JP2004250926A - 接合構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属構造部材の表面にその金属構造部材の主応力方向に延びる金属板部材をT型に溶接した接合構造体の疲労性能を、従来よりも一段と向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】金属構造部材1の表面に金属構造部材1の主応力方向に延びる金属板部材3をT型に溶接するとともに、この金属板部材3の端部4を金属構造部材1の表面に沿って前記主応力方向から逃げる方向に屈曲させる。そして金属板部材3と金属構造部材3との溶接部5のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部5aをアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させる。金属構造部材1に外力が作用したときに金属板部材3の端部4付近に生じる大きい応力集中を緩和することができ、接合構造体の耐力や疲労性能を向上できる。
【選択図】 図2
【解決手段】金属構造部材1の表面に金属構造部材1の主応力方向に延びる金属板部材3をT型に溶接するとともに、この金属板部材3の端部4を金属構造部材1の表面に沿って前記主応力方向から逃げる方向に屈曲させる。そして金属板部材3と金属構造部材3との溶接部5のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部5aをアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させる。金属構造部材1に外力が作用したときに金属板部材3の端部4付近に生じる大きい応力集中を緩和することができ、接合構造体の耐力や疲労性能を向上できる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼管その他の金属構造部材に対して、補強リブ等の金属板部材またはアンカーボルトを溶接した接合構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開2001−132102号公報
【0003】
例えば鋼管柱などの金属構造部材の基部をベースプレートに固定する部分には、一般的に三角形や台形の金属板部材が補強リブとして用いられている。これらの金属板部材は金属構造部材の主応力方向(柱の場合には軸線方向)に延びるように金属構造部材の表面にT型に溶接されるとともに、その底辺をベースプレートに溶接されている。
【0004】
ところがこのような従来構造の接合構造体では、金属構造部材に外力が作用したときに金属板部材の補強リブ周辺に大きな応力集中が発生し、接合構造体の耐力や疲労性能が低下することが判明した。これは金属構造部材の表面にT型に溶接された補強リブ端部が強い剛性を持つために力の流れがここに集中するためであり、交通振動や風などによって繰返し振動を受ける鋼管柱などの金属構造部材では、上記の集中応力に起因するクラックが発生することがある。
【0005】
そこで本発明者等は図1に示すように、金属構造部材1とベースプレート2等との間に溶接された金属板部材3の端部4を、金属構造部材1の主応力方向から逃げる方向に屈曲させることによって端部4の剛性を低減させ、応力集中を大幅に緩和した接合構造体を発明した(特許文献1)。この発明によれば鋼管柱などの疲労強度を大幅に向上させることができるため、道路用照明柱を始め既に多くの工事実績がある。この接合構造体においては金属板部材の屈曲された端部4は金属構造部材1の表面に全長にわたり表裏ともに溶接されており、溶接部5にグラインダ処理などを施すことによって端部4の周辺の局部応力集中係数を低下させている。
【0006】
ところがその後の研究により、図1に示すように金属板部材3の端部4を屈曲させた接合構造体においては、端部4の周辺の金属構造部材1の表面に残留圧縮応力が働き、金属構造部材1に外力が作用したときに発生する引張応力を緩和することにより、疲労性能を向上させていることが確認された。この事実によれば、溶接部5にグラインダ処理を施すことは局部応力集中係数の低下には寄与するものの、残留圧縮応力をも低下させることとなり、全体としては疲労性能向上にマイナス要因となる可能性があることが判明した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、金属構造部材の表面にその金属構造部材の主応力方向に延びる金属板部材をT型に溶接した接合構造体の疲労性能を、従来よりも一段と向上させることができる技術を提供するためになされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた請求項1の発明は、金属構造部材の表面にその金属構造部材の主応力方向に延びる金属板部材をT型に溶接するとともに、この金属板部材の端部を前記金属構造部材の表面に沿って前記主応力方向から逃げる方向に屈曲させた接合構造体において、前記金属板部材と金属構造部材との溶接部のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部をアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことを特徴とするものである。
【0009】
なお、金属板部材がU字状またはV字状に屈曲されたものであることが好ましい。また、金属板部材が金属構造部材と、ベースプレートまたは接合用フランジとの間に設けられたもの、あるいは継手取付け用のもの、あるいは二次部材取付け用のものであることが好ましい。
【0010】
さらに、上記の課題を解決するためになされた請求項7の発明は、金属構造部材の表面にその金属構造部材の主応力方向に延びるアンカーボルトを溶接するとともに、このアンカーボルトの端部を前記金属構造部材の表面に沿って前記主応力方向から逃げる方向に屈曲させた接合構造体において、前記アンカーボルトと金属構造部材との溶接部のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部をアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
図2は本発明の第1の実施形態を示す図であり、図1に示した接合構造体と同様に、1は鋼管柱などの金属構造部材、2は金属構造部材1の基部に設けられたベースプレート、3は金属構造部材1とベースプレート2との間に溶接され、補強リブとして用いられている金属板部材である。
【0012】
この実施形態の金属板部材3は鋼板をU字状に屈曲させたものであり、その中心線6は金属構造部材1の主応力方向である上下方向(金属構造部材1の軸線方向)に延びている。図2に示すように、金属板部材3の背面は全長にわたり金属構造部材1に溶接されており、またその底面はベースプレート2に溶接されている。
【0013】
金属板部材3と金属構造部材1との溶接部5は、図2中に外側溶接部5aと内側溶接部5bとして図示されている。通常は全溶接部5に対して断面が図3(A)に示すようになるようグラインダ処理を施し、局部応力集中係数を低下させている。しかしこの実施形態では、金属板部材3の端部4に相当する屈曲区間周辺を含む外側溶接部5aのみならず、内側溶接部5bもアズウエルド(黒塗りで示す)としてある。
【0014】
アズウエルドとは溶接ままで、グラインダ処理等の後加工を施さない状態を意味し、その部分の断面は例えば図3(B)に示すようになる。なお、図3(A)、(B)は溶接部5の断面を模式的に示したものである。アズウエルドとする範囲は少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部5aとするが、その他の溶接部はアズウエルドとしてもグラインダ処理を施しても任意であり、工数削減のためには実施形態のように全溶接部5をアズウエルドとすることが好ましい。
【0015】
前記したように、端部4を金属構造部材1の表面に沿って主応力方向から屈曲させた金属板部材3を金属構造部材1の外側に溶接した接合構造体においては、端部4の周辺の金属構造部材1の表面に残留圧縮応力が働くことが実験により確認された。図4にその概要を模式的に示す。外向きの矢印が引張応力、内向きの矢印が圧縮応力である。図示のように、屈曲部の周辺では法線方向及び周方向に強い圧縮応力が残留し、その外周部では法線方向に引張応力が残留する。これに対して従来型の平板状三角リブを溶接した場合には図5に示すようにリブの上端部に大きな引張応力が残留する。
【0016】
このため平板状三角リブの場合とは異なり、端部4を金属構造部材1の表面に沿って主応力方向から屈曲させた金属板部材3を用いた本発明の接合構造体では、少なくとも大きな圧縮応力が残留している屈曲区間周辺の外側溶接部5aはアズウエルドとし、残留圧縮応力をそのまま保持させておく。もしこの部分をグラインダ処理により除去すると、全体の応力バランスが崩れて残留圧縮応力値が低下する。金属構造部材1のクラックは、金属板部材3の端部4付近の引張応力により発生するのであるから、屈曲区間周辺の外側溶接部5aをアズウエルドとして大きな圧縮応力を残留させておけば、クラック発生の原因となる引張応力をその残留圧縮応力分だけ減少させ、疲労性能向上に大きく寄与する。
【0017】
このように少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部5aをアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことによって、溶接部5をグラインダ処理した場合に比較して、疲労性能を向上させることができる。図11は図1に示した実施形態の接合構造体(アズウエルド)と、溶接部5にグラインダ処理を施した従来品との疲労特性を示すグラフであり、グラインダ処理を施した従来品はJSSC基準のB等級程度であるが、アズウエルド品はA等級程度の疲労特性を持つことが確認された。
【0018】
図6に示す第2の実施形態では、V字状に屈曲させた金属板部材3が用いられている。この場合にも、金属板部材3の中心線6は金属構造部材1の主応力方向である上下方向(金属構造部材1の軸線方向)に延びている。そして金属板部材3と金属構造部材1との溶接部5は、屈曲区間周辺を含む外側溶接部5aのみならず、内側溶接部5bをもアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことは第1の実施形態と同様である。
【0019】
以上に説明した実施形態では、U字状又はV字状に屈曲させた金属板部材3は金属構造部材1とベースプレート2との間に補強リブとして設置されたものであった。しかし図7に示す第3の実施形態では、端部4を金属構造部材1の表面に沿って主応力方向から屈曲させたU字状の金属板部材3が2つの金属構造部材1を相互に接合する接合用フランジ7と金属構造部材1との間に溶接されている。接合用フランジ7は金属構造部材1の基部に溶接されており、接合用フランジ7、7どうしが接合用ボルト8により接合されている。
【0020】
この第3の実施形態の金属板部材3においても、金属板部材3と金属構造部材1との溶接部5のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部5aをアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させることは前記と同様である。
【0021】
図8に示す第4の実施形態では、端部4を屈曲させた金属板部材3は継手取付け用のものであり、継手10を添接板ボルト接合することによって2つの金属構造部材1、1を接続している。この金属板部材3と金属構造部材1との溶接部5も全てアズウエルドとしてある。
【0022】
図9に示す第5の実施形態では、端部4を屈曲させた金属板部材3は金属構造部材1に二次部材11を取付けるためのものである。この第5の実施形態の金属板部材3は端部4を金属構造部材1の表面に沿って主応力方向から屈曲させてあるが他の実施形態のようにU字状又はV字状ではなく、片側にのみ屈曲させてある。金属板部材3は金属構造部材1の主応力方向に延びている。その端部4の屈曲角度は、主応力方向に対して垂直となるまで、すなわち90度以上とすることが好ましい。この金属板部材3と金属構造部材1との溶接部5もアズウエルドとし、圧縮残留応力を保持させてある。
【0023】
図10は請求項6の発明の実施形態を示す。この実施形態では、金属構造部材1の表面にその金属構造部材の主応力方向に延びるアンカーボルト20が複数本溶接されている。各アンカーボルト20の端部21は、図示のように金属構造部材1の表面に沿って主応力方向から逃げる方向に屈曲させてある。これらのアンカーボルト20と金属構造部材1との溶接部22のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部22aをアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことは、前記した他の実施形態と同様である。
【0024】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば端部を金属構造部材の表面に沿って主応力方向から屈曲させた金属板部材またはアンカーボルトと金属構造部材との溶接部のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部をアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことによって、金属構造部材に外力が作用したときに金属板部材の端部付近の金属構造部材に生じる大きい集中応力を緩和することができ、接合構造体の耐力や疲労性能を従来よりも一段と向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】特許文献1に記載の従来の接合構造体を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す正面図である。
【図3】溶接部の拡大断面図であり、(A)はグラインダ処理された溶接部、(B)はアズウエルドの溶接部である。
【図4】端部を屈曲させた金属板部材の端部付近の金属構造部材に生じる応力説明図である。
【図5】通常の金属板部材の端部付近の金属構造部材に生じる応力説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す正面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を示す正面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態を示す正面図である。
【図9】本発明の第5の実施形態を示す正面図である。
【図10】請求項6の発明の実施形態を示す正面図である。
【図11】本発明品の疲労特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 金属構造部材
2 ベースプレート
3 金属板部材
4 端部
5 溶接部
5a 外側溶接部
5b 内側溶接部
6 金属板部材の中心線
7 接合用フランジ
8 接合用ボルト
10 継手
11 二次部材
20 アンカーボルト
21 端部
22 溶接部
22a 外側溶接部
22b 内側溶接部
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼管その他の金属構造部材に対して、補強リブ等の金属板部材またはアンカーボルトを溶接した接合構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開2001−132102号公報
【0003】
例えば鋼管柱などの金属構造部材の基部をベースプレートに固定する部分には、一般的に三角形や台形の金属板部材が補強リブとして用いられている。これらの金属板部材は金属構造部材の主応力方向(柱の場合には軸線方向)に延びるように金属構造部材の表面にT型に溶接されるとともに、その底辺をベースプレートに溶接されている。
【0004】
ところがこのような従来構造の接合構造体では、金属構造部材に外力が作用したときに金属板部材の補強リブ周辺に大きな応力集中が発生し、接合構造体の耐力や疲労性能が低下することが判明した。これは金属構造部材の表面にT型に溶接された補強リブ端部が強い剛性を持つために力の流れがここに集中するためであり、交通振動や風などによって繰返し振動を受ける鋼管柱などの金属構造部材では、上記の集中応力に起因するクラックが発生することがある。
【0005】
そこで本発明者等は図1に示すように、金属構造部材1とベースプレート2等との間に溶接された金属板部材3の端部4を、金属構造部材1の主応力方向から逃げる方向に屈曲させることによって端部4の剛性を低減させ、応力集中を大幅に緩和した接合構造体を発明した(特許文献1)。この発明によれば鋼管柱などの疲労強度を大幅に向上させることができるため、道路用照明柱を始め既に多くの工事実績がある。この接合構造体においては金属板部材の屈曲された端部4は金属構造部材1の表面に全長にわたり表裏ともに溶接されており、溶接部5にグラインダ処理などを施すことによって端部4の周辺の局部応力集中係数を低下させている。
【0006】
ところがその後の研究により、図1に示すように金属板部材3の端部4を屈曲させた接合構造体においては、端部4の周辺の金属構造部材1の表面に残留圧縮応力が働き、金属構造部材1に外力が作用したときに発生する引張応力を緩和することにより、疲労性能を向上させていることが確認された。この事実によれば、溶接部5にグラインダ処理を施すことは局部応力集中係数の低下には寄与するものの、残留圧縮応力をも低下させることとなり、全体としては疲労性能向上にマイナス要因となる可能性があることが判明した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、金属構造部材の表面にその金属構造部材の主応力方向に延びる金属板部材をT型に溶接した接合構造体の疲労性能を、従来よりも一段と向上させることができる技術を提供するためになされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた請求項1の発明は、金属構造部材の表面にその金属構造部材の主応力方向に延びる金属板部材をT型に溶接するとともに、この金属板部材の端部を前記金属構造部材の表面に沿って前記主応力方向から逃げる方向に屈曲させた接合構造体において、前記金属板部材と金属構造部材との溶接部のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部をアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことを特徴とするものである。
【0009】
なお、金属板部材がU字状またはV字状に屈曲されたものであることが好ましい。また、金属板部材が金属構造部材と、ベースプレートまたは接合用フランジとの間に設けられたもの、あるいは継手取付け用のもの、あるいは二次部材取付け用のものであることが好ましい。
【0010】
さらに、上記の課題を解決するためになされた請求項7の発明は、金属構造部材の表面にその金属構造部材の主応力方向に延びるアンカーボルトを溶接するとともに、このアンカーボルトの端部を前記金属構造部材の表面に沿って前記主応力方向から逃げる方向に屈曲させた接合構造体において、前記アンカーボルトと金属構造部材との溶接部のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部をアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
図2は本発明の第1の実施形態を示す図であり、図1に示した接合構造体と同様に、1は鋼管柱などの金属構造部材、2は金属構造部材1の基部に設けられたベースプレート、3は金属構造部材1とベースプレート2との間に溶接され、補強リブとして用いられている金属板部材である。
【0012】
この実施形態の金属板部材3は鋼板をU字状に屈曲させたものであり、その中心線6は金属構造部材1の主応力方向である上下方向(金属構造部材1の軸線方向)に延びている。図2に示すように、金属板部材3の背面は全長にわたり金属構造部材1に溶接されており、またその底面はベースプレート2に溶接されている。
【0013】
金属板部材3と金属構造部材1との溶接部5は、図2中に外側溶接部5aと内側溶接部5bとして図示されている。通常は全溶接部5に対して断面が図3(A)に示すようになるようグラインダ処理を施し、局部応力集中係数を低下させている。しかしこの実施形態では、金属板部材3の端部4に相当する屈曲区間周辺を含む外側溶接部5aのみならず、内側溶接部5bもアズウエルド(黒塗りで示す)としてある。
【0014】
アズウエルドとは溶接ままで、グラインダ処理等の後加工を施さない状態を意味し、その部分の断面は例えば図3(B)に示すようになる。なお、図3(A)、(B)は溶接部5の断面を模式的に示したものである。アズウエルドとする範囲は少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部5aとするが、その他の溶接部はアズウエルドとしてもグラインダ処理を施しても任意であり、工数削減のためには実施形態のように全溶接部5をアズウエルドとすることが好ましい。
【0015】
前記したように、端部4を金属構造部材1の表面に沿って主応力方向から屈曲させた金属板部材3を金属構造部材1の外側に溶接した接合構造体においては、端部4の周辺の金属構造部材1の表面に残留圧縮応力が働くことが実験により確認された。図4にその概要を模式的に示す。外向きの矢印が引張応力、内向きの矢印が圧縮応力である。図示のように、屈曲部の周辺では法線方向及び周方向に強い圧縮応力が残留し、その外周部では法線方向に引張応力が残留する。これに対して従来型の平板状三角リブを溶接した場合には図5に示すようにリブの上端部に大きな引張応力が残留する。
【0016】
このため平板状三角リブの場合とは異なり、端部4を金属構造部材1の表面に沿って主応力方向から屈曲させた金属板部材3を用いた本発明の接合構造体では、少なくとも大きな圧縮応力が残留している屈曲区間周辺の外側溶接部5aはアズウエルドとし、残留圧縮応力をそのまま保持させておく。もしこの部分をグラインダ処理により除去すると、全体の応力バランスが崩れて残留圧縮応力値が低下する。金属構造部材1のクラックは、金属板部材3の端部4付近の引張応力により発生するのであるから、屈曲区間周辺の外側溶接部5aをアズウエルドとして大きな圧縮応力を残留させておけば、クラック発生の原因となる引張応力をその残留圧縮応力分だけ減少させ、疲労性能向上に大きく寄与する。
【0017】
このように少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部5aをアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことによって、溶接部5をグラインダ処理した場合に比較して、疲労性能を向上させることができる。図11は図1に示した実施形態の接合構造体(アズウエルド)と、溶接部5にグラインダ処理を施した従来品との疲労特性を示すグラフであり、グラインダ処理を施した従来品はJSSC基準のB等級程度であるが、アズウエルド品はA等級程度の疲労特性を持つことが確認された。
【0018】
図6に示す第2の実施形態では、V字状に屈曲させた金属板部材3が用いられている。この場合にも、金属板部材3の中心線6は金属構造部材1の主応力方向である上下方向(金属構造部材1の軸線方向)に延びている。そして金属板部材3と金属構造部材1との溶接部5は、屈曲区間周辺を含む外側溶接部5aのみならず、内側溶接部5bをもアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことは第1の実施形態と同様である。
【0019】
以上に説明した実施形態では、U字状又はV字状に屈曲させた金属板部材3は金属構造部材1とベースプレート2との間に補強リブとして設置されたものであった。しかし図7に示す第3の実施形態では、端部4を金属構造部材1の表面に沿って主応力方向から屈曲させたU字状の金属板部材3が2つの金属構造部材1を相互に接合する接合用フランジ7と金属構造部材1との間に溶接されている。接合用フランジ7は金属構造部材1の基部に溶接されており、接合用フランジ7、7どうしが接合用ボルト8により接合されている。
【0020】
この第3の実施形態の金属板部材3においても、金属板部材3と金属構造部材1との溶接部5のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部5aをアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させることは前記と同様である。
【0021】
図8に示す第4の実施形態では、端部4を屈曲させた金属板部材3は継手取付け用のものであり、継手10を添接板ボルト接合することによって2つの金属構造部材1、1を接続している。この金属板部材3と金属構造部材1との溶接部5も全てアズウエルドとしてある。
【0022】
図9に示す第5の実施形態では、端部4を屈曲させた金属板部材3は金属構造部材1に二次部材11を取付けるためのものである。この第5の実施形態の金属板部材3は端部4を金属構造部材1の表面に沿って主応力方向から屈曲させてあるが他の実施形態のようにU字状又はV字状ではなく、片側にのみ屈曲させてある。金属板部材3は金属構造部材1の主応力方向に延びている。その端部4の屈曲角度は、主応力方向に対して垂直となるまで、すなわち90度以上とすることが好ましい。この金属板部材3と金属構造部材1との溶接部5もアズウエルドとし、圧縮残留応力を保持させてある。
【0023】
図10は請求項6の発明の実施形態を示す。この実施形態では、金属構造部材1の表面にその金属構造部材の主応力方向に延びるアンカーボルト20が複数本溶接されている。各アンカーボルト20の端部21は、図示のように金属構造部材1の表面に沿って主応力方向から逃げる方向に屈曲させてある。これらのアンカーボルト20と金属構造部材1との溶接部22のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部22aをアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことは、前記した他の実施形態と同様である。
【0024】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば端部を金属構造部材の表面に沿って主応力方向から屈曲させた金属板部材またはアンカーボルトと金属構造部材との溶接部のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部をアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことによって、金属構造部材に外力が作用したときに金属板部材の端部付近の金属構造部材に生じる大きい集中応力を緩和することができ、接合構造体の耐力や疲労性能を従来よりも一段と向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】特許文献1に記載の従来の接合構造体を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す正面図である。
【図3】溶接部の拡大断面図であり、(A)はグラインダ処理された溶接部、(B)はアズウエルドの溶接部である。
【図4】端部を屈曲させた金属板部材の端部付近の金属構造部材に生じる応力説明図である。
【図5】通常の金属板部材の端部付近の金属構造部材に生じる応力説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す正面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を示す正面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態を示す正面図である。
【図9】本発明の第5の実施形態を示す正面図である。
【図10】請求項6の発明の実施形態を示す正面図である。
【図11】本発明品の疲労特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 金属構造部材
2 ベースプレート
3 金属板部材
4 端部
5 溶接部
5a 外側溶接部
5b 内側溶接部
6 金属板部材の中心線
7 接合用フランジ
8 接合用ボルト
10 継手
11 二次部材
20 アンカーボルト
21 端部
22 溶接部
22a 外側溶接部
22b 内側溶接部
Claims (6)
- 金属構造部材の表面にその金属構造部材の主応力方向に延びる金属板部材をT型に溶接するとともに、この金属板部材の端部を前記金属構造部材の表面に沿って前記主応力方向から逃げる方向に屈曲させた接合構造体において、前記金属板部材と金属構造部材との溶接部のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部をアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことを特徴とする接合構造体。
- 金属板部材がU字状またはV字状に屈曲された請求項1記載の接合構造体。
- 金属板部材が金属構造部材と、ベースプレートまたは接合用フランジとの間に設けられたものである請求項1又は2に記載の接合構造体。
- 金属板部材が継手取付け用のものである請求項1又は2に記載の接合構造体。
- 金属板部材が二次部材取付け用のものである請求項1又は2に記載の接合構造体。
- 金属構造部材の表面にその金属構造部材の主応力方向に延びるアンカーボルトを溶接するとともに、このアンカーボルトの端部を前記金属構造部材の表面に沿って前記主応力方向から逃げる方向に屈曲させた接合構造体において、前記アンカーボルトと金属構造部材との溶接部のうち、少なくとも屈曲区間周辺の外側溶接部をアズウエルドとして残留圧縮応力を保持させたことを特徴とする接合構造体。
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JP2003040614A JP2004250926A (ja) | 2003-02-19 | 2003-02-19 | 接合構造体 |
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2003
- 2003-02-19 JP JP2003040614A patent/JP2004250926A/ja not_active Withdrawn
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