JP2004249384A - 両頭平面研削用ホイール - Google Patents
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Abstract
【課題】砥粒保持力を維持しつつ、研削時のメタルボンド擦れによる研削性能の低下を防止して研削性能を向上させた放電ツルーイング装置付両頭平面研削用ホイールを提供する。
【解決手段】砥粒層1は、メタルボンド2により砥粒3を固着させて形成され、メタルボンド2は固体潤滑剤4を含有している。固体潤滑剤4の粒径は、砥粒3の平均粒径の5%以上90%以下である。
砥粒層1は、以上のメタルボンド2と砥粒3とを用い、焼結して形成されている。固体潤滑剤4として、黒鉛、WS2、またはMoS2のいずれかが用いられる。
【選択図】 図1
【解決手段】砥粒層1は、メタルボンド2により砥粒3を固着させて形成され、メタルボンド2は固体潤滑剤4を含有している。固体潤滑剤4の粒径は、砥粒3の平均粒径の5%以上90%以下である。
砥粒層1は、以上のメタルボンド2と砥粒3とを用い、焼結して形成されている。固体潤滑剤4として、黒鉛、WS2、またはMoS2のいずれかが用いられる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は両頭平面研削用ホイールに関し、特に、機上放電ツルーイング装置を設けた両頭平面研削盤で用いられるホイールであって、研削時のメタルボンド擦れによる研削性能の低下を防止した両頭平面研削用ホイールに関する。
【0002】
【従来の技術】
両頭平面研削盤においては、研削用ホイールを機上にて高精度にツルーイングすることが可能な、機上放電ツルーイング装置が開発され、使用されている。この放電ツルーイング装置を用いて研削用ホイールのツルーイングを行うと、放電された部分は高温となるため、高温に耐えられるメタルホイールが用いられている。
【0003】
しかし、メタルホイールは強度が高いため、砥粒の目替わりが起こりにくく、切れ味の持続性が期待できない。そのため、メタルボンドを低強度化し、砥粒の目替わり性の向上、並びにボンド表面に被削材が接触した場合の摩擦抵抗を低減させる目的として、砥粒層に固体潤滑剤を含有したメタルホイールが用いられる。
【0004】
このメタルホイールの構成を図6に示す。
図6(a),(b)において、砥粒層1は、金属のメタルボンド2により砥粒3を固着させて形成され、メタルボンド2は固体潤滑剤4を含有している。固体潤滑剤4として、金属の高温焼結に対して熱安定性に優れた黒鉛、WS2、MoS2が用いられている。
【0005】
図6(a)は、砥粒3に対して粒径の大きい固体潤滑剤4を用いた場合を示し、図6(b)は、砥粒3に対して粒径の極めて小さい固体潤滑剤4を用いた場合を示している。図6(b)のように、粒径の極めて小さい固体潤滑剤4を用いた場合には、砥粒3の近傍のメタルボンド2にも固体潤滑剤4が多数存在することとなるため、砥粒3を保持している砥粒3近傍のメタルボンド2の強度までもが低下して砥粒保持力が低下する。従って、砥粒保持力を維持したままでメタルボンド強度を低下させるために、固体潤滑剤4は、図6(a)の様に砥粒3より粒径の大きいものが使用されるのが一般的である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、放電によるツルーイングを行った砥粒層表面を観察した結果、固体潤滑剤4は融点が高いことから、図7に示すように、溶融せずに砥粒層1の表面に残り、放電時の熱によって一度溶融したメタルボンドが、この固体潤滑剤4の表面に絡み付いて再凝固してしまう事がわかった。その為に、固体潤滑剤4の粒径が砥粒3の粒径より大きいと、固体潤滑剤4の表面に再凝固したメタルボンド2の突出し高さ2bが、砥粒3の突出量3aを大きく上回ることとなる(2b>3a)。そのため、研削時に砥粒3が被削材に食込む前にメタルボンド2が被削材がボンド擦れを生じ、研削抵抗が高くなり研削不能となる。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、砥粒保持力を維持しつつ、研削時のメタルボンド擦れによる研削性能の低下を防止して研削性能を向上させた両頭平面研削用ホイールを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、本発明の両頭平面研削用ホイールは、放電ツルーイング装置を備えた両頭平面研削盤で用いられる研削用ホイールであって、砥粒層を形成するメタルボンドは固体潤滑剤を含有し、前記固体潤滑剤の粒径は、前記砥粒の平均粒径の5%以上90%以下であることを特徴とする。
【0009】
固体潤滑剤の粒径が砥粒の平均粒径の5%未満であると、砥粒の近傍のメタルボンドにも固体潤滑剤が多数存在することとなるため、メタルボンドの強度が低下し、砥粒保持力が低下する。
その一方で、固体潤滑剤の粒径が砥粒の平均粒径の90%を超えると、固体潤滑剤4の表面に再凝固したメタルボンドが、砥粒の突出量を大きく上回り、研削時に砥粒が被削材に食込む前にメタルボンドが被削材と接触し、研削抵抗が高くなり研削不能となる。
従って、固体潤滑剤の粒径を砥粒の平均粒径の5%以上90%以下とすることによって、砥粒保持力を維持しつつ、研削時のメタルボンド擦れの発生を防止して研削性能を向上することができる。
【0010】
本発明の両頭平面研削用ホイールにおいては、前記固体潤滑剤は、黒鉛、WS2、またはMoS2のいずれかであることを特徴とする。
黒鉛、WS2、またはMoS2は、その潤滑性により、研削中にメタルボンドが被削材に接触しても摩擦抵抗を下げる働きがある。また、これらの固体潤滑剤はメタルボンドより脆いという特性を有するため、砥粒層を構成するメタルボンドの低強度化を行うために好適である。更に、熱安定性に優れる為に、高温で焼結されるメタルボンドホイールでも固体潤滑剤が燃える事なく、安定した潤滑性を得る事ができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態に係る両頭平面研削用ホイールについて、詳細に説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る両頭平面研削用ホイールの砥粒層を示す。
図1において、砥粒層1は、メタルボンド2により砥粒3を固着させて形成され、メタルボンド2は固体潤滑剤4としての黒鉛を含有している。砥粒3の平均粒径は50μmであり、固体潤滑剤4の平均粒径は例えば45μmである。従って、この場合には、固体潤滑剤4の粒径は砥粒3の平均粒径の90%に相当する。
【0012】
メタルボンド2の組成比率は、銅が65重量%、錫が重量25%、黒鉛が重量10%である。砥粒3として、#400(平均粒径50μm)のcBNが用いられ、集中度が60となっている。砥粒層1は、以上のメタルボンド2と砥粒3とを用い、焼結して形成されている。
この砥粒層1が設けられた両頭平面研削用ホイールを作製した。この両頭平面研削用ホイールの寸法は、305D×50T×80H×50W×3X(mm)である。この両頭平面研削用ホイールの形状を図2に示す。図2において、符号1が上記のようにして製造された砥粒層である。
【0013】
この両頭平面研削用ホイールを、機上放電ツルーイング装置付きの両頭平面研削盤に取付けて、放電ツルーイング試験を行った。本発明の実施形態に係る両頭平面研削用ホイールと比較するために、固体潤滑剤4として黒鉛を用い、その平均粒径が70μm(砥粒3の平均粒径の140%)のものと、平均粒径が45μm(砥粒3の平均粒径の90%)のものと、平均粒径0.5μm(砥粒3の平均粒径の1%)のものを用いて砥粒層を形成した両頭平面研削用ホイールを作製し、同様の放電ツルーイング試験を行った。
【0014】
試験条件は以下の通りである。
電圧 120V
電流 24A
パルス(ON)時間幅 10μsec
パルス(OFF)時間幅 4μsec
切込み 1μm
ドレス回数 20回
【0015】
上記の放電ツルーイング試験を行った後の砥粒層1の表面状態を、図3に示す。
図3において、(a)は黒鉛の平均粒径が70μmの場合であり、(b)は黒鉛の平均粒径が45μmの場合であり、(c)は黒鉛の平均粒径が0.5μmの場合である。
図3からわかるように、黒鉛の平均粒径が70μmの場合には、砥粒層1の表面に、メタルボンド2が放電によって溶融して形成された柱状のものが観察される。これは、黒鉛の粒径が砥粒の平均粒径より大きいために、黒鉛の表面に、放電時の熱によって溶融した金属製のメタルボンドが絡み付いて凝固したものである。
これに対し、黒鉛の平均粒径が45μmの場合と、黒鉛の平均粒径が0.5μmの場合においては、メタルボンド2が放電によって溶融して形成された柱状のものは観察されなかった。
図4に、放電ツルーイング試験を行った後の砥粒層1の表面の凹凸を面粗さ測定機にて測定した結果を示す。
図4において、(a)は黒鉛の平均粒径が70μmの場合であり、(b)は黒鉛の平均粒径が45μmの場合であり、(c)は黒鉛の平均粒径が0.5μmの場合である。図4から、黒鉛の平均粒径が小さくなるにしたがって、放電ツルーイング試験を行った後の砥粒層1の表面の凹凸が小さくなっていくのがわかる。
【0016】
次に、本発明の実施の形態に係る両頭平面研削用ホイールの研削性能評価試験を行った。
この研削性能の評価試験においても、本発明の実施形態に係る両頭平面研削用ホイールと比較するために、固体潤滑剤4として黒鉛を用い、その粒径を下記の如く変化させて砥粒層を形成した両頭平面研削用ホイールを作製し、同様の研削性能評価試験を行った。
固体潤滑剤平均粒径
70μm (砥粒3の平均粒径の140%)
45μm (砥粒3の平均粒径の90%)
2.5μm (砥粒3の平均粒径の5%)
0.5μm (砥粒3の平均粒径の1%)
【0017】
試験条件は以下の通りである。
【0018】
上記の研削性能評価試験を行った結果を図5に示す。
図5は、加工個数に対する消費電力の変化を示したものである。
黒鉛の平均粒径を2.5μm、45μmとした、本発明の実施形態に係る両頭平面研削用ホイールでは、2000個の加工が可能であった。
【0019】
これに対し、黒鉛の平均粒径を70μmとしたものでは、加工の初期段階から消費電力が高く、1500個加工したところで、メタルボンド擦れを生じる部分が増加して研削機が停止した。この場合のメタルボンド擦れは、放電時の熱によって溶融した金属製のメタルボンドが黒鉛に絡み付いて凝固することによって生じたものである。
また、黒鉛の平均粒径を0.5μmとしたものでは、加工の初期段階においては消費電力が低いものの、加工数が1000個に達する近辺で急速に消費電力が増加し、1800個ほど加工したところで、砥粒の脱落によってメタルボンド擦れを生じる部分が増加して、研削機が停止した。
【0020】
このように、黒鉛の平均粒径を0.5μmとしたものでは、砥粒の粒径が小さすぎるために、砥粒の近傍のメタルボンドにも黒鉛が多数存在することとなるため、砥粒を保持している砥粒近傍のメタルボンドの強度までもが低下して砥粒保持力が低下する。この砥粒保持力の低下による砥粒の脱落によって、上述のメタルボンド擦れが発生している。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、以下の効果を奏することができる。
(1)砥粒層を形成するメタルボンドは固体潤滑剤を含有し、固体潤滑剤の粒径を砥粒の平均粒径の5%以上90%以下とすることによって、砥粒保持力を維持しつつ、研削時のメタルボンド擦れの発生を防止して研削性能を向上することが可能な両頭平面研削用ホイールを実現することができる。
特に、粒径の小さい砥粒を用いて砥粒層を形成する場合に、研削時のメタルボンド擦れが発生しにくいため、初期から切れ味が良好であり、高精度の加工が可能となる。
(2)固体潤滑剤として、黒鉛、WS2、またはMoS2のいずれかを用いることにより、これらの固体潤滑剤はメタルボンドより脆いという特性を有することから、砥粒層を構成するメタルボンドの低強度化を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る両頭平面研削用ホイールの砥粒層を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る両頭平面研削用ホイールの形状の一例を示す図である。
【図3】放電ツルーイング試験を行った後の砥粒層の表面状態を示す図である。
【図4】放電ツルーイング試験を行った後の砥粒層の表面の凹凸を測定した結果を示す図である。
【図5】加工個数に対する消費電力の変化を示す図である。
【図6】従来の両頭平面研削用ホイールの砥粒層を示す図である。
【図7】従来の両頭平面研削用ホイールにおいて、放電によるツルーイングを行った後の砥粒層の状態を示す図である。
【符号の説明】
1 砥粒層
2 メタルボンド
3 砥粒
4 固体潤滑剤
【発明の属する技術分野】
本発明は両頭平面研削用ホイールに関し、特に、機上放電ツルーイング装置を設けた両頭平面研削盤で用いられるホイールであって、研削時のメタルボンド擦れによる研削性能の低下を防止した両頭平面研削用ホイールに関する。
【0002】
【従来の技術】
両頭平面研削盤においては、研削用ホイールを機上にて高精度にツルーイングすることが可能な、機上放電ツルーイング装置が開発され、使用されている。この放電ツルーイング装置を用いて研削用ホイールのツルーイングを行うと、放電された部分は高温となるため、高温に耐えられるメタルホイールが用いられている。
【0003】
しかし、メタルホイールは強度が高いため、砥粒の目替わりが起こりにくく、切れ味の持続性が期待できない。そのため、メタルボンドを低強度化し、砥粒の目替わり性の向上、並びにボンド表面に被削材が接触した場合の摩擦抵抗を低減させる目的として、砥粒層に固体潤滑剤を含有したメタルホイールが用いられる。
【0004】
このメタルホイールの構成を図6に示す。
図6(a),(b)において、砥粒層1は、金属のメタルボンド2により砥粒3を固着させて形成され、メタルボンド2は固体潤滑剤4を含有している。固体潤滑剤4として、金属の高温焼結に対して熱安定性に優れた黒鉛、WS2、MoS2が用いられている。
【0005】
図6(a)は、砥粒3に対して粒径の大きい固体潤滑剤4を用いた場合を示し、図6(b)は、砥粒3に対して粒径の極めて小さい固体潤滑剤4を用いた場合を示している。図6(b)のように、粒径の極めて小さい固体潤滑剤4を用いた場合には、砥粒3の近傍のメタルボンド2にも固体潤滑剤4が多数存在することとなるため、砥粒3を保持している砥粒3近傍のメタルボンド2の強度までもが低下して砥粒保持力が低下する。従って、砥粒保持力を維持したままでメタルボンド強度を低下させるために、固体潤滑剤4は、図6(a)の様に砥粒3より粒径の大きいものが使用されるのが一般的である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、放電によるツルーイングを行った砥粒層表面を観察した結果、固体潤滑剤4は融点が高いことから、図7に示すように、溶融せずに砥粒層1の表面に残り、放電時の熱によって一度溶融したメタルボンドが、この固体潤滑剤4の表面に絡み付いて再凝固してしまう事がわかった。その為に、固体潤滑剤4の粒径が砥粒3の粒径より大きいと、固体潤滑剤4の表面に再凝固したメタルボンド2の突出し高さ2bが、砥粒3の突出量3aを大きく上回ることとなる(2b>3a)。そのため、研削時に砥粒3が被削材に食込む前にメタルボンド2が被削材がボンド擦れを生じ、研削抵抗が高くなり研削不能となる。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、砥粒保持力を維持しつつ、研削時のメタルボンド擦れによる研削性能の低下を防止して研削性能を向上させた両頭平面研削用ホイールを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、本発明の両頭平面研削用ホイールは、放電ツルーイング装置を備えた両頭平面研削盤で用いられる研削用ホイールであって、砥粒層を形成するメタルボンドは固体潤滑剤を含有し、前記固体潤滑剤の粒径は、前記砥粒の平均粒径の5%以上90%以下であることを特徴とする。
【0009】
固体潤滑剤の粒径が砥粒の平均粒径の5%未満であると、砥粒の近傍のメタルボンドにも固体潤滑剤が多数存在することとなるため、メタルボンドの強度が低下し、砥粒保持力が低下する。
その一方で、固体潤滑剤の粒径が砥粒の平均粒径の90%を超えると、固体潤滑剤4の表面に再凝固したメタルボンドが、砥粒の突出量を大きく上回り、研削時に砥粒が被削材に食込む前にメタルボンドが被削材と接触し、研削抵抗が高くなり研削不能となる。
従って、固体潤滑剤の粒径を砥粒の平均粒径の5%以上90%以下とすることによって、砥粒保持力を維持しつつ、研削時のメタルボンド擦れの発生を防止して研削性能を向上することができる。
【0010】
本発明の両頭平面研削用ホイールにおいては、前記固体潤滑剤は、黒鉛、WS2、またはMoS2のいずれかであることを特徴とする。
黒鉛、WS2、またはMoS2は、その潤滑性により、研削中にメタルボンドが被削材に接触しても摩擦抵抗を下げる働きがある。また、これらの固体潤滑剤はメタルボンドより脆いという特性を有するため、砥粒層を構成するメタルボンドの低強度化を行うために好適である。更に、熱安定性に優れる為に、高温で焼結されるメタルボンドホイールでも固体潤滑剤が燃える事なく、安定した潤滑性を得る事ができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態に係る両頭平面研削用ホイールについて、詳細に説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る両頭平面研削用ホイールの砥粒層を示す。
図1において、砥粒層1は、メタルボンド2により砥粒3を固着させて形成され、メタルボンド2は固体潤滑剤4としての黒鉛を含有している。砥粒3の平均粒径は50μmであり、固体潤滑剤4の平均粒径は例えば45μmである。従って、この場合には、固体潤滑剤4の粒径は砥粒3の平均粒径の90%に相当する。
【0012】
メタルボンド2の組成比率は、銅が65重量%、錫が重量25%、黒鉛が重量10%である。砥粒3として、#400(平均粒径50μm)のcBNが用いられ、集中度が60となっている。砥粒層1は、以上のメタルボンド2と砥粒3とを用い、焼結して形成されている。
この砥粒層1が設けられた両頭平面研削用ホイールを作製した。この両頭平面研削用ホイールの寸法は、305D×50T×80H×50W×3X(mm)である。この両頭平面研削用ホイールの形状を図2に示す。図2において、符号1が上記のようにして製造された砥粒層である。
【0013】
この両頭平面研削用ホイールを、機上放電ツルーイング装置付きの両頭平面研削盤に取付けて、放電ツルーイング試験を行った。本発明の実施形態に係る両頭平面研削用ホイールと比較するために、固体潤滑剤4として黒鉛を用い、その平均粒径が70μm(砥粒3の平均粒径の140%)のものと、平均粒径が45μm(砥粒3の平均粒径の90%)のものと、平均粒径0.5μm(砥粒3の平均粒径の1%)のものを用いて砥粒層を形成した両頭平面研削用ホイールを作製し、同様の放電ツルーイング試験を行った。
【0014】
試験条件は以下の通りである。
電圧 120V
電流 24A
パルス(ON)時間幅 10μsec
パルス(OFF)時間幅 4μsec
切込み 1μm
ドレス回数 20回
【0015】
上記の放電ツルーイング試験を行った後の砥粒層1の表面状態を、図3に示す。
図3において、(a)は黒鉛の平均粒径が70μmの場合であり、(b)は黒鉛の平均粒径が45μmの場合であり、(c)は黒鉛の平均粒径が0.5μmの場合である。
図3からわかるように、黒鉛の平均粒径が70μmの場合には、砥粒層1の表面に、メタルボンド2が放電によって溶融して形成された柱状のものが観察される。これは、黒鉛の粒径が砥粒の平均粒径より大きいために、黒鉛の表面に、放電時の熱によって溶融した金属製のメタルボンドが絡み付いて凝固したものである。
これに対し、黒鉛の平均粒径が45μmの場合と、黒鉛の平均粒径が0.5μmの場合においては、メタルボンド2が放電によって溶融して形成された柱状のものは観察されなかった。
図4に、放電ツルーイング試験を行った後の砥粒層1の表面の凹凸を面粗さ測定機にて測定した結果を示す。
図4において、(a)は黒鉛の平均粒径が70μmの場合であり、(b)は黒鉛の平均粒径が45μmの場合であり、(c)は黒鉛の平均粒径が0.5μmの場合である。図4から、黒鉛の平均粒径が小さくなるにしたがって、放電ツルーイング試験を行った後の砥粒層1の表面の凹凸が小さくなっていくのがわかる。
【0016】
次に、本発明の実施の形態に係る両頭平面研削用ホイールの研削性能評価試験を行った。
この研削性能の評価試験においても、本発明の実施形態に係る両頭平面研削用ホイールと比較するために、固体潤滑剤4として黒鉛を用い、その粒径を下記の如く変化させて砥粒層を形成した両頭平面研削用ホイールを作製し、同様の研削性能評価試験を行った。
固体潤滑剤平均粒径
70μm (砥粒3の平均粒径の140%)
45μm (砥粒3の平均粒径の90%)
2.5μm (砥粒3の平均粒径の5%)
0.5μm (砥粒3の平均粒径の1%)
【0017】
試験条件は以下の通りである。
【0018】
上記の研削性能評価試験を行った結果を図5に示す。
図5は、加工個数に対する消費電力の変化を示したものである。
黒鉛の平均粒径を2.5μm、45μmとした、本発明の実施形態に係る両頭平面研削用ホイールでは、2000個の加工が可能であった。
【0019】
これに対し、黒鉛の平均粒径を70μmとしたものでは、加工の初期段階から消費電力が高く、1500個加工したところで、メタルボンド擦れを生じる部分が増加して研削機が停止した。この場合のメタルボンド擦れは、放電時の熱によって溶融した金属製のメタルボンドが黒鉛に絡み付いて凝固することによって生じたものである。
また、黒鉛の平均粒径を0.5μmとしたものでは、加工の初期段階においては消費電力が低いものの、加工数が1000個に達する近辺で急速に消費電力が増加し、1800個ほど加工したところで、砥粒の脱落によってメタルボンド擦れを生じる部分が増加して、研削機が停止した。
【0020】
このように、黒鉛の平均粒径を0.5μmとしたものでは、砥粒の粒径が小さすぎるために、砥粒の近傍のメタルボンドにも黒鉛が多数存在することとなるため、砥粒を保持している砥粒近傍のメタルボンドの強度までもが低下して砥粒保持力が低下する。この砥粒保持力の低下による砥粒の脱落によって、上述のメタルボンド擦れが発生している。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、以下の効果を奏することができる。
(1)砥粒層を形成するメタルボンドは固体潤滑剤を含有し、固体潤滑剤の粒径を砥粒の平均粒径の5%以上90%以下とすることによって、砥粒保持力を維持しつつ、研削時のメタルボンド擦れの発生を防止して研削性能を向上することが可能な両頭平面研削用ホイールを実現することができる。
特に、粒径の小さい砥粒を用いて砥粒層を形成する場合に、研削時のメタルボンド擦れが発生しにくいため、初期から切れ味が良好であり、高精度の加工が可能となる。
(2)固体潤滑剤として、黒鉛、WS2、またはMoS2のいずれかを用いることにより、これらの固体潤滑剤はメタルボンドより脆いという特性を有することから、砥粒層を構成するメタルボンドの低強度化を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る両頭平面研削用ホイールの砥粒層を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る両頭平面研削用ホイールの形状の一例を示す図である。
【図3】放電ツルーイング試験を行った後の砥粒層の表面状態を示す図である。
【図4】放電ツルーイング試験を行った後の砥粒層の表面の凹凸を測定した結果を示す図である。
【図5】加工個数に対する消費電力の変化を示す図である。
【図6】従来の両頭平面研削用ホイールの砥粒層を示す図である。
【図7】従来の両頭平面研削用ホイールにおいて、放電によるツルーイングを行った後の砥粒層の状態を示す図である。
【符号の説明】
1 砥粒層
2 メタルボンド
3 砥粒
4 固体潤滑剤
Claims (2)
- 放電ツルーイング装置を備えた両頭平面研削盤で用いられる研削用ホイールであって、砥粒層を形成するメタルボンドは固体潤滑剤を含有し、前記固体潤滑剤の平均粒径が、前記砥粒の平均粒径の5%以上90%以下であることを特徴とする両頭平面研削用ホイール。
- 前記固体潤滑剤は、黒鉛、WS2、またはMoS2のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の両頭平面研削用ホイール。
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JP2003040656A JP2004249384A (ja) | 2003-02-19 | 2003-02-19 | 両頭平面研削用ホイール |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004249384A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006346824A (ja) * | 2005-06-17 | 2006-12-28 | Kurenooton Kk | 放電ツルーイング用メタルボンドホイール及びその製造方法 |
JP2007015054A (ja) * | 2005-07-07 | 2007-01-25 | Mitsui Kensaku Toishi Kk | レジンボンド超砥石及びそれを用いた研削ホイール |
WO2011010670A1 (ja) * | 2009-07-21 | 2011-01-27 | 本田技研工業株式会社 | メタルボンド砥石及びその製造方法 |
-
2003
- 2003-02-19 JP JP2003040656A patent/JP2004249384A/ja active Pending
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