JP2004256466A - 2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法 - Google Patents
2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】原料仕込み時の泡状物や白色固形物の発生を防止し、安全かつ高収率で、(1)3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、または(2)3,4,5,6−テトラフルオロニトリルから2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する、工業的に有利な方法を提供する。
【解決手段】(1)3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行う。(2)3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを加水分解して得られる3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有反応液を冷却、ろ過して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を回収し、次にこの固形物を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行う。
【選択図】 なし
【解決手段】(1)3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行う。(2)3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを加水分解して得られる3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有反応液を冷却、ろ過して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を回収し、次にこの固形物を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行う。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法、詳しくは3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の脱炭酸反応により安全かつ高収率で2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の脱炭酸反応により2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造することは一般に知られている。
【0003】
例えば、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中150〜230℃の温度範囲で、かつ0.5〜15時間の範囲の反応時間で自然発生圧力下に脱炭酸反応を行う方法、および3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中、銅および亜鉛の各々の金属、酸化物、水酸化物および炭酸塩から選ばれる少なくとも一種の触媒の存在下、100〜250℃の範囲の温度で自然発生圧力下に脱炭酸反応を行う方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、触媒として、アンモニア、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、有機酸塩およびフッ化物;アルカリ土類金属の酸化物;ならびに有機塩基およびその硫酸塩から選ばれる少なくとも一種の化合物を用い、pHを0.7〜2.2の範囲に調整した水性媒体中100〜220℃の範囲の温度で3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を脱炭酸反応させる方法がある(例えば、特許文献2参照)。出発原料の3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸として、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを30〜90質量%濃度の硫酸水溶液を用いて100〜180℃の範囲で加水分解して得られるものを使用することも開示されている。
【特許文献1】特開昭61−85349号公報
【特許文献2】特開昭62−45号公報
【発明が解決しようとする課題】
前記従来方法においては、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の脱炭酸反応を行うにあたり、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、水性媒体および触媒を反応器に同時に仕込んでいる。
【0005】
しかし、工業的規模で実施する場合、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、水性媒体および触媒、特に水酸化カルシウムなどの固体触媒を反応器に同時に仕込むと、仕込みの時点で、しばしば泡状物や白色固形物が発生することが分かった。泡状物は反応器の原料仕込み口まで上昇し、場合によっては、泡状物が原料仕込み口からあふれ出ることもある。このような泡状物や白色固形物の発生は操業の安全性を損ない、また収率の低下などの問題を生じる。
【0006】
本発明は、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の脱炭酸反応を行うにあたって、原料仕込み時の泡状物や白色固形物の発生を防止し、安全かつ高収率で2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する、工業的に有利な方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らに研究によれば、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、水性媒体および触媒を反応器に同時に仕込むのではなく、最初に3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体に溶解し、次に触媒を添加すると前記課題が解決できることが分かった。
【0008】
すなわち、本発明は、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中で触媒の存在下に脱炭酸反応させて2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する方法において、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行うことを特徴とする2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法である。
【0009】
また、本発明は、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを硫酸水溶液中で加水分解して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を生成させた後、該3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中で触媒の存在下に脱炭酸反応させて2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する方法において、上記加水分解後の3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有反応液を冷却、ろ過して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を回収し、次に該3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行うことを特徴とする2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法である。
【0010】
本発明により前記課題が解決できる理由は、必ずしも明らかではないが、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、水性媒体および触媒を反応器に同時に仕込むと3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸と触媒とが固体状態で接触して何らかの反応をする結果、泡状物や白色固形物の発生が起こるが、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を予め水性媒体中に均一に溶解した後に触媒を添加すると上記の反応が防止され、その結果、泡状物や白色固形物の発生が防止できるものと考えられている。
【0011】
なお、最初に水性媒体中に触媒を添加し、次に3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を添加すると、触媒が水性媒体中にスラリー状に存在しているため、触媒と3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸とが固体状態で接触することになるので、この方法によっては前記課題を解決することはできない。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の一つは、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中で触媒の存在下に脱炭酸反応させて2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する方法において、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行うことを特徴とする2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法である。
【0013】
この方法は、具体的には、次の2つの態様に従って実施することができる。
(1)反応器に3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸と水性媒体とを仕込んで、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中に溶解し、この水性媒体溶液に触媒を添加する。3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸および水性媒体の仕込みの順序には特に制限はなく、両者を同時に仕込んでも、あるいはいずれか一方を先に仕込んでもよい。
(2)3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中に溶解して、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の水性媒体溶液を調製する。一方、反応器に触媒および水性媒体を仕込み、触媒をスラリー状にした後に、上記3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の水性媒体溶液を添加する。触媒および水性媒体の仕込み順序には特に制限はないが、最初に水性媒体を仕込み、これに触媒を添加するのが一般的である。
【0014】
上記方法のなかでも、方法(1)が作業効率などの観点から、好適に用いられる。
【0015】
原料の3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸としては、3,4,5,6−テトラクロロ無水フタル酸またはそのフタルイミド誘導体をハロゲン交換して3,4,5,6−テトラフルオロ無水フタル酸またはそのフタルイミド誘導体を調製し、さらにこれを加水分解して得られる3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸や、3,4,5,6−テトラフルオロニトリルを酸またはアルカリで加水分解して得られる3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸など各種方法によって得られる3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を用いることができる。3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸は精製して使用してもよいし、加水分解などして得られたものを精製することなくそのまま使用することもできる。
【0016】
本発明の水性媒体とは、水、および水と混和性のあるアルコール類、ケトン類または非プロトン性極性溶媒を意味する。上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどを挙げることができる。上記ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどを挙げることができる。また、上記非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルアミド、スルホランなどを挙げることができる。これら溶媒は、単独でも、あるいは水と混合して使用することができるが、通常、水と混合して使用する。なかでも、水が好適に用いられる。
【0017】
脱炭酸反応については特に制限はなく、一般に知られている条件下に実施することができる(前記特許文献1、2参照)。
【0018】
触媒としては、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の脱炭酸反応により2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造するのに用いられ、また用いることが一般に知られている触媒を使用することができる。例えば、アンモニア、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、有機酸塩およびフッ化物;アルカリ土類金属の酸化物;ならびに有機塩基およびその硫酸塩を挙げることができる。
【0019】
具体的には、アンモニア水、炭酸アンモニウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸アンモニウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸マグネシウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸カルシウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸ストロンチウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸バリウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸マグネシウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸カルシウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸ストロンチウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸バリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、フッ化カリウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸ナトリウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸カリウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸ナトリウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸カリウムなどを挙げることができる。
【0020】
上記有機塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチレンジアミン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミンなどの有機アミンが挙げられる。
【0021】
さらに、銅および亜鉛の酸化物、炭酸塩なども使用することができる。具体的には、酸化第1銅、酸化第2銅、酸化亜鉛、炭酸銅、炭酸亜鉛などを挙げることができる。
【0022】
これら触媒のなかでも、アルカリ土類金属、銅および亜鉛の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩および酸化物から選ばれる少なくとも一種の固体状の触媒を含有するものが好適に用いられる。なかでも、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウムなどが好適に用いられる。
【0023】
上記触媒は単独でも、あるいは2種以上混合して使用してもよい。触媒の使用量については、脱炭酸反応を十分に進めるに必要な量で使用すればよい。具体的には、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モルに対し、0.001〜2モル、好ましくは0.005〜1.5モル、更に好ましくは0.01〜1モルである。
【0024】
脱炭酸反応は、反応液のpHが0.7〜2.2、好ましくは1.2〜2となる範囲で行うのがよい。なお、触媒の使用量によっては、反応液のpHが変動するので、反応液のpHが上記範囲になるように触媒の使用量を調整するのがよい。
【0025】
脱炭酸反応の温度は、通常、100〜250℃であり、好ましくは120〜220℃である。脱炭酸反応の時間は、通常、2〜40時間であり、好ましくは5〜30時間、更に好ましくは8〜20時間である。
【0026】
脱炭酸反応の際に発生する炭酸ガスは、例えば定差圧弁などを用いて、反応系外に逐次抜きながら反応を行ってもよいし、あるいは反応系内にそのまま炭酸ガスを封じ込めたまま反応させてもよい。前者の場合、炭酸ガスに基づく自然発生圧力を低下でき、主として水性媒体に基づく自然発生圧力下で反応させることができる。このため、低い圧力で反応を行うことができるので、オートクレーブの耐圧性を低くでき、これによりオートクレーブのコストを下げることができる。このような見地から、通常、反応温度120〜200℃で反応を行う場合、自然発生圧力を0〜1.5MPa、好ましくは0.1〜1MPaに保つように炭酸ガスを抜き出しながら反応させるのが好ましい。
【0027】
脱炭酸反応終了後は、触媒を除去し、反応液から目的物である2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を回収する。具体的には、例えば、触媒として水酸化カルシウムを使用する場合、反応液を40〜90℃程度まで冷却し、これに硫酸水溶液を添加して中和し、生成する硫酸カルシウムをろ過して除去し、ろ液はさらに室温まで冷却することにより、目的物である2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の析出物を得る。次に、この析出物を、ろ別し、必要に応じて、水で洗浄して精製することにより、目的物である2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸が得られる。
【0028】
本発明のもう一つの発明は、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを硫酸水溶液中で加水分解して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を生成させた後、該3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中で触媒の存在下に脱炭酸反応させて2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する方法において、上記加水分解後の3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有反応液を冷却、ろ過して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を回収し、次に該3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行うことを特徴とする2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法である。
【0029】
3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを硫酸水溶液中で加水分解して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を得ることは一般に知られており、本発明においても従来公知の方法に従って実施することができる(前記特許文献2参照)。
【0030】
例えば、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを30〜90質量%の硫酸水溶液中で100〜180℃の温度で加熱して加水分解反応を行う。具体的には、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルと硫酸および水とを硫酸濃度が30〜90質量%となるように反応器に仕込み、100〜180℃の温度で攪拌下に加熱して加水分解を行わせればよい。加水分解終了後、反応液を冷却した後、ろ過することにより、生成した3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を含む固形物が得られる。
【0031】
この3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物中には硫酸や硫酸アンモニウムなどが残留しているが、これら不純物を水で洗浄して除去してもよいが、洗浄により3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸が水に溶解して失われるので、通常、水で洗浄することなく、そのまま次の脱炭酸反応に供する。固形物中に硫酸や硫酸アンモニウムなどが残留していても、脱炭酸反応に対し支障となることはない。
【0032】
本発明によれば、上記3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行う。
【0033】
具体的には、次の2つの態様に従って実施することができる。
(1)反応器に3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物と水性媒体とを仕込んで、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中に溶解し、この溶液に触媒を添加する。3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物および水性媒体の仕込みの順序には特に制限はなく、両者を同時に仕込んでも、あるいはいずれか一方を先に仕込んでもよい。
(2)3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を水性媒体中に溶解して、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の水性媒体溶液を調製する。一方、反応器に触媒および水性媒体を仕込み、触媒をスラリー状にした後に、上記3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の水性媒体溶液を添加する。触媒および水性媒体の仕込み順序には特に制限はないが、最初に水性媒体を仕込み、これに触媒を添加するのが一般的である。
【0034】
以後、脱炭酸反応は、前記と同様にして実施すればよい。また、脱炭酸反応終了後の精製も前記と同様にして実施することができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、原料の仕込み時に発生する泡状物や白色固形物の発生を効果的に防止でき、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を安全かつ高収率で製造することができる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
攪拌機、温度計、冷却管および定差圧弁を備えた1リットル(L)のステンレス鋼(SUAS316)製オートクレーブに水500gを仕込み、次に3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸150g(0.63モル)を仕込み、40℃で均一に溶解させて、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸水溶液を得た。次いで、触媒としての水酸化カルシウム7.46g(0.10モル)を投入した。この際、泡状物の発生は認められなかった。なお、仕込み液(反応液)のpHは1.50であった。
【0037】
オートクレーブ内部を窒素置換した後、160℃に昇温し、脱炭酸反応によって発生する炭酸ガスをオートクレーブ外に排出しながら、オートクレーブ内部の圧力を0.5MPaに保ちつつ16時間反応させた。反応終了後、70℃に冷却し、30%硫酸36.2gを加えて中和し、次に70℃に保温しながら熱時ろ過を行い、硫酸カルシウムなどの固形分を除去した。熱時ろ過で得たろ液を攪拌しながら室温まで冷却し、析出した沈殿物をろ過し、水洗し、次に乾燥して白色の2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸114g(収率93.2モル%)を得た。
【0038】
ろ液をジイソプロピルエーテルで抽出することにより2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸7gが回収された。上記のろ過および回収により得られた2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の合計量に基づいて算出された、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の収率は98.9モル%であった。
実施例2
実施例1において、水および3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の仕込み順序を逆にして3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸水溶液を調製した以外は実施例1と同様にして脱炭酸反応を行った。
【0039】
触媒の投入時に泡状物の発生は認められず、脱炭酸反応は正常に終了できた。反応終了後、実施例1と同様の精製を行った結果、白色の2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸113g(収率92.4モル%)が得られた。
【0040】
その後、実施例1と同様にして、ろ液のジイソプロピルエーテル抽出を行ったところ2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸7gが回収された。上記のろ過および回収により得られた2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の合計量に基づいて算出された、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の収率は98.1モル%であった。
実施例3
1Lのフラスコに3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリル200g(1.0モル)、濃硫酸441gおよび水359gを仕込み、還流下に20時間加熱攪拌して、加水分解反応を行った。反応終了後、冷却して、得られた3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の沈殿物をろ別した。ろ過により得られたケーキを分析したところ、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸214g(0.9モル、収率90モル%)のほかに、硫酸9.0質量%、硫酸アンモニウム2.6質量%および水8.4質量%が含まれていた。
【0041】
上記ケーキ268gのうち、188g(3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸として150g)をとり、実施例1で用いたと同じオートクレーブに水500gを仕込んだ後、添加し、40℃で均一に溶解して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸水溶液を調製した。その後、触媒としての水酸化カルシウム20.2g(0.273モル)を仕込んだ。仕込み時に泡状物の発生や発泡現象は認められなかった。なお、仕込み液(反応液)のpHは1.12であった。以下、実施例1と同様にして、脱炭酸反応および精製を行った。
【0042】
実施例1と同様にして算出した、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の収率は98.5モル%であった。
比較例1
実施例1において、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、水酸化カルシウムおよび水を同時にオートクレーブに仕込んだ以外は実施例1と同様にして脱炭酸反応を行った。
【0043】
仕込み時に、発熱、泡状物や白色固形物の発生が認められた。脱炭酸反応終了後、実施例1と同様に精製した。実施例1と同様にして算出した、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の収率は93.1モル%であった。
比較例2
実施例3において、原料の仕込み順序を変更し、最初に水性媒体としての水500g、次に水酸化カルシウム20.2gを仕込んだ後、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有ケーキ188gを仕込んだ。
【0044】
仕込み時に、泡状物が発生し、仕込み口上部まで上昇する現象が認められた。仕込み終了後、実施例1と同様にして脱炭酸反応を行った。脱炭酸反応終了後、実施例1と同様に精製した。実施例1と同様にして算出した、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の収率は92.5モル%であった。
比較例3
実施例3において、原料の仕込み順序を変更し、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有ケーキ188g、次に水酸化カルシウム20.2g、最後に水性媒体としての水500gの順序に仕込んだ。
【0045】
水酸化カルシウムを仕込んだ時に、白色固形物が析出した。また、水を仕込んだ後も、オートクレーブ下部に沈降したままであった。仕込み終了後、実施例1と同様にして脱炭酸反応を行った。脱炭酸反応終了後、実施例1と同様に精製した。実施例1と同様にして算出した、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の収率は93.8モル%であった。
【発明の属する技術分野】
本発明は2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法、詳しくは3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の脱炭酸反応により安全かつ高収率で2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の脱炭酸反応により2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造することは一般に知られている。
【0003】
例えば、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中150〜230℃の温度範囲で、かつ0.5〜15時間の範囲の反応時間で自然発生圧力下に脱炭酸反応を行う方法、および3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中、銅および亜鉛の各々の金属、酸化物、水酸化物および炭酸塩から選ばれる少なくとも一種の触媒の存在下、100〜250℃の範囲の温度で自然発生圧力下に脱炭酸反応を行う方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、触媒として、アンモニア、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、有機酸塩およびフッ化物;アルカリ土類金属の酸化物;ならびに有機塩基およびその硫酸塩から選ばれる少なくとも一種の化合物を用い、pHを0.7〜2.2の範囲に調整した水性媒体中100〜220℃の範囲の温度で3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を脱炭酸反応させる方法がある(例えば、特許文献2参照)。出発原料の3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸として、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを30〜90質量%濃度の硫酸水溶液を用いて100〜180℃の範囲で加水分解して得られるものを使用することも開示されている。
【特許文献1】特開昭61−85349号公報
【特許文献2】特開昭62−45号公報
【発明が解決しようとする課題】
前記従来方法においては、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の脱炭酸反応を行うにあたり、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、水性媒体および触媒を反応器に同時に仕込んでいる。
【0005】
しかし、工業的規模で実施する場合、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、水性媒体および触媒、特に水酸化カルシウムなどの固体触媒を反応器に同時に仕込むと、仕込みの時点で、しばしば泡状物や白色固形物が発生することが分かった。泡状物は反応器の原料仕込み口まで上昇し、場合によっては、泡状物が原料仕込み口からあふれ出ることもある。このような泡状物や白色固形物の発生は操業の安全性を損ない、また収率の低下などの問題を生じる。
【0006】
本発明は、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の脱炭酸反応を行うにあたって、原料仕込み時の泡状物や白色固形物の発生を防止し、安全かつ高収率で2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する、工業的に有利な方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らに研究によれば、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、水性媒体および触媒を反応器に同時に仕込むのではなく、最初に3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体に溶解し、次に触媒を添加すると前記課題が解決できることが分かった。
【0008】
すなわち、本発明は、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中で触媒の存在下に脱炭酸反応させて2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する方法において、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行うことを特徴とする2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法である。
【0009】
また、本発明は、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを硫酸水溶液中で加水分解して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を生成させた後、該3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中で触媒の存在下に脱炭酸反応させて2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する方法において、上記加水分解後の3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有反応液を冷却、ろ過して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を回収し、次に該3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行うことを特徴とする2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法である。
【0010】
本発明により前記課題が解決できる理由は、必ずしも明らかではないが、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、水性媒体および触媒を反応器に同時に仕込むと3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸と触媒とが固体状態で接触して何らかの反応をする結果、泡状物や白色固形物の発生が起こるが、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を予め水性媒体中に均一に溶解した後に触媒を添加すると上記の反応が防止され、その結果、泡状物や白色固形物の発生が防止できるものと考えられている。
【0011】
なお、最初に水性媒体中に触媒を添加し、次に3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を添加すると、触媒が水性媒体中にスラリー状に存在しているため、触媒と3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸とが固体状態で接触することになるので、この方法によっては前記課題を解決することはできない。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の一つは、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中で触媒の存在下に脱炭酸反応させて2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する方法において、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行うことを特徴とする2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法である。
【0013】
この方法は、具体的には、次の2つの態様に従って実施することができる。
(1)反応器に3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸と水性媒体とを仕込んで、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中に溶解し、この水性媒体溶液に触媒を添加する。3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸および水性媒体の仕込みの順序には特に制限はなく、両者を同時に仕込んでも、あるいはいずれか一方を先に仕込んでもよい。
(2)3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中に溶解して、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の水性媒体溶液を調製する。一方、反応器に触媒および水性媒体を仕込み、触媒をスラリー状にした後に、上記3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の水性媒体溶液を添加する。触媒および水性媒体の仕込み順序には特に制限はないが、最初に水性媒体を仕込み、これに触媒を添加するのが一般的である。
【0014】
上記方法のなかでも、方法(1)が作業効率などの観点から、好適に用いられる。
【0015】
原料の3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸としては、3,4,5,6−テトラクロロ無水フタル酸またはそのフタルイミド誘導体をハロゲン交換して3,4,5,6−テトラフルオロ無水フタル酸またはそのフタルイミド誘導体を調製し、さらにこれを加水分解して得られる3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸や、3,4,5,6−テトラフルオロニトリルを酸またはアルカリで加水分解して得られる3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸など各種方法によって得られる3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を用いることができる。3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸は精製して使用してもよいし、加水分解などして得られたものを精製することなくそのまま使用することもできる。
【0016】
本発明の水性媒体とは、水、および水と混和性のあるアルコール類、ケトン類または非プロトン性極性溶媒を意味する。上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどを挙げることができる。上記ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどを挙げることができる。また、上記非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルアミド、スルホランなどを挙げることができる。これら溶媒は、単独でも、あるいは水と混合して使用することができるが、通常、水と混合して使用する。なかでも、水が好適に用いられる。
【0017】
脱炭酸反応については特に制限はなく、一般に知られている条件下に実施することができる(前記特許文献1、2参照)。
【0018】
触媒としては、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の脱炭酸反応により2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造するのに用いられ、また用いることが一般に知られている触媒を使用することができる。例えば、アンモニア、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、有機酸塩およびフッ化物;アルカリ土類金属の酸化物;ならびに有機塩基およびその硫酸塩を挙げることができる。
【0019】
具体的には、アンモニア水、炭酸アンモニウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸アンモニウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸マグネシウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸カルシウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸ストロンチウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸バリウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸マグネシウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸カルシウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸ストロンチウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸バリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、フッ化カリウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸ナトリウム、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸カリウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸ナトリウム、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸カリウムなどを挙げることができる。
【0020】
上記有機塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチレンジアミン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミンなどの有機アミンが挙げられる。
【0021】
さらに、銅および亜鉛の酸化物、炭酸塩なども使用することができる。具体的には、酸化第1銅、酸化第2銅、酸化亜鉛、炭酸銅、炭酸亜鉛などを挙げることができる。
【0022】
これら触媒のなかでも、アルカリ土類金属、銅および亜鉛の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩および酸化物から選ばれる少なくとも一種の固体状の触媒を含有するものが好適に用いられる。なかでも、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウムなどが好適に用いられる。
【0023】
上記触媒は単独でも、あるいは2種以上混合して使用してもよい。触媒の使用量については、脱炭酸反応を十分に進めるに必要な量で使用すればよい。具体的には、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モルに対し、0.001〜2モル、好ましくは0.005〜1.5モル、更に好ましくは0.01〜1モルである。
【0024】
脱炭酸反応は、反応液のpHが0.7〜2.2、好ましくは1.2〜2となる範囲で行うのがよい。なお、触媒の使用量によっては、反応液のpHが変動するので、反応液のpHが上記範囲になるように触媒の使用量を調整するのがよい。
【0025】
脱炭酸反応の温度は、通常、100〜250℃であり、好ましくは120〜220℃である。脱炭酸反応の時間は、通常、2〜40時間であり、好ましくは5〜30時間、更に好ましくは8〜20時間である。
【0026】
脱炭酸反応の際に発生する炭酸ガスは、例えば定差圧弁などを用いて、反応系外に逐次抜きながら反応を行ってもよいし、あるいは反応系内にそのまま炭酸ガスを封じ込めたまま反応させてもよい。前者の場合、炭酸ガスに基づく自然発生圧力を低下でき、主として水性媒体に基づく自然発生圧力下で反応させることができる。このため、低い圧力で反応を行うことができるので、オートクレーブの耐圧性を低くでき、これによりオートクレーブのコストを下げることができる。このような見地から、通常、反応温度120〜200℃で反応を行う場合、自然発生圧力を0〜1.5MPa、好ましくは0.1〜1MPaに保つように炭酸ガスを抜き出しながら反応させるのが好ましい。
【0027】
脱炭酸反応終了後は、触媒を除去し、反応液から目的物である2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を回収する。具体的には、例えば、触媒として水酸化カルシウムを使用する場合、反応液を40〜90℃程度まで冷却し、これに硫酸水溶液を添加して中和し、生成する硫酸カルシウムをろ過して除去し、ろ液はさらに室温まで冷却することにより、目的物である2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の析出物を得る。次に、この析出物を、ろ別し、必要に応じて、水で洗浄して精製することにより、目的物である2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸が得られる。
【0028】
本発明のもう一つの発明は、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを硫酸水溶液中で加水分解して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を生成させた後、該3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中で触媒の存在下に脱炭酸反応させて2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する方法において、上記加水分解後の3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有反応液を冷却、ろ過して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を回収し、次に該3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行うことを特徴とする2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法である。
【0029】
3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを硫酸水溶液中で加水分解して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を得ることは一般に知られており、本発明においても従来公知の方法に従って実施することができる(前記特許文献2参照)。
【0030】
例えば、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを30〜90質量%の硫酸水溶液中で100〜180℃の温度で加熱して加水分解反応を行う。具体的には、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルと硫酸および水とを硫酸濃度が30〜90質量%となるように反応器に仕込み、100〜180℃の温度で攪拌下に加熱して加水分解を行わせればよい。加水分解終了後、反応液を冷却した後、ろ過することにより、生成した3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を含む固形物が得られる。
【0031】
この3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物中には硫酸や硫酸アンモニウムなどが残留しているが、これら不純物を水で洗浄して除去してもよいが、洗浄により3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸が水に溶解して失われるので、通常、水で洗浄することなく、そのまま次の脱炭酸反応に供する。固形物中に硫酸や硫酸アンモニウムなどが残留していても、脱炭酸反応に対し支障となることはない。
【0032】
本発明によれば、上記3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行う。
【0033】
具体的には、次の2つの態様に従って実施することができる。
(1)反応器に3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物と水性媒体とを仕込んで、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中に溶解し、この溶液に触媒を添加する。3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物および水性媒体の仕込みの順序には特に制限はなく、両者を同時に仕込んでも、あるいはいずれか一方を先に仕込んでもよい。
(2)3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を水性媒体中に溶解して、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の水性媒体溶液を調製する。一方、反応器に触媒および水性媒体を仕込み、触媒をスラリー状にした後に、上記3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の水性媒体溶液を添加する。触媒および水性媒体の仕込み順序には特に制限はないが、最初に水性媒体を仕込み、これに触媒を添加するのが一般的である。
【0034】
以後、脱炭酸反応は、前記と同様にして実施すればよい。また、脱炭酸反応終了後の精製も前記と同様にして実施することができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、原料の仕込み時に発生する泡状物や白色固形物の発生を効果的に防止でき、2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を安全かつ高収率で製造することができる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
攪拌機、温度計、冷却管および定差圧弁を備えた1リットル(L)のステンレス鋼(SUAS316)製オートクレーブに水500gを仕込み、次に3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸150g(0.63モル)を仕込み、40℃で均一に溶解させて、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸水溶液を得た。次いで、触媒としての水酸化カルシウム7.46g(0.10モル)を投入した。この際、泡状物の発生は認められなかった。なお、仕込み液(反応液)のpHは1.50であった。
【0037】
オートクレーブ内部を窒素置換した後、160℃に昇温し、脱炭酸反応によって発生する炭酸ガスをオートクレーブ外に排出しながら、オートクレーブ内部の圧力を0.5MPaに保ちつつ16時間反応させた。反応終了後、70℃に冷却し、30%硫酸36.2gを加えて中和し、次に70℃に保温しながら熱時ろ過を行い、硫酸カルシウムなどの固形分を除去した。熱時ろ過で得たろ液を攪拌しながら室温まで冷却し、析出した沈殿物をろ過し、水洗し、次に乾燥して白色の2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸114g(収率93.2モル%)を得た。
【0038】
ろ液をジイソプロピルエーテルで抽出することにより2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸7gが回収された。上記のろ過および回収により得られた2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の合計量に基づいて算出された、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の収率は98.9モル%であった。
実施例2
実施例1において、水および3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の仕込み順序を逆にして3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸水溶液を調製した以外は実施例1と同様にして脱炭酸反応を行った。
【0039】
触媒の投入時に泡状物の発生は認められず、脱炭酸反応は正常に終了できた。反応終了後、実施例1と同様の精製を行った結果、白色の2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸113g(収率92.4モル%)が得られた。
【0040】
その後、実施例1と同様にして、ろ液のジイソプロピルエーテル抽出を行ったところ2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸7gが回収された。上記のろ過および回収により得られた2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の合計量に基づいて算出された、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の収率は98.1モル%であった。
実施例3
1Lのフラスコに3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリル200g(1.0モル)、濃硫酸441gおよび水359gを仕込み、還流下に20時間加熱攪拌して、加水分解反応を行った。反応終了後、冷却して、得られた3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の沈殿物をろ別した。ろ過により得られたケーキを分析したところ、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸214g(0.9モル、収率90モル%)のほかに、硫酸9.0質量%、硫酸アンモニウム2.6質量%および水8.4質量%が含まれていた。
【0041】
上記ケーキ268gのうち、188g(3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸として150g)をとり、実施例1で用いたと同じオートクレーブに水500gを仕込んだ後、添加し、40℃で均一に溶解して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸水溶液を調製した。その後、触媒としての水酸化カルシウム20.2g(0.273モル)を仕込んだ。仕込み時に泡状物の発生や発泡現象は認められなかった。なお、仕込み液(反応液)のpHは1.12であった。以下、実施例1と同様にして、脱炭酸反応および精製を行った。
【0042】
実施例1と同様にして算出した、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の収率は98.5モル%であった。
比較例1
実施例1において、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、水酸化カルシウムおよび水を同時にオートクレーブに仕込んだ以外は実施例1と同様にして脱炭酸反応を行った。
【0043】
仕込み時に、発熱、泡状物や白色固形物の発生が認められた。脱炭酸反応終了後、実施例1と同様に精製した。実施例1と同様にして算出した、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の収率は93.1モル%であった。
比較例2
実施例3において、原料の仕込み順序を変更し、最初に水性媒体としての水500g、次に水酸化カルシウム20.2gを仕込んだ後、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有ケーキ188gを仕込んだ。
【0044】
仕込み時に、泡状物が発生し、仕込み口上部まで上昇する現象が認められた。仕込み終了後、実施例1と同様にして脱炭酸反応を行った。脱炭酸反応終了後、実施例1と同様に精製した。実施例1と同様にして算出した、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の収率は92.5モル%であった。
比較例3
実施例3において、原料の仕込み順序を変更し、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有ケーキ188g、次に水酸化カルシウム20.2g、最後に水性媒体としての水500gの順序に仕込んだ。
【0045】
水酸化カルシウムを仕込んだ時に、白色固形物が析出した。また、水を仕込んだ後も、オートクレーブ下部に沈降したままであった。仕込み終了後、実施例1と同様にして脱炭酸反応を行った。脱炭酸反応終了後、実施例1と同様に精製した。実施例1と同様にして算出した、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の収率は93.8モル%であった。
Claims (4)
- 3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中で触媒の存在下に脱炭酸反応させて2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する方法において、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行うことを特徴とする2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法。
- 触媒がアルカリ土類金属、銅および亜鉛の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩および酸化物から選ばれる少なくとも一種を含有するものである請求項1記載の2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法。
- 3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを硫酸水溶液中で加水分解して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を生成させた後、該3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を水性媒体中で触媒の存在下に脱炭酸反応させて2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸を製造する方法において、上記加水分解後の3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有反応液を冷却、ろ過して3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を回収し、次に該3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸含有固形物を水性媒体に溶解した後に、触媒と混合して脱炭酸反応を行うことを特徴とする2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法。
- 触媒がアルカリ土類金属、銅および亜鉛の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩および酸化物から選ばれる少なくとも一種を含有するものである請求項3記載の2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸の製造方法。
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