JP2004251327A - 自動変速機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インヒビタスイッチ16と、検出されたレンジ位置信号から、通常レンジ位置の前記スイッチのオンオフパターンと中間レンジ位置の前記スイッチのオンオフパターンとに基づいてレンジ位置を判定するレンジ位置判定手段と、レンジ位置の判定結果に基づいて油圧を制御する油圧制御手段と、を有する制御装置9と、を備えた自動変速機において、中間レンジ位置判定の継続時間を計測手段9を備え、前記油圧制御手段は、直前の通常レンジ位置が非走行レンジ位置であるとき、判定された中間レンジ位置判定の継続時間が所定時間より短い場合には非走行レンジ位置として自動変速機の油圧を制御し、中間レンジ位置の判定時間が所定時間以上である場合には走行レンジ位置として油圧を制御する。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インヒビタスイッチを備えた自動変速機の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の搭載される遊星歯車機構を備えた自動変速機のクラッチ圧を制御する油圧回路では、ライン圧の余剰圧をクラッチ圧調圧弁で所定圧に調圧した後、マニュアル弁を介して、変速機入力軸とピニオンキャリアを締結する前進クラッチまたは変速機ケースにピニオンキャリアを固定する後退ブレーキに供給する(例えば、特許文献1の図2参照。)。
【0003】
しかしながら、この回路においてはクラッチ圧調圧弁がライン圧調圧弁と同じモディファイア用デューティ弁で制御されており、クラッチ圧はライン圧に比例した圧力に制御されるものの、独立制御することができないため、クラッチ締結時にきめ細かくクラッチ圧を制御することが困難であった。
【0004】
このため、シフトレバーに従動するマニュアルバルブの上流に、クラッチ圧を独立して制御するための調圧弁と切換弁とを配置し、前進クラッチまたは後退ブレーキ締結時にきめ細かくクラッチ圧を制御することが考えられる。
【0005】
また、運転者の選択したシフトレバー位置を検出するインヒビタスイッチの異常検出技術として、複数の固定接点を設け、電気的に断線してもレンジ位置を誤判定しないように予め設定された導通パターンにより、運転者が通常、意識して選択するレンジである通常レンジ位置、通常レンジ間の中間位置に設定された中間レンジ位置を示し、中間レンジの1つ前のレンジ判定結果を保持する中間レンジ位置パターン、および通常レンジパターンと中間レンジパターン以外の異常パターンとを判別して、シフト位置を検出する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。なお、ここで通常レンジ位置とは、中間レンジ位置に対するレンジ位置として用いたもので、具体的には走行レンジ位置(D、Rレンジ)と非走行レンジ位置(P、Nレンジ)とを意味している。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−089462号公報
【特許文献2】
特開2002−175744号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、インヒビタスイッチの固定接点が断線した状態で、レバー位置を非走行レンジ位置から走行レンジ位置に切り換えた場合、インヒビタスイッチの出力に基づきレバー位置を検出するコントローラは、走行レンジ位置を認識できず、1つ前のレンジ位置判定結果である非走行レンジを保持することになる。
【0008】
非走行レンジ位置の状態では、前述の油圧回路では、クラッチ圧を独立して制御する調圧弁から低圧の油圧が切換弁およびマニュアルバルブを介して前進クラッチあるいは後退ブレーキに供給されることになる。低圧のクラッチ圧が供給された前進クラッチ及び後退ブレーキに大入力のトルクが伝達された場合には、前進クラッチまたは後退ブレーキに滑りが生じる恐れがあり、その結果、前進クラッチまたは後退ブレーキの耐久性が悪化することになる。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、インヒビタスイッチが断線等の異常な場合でもクラッチあるいはブレーキの滑りを抑制し、耐久性の低下を防止することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、シフトレバーに応動する複数のスイッチの導通状態からレンジ位置信号を出力するインヒビタスイッチと、検出されたレンジ位置信号から、走行レンジ位置と非走行レンジ位置とからなる通常レンジ位置に対応する前記スイッチのオンオフパターンと各通常レンジ位置間に設けられた中間レンジ位置に対応する前記スイッチのオンオフパターンとに基づいてレンジ位置を判定するレンジ位置判定手段と、レンジ位置の判定結果に基づいて油圧を制御する油圧制御手段と、を有する制御装置と、を備えた自動変速機において、中間レンジ位置判定の継続時間を計測手段を備え、前記油圧制御手段は、直前の通常レンジ位置が非走行レンジ位置であるときに判定された中間レンジ位置判定の継続時間が所定時間より短い場合には非走行レンジ位置として自動変速機の油圧を制御し、中間レンジ位置の判定時間が所定時間以上である場合には走行レンジ位置として油圧を制御することを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記制御装置が、中間レンジ位置判定の継続時間に応じて油圧回路の制御が非走行レンジ位置制御から走行レンジ位置制御に切り換わるときに、エンジンの出力トルクを低減することを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、第1または2の発明において、前進または後退時に締結する摩擦要素を備え、前記油圧制御手段は、前記シフトレバーに応動し、下流側に前記摩擦要素を備えるマニュアルバルブと、入力トルクに基づいた油圧に調圧する第1の調圧手段と、第1の調圧手段により調圧された油圧よりも低圧の油圧に調圧可能な第2の調圧手段と、前記非走行レンジ位置の制御では、第1の調圧手段によって調圧された油圧を前記マニュアルバルブに供給し、前記走行レンジ位置の制御では、第2の調圧手段によって調圧された油圧を前記マニュアルバルブに供給する切り換え手段とを設けたことを特徴とする。
【0013】
【発明の効果】
第1の発明では、直前の通常レンジ位置が非走行レンジ位置であるとき中間レンジ位置判定の継続時間を計測し、継続時間が所定時間より短い場合には中間レンジ位置検出時の油圧制御を非走行レンジ位置の油圧制御とし、継続時間が所定時間以上場合には中間レンジ位置検出時の油圧制御を走行レンジ位置の油圧制御とすることにより、中間レンジ位置判定の継続時間に応じてインヒビタスイッチの異常を判定し、所定時間より短いインヒビタスイッチが正常と判定される場合には、非走行レンジ位置の油圧制御とし、継続時間が所定時間以上のインヒビタスイッチが異常と判定される場合には、走行レンジ位置の油圧制御とする。
【0014】
この制御により、インヒビタスイッチが異常を生じた場合にシフトレバーが走行レンジ位置に切り換えられたとしても自動変速機は走行レンジ位置の油圧制御が行われることとなり、エンジンから大きなトルクが伝達されても自動変速機が滑りを発生することが防止され、自動変速機の耐久性を向上することができる。
【0015】
第2の発明では、中間レンジ判定の継続時間に応じて油圧回路の制御が非走行レンジ位置制御から走行レンジ位置制御に切り換わるときに、エンジンの出力トルクを低減するため、制御切換時にエンジンの出力トルクに応じて油圧が上昇することを抑制し、切換時のショックや異音の発生を防止できる。
【0016】
第3の発明では、入力トルクに基づいた油圧に調圧する第1の調圧手段と、第1の調圧手段により調圧された油圧も低圧の油圧に調圧可能な第2の調圧手段と、前記非走行レンジ位置の制御では、第1の調圧手段によって調圧された油圧を前記マニュアルバルブに供給し、前記走行レンジ位置の制御では、第2の調圧手段によって調圧された油圧を前記マニュアルバルブに供給する切り換え手段とを設けることにより、直前の通常レンジ位置が非走行レンジ位置であるときに、中間レンジ位置が所定時間以上判定された場合に、インヒビタスイッチが異常であると判定し、切り換え手段によってマニュアルバルブに供給する油圧を第2の調圧手段からの油圧から第1の調圧手段で入力トルクに応じた油圧に調圧された油圧に切り換わる。このため、前進または後退時に締結する摩擦要素に対しシフトレバーが走行レンジ位置に切り換えられても減圧された低圧の油圧が供給され続けることがなくなり、入力トルクに応じた高圧の油圧が供給されるため、エンジンから摩擦要素に大トルクが伝達されても滑りを生じることがなく、耐久性の悪化を防止できる。しかも、マニュアルバルブに供給される油圧を第1または第2によって制御することが可能となり、インヒビタスイッチが正常時には、マニュアルバルブへ供給する油圧を切り換え手段によって入力トルクに応じて調圧する第1の調圧手段とは別に制御可能な第2の調圧手段で調圧された油圧を供給できるため、前進または後退時に締結する摩擦要素への油圧を制御の自由度が向上し、締結時のきめの細かい油圧制御が可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は第1の実施形態におけるベルト式無段変速機3(以下、CVTと記載する)を備えた自動変速機の制御系を示す図である。
【0018】
1はトルクコンバータ、2はロックアップクラッチ、3はCVT、4はプライマリ回転数センサ、5はセカンダリ回転数センサ、6は油圧コントロールバルブユニット、8はエンジンにより駆動されるオイルポンプ、9はCVTコントロールユニット、10はスロットル開度センサ、11はエンジンコントロールユニットである。
【0019】
エンジン出力軸12には動力伝達機構としてトルクコンバータ1が連結されるとともに、図示しないエンジンとCVT3を直結するロックアップクラッチ2が備えられている。トルクコンバータ1の出力側は前後進切換機構20のリングギア21と連結されている。前後進切換機構20は、エンジン出力軸12と連結したリングギア21、ピニオンキャリア22、CVT3と直結する変速機入力軸13と連結したサンギア23からなる遊星歯車機構から構成されている。ピニオンキャリア22には、変速機ケースにピニオンキャリア22を固定する後進ブレーキ24と、変速機入力軸13とピニオンキャリア22を一体に連結する前進クラッチ25が設けられている。
【0020】
変速機入力軸13の端部にはCVT3のプライマリプーリ30aが設けられている。CVT3は、上記プライマリプーリ30aとセカンダリプーリ30bと、プライマリプーリ30aの回転力をセカンダリプーリ30bに伝達するベルト34等からなっている。プライマリプーリ30aは、変速機入力軸13と一体に回転する固定円錐板31と、固定円錐板31に対向配置されてV字状プーリ溝を形成するとともにプライマリプーリシリンダ室33に作用する油圧によって変速機入力軸13の軸方向に移動可能である可動円錐板32からなっている。
【0021】
セカンダリプーリ30bは、従動軸38上に設けられている。セカンダリプーリ30bは、従動軸38と一体に回転する固定円錐板35と、固定円錐板35に対向配置されてV字状プーリ溝を形成するとともにセカンダリプーリシリンダ室37に作用する油圧によって従動軸38の軸方向に移動可能である可動円錐板36とからなっている。
【0022】
従動軸38には図示しない駆動ギヤが固着されており、この駆動ギヤはアイドラ軸に設けられたピニオン、ファイナルギア、差動装置を介して図外の車輪に至るドライブシャフトを駆動する。
【0023】
上記のようなCVT3にエンジン出力軸12から入力された回転力は、トルクコンバータ1および前後進切換機構20を介してCVT13に伝達される。変速機入力軸13の回転力はプライマリプーリ30a、ベルト34、セカンダリプーリ30b、従動軸38、駆動ギヤ、アイドラギア、アイドラ軸、ピニオン、およびファイナルギアを介して差動装置に伝達される。
【0024】
上記のような動力伝達の際に、プライマリプーリ30aの可動円錐板32およびセカンダリプーリ30bの可動円錐板36を軸方向に移動させてベルト34との接触位置半径を変えることにより、プライマリプーリ30aとセカンダリプーリ30bとの間の回転比つまり変速比を変えることができる。このようなV字状のプーリ溝の幅を変化させる制御は、CVTコントロールユニット9を介してプライマリプーリシリンダ室33またはセカンダリプーリシリンダ室37への油圧制御により行われる。
【0025】
CVTコントロールユニット9には、スロットル開度センサ10からスロットル開度、プライマリ回転数センサ4からプライマリ回転数、エンジンコントロールユニット11からエンジントルク信号等が入力される。この入力信号を元に制御信号を演算し、油圧コントロールバルブユニット6へ制御信号を出力する。さらにコントロールユニット9にはインヒビタスイッチ16からの出力信号が入力される。
【0026】
油圧コントロールバルブユニット6は、CVTコントロールユニットからの制御信号に基づいてプライマリプーリシリンダ室33とセカンダリプーリシリンダ室37への制御圧を調圧し、変速制御を行う。
【0027】
図2は、実施の形態1におけるベルト式無段変速機の油圧回路図である。
【0028】
図において、40は油路41から供給されたオイルポンプ8の吐出圧を、ライン圧(プーリクランプ圧)として調圧するプレッシャレギュレータバルブであり、ライン圧がスロットル開度やエンジントルク信号などから算出された入力トルク及び変速比に応じた油圧となるように図示しないプレッシャモディファイアバルブからの油圧により制御される。油路41には油路42が連通されている。油路42はCVT3のプライマリプーリシリンダ室33およびセカンダリプーリシリンダ室37に、図示しない流量制御弁や調圧弁を介してベルト34をクランプするプーリクランプ圧に調圧された油を供給するプーリクランプ圧供給油路である。また、油路42に連通された油路43は、パイロットバルブ50の元圧を供給する。
【0029】
また、プレッシャレギュレータバルブ40からドレンされた余剰油は、油路46を介してクラッチレギュレータバルブ60に供給され、このクラッチレギュレータバルブ60はプレッシャレギュレータバルブ40と同様、図示しないプレッシャモディファイアバルブからの油圧により制御される。このように、プレッシャレギュレータバルブ40の発生する油圧よりも低い油圧をクラッチレギュレータバルブ60により調圧することで、前進クラッチの締結圧として供給される油圧が、プーリクランプ圧よりも高くならない構成としている。
【0030】
この油路46には、油路42に連通されてオリフィス45を有する油路44が連通されている。クラッチレギュレータバルブ60は油路46および油路61の油圧を調圧する。この油路61の油圧はセレクトスイッチングバルブ80およびセレクトコントロールバルブ90へ供給される。
【0031】
50は油路51を介してロックアップソレノイド71およびセレクトスイッチングソレノイド70ヘの一定供給圧を設定するパイロットバルブである。セレクトスイッチングソレノイド70の出力圧はセレクトスイッチングバルブ80に供給され、セレクトスイッチングバルブ80の作動を制御する。ロックアップソレノイド71の出力圧はセレクトスイッチングバルブ80を介してセレクトコントロールバルブ90に供給される。
【0032】
セレクトスイッチングバルブ80は、セレクトスイッチングソレノイド70からの信号圧が一方側の端部に作用し、図中上側のセレクト側位置と図中下側のロックアップ側位置とに切り換わる。セレクトスイッチングバルブ80には、入力ポートとして、ロックアップソレノイド71からの信号圧を供給する油路72と、クラッチレギュレータバルブ60により調圧されたクラッチ元圧が流通する油路61と、セレクトコントロールバルブ90により調圧(油路61を流通する油の圧力より低く)された油が流通する油路93とが接続されている。さらに、出力ポートとして、マニュアルバルブ15に前進クラッチ圧に調圧された油を供給する油路81と、ロックアップコントロールバルブ100へ調圧された油を供給する油路82と、セレクトコントロールバルブ90のスプール92の一方側に信号圧を供給する油路83と、油圧をドレンするドレン油路84とが接続されている。このように構成されてセレクトコントロールバルブ90は、インヒビタスイッチ16の位置が通常レンジ位置の非走行(PまたはN)レンジと判定している時には、セレクトスイッチングソレノイド70からの油圧により図中上側のセレクト側に位置し、走行レンジ位置と判定している場合には、走行レンジへの切り換え判定時から所定時間経過後に図中下側のロックアップ側に移動する。したがって、マニュアルバルブ15に作用する油圧を供給する油路81は、非走行レンジ位置と判定した場合、セレクトコントロールバルブ90からの出力圧である油路93と連通し、クラッチ元圧より低い油圧が作用することとなり、また走行レンジと判定した場合には、油路61と連通し、クラッチ元圧が作用することになる。
【0033】
セレクトコントロールバルブ90には、入力ポートとして、クラッチレギュレータバルブ60により調圧された油が流通する油路62が接続されている。また一方の端部にロックアップソレノイド71の信号圧を供給する油路83が接続されている。そして、油路62と油路93との連通状態をロックアップソレノイド71で制御することで油圧を調圧する。セレクトコントロールバルブ90では、例えばNレンジ→Dレンジへの切り換え時にプリチャージなどの制御を行うなど、前進クラッチ圧を独立して制御しており、クラッチ締結時の油圧をきめ細かく制御することが可能となる。
【0034】
セレクトスイッチングソレノイド70からの信号圧がONの状態では、ロックアップソレノイド71の信号圧は、セレクトスイッチングバルブ80を介してセレクトコントロールバルブ90の信号圧として作用する。そして、セレクトコントロールバルブ90により調圧された油を油路81を介してマニュアルバルブ15に供給する。
【0035】
一方、セレクトスイッチングソレノイド70からの信号圧がOFFの状態では、ロックアップソレノイド71の信号圧は、セレクトスイッチングバルブ80を介してロックアップコントロールバルブ100に供給される。
【0036】
ロックアップコントロールバルブ100は、入力ポートとして、クラッチレギュレータバルブ60からドレンされ、トルクコンバータレギュレータバルブ110により調圧された油が流通する油路64が接続され、トルクコンバータレギュレータバルブ110からドレンされた油路105が接続されている。
【0037】
一方、出力ポートとして、トルクコンバータ1にリリース圧に調圧された油を供給する油路102および油路103が接続され、トルクコンバータ1にアプライ圧に調圧された油を供給する油路106および108が接続され、図外のオイルクーラに油圧をドレンする油路107が接続されている。
【0038】
トルクコンバータレギュレータバルブ110は、クラッチレギュレータバルブ60からドレンされた油圧を調圧し、油路64を介してロックアップコントロールバルブ100に油圧を供給する。
【0039】
セレクトスイッチングバルブ80で調圧された油が油路81を通じて供給されるマニュアルバルブ15は、変速機ケースにピニオンキャリア22を固定する後進ブレーキ24、または変速機入力軸13とピニオンキャリア22を一体に連結する前進クラッチ25に油圧を供給する。ここでマニュアルバルブ15に供給される油圧は、前述のようにレンジ位置によってクラッチ元圧とクラッチ元圧より低く、セレクトコントロールバルブ90により調圧された圧力とから選択される。
【0040】
なお、本実施形態においては、クラッチレギュレータバルブ60とクラッチモディファイアバルブとが請求項3における第1の調圧手段を構成し、ロックアップソレノイドバルブ71とセレクトコントロールバルブ90とが請求項3における第2の調圧手段を構成し、セレクトスイッチングソレノイド70とセレクトスイッチングバルブ80とが、請求項3における切り換え手段を構成している。
【0041】
次に、本発明におけるインヒビタスイッチ16について説明する。通常、車両に搭載される自動変速機には、走行モードを決定するシフトレバーのシフトレンジ位置を検出するためのインヒビタスイッチ16が設けられており、本発明におけるパターンの一例を図4に示す。
【0042】
このインヒビタスイッチ16は、4つのスイッチのオン/オフ状態からレンジ位置を検出するリニアインヒビタスイッチ16であり、通常レンジ位置を決定する走行、非走行レンジ用のパターンと、通常レンジ位置を決定せずに通常レンジ間に配置され、レンジ間の不感帯の役割を持つ中間レンジ用のパターンとからなる。このインヒビタスイッチ16はこの例では、隣接するレンジ間のスイッチのオン/オフパターンは、一つしか異ならない様に設定されている。なおここで通常レンジ位置とは、中間レンジ位置との相違を示すために用いたもので、D、Rレンジ等車両が走行する走行レンジ位置のほか、P、Nレンジの非走行レンジ位置をも含む。つまり、運転者が通常、意識して選択するレンジ位置を意味する。
【0043】
そして中間レンジ位置が検出されるときは、一つ前の通常レンジ判定に基づいて自動変速機が制御される。つまり、P→P(R)が検出された場合には、中間レンジ位置P(R)では一つ前の通常レンジ位置判定である非走行レンジPの判定が維持されることになる。したがって、仮にセレクトレバーが走行レンジ位置に設定された状態で、インヒビタスイッチ16の4つのスイッチのうち1つが断線またはショートした場合においても、隣接する中間レンジ位置と判定され、走行レンジ位置は中間レンジが維持する、つまり直前の走行レンジ位置を通常レンジ位置として自動変速機が制御されることになり、他の走行レンジ位置に誤判定されることはない。
【0044】
しかしながら、インヒビタスイッチ16の1つが断線あるいはショートした場合に、通常レンジパターンが中間レンジパターンと同じパターンとなる。例えば、図4のINH SW2オフ故障の状態で説明すると、NレンジとDレンジ間の中間レンジ位置であるN(D)レンジを判定するパターンとDレンジを判定するパターンは、SW2のオンオフの違いであるため、SW2が故障し、オフ信号をレンジに関わりなく出力しつづけると、Dレンジに切り換わってもレンジパターンは、N(D)レンジを検出し続けることになる。同様に通常レンジへの切り換えが行われたにもかかわらず、中間レンジ、あるいは通常レンジと中間レンジのパターンにないNGパターン(図中のNG1からNG4)を判定するケースを図中網掛けにて示す。なお、制御上は、NGパターンは中間レンジパターンと同様に制御するものとする。さらに、中間レンジが判定された場合には判定前のレンジを維持する、つまり前述の場合にはNレンジとして変速機の制御が行われることになる。
【0045】
インヒビタスイッチ16に異常が生じた場合のマニュアルバルブ15に作用する油圧について図2と図3を用いて説明する。
【0046】
図2の油圧回路図は、インヒビタスイッチ16が異常を生じ、セレクトレバーの位置が非走行レンジ位置から走行レンジ位置に切り換わったにもかかわらず、中間レンジ位置と判定した場合の油圧回路図、つまり非走行レンジ位置での油圧回路である。
【0047】
この場合には、クラッチレギュレータバルブ60で調圧された油がセレクトコントロールバルブ90の作用により減圧されて油路81を通じてマニュアルバルブ15に供給される。したがって、マニュアルバルブ15から作動油を供給される前進クラッチ25または後退ブレーキ24には低圧の油圧が作用することになり、この状態で、エンジン側より大トルクが伝達されると、課題に記載したように前進クラッチ25または後退ブレーキ24に滑りが生じることになる。
【0048】
図3に示す油圧回路図は、走行レンジでの油圧回路図であり、この場合には、クラッチレギュレータバルブ60で調圧された油が直接、油路81を通じてマニュアルバルブ15に供給される。したがって、マニュアルバルブ15から作動油を供給される前進クラッチ25または後退ブレーキ24にはセレクトコントロールバルブ90を介した油圧に比べて高圧の油圧が作用することになり、この状態で、エンジン側より大トルクが伝達されても、前進クラッチ25または後退ブレーキ24に滑りが生じることはない。
【0049】
本発明においては、インヒビタスイッチ16の正常時、非走行レンジ位置から走行レンジ位置へセレクトレバーが切り換えられた場合、中間レンジ位置と判定される時間が短いことに着目し、中間レンジ位置パターン(NGパターンを含む)が所定時間以上継続して出力された場合には、走行レンジ位置に切り換えられたと判定することを特徴とする。
【0050】
本発明の制御内容を図5に示すフローチャートを用いて説明する。この制御内容はコントロールユニット9によって実施される。
【0051】
まずステップ1でインヒビタスイッチ16の出力信号を入力し、レンジ位置を判定する。次に前回判定した通常レンジ位置が非走行レンジ位置かどうかをステップ2で判定し、非走行レンジ位置であった場合にはステップ3に進み、走行レンジ位置であった場合には、ステップ1に戻る。
【0052】
ステップ3では、セレクトスイッチングバルブ80をセレクト側に位置させてセレクトコントロールバルブ90から供給される減圧された作動油をセレクトスイッチングバルブ80を介してマニュアルバルブ15に供給する。続くステップ4で、今回のレンジ判定が、通常レンジ位置かどうかを判定する。通常レンジ位置の場合にはステップ5に進み、中間レンジ位置(NGパターン時も含む)の場合にはステップ6に進む。
【0053】
ステップ5では、インヒビタスイッチ16の異常はなく、通常のN→Dセレクト変速制御が実施されてフローチャートを終える。一方、ステップ6では、コントローラ9に備えたタイマのカウントを開始し、中間レンジ位置の継続時間を計測する。
【0054】
ステップ7では、中間レンジ位置の継続時間が所定時間以上かを判定し、所定時間以上の場合には続くステップ8に進み、インヒビタスイッチ16に異常が生じたと判定し、レンジ位置は走行レンジ位置に切り換えられたと判定する。所定時間未満の場合にはステップ4に戻り、レンジ位置判定を繰り返す。
【0055】
ステップ8に続くステップ9では、エンジンの出力トルクを予め設定した所定の制限トルク以下に所定期間抑制する。
【0056】
ステップ10で、マニュアルバルブ15を介して前進クラッチ25または後退ブレーキ24にクラッチレギュレータバルブ60からの高圧の油圧を供給する。すなわち、セレクトスイッチングソレノイド70からの信号圧をオフにして、セレクトスイッチングバルブ80をセレクト位置からロックアップ位置へ切り換える。このとき、マニュアルバルブ15は、セレクトレバーの位置に応じて位置しているため、前進クラッチ25または後退ブレーキ24に高圧のクラッチ元圧が供給されることとなり、エンジンから所定のトルクが伝達されても滑りが生じることがない。
【0057】
また、セレクトスイッチングバルブ80が切り換わるときに、エンジントルクはステップ9において予めその上限が制限されているため、切り換えに伴う作動油の油圧の急激な上昇に伴うショックや異音の発生が抑制できる。
【0058】
続くステップ11で再びレンジ信号を検出してレンジ位置を判定し、走行レンジ位置と判定した場合にステップ12へ進み、タイマをリセットして制御を終え、非走行レンジ位置と判定した場合にはステップ13に進み、セレクトスイッチングソレノイド70の信号圧をオンにして、セレクトスイッチングバルブ80をロックアップ側位置からセレクト側位置へ切り換えることで、マニュアルバルブ15に供給する作動油としてセレクトコントロールバルブ90で減圧された低圧の作動油に切り換えて制御を終える。さらに中間レンジ位置と判定された場合には、ステップ10に戻り、高圧の作動油を継続してマニュアルバルブ15に供給する。
【0059】
なお、この制御においては、所定時間以上中間レンジ位置が1回継続した場合でも、インヒビタスイッチ16が異常を生じていると判定し、マニュアルバルブ15に高圧の作動油を供給するようにしたが、1回の走行中に2回以上中間レンジ位置の継続時間が所定時間以上となった場合に、インヒビタスイッチ16に断線やショート等の異常が生じたと判定するようにしてもよい。
【0060】
したがって、本発明の自動変速機にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
▲1▼直前の通常レンジ位置が非走行レンジ位置であるときに、中間レンジ位置が所定時間以上判定された場合に、インヒビタスイッチ16が異常であると判定し、セレクトスイッチングバルブ80をセレクト側位置からロックアップ側位置に切り替えるため、前進クラッチ25または後退ブレーキ24に対しセレクトコントロールバルブ90を介した減圧された低圧の油圧が供給され続けることがなくなり、クラッチレギュレタバルブ60からの入力トルクに応じた高圧のクラッチ元圧か供給されるため、エンジンから前進クラッチ25または後退ブレーキ24に大トルクが伝達されても滑りを生じることがなく、耐久性の悪化を防止できる。
▲2▼インヒビタスイッチ16が異常であると判定し、セレクトスイッチングバルブ80をセレクト側位置からロックアップ側位置へ切り替えるときに、エンジントルクの上限値を制限し、制限トルク以下に制御するため.油圧の切り換えに伴う油圧の急激な上昇が抑制できてショックの発生を防止できる。
▲3▼セレクトレバー7に従動するマニュアルバルブ15の上流側に、セレクトコントロールバルブ90とこれを制御するロックアップソレノイド71と、マニュアルバルブに対し入カトルクに応じて制御されるクラッチレギュレタバルブ60にて調圧されたクラッチ元圧とセレクトコントロールバルブ90にて調圧された油圧とを切り換えるセレクトスイッチングバルブ80と、これを制御するセレクトスイッチングソレノイド70とを配置し、前進クラッチ25または後退ブレーキ24の作動油圧を、セレクトコントロールバルブ90にて独立して制御可能な油圧回路構成としたことにより、前進クラッチ25または後退ブレーキ24の油圧の制御の自由度が向上し、締結時のきめの細かい油圧制御が可能となる。
【0061】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すベルト式無段変速機を備えた車両の主要ユニットの概略構成図である。
【図2】ベルト式無段変速機の油圧回路図(非走行レンジ位置時)である。
【図3】ベルト式無段変速機の油圧回路図(走行レンジ位置時)である。
【図4】インヒビタスイッチ16正常時及び故障時におけるレンジパターンを説明する図である。
【図5】本発明の制御内容を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
1 トルクコンバータ
2 ロックアップクラッチ
3 ベルト式無段変速機
5 油圧コントロールバルブユニット
9 CVTコントロールユニット
15 マニュアルバルブ
16 インヒビタスイッチ
24 後退ブレーキ
25 前進クラッチ
60 クラッチレギュレータバルブ
70 セレクトスイッチングソレノイド
71 ロックアップソレノイド
80 セレクトスイッチングバルブ
90 セレクトコントロールバルブ
Claims (3)
- シフトレバーに応動する複数のスイッチの導通状態からレンジ位置信号を出力するインヒビタスイッチと、
検出されたレンジ位置信号から、走行レンジ位置と非走行レンジ位置とからなる通常レンジ位置に対応する前記スイッチのオンオフパターンと各通常レンジ位置間に設けられた中間レンジ位置に対応する前記スイッチのオンオフパターンとに基づいてレンジ位置を判定するレンジ位置判定手段と、
レンジ位置の判定結果に基づいて油圧を制御する油圧制御手段と、
を有する制御装置と、
を備えた自動変速機において、
中間レンジ位置判定の継続時間を計測手段を備え、
前記油圧制御手段は、直前の通常レンジ位置が非走行レンジ位置であるときに、判定された中間レンジ位置判定の継続時間が所定時間より短い場合には非走行レンジ位置として自動変速機の油圧を制御し、中間レンジ位置の判定時間が所定時間以上である場合には走行レンジ位置として油圧を制御することを特徴とする自動変速機。 - 前記油圧制御手段は、中間レンジ位置判定の継続時間に応じて油圧の制御が非走行レンジ位置の制御から走行レンジ位置制御に切り換わるときに、エンジンの出力トルクを低減することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
- 前進または後退時に締結する摩擦要素を備え、
前記油圧制御手段は、前記シフトレバーに応動し、下流側に前記摩擦要素を備えるマニュアルバルブと、入力トルクに基づいた油圧に調圧する第1の調圧手段と、第1の調圧手段により調圧された油圧よりも低圧の油圧に調圧可能な第2の調圧手段と、前記非走行レンジ位置の制御では、第1の調圧手段によって調圧された油圧を前記マニュアルバルブに供給し、前記走行レンジ位置の制御では、第2の調圧手段によって調圧された油圧を前記マニュアルバルブに供給する切り換え手段とを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の自動変速機。
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