JP2004258521A - パターン形成方法及び画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な方法で、広範囲に応用可能な微細で鮮明なパターンを形成することのできるパターン形成方法と、画質及び解像度に優れた画像形成方法と、を提供すること。
【解決手段】支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層を形成し、該層を画像様に露光して、前記重合開始剤の一部を用いて前記重合性不飽和結合を有する化合物を硬化させて、硬化部と未硬化部とを形成する工程と、前記未硬化部を現像により除去し、未反応の前記重合開始剤を含む画像様の重合開始層を設ける工程と、該重合開始層に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合を用いて当該重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させて、該グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするパターン形成方法、及び該パターン形成方法を使用した画像形成方法。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層を形成し、該層を画像様に露光して、前記重合開始剤の一部を用いて前記重合性不飽和結合を有する化合物を硬化させて、硬化部と未硬化部とを形成する工程と、前記未硬化部を現像により除去し、未反応の前記重合開始剤を含む画像様の重合開始層を設ける工程と、該重合開始層に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合を用いて当該重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させて、該グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするパターン形成方法、及び該パターン形成方法を使用した画像形成方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パターン形成方法及び画像形成方法に関し、より詳細には、種々の用途に応用し得るパターン形成方法、及び画質及び解像度に優れた画像を容易に形成することができ、平版印刷版やディスプレイ材料に適用し得る画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、種々の分野において、微細なパターンを形成する技術が注目されている。中でも、微細な親/疎水性パターン形成方法が着目されており、このような親/疎水性パターンの形成方法としては、例えば、表面に凸状パターンを有するスタンプを成形し、該凸部に疎水性分子を付着させた後、該疎水性分子を基板に転写し、また、転写されていない部分に親水性分子を付着させることで、親/疎水性領域からなるパターンを形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようにして作製された親/疎水性パターンは、各種機能デバイス、DNAチップなどに有用である。しかしながら、この技術によれば、微細で緻密なパターンを形成することはできるが、特殊な材料を用いる必要があり、かつ、大面積の画像形成などへの応用が困難であった。
【0003】
そこで、大面積の画像形成への応用に関する技術としては、疎水的な基板の全面に親水性のグラフト重合体からなる親水性層を形成させた後、レーザー露光により画像様に基板表面から親水性層をアブレーションにより除去することで、親水性層と疎水的な基板表面とからなるパターン(画像部及び非画像部)が形成される方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この方法によれば、パターンの転写の工程を必要としないため、作製された親/疎水性パターンにインキと水を付着させて、大面積の平版印刷版材料として使用することができる。しかしながら、この親/疎水性パターン形成方法は、親水性層を除去するのに高エネルギーを要するため高価な高出力レーザーが必要であり、更に、形成された画像の画質や解像度も満足のいくものではなかった。
【0004】
この課題に対し、より低エネルギーでパターンを形成する方法としては、基板の全面に、酸、熱、又は光により極性変換可能なグラフトポリマーを形成させた後、画像様に酸、熱、又は光を付与し極性変換させ、親水性グラフトポリマーと疎水性グラフトポリマーとからなる親水性部と親油性(疎水性部)とからなるパターンを形成し、該パターンにより画像を形成する技術が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この方法では、極性変換可能なグラフトポリマーを形成するための特殊なモノマーが必要となり、作業工程に手間がかかるという問題点があった。
【0005】
また、基板上に、1.アミノ基含有感光性組成物を塗布し、画像様に露光、現像することにより、未露光部を除去し、アミノ基を画像様に基板に固定化した後に、2.アミノ基をアンカーとして光開始剤を化学結合させ、光開始剤を画像様に固定化し、更に、3.画像様に固定化された光開始剤に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合させることで、グラフトポリマー生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する技術が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では、光開始剤を画像様に固定化する工程が複数あり、煩雑であるという問題を有していた。加えて、アンカーであるアミノ基が膜内部に潜り込んでしまう傾向があり、固定化できる光開始剤の絶対量が減少し、グラフトポリマーの生成量も少なくなるため、グラフトポリマー生成領域と非生成領域との境界が不鮮明となる問題を有していた。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−283530公報
【特許文献2】
特開平11−119413号公報
【特許文献3】
特開平2001−117223号公報
【非特許文献1】
松田 武久著“Macromolecules”、1994年、27巻、7809頁〜7814頁
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、特殊な材料や化合物、また、高エネルギーを必要とすることなく、簡易な方法で、広範囲に応用可能な微細で鮮明なパターンを形成することのできるパターン形成方法と、該パターン形成方法を用いた、画質及び解像度に優れた画像形成方法と、を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、下記に示す手段により上記目的が達成されることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明のパターン形成方法は、
支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層を形成し、該層を画像様に露光して、前記重合開始剤の一部を用いて前記重合性不飽和結合を有する化合物を硬化させて、硬化部と未硬化部とを形成する工程と、
前記未硬化部を現像により除去し、未反応の前記重合開始剤を含む画像様の重合開始層を設ける工程と、
該重合開始層に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合を用いて当該重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させて、該グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする。
また、本発明の画像形成方法は、
支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層を形成し、該層を画像様に露光して、前記重合開始剤の一部を用いて前記重合性不飽和結合を有する化合物を硬化させて、硬化部と未硬化部とを形成する工程と、
前記未硬化部を現像により除去し、未反応の前記重合開始剤を含む画像様の重合開始層を設ける工程と、
該重合開始層に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合を用いて当該重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させて、該グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する工程と、
該親/疎水性パターンにおける親水性領域又は疎水性領域に色材を付着させる工程と、
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明においては支持体と、生成されるグラフトポリマーと、の親/疎水性は逆の関係にあること、すなわち、疎水性表面を有する支持体を用いた場合には、重合性基を有する化合物として親水性化合物を使用し、親水性表面を有する支持体を用いた場合には、重合性基を有する化合物として疎水性化合物を使用することが、親/疎水性パターンを形成する上で必要である。これらの中でも、通常は支持体が疎水性表面を有することが多いため、親水性化合物とを組み合わせ、疎水性表面上に親水性のグラフトポリマーを生成させることが好ましい。
【0011】
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推測される。
本発明のパターン形成方法は、例えば、疎水性の支持体上に、予め重合開始層を画像様に設け、その重合開始層上に、優れた親水性を有するグラフトポリマーを生成させるという方法を用いている。この方法により形成された親/疎水性パターンは、例えば、疎水性領域が支持体表面から、親水性領域が重合開始層に結合したグラフトポリマーからなるため、設けられた重合開始層の特徴に依存して親水性領域と疎水性領域との間に明確な境界を付与することができる。そのため、緻密さや精細さを求められるような、種々の用途に応用することが容易になる。
また、親水性領域がグラフトポリマーからなる場合、運動性の優れたグラフトポリマーの特性により、発現されるその親水性や疎水性の性質が優れたものとなるため、本発明のパターン形成方法を用いて形成された親/疎水性パターンは、親水性領域と疎水性領域との性質の差が特に大きくなるものと思われる。そのため、かかる親水性領域に色材を付着させる工程を有する本発明の画像形成方法では、色材の付着(吸着)が正確となり、所望される画質や解像度の画像を形成することが可能となる。更には、本発明の画像形成方法において、グラフトポリマーに色材を付着させる場合には、かかる色材が強固に吸着し、かつ、グラフトポリマーと重合開始層との結合も強固であることから、画像の耐久性が良好なものとなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のパターン形成方法及び画像形成方法は、共に、(1−1)支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層を形成し、該層を画像様に露光して、前記重合開始剤の一部を用いて前記重合性不飽和結合を有する化合物を硬化させて、硬化部と未硬化部とを形成する工程と、(1−2)前記未硬化部を現像により除去し、未反応の前記重合開始剤を含む画像様の重合開始層を設ける工程と、(2)該重合開始層に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合を用いて当該重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させて、該グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する工程と、を有する。以下、この(1−1)、(1−2)、及び(2)の工程について説明する。
【0013】
<(1−1)支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層を形成し、該層を画像様に露光して、重合開始剤の一部を用いて重合性不飽和結合を有する化合物を硬化させて、硬化部と未硬化部とを形成する工程>
(1−1)の工程における、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層に、硬化部と未硬化部とを形成する方法について説明する。
より具体的には、
1.支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む重合開始層組成物を全面塗布し、
2.所望の画像様に露光を行う、
という段階を経ることで、上述のような硬化部と未硬化部とが形成される。
この方法の各段階について、以下に詳細に説明する。
【0014】
(1.支持体上に重合開始層組成物を全面塗布する)
支持体上に塗布される重合開始層組成物としては、露光部が硬化し、かつ、未露光部(未硬化部)が現像される、ネガ型にパターンを形成することができ得る重合開始層組成物(以下、適宜、ネガ型重合開始層組成物と称する。)が用いられる。かかるネガ型重合開始層組成物は、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを必須成分として含み、更に、膜性向上のためのアルカリ可溶性高分子化合物や、必要に応じて他の添加物を含むことが好ましい。
【0015】
なお、ネガ型重合開始層組成物に含まれる重合開始剤は、露光部を硬化させるため、また、グラフト重合に使用されるために用いられる。ネガ型重合開始層組成物において、露光部を硬化させるために使用される重合開始剤と、グラフト重合に使用される重合開始剤と、は同じものであってもよいし、異なる種類であってもよい。例えば、硬化反応及びグラフト重合に同じ重合開始剤を用いる場合には、該重合開始剤は、硬化反応に使用する露光とグラフト重合に使用する露光とのどちらの波長にも感応するものであって、硬化反応の際に行う露光後にも、重合開始剤が重合開始層中に残存している必要がある。また、硬化反応とグラフト重合とで異なる種類の重合開始剤を用いる場合には、例えば、硬化反応に使用する露光波長に感応する重合開始剤と、グラフト重合に使用する露光波長に感応する重合開始剤と、を併用すればよい。したがって、(1−1)の工程における「重合開始剤の一部」とは、ネガ型重合開始層組成物中で、露光部を硬化させるためだけに使用される量又は種類の重合開始剤を指す。その結果、かかる重合開始剤の残部は、(1−2)の工程における「未反応の重合開始剤」となり、グラフト重合に使用されることになる。
以下、ネガ型重合開始層組成物を構成する各成分について説明する。
【0016】
「重合開始剤」
本発明におけるネガ型重合開始層組成物に含まれる、好適な重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(k)ピリジウム類化合物等の光重合開始剤が挙げられる。以下に、上記(a)〜(k)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
(a)芳香族ケトン類
本発明において、重合開始剤として好ましい(a)芳香族ケトン類としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCEAND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、下記化合物が挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
中でも、特に好ましい(a)芳香族ケトン類の例を以下に列記する。
特公昭47−6416記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981記載のベンゾインエーテル化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0020】
【化2】
【0021】
特公昭47−22326記載のα−置換ベンゾイン化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0022】
【化3】
【0023】
特公昭47−23664記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483記載のジアルコキシベンゾフェノン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0024】
【化4】
【0025】
特公昭60−26403、特開昭62−81345記載のベンゾインエーテル類、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0026】
【化5】
【0027】
特公平1−34242、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0028】
【化6】
【0029】
特開平2−211452記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0030】
【化7】
【0031】
特開昭61−194062記載のチオ置換芳香族ケトン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0032】
【化8】
【0033】
特公平2−9597記載のアシルホスフィンスルフィド、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0034】
【化9】
【0035】
特公平2−9596記載のアシルホスフィン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0036】
【化10】
【0037】
また、特公昭63−61950記載のチオキサントン類、特公昭59−42864記載のクマリン類等を挙げることもできる。
【0038】
(b)オニウム塩化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(b)オニウム塩化合物としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
【0039】
【化11】
【0040】
一般式(1)中、Ar1とAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z2)−はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、カルボン酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0041】
一般式(2)中、Ar3は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z3)−は(Z2)−と同義の対イオンを表す。
【0042】
一般式(3)中、R23、R24及びR25は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z4)−は(Z2)−と同義の対イオンを表す。
【0043】
本発明において、好適に用いることのできる(b)オニウム塩化合物の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0030]〜[0033]、特開2001−305734号公報の段落番号[0048]〜[0052]、及び、特開2001−343742公報の段落番号[0015]〜[0046]に記載されたものなどを挙げることができる。
【0044】
(c)有機過酸化物
本発明において、重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ブタン、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ターシャリーブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−キサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、ターシャリーブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーブチルパーオキシオクタノエート、ターシャリーブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシラウレート、ターシャリーカーボネート、3,3’4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、3,3’4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましく用いられる。
【0046】
(d)チオ化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(d)チオ化合物としては、下記一般式(4)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
【0047】
【化12】
【0048】
(一般式(4)中、R26はアルキル基、アリール基又は置換アリール基を示し、R27は水素原子又はアルキル基を示す。また、R26とR27は、互いに結合して酸素、硫黄及び窒素原子から選ばれたヘテロ原子を含んでもよい5員ないし7員環を形成するのに必要な非金属原子群を示す。)
上記一般式(4)におけるアルキル基としては炭素原子数1〜4個のものが好ましい。また、アリール基としてはフェニル、ナフチルのような炭素原子数6〜10個のものが好ましく、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に塩素原子のようなハロゲン原子、メチル基のようなアルキル基、メトシキ基、エトキシ基のようなアルコキシ基で置換されたものが含まれる。R27は、好ましくは炭素原子数1〜4個のアルキル基である。一般式(4)で示されるチオ化合物の具体例としては、下記に示すような化合物が挙げられる。
【0049】
【表1】
【0050】
(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号記載のロフィンダイマー類、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0051】
(f)ケトオキシムエステル化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(f)ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0052】
(g)ボレート化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(g)ボレート化合物の例としては、下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0053】
【化13】
【0054】
(一般式(5)中、R28、R29、R30及びR31は互いに同一でも異なっていてもよく、各々置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアルキニル基、又は置換若しくは非置換の複素環基を示し、R28、R29、R30及びR31はその2個以上の基が結合して環状構造を形成してもよい。ただし、R28、R29、R30及びR31のうち、少なくとも1つは置換若しくは非置換のアルキル基である。(Z5)+はアルカリ金属カチオン又は第4級アンモニウムカチオンを示す。)
【0055】
上記R28〜R31のアルキル基としては、直鎖、分枝、環状のものが含まれ、炭素原子数1〜18のものが好ましい。具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。また置換アルキル基としては、上記のようなアルキル基に、ハロゲン原子(例えば、−Cl、−Brなど)、シアノ基、ニトロ基、アリール基(好ましくは、フェニル基)、ヒドロキシ基、−COOR32(ここでR32は、水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)、−OCOR33又は−OR34(ここでR33、R34は炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)、及び下記式で表されるものを置換基として有するものが含まれる。
【0056】
【化14】
【0057】
(式中、R35、R36は独立して水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)
【0058】
上記R28〜R31のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの1〜3環のアリール基が含まれ、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に前述の置換アルキル基の置換基又は、炭素数1〜14のアルキル基を有するものが含まれる。上記R28〜R31のアルケニル基としては、炭素数2〜18の直鎖、分枝、環状のものが含まれ、置換アルケニル基の置換基としては、前記の置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。上記R28〜R31のアルキニル基としては、炭素数2〜28の直鎖又は分枝のものが含まれ、置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。また、上記R28〜R31の複素環基としてはN、S及びOの少なくとも1つを含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられ、この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。更に置換基として前述の置換アリール基の置換基として挙げたものを有していてもよい。一般式(5)で示される化合物例としては具体的には米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物及び以下に示すものが挙げられる。
【0059】
【化15】
【0060】
(h)アジニウム化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(h)アジニウム塩化合物としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号並びに特公昭46−42363号記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0061】
(i)活性エステル化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(i)活性エステル化合物としては、特公昭62−6223記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号、特開昭59−174831号記載の活性スルホネート類を挙げることができる。
【0062】
(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、下記一般式(6)から(12)のものを挙げることができる。
【0063】
【化16】
【0064】
上記一般式(6)で表される化合物。
(一般式(6)中、X2はハロゲン原子を表わし、Y1は−C(X2)3、−NH2、−NHR38、−NR38、−OR38を表わす。ここでR38はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表わす。また、R37は−C(X2)3、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基を表わす。)
【0065】
【化17】
【0066】
上記一般式(7)で表される化合物。
(一般式(7)中、R39は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシル基、ニトロ基又はシアノ基であり、X3はハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。)
【0067】
【化18】
【0068】
上記一般式(8)で表される化合物。
(一般式(8)中、R40は、アリール基又は置換アリール基であり、R41は、以下に示す基又はハロゲンであり、Z6は−C(=O)−、−C(=S)−又は−SO2−である。また、X3はハロゲン原子であり、mは1又は2である。)
【0069】
【化19】
【0070】
(式中、R42、R43はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基又は置換アリール基であり、R44は一般式(6)中のR38と同じである。)
【0071】
【化20】
【0072】
上記一般式(9)で表される化合物。
(一般式(9)中、R45は置換されていてもよいアリール基又は複素環式基であり、R46は炭素原子1〜3個を有するトリハロアルキル基又はトリハロアルケニル基であり、pは1、2又は3である。)
【0073】
【化21】
【0074】
上記一般式(10)で表わされるトリハロゲノメチル基を有するカルボニルメチレン複素環式化合物。
(一般式(10)中、L7は水素原子又は式:CO−(R47)q(C(X4)3)rの置換基であり、Q2はイオウ、セレン又は酸素原子、ジアルキルメチレン基、アルケン−1,2−イレン基、1,2−フェニレン基又はN−R基であり、M4は置換又は非置換のアルキレン基又はアルケニレン基であるか、又は1,2−アリーレン基であり、R48はアルキル基、アラルキル基又はアルコキシアルキル基であり、R47は炭素環式又は複素環式の2価の芳香族基であり、X4は塩素、臭素又はヨウ素原子であり、q=0及びr=1であるか又はq=1及びr=1又は2である。)
【0075】
【化22】
【0076】
上記一般式(11)で表わされる4−ハロゲノ−5−(ハロゲノメチル−フェニル)−オキサゾール誘導体。
(一般式(11)中、X5はハロゲン原子であり、tは1〜3の整数であり、sは1〜4の整数であり、R49は水素原子又はCH3−tX5 t基であり、R50はs価の置換されていてもよい不飽和有機基である)
【0077】
【化23】
【0078】
上記一般式(12)で表わされる2−(ハロゲノメチル−フェニル)−4−ハロゲノ−オキサゾール誘導体。
(一般式(12)中、X6はハロゲン原子であり、vは1〜3の整数であり、uは1〜4の整数であり、R51は水素原子又はCH3−vX6 v基であり、R52はu価の置換されていてもよい不飽和有機基である。)
【0079】
このような炭素−ハロゲン結合を有する化合物の具体例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、例えば、2−フェニル4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2’,4’−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許1388492号明細書記載の化合物、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号記載の化合物、例えば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン)、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許3337024号明細書記載の化合物、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0080】
【化24】
【0081】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、例えば、2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。更に特開昭62−58241号記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0082】
【化25】
【0083】
更に、特開平5−281728号記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0084】
【化26】
【0085】
或いは更に、M.P.Hutt、E.F.Elslager及びL.M.Herbel著「Journalof Heterocyclic chemistry」第7巻(No.3)、第511頁以降(1970年)に記載されている合成方法に準じて、当業者が容易に合成することができる次のような化合物群、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0086】
【化27】
【0087】
(k)ピリジウム類化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(k)ピリジウム類化合物の例としては、例えば、特開2001−305734号公報に記載のピリジウム類化合物を挙げることができ、中でも、下記に示す構造であることがより好ましい。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
これらの重合開始剤の中でも、下記に示す構造を有する芳香族ケトン類やトリアジン類が好ましい。また、芳香族ケトン類としては、イルガキュア 184などの市販品も好ましく使用することができる。
【0091】
【化28】
【0092】
また、このような重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
ネガ型重合開始層組成物において、露光部を硬化させるために使用される重合開始剤と、グラフト重合に使用される重合開始剤と、が同じである場合には、その含有量は、重合開始層全固形分に対して、1〜50質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
なお、このように、ネガ型重合開始層組成物に一種の重合開始剤を使用する場合には、硬化反応の際に行う露光後にも、該重合開始剤が重合開始層中に残存している必要がある。硬化反応の際に行う露光後に残存する重合開始剤量を制御するためには、重合開始剤の種類に応じて含有量を調整する方法、画像様の露光などにより付与されるエネルギー量を調整する方法等が挙げられ、これらを組み合わせることもできる。
例えば、重合開始剤として、下記化合物(i)を用いる場合、含有量が5〜30質量%の範囲であることが好ましく、露光エネルギーとしては、3〜30J/cm2の範囲に調整されることが好ましい。
【0094】
また、ネガ型重合開始層組成物において、露光部を硬化させるために使用される重合開始剤と、グラフト重合に使用される重合開始剤と、が異なる場合には、その含有量は、例えば、硬化反応用重合開始剤として420〜470nmの波長の光に感応性を有する下記化合物(ii)を使用し、グラフト重合用重合開始剤として300〜360nmの波長の光に感応性を有する下記化合物(i)を使用した場合、重合開始層全固形分に対して、硬化反応用重合開始剤が1〜40質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましい、また、グラフト重合用重合開始剤が1〜40質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましい。
【0095】
【化29】
【0096】
「重合性不飽和結合を有する化合物」
本発明におけるネガ型重合開始層組成物に含まれる、重合性不飽和結合を有する化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができる。例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
【0097】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
【0098】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0099】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0100】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
【0101】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
更に、前述のエステルモノマーは、混合物しても用いることができる。
【0102】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0103】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加せしめた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0104】
CH2=C(R3)COOCH2CH(R4)OH (A)
(ただし、R3及びR4は、それぞれH或いはCH3を示す。)
【0105】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。なお、これらの使用量は、全成分に対して5〜70質量%、好ましくは10〜50質量%である。
【0106】
更に、例えば、米国特許第2,760,863号、同第3,060,023号、特開昭62−121448号等に記載の2個またはそれ以上の末端エチレン基を有する付加重合性不飽和化合物をも好適に用いられ、更に、かかる特許文献における光重合開始剤も、本発明の重合開始剤として好適である。
【0107】
本発明において、重合性不飽和結合を有する化合物の含有量は、ネガ型重合開始層組成物の全固形分に対して、5〜95質量%程度であり、5〜80質量%が好ましい。
【0108】
「アルカリ可溶性高分子化合物」
本発明におけるネガ型重合開始層組成物には、膜性向上のため、アルカリ可溶性高分子化合物が含まれることが好ましい。かかるアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、ポリヒドロキシスチレン類、ヒドロキシスチレン−N−置換マレイミド共重合体、ヒドロキシスチレン−無水マレイン酸共重合体、アルカリ可溶性基を有するアクリル系ポリマー、アルカリ可溶性基を有するウレタン型ポリマー等が挙げられる。ここでアルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、イミド基等が挙げられる。
【0109】
また、ポリ−p−ヒドロキンスチレン、ポリ−m−ヒドロキンスチレン、p−ヒドロキシスチレン−N−置換マレイミド共重合体、p−ヒドロキシスチレン−無水マレイン酸共重合体等のヒドロキシスチレン系ポリマーを用いる場合には質量平均分子量が2,000〜500,000、更に、4,000〜300,000のものが好ましい。
【0110】
アルカリ可溶性基を有するアクリル系ポリマーの例としては、メタクリル酸−ベンジルメタクリレート共重合体、ポリ(ヒドロキシフェニルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシエチルアクリレート)、ポリ(2、4−ジヒドロキシフェニルカルボニルオキシエチルアクリレート)や、特願平8−211731明細書に記載のポリマー等が挙げられる。これらのアクリル系ポリマーは質量平均分子量が2,000〜500,000、好ましくは4,000〜300,000のものが好ましい。
【0111】
アルカリ可溶性基を有するウレタン型ポリマーの例としては、ジフェニルメタンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネート、テトラエチレングリコール、2、2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
これらのアルカリ可溶性ポリマーのうち、ヒドロキシスチレン系ポリマー及びアルカリ可溶性基を有するアクリル系共重合体は現像性の点で好ましい。
【0112】
本発明において、アルカリ可溶性高分子化合物は、酸分解性基で保護されていてもよく、該酸分解性基としては、エステル基、カーバメイト基等が挙げられる。
【0113】
本発明において、これらのアルカリ可溶性高分子化合物の含有量は、ネガ型重合開始層組成物の全固形分中、10〜90質量%程度であり、20〜85質量%が好ましく、30〜80質量%が更に好ましい。アルカリ可溶性高分子化合物の含有量が10質量%未満であると重合開始層の耐久性が悪化する場合があり、また、90質量%を越えると感度、重合開始層の耐久性の両面で好ましくない。
また、これらのアルカリ可溶性高分子化合物は、1種類のみで使用してもよいし、或いは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0114】
また、アルカリ可溶性高分子化合物としては、線状有機高分子重合体を用いてもよい。このような「線状有機高分子重合体」としては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とする水或いは弱アルカリ水可溶性又は膨潤性である線状有機高分子重合体が選択される。線状有機高分子重合体は、組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性線状有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。
【0115】
このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、即ち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に、側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体をも用いることができる。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0116】
特に、これらの中で、〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体及び〔アリル(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、アルカリ可溶性高分子化合物として好適である。
また、特開平11−171907号公報記載のアミド基を有し、アルカリ水に可溶性である高分子バインダーも、優れた現像性と膜強度を併せ持ち、アルカリ可溶性高分子化合物として好適である。
【0117】
好ましい実施様態において、アルカリ可溶性高分子化合物としては、実質的に水不溶で、かつ、アルカリ可溶なものが用いられる。そうすることで、現像液として、環境上好ましくない有機溶剤を用いないか、若しくは、非常に少ない使用量に制限できる。このような使用法においてはアルカリ可溶性高分子化合物の酸価(ポリマー1gあたりの酸含率を化学等量数で表したもの)と分子量は、膜強度と現像性の観点から適宜選択される。好ましい酸価は、0.4〜3.0meq/gであり、好ましい分子量は、3000から50万の範囲で、より好ましくは、酸価が0.6〜2.0であり、分子量が、1万から30万の範囲である。
【0118】
「その他の成分」
本発明におけるネガ型重合開始層組成物には、種々の特性を付与するため、必要に応じて上記以外に種々の化合物を添加してもよい。
【0119】
(熱重合禁止剤)
本発明におけるネガ型重合開始層組成物には、重合開始層の製造中或いは保存中において、重合性不飽和結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、ネガ型重合開始層組成物中の不揮発性成分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、ネガ型重合開始層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0120】
(界面活性剤)
また、本発明におけるネガ型重合開始層組成物には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0121】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤のネガ型重合開始層組成物に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0122】
(可塑剤)
更に、本発明におけるネガ型重合開始層組成物には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジへキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタアクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0123】
(その他の添加剤)
これら以外にも、本発明におけるネガ型重合開始層組成物には、前述のオニウム塩やハロアルキル置換されたs−トリアジン、及びエポキシ化合物、ビニルエーテル類、更には特願平7−18120号に記載のヒドロキシメチル基を持つフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物等を添加してもよい。
【0124】
本工程においては、以上説明した、ネガ型重合開始層組成物の各成分を溶媒に溶かして、後述する支持体上に全面塗布する。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0125】
ネガ型重合開始層組成物の塗布方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、皮膜特性は低下する。
【0126】
本発明におけるネガ型重合開始層組成物塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、塗布液の全固形分中、0.01〜1質量%、更に好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0127】
ネガ型重合開始層組成物の塗布量は、乾燥後の質量で、0.1〜20g/m2が好ましく、更に、2〜15g/m2が好ましい。塗布量0.lg/m2未満では十分な重合開始能を発現できず、グラフト重合が不十分となり、所望の強固なグラフト構造が得られない懸念があり、塗布量が20g/m2を超えると膜性が低下する傾向になり、膜剥がれを起こしやすくなるため、いずれも好ましくない。
【0128】
〔支持体〕
本発明において、上記重合開始層が設けられる支持体には、特に制限はなく、寸度的に安定な板状物であり、必要な可撓性、強度、耐久性等を満たせばいずれのものも使用できるが、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート若しくは蒸着された、紙若しくはプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0129】
本発明に用いられる支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、ポリエステルフィルムがより好ましい。更に、アルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムも好ましい。
【0130】
(2.所望の画像様に露光を行う)
支持体上にネガ型重合開始層組成物を全面塗布してなる層に、所望の画像様に露光を行うことにより、その露光部では、重合開始剤の一部が分解しラジカルを発生させ、この発生したラジカルにより前記重合性不飽和結合を有する化合物が重合反応を生起する。これにより、露光部が重合反応により硬化して硬化部となり、未露光部がそのまま未硬化部となる。
【0131】
本発明において、画像様に露光を行う際には、重合開始剤を分解させ得るエネルギーを付与できる方法であれば、どのような方法をも使用できるが、コスト、装置の簡易性の観点からは活性光線を照射する方法が好ましい。また、画像様の露光に活性光線の照射を適用する場合、デジタルデータに基づく走査露光、リスフィルムを用いたパターン露光のいずれも使用することができる。
【0132】
画像様の露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、i線、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。本発明においては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0133】
また、レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。ネガ型にパターンを形成する重合開始層に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cm2であることが好ましい。
【0134】
<(1−2)未硬化部を現像により除去し、未反応の重合開始剤を含む画像様の重合開始層を設ける工程>
(1−2)の工程では、前記(1−1)の工程により支持体の全面に形成されたネガ型重合開始層組成物の塗膜(重合開始層)における未硬化部(未露光部)を現像することで、重合開始層を画像様にすることができる。
かかる現像方法について以下に説明する。
【0135】
(3.未硬化部(未露光部)を現像する)
このようにネガ型重合開始層組成物を塗布してなる層は、以下の現像液及び補充液を用いて現像される。
本工程において用いられる現像液及び補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ほう酸ナトリウム、ほう酸カリウム、ほう酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。
かかる現像液や補充液には、必要に応じて、種々の界面活性剤や有機溶剤、消泡剤、硬水軟化剤のような添加剤を含有させることもできる。
【0136】
このように、上記の1.〜3.の段階を経ることで、支持体上に画像様の重合開始層を設けることができる。
なお、この設けられた画像様の重合開始層中には、グラフト重合に使用される重合開始剤が残存する。
なお、パターン露光及び現像後、必要に応じて、加熱処理を行ってもよい。
【0137】
<(2)重合開始層に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合を用いて当該重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させて、該グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する工程>
〔グラフト重合〕
本発明において、重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させる方法としては、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いる。グラフト重合とは高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に結合及び重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法で、特に活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。また、本発明において生成されるグラフトポリマーは、高分子化合物鎖上の活性種に、所望のポリマーを結合させてなるものも含む。なお、本発明においては、活性種が与えられる高分子化合物は、上述の固定化した重合開始層を構成する高分子化合物となる。
【0138】
本発明において、グラフト重合は、支持体上に、画像様に設けられた重合開始層を、プラズマ、若しくは電子線にて処理し、表面にラジカルを発生させて重合開始能を発現させ、その後、その活性表面と重合性基を有する化合物(例えば、親水性モノマー)とを反応させることによりグラフトポリマーを生成させるものである。
【0139】
〔重合開始層に活性種を与えるためのエネルギー付与〕
重合開始層に、活性種を与えるためのエネルギー付与方法には特に制限はなく、重合開始層中の重合開始剤を分解させ得るエネルギーを付与できる方法であれば、例えば、露光等の活性光線照射などが、コスト、装置の簡易性の観点から好ましい。
即ち、エネルギー付与に使用し得る活性光線としては、紫外線、可視光、赤外光が挙げられるが、これらの活性光線の中でも、紫外線、可視光が好ましく、重合速度に優れるという点から紫外線が特に好ましい。活性光線の主たる波長が250nm以上800nm以下であることが好ましい。
光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステン白熱ランプ、太陽光などが挙げられる。
活性光線の照射の所要時間は目的とする親/疎水化度及び使用する光源により異なるが、通常数秒〜24時間である。
【0140】
以下、本発明におけるグラフト重合を用いたグラフトポリマーの生成について説明する。
本発明において、グラフト重合を用いたグラフトポリマーの生成するために、画像様の重合開始層が設けられた支持体上を、重合性基を有する化合物を含む溶液に浸漬し、その後、光照射を行い、重合開始層表面に活性種を生成させ、その活性種に対し該化合物をグラフト重合させる方法を用いる。
かかるグラフト重合を用いたグラフトポリマーの生成方法において用いられる重合性基を有する化合物としては、公知のモノマー、マクロモノマー、及びポリマーのいずれもを使用することができる。
疎水的表面を有する支持体を用いた場合には、重合性基を有する化合物として親水性の化合物を使用することが必要である。かかる親水性の化合物としては、以下に示すものが用いられ、これらを重合(又は結合)させて、親水性グラフトポリマーが生成される。
【0141】
(重合性基を有する親水性モノマー)
本発明において用いられる重合性基を有する親水性モノマー(以下、重合性基含有親水性モノマーと称する。)とは、分子内に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基が導入され、かつ、親水性官能基を有するモノマーである。
この重合性基含有親水性モノマーが有する親水性官能基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、アミノ基及びその塩、アミド基、水酸基、エーテル基、ポリオキシエチレン基などを挙げることができる。
【0142】
本発明において特に有用な重合性基含有親水性モノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそれらの塩、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレート、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド、などを使用することができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなども有用である。
【0143】
(重合性基を有する親水性マクロモノマー)
本発明で用いられる重合性基を有する親水性マクロモノマー(以下、重合性基含有親水性マクロモノマーと称する。)とは、分子内に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基が導入され、かつ、親水性官能基を有するマクロモノマーである。
本発明において特に有用な重合性基含有親水性マクロモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖若しくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。
【0144】
これらのマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。
これらの重合性基含有親水性マクロモノマーのうち有用なものの分子量は、250〜10万の範囲で、特に好ましい範囲は400〜3万である。
【0145】
(重合性基を有する親水性ポリマー)
また、本発明で用いられる重合性基を有する親水性ポリマー(以下、重合性基含有親水性ポリマーと称する。)とは、分子内に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基が導入され、かつ、親水性官能基を有するポリマーである。
本発明において用いられる重合性基含有親水性ポリマーの具体例としては、例えば、上述の重合性基含有親水性モノマーや重合性基含有親水性マクロモノマーの具体例から選ばれる少なくとも一種を用いて得られる親水性ホモポリマー若しくはコポリマーが挙げられる。
なお、重合性基を有する化合物として、重合性基含有親水性ポリマーを用いる場合には、重合開始層表面にグラフト重合する際に、必ずしも連鎖重合反応を必要とするものではなく、少量の重合性基が反応するだけでもよい。
【0146】
また、例えば、親水性の表面を有する支持体を用いた場合には、重合性基を有する化合物として疎水性の化合物を使用することが必要である。かかる疎水性の化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンなどの疎水性モノマーが用いられ、これら疎水性の化合物を重合(又は結合)させて、疎水性グラフトポリマーが生成される。
【0147】
(重合性基を有する化合物溶液用溶媒)
上述の重合性基を有する化合物を溶解するための溶媒としては、該重合性基を有する化合物や必要に応じて添加される添加剤が溶解可能ならば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤に更に界面活性剤を添加したものなどが好ましい。
水溶性溶剤は、水と任意の割合で混和しうる溶剤を言い、そのような水溶性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリンの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトンの如きケトン系溶剤、ホルムアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
【0148】
上述のようにして生成したグラフトポリマーにより形成されるグラフト層の厚さは、0.001〜10g/m2の範囲であることが好ましく、0.01〜5g/m2の範囲であることがより好ましい。このグラフト層の厚さが0.001g/m2未満であると、親水性の特性が効果的に発現できない場合がある。また、このグラフト層の厚さが10g/m2より大きいと、作製されたパターン形成材料を光透過型の画像形成材料として用いる場合、透過度が減少してしまう場合がある。
【0149】
上述のようにして生成したグラフトポリマーは、重合開始層と直接結合しているものであるため、耐久性に優れたものとなる。
本発明における「優れた親水性」とは、水との接触角に換算して20゜以下の水濡れ性を呈する状態をいう。接触角の測定方法は、公知の方法が適用でき、例えば、協和界面科学(株)製、CA−Zなどの市販の装置を用いて接触角(空中水滴)を測定する方法などを適用することができる。この方法で、接触角に換算して20゜以下であれば、本発明の好ましい親水性が達成されていると判断することができる。
【0150】
上述した本発明のパターン形成方法によれば、支持体上に、予め重合開始層を画像様に設け、その重合開始層上に、グラフトポリマーを生成させるという方法を用いている。この方法により形成された親/疎水性パターンは、親水性領域と疎水性領域との間に明確な境界を付与することができるため、そのため、緻密さや精細さを求められるような、種々の用途に応用することが容易になる。
【0151】
<(3)親/疎水性パターンにおける親水性領域又は疎水性領域に色材を付着させる工程>
本発明の画像形成方法においては、上述の(1)及び(2)工程に加え、(3)親/疎水性パターンにおける親水性領域又は疎水性領域に色材を付着させる工程を有することを特徴とする。
本工程において、上述の方法で得られた親/疎水性パターンに可視画像形成可能な色材を付着させることで可視画像が形成される。ここで、親/疎水性パターンに吸着させる色材は、可視画像を形成しうる物質であれば、無機化合物でも、有機化合物あってもよい。なお、可視像を形成しうる物質とは、可視波長領域に吸収を有する物質を指し、具体的には、例えば、有色の染料或いは顔料、光非透過性の各種顔料、金属微粒子などが挙げられる。
また、上述の(1)及び(2)工程を経て形成された親/疎水性パターンには、その親水性又は疎水性領域を形成しているグラフトポリマーの性質により、付着させる色材を選択する必要がある。
【0152】
(親水性グラフトポリマーの極性基と色材との関係)
具体的には、親水性グラフトポリマーの親水性基がスルホン酸塩やカルボン酸塩などの負の電荷を有する場合、正の電荷を有する分子、例えば、カチオン染料などを吸着させることで可視画像を形成することができる。
このような画像形成に用い得るカチオン性の色材としては、カチオン染料やカチオン性に帯電させた無機顔料、金属微粒子及び表面にカチオン性の表面層を形成してなる被覆顔料、被覆金属微粒子などが挙げられる。
ここで、用い得るカチオン染料としては、公知の染料を色調や画像濃度などの目的に応じて適宜選択して使用することができる。このようなカチオン染料は前記スルホン酸基、カルボン酸基などの極性変換基である酸性基の機能により電気的にグラフトポリマーに引き寄せられ、グラフト層の表面のみならず内部へも浸透して最終的に酸性基と結合して画像が形成されるものと考えられる。この画像はイオン性の相互作用によるため、強固に吸着し、少ない染料で堅牢度の高い高濃度の画像が形成される。
【0153】
カチオン染料としては、具体的には、発色団の末端にアルキルアミノ、アラルキルアミノ結合を有する染料、スルホン酸アルキルアミド結合などの酸アミド結合を有する染料、カチオンを形成し得る基を有するアゾ染料、メチン染料、チアゾール・アゾ染料などの複素環化合物などが挙げられる。また、カチオン染料の骨格としては、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、キサンテン、アクリジン、アジン、チアジン、チアゾール、オキサジン、アゾなどが挙げられ、このような染料は、例えば、「新染料化学」細田 豊著、技報堂、(1957年)の第316頁〜322頁に詳述されている。
【0154】
他の画像形成機構として、例えば、親水性グラフトポリマーの親水性基がアンモニウム基などのカチオン性の電荷をもつ場合、負の電荷をもつ分子、例えば、酸性染料などを吸着して可視画像が形成される。
このような画像形成に用い得るアニオン性の色材としては、酸性染料やアニオン性に帯電させた無機顔料、金属微粒子及び表面にアニオン性の表面層を形成してなる被覆顔料、被覆金属微粒子などが挙げられる。
ここで、用い得る酸性染料としては、公知の染料を色調や画像濃度などの目的に応じて適宜選択して使用することができる。このような酸性染料としては、アゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、アジン、キノリンなどの染料が挙げられ、これらのいずれでも任意に用いることができる。具体的には、例えば、C.I.Acid Yellow 1、C.I.Acid Orange 33、C.I.Acid Red 80、C.I.Acid Violet 7、C.I.Acid Blue 93などが挙げられ、このような染料は、例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編、丸善、(1970年)の第392頁〜471頁に詳述されている。
【0155】
可視画像の形成に用いられる色材は1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の色調を得るため、予め複数の色材を混合して用いることもできる。
【0156】
色材を親/疎水性領域に付着させる方法としては、色材分子を溶解又は分散させた液を、上述の(1−1)、(1−2)、及び(2)の工程を経て得られた親/疎水性パターン上に塗布する方法、及び、これらの溶液又は分散液中に親/疎水性パターンが形成された支持体を浸漬する方法などが挙げられる。塗布、浸漬のいずれの場合にも、過剰量の色材を供給し、所望の親水性領域又は疎水性領域との間に十分な付着がなされるために、溶液又は分散液と親水性領域又は疎水性領域との接触時間は、10秒から60分程度であることが好ましく、1分から20分程度であることが更に好ましい。
色材は、親/疎水性領域に付着し得る最大量付着されることが、画像の鮮鋭度、色調及び耐久性の点で好ましい。また、付着の効率からは、溶液、分散液の濃度は、少なくとも10〜20質量%程度が好ましい。
【0157】
これらの色材の使用量は、画像形成機構やその目的に応じて適宜選択することができるが、イオン性の吸着により導入される場合には、一般的な画像形成材料に用いる発色材料、有色材料の使用量に比較して、少量で、高濃度、高鮮鋭度の画像を形成することができる。
【0158】
また、他の画像形成機構として、疎水性領域に、例えば、油性インクの如き疎水性の色材を付着させる方法が挙げられる。このような画像形成機構を用いる場合には、親水性の表面を有する支持体と疎水性グラフトポリマーとからなる親/疎水性パターン材料を用い、該疎水性グラフトポリマーに疎水性の色材を付着させる方法や、疎水性の表面を有する支持体と親水性グラフトポリマーとからなる親/疎水性パターン材料を用い、親水性グラフトポリマーが形成されていない疎水性領域表面(つまり、疎水性の支持体表面)に色材を付着させる方法のいずれかが適用できる。
【0159】
また、疎水性ポリマー含有する樹脂フィルムを支持体として用い、無機顔料や金属顔料などの光非透過性の材料を付着(吸着)させる、或いは、光透過性の有色染料を付着(吸着)させる、という画像形成機構を用いた場合には、OHPや街頭における電飾のごとき光透過性のパターン形成材料、ディスプレイ材料をも容易に得ることができる。
【0160】
(平版印刷版への応用)
本発明の画像形成方法を用いて得られた親/疎水性パターンを平版印刷版として用いることもできる。例えば、疎水性の表面を有する支持体と親水性グラフトポリマーとの組み合わせからなる親/疎水性パターンの場合、版面に湿し水と油性インクとを供給することで、湿し水は形成された親水性領域(グラフトポリマーからなる領域)に吸着して非画像部を形成し、疎水性領域(支持体表面からなる領域)には疎水性の油性インク受容領域となり、画像部を形成する。親水性領域は親水性グラフトポリマーが直接支持体と結合しており、高い親水性に起因する保水性及びその耐久性に優れるため、非画像部の汚れの発生が効果的に抑制される。また、画像部は疎水性表面を有する支持体より構成されるが、親水性領域の高い親水性とあいまって、親水性領域と疎水性領域との差が大きくなり、優れた画質の画像を形成することができ、更には、印刷版としての耐刷性に優れる。
なお、平版印刷版に用いられる支持体としては、上述の可視画像形成で基板として用いたものと同様のものを用いることができるが、特に平版印刷版に用いる場合には、寸度安定性の観点から、PETなどのポリエステルフィルムや、アルミニウム板表面に疎水性ポリマー層(疎水性樹脂層)を形成したものが好適に用いられる。
【0161】
本発明の画像形成方法によれば、画質及び解像度に優れた鮮鋭な画像を形成することが可能であり、更には、形成された画像の耐久性が良好であるため、多用な目的に好適に使用しうるという利点を有する。これにより、目的に応じた種々の画像が容易に形成でき、また、大面積での画像形成も容易なため、平版印刷版や材料ディスプレイなどに好適に適用しうるなど、広い用途が期待される。
【0162】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
〔実施例1〕
(重合開始層の形成)
膜厚0.188mmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名:M4100、東洋紡社製)を支持体として用い、その表面に下記の重合開始層塗布液をロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥・架橋反応させた。得られた重合開始層の膜厚は6.2μmであった。
【0163】
(重合開始層塗布液)
・重合開始剤[下記化合物(C)] 0.16g
・重合性不飽和結合を有する化合物[下記化合物(B)] 0.4g
・アルカリ可溶性高分子化合物[下記化合物(A)] 0.4g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG) 1.6g
【0164】
【化30】
【0165】
(パターン露光、及び現像)
得られた重合開始層を、パターンフィルムを通してPSライトで露光した後、富士写真フイルム(株)製現像液、DP−4(1:8)で現像した。これにより、支持体上に重合開始層が画像様に設けられた。
【0166】
(グラフト重合)
重合開始層が形成された支持体を、アクリル酸(10wt%、溶媒:水)溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で400w高圧水銀灯を使用し30分間光照射した。光照射後、支持体をイオン交換水でよく洗浄し、重合開始層表面にアクリル酸がグラフト重合されたグラフトポリマーが生成した、パターン形成材料Aが得られた。
【0167】
(パターン形成性の評価)
得られたパターン形成材料Aを、カチオン性色素であるメチレンブルー水溶液(0.5質量%)に5分浸漬した。すると、グラフトポリマーが生成している領域に、色素が選択的に吸着し、L/S=3μm/3μmのパターンが形成されていることが確認された。
【0168】
〔実施例2〕
(画像形成)
また、実施例1で得られたパターン形成材料Aを平版印刷版として用い、下記の方法で印刷に供した。なお、パターン形成材料Aを平版印刷版として用いる場合には、親水性グラフトポリマーが生成されている領域が非画像部、親水性グラフトポリマーが生成されている領域が非画像部、ポリエチレンテレフタレートフィルムが露出している領域が画像部となり、該画像部にインキが付着することになる。
【0169】
パターン形成材料Aをリスロン印刷機に装着し、湿し水として、富士写真フイルム(株)製のIF201(2.5%)、IF202(0.75%)を、インクとして、大日本インキ化学工業(株)製のGEOS−G墨を、供給して、通常通り印刷を行った。
【0170】
得られた印刷物の画像部が良好に形成されているかどうか、及び非画像部に汚れが生じていないかを観察したところ、画像部のヌケや非画像部の汚れのない良好な画質の印刷物が得られた。
その後、1万枚の印刷を継続したが、1万枚の印刷が終了した時点でも、画像部のかすれや非画像部の汚れの発生もなく、良好な印刷物が得られ、本発明の画像形成方法で得られた画像形成材料を平版印刷版として用いた場合、印刷物の画質、耐刷性ともに良好であることがわかった。
【0171】
【発明の効果】
本発明によれば、特殊な材料や化合物、また、高エネルギーを必要とすることなく、簡易な方法で、広範囲に応用可能な微細で鮮明なパターンを形成することのできるパターン形成方法と、該パターン形成方法を用いた、画質及び解像度に優れた画像形成方法と、を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、パターン形成方法及び画像形成方法に関し、より詳細には、種々の用途に応用し得るパターン形成方法、及び画質及び解像度に優れた画像を容易に形成することができ、平版印刷版やディスプレイ材料に適用し得る画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、種々の分野において、微細なパターンを形成する技術が注目されている。中でも、微細な親/疎水性パターン形成方法が着目されており、このような親/疎水性パターンの形成方法としては、例えば、表面に凸状パターンを有するスタンプを成形し、該凸部に疎水性分子を付着させた後、該疎水性分子を基板に転写し、また、転写されていない部分に親水性分子を付着させることで、親/疎水性領域からなるパターンを形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようにして作製された親/疎水性パターンは、各種機能デバイス、DNAチップなどに有用である。しかしながら、この技術によれば、微細で緻密なパターンを形成することはできるが、特殊な材料を用いる必要があり、かつ、大面積の画像形成などへの応用が困難であった。
【0003】
そこで、大面積の画像形成への応用に関する技術としては、疎水的な基板の全面に親水性のグラフト重合体からなる親水性層を形成させた後、レーザー露光により画像様に基板表面から親水性層をアブレーションにより除去することで、親水性層と疎水的な基板表面とからなるパターン(画像部及び非画像部)が形成される方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この方法によれば、パターンの転写の工程を必要としないため、作製された親/疎水性パターンにインキと水を付着させて、大面積の平版印刷版材料として使用することができる。しかしながら、この親/疎水性パターン形成方法は、親水性層を除去するのに高エネルギーを要するため高価な高出力レーザーが必要であり、更に、形成された画像の画質や解像度も満足のいくものではなかった。
【0004】
この課題に対し、より低エネルギーでパターンを形成する方法としては、基板の全面に、酸、熱、又は光により極性変換可能なグラフトポリマーを形成させた後、画像様に酸、熱、又は光を付与し極性変換させ、親水性グラフトポリマーと疎水性グラフトポリマーとからなる親水性部と親油性(疎水性部)とからなるパターンを形成し、該パターンにより画像を形成する技術が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この方法では、極性変換可能なグラフトポリマーを形成するための特殊なモノマーが必要となり、作業工程に手間がかかるという問題点があった。
【0005】
また、基板上に、1.アミノ基含有感光性組成物を塗布し、画像様に露光、現像することにより、未露光部を除去し、アミノ基を画像様に基板に固定化した後に、2.アミノ基をアンカーとして光開始剤を化学結合させ、光開始剤を画像様に固定化し、更に、3.画像様に固定化された光開始剤に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合させることで、グラフトポリマー生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する技術が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では、光開始剤を画像様に固定化する工程が複数あり、煩雑であるという問題を有していた。加えて、アンカーであるアミノ基が膜内部に潜り込んでしまう傾向があり、固定化できる光開始剤の絶対量が減少し、グラフトポリマーの生成量も少なくなるため、グラフトポリマー生成領域と非生成領域との境界が不鮮明となる問題を有していた。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−283530公報
【特許文献2】
特開平11−119413号公報
【特許文献3】
特開平2001−117223号公報
【非特許文献1】
松田 武久著“Macromolecules”、1994年、27巻、7809頁〜7814頁
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、特殊な材料や化合物、また、高エネルギーを必要とすることなく、簡易な方法で、広範囲に応用可能な微細で鮮明なパターンを形成することのできるパターン形成方法と、該パターン形成方法を用いた、画質及び解像度に優れた画像形成方法と、を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、下記に示す手段により上記目的が達成されることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明のパターン形成方法は、
支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層を形成し、該層を画像様に露光して、前記重合開始剤の一部を用いて前記重合性不飽和結合を有する化合物を硬化させて、硬化部と未硬化部とを形成する工程と、
前記未硬化部を現像により除去し、未反応の前記重合開始剤を含む画像様の重合開始層を設ける工程と、
該重合開始層に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合を用いて当該重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させて、該グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする。
また、本発明の画像形成方法は、
支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層を形成し、該層を画像様に露光して、前記重合開始剤の一部を用いて前記重合性不飽和結合を有する化合物を硬化させて、硬化部と未硬化部とを形成する工程と、
前記未硬化部を現像により除去し、未反応の前記重合開始剤を含む画像様の重合開始層を設ける工程と、
該重合開始層に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合を用いて当該重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させて、該グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する工程と、
該親/疎水性パターンにおける親水性領域又は疎水性領域に色材を付着させる工程と、
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明においては支持体と、生成されるグラフトポリマーと、の親/疎水性は逆の関係にあること、すなわち、疎水性表面を有する支持体を用いた場合には、重合性基を有する化合物として親水性化合物を使用し、親水性表面を有する支持体を用いた場合には、重合性基を有する化合物として疎水性化合物を使用することが、親/疎水性パターンを形成する上で必要である。これらの中でも、通常は支持体が疎水性表面を有することが多いため、親水性化合物とを組み合わせ、疎水性表面上に親水性のグラフトポリマーを生成させることが好ましい。
【0011】
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推測される。
本発明のパターン形成方法は、例えば、疎水性の支持体上に、予め重合開始層を画像様に設け、その重合開始層上に、優れた親水性を有するグラフトポリマーを生成させるという方法を用いている。この方法により形成された親/疎水性パターンは、例えば、疎水性領域が支持体表面から、親水性領域が重合開始層に結合したグラフトポリマーからなるため、設けられた重合開始層の特徴に依存して親水性領域と疎水性領域との間に明確な境界を付与することができる。そのため、緻密さや精細さを求められるような、種々の用途に応用することが容易になる。
また、親水性領域がグラフトポリマーからなる場合、運動性の優れたグラフトポリマーの特性により、発現されるその親水性や疎水性の性質が優れたものとなるため、本発明のパターン形成方法を用いて形成された親/疎水性パターンは、親水性領域と疎水性領域との性質の差が特に大きくなるものと思われる。そのため、かかる親水性領域に色材を付着させる工程を有する本発明の画像形成方法では、色材の付着(吸着)が正確となり、所望される画質や解像度の画像を形成することが可能となる。更には、本発明の画像形成方法において、グラフトポリマーに色材を付着させる場合には、かかる色材が強固に吸着し、かつ、グラフトポリマーと重合開始層との結合も強固であることから、画像の耐久性が良好なものとなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のパターン形成方法及び画像形成方法は、共に、(1−1)支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層を形成し、該層を画像様に露光して、前記重合開始剤の一部を用いて前記重合性不飽和結合を有する化合物を硬化させて、硬化部と未硬化部とを形成する工程と、(1−2)前記未硬化部を現像により除去し、未反応の前記重合開始剤を含む画像様の重合開始層を設ける工程と、(2)該重合開始層に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合を用いて当該重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させて、該グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する工程と、を有する。以下、この(1−1)、(1−2)、及び(2)の工程について説明する。
【0013】
<(1−1)支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層を形成し、該層を画像様に露光して、重合開始剤の一部を用いて重合性不飽和結合を有する化合物を硬化させて、硬化部と未硬化部とを形成する工程>
(1−1)の工程における、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層に、硬化部と未硬化部とを形成する方法について説明する。
より具体的には、
1.支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む重合開始層組成物を全面塗布し、
2.所望の画像様に露光を行う、
という段階を経ることで、上述のような硬化部と未硬化部とが形成される。
この方法の各段階について、以下に詳細に説明する。
【0014】
(1.支持体上に重合開始層組成物を全面塗布する)
支持体上に塗布される重合開始層組成物としては、露光部が硬化し、かつ、未露光部(未硬化部)が現像される、ネガ型にパターンを形成することができ得る重合開始層組成物(以下、適宜、ネガ型重合開始層組成物と称する。)が用いられる。かかるネガ型重合開始層組成物は、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを必須成分として含み、更に、膜性向上のためのアルカリ可溶性高分子化合物や、必要に応じて他の添加物を含むことが好ましい。
【0015】
なお、ネガ型重合開始層組成物に含まれる重合開始剤は、露光部を硬化させるため、また、グラフト重合に使用されるために用いられる。ネガ型重合開始層組成物において、露光部を硬化させるために使用される重合開始剤と、グラフト重合に使用される重合開始剤と、は同じものであってもよいし、異なる種類であってもよい。例えば、硬化反応及びグラフト重合に同じ重合開始剤を用いる場合には、該重合開始剤は、硬化反応に使用する露光とグラフト重合に使用する露光とのどちらの波長にも感応するものであって、硬化反応の際に行う露光後にも、重合開始剤が重合開始層中に残存している必要がある。また、硬化反応とグラフト重合とで異なる種類の重合開始剤を用いる場合には、例えば、硬化反応に使用する露光波長に感応する重合開始剤と、グラフト重合に使用する露光波長に感応する重合開始剤と、を併用すればよい。したがって、(1−1)の工程における「重合開始剤の一部」とは、ネガ型重合開始層組成物中で、露光部を硬化させるためだけに使用される量又は種類の重合開始剤を指す。その結果、かかる重合開始剤の残部は、(1−2)の工程における「未反応の重合開始剤」となり、グラフト重合に使用されることになる。
以下、ネガ型重合開始層組成物を構成する各成分について説明する。
【0016】
「重合開始剤」
本発明におけるネガ型重合開始層組成物に含まれる、好適な重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(k)ピリジウム類化合物等の光重合開始剤が挙げられる。以下に、上記(a)〜(k)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
(a)芳香族ケトン類
本発明において、重合開始剤として好ましい(a)芳香族ケトン類としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCEAND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、下記化合物が挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
中でも、特に好ましい(a)芳香族ケトン類の例を以下に列記する。
特公昭47−6416記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981記載のベンゾインエーテル化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0020】
【化2】
【0021】
特公昭47−22326記載のα−置換ベンゾイン化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0022】
【化3】
【0023】
特公昭47−23664記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483記載のジアルコキシベンゾフェノン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0024】
【化4】
【0025】
特公昭60−26403、特開昭62−81345記載のベンゾインエーテル類、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0026】
【化5】
【0027】
特公平1−34242、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0028】
【化6】
【0029】
特開平2−211452記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0030】
【化7】
【0031】
特開昭61−194062記載のチオ置換芳香族ケトン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0032】
【化8】
【0033】
特公平2−9597記載のアシルホスフィンスルフィド、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0034】
【化9】
【0035】
特公平2−9596記載のアシルホスフィン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0036】
【化10】
【0037】
また、特公昭63−61950記載のチオキサントン類、特公昭59−42864記載のクマリン類等を挙げることもできる。
【0038】
(b)オニウム塩化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(b)オニウム塩化合物としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
【0039】
【化11】
【0040】
一般式(1)中、Ar1とAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z2)−はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、カルボン酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0041】
一般式(2)中、Ar3は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z3)−は(Z2)−と同義の対イオンを表す。
【0042】
一般式(3)中、R23、R24及びR25は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z4)−は(Z2)−と同義の対イオンを表す。
【0043】
本発明において、好適に用いることのできる(b)オニウム塩化合物の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0030]〜[0033]、特開2001−305734号公報の段落番号[0048]〜[0052]、及び、特開2001−343742公報の段落番号[0015]〜[0046]に記載されたものなどを挙げることができる。
【0044】
(c)有機過酸化物
本発明において、重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ブタン、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ターシャリーブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−キサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、ターシャリーブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーブチルパーオキシオクタノエート、ターシャリーブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシラウレート、ターシャリーカーボネート、3,3’4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、3,3’4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましく用いられる。
【0046】
(d)チオ化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(d)チオ化合物としては、下記一般式(4)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
【0047】
【化12】
【0048】
(一般式(4)中、R26はアルキル基、アリール基又は置換アリール基を示し、R27は水素原子又はアルキル基を示す。また、R26とR27は、互いに結合して酸素、硫黄及び窒素原子から選ばれたヘテロ原子を含んでもよい5員ないし7員環を形成するのに必要な非金属原子群を示す。)
上記一般式(4)におけるアルキル基としては炭素原子数1〜4個のものが好ましい。また、アリール基としてはフェニル、ナフチルのような炭素原子数6〜10個のものが好ましく、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に塩素原子のようなハロゲン原子、メチル基のようなアルキル基、メトシキ基、エトキシ基のようなアルコキシ基で置換されたものが含まれる。R27は、好ましくは炭素原子数1〜4個のアルキル基である。一般式(4)で示されるチオ化合物の具体例としては、下記に示すような化合物が挙げられる。
【0049】
【表1】
【0050】
(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号記載のロフィンダイマー類、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0051】
(f)ケトオキシムエステル化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(f)ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0052】
(g)ボレート化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(g)ボレート化合物の例としては、下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0053】
【化13】
【0054】
(一般式(5)中、R28、R29、R30及びR31は互いに同一でも異なっていてもよく、各々置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアルキニル基、又は置換若しくは非置換の複素環基を示し、R28、R29、R30及びR31はその2個以上の基が結合して環状構造を形成してもよい。ただし、R28、R29、R30及びR31のうち、少なくとも1つは置換若しくは非置換のアルキル基である。(Z5)+はアルカリ金属カチオン又は第4級アンモニウムカチオンを示す。)
【0055】
上記R28〜R31のアルキル基としては、直鎖、分枝、環状のものが含まれ、炭素原子数1〜18のものが好ましい。具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。また置換アルキル基としては、上記のようなアルキル基に、ハロゲン原子(例えば、−Cl、−Brなど)、シアノ基、ニトロ基、アリール基(好ましくは、フェニル基)、ヒドロキシ基、−COOR32(ここでR32は、水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)、−OCOR33又は−OR34(ここでR33、R34は炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)、及び下記式で表されるものを置換基として有するものが含まれる。
【0056】
【化14】
【0057】
(式中、R35、R36は独立して水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)
【0058】
上記R28〜R31のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの1〜3環のアリール基が含まれ、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に前述の置換アルキル基の置換基又は、炭素数1〜14のアルキル基を有するものが含まれる。上記R28〜R31のアルケニル基としては、炭素数2〜18の直鎖、分枝、環状のものが含まれ、置換アルケニル基の置換基としては、前記の置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。上記R28〜R31のアルキニル基としては、炭素数2〜28の直鎖又は分枝のものが含まれ、置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。また、上記R28〜R31の複素環基としてはN、S及びOの少なくとも1つを含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられ、この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。更に置換基として前述の置換アリール基の置換基として挙げたものを有していてもよい。一般式(5)で示される化合物例としては具体的には米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物及び以下に示すものが挙げられる。
【0059】
【化15】
【0060】
(h)アジニウム化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(h)アジニウム塩化合物としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号並びに特公昭46−42363号記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0061】
(i)活性エステル化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(i)活性エステル化合物としては、特公昭62−6223記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号、特開昭59−174831号記載の活性スルホネート類を挙げることができる。
【0062】
(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、下記一般式(6)から(12)のものを挙げることができる。
【0063】
【化16】
【0064】
上記一般式(6)で表される化合物。
(一般式(6)中、X2はハロゲン原子を表わし、Y1は−C(X2)3、−NH2、−NHR38、−NR38、−OR38を表わす。ここでR38はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表わす。また、R37は−C(X2)3、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基を表わす。)
【0065】
【化17】
【0066】
上記一般式(7)で表される化合物。
(一般式(7)中、R39は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシル基、ニトロ基又はシアノ基であり、X3はハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。)
【0067】
【化18】
【0068】
上記一般式(8)で表される化合物。
(一般式(8)中、R40は、アリール基又は置換アリール基であり、R41は、以下に示す基又はハロゲンであり、Z6は−C(=O)−、−C(=S)−又は−SO2−である。また、X3はハロゲン原子であり、mは1又は2である。)
【0069】
【化19】
【0070】
(式中、R42、R43はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基又は置換アリール基であり、R44は一般式(6)中のR38と同じである。)
【0071】
【化20】
【0072】
上記一般式(9)で表される化合物。
(一般式(9)中、R45は置換されていてもよいアリール基又は複素環式基であり、R46は炭素原子1〜3個を有するトリハロアルキル基又はトリハロアルケニル基であり、pは1、2又は3である。)
【0073】
【化21】
【0074】
上記一般式(10)で表わされるトリハロゲノメチル基を有するカルボニルメチレン複素環式化合物。
(一般式(10)中、L7は水素原子又は式:CO−(R47)q(C(X4)3)rの置換基であり、Q2はイオウ、セレン又は酸素原子、ジアルキルメチレン基、アルケン−1,2−イレン基、1,2−フェニレン基又はN−R基であり、M4は置換又は非置換のアルキレン基又はアルケニレン基であるか、又は1,2−アリーレン基であり、R48はアルキル基、アラルキル基又はアルコキシアルキル基であり、R47は炭素環式又は複素環式の2価の芳香族基であり、X4は塩素、臭素又はヨウ素原子であり、q=0及びr=1であるか又はq=1及びr=1又は2である。)
【0075】
【化22】
【0076】
上記一般式(11)で表わされる4−ハロゲノ−5−(ハロゲノメチル−フェニル)−オキサゾール誘導体。
(一般式(11)中、X5はハロゲン原子であり、tは1〜3の整数であり、sは1〜4の整数であり、R49は水素原子又はCH3−tX5 t基であり、R50はs価の置換されていてもよい不飽和有機基である)
【0077】
【化23】
【0078】
上記一般式(12)で表わされる2−(ハロゲノメチル−フェニル)−4−ハロゲノ−オキサゾール誘導体。
(一般式(12)中、X6はハロゲン原子であり、vは1〜3の整数であり、uは1〜4の整数であり、R51は水素原子又はCH3−vX6 v基であり、R52はu価の置換されていてもよい不飽和有機基である。)
【0079】
このような炭素−ハロゲン結合を有する化合物の具体例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、例えば、2−フェニル4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2’,4’−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許1388492号明細書記載の化合物、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号記載の化合物、例えば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン)、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許3337024号明細書記載の化合物、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0080】
【化24】
【0081】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、例えば、2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。更に特開昭62−58241号記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0082】
【化25】
【0083】
更に、特開平5−281728号記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0084】
【化26】
【0085】
或いは更に、M.P.Hutt、E.F.Elslager及びL.M.Herbel著「Journalof Heterocyclic chemistry」第7巻(No.3)、第511頁以降(1970年)に記載されている合成方法に準じて、当業者が容易に合成することができる次のような化合物群、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0086】
【化27】
【0087】
(k)ピリジウム類化合物
本発明において、重合開始剤として好ましい(k)ピリジウム類化合物の例としては、例えば、特開2001−305734号公報に記載のピリジウム類化合物を挙げることができ、中でも、下記に示す構造であることがより好ましい。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
これらの重合開始剤の中でも、下記に示す構造を有する芳香族ケトン類やトリアジン類が好ましい。また、芳香族ケトン類としては、イルガキュア 184などの市販品も好ましく使用することができる。
【0091】
【化28】
【0092】
また、このような重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
ネガ型重合開始層組成物において、露光部を硬化させるために使用される重合開始剤と、グラフト重合に使用される重合開始剤と、が同じである場合には、その含有量は、重合開始層全固形分に対して、1〜50質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
なお、このように、ネガ型重合開始層組成物に一種の重合開始剤を使用する場合には、硬化反応の際に行う露光後にも、該重合開始剤が重合開始層中に残存している必要がある。硬化反応の際に行う露光後に残存する重合開始剤量を制御するためには、重合開始剤の種類に応じて含有量を調整する方法、画像様の露光などにより付与されるエネルギー量を調整する方法等が挙げられ、これらを組み合わせることもできる。
例えば、重合開始剤として、下記化合物(i)を用いる場合、含有量が5〜30質量%の範囲であることが好ましく、露光エネルギーとしては、3〜30J/cm2の範囲に調整されることが好ましい。
【0094】
また、ネガ型重合開始層組成物において、露光部を硬化させるために使用される重合開始剤と、グラフト重合に使用される重合開始剤と、が異なる場合には、その含有量は、例えば、硬化反応用重合開始剤として420〜470nmの波長の光に感応性を有する下記化合物(ii)を使用し、グラフト重合用重合開始剤として300〜360nmの波長の光に感応性を有する下記化合物(i)を使用した場合、重合開始層全固形分に対して、硬化反応用重合開始剤が1〜40質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましい、また、グラフト重合用重合開始剤が1〜40質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましい。
【0095】
【化29】
【0096】
「重合性不飽和結合を有する化合物」
本発明におけるネガ型重合開始層組成物に含まれる、重合性不飽和結合を有する化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができる。例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
【0097】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
【0098】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0099】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0100】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
【0101】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
更に、前述のエステルモノマーは、混合物しても用いることができる。
【0102】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0103】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加せしめた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0104】
CH2=C(R3)COOCH2CH(R4)OH (A)
(ただし、R3及びR4は、それぞれH或いはCH3を示す。)
【0105】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。なお、これらの使用量は、全成分に対して5〜70質量%、好ましくは10〜50質量%である。
【0106】
更に、例えば、米国特許第2,760,863号、同第3,060,023号、特開昭62−121448号等に記載の2個またはそれ以上の末端エチレン基を有する付加重合性不飽和化合物をも好適に用いられ、更に、かかる特許文献における光重合開始剤も、本発明の重合開始剤として好適である。
【0107】
本発明において、重合性不飽和結合を有する化合物の含有量は、ネガ型重合開始層組成物の全固形分に対して、5〜95質量%程度であり、5〜80質量%が好ましい。
【0108】
「アルカリ可溶性高分子化合物」
本発明におけるネガ型重合開始層組成物には、膜性向上のため、アルカリ可溶性高分子化合物が含まれることが好ましい。かかるアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、ポリヒドロキシスチレン類、ヒドロキシスチレン−N−置換マレイミド共重合体、ヒドロキシスチレン−無水マレイン酸共重合体、アルカリ可溶性基を有するアクリル系ポリマー、アルカリ可溶性基を有するウレタン型ポリマー等が挙げられる。ここでアルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、イミド基等が挙げられる。
【0109】
また、ポリ−p−ヒドロキンスチレン、ポリ−m−ヒドロキンスチレン、p−ヒドロキシスチレン−N−置換マレイミド共重合体、p−ヒドロキシスチレン−無水マレイン酸共重合体等のヒドロキシスチレン系ポリマーを用いる場合には質量平均分子量が2,000〜500,000、更に、4,000〜300,000のものが好ましい。
【0110】
アルカリ可溶性基を有するアクリル系ポリマーの例としては、メタクリル酸−ベンジルメタクリレート共重合体、ポリ(ヒドロキシフェニルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシエチルアクリレート)、ポリ(2、4−ジヒドロキシフェニルカルボニルオキシエチルアクリレート)や、特願平8−211731明細書に記載のポリマー等が挙げられる。これらのアクリル系ポリマーは質量平均分子量が2,000〜500,000、好ましくは4,000〜300,000のものが好ましい。
【0111】
アルカリ可溶性基を有するウレタン型ポリマーの例としては、ジフェニルメタンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネート、テトラエチレングリコール、2、2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
これらのアルカリ可溶性ポリマーのうち、ヒドロキシスチレン系ポリマー及びアルカリ可溶性基を有するアクリル系共重合体は現像性の点で好ましい。
【0112】
本発明において、アルカリ可溶性高分子化合物は、酸分解性基で保護されていてもよく、該酸分解性基としては、エステル基、カーバメイト基等が挙げられる。
【0113】
本発明において、これらのアルカリ可溶性高分子化合物の含有量は、ネガ型重合開始層組成物の全固形分中、10〜90質量%程度であり、20〜85質量%が好ましく、30〜80質量%が更に好ましい。アルカリ可溶性高分子化合物の含有量が10質量%未満であると重合開始層の耐久性が悪化する場合があり、また、90質量%を越えると感度、重合開始層の耐久性の両面で好ましくない。
また、これらのアルカリ可溶性高分子化合物は、1種類のみで使用してもよいし、或いは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0114】
また、アルカリ可溶性高分子化合物としては、線状有機高分子重合体を用いてもよい。このような「線状有機高分子重合体」としては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とする水或いは弱アルカリ水可溶性又は膨潤性である線状有機高分子重合体が選択される。線状有機高分子重合体は、組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性線状有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。
【0115】
このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、即ち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に、側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体をも用いることができる。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0116】
特に、これらの中で、〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体及び〔アリル(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、アルカリ可溶性高分子化合物として好適である。
また、特開平11−171907号公報記載のアミド基を有し、アルカリ水に可溶性である高分子バインダーも、優れた現像性と膜強度を併せ持ち、アルカリ可溶性高分子化合物として好適である。
【0117】
好ましい実施様態において、アルカリ可溶性高分子化合物としては、実質的に水不溶で、かつ、アルカリ可溶なものが用いられる。そうすることで、現像液として、環境上好ましくない有機溶剤を用いないか、若しくは、非常に少ない使用量に制限できる。このような使用法においてはアルカリ可溶性高分子化合物の酸価(ポリマー1gあたりの酸含率を化学等量数で表したもの)と分子量は、膜強度と現像性の観点から適宜選択される。好ましい酸価は、0.4〜3.0meq/gであり、好ましい分子量は、3000から50万の範囲で、より好ましくは、酸価が0.6〜2.0であり、分子量が、1万から30万の範囲である。
【0118】
「その他の成分」
本発明におけるネガ型重合開始層組成物には、種々の特性を付与するため、必要に応じて上記以外に種々の化合物を添加してもよい。
【0119】
(熱重合禁止剤)
本発明におけるネガ型重合開始層組成物には、重合開始層の製造中或いは保存中において、重合性不飽和結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、ネガ型重合開始層組成物中の不揮発性成分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、ネガ型重合開始層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0120】
(界面活性剤)
また、本発明におけるネガ型重合開始層組成物には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0121】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤のネガ型重合開始層組成物に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0122】
(可塑剤)
更に、本発明におけるネガ型重合開始層組成物には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジへキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタアクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0123】
(その他の添加剤)
これら以外にも、本発明におけるネガ型重合開始層組成物には、前述のオニウム塩やハロアルキル置換されたs−トリアジン、及びエポキシ化合物、ビニルエーテル類、更には特願平7−18120号に記載のヒドロキシメチル基を持つフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物等を添加してもよい。
【0124】
本工程においては、以上説明した、ネガ型重合開始層組成物の各成分を溶媒に溶かして、後述する支持体上に全面塗布する。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0125】
ネガ型重合開始層組成物の塗布方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、皮膜特性は低下する。
【0126】
本発明におけるネガ型重合開始層組成物塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、塗布液の全固形分中、0.01〜1質量%、更に好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0127】
ネガ型重合開始層組成物の塗布量は、乾燥後の質量で、0.1〜20g/m2が好ましく、更に、2〜15g/m2が好ましい。塗布量0.lg/m2未満では十分な重合開始能を発現できず、グラフト重合が不十分となり、所望の強固なグラフト構造が得られない懸念があり、塗布量が20g/m2を超えると膜性が低下する傾向になり、膜剥がれを起こしやすくなるため、いずれも好ましくない。
【0128】
〔支持体〕
本発明において、上記重合開始層が設けられる支持体には、特に制限はなく、寸度的に安定な板状物であり、必要な可撓性、強度、耐久性等を満たせばいずれのものも使用できるが、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート若しくは蒸着された、紙若しくはプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0129】
本発明に用いられる支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、ポリエステルフィルムがより好ましい。更に、アルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムも好ましい。
【0130】
(2.所望の画像様に露光を行う)
支持体上にネガ型重合開始層組成物を全面塗布してなる層に、所望の画像様に露光を行うことにより、その露光部では、重合開始剤の一部が分解しラジカルを発生させ、この発生したラジカルにより前記重合性不飽和結合を有する化合物が重合反応を生起する。これにより、露光部が重合反応により硬化して硬化部となり、未露光部がそのまま未硬化部となる。
【0131】
本発明において、画像様に露光を行う際には、重合開始剤を分解させ得るエネルギーを付与できる方法であれば、どのような方法をも使用できるが、コスト、装置の簡易性の観点からは活性光線を照射する方法が好ましい。また、画像様の露光に活性光線の照射を適用する場合、デジタルデータに基づく走査露光、リスフィルムを用いたパターン露光のいずれも使用することができる。
【0132】
画像様の露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、i線、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。本発明においては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0133】
また、レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。ネガ型にパターンを形成する重合開始層に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cm2であることが好ましい。
【0134】
<(1−2)未硬化部を現像により除去し、未反応の重合開始剤を含む画像様の重合開始層を設ける工程>
(1−2)の工程では、前記(1−1)の工程により支持体の全面に形成されたネガ型重合開始層組成物の塗膜(重合開始層)における未硬化部(未露光部)を現像することで、重合開始層を画像様にすることができる。
かかる現像方法について以下に説明する。
【0135】
(3.未硬化部(未露光部)を現像する)
このようにネガ型重合開始層組成物を塗布してなる層は、以下の現像液及び補充液を用いて現像される。
本工程において用いられる現像液及び補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ほう酸ナトリウム、ほう酸カリウム、ほう酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。
かかる現像液や補充液には、必要に応じて、種々の界面活性剤や有機溶剤、消泡剤、硬水軟化剤のような添加剤を含有させることもできる。
【0136】
このように、上記の1.〜3.の段階を経ることで、支持体上に画像様の重合開始層を設けることができる。
なお、この設けられた画像様の重合開始層中には、グラフト重合に使用される重合開始剤が残存する。
なお、パターン露光及び現像後、必要に応じて、加熱処理を行ってもよい。
【0137】
<(2)重合開始層に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合を用いて当該重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させて、該グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する工程>
〔グラフト重合〕
本発明において、重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させる方法としては、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いる。グラフト重合とは高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に結合及び重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法で、特に活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。また、本発明において生成されるグラフトポリマーは、高分子化合物鎖上の活性種に、所望のポリマーを結合させてなるものも含む。なお、本発明においては、活性種が与えられる高分子化合物は、上述の固定化した重合開始層を構成する高分子化合物となる。
【0138】
本発明において、グラフト重合は、支持体上に、画像様に設けられた重合開始層を、プラズマ、若しくは電子線にて処理し、表面にラジカルを発生させて重合開始能を発現させ、その後、その活性表面と重合性基を有する化合物(例えば、親水性モノマー)とを反応させることによりグラフトポリマーを生成させるものである。
【0139】
〔重合開始層に活性種を与えるためのエネルギー付与〕
重合開始層に、活性種を与えるためのエネルギー付与方法には特に制限はなく、重合開始層中の重合開始剤を分解させ得るエネルギーを付与できる方法であれば、例えば、露光等の活性光線照射などが、コスト、装置の簡易性の観点から好ましい。
即ち、エネルギー付与に使用し得る活性光線としては、紫外線、可視光、赤外光が挙げられるが、これらの活性光線の中でも、紫外線、可視光が好ましく、重合速度に優れるという点から紫外線が特に好ましい。活性光線の主たる波長が250nm以上800nm以下であることが好ましい。
光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステン白熱ランプ、太陽光などが挙げられる。
活性光線の照射の所要時間は目的とする親/疎水化度及び使用する光源により異なるが、通常数秒〜24時間である。
【0140】
以下、本発明におけるグラフト重合を用いたグラフトポリマーの生成について説明する。
本発明において、グラフト重合を用いたグラフトポリマーの生成するために、画像様の重合開始層が設けられた支持体上を、重合性基を有する化合物を含む溶液に浸漬し、その後、光照射を行い、重合開始層表面に活性種を生成させ、その活性種に対し該化合物をグラフト重合させる方法を用いる。
かかるグラフト重合を用いたグラフトポリマーの生成方法において用いられる重合性基を有する化合物としては、公知のモノマー、マクロモノマー、及びポリマーのいずれもを使用することができる。
疎水的表面を有する支持体を用いた場合には、重合性基を有する化合物として親水性の化合物を使用することが必要である。かかる親水性の化合物としては、以下に示すものが用いられ、これらを重合(又は結合)させて、親水性グラフトポリマーが生成される。
【0141】
(重合性基を有する親水性モノマー)
本発明において用いられる重合性基を有する親水性モノマー(以下、重合性基含有親水性モノマーと称する。)とは、分子内に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基が導入され、かつ、親水性官能基を有するモノマーである。
この重合性基含有親水性モノマーが有する親水性官能基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、アミノ基及びその塩、アミド基、水酸基、エーテル基、ポリオキシエチレン基などを挙げることができる。
【0142】
本発明において特に有用な重合性基含有親水性モノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそれらの塩、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレート、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド、などを使用することができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなども有用である。
【0143】
(重合性基を有する親水性マクロモノマー)
本発明で用いられる重合性基を有する親水性マクロモノマー(以下、重合性基含有親水性マクロモノマーと称する。)とは、分子内に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基が導入され、かつ、親水性官能基を有するマクロモノマーである。
本発明において特に有用な重合性基含有親水性マクロモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖若しくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。
【0144】
これらのマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。
これらの重合性基含有親水性マクロモノマーのうち有用なものの分子量は、250〜10万の範囲で、特に好ましい範囲は400〜3万である。
【0145】
(重合性基を有する親水性ポリマー)
また、本発明で用いられる重合性基を有する親水性ポリマー(以下、重合性基含有親水性ポリマーと称する。)とは、分子内に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基が導入され、かつ、親水性官能基を有するポリマーである。
本発明において用いられる重合性基含有親水性ポリマーの具体例としては、例えば、上述の重合性基含有親水性モノマーや重合性基含有親水性マクロモノマーの具体例から選ばれる少なくとも一種を用いて得られる親水性ホモポリマー若しくはコポリマーが挙げられる。
なお、重合性基を有する化合物として、重合性基含有親水性ポリマーを用いる場合には、重合開始層表面にグラフト重合する際に、必ずしも連鎖重合反応を必要とするものではなく、少量の重合性基が反応するだけでもよい。
【0146】
また、例えば、親水性の表面を有する支持体を用いた場合には、重合性基を有する化合物として疎水性の化合物を使用することが必要である。かかる疎水性の化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンなどの疎水性モノマーが用いられ、これら疎水性の化合物を重合(又は結合)させて、疎水性グラフトポリマーが生成される。
【0147】
(重合性基を有する化合物溶液用溶媒)
上述の重合性基を有する化合物を溶解するための溶媒としては、該重合性基を有する化合物や必要に応じて添加される添加剤が溶解可能ならば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤に更に界面活性剤を添加したものなどが好ましい。
水溶性溶剤は、水と任意の割合で混和しうる溶剤を言い、そのような水溶性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリンの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトンの如きケトン系溶剤、ホルムアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
【0148】
上述のようにして生成したグラフトポリマーにより形成されるグラフト層の厚さは、0.001〜10g/m2の範囲であることが好ましく、0.01〜5g/m2の範囲であることがより好ましい。このグラフト層の厚さが0.001g/m2未満であると、親水性の特性が効果的に発現できない場合がある。また、このグラフト層の厚さが10g/m2より大きいと、作製されたパターン形成材料を光透過型の画像形成材料として用いる場合、透過度が減少してしまう場合がある。
【0149】
上述のようにして生成したグラフトポリマーは、重合開始層と直接結合しているものであるため、耐久性に優れたものとなる。
本発明における「優れた親水性」とは、水との接触角に換算して20゜以下の水濡れ性を呈する状態をいう。接触角の測定方法は、公知の方法が適用でき、例えば、協和界面科学(株)製、CA−Zなどの市販の装置を用いて接触角(空中水滴)を測定する方法などを適用することができる。この方法で、接触角に換算して20゜以下であれば、本発明の好ましい親水性が達成されていると判断することができる。
【0150】
上述した本発明のパターン形成方法によれば、支持体上に、予め重合開始層を画像様に設け、その重合開始層上に、グラフトポリマーを生成させるという方法を用いている。この方法により形成された親/疎水性パターンは、親水性領域と疎水性領域との間に明確な境界を付与することができるため、そのため、緻密さや精細さを求められるような、種々の用途に応用することが容易になる。
【0151】
<(3)親/疎水性パターンにおける親水性領域又は疎水性領域に色材を付着させる工程>
本発明の画像形成方法においては、上述の(1)及び(2)工程に加え、(3)親/疎水性パターンにおける親水性領域又は疎水性領域に色材を付着させる工程を有することを特徴とする。
本工程において、上述の方法で得られた親/疎水性パターンに可視画像形成可能な色材を付着させることで可視画像が形成される。ここで、親/疎水性パターンに吸着させる色材は、可視画像を形成しうる物質であれば、無機化合物でも、有機化合物あってもよい。なお、可視像を形成しうる物質とは、可視波長領域に吸収を有する物質を指し、具体的には、例えば、有色の染料或いは顔料、光非透過性の各種顔料、金属微粒子などが挙げられる。
また、上述の(1)及び(2)工程を経て形成された親/疎水性パターンには、その親水性又は疎水性領域を形成しているグラフトポリマーの性質により、付着させる色材を選択する必要がある。
【0152】
(親水性グラフトポリマーの極性基と色材との関係)
具体的には、親水性グラフトポリマーの親水性基がスルホン酸塩やカルボン酸塩などの負の電荷を有する場合、正の電荷を有する分子、例えば、カチオン染料などを吸着させることで可視画像を形成することができる。
このような画像形成に用い得るカチオン性の色材としては、カチオン染料やカチオン性に帯電させた無機顔料、金属微粒子及び表面にカチオン性の表面層を形成してなる被覆顔料、被覆金属微粒子などが挙げられる。
ここで、用い得るカチオン染料としては、公知の染料を色調や画像濃度などの目的に応じて適宜選択して使用することができる。このようなカチオン染料は前記スルホン酸基、カルボン酸基などの極性変換基である酸性基の機能により電気的にグラフトポリマーに引き寄せられ、グラフト層の表面のみならず内部へも浸透して最終的に酸性基と結合して画像が形成されるものと考えられる。この画像はイオン性の相互作用によるため、強固に吸着し、少ない染料で堅牢度の高い高濃度の画像が形成される。
【0153】
カチオン染料としては、具体的には、発色団の末端にアルキルアミノ、アラルキルアミノ結合を有する染料、スルホン酸アルキルアミド結合などの酸アミド結合を有する染料、カチオンを形成し得る基を有するアゾ染料、メチン染料、チアゾール・アゾ染料などの複素環化合物などが挙げられる。また、カチオン染料の骨格としては、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、キサンテン、アクリジン、アジン、チアジン、チアゾール、オキサジン、アゾなどが挙げられ、このような染料は、例えば、「新染料化学」細田 豊著、技報堂、(1957年)の第316頁〜322頁に詳述されている。
【0154】
他の画像形成機構として、例えば、親水性グラフトポリマーの親水性基がアンモニウム基などのカチオン性の電荷をもつ場合、負の電荷をもつ分子、例えば、酸性染料などを吸着して可視画像が形成される。
このような画像形成に用い得るアニオン性の色材としては、酸性染料やアニオン性に帯電させた無機顔料、金属微粒子及び表面にアニオン性の表面層を形成してなる被覆顔料、被覆金属微粒子などが挙げられる。
ここで、用い得る酸性染料としては、公知の染料を色調や画像濃度などの目的に応じて適宜選択して使用することができる。このような酸性染料としては、アゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、アジン、キノリンなどの染料が挙げられ、これらのいずれでも任意に用いることができる。具体的には、例えば、C.I.Acid Yellow 1、C.I.Acid Orange 33、C.I.Acid Red 80、C.I.Acid Violet 7、C.I.Acid Blue 93などが挙げられ、このような染料は、例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編、丸善、(1970年)の第392頁〜471頁に詳述されている。
【0155】
可視画像の形成に用いられる色材は1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の色調を得るため、予め複数の色材を混合して用いることもできる。
【0156】
色材を親/疎水性領域に付着させる方法としては、色材分子を溶解又は分散させた液を、上述の(1−1)、(1−2)、及び(2)の工程を経て得られた親/疎水性パターン上に塗布する方法、及び、これらの溶液又は分散液中に親/疎水性パターンが形成された支持体を浸漬する方法などが挙げられる。塗布、浸漬のいずれの場合にも、過剰量の色材を供給し、所望の親水性領域又は疎水性領域との間に十分な付着がなされるために、溶液又は分散液と親水性領域又は疎水性領域との接触時間は、10秒から60分程度であることが好ましく、1分から20分程度であることが更に好ましい。
色材は、親/疎水性領域に付着し得る最大量付着されることが、画像の鮮鋭度、色調及び耐久性の点で好ましい。また、付着の効率からは、溶液、分散液の濃度は、少なくとも10〜20質量%程度が好ましい。
【0157】
これらの色材の使用量は、画像形成機構やその目的に応じて適宜選択することができるが、イオン性の吸着により導入される場合には、一般的な画像形成材料に用いる発色材料、有色材料の使用量に比較して、少量で、高濃度、高鮮鋭度の画像を形成することができる。
【0158】
また、他の画像形成機構として、疎水性領域に、例えば、油性インクの如き疎水性の色材を付着させる方法が挙げられる。このような画像形成機構を用いる場合には、親水性の表面を有する支持体と疎水性グラフトポリマーとからなる親/疎水性パターン材料を用い、該疎水性グラフトポリマーに疎水性の色材を付着させる方法や、疎水性の表面を有する支持体と親水性グラフトポリマーとからなる親/疎水性パターン材料を用い、親水性グラフトポリマーが形成されていない疎水性領域表面(つまり、疎水性の支持体表面)に色材を付着させる方法のいずれかが適用できる。
【0159】
また、疎水性ポリマー含有する樹脂フィルムを支持体として用い、無機顔料や金属顔料などの光非透過性の材料を付着(吸着)させる、或いは、光透過性の有色染料を付着(吸着)させる、という画像形成機構を用いた場合には、OHPや街頭における電飾のごとき光透過性のパターン形成材料、ディスプレイ材料をも容易に得ることができる。
【0160】
(平版印刷版への応用)
本発明の画像形成方法を用いて得られた親/疎水性パターンを平版印刷版として用いることもできる。例えば、疎水性の表面を有する支持体と親水性グラフトポリマーとの組み合わせからなる親/疎水性パターンの場合、版面に湿し水と油性インクとを供給することで、湿し水は形成された親水性領域(グラフトポリマーからなる領域)に吸着して非画像部を形成し、疎水性領域(支持体表面からなる領域)には疎水性の油性インク受容領域となり、画像部を形成する。親水性領域は親水性グラフトポリマーが直接支持体と結合しており、高い親水性に起因する保水性及びその耐久性に優れるため、非画像部の汚れの発生が効果的に抑制される。また、画像部は疎水性表面を有する支持体より構成されるが、親水性領域の高い親水性とあいまって、親水性領域と疎水性領域との差が大きくなり、優れた画質の画像を形成することができ、更には、印刷版としての耐刷性に優れる。
なお、平版印刷版に用いられる支持体としては、上述の可視画像形成で基板として用いたものと同様のものを用いることができるが、特に平版印刷版に用いる場合には、寸度安定性の観点から、PETなどのポリエステルフィルムや、アルミニウム板表面に疎水性ポリマー層(疎水性樹脂層)を形成したものが好適に用いられる。
【0161】
本発明の画像形成方法によれば、画質及び解像度に優れた鮮鋭な画像を形成することが可能であり、更には、形成された画像の耐久性が良好であるため、多用な目的に好適に使用しうるという利点を有する。これにより、目的に応じた種々の画像が容易に形成でき、また、大面積での画像形成も容易なため、平版印刷版や材料ディスプレイなどに好適に適用しうるなど、広い用途が期待される。
【0162】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
〔実施例1〕
(重合開始層の形成)
膜厚0.188mmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名:M4100、東洋紡社製)を支持体として用い、その表面に下記の重合開始層塗布液をロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥・架橋反応させた。得られた重合開始層の膜厚は6.2μmであった。
【0163】
(重合開始層塗布液)
・重合開始剤[下記化合物(C)] 0.16g
・重合性不飽和結合を有する化合物[下記化合物(B)] 0.4g
・アルカリ可溶性高分子化合物[下記化合物(A)] 0.4g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG) 1.6g
【0164】
【化30】
【0165】
(パターン露光、及び現像)
得られた重合開始層を、パターンフィルムを通してPSライトで露光した後、富士写真フイルム(株)製現像液、DP−4(1:8)で現像した。これにより、支持体上に重合開始層が画像様に設けられた。
【0166】
(グラフト重合)
重合開始層が形成された支持体を、アクリル酸(10wt%、溶媒:水)溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で400w高圧水銀灯を使用し30分間光照射した。光照射後、支持体をイオン交換水でよく洗浄し、重合開始層表面にアクリル酸がグラフト重合されたグラフトポリマーが生成した、パターン形成材料Aが得られた。
【0167】
(パターン形成性の評価)
得られたパターン形成材料Aを、カチオン性色素であるメチレンブルー水溶液(0.5質量%)に5分浸漬した。すると、グラフトポリマーが生成している領域に、色素が選択的に吸着し、L/S=3μm/3μmのパターンが形成されていることが確認された。
【0168】
〔実施例2〕
(画像形成)
また、実施例1で得られたパターン形成材料Aを平版印刷版として用い、下記の方法で印刷に供した。なお、パターン形成材料Aを平版印刷版として用いる場合には、親水性グラフトポリマーが生成されている領域が非画像部、親水性グラフトポリマーが生成されている領域が非画像部、ポリエチレンテレフタレートフィルムが露出している領域が画像部となり、該画像部にインキが付着することになる。
【0169】
パターン形成材料Aをリスロン印刷機に装着し、湿し水として、富士写真フイルム(株)製のIF201(2.5%)、IF202(0.75%)を、インクとして、大日本インキ化学工業(株)製のGEOS−G墨を、供給して、通常通り印刷を行った。
【0170】
得られた印刷物の画像部が良好に形成されているかどうか、及び非画像部に汚れが生じていないかを観察したところ、画像部のヌケや非画像部の汚れのない良好な画質の印刷物が得られた。
その後、1万枚の印刷を継続したが、1万枚の印刷が終了した時点でも、画像部のかすれや非画像部の汚れの発生もなく、良好な印刷物が得られ、本発明の画像形成方法で得られた画像形成材料を平版印刷版として用いた場合、印刷物の画質、耐刷性ともに良好であることがわかった。
【0171】
【発明の効果】
本発明によれば、特殊な材料や化合物、また、高エネルギーを必要とすることなく、簡易な方法で、広範囲に応用可能な微細で鮮明なパターンを形成することのできるパターン形成方法と、該パターン形成方法を用いた、画質及び解像度に優れた画像形成方法と、を提供することができる。
Claims (2)
- 支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層を形成し、該層を画像様に露光して、前記重合開始剤の一部を用いて前記重合性不飽和結合を有する化合物を硬化させて、硬化部と未硬化部とを形成する工程と、
前記未硬化部を現像により除去し、未反応の前記重合開始剤を含む画像様の重合開始層を設ける工程と、
該重合開始層に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合を用いて当該重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させて、該グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する工程と、
を有することを特徴とするパターン形成方法。 - 支持体上に、重合開始剤と重合性不飽和結合を有する化合物とを含む層を形成し、該層を画像様に露光して、前記重合開始剤の一部を用いて前記重合性不飽和結合を有する化合物を硬化させて、硬化部と未硬化部とを形成する工程と、
前記未硬化部を現像により除去し、未反応の前記重合開始剤を含む画像様の重合開始層を設ける工程と、
該重合開始層に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合を用いて当該重合開始層表面にグラフトポリマーを生成させて、該グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する工程と、
該親/疎水性パターンにおける親水性領域又は疎水性領域に色材を付着させる工程と、
を有することを特徴とする画像形成方法。
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JP2003051466A JP2004258521A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | パターン形成方法及び画像形成方法 |
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JP2006159762A (ja) * | 2004-12-09 | 2006-06-22 | Canon Inc | パターン形成方法及びインクジェット記録ヘッドの製造方法 |
-
2003
- 2003-02-27 JP JP2003051466A patent/JP2004258521A/ja active Pending
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