JP2004249475A - 印刷版製造方法及び印刷版製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】次に列記する事項を何れも実現することができる印刷版製造方法を提供する。(1)フォトリソグラフィー法のように現像液やエッチング液を発生させたり、オンデマンド型の生産要求への対応を困難にしたりといった事態を生ずることなく、版パターンを形成することができる。(2)微細な貫通孔や凹部でも十分な内壁平滑性を得る。(3)孔版と凹版とに共通して生ずる上述のダメージや、孔版に生ずる薄膜残り及びエッジ欠けを抑えつつ、プラスチック板等の基材にラミネートフィルムを貼付することによるコストアップや目詰まりを解消する。
【解決手段】基材101に対して複数の貫通孔からなる版パターンを形成するためのレーザー加工処理として、フェムト秒レーザー加工処理を用いた。
【選択図】 図6
【解決手段】基材101に対して複数の貫通孔からなる版パターンを形成するためのレーザー加工処理として、フェムト秒レーザー加工処理を用いた。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板やプラスチック板等の基材に対してレーザー加工処理による版パターンを形成して、孔版や凹版等の印刷版を製造する印刷版製造方法及び印刷版製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、印刷版を用いて、インク、接着材、クリームはんだ、樹脂などの印刷材からなる印刷パターンを被印刷体に印刷する印刷方法が知られている。例えば、製本の分野では、印刷版を用いてインクからなる写真画像パターンや文字画像パターンを紙に印刷する印刷方法が広く用いられている。また例えば、電子回路の分野では、印刷版を用いてクリームはんだからなる微細電極パターンを回路基板に印刷する印刷方法が用いられている。
【0003】
印刷パターンに対応する版パターンが形成された印刷版を製造する印刷版製造方法の1つとして、複数の貫通孔や凹部からなる版パターンをYAGレーザー加工によって金属板等の基材に形成するものがある。しかしながら、YAGレーザー加工による版パターンでは、画像の更なる高解像度化や電子回路の更なる小型化という近年の要求に応えることが困難になってきた。YAGレーザー加工では、かかる要求に応え得るような例えば数〜数十[μm]といった微細な貫通孔や凹部において十分な内壁平滑性が得られず、貫通孔からの印刷材の抜け性が不足して印刷不良となってしまうからである
【0004】
他の印刷版製造方法として、フォトリソグラフィー法によって版パターンを形成するものも知られている。この方法によれば、上述のような微細な貫通孔や凹部でも、十分な内壁平滑性を得ることができる。しかしながら、YAGレーザー加工による方法に比して廃材が多く発生する、オンデマンド型の生産要求に対応に難いなどといった不具合がある。現像液やエッチング液が廃材として発生したり、版パターンに応じて異なった遮光パターンのフォトマスクを用意する必要があったりするからである。
【0005】
そこで、特許文献1や特許文献2に記載の印刷版が提案されるに至った。これら印刷版では、基材としてプラスチック板が用いられている。そして、その版パターンは、エキシマレーザーの照射によってプラスチック材をアブレーション加工した複数の貫通孔や凹部からなる。かかる印刷版は、フォトリソグラフィー法によらずに版パターンが形成されるので、フォトリソグラフィー法による上述の不具合を何れも解消することができる。しかも、アブレーション現象は基本的に熱伝導よりも高速に起こるため、YAGレーザー加工の場合のように貫通孔や凹部の内壁を熱溶融によって変形させるといった事態を生じない。よって、上述のような微細な貫通孔や凹部でも十分な内壁平滑性を得ることができる。
【0006】
しかしながら、これらの印刷版では、貫通孔や凹部のアブレーション加工の際に、貫通孔内や凹部内で発生させた多量のアブレーションガスがエキシマレーザー照射面側に一気に噴出する。そして、貫通孔や凹部の周囲にカーボンの付着や熱によるダメージを発生させてしまう。このため、プラスチック板のエキシマレーザー照射面に、高分子フィルムからなるラミネートフィルムを貼付してから、貫通孔や凹部をアブレーション加工することが望ましい。このようにすれば、ダメージをプラスチック板ではなくラミネートフィルムに発生させるので、そのラミネートフィルムを剥離することで、ダメージのない印刷版を得ることができるからである。
【0007】
上述のダメージは孔版と凹版とに共通して生ずる現象であるが、孔版だけに生ずる薄膜残りやエッジ欠けという現象があることもわかっている。具体的には、孔版の貫通孔をエキシマレーザーの照射によってアブレーション加工する際、プラスチック板を加工テーブルに密着させていないと、貫通孔の下端にプラスチックの薄膜が部分的に残されることがある(薄膜残り)。プラスチック板と加工テーブルとを密着させてアブレーション加工すれば薄膜残りを解消し得るのであるが、そうすると、今度は加工テーブル面からのレーザー照り返しによって貫通孔の下側エッジを欠損させることがある(エッジ欠け)。エキシマレーザーによってアブレーション加工される貫通孔の内壁テーパーが上広がりになる。このような上広がりの貫通孔に対して印刷材を上側から充填すると、孔下方への印刷材のすり抜けが困難になる。よって、孔版は印刷の際に上下反転され、貫通孔を下広がりにした状態で使用される。このとき、上述のエッジ欠けが生じている貫通孔では、版面に刷り込まれた印刷材のエッジによる掻き取り効果が十分に得られないことから、印刷材の充填不足が発生してしまう。
【0008】
そこで、本出願人は、特許文献3に記載の印刷版製造方法を提案した。この印刷版製造方法は、プラスチック板のエキシマレーザー照射面とは反対側の面に、高分子フィルムからなるラミネートフィルムを貼付してから複数の貫通孔を形成し、その後にラミネートフィルムを剥離するものである。かかる方法において、薄膜残りを解消すべくプラスチック板と加工テーブルとを密着させると、プラスチック板ではなく、ラミネートフィルムにエッジ欠けを発生させることになる。このため、フィルム剥離後には、薄膜残りもエッジ欠けもない孔版を得ることができる。
【0009】
従って、エキシマレーザーの照射によるアブレーション加工では、凹版であれば、プラスチック板として、レーザー照射面にラミネートフィルムを貼付したものを用いることが望ましい。また、孔版であれば、プラスチック板として、レーザー照射面に加えて、その反対面にもラミネートフィルムを貼付したものを用いることが望ましい。
【特許文献1】
特許第3279761号公報
【特許文献2】
特開平10−291293号公報
【特許文献3】
特許第3271885号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このようにして印刷版を製造すると、ラミネートフィルムの材料費や、フィルムを貼付・剥離する工程の追加によってコスト高になってしまう。また、ラミネートフィルムの加工屑によって貫通孔や凹部に目詰まりを引き起こすおそれもある。
【0011】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、次に列記する事項を何れも実現することができる印刷版製造方法及び印刷版製造装置を提供することである。
(1)フォトリソグラフィー法のように現像液やエッチング液を発生させたり、オンデマンド型の生産要求への対応を困難にしたりといった事態を生ずることなく、版パターンを形成することができる。
(2)微細な貫通孔や凹部でも十分な内壁平滑性を得る。
(3)孔版と凹版とに共通して生ずる上述のダメージや、孔版に生ずる薄膜残り及びエッジ欠けを抑えつつ、プラスチック板等の基材にラミネートフィルムを貼付することによるコストアップや目詰まりを解消する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、基材に対してレーザー加工による複数の貫通孔や凹部からなる版パターンを形成して印刷版を製造する印刷版製造方法において、上記レーザー加工処理として、フェムト秒レーザー加工処理を用いることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の印刷版製造方法において、上記基材として、金属からなるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の印刷版製造方法において、上記基材として、プラスチックからなるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2又は3の印刷版製造方法において、上記基材面に対してフェムト秒レーザー光を斜めに照射して上記貫通孔又は凹部を加工することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、基材に対してレーザー加工による複数の貫通孔や凹部からなる版パターンを形成して印刷版を製造する印刷版製造装置において、レーザー光として、フェムト秒レーザー光を用いることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の印刷版製造装置において、上記フェムト秒レーザー光として、可視領域の波長のものを用いることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項5又は6の印刷版製造装置において、レーザー加工される上記基材を支持する支持台と、上記基材との間を氷によって架橋して、上記基材を該支持台に固定する冷凍固定手段を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
これらの発明においては、フォトリソグラフィー法によらずに、フェムト秒レーザーの照射によって複数の貫通孔や凹部を加工する。このため、フォトリソグラフィー法のように、現像液やエッチング液を発生させたり、オンデマンド型の生産要求への対応を困難にしたりといった事態を生ずることなく、版パターンを形成することができる。
また、貫通孔や凹部を、面照射ではなく点照射でアブレーション加工することが可能である。具体的には、近年においては、エキシマレーザーの代わりにフェムト秒レーザーを用いてもアブレーション加工が可能で、しかも、プラスチック材はもとより、金属材も加工し得ることがわかってきた。よって、微細な貫通孔や凹部であっても、アブレーション加工によって十分な内壁平滑性を得ることができる。
また、エキシマレーザーよりも小さなスポット径のファムト秒レーザーの照射による加工を行うことができる。このため、例えば貫通孔であれば、エキシマレーザーの場合のように孔全体を一気に打ち抜くのではなく、孔を輪郭抜きすることができる。糸ノコギリで円を切り抜くような要領で、小径のレーザースポットをプラスチック板等の表面上で円軌道させて貫通孔を輪郭抜きするのである。また、凹部であれば、小さな彫刻刀で大きな窪みを少しずつ掘り進んでいくような要領で、凹部を径方向に徐々に掘削していくことができる。このようにして貫通孔を輪郭抜きしたり凹部を径方向に徐々に掘削したりすることで、アブレーションガスの噴出を抑えることができる。すると、基材にラミネートフィルムを貼付しなくても貫通孔や凹部の周囲のダメージを抑えることが可能になるため、ラミネートフィルムの加工屑によって貫通孔や凹部を目詰まりさせるといった事態もなくなる。
また、貫通孔を輪郭抜きすれば、輪郭の内側部分を基材から確実に切り離すことが可能になるため、基材と加工テーブルとを密着させていなくても薄膜残りを解消することができる。よって、基材を支持台の表面から大きく離間させた状態で貫通孔を加工して、支持台から孔周囲へのレーザー照り返しによるエッジ欠けの発生を抑えることもできる。
更には、基材を加工テーブル等の支持台に吸引密着させるための吸引手段を付設して、貫通孔に生ずる薄膜残りを解消するといった対策が不要になる。よって、吸引手段を付設することによるコストアップを回避することも可能になる。
これらの結果、上述した(1)乃至(3)の事項を何れも実現することができる。
【0014】
特に、請求項2の印刷版製造方法においては、摩擦帯電によって被印刷体に悪影響を及ぼすといった事態を生ずることのない印刷版を製造することができる。具体的には、基材としてプラスチック板のような絶縁材が用いられた印刷版では、印刷時において、スキージ等の印刷材刷り付け部材との摩擦によって帯電することがある。繰り返しの摩擦によって帯電電位が徐々に上昇してくると、やがて電流が被印刷体に流れ込んで悪影響を及ぼしてしまう。一方、請求項2の発明によって製造された印刷版は、基材が金属からなるため、印刷材刷り付け部材との摩擦に伴って帯電するようなことがない。このため、摩擦帯電によって被印刷体に悪影響を及ぼすといった事態を生ずることがないのである。
【0015】
また特に、請求項3の印刷版製造方法においては、基材として、一般に、レーザー加工による貫通孔や凹部がレーザー加工に伴う変性によって撥液性を帯びるプラスチックからなるものを用いる。このため、金属からなる基材を用いる場合に比べ、貫通孔や凹部からの印刷材の抜け性に優れた印刷版を製造することができる。更には、一般に、同じ厚みであれば金属よりも可撓性に優れるプラスチックからなる基材を用いることで、印刷時における被印刷体との密着性に優れた印刷版を製造することができる。
【0016】
また特に、請求項4の印刷版製造方法においては、フェムト秒レーザー光の斜め照射により、貫通孔や凹部の内壁にテーパーを設けて、貫通孔内や凹部内からの印刷材の抜け性を向上させることができる。
【0017】
また特に、請求項6の印刷版製造装置においては、視認可能なフェムト秒レーザー光を、加工に用いる他に、光軸合わせ操作時の光路ガイド光としても用いることができる。よって、視認不能な加工用のフェムト秒レーザー光を発生させるための光源の他に、視認可能な光路ガイド光を発生させるための光源を別に搭載する必要がなくなり、その分のコストを抑えることができる。
【0018】
また特に、請求項7の印刷版製造装置においては、冷凍固定手段によって支持台面に密着せしめた基材に対してレーザー加工を行う。このことにより、支持台面から浮かした基材を微妙に撓ませるといった事態がなくなり、その撓みによる加工精度の悪化を回避することができる。更には、支持台面から浮かしていない基材に対して貫通孔をレーザー加工しても、支持台面と基材との間に氷を介在させており、基材を透過したフェムト秒レーザー光の反射をこの氷によって阻止することができる。このため、基材を支持台面から浮かしてレーザー加工を行う場合と同様に、支持台面でのレーザー反射によるエッジ欠けを回避することもできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、印刷版製造装置に適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷版製造装置の概略構成図である。この印刷版製造装置は、フェムト秒レーザー装置1、XYテーブル2、メインコントローラ3などを備えている。メインコントローラ3は、印刷版製造装置の全体の制御を司るものであり、フェムト秒レーザー装置1や後述のテーブルコントローラ22等に電気的に接続されている。
【0020】
上記XYテーブル2は、金属板等からなる基材101と、これのレーザー照射面とは反対側の面(以下、裏面という)の縁に固定された枠体102とからなるワーク100を、ワーク保持台21上に保持する。具体的には、図示しないクリップ機構によってワーク100の枠体102をクリップすることで、ワーク保持台21上にワーク100を保持するようになっている。ワーク保持台21上に保持されたワーク100は、枠体102が基材101の裏面から大きく出っ張っていることから、基材101とワーク保持台21の表面とに所定の間隙Gが確保されている。ワーク保持台21は、X−Y方向に移動することで、後述のフェムト秒レーザー装置1から発せられるフェムト秒レーザー光fLの基材101に対する照射ポイントを変化させる。このワーク保持台21の移動は、XYテーブル2のテーブルコントローラ22によって制御される。
【0021】
上記フェムト秒レーザー装置1は、レーザー発信器10と、加工ヘッド11とを有している。レーザー発振器10は、可視領域の波長のフェムト秒レーザー光fLを発振する。発振されたフェムト秒レーザー光fLは、図示しないアパーチャ、落射ミラー、集光レンズなどを有する加工ヘッド11を経て、ワーク100の基材に照射される。フェムト秒レーザー光fLは、1ピコ秒以下のパルス放射時間で出力されるレーザーであり、例えば、レーザー光波長775[nm]、パルス放射時間150[フェムト秒]以下、最大エネルギー800[μJ/パルス]のものである。これによれば、放射光のエネルギー密度が発振パルスにおいて数ギガワットのレベルに達し、時間的エネルギー密度が飛躍的に高まるため、複数の光子が同時に吸収される多光子吸収過程が起こる。そして、遠紫外線等のフォトンエネルギーが大きい光子でしか吸収が起こらなかった材料に対しても、複数光子の同時吸収といった形態でエネルギーを吸収せしめ、アブレーション現象を生起させることができる。また、レーザー照射時間が非常に短いため、レーザー光が熱エネルギーとして被加工物内を拡散する前に、昇華アブレーション加工プロセスが終了する。また、フェムト秒レーザー光fLが可視領域の波長であり容易に視認されるため、加工用の他に、光軸合わせ時の光路ガイド光として兼用可能になる。
【0022】
図2は、XYテーブル2の要部を示す側面図である。同図において、XYテーブル2は、図示しない加工ヘッド(図1の11)に対して、ワーク100が保持されたワーク保持台21をX軸方向(図中奥行き方向)及びY軸方向(図中左右方向)に相対移動させる。具体的には、ワーク保持台21の下面には、図中奥行き方向に延在するX溝が形成された脚23が2つ固定されている。また、ワーク保持台21の図中下方には、Y軸移動台24が配設されている。このY軸移動台24の上面には、図中奥行き方向に延在するXガイドレール25が2つ固定されている。ワーク保持台21は、その下面に固定された2つの脚23のX溝を、それぞれXガイドレール25に係合させるようにレール上に載置されることで、Y軸移動台24に支持される。ワーク保持台21とY軸移動台24との間には、リニアモータ26が設けられている。このリニアモータ26は、ワーク保持台21の下面に固定された下面電極部26aと、これに対向するようにY軸移動台24の上面に固定された上面電極部26bとを有している。これら電極部が励磁されると、図中X軸方向に向かう静電力がワーク保持台21に作用する。これにより、ワーク保持台21がXガイドレール25に沿ってX軸方向に移動する。Y軸移動台24は、図示しない支持部上に支持されており、ワーク保持台21をX軸方向に移動させるのと同様の機構により、支持部上でY軸方向に移動するようになっている。
【0023】
X軸移動台24の上面には、それぞれ図中X軸方向に延在するメイン凸部27a、サブ凸部27bが設けられている。メイン凸部27aの側面、サブ凸部27bの側面には、それぞれメインリニアスケール28a、サブリニアスケール28bが固定されている。これらスケールは、X軸方向に刻まれた目盛り図示しない目盛りを有している。一方、ワーク保持台21の下面には、メイン位置検出センサ29aと、サブ位置検出センサ29bとが、それぞれメインリニアスケール28a、サブリニアスケール28bの目盛りを読み取ることができるように固定されている。これら位置検出センサとしては、例えば反射型フォトセンサを用いることができる。メイン位置検出センサ29aは、メインリニアスケール28aの目盛りによって得られたON/OFF信号を、テーブルコントローラ22に出力する。テーブルコントローラ22は、この信号に基づいてリニアモータ26に対する励磁を制御し、フェムト秒レーザ光fLに対してワーク100をX軸方向に相対移動させる。また、サブ位置検出センサ29bはサブリニアスケール28bの目盛りによって得られたON/OFF信号をテーブルコントローラ22及びメインコントローラ(図1の3)に出力する。メインコントローラはこの信号に基づいてフェムト秒レーザ発振器(図1の10)を制御して、フェムト秒レーザを照射する。なお、本印刷版製造装置では、Y軸方向については、メイン位置検出センサとメインリニアスケールとを対向させて配設しているが、サブ位置検出センサとサブリニアスケールとは設けていない。
【0024】
メイン位置検出センサ29aとしては分解能1[μm]のものが使用されており、メインリニアスケール28aとしては目盛り間隔0.17[mm]のものが使用されている。一方、サブ位置検出センサ29bとしては分解能0.1[μm]のものが使用されており、サブリニアスケール28bとしては幅0.5[μm]の目盛りを0.17[mm]間隔で備えるものが使用されている。これらリニアスケールとしては、例えば株式会社レニショー社製のものを用いることができる。メイン位置検出センサ29aからON信号が発生した直後にサブ位置検出センサ28bから発せられるON信号が、フェムト秒レーザー光fLのショット開始信号として用いられる。そして、サブ位置検出センサ28bから発せられる次のON信号がフェムト秒レーザー光fLのショット停止信号として用いられる。
【0025】
図3は加工ヘッド11の断面を、周辺構成とともに示す図である。加工ヘッド11は、ウエッジ光学基板70と、これを保持するホルダ71と、集光レンズ72と、ステッピングモータ73等からなる回転駆動手段とを備えている。
【0026】
上記ウエッジ光学基板70は、基板の表裏両面が平面であって、基板裏面(出射面)70bに微小なウエッジ角を有する光学基板である。このウエッジ光学基板70のおもて面(レーザー入射面)70aに対して垂直に入射したフェムト秒レーザー光fLは、微小角度で屈折して裏面70bから出射する。上記ホルダ71は円筒形状をなしており、ウエッジ光学基板70のおもて面70aをレーザー光軸に対して垂直になるように支持する。また、一対のボールベアリング76a,76bによって加工ヘッド11のケース77に回動可能に支持されている。なお、上記集光レンズ72はフェムト秒レーザー光fLをワーク100上に集光させて結像させるものである。
【0027】
上記ケース77には、ウエッジ光学基板70への入射光軸と同軸でウエッジ光学基板70を回転させる基板回転手段が固定されている。この基板回転手段は、ステッピングモータ73、モータドライバ78、パルスコントローラ79、ステッピングモータ73の駆動力をウエッジ光学基板70に伝達する駆動ギヤ74、これに従動する従動ギヤ75などを備えている。また、ステッピングモータ73は、モータ本体73a、減速器であるギヤヘッド73b、図示しない駆動ロータの回転位置を検出するエンコーダ73cなどを有している。モータ本体73aとしては、例えば5相励磁で基本ステップ角0.72[°]のものを用いることができる。モータ本体73aの回転は、ギヤヘッド73bにより減速されて駆動ギヤ74に伝達される。この伝達によって回転する駆動ギヤ74は、上記ホルダ71に支持される従動ギヤ75と噛み合っており、ホルダ71に保持されたウエッジ光学基板70を回転させる。駆動ギヤ74と従動ギヤ75との組合せとしては、駆動力の滑らか且つ静粛な伝達が可能なハス歯ギヤを用いることが望ましい。なお、モータドライバ78はモータ本体73a内部の巻線へ電流を流すための制御回路である。また、パルスコントローラ79はステッピングモータ73の回転数を制御するためのパルス信号を出力する回路である。
【0028】
ウエッジ光学基板70を上記回転駆動手段によって回転させることにより、基材101に対するフェムト秒レーザー光fLの入射角度を自由に調整しながら、版パターン用の貫通孔や凹部を加工することができる。
【0029】
図4は、従来のエキシマレーザー装置による版パターンの形成を説明するための断面図である。同図では、複数の貫通孔からなる版パターンを形成して、印刷版として孔版を製造する場合の例を示している。エキシマレーザー装置のワーク支持台21には、複数の吸引口21aが設けられている。プラスチック板からなる基材101は、この吸引口21aを通じて吸引されることで、ワーク支持台21の表面に密着せしめられている。基材101に対し、版パターン用の貫通孔とほぼ同じ径のエキシマレーザー光eLが照射されることで、貫通孔が一気に打ち抜かれるようにアブレーション加工される(一括面積加工)。この際、基材101がワーク支持台21に密着せしめられていることで、薄膜残りのない貫通孔が得られる。
【0030】
図5は、エキシマレーザー光eLの照射によって貫通孔Hが形成された基材101を示す断面図である。基材101のレーザー照射面側においては、貫通孔Hの周囲にダメージDが生じている。これは、貫通孔H内から噴出したアブレーションガスが孔周囲にカーボンを付着させたり熱を与えたりすることで生じたものである。一方、基材101のレーザー照射面とは反対側においては、貫通孔Hのエッジ欠けLsが発生している。これは、基材101に密着したワーク支持台(図4の21)の表面からのエキシマレーザー光の照り返しによって生じたものである。そこで、従来においては、これらダメージDやエッジ欠けLsを解消すべく、基材101の両面にラミネートフィルムを貼付していたのである。
【0031】
図6は、本印刷版製造装置による版パターンの形成を説明するための断面図である。同図においても、複数の貫通孔からなる版パターンを形成して、印刷版として孔版を製造する場合の例を示している。本印刷版製造装置においては、貫通孔Hを一気に打ち抜いてアブレーション加工するのではなく、エキシマレーザーよりも遙かに小径のフェムト秒レーザー光fLによって孔輪郭を切り抜くようにアブレーション加工する(輪郭加工)。この際、上述の基板回転手段によってウエッジ光学基板を微妙に回転させながらワーク(基材101)をX−Y移動させることで、その移動にかかわらず、基材101に対するレーザー入射角を貫通孔Hの中心に向かって下広がりとなる角度にすることができる。そして、図7に示すように、内壁にテーパーのある摺り鉢状の貫通孔Hを切り抜き加工することができる。このような切り抜き加工では、基材101とワーク支持台21とを密着させていなくても、薄膜残りを生ずることがない。このため、薄膜残りのために両者を密着させる必要がなくなって吸引手段が不要となる。また、両者を密着させないことにより、ワーク支持台21上でのレーザー照り返しによるエッジ欠けを抑えることができる。また、アブレーション加工であるため、十分な内壁平滑性の貫通孔Hを得ることができる。また、貫通孔Hの内壁にテーパーを設けることにより、貫通孔Hからの印刷材の抜け性を向上させることもできる。また、基材101の両面に貼り付けたラミネートフィルムの加工屑によって貫通孔Hを目詰まりさせることもない。更には、基材101として、金属板を用いれば、摩擦帯電によって被印刷体に悪影響を及ぼすといった事態を生ずることのない孔版を製造することも可能である。
【0032】
次に、実施形態に係る印刷版製造装置の変形例装置について説明する。なお、この変形例装置における基本的な構成については、実施形態に係る印刷版製造装置と同様であるので、説明を省略する。
本変形例装置では、ワーク100として、図1に示した基材101と、この縁に固定された枠体102とを有するものを用いるのではなく、基材101だけならなるものを用いる。そして、この基材101を図示しない凍結チャックによってワーク保持台21面に固定するようになっている。この凍結チャックは、基材101をワーク保持台21に保持し、加工中に位置がズレないようにする役割を果たすものである。基材101を凍結させて保持することにより、基材101の裏面と、ワーク保持台21表面との間に氷の層が形成される。そして、この氷の層、基材101と氷の層との界面、及び氷の層とワーク保持台21表面との界面が、基材101を貫通したファムト秒レーザ光の保持台面での照り返しを阻止することができる。従って、ワーク保持台21面から浮かしていない基材101に対してレーザー加工を行っても、上記照り返しによるエッジ欠けを回避することができる。しかも、氷を介して基材101をワーク保持台21面に密着させることで、ワーク保持台21面面から浮かした基材101を微妙に撓ませるといった事態がなくなり、その撓みによる加工精度の悪化を回避することもできる。
【0033】
かかる凍結チャックとしては、例えばエミネントサプライ社製の凍結チャックを用いることができる。この凍結チャックは、水が凍るときの固着力を利用して基材101をワーク保持台21面に固定するものである。大気中の水分を用いて固着させることができるが、基材101に少量の水をかけることでより確実に固着させることができる。また、基材101を凍結させて固定することで、例えば20℃程度の室温でメカニカルクランプを用いて基材101を固定する場合に比べ、基材101の体積が縮小する。この縮小により、例えば基材101に室温状態でφ30μmの孔や凹部を形成したい場合に、−20℃程度で凍結固定して体積を縮小した状態にすることで、より小径のレーザスポットでのフェムト秒レーザー加工を行うことができる。そして、単位面積当たりのレーザー出力を向上させることができる。また、マシンバイス等のメカニカルクランプでチャッキングする場合に生じる基材101の歪みによる精度低下を防ぐことができる。更に、レーザー加工後に基材101を室温に戻すことで、凍結時に比べ体積を膨張させて、加工時よりも大径の孔や凹部を得ることができる。
【0034】
【発明の効果】
請求項1乃至5の発明によれば、上述した(1)乃至(3)の事項を何れも実現することができるという優れた効果がある。
特に、請求項2の発明によれば、摩擦帯電によって被印刷体に悪影響を及ぼすといった事態を生ずることのない印刷版を製造することができるという優れた効果がある。
また特に、請求項3の発明によれば、金属からなる基材を用いる場合に比べ、貫通孔や凹部からの印刷材の抜け性に優れた印刷版を製造することができるという優れた効果がある。更には、金属からなる基材を用いる場合に比べ、印刷時における被印刷体との密着性に優れた印刷版を製造することができるという優れた効果もある。
また特に、請求項4の発明によれば、内壁のテーパーによって貫通孔内や凹部内からの印刷材の抜け性を向上せしめた印刷版を製造することができるという優れた効果がある。
また特に、請求項5、6又は7の発明によれば、基材を加工テーブル等の支持台に吸引密着させるための吸引手段を付設することによるコストアップを回避することができるという優れた効果がある。
また特に、請求項6の発明によれば、視認不能な加工用のフェムト秒レーザー光を発生させるための光源の他に、視認可能な光路ガイド光を発生させるための光源を別に搭載する必要がなくなり、その分のコストを抑えることができるという優れた効果がある。
また特に、請求項7の発明によれば、支持台面から浮かした基材を微妙に撓ませるといった事態がなくなり、その撓みによる加工精度の悪化を回避することができるという優れた効果がある。更には、氷を介して基材を支持台面に密着させていても、基材を支持台面から浮かしてレーザー加工を行う場合と同様に、支持台面でのレーザー反射によるエッジ欠けを回避することができるという優れた効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る印刷版製造装置の概略構成図。
【図2】同印刷版製造装置のXYテーブルの要部を示す側面図。
【図3】同XYテーブルの要部を示す側面図。
【図4】従来のエキシマレーザー装置による版パターンの形成を説明するための断面図。
【図5】同エキシマレーザー装置によって貫通孔が形成された基材を示す断面図。
【図6】同印刷版製造装置による版パターンの形成を説明するための断面図。
【図7】同印刷版製造装置によって貫通孔が形成された基材を示す断面図。
【符号の説明】
1 フェムト秒レーザー装置
2 XYテーブル
3 メインコントローラ
101 基材
H 貫通孔
fL フェムト秒レーザー光
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板やプラスチック板等の基材に対してレーザー加工処理による版パターンを形成して、孔版や凹版等の印刷版を製造する印刷版製造方法及び印刷版製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、印刷版を用いて、インク、接着材、クリームはんだ、樹脂などの印刷材からなる印刷パターンを被印刷体に印刷する印刷方法が知られている。例えば、製本の分野では、印刷版を用いてインクからなる写真画像パターンや文字画像パターンを紙に印刷する印刷方法が広く用いられている。また例えば、電子回路の分野では、印刷版を用いてクリームはんだからなる微細電極パターンを回路基板に印刷する印刷方法が用いられている。
【0003】
印刷パターンに対応する版パターンが形成された印刷版を製造する印刷版製造方法の1つとして、複数の貫通孔や凹部からなる版パターンをYAGレーザー加工によって金属板等の基材に形成するものがある。しかしながら、YAGレーザー加工による版パターンでは、画像の更なる高解像度化や電子回路の更なる小型化という近年の要求に応えることが困難になってきた。YAGレーザー加工では、かかる要求に応え得るような例えば数〜数十[μm]といった微細な貫通孔や凹部において十分な内壁平滑性が得られず、貫通孔からの印刷材の抜け性が不足して印刷不良となってしまうからである
【0004】
他の印刷版製造方法として、フォトリソグラフィー法によって版パターンを形成するものも知られている。この方法によれば、上述のような微細な貫通孔や凹部でも、十分な内壁平滑性を得ることができる。しかしながら、YAGレーザー加工による方法に比して廃材が多く発生する、オンデマンド型の生産要求に対応に難いなどといった不具合がある。現像液やエッチング液が廃材として発生したり、版パターンに応じて異なった遮光パターンのフォトマスクを用意する必要があったりするからである。
【0005】
そこで、特許文献1や特許文献2に記載の印刷版が提案されるに至った。これら印刷版では、基材としてプラスチック板が用いられている。そして、その版パターンは、エキシマレーザーの照射によってプラスチック材をアブレーション加工した複数の貫通孔や凹部からなる。かかる印刷版は、フォトリソグラフィー法によらずに版パターンが形成されるので、フォトリソグラフィー法による上述の不具合を何れも解消することができる。しかも、アブレーション現象は基本的に熱伝導よりも高速に起こるため、YAGレーザー加工の場合のように貫通孔や凹部の内壁を熱溶融によって変形させるといった事態を生じない。よって、上述のような微細な貫通孔や凹部でも十分な内壁平滑性を得ることができる。
【0006】
しかしながら、これらの印刷版では、貫通孔や凹部のアブレーション加工の際に、貫通孔内や凹部内で発生させた多量のアブレーションガスがエキシマレーザー照射面側に一気に噴出する。そして、貫通孔や凹部の周囲にカーボンの付着や熱によるダメージを発生させてしまう。このため、プラスチック板のエキシマレーザー照射面に、高分子フィルムからなるラミネートフィルムを貼付してから、貫通孔や凹部をアブレーション加工することが望ましい。このようにすれば、ダメージをプラスチック板ではなくラミネートフィルムに発生させるので、そのラミネートフィルムを剥離することで、ダメージのない印刷版を得ることができるからである。
【0007】
上述のダメージは孔版と凹版とに共通して生ずる現象であるが、孔版だけに生ずる薄膜残りやエッジ欠けという現象があることもわかっている。具体的には、孔版の貫通孔をエキシマレーザーの照射によってアブレーション加工する際、プラスチック板を加工テーブルに密着させていないと、貫通孔の下端にプラスチックの薄膜が部分的に残されることがある(薄膜残り)。プラスチック板と加工テーブルとを密着させてアブレーション加工すれば薄膜残りを解消し得るのであるが、そうすると、今度は加工テーブル面からのレーザー照り返しによって貫通孔の下側エッジを欠損させることがある(エッジ欠け)。エキシマレーザーによってアブレーション加工される貫通孔の内壁テーパーが上広がりになる。このような上広がりの貫通孔に対して印刷材を上側から充填すると、孔下方への印刷材のすり抜けが困難になる。よって、孔版は印刷の際に上下反転され、貫通孔を下広がりにした状態で使用される。このとき、上述のエッジ欠けが生じている貫通孔では、版面に刷り込まれた印刷材のエッジによる掻き取り効果が十分に得られないことから、印刷材の充填不足が発生してしまう。
【0008】
そこで、本出願人は、特許文献3に記載の印刷版製造方法を提案した。この印刷版製造方法は、プラスチック板のエキシマレーザー照射面とは反対側の面に、高分子フィルムからなるラミネートフィルムを貼付してから複数の貫通孔を形成し、その後にラミネートフィルムを剥離するものである。かかる方法において、薄膜残りを解消すべくプラスチック板と加工テーブルとを密着させると、プラスチック板ではなく、ラミネートフィルムにエッジ欠けを発生させることになる。このため、フィルム剥離後には、薄膜残りもエッジ欠けもない孔版を得ることができる。
【0009】
従って、エキシマレーザーの照射によるアブレーション加工では、凹版であれば、プラスチック板として、レーザー照射面にラミネートフィルムを貼付したものを用いることが望ましい。また、孔版であれば、プラスチック板として、レーザー照射面に加えて、その反対面にもラミネートフィルムを貼付したものを用いることが望ましい。
【特許文献1】
特許第3279761号公報
【特許文献2】
特開平10−291293号公報
【特許文献3】
特許第3271885号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このようにして印刷版を製造すると、ラミネートフィルムの材料費や、フィルムを貼付・剥離する工程の追加によってコスト高になってしまう。また、ラミネートフィルムの加工屑によって貫通孔や凹部に目詰まりを引き起こすおそれもある。
【0011】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、次に列記する事項を何れも実現することができる印刷版製造方法及び印刷版製造装置を提供することである。
(1)フォトリソグラフィー法のように現像液やエッチング液を発生させたり、オンデマンド型の生産要求への対応を困難にしたりといった事態を生ずることなく、版パターンを形成することができる。
(2)微細な貫通孔や凹部でも十分な内壁平滑性を得る。
(3)孔版と凹版とに共通して生ずる上述のダメージや、孔版に生ずる薄膜残り及びエッジ欠けを抑えつつ、プラスチック板等の基材にラミネートフィルムを貼付することによるコストアップや目詰まりを解消する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、基材に対してレーザー加工による複数の貫通孔や凹部からなる版パターンを形成して印刷版を製造する印刷版製造方法において、上記レーザー加工処理として、フェムト秒レーザー加工処理を用いることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の印刷版製造方法において、上記基材として、金属からなるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の印刷版製造方法において、上記基材として、プラスチックからなるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2又は3の印刷版製造方法において、上記基材面に対してフェムト秒レーザー光を斜めに照射して上記貫通孔又は凹部を加工することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、基材に対してレーザー加工による複数の貫通孔や凹部からなる版パターンを形成して印刷版を製造する印刷版製造装置において、レーザー光として、フェムト秒レーザー光を用いることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の印刷版製造装置において、上記フェムト秒レーザー光として、可視領域の波長のものを用いることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項5又は6の印刷版製造装置において、レーザー加工される上記基材を支持する支持台と、上記基材との間を氷によって架橋して、上記基材を該支持台に固定する冷凍固定手段を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
これらの発明においては、フォトリソグラフィー法によらずに、フェムト秒レーザーの照射によって複数の貫通孔や凹部を加工する。このため、フォトリソグラフィー法のように、現像液やエッチング液を発生させたり、オンデマンド型の生産要求への対応を困難にしたりといった事態を生ずることなく、版パターンを形成することができる。
また、貫通孔や凹部を、面照射ではなく点照射でアブレーション加工することが可能である。具体的には、近年においては、エキシマレーザーの代わりにフェムト秒レーザーを用いてもアブレーション加工が可能で、しかも、プラスチック材はもとより、金属材も加工し得ることがわかってきた。よって、微細な貫通孔や凹部であっても、アブレーション加工によって十分な内壁平滑性を得ることができる。
また、エキシマレーザーよりも小さなスポット径のファムト秒レーザーの照射による加工を行うことができる。このため、例えば貫通孔であれば、エキシマレーザーの場合のように孔全体を一気に打ち抜くのではなく、孔を輪郭抜きすることができる。糸ノコギリで円を切り抜くような要領で、小径のレーザースポットをプラスチック板等の表面上で円軌道させて貫通孔を輪郭抜きするのである。また、凹部であれば、小さな彫刻刀で大きな窪みを少しずつ掘り進んでいくような要領で、凹部を径方向に徐々に掘削していくことができる。このようにして貫通孔を輪郭抜きしたり凹部を径方向に徐々に掘削したりすることで、アブレーションガスの噴出を抑えることができる。すると、基材にラミネートフィルムを貼付しなくても貫通孔や凹部の周囲のダメージを抑えることが可能になるため、ラミネートフィルムの加工屑によって貫通孔や凹部を目詰まりさせるといった事態もなくなる。
また、貫通孔を輪郭抜きすれば、輪郭の内側部分を基材から確実に切り離すことが可能になるため、基材と加工テーブルとを密着させていなくても薄膜残りを解消することができる。よって、基材を支持台の表面から大きく離間させた状態で貫通孔を加工して、支持台から孔周囲へのレーザー照り返しによるエッジ欠けの発生を抑えることもできる。
更には、基材を加工テーブル等の支持台に吸引密着させるための吸引手段を付設して、貫通孔に生ずる薄膜残りを解消するといった対策が不要になる。よって、吸引手段を付設することによるコストアップを回避することも可能になる。
これらの結果、上述した(1)乃至(3)の事項を何れも実現することができる。
【0014】
特に、請求項2の印刷版製造方法においては、摩擦帯電によって被印刷体に悪影響を及ぼすといった事態を生ずることのない印刷版を製造することができる。具体的には、基材としてプラスチック板のような絶縁材が用いられた印刷版では、印刷時において、スキージ等の印刷材刷り付け部材との摩擦によって帯電することがある。繰り返しの摩擦によって帯電電位が徐々に上昇してくると、やがて電流が被印刷体に流れ込んで悪影響を及ぼしてしまう。一方、請求項2の発明によって製造された印刷版は、基材が金属からなるため、印刷材刷り付け部材との摩擦に伴って帯電するようなことがない。このため、摩擦帯電によって被印刷体に悪影響を及ぼすといった事態を生ずることがないのである。
【0015】
また特に、請求項3の印刷版製造方法においては、基材として、一般に、レーザー加工による貫通孔や凹部がレーザー加工に伴う変性によって撥液性を帯びるプラスチックからなるものを用いる。このため、金属からなる基材を用いる場合に比べ、貫通孔や凹部からの印刷材の抜け性に優れた印刷版を製造することができる。更には、一般に、同じ厚みであれば金属よりも可撓性に優れるプラスチックからなる基材を用いることで、印刷時における被印刷体との密着性に優れた印刷版を製造することができる。
【0016】
また特に、請求項4の印刷版製造方法においては、フェムト秒レーザー光の斜め照射により、貫通孔や凹部の内壁にテーパーを設けて、貫通孔内や凹部内からの印刷材の抜け性を向上させることができる。
【0017】
また特に、請求項6の印刷版製造装置においては、視認可能なフェムト秒レーザー光を、加工に用いる他に、光軸合わせ操作時の光路ガイド光としても用いることができる。よって、視認不能な加工用のフェムト秒レーザー光を発生させるための光源の他に、視認可能な光路ガイド光を発生させるための光源を別に搭載する必要がなくなり、その分のコストを抑えることができる。
【0018】
また特に、請求項7の印刷版製造装置においては、冷凍固定手段によって支持台面に密着せしめた基材に対してレーザー加工を行う。このことにより、支持台面から浮かした基材を微妙に撓ませるといった事態がなくなり、その撓みによる加工精度の悪化を回避することができる。更には、支持台面から浮かしていない基材に対して貫通孔をレーザー加工しても、支持台面と基材との間に氷を介在させており、基材を透過したフェムト秒レーザー光の反射をこの氷によって阻止することができる。このため、基材を支持台面から浮かしてレーザー加工を行う場合と同様に、支持台面でのレーザー反射によるエッジ欠けを回避することもできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、印刷版製造装置に適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷版製造装置の概略構成図である。この印刷版製造装置は、フェムト秒レーザー装置1、XYテーブル2、メインコントローラ3などを備えている。メインコントローラ3は、印刷版製造装置の全体の制御を司るものであり、フェムト秒レーザー装置1や後述のテーブルコントローラ22等に電気的に接続されている。
【0020】
上記XYテーブル2は、金属板等からなる基材101と、これのレーザー照射面とは反対側の面(以下、裏面という)の縁に固定された枠体102とからなるワーク100を、ワーク保持台21上に保持する。具体的には、図示しないクリップ機構によってワーク100の枠体102をクリップすることで、ワーク保持台21上にワーク100を保持するようになっている。ワーク保持台21上に保持されたワーク100は、枠体102が基材101の裏面から大きく出っ張っていることから、基材101とワーク保持台21の表面とに所定の間隙Gが確保されている。ワーク保持台21は、X−Y方向に移動することで、後述のフェムト秒レーザー装置1から発せられるフェムト秒レーザー光fLの基材101に対する照射ポイントを変化させる。このワーク保持台21の移動は、XYテーブル2のテーブルコントローラ22によって制御される。
【0021】
上記フェムト秒レーザー装置1は、レーザー発信器10と、加工ヘッド11とを有している。レーザー発振器10は、可視領域の波長のフェムト秒レーザー光fLを発振する。発振されたフェムト秒レーザー光fLは、図示しないアパーチャ、落射ミラー、集光レンズなどを有する加工ヘッド11を経て、ワーク100の基材に照射される。フェムト秒レーザー光fLは、1ピコ秒以下のパルス放射時間で出力されるレーザーであり、例えば、レーザー光波長775[nm]、パルス放射時間150[フェムト秒]以下、最大エネルギー800[μJ/パルス]のものである。これによれば、放射光のエネルギー密度が発振パルスにおいて数ギガワットのレベルに達し、時間的エネルギー密度が飛躍的に高まるため、複数の光子が同時に吸収される多光子吸収過程が起こる。そして、遠紫外線等のフォトンエネルギーが大きい光子でしか吸収が起こらなかった材料に対しても、複数光子の同時吸収といった形態でエネルギーを吸収せしめ、アブレーション現象を生起させることができる。また、レーザー照射時間が非常に短いため、レーザー光が熱エネルギーとして被加工物内を拡散する前に、昇華アブレーション加工プロセスが終了する。また、フェムト秒レーザー光fLが可視領域の波長であり容易に視認されるため、加工用の他に、光軸合わせ時の光路ガイド光として兼用可能になる。
【0022】
図2は、XYテーブル2の要部を示す側面図である。同図において、XYテーブル2は、図示しない加工ヘッド(図1の11)に対して、ワーク100が保持されたワーク保持台21をX軸方向(図中奥行き方向)及びY軸方向(図中左右方向)に相対移動させる。具体的には、ワーク保持台21の下面には、図中奥行き方向に延在するX溝が形成された脚23が2つ固定されている。また、ワーク保持台21の図中下方には、Y軸移動台24が配設されている。このY軸移動台24の上面には、図中奥行き方向に延在するXガイドレール25が2つ固定されている。ワーク保持台21は、その下面に固定された2つの脚23のX溝を、それぞれXガイドレール25に係合させるようにレール上に載置されることで、Y軸移動台24に支持される。ワーク保持台21とY軸移動台24との間には、リニアモータ26が設けられている。このリニアモータ26は、ワーク保持台21の下面に固定された下面電極部26aと、これに対向するようにY軸移動台24の上面に固定された上面電極部26bとを有している。これら電極部が励磁されると、図中X軸方向に向かう静電力がワーク保持台21に作用する。これにより、ワーク保持台21がXガイドレール25に沿ってX軸方向に移動する。Y軸移動台24は、図示しない支持部上に支持されており、ワーク保持台21をX軸方向に移動させるのと同様の機構により、支持部上でY軸方向に移動するようになっている。
【0023】
X軸移動台24の上面には、それぞれ図中X軸方向に延在するメイン凸部27a、サブ凸部27bが設けられている。メイン凸部27aの側面、サブ凸部27bの側面には、それぞれメインリニアスケール28a、サブリニアスケール28bが固定されている。これらスケールは、X軸方向に刻まれた目盛り図示しない目盛りを有している。一方、ワーク保持台21の下面には、メイン位置検出センサ29aと、サブ位置検出センサ29bとが、それぞれメインリニアスケール28a、サブリニアスケール28bの目盛りを読み取ることができるように固定されている。これら位置検出センサとしては、例えば反射型フォトセンサを用いることができる。メイン位置検出センサ29aは、メインリニアスケール28aの目盛りによって得られたON/OFF信号を、テーブルコントローラ22に出力する。テーブルコントローラ22は、この信号に基づいてリニアモータ26に対する励磁を制御し、フェムト秒レーザ光fLに対してワーク100をX軸方向に相対移動させる。また、サブ位置検出センサ29bはサブリニアスケール28bの目盛りによって得られたON/OFF信号をテーブルコントローラ22及びメインコントローラ(図1の3)に出力する。メインコントローラはこの信号に基づいてフェムト秒レーザ発振器(図1の10)を制御して、フェムト秒レーザを照射する。なお、本印刷版製造装置では、Y軸方向については、メイン位置検出センサとメインリニアスケールとを対向させて配設しているが、サブ位置検出センサとサブリニアスケールとは設けていない。
【0024】
メイン位置検出センサ29aとしては分解能1[μm]のものが使用されており、メインリニアスケール28aとしては目盛り間隔0.17[mm]のものが使用されている。一方、サブ位置検出センサ29bとしては分解能0.1[μm]のものが使用されており、サブリニアスケール28bとしては幅0.5[μm]の目盛りを0.17[mm]間隔で備えるものが使用されている。これらリニアスケールとしては、例えば株式会社レニショー社製のものを用いることができる。メイン位置検出センサ29aからON信号が発生した直後にサブ位置検出センサ28bから発せられるON信号が、フェムト秒レーザー光fLのショット開始信号として用いられる。そして、サブ位置検出センサ28bから発せられる次のON信号がフェムト秒レーザー光fLのショット停止信号として用いられる。
【0025】
図3は加工ヘッド11の断面を、周辺構成とともに示す図である。加工ヘッド11は、ウエッジ光学基板70と、これを保持するホルダ71と、集光レンズ72と、ステッピングモータ73等からなる回転駆動手段とを備えている。
【0026】
上記ウエッジ光学基板70は、基板の表裏両面が平面であって、基板裏面(出射面)70bに微小なウエッジ角を有する光学基板である。このウエッジ光学基板70のおもて面(レーザー入射面)70aに対して垂直に入射したフェムト秒レーザー光fLは、微小角度で屈折して裏面70bから出射する。上記ホルダ71は円筒形状をなしており、ウエッジ光学基板70のおもて面70aをレーザー光軸に対して垂直になるように支持する。また、一対のボールベアリング76a,76bによって加工ヘッド11のケース77に回動可能に支持されている。なお、上記集光レンズ72はフェムト秒レーザー光fLをワーク100上に集光させて結像させるものである。
【0027】
上記ケース77には、ウエッジ光学基板70への入射光軸と同軸でウエッジ光学基板70を回転させる基板回転手段が固定されている。この基板回転手段は、ステッピングモータ73、モータドライバ78、パルスコントローラ79、ステッピングモータ73の駆動力をウエッジ光学基板70に伝達する駆動ギヤ74、これに従動する従動ギヤ75などを備えている。また、ステッピングモータ73は、モータ本体73a、減速器であるギヤヘッド73b、図示しない駆動ロータの回転位置を検出するエンコーダ73cなどを有している。モータ本体73aとしては、例えば5相励磁で基本ステップ角0.72[°]のものを用いることができる。モータ本体73aの回転は、ギヤヘッド73bにより減速されて駆動ギヤ74に伝達される。この伝達によって回転する駆動ギヤ74は、上記ホルダ71に支持される従動ギヤ75と噛み合っており、ホルダ71に保持されたウエッジ光学基板70を回転させる。駆動ギヤ74と従動ギヤ75との組合せとしては、駆動力の滑らか且つ静粛な伝達が可能なハス歯ギヤを用いることが望ましい。なお、モータドライバ78はモータ本体73a内部の巻線へ電流を流すための制御回路である。また、パルスコントローラ79はステッピングモータ73の回転数を制御するためのパルス信号を出力する回路である。
【0028】
ウエッジ光学基板70を上記回転駆動手段によって回転させることにより、基材101に対するフェムト秒レーザー光fLの入射角度を自由に調整しながら、版パターン用の貫通孔や凹部を加工することができる。
【0029】
図4は、従来のエキシマレーザー装置による版パターンの形成を説明するための断面図である。同図では、複数の貫通孔からなる版パターンを形成して、印刷版として孔版を製造する場合の例を示している。エキシマレーザー装置のワーク支持台21には、複数の吸引口21aが設けられている。プラスチック板からなる基材101は、この吸引口21aを通じて吸引されることで、ワーク支持台21の表面に密着せしめられている。基材101に対し、版パターン用の貫通孔とほぼ同じ径のエキシマレーザー光eLが照射されることで、貫通孔が一気に打ち抜かれるようにアブレーション加工される(一括面積加工)。この際、基材101がワーク支持台21に密着せしめられていることで、薄膜残りのない貫通孔が得られる。
【0030】
図5は、エキシマレーザー光eLの照射によって貫通孔Hが形成された基材101を示す断面図である。基材101のレーザー照射面側においては、貫通孔Hの周囲にダメージDが生じている。これは、貫通孔H内から噴出したアブレーションガスが孔周囲にカーボンを付着させたり熱を与えたりすることで生じたものである。一方、基材101のレーザー照射面とは反対側においては、貫通孔Hのエッジ欠けLsが発生している。これは、基材101に密着したワーク支持台(図4の21)の表面からのエキシマレーザー光の照り返しによって生じたものである。そこで、従来においては、これらダメージDやエッジ欠けLsを解消すべく、基材101の両面にラミネートフィルムを貼付していたのである。
【0031】
図6は、本印刷版製造装置による版パターンの形成を説明するための断面図である。同図においても、複数の貫通孔からなる版パターンを形成して、印刷版として孔版を製造する場合の例を示している。本印刷版製造装置においては、貫通孔Hを一気に打ち抜いてアブレーション加工するのではなく、エキシマレーザーよりも遙かに小径のフェムト秒レーザー光fLによって孔輪郭を切り抜くようにアブレーション加工する(輪郭加工)。この際、上述の基板回転手段によってウエッジ光学基板を微妙に回転させながらワーク(基材101)をX−Y移動させることで、その移動にかかわらず、基材101に対するレーザー入射角を貫通孔Hの中心に向かって下広がりとなる角度にすることができる。そして、図7に示すように、内壁にテーパーのある摺り鉢状の貫通孔Hを切り抜き加工することができる。このような切り抜き加工では、基材101とワーク支持台21とを密着させていなくても、薄膜残りを生ずることがない。このため、薄膜残りのために両者を密着させる必要がなくなって吸引手段が不要となる。また、両者を密着させないことにより、ワーク支持台21上でのレーザー照り返しによるエッジ欠けを抑えることができる。また、アブレーション加工であるため、十分な内壁平滑性の貫通孔Hを得ることができる。また、貫通孔Hの内壁にテーパーを設けることにより、貫通孔Hからの印刷材の抜け性を向上させることもできる。また、基材101の両面に貼り付けたラミネートフィルムの加工屑によって貫通孔Hを目詰まりさせることもない。更には、基材101として、金属板を用いれば、摩擦帯電によって被印刷体に悪影響を及ぼすといった事態を生ずることのない孔版を製造することも可能である。
【0032】
次に、実施形態に係る印刷版製造装置の変形例装置について説明する。なお、この変形例装置における基本的な構成については、実施形態に係る印刷版製造装置と同様であるので、説明を省略する。
本変形例装置では、ワーク100として、図1に示した基材101と、この縁に固定された枠体102とを有するものを用いるのではなく、基材101だけならなるものを用いる。そして、この基材101を図示しない凍結チャックによってワーク保持台21面に固定するようになっている。この凍結チャックは、基材101をワーク保持台21に保持し、加工中に位置がズレないようにする役割を果たすものである。基材101を凍結させて保持することにより、基材101の裏面と、ワーク保持台21表面との間に氷の層が形成される。そして、この氷の層、基材101と氷の層との界面、及び氷の層とワーク保持台21表面との界面が、基材101を貫通したファムト秒レーザ光の保持台面での照り返しを阻止することができる。従って、ワーク保持台21面から浮かしていない基材101に対してレーザー加工を行っても、上記照り返しによるエッジ欠けを回避することができる。しかも、氷を介して基材101をワーク保持台21面に密着させることで、ワーク保持台21面面から浮かした基材101を微妙に撓ませるといった事態がなくなり、その撓みによる加工精度の悪化を回避することもできる。
【0033】
かかる凍結チャックとしては、例えばエミネントサプライ社製の凍結チャックを用いることができる。この凍結チャックは、水が凍るときの固着力を利用して基材101をワーク保持台21面に固定するものである。大気中の水分を用いて固着させることができるが、基材101に少量の水をかけることでより確実に固着させることができる。また、基材101を凍結させて固定することで、例えば20℃程度の室温でメカニカルクランプを用いて基材101を固定する場合に比べ、基材101の体積が縮小する。この縮小により、例えば基材101に室温状態でφ30μmの孔や凹部を形成したい場合に、−20℃程度で凍結固定して体積を縮小した状態にすることで、より小径のレーザスポットでのフェムト秒レーザー加工を行うことができる。そして、単位面積当たりのレーザー出力を向上させることができる。また、マシンバイス等のメカニカルクランプでチャッキングする場合に生じる基材101の歪みによる精度低下を防ぐことができる。更に、レーザー加工後に基材101を室温に戻すことで、凍結時に比べ体積を膨張させて、加工時よりも大径の孔や凹部を得ることができる。
【0034】
【発明の効果】
請求項1乃至5の発明によれば、上述した(1)乃至(3)の事項を何れも実現することができるという優れた効果がある。
特に、請求項2の発明によれば、摩擦帯電によって被印刷体に悪影響を及ぼすといった事態を生ずることのない印刷版を製造することができるという優れた効果がある。
また特に、請求項3の発明によれば、金属からなる基材を用いる場合に比べ、貫通孔や凹部からの印刷材の抜け性に優れた印刷版を製造することができるという優れた効果がある。更には、金属からなる基材を用いる場合に比べ、印刷時における被印刷体との密着性に優れた印刷版を製造することができるという優れた効果もある。
また特に、請求項4の発明によれば、内壁のテーパーによって貫通孔内や凹部内からの印刷材の抜け性を向上せしめた印刷版を製造することができるという優れた効果がある。
また特に、請求項5、6又は7の発明によれば、基材を加工テーブル等の支持台に吸引密着させるための吸引手段を付設することによるコストアップを回避することができるという優れた効果がある。
また特に、請求項6の発明によれば、視認不能な加工用のフェムト秒レーザー光を発生させるための光源の他に、視認可能な光路ガイド光を発生させるための光源を別に搭載する必要がなくなり、その分のコストを抑えることができるという優れた効果がある。
また特に、請求項7の発明によれば、支持台面から浮かした基材を微妙に撓ませるといった事態がなくなり、その撓みによる加工精度の悪化を回避することができるという優れた効果がある。更には、氷を介して基材を支持台面に密着させていても、基材を支持台面から浮かしてレーザー加工を行う場合と同様に、支持台面でのレーザー反射によるエッジ欠けを回避することができるという優れた効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る印刷版製造装置の概略構成図。
【図2】同印刷版製造装置のXYテーブルの要部を示す側面図。
【図3】同XYテーブルの要部を示す側面図。
【図4】従来のエキシマレーザー装置による版パターンの形成を説明するための断面図。
【図5】同エキシマレーザー装置によって貫通孔が形成された基材を示す断面図。
【図6】同印刷版製造装置による版パターンの形成を説明するための断面図。
【図7】同印刷版製造装置によって貫通孔が形成された基材を示す断面図。
【符号の説明】
1 フェムト秒レーザー装置
2 XYテーブル
3 メインコントローラ
101 基材
H 貫通孔
fL フェムト秒レーザー光
Claims (7)
- 基材に対してレーザー加工による複数の貫通孔や凹部からなる版パターンを形成して印刷版を製造する印刷版製造方法において、
上記レーザー加工処理として、フェムト秒レーザー加工処理を用いることを特徴とする印刷版製造方法。 - 請求項1の印刷版製造方法において、
上記基材として、金属からなるものを用いたことを特徴とする印刷版製造方法。 - 請求項1の印刷版製造方法において、
上記基材として、プラスチックからなるものを用いたことを特徴とする印刷版製造方法。 - 請求項1、2又は3の印刷版製造方法において、
上記基材面に対してフェムト秒レーザー光を斜めに照射して上記貫通孔又は凹部を加工することを特徴とする印刷版製造方法。 - 基材に対してレーザー加工による複数の貫通孔や凹部からなる版パターンを形成して印刷版を製造する印刷版製造装置において、
レーザー光として、フェムト秒レーザー光を用いることを特徴とする印刷版製造装置。 - 請求項5の印刷版製造装置において、
上記フェムト秒レーザー光として、可視領域の波長のものを用いることを特徴とする印刷版製造装置。 - 請求項5又は6の印刷版製造装置において、
レーザー加工される上記基材を支持する支持台と、上記基材との間を氷によって架橋して、上記基材を該支持台に固定する冷凍固定手段を設けたことを特徴とする印刷版製造装置。
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WO2008081904A1 (ja) * | 2006-12-27 | 2008-07-10 | Hitachi Chemical Co., Ltd. | 凹版及びこれを用いた導体層パターン付き基材 |
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-
2003
- 2003-02-18 JP JP2003039468A patent/JP2004249475A/ja active Pending
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