5〜20重量%、さらに6〜15重量%とすることが、製造される磁気テープの磁性層の耐久性を高めるために好ましい。
易滑被覆層用に用いられる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、トラガントゴム、アラビアゴム、カゼイン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロス等のセルロース誘導体、ポリエステルエーテル共重合体、水溶性ポリエステル共重合体等が使用でき、また、水分散性高分子のエマルジョンとしては、ポリメタクリル酸メチルエマルジョン、ポリアクリル酸エステルエマルジョン等が使用できる。ハードクロムとの接触でプラスに帯電する成分を多く含む高分子であることが望ましい。
ハードクロムとの接触でプラスに帯電する化合物としては、イオン化傾向の大きな金属、例えばLi、Kなどを含む化合物、他の物質中の原子に電子を与える能力を持つ還元剤、ヨウ素イオン、マグネシウム、亜鉛等、電子給与性の基、例えばエーテル結合、アミノ基、水酸基をもつ化合物が挙げられる。また、ハードクロムとの接触でプラスに帯電する水溶性及び/又は水分散性の高分子としては、エーテル結合、アミノ基、水酸基等の電子給与性基を含む高分子が挙げられる。セルロース誘導体の場合では、セルロースのグルコース環単位あたり、メトキシル基で置換された水酸基の平均個数(置換度)が1.4〜1.9、セルロースのグルコース環単位あたりに付加したヒドロキシプロポキシル基の平均モル数(置換モル数)が0.15〜0.25のものが、ハードクロムとの接触でプラス帯電する表面Bとするために特に好ましい。また、そのプラス帯電の表面Bとするためには、電子供与性の基を有する高分子が、易滑被覆層中の水溶性及び/又は水分散性高分子の50%以上を占めることが好ましい。
水溶性及び/又は水分散性の高分子としては、なかでも、セルロース誘導体と水溶性ポリエステル共重合体の高分子ブレンド体が好ましく、そのセルロース誘導体としては、上記したものが使用できる。
また、その水溶性ポリエステル共重合体としては、ジカルボン酸成分とグリコール成分が重縮合したポリエステルであって、例えばスルホン酸基を有するジカルボン酸成分のような機能性酸成分を全カルボン酸成分の5モル%以上共重合せしめること、及び/又は、グリコール成分としてポリアルキレンエーテルグリコール成分を2〜70重量%共重合せしめることによって水溶性を付与したものが好ましいが、これらに限定されるものではない。スルホン酸基を有するジカルボン酸としては、好ましくは5−スルホイソフタル酸、2−スルホテレフタル酸などや、それらの金属塩、ホスホニウム塩などが使用でき、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が特に好ましい。5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合せしめる際の他のジカルボン酸成分としてはイソフタル酸、テレフタル酸などが好ましく、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコールなどが好ましい。セルロース誘導体はポリエステル分解物が析出することを防ぐために寄与し、水溶性ポリエステル共重合体はセルロ−ス誘導体とポリエステルフィルム表面との接着性を増大させるために寄与する。
易滑被覆層中の好ましい潤滑剤としては、シリコーン、フッ素化合物、ワックスが挙げられる。シリコーンとしてはポリジメチルシロキサン等のシロキサン結合を分子骨格にもつ有機ケイ素化合物が共有結合で多数つながった重合体が使用できるが、特にシリコーンの末端がアミノ基で修飾されたものが、そのアミノ基により、水溶性高分子やシランカップリング剤と化学結合し易く、その結果、易滑被覆層中のシリコーンが、フィルムがロール状に巻かれている時に接している反対側のフィルム表面に転写しにくくなるので、好ましい。フッ素化合物としてはポリテトラフルオロエチレン等が使用できる。ワックスとしてはカルナウバろう、鯨ろう、蜜ろう、シナろう、ラノリン等が用いられる。潤滑剤により易滑被覆層の表面における易滑性が向上し、冷却キャンとの走行性、耐削れ性が確保される。またポリエステルフィルムを巻いたときのフィルム間のブロッキングが防止される等のポリエステルフィルム製造時、磁気テープ加工時のハンドリング性が改良される。
シランカップリング剤としては、その分子中に2個以上の異なった反応基をもつ有機ケイ素単量体が挙げられ、その反応基の一つはメトキシ基、エトキシ基、シラノール基などであり、もう一つの反応基はビニル基、エポキシ基、メタアクリル基、アミノ基、メルカプト基などである。反応基としては水溶性高分子の側鎖、末端基およびポリエステルと結合するものが選ばれるが、シランカップリング剤としてビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が適用できる。シランカップリング剤は、潤滑剤成分が易滑剤層より遊離されることを防ぐために寄与し、さらに、被覆層とポリエステルとの接着性を向上させるためにも寄与する。
本発明のポリエステルフィルムの片側表面Bとは反対の片側表面Aは、磁気記録媒体製造時に強磁性金属薄膜層及びダイアモンドライクカーボン膜(DLC膜)が設けられる面であるので、その表面におけるRa値は、0.5〜4.0nmであることが好ましく、さらには1.0〜3.0nmであることが好ましい。片側表面AのRa値が0.5nm未満であると、表面A上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜層が平滑すぎて、コンピューターデータバックアップ装置内の記録、読み取り時に磁気ヘッドにより磁気テープの強磁性金属薄膜が磨耗してしまうし、また、Ra値が4.0nmを超えると、該強磁性金属薄膜層が粗面すぎて、磁気テープの出力特性が低下するので、磁気記録媒体用には適していない。
このようなRa値をもつ片側表面Aとするためには、その片側表面Aには、微細粒子と有機化合物を主成分として含む被膜が存在することが好ましく、また、その有機化合物の主成分が、電子供与性の基を有する水溶性及び/又は水分散性の高分子であることが望ましい。微細粒子と有機化合物を主成分として含有する被膜を形成することにより片側表面AのRa値を上記水準内に調整しやすくなり好ましい。また、片側表面Bと片側表面Aとの接触での帯電を実質的にゼロとするためには、その被膜の主成分の高分子を、片側表面Bに存在する易滑被覆層を形成する高分子と同様に、電子供与性の基を有する水溶性及び/又は水分散性の高分子とすることが好ましい。
本発明のフィルムを磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いて磁気記録媒体を製造する際には、片側表面A上に強磁性金属薄膜層が真空蒸着により設けられ、さらにその強磁性金属薄膜層上にはダイアモンドライクカーボン膜(DLC膜)が5〜15nm程度の厚さで形成される。その強磁性金属薄膜としては公知のものを使用でき、特に限定されないが、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの合金の強磁性体からなるものが好ましい。金属薄膜層の厚さは一般に30〜250nmである。
本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムは、溶融押し出しにより製造されるポリエステルフィルム層の表面に易滑被覆層が設けられているものであるが、そのポリエステルフィルム層は、片側表面A側に位置する層Aと片側表面Bに位置する層Bとが積層されてなる積層フィルム層であることがより好ましい。層B中には片側表面Bに表面突起を形成するための微細粒子が含まれ、該微細粒子の平均粒径が50〜500nmであり、層B中の含有率が0.01〜1.0重量%であることがより好ましい。表面BのRa値は5〜25nm、さらには7〜15nmが好ましい。
層B中の微細粒子の平均粒径が50nm未満、また含有率が0.01重量%未満であると、表面BのRa値が5nmを下回りがちとなり、表面Bが平滑すぎて、ポリエステルフィルムの製造の際、特に製膜後のスリッターによるスリット工程で、フィルムを所定の幅にスリットしロール状に巻き製品化する時にしわが入りすぎて、ロール状に巻き難くなりがちである。
表面BのRa値が25nmを上回るほどに表面Bが粗い場合、ポリエステルフィルムを製造し巻き取って製品として放置している間に、ポリエステルフィルムの表面Bの粗さが表面Aに転写され、表面Aの表面うねりが増大し、真空蒸着後、強磁性金属表面層の表面うねりが大きくなり、磁気テープの電磁変換特性が悪化し、ドロップアウトが増大しがちである。
層B中に含有させる微細粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、ポリスチレン球、ポリジメチルシロキサン球、アルミナシリケート等用いられるがこれらに限定されるものではない。層B中には前記微細粒子より更に細かい別種の微粒子を内在させてもよい。また界面活性化剤、帯電防止剤、各種エステル成分等、異なる成分を添加させてもよい。
層Aと層Bとの積層フィルム層の場合は、層Bの厚みは、積層フィルム層の全体厚みの8〜25%が好ましく、より好ましくは10〜20%である。層Bの厚みが全体厚みの8%未満であると、層B中の微細粒子が脱落しやすくなり好ましくない。層Bの厚みが全体厚みの25%より大であると、層B中の微細粒子の形状が層Aを通じて表面A上に突起状変形を作りやすくなるので好ましくない。
次に本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムの製法の一例を示す。
本発明のポリエステルフィルムは、溶融、シート成形、二軸延伸、熱固定して巻取る通常のプラスチックフィルム製造工程において、ポリエステルフィルム層の片側表面B側に塗布による易滑被覆層を形成することによって製造することができる。その際、共押出し技術の使用によりA/B層が積層されたシートを押出してもよいし、また、そのB層に微細粒子を含有させてもよいし、さらにまた、より多層の積層フィルムシートを押出してもよい。その他のフィルム製造条件をとることもできるが、以下では、押出されたA/B積層シートをフィルム層に用いる場合について説明する。
含有粒子を可能な限り除いた層A用の原料と、平均粒径が50〜500nmの微細粒子を含有率0.01〜1.0重量%含有させた層B用の原料とを溶融共押出しし、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸フィルムシートを得、一軸延伸し、易滑被覆層形成用の塗液を、層B側のフィルム表面に塗布して乾燥し、その後に先の一軸延伸方向とは直交する方向に延伸配向させ、熱固定して巻き取る。そして、このフィルム製造工程において、本発明のフィルム条件を満足するように製造条件を、以下のように適正化する。
層B側の表面上に塗布する塗液としては、前述した水溶性高分子及び/又は水分散性高分子に潤滑剤及びシランカップリング剤を添加してなる水性液を用いることができる。水溶性高分子としては、前述したとおり、セルロース誘導体[A]と水溶性ポリエステル共重合体[B]とのブレンド体が特に望ましい。[A]/[B]/潤滑剤/シランカップリング剤の重量比率としては、例えば、100/20〜200/4〜10/5〜50程度が挙げられるが、易滑被覆層中における潤滑剤の含有量が6.0重量%以下とすることが、また、シランカップリング剤の含有量が5〜20重量%とすることが、本発明の易滑被覆層の条件を満足させるために好ましい。
なお、磁気テープの、磁気ヘッドとの接触による耐久性を更に増すためには、層Aの内部に平均径40〜70nm程度の微細粒子を含ませてもよい。
二軸延伸は、例えば逐次二軸延伸法又は同時二軸延伸法で行うことができるが、所望するならば、熱固定前にさらに縦あるいは横方向あるいは縦と横方向に再度延伸させ機械的強度を高めた、いわゆる強力化タイプとすることもできる。
層Bの表面上に被覆層を形成するためには、前述した通り、1軸方向への延伸を終えた段階で、所定組成・濃度の塗液を基層フィルム上に塗布する方法をとればよい。その塗布方法としては、ドクターブレード方式、グラビア方式、リバースロール方式、メタリングバー方式、エアーナイフ方式のいずれであってもよい。被覆層厚みは、塗布液の固形分濃度、塗布液厚みの調整により所望値に調整することができる。
また、層Aの表面上には、微細粒子を含有する被覆層を設けて表面AのRaを調整することが好ましく、この被覆層を構成する有機化合物としては、層B上の易滑被覆層用塗液に用いた電子供与性の基を有する水溶性及び/又は水分散性の高分子を用いることが好ましい。この水溶性及び/又は水分散性の高分子を溶解又は分散させた水性液に、平均粒径5〜60nmの微細粒子を所定量添加させてなる塗液を前記した第1の縦延伸後に塗布すればよい。表面AのRa値は、その被覆層中の微粒子、成分、層A内部の微細粒子の調整により調整することができる。
本発明のポリエステルフィルムは磁気記録媒体のベースフィルムとして使用されるが、特に、S−AITシステムでのデータストレージテープ用途に使用すると優れた結果を得ることができ好適である。またデジタルビデオテープ用途に使用しても優れた結果を得ることができ好適である。
本発明の磁気テープは、本発明のポリエステルベースフィルムの表面A上にCo等の強磁性金属薄膜を真空蒸着により膜厚み30〜250nmで形成し、この金属薄膜上に5〜20nm程度の厚みのダイヤモンド状カーボン膜をコーティングし、さらに潤滑剤を5nm程度の厚みに塗布し、他方、表面Bの易滑被覆層の上に、固体微粒子および結合材からなり必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することによりバックコート層を0.3〜1.5μm程度の厚みで設け、そして所定の幅に裁断することにより製造することができる。
[測定法]
(1)表面粗さRa値
磁気記録媒体用フィルムの表面の表面粗さRa値は、原子間力顕微鏡(走査型プローブ顕微鏡)を用いて測定した。セイコーインスツルメント社製の卓上小型プローブ顕微鏡(“Nanopics 1000”)を用い、ダンピングモードでフィルムの表面を4μm角の範囲で原子間力顕微鏡計測走査を行い、得られる表面のプロファイル曲線よりJIS・B0601・Raに相当する算術平均粗さよりRaを求めた。面内方向の拡大倍率は1万〜5万倍、高さ方向の拡大倍率は100万倍程度とした。
(2)易滑被覆層の厚み
易滑被覆層の厚みは、塗布液塗布時の塗布液厚みに固形分濃度を掛け、固形分密度、塗布後の延伸倍率で除して求める。
なお、この被覆層の厚みは、下記のa)手法等によりフィルムから求めることもできる。
a)フィルムの少片を樹脂で固定し、フィルムの長手方向に平行に切断しフィルム断面の超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡により10万倍程度以上の倍率で観察し、被覆層/フィルム、被覆層/樹脂界面の距離より被覆層厚みを求める。
(3)フィルムの表面Bにおけるハードクロムとの摩擦帯電電位
A4版程度の大きさにカットしたフィルムサンプルを約10枚重ね、平らな平板上に、表面B側を上側にして置き、表面粗さ0.8S、直径5cm、幅5cmの円柱状ハードクロムローラーに荷重2kgをかけた状態でフィルム表面Bと接触させ、このハードクロムローラー表面をフィルム表面Bと接触させつつロールを転がしながら、2回往復移動させた。この接触直後、フィルムを空中に持ち上げて、フィルム表面Bの表面電位を、表面Bから1cm離れた位置で表面電位計(メーカー:TRek 機種:Electrostatic Voltmeter 520)により測定し、摩擦帯電電位とした。なおハードクロムローラーは鉄製ローラー上に硬質クロム鋼(Cr 1〜1.5%、C 0.9〜1%)のメッキ層がメッキ厚み50μmで形成されたものを用いた。
(4)易滑被覆層表面の潤滑剤量
X線光電子装置(XPS)を用いて易滑被覆層表面の潤滑剤の存在量を測定し、表面組成をatomic%で表した。atomic%とは表面に存在する原子数の比率を、表面の全原子数に対する割合で示した%である。例えば、Siが0.3atomic%存在するとは、表面全原子数の0.3%がSiであることを意味する。
(5)磁気テープの特性
S−AIT用の磁気テープとしての耐久性を調べるために、幅6.35mmのDVCテープについて、市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダー(DVC)でドロップアウト(DO)が発生するスチル時間(スチル寿命)を求めた。なお、その測定時には、市販のDVCカメラから、所定の時間がきたらスチルモードを解除し動作をストップさせる機能ははずしておいたDVCカメラを用いた。スチル寿命は大きい値の方がDLC膜の耐久性が良く、市販のDVCテープ(DV60)のスチル寿命は30分であった。
次に実施例に基づき、本発明を説明する。
[実施例1]
実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートに平均粒径60nmのシリカを0.02重量%含有させた原料Aと、実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートに平均粒径190nmのケイ酸アルミニウムと粒子径320nmのポリスチレン球とをそれぞれ0.36重量%、0.05重量%含有させた原料Bとを、通常の溶融押出方法により、厚み比5:1の割合で積層させて共押出してシート状にし、通常のロール延伸法で110℃で3.0倍に縦延伸した。
縦延伸の後の工程で、A層(原料Aの層)の外側に下記組成・濃度の水溶液を、塗布厚み4.0μmで塗布した。さらに、B層(原料Bの層)の外側に下記組成・濃度の水溶液を、塗布厚み3.0μmで塗布した。
A層外側用の塗布液組成:
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトキシル基置換度:1.8、 ヒドロキシプロポキシル基置換モル数:0.15) 0.10 重量%
水溶性ポリエステル 0.30 重量%
アミノエチルシランカップリング剤 0.01 重量%
平均粒径 18nmの極微細シリカ 0.015重量%
B層外側の塗布液組成:
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.15 重量%
水溶性ポリエステル(テレフタル酸70モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸30モル%の酸成分とエチレングリコールとの1:1の共重合体)
0.10 重量%
アミノエチルシランカップリング剤 0.03 重量%
アミノ基末端ポリジメチルシロキサン 0.01 重量%
その後、ステンターにて横方向に98℃で3.3倍に延伸し、200℃で熱処理し、中間スプールに巻き、スリッターで小幅にスリットし、円筒コアーにロール状に巻取り、厚さ8.0μmのフィルムが長さ15000mでロール状に巻取られた複合ポリエステルフィルムを作製した。
この複合ポリエステルフィルムの表面Aに、真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を110nmの膜厚で強磁性金属薄膜層を形成しコアー上に巻き取った。なお蒸着機内のポリエステルフィルムの搬送速度は従来の5割増しの速度、150m/分で行った。次にコバルト−酸素薄膜層上に、スパッタリング法によりダイヤモンド状カーボン膜を10nmの厚みで形成させた。続いて、表面B上に、カーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を400nm厚さで設け、スリッターにより幅6.35mmにスリットしリールに巻き取り磁気テープを作製した。
得られた複合ポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表2に示す。
[実施例2]
実施例1のベースフィルム製造において、ポリエチレンテレフタレートをポリエチレン−2,6−ナフタレートと変更し、A層外側、B層外側の塗布液の塗布厚みを8.0μm、5.0μmと変更し、縦延伸温度、倍率を135℃で5.0倍と変更し、横延伸温度、倍率を135℃、6.0倍と変更し、更に160℃で1.2倍に横に延伸し、200℃での熱処理と変更し、その他は実施例1と同様にして、厚さ4.2μmのフィルムが長さ15000mでロール状に巻取られた複合ポリエステルフィルムを作製した。さらに実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを作製した。
得られた複合ポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表2に示す。
[実施例3]
実施例1のベースフィルム製造において、原料Aに含有させたシリカを除き、その他は実施例1と同様にして厚さ8.0μmの長さ15000mの複合ポリエステルフィルムを作製した。さらに、実施例2と同様にして幅6.35mmの磁気テープを作製した。
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表2に示す。
[実施例4]
実施例1のベースフィルム製造において、B層外側に塗布する水溶液から、アミノエチルシランカップリング剤を除き、その他は実施例1と同様にして厚さ8.0μmの長さ15000mのポリエステルフィルムを作製した。さらに実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを作製した。
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表2に示す。
[実施例5]
実施例1のベースフィルム製造において、B層外側に塗布する水溶液内のアミノエチルシランカップリング剤の量を0.001重量%と変更して、その他は実施例1と同様にして厚さ8.0μmの長さ15000mのポリエステルフィルムを作製した。さらに実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを作製した。
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表2に示す。
[実施例6]
実施例1のベースフィルム製造において、B層外側に塗布する水溶液内のアミノエチルシランカップリング剤の量を0.08重量%と変更して、その他は実施例1と同様にして厚さ8.0μmの長さ15000mのポリエステルフィルムを作製した。さらに実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを作製した。
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表2に示す。
上記実施例において、B層外側に塗布した塗布水溶液の組成は表1の通りであった。なお、実施例2、3は実施例1の場合と同じ組成であった。
Figure 2004259425
Figure 2004259425
表2に示す磁気テープ特性から明らかな様に、本発明のポリエステルフィルムの表面Aに強磁性金属薄膜層、その上にDLC膜を設けて製造された磁気テープは、耐久性が市販のDVCテープよりも格段に優れたデジタルビデオテープであった。
[比較例1]
実施例1のベースフィルム製造において、B層外側に塗布する水溶液の塗布厚みを6.7μmと変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ8.0μmの長さ15000mのポリエステルフィルムを作製した。さらに実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを作製した。
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表4に示す。蒸着工程の冷却キャンの表面は白い汚れ物で汚れていた。
[比較例2]
実施例1のベースフィルム製造において、B層外側に塗布する水溶液の塗布厚みを0.2μmと変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ8.0μmの長さ15000mのポリエステルフィルムを作製した。さらに実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを作製した。
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表4に示す。蒸着工程の冷却キャンの表面は黄色みを帯びた白い汚れ物で汚れていた。
[比較例3]
実施例1のベースフィルム製造において、B層外側に塗布する水溶液から、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと水溶性ポリエステルを除き、代わりにノニオン系界面活性化剤0.10重量%を含有させた液に変更して、その他は実施例1と同様にして厚さ8.0μmの長さ15000mのポリエステルフィルムを作製した。さらに実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを作製した。
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表4に示す。蒸着工程においてフィルム上にしわが入り易く、生産性が劣っていた。
[比較例4]
実施例1のベースフィルム製造において、B層外側に塗布する水溶液から、ポリジメチルシロキサンを除いた。その他は実施例1と同様にして厚さ8.0μmの長さ15000mの複合ポリエステルフィルムを作製した。さらに実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを作製した。B層外側の易滑性が低下し、DLC工程でしわが入りDLC膜の形成が不良となった。
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表4に示す。フィルム表面Bに潤滑剤が存在しなかったので、各工程におけるハンドリング性が不良で、生産性が劣っていた。
[比較例5]
実施例1のベースフィルム製造において、B層外側に塗布する水溶液中のヒドロキシプロピルメチルセルロースの濃度を0.05重量%、水溶性ポリエステルの濃度を0.20重量%と変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ8.0μmの長さ15000mのポリエステルフィルムを作製した。さらに実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを作製した。
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表4に示す。フィルム表面Bのハードクロム接触帯電摩擦電位がマイナスであったので、得られた磁気テープのDLC膜の耐久性は劣るものであった。
[比較例6]
実施例1のベースフィルム製造において、B層外側に塗布する水溶液中のアミノ基末端ポリジメチルシロキサンの濃度を0.08重量%と変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ8.0μmの長さ15000mのポリエステルフィルムを作製した。さらに実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを作製した。
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表4に示す。フィルム表面Bにおける潤滑剤存在量が多過ぎたので、得られた磁気テープのDLC膜の耐久性は劣るものであった。
[比較例7]
実施例1のベースフィルム製造において、A層外側に塗布する水溶液中のヒドロキシプロピルメチルセルロースをメチルセルロースに変更し、B層外側に塗布する水溶液中のヒドロキシプロピルメチルセルロースもメチルセルロースに変更し、さらに、アミノ基末端ポリジメチルシロキサンの量を0.02重量%に変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ8.0μmの長さ15000mのポリエステルフィルムを作製した。さらに実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを作製した。
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表4に示す。フィルム表面Bのハードクロム接触帯電摩擦電位がマイナスであったので、得られた磁気テープのDLC膜の耐久性は劣るものであった。
上記比較例において、B層外側に塗布した塗布水溶液の組成は表3の通りであった。なお、比較例1〜3は実施例1の場合と同じ組成であった。
Figure 2004259425
Figure 2004259425
表4に示す磁気テープ特性から明らかな様に、本発明以外のポリエステルフィルムをベースフィルムに用いた磁気テープは、耐久性が不十分なデジタルビデオテープであった。

Claims (12)

  1. 磁気記録媒体を製造する際に片側表面Aに強磁性金属薄膜層及びダイアモンドライクカーボン膜(DLC膜)が設けられる磁気記録媒体用ベースフィルムとしてのポリエステルフィルムであって、ポリエステルフィルム層と厚み1〜10nmの易滑被覆層とを含むフィルムであり、易滑被覆層は、前記片側表面Aとは反対側の片側表面Bに存在し、易滑被覆層の表面は、片側表面Aとの接触では実質的に帯電ゼロであり、ハードクロムとの接触ではプラスに帯電し、かつ、易滑被覆層の表面には0.5atomic%以下の量で潤滑剤が存在することを特徴とする磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  2. 易滑被覆層を構成する主成分として、少なくとも、水溶性高分子及び/又は水分散性高分子と潤滑剤とが含まれ、かつ、易滑被覆層内における潤滑剤の含有量が6.0重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  3. 易滑被覆層を構成する主成分が、水溶性高分子及び/又は水分散性高分子、潤滑剤及びシランカップリング剤であり、かつ、易滑被覆層内のシランカップリング剤の含有量が5〜20重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  4. 易滑被覆層中に、ハードクロムとの接触でプラスに帯電する化合物が含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  5. 易滑被覆層中の水溶性高分子及び/又は水分散性高分子の50%以上が、電子供与性の基を有する高分子であることを特徴とする請求項4に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  6. 易滑被覆層の表面に存在する潤滑剤が、シリコーン、フッ素化合物、ワックスのいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  7. 片側表面AのRa値が0.5〜4.0nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  8. 片側表面Aには、微細粒子と有機化合物とを主成分とする被膜が存在し、その有機化合物の主成分が、電子供与性の基を有する水溶性及び/又は水分散性の高分子であることを特徴とする請求項7に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  9. ポリエステルフィルム層が積層フィルム層であり、易滑被覆層が設けられる側の層Bには、片側表面Bに表面突起を形成するための微細粒子が含まれ、該微細粒子の平均粒径が50〜500nmであり、層B中の含有率が0.01〜1.0重量%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  10. ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  11. デジタル記録方式のビデオカセットレコーダーテープ、又はデータストレージテープのベースフィルムに用いられることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載のポリエステルフィルムの片側表面Aの外側に強磁性金属薄膜層を設け、さらにその外側にダイアモンドライクカーボン薄膜(DLC膜)を設けてなる磁気記録テープ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013072774A (ja) * 2011-09-28 2013-04-22 Toppan Printing Co Ltd 未処理の二軸延伸petフィルム或いはシートとその品質管理方法

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