JP2004249242A - 塗工装置用ロッド、及びその製造方法 - Google Patents

塗工装置用ロッド、及びその製造方法 Download PDF

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篤 大島
Satoru Matsumoto
悟 松本
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Abstract

【課題】被塗工基材の塗布面に傷が生じることを防止した塗工装置用ロッド及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】円柱部材の表面に、周方向(すなわち軸方向に対して直交方向であり、ウエブWの走行方向に沿った方向)に、谷と山とを交互に形成することにより多数の溝118を形成した母材112を製造する。次に、母材112の表面に中間層113を形成し、中間層113の表面をラッピングする。更に皮膜114を形成し、皮膜114の表面をラッピングする。これにより、中間層113の表面に凸部が形成されていても、中間層113表面のラッピングによりこの凸部が除去される。従って、簡易な処理によって中間層113の凸部の影響が皮膜114に出現することを防止でき、ウエブWの塗布面にこの凸部による傷が生じることを防止できる。
【選択図】 図9

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐磨耗性の皮膜が表面に形成されている塗工装置用ロッド及びその製造方法に関し、更に詳細には、連続して走行するウエブ等の被塗工基材に塗布液を塗布するのに最適な塗工装置用ロッド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
感光材料、写真製版材料、磁気記録材料、記録紙材料、感光性平板印刷版などを製造する際、薄い金属板、紙、フィルム等からなるシート状或いはウエブ状の被塗布体(被塗工基材)を長手方向に連続走行させつつ片面側に塗布液(感光液)を塗布することが広く行われている。
【0003】
この塗布を行う際、被塗工基材の塗布面に塗工装置用ロッド(バー)を当接させ、ロッド表面に塗布液を供給しつつ塗工装置用ロッドを回転させて塗布していることが多い。なお、この塗布方法はバー塗布法と呼ばれている。
【0004】
この塗工装置用ロッドは、断面真円の丸棒、丸棒の表面に周方向に沿った溝が形成されたもの、又は、丸棒にワイヤを巻付けたもの、で構成される。この塗工装置用ロッドの表面には、一般に、表面改質処理が施されており、耐磨耗性の皮膜が形成されていることが多い。皮膜の形成は、メッキ、物理蒸着、化学蒸着等、様々な手法で行われ得る。
【0005】
ところで、塗工装置用ロッドの表面に凹凸が形成されていると、被塗工基材の塗布面に傷(主としてスリキズ)が生じてしまう。このため、母材の表面をラッピング処理して平滑面とし、その上に表面改質処理による耐磨耗性の皮膜を形成している。
【0006】
しかし、母材の表面を充分にラッピング処理しても、被塗工基材の塗布面に傷が生じることが頻繁に起こるという問題があった。
【0007】
なお、皮膜の剥離を防止することにより被塗工基材の塗布面に傷が生じることを防止する例として、母材と皮膜との間に中間層を設けることが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0008】
しかし、特許文献1は、溶融亜鉛系めっき鋼板と合成樹脂中間層との密着性が低下することを防止することにより剥離を防止する例であり、上記問題を解決することはできない。また、特許文献2は、最上層から最下層にいくほど膜の硬度が小さくなるように中間層を設けることにより、塗工装置用ロッドに強い衝撃が加えられても皮膜にクラックや剥離が生じることを防止する例であり、特許文献1と同様、上記問題を解決することはできない。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−64087号公報
【特許文献2】
特開2000−354808号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事実を考慮して、被塗工基材の塗布面に傷が生じることを防止した塗工装置用ロッド及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、母材の表面を更に高い精度で平滑にすることにより上記の問題を解消することを試みた。しかし、極めて高い精度で平滑にしても、上記の問題は解決されなかった。
【0012】
そこで、本発明者は、極めて高い精度で平滑にした母材表面に形成した皮膜の表面状態を分析した。その結果、皮膜の表面に微細な凹凸が形成されることがあり、このため、塗工装置用ロッドを用いると被塗工基材の塗布面に傷(主としてスリキズ)が生じることが判った。そして、皮膜の凹凸は塗工装置用ロッドの使用により減少していくが、使用初期の段階ではこの凹凸によって被塗工基材の塗布面に生じる傷が深いことも判った。更に、皮膜として、硬度が高く耐磨耗性のあるものを用いた場合、塗工装置用ロッドの使用によってもこの凹凸が低減せず、このため、長期にわたって塗布面に傷が生じてしまうことも判った。
【0013】
以上のような検討結果に基づき、本発明者は、被塗工基材の塗布面に傷が生じることを防止する対策として、皮膜の表面をラッピング処理することを考え付いた。
【0014】
また、本発明者は、どのような中間層にも表面には微細な凸部が生じることを見い出した。一方、最表面に位置する皮膜は、耐磨耗性の観点上、一般的に硬度を高くしており、チッピング防止のために厚肉化できない。従って、中間層に形成されている凸部によって皮膜に凸部が形成され易く、このため、このような塗工装置用ロッドを用いて被塗工基材に塗布液を塗布すると、被塗工基材の塗布面にスリキズが生じ易いということを見い出した。
【0015】
そこで、本発明者は、被塗工基材の塗布面に傷が生じることを防止する対策として、中間層の表面をラッピング処理することも考え付き、実験を重ねて検討し、本発明を完成するに至った。
【0016】
請求項1に記載の発明は、円柱状の母材の表面に形成されラッピング処理された中間層と、前記中間層の表面に形成されラッピング処理された耐磨耗性の皮膜と、を有することを特徴とする。
【0017】
ラッピング処理の形態は特に限定しない。また、中間層及び皮膜の膜厚は0.2μm以上であることが好ましい。膜厚が0.2μm未満であると、磨耗を防止するための皮膜として厚さが充分でなく、しかも、ロッド表面の粗さによって皮膜表面が粗くなり、皮膜の滑らかさを確保し難くなるためである。また、中間層の膜厚は、厚くなり過ぎて剥がれ易くならないようにする。中間層の膜厚は、材質によっても異なるが、実用的には、2〜70μm程度であることが多い。
【0018】
皮膜としては、DLC膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)、TiN膜(窒化チタン膜)、TiCN膜、CrN膜、TiC膜、Al膜、Cr膜、SiO膜、Ti膜、AlN膜、ZrN膜、SiC膜などが好ましいが、耐磨耗性である限り特に限定しない。皮膜の製法は、イオンプレーティング、メッキ等、特に限定しない。
【0019】
中間層としては、上述の材質の膜を形成してもよいし、一般的なNi、Cr、W、Coなどからなる膜をメッキで形成して中間層としてもよい。また、イオン窒化処理等によって母材の表面を改質することによって形成される改質層を中間層としてもよく、これにより、中間層が母材から剥がれることがない。このように、中間層は、メッキ膜、イオンプレーティング膜、イオン窒化処理による改質膜など何であっても良く、材質、製法などは特に限定しない。
【0020】
なお、中間層の熱膨張係数が、母材の熱膨張係数よりも小さくて皮膜の熱膨張係数よりも大きいか、又は、母材の熱膨張係数よりも大きくて皮膜の熱膨張係数よりも小さいように、中間層の材質を選定することが好ましい。これにより、ロッド温度が変化して、母材と皮膜との熱膨張係数の違いにより皮膜に熱応力が生じても、中間層がこの熱応力の緩和材として作用するので、皮膜に生じる熱応力を低減することができる。従って、皮膜の成膜中にロッド温度が変化したり、ロッド使用中にロッド表面にせん断応力や垂直応力が加えられても、皮膜にクラックや剥離が生じ難い。
【0021】
このように、請求項1に記載の発明では、中間層が形成されているので、皮膜を剥れ難くすることができる。
【0022】
また、この中間層の表面がラッピング処理されているので、母材に転造ムラが生じていてもラッピング処理によりこの転造ムラを解消でき、塗工装置用ロッドを用いても被塗工基材の塗布面に部分的に力が加えられ過ぎて筋状の傷が生じることを防止できる。その上、中間層表面の微小な凹凸やうねりを除去することができるので、中間層のこの微小な凹凸やうねりが皮膜の表面に影響することを防止できる。
【0023】
更に、皮膜の表面がラッピング処理されているので、皮膜を形成する際に皮膜に凹凸が生じても、この凹凸を除去することができ、これにより、塗工装置用ロッドを用いても被塗工基材の塗布面に傷が付くことが防止される。
【0024】
請求項2に記載の発明は、前記中間層が複数層形成されていることを特徴とする。これにより、中間層の厚みが所定厚以上である場合、一層の中間層を形成する場合に比べ、中間層のチッピングが生じ難い。
【0025】
なお、中間層を構成する各層の熱膨張係数を母材側から皮膜側にかけて、順次上がる、又は、順次下がるように各層の材質を選定することにより、母材と皮膜との熱膨張係数差が大きくても、皮膜に大きな熱応力が生じることを回避できる。
【0026】
請求項3に記載の発明は、前記皮膜の最大表面粗さが0.2μm以下であることを特徴とする。これにより、被塗工基材に傷が付くことが充分に防止される。なお、表面最大粗さは、好ましくは0.1μm以下であり、これにより、塗工装置用ロッドの使用開始初期段階で生じ易いスリキズの発生を確実に防止できる。
【0027】
請求項4に記載の発明は、前記皮膜の膜厚が5μm以下であることを特徴とする。5μmよりも厚いと皮膜にチッピングが生じ易くなるためであり、5μm以下にすることにより、皮膜にチッピングが発生することを防止し易い。
【0028】
ところで、皮膜として硬質クロム膜を湿式メッキで形成すると、ラッピング処理後の表面硬度が800Hv程度であり、1000Hvにまで達しない。一方、皮膜の耐磨耗性の点では、ラッピング処理後の表面硬度を1000Hv以上とすることが好ましい。
【0029】
そこで、請求項5に記載の発明は、前記皮膜のビッカース硬さが1000Hv以上であることを特徴とする。これにより、表面の耐磨耗性が充分に高い塗工装置用ロッドが実現される。例えば、皮膜の材質をTiNやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)などにすると、ラッピング処理後の表面硬度を1000Hv以上にすることができる。
【0030】
請求項6に記載の発明は、円柱状の母材の表面に中間層を形成する中間層形成工程と、前記中間層の表面をラッピングする中間層ラッピング工程と、前記中間層の表面に耐磨耗性の皮膜を形成する皮膜形成工程と、前記皮膜の表面をラッピング処理する最表面ラッピング工程と、を行うことを特徴とする。
【0031】
このように、中間層をラッピング処理することにより、母材に転造ムラが生じていてもこの転造ムラを容易に解消することができる。また、中間層表面の微小な凹凸やうねりを除去することができ、中間層のこの微小な凹凸やうねりが皮膜の表面に影響することを防止できる。
【0032】
ラッピングの削り深さの好ましい値は、中間層及び皮膜の膜形成方法(表面改質処理など)によって異なるが、0.2μm〜5μmの範囲内であることが多い。ラッピングの手法は特に限定しない。
【0033】
請求項7に記載の発明は、前記中間層形成工程と、前記中間層ラッピング工程と、を交互に複数回行うことを特徴とする。
【0034】
これにより、所定の厚みの中間層を形成するにあたり、一層の中間層を形成する場合に比べ、中間層のチッピングが生じ難い。なお、中間層を構成する各層の熱膨張係数を母材側から皮膜側にかけて、順次上がる、又は、順次下がるように各層の材質を選定することにより、母材と皮膜との熱膨張係数差が大きくても、皮膜に大きな熱応力が生じることを回避できる。
【0035】
請求項8に記載の発明は、前記円柱状の母材の表面を予めラッピング処理しておくことを特徴とする。これにより、母材表面の凹凸やうねりの影響を解消することができる。
【0036】
また、本発明者は、母材の表面に塗布液量調整用の溝を形成した塗工装置用ロッドについても表面状態を分析した。その結果、この溝を形成する山の高さには、主として転造ムラによるうねりが形成されていることが判った。図を用いて詳細に説明すると、図23に示すように、母材582の溝588を形成する山589のうねり幅dは、大きい場合には1μm程度になる。このため、母材582の表面改質処理を行った塗工装置用ロッドを用いると、最も高さの高い部位が被塗工基材の塗布面に局所的に強い押圧力で当接し、この塗布面に筋状のスリキズが生じることが判った。
【0037】
そこで、請求項9に記載の発明は、前記母材の表面には塗布液量調整用の溝が形成され、前記溝を形成する山の高さのうねり幅を0.5μm以下にするまで前記母材の表面をラッピング処理することを特徴とする。
【0038】
これにより、上記の山の高さにうねりが生じていてもこのうねりを充分に解消できるので、被塗工基材の塗布面に部分的に力が加えられ過ぎて筋状の傷が生じることを防止できる。なお、この場合、母材の溝による凹凸が緩やかになり過ぎないように、中間層の膜厚を調整することが好ましい。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。なお、簡略のため、本発明の実施の形態では、塗工装置用ロッドを単にロッドという。
【0040】
[第1形態]
図1に示すように、第1形態に係る塗工装置用ロッド10(以下、単にロッド10という)は、走行するウエブWへの塗布液の塗布と塗布液量の調整との両方を兼ねて行うロッドである。
【0041】
図2に示すように、このロッド10は、塗布液量調整用の溝18が表面に形成されている母材12に耐磨耗性の皮膜14を成膜したロッドである。溝18は、母材12の表面の周方向(すなわち軸方向に対して直交方向であり、ウエブWの走行方向に沿った方向)に多数形成されている。母材12はステンレス鋼製であることが多い。
【0042】
ロッド10を製造するには、まず、円柱部材の表面に、周方向(すなわち軸方向に対して直交する方向であり、ウエブWの走行方向に沿った方向)に、谷と山とを交互に形成することにより多数の溝18を形成した母材12を製造する。
【0043】
溝18を転造により形成した場合、皮膜14が成膜された後の山19の高さのうねり幅をラッピングにより0.5μm以下にすることが望ましい。これにより、溝18を形成する際に生じた転造ムラを解消できる。なお、この場合、ラッピング後の皮膜14の厚みが不足しない程度に、皮膜14の成膜量を予め調整しておく。
【0044】
次に、母材12の表面に皮膜14を形成する。なお、イオンプレーティング装置により成膜すると比較的低温で成膜できる。これにより、成膜時と常温時とでのロッドの温度差が小さくなり、皮膜14にクラックや剥離が生じ難い。
【0045】
更に、皮膜14の表面をラッピング処理する。これにより、成膜後に皮膜14の表面に凹凸が形成されていても、このラッピング処理によってこの凹凸が除去されているので、ロッド10を用いてもウエブWの塗布面に傷が付くことがない。
【0046】
[実験例1]
上記の母材12として直径10mmφのステンレス鋼製の母材を用い、表面に皮膜14を成膜した。その際、皮膜14の材質、膜厚、ラッピング処理の実施、不実施をパラメータとして変化させた。製造したロッドの一覧を表1に示す。
【0047】
【表1】
Figure 2004249242
このようにして製造したロッドを用い、走行速度70m/分で走行するウエブWに塗布液を塗布する実験を行った。図1に示すように、ロッドの回転方向Qは、ウエブWと接触するロッド表面がウエブ走行方向Pと逆方向に移動するような回転方向である。
【0048】
そして、実験後のウエブWの塗布面状態を観察した。実験結果を表1に併せて示す。なお、表1に示した「塗布面状態(スリキズ)」では、○はスリキズの発生なし、△は1m×1mの範囲内に数箇所にわってスリキズが発生、×は全面にスリキズが発生、をそれぞれ示す。また、表1で「(表面処理前)」と記載があるものは、皮膜14を形成する前に、母材表面の仕上げ処理を行っており、この記載がないものは、皮膜14を形成した後に皮膜表面の仕上げ処理を行ったことを示す。
【0049】
表1から判るように、皮膜14が硬質クロム膜である場合、表面最大粗さRmaxが0.5μm又は0.4μmの場合、うねり幅が0.4μmとなっていても、ウエブWの塗布面に全面にスリキズが発生することが判った。そして、このことは、皮膜14を形成する前に母材表面を仕上げ処理した場合、及び、皮膜14の形成後に皮膜表面を仕上げ処理した場合、の何れであっても生じていた。また、硬質Cr膜であっても、表面最大粗さRmaxが0.2μmの場合には、ウエブWの塗布面にスリキズが発生することを充分に防止できることが判った(なお、このときのうねり幅は0.4μmである)。
【0050】
また、皮膜14がTiN膜及びDLC膜の何れであっても、表面最大粗さRmaxが0.5μmである場合、ウエブWの塗布面に全面にスリキズが発生することが判った(なお、この場合のうねり幅は何れも0.6μmであった)。Rmaxが0.3μmの場合には、スリキズ防止の効果が認められることが判った。そして、Rmaxが0.2μmの場合には、ウエブWの塗布面にスリキズが発生することを充分に防止できることが判った。
【0051】
従って、本実験例では、皮膜14の表面最大粗さRmaxは0.5μmよりも小さいことが好ましく、更には0.3μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることが特に好ましいと判断される。0.2μmよりも皮膜表面が粗いと、ウエブWの塗布面にスリキズを付けてしまう場合があり、また、1本のロッド表面のラッピング量を均一にし難くなってロッド径にムラが生じる場合があると考えられる。
【0052】
なお、本実験例は砥石によるラッピング処理の実験例であるが、フィルムや砥粒等によるラッピング処理であっても同様の効果を得ることができる。
【0053】
[第2形態]
図3に示すように、第2形態に係るロッド110は、走行するウエブWへの塗布と塗布液量の調整との両方を兼ねて行うロッドである。
【0054】
図8、図9に示すように、このロッド110は、母材112の上に、中間層113が成膜され、更に、中間層113の上に耐磨耗性の皮膜114が成膜されたロッドである。母材112はステンレス鋼製であることが多い。
【0055】
中間層113及び皮膜114は、イオンプレーティング装置により成膜すると比較的低温で成膜でき、これにより、成膜時と常温時とでのロッドの温度差が小さくなる。従って、熱膨張係数の違いによって中間層113や皮膜に残留する熱応力が小さくなり、皮膜114や中間層113にクラックや剥離が生じ難い。
【0056】
中間層113及び皮膜114の材質を選定する際、母材112、中間層113、及び皮膜114の各熱膨張係数が、順次増大、又は順次低減するように選定する。これにより、ロッド温度が変化して、母材112と皮膜114との熱膨張係数の違いにより皮膜114に熱応力が生じても、中間層113が緩和材として作用するので、皮膜114に生じる熱応力は小さい。
【0057】
また、例えば、膜厚を厚くすると欠けが生じ易い高硬度のセラミックを皮膜114として成膜しても、中間層113が成膜されていることにより、皮膜114から母材112までの膜厚を稼ぐことができるので、磨耗量も稼ぐことができる。
【0058】
ロッド110を製造するには、まず、図4に示すように、円柱部材の表面に、周方向(すなわち軸方向に対して直交方向であり、ウエブWの走行方向に沿った方向)に、谷と山とを交互に形成することにより多数の溝118を形成した母材112を製造する。
【0059】
次に、母材112の表面に中間層113を形成し(図5参照)、中間層113の表面をラッピングする(図6参照)。
【0060】
上記の溝118を転造により形成した場合、皮膜114が成膜された後の山119の高さのうねり幅をラッピングにより0.5μm以下にすることが望ましい。これにより、溝118を形成する際に生じた転造ムラを解消できる。なお、この場合、ラッピング後の中間層113の厚みが不足しない程度に、中間層113の成膜量を予め調整しておく。
【0061】
更に皮膜114を形成し(図7参照)、皮膜114の表面をラッピングすることによりロッド110が得られる(図8参照)。
【0062】
このように、本実施形態に係るロッド110では、母材112と皮膜114との間に中間層113を設け、この中間層113の表面をラッピングし、その後、皮膜114を形成し、更に皮膜114の表面をラッピングしている。
【0063】
従って、中間層113の表面に凸部113T(図5参照)が形成されていても、中間層113表面のラッピングによりこの凸部113Tが除去される。これにより、簡易な処理によって中間層113の凸部113Tの影響が皮膜114に出現することを防止でき、ウエブWの塗布面にこの凸部113Tによる傷が生じることを防止できる。
【0064】
また、皮膜114の表面に凸部114Tが形成されていても、皮膜114の表面のラッピングによりこの凸部114Tが除去される。これにより、凸部114Tによって被塗工基材(被塗布体)の塗布面に傷が付くことが防止される。
【0065】
更に、中間層113を形成することにより、硬度が高い皮膜114をコーティングしても皮膜114にチッピングが生じ難い。従って、ロッド寿命が長くなり、使用するロッドの本数が低減するので、大幅なコストダウンを実現できると共に、ロッドの交換頻度が低減して生産ラインの稼動率が向上する。
【0066】
なお、中間層を複数層にわたって形成してもよい。この場合、最表面側(最外面側)の中間層表面をラッピングすることにより、複数の中間層を形成してもラッピングを1回行うことだけで、皮膜114を形成する下地面を平坦にすることができる。
【0067】
[実験例2]
上記の母材112として直径13mmφのステンレス鋼製の母材を用い、表面に中間層113、更に、皮膜114を成膜した。その際、中間層113の材質や、ラッピングの実施、不実施をパラメータとして変化させた。製造したロッドの一覧を表2に示す。
【0068】
【表2】
Figure 2004249242
そして、この製造したロッドを用い、走行速度80m/分で走行するウエブWに塗布液を塗布する実験を行った。図3に示すように、ロッドの回転方向Qは、ウエブWと接触するロッド表面がウエブ走行方向Pと同方向に移動するような回転方向である。
【0069】
そして、実験後のウエブWの塗布面状態を観察した。実験結果を表2に併せて示す。なお、表2に示した「塗布面状態(スリキズ)」では、○はスリキズの発生なし、△は1m×1mの範囲内に数箇所にわたってスリキズが発生、×は全面にスリキズが発生、をそれぞれ示す。
【0070】
表2から判るように、中間層形成後と、最表面(すなわち皮膜114の表面)と、の両者をラッピングした場合、塗布面にスリキズが発生しなかった。また、中間層形成前と最表面(すなわち皮膜114の表面)と、の両者をラッピングした場合、塗布面にややスリキズが発生したが、ラッピングの効果が認められた。その他の条件では、塗布面に全面にわたってスリキズが生じた。
【0071】
[第3形態]
まず、第3形態に係るロッドを説明する。図10に示すように、第3形態に係るロッド210は、走行するウエブWへの塗布と塗布液量の調整との両方を兼ねて行うロッドである。
【0072】
図11に示すように、このロッド210は、母材212の上に耐磨耗性の皮膜214が成膜されたロッドである。母材212はステンレス鋼製であることが多い。皮膜214のビッカース硬さは2000Hvであり、膜厚は2μmである。
【0073】
また、母材212の表面には、周方向(すなわち軸方向に対して直交方向であり、ウエブWの走行方向に沿った方向)に多数の溝218と山220とが交互に形成され、この結果、ロッド表面が凹凸にされている。山220を構成する山角部220EはR状に丸みを帯びている。山角部220Eの曲率半径Rは10μmにされている。
【0074】
このように、本実施形態に係るロッド210では、山角部220EがR状にされて丸みを帯びているので、山角部220E上に成膜された皮膜214に応力集中が生じることが防止される。また、皮膜214のビッカース硬さが2000Hvであり膜厚が2μmであるので、皮膜のビッカース硬さを上げても皮膜にチッピングが生じ難い。
【0075】
従って、ロッド210の製造時に皮膜214に生じるクラックや剥離が低減し、ロッド210を製造する上での歩留まりを向上させることができる。また、走行するウエブWによって山220の上面からせん断応力や垂直応力が加えられても、皮膜214にクラックや剥離が生じ難いので、ウエブWに生じるスリキズの頻度が大幅に低減し、ウエブWの生産性が向上する。更に、ロッド寿命が長くなり、使用するロッドの本数が低減するので、大幅なコストダウンを実現できると共に、ロッドの交換頻度が低減して生産ラインの稼動率が向上する。
【0076】
なお、皮膜214を形成する際、イオンプレーティング装置により成膜すると比較的低温で形成できる。これにより、成膜時と常温時とでのロッドの温度差が小さくなり、熱膨張係数の違いによって皮膜214に残留する熱応力が小さくなり、皮膜214にクラックや剥離が生じ難い。
【0077】
[実験例3]
上記の母材212として直径10mmφのステンレス鋼製の母材を用い、山220の断面形状(すなわち溝218の断面形状)が台形状のままである母材(台形型)と、これに山角部220EをR状にする加工を施した母材(R型)と、を製造した。溝218を形成する際には転造により形成した。
【0078】
そして、各母材にDLC膜を皮膜214として成膜したロッドを8本製造した。その際、ビッカース硬さや膜厚をパラメータとして変化させた(表3のNo.1〜No.8を参照)。
【0079】
これらのロッドを用い、図10に示したように、走行するウエブWへの塗布と塗布液量の調整との両方を兼ねて行うロッドとして、走行速度60m/分で走行するウエブWに塗布液を塗布する実験を行った。ロッド210の回転方向Qは、ウエブWと接触するロッド表面がウエブ走行方向Pと同方向に移動するような回転方向である(図10参照)。実験結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
Figure 2004249242
表3から判るように、母材の溝218の断面形状が台形状のままである場合(すなわち台形型の場合)、ビッカース硬さや膜厚を変化させた4本の何れのロッドであっても、皮膜214にチッピングが生じ(図13参照)、ウエブWの塗布面状が悪い状態(スリキズが生じた状態)であった。
【0081】
一方、山角部220EをR状にした場合(すなわちR型の場合)、ビッカース硬さや膜厚を変化させた4本のロッドのうち2本では皮膜214にチッピングが発生しておらず(図12参照)、ウエブWの塗布面状は良好な状態(スリキズが発生していない状態)であった。山角部220EをR状にした場合の実験結果を図14に示す。図14から判るように、膜厚が4μm以上になるとチッピングが生じていた。
【0082】
[第4形態]
次に、第4形態に係るロッドを説明する。第4形態では、第3形態と同様の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0083】
図15に示すように、第4形態に係るロッド228では、母材212と皮膜214との間に中間層232を形成している。中間層232の材質は、熱膨張係数が、母材212、中間層232、皮膜214の順に順次大きくなる、又は、順次小さくなるように、選定されている。
【0084】
これにより、皮膜214のチッピングを抑制することができ、また、磨耗量を稼ぐことができるので、ロッド228の歩留まり向上かつ高寿命化を実現することができる。
【0085】
[実験例4]
上記の母材212として直径14mmφのステンレス鋼製の母材を用い、溝218の断面形状が台形状で更に山角部220EをR状にした母材(R型)を6本製造した。山角部220Eの曲率半径Rの値は実験例3と同じである。
【0086】
そして、4本の母材に、中間層232として硬質Cr膜(熱膨張係数12.5×10−6/℃)或いはイオン窒化膜(熱膨張係数12×10−6/℃)を形成し、更に、DLC膜(熱膨張係数0.8〜7.8×10−6/℃)を皮膜214として成膜してロッドを製造した。その際、ビッカース硬さや膜厚をパラメータとして変化させた(表4のNo.1〜No.4を参照)。
【0087】
これらのロッドを用い、図10に示したように、走行するウエブWへの塗布と塗布液量の調整との両方を兼ねて行うロッドとして、走行速度80m/分で走行するウエブWに塗布液を塗布する実験を行った。ロッド228の回転方向Qは、ウエブWと接触するロッド表面がウエブ走行方向Pと逆方向に移動するような回転方向である(図10参照)。実験結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
Figure 2004249242
表4から判るように、中間層232を形成しなかったロッド(表4のNo.5及びNo.6参照)ではロッド表面にチッピングが生じ、ウエブWの塗布面状が悪い状態(スリキズが生じた状態)であったが、中間層232を形成したロッドでは、ロッド表面にチッピングは発生せず、ウエブWの塗布面状が良好な状態(スリキズが発生していない状態)であった。
【0089】
[第5形態]
第5形態に係るロッドの製造方法は、図16に示すように、走行するウエブWに塗布液Lを塗布するのに用いるロッドの製造方法であり、ロッド310は、母材312の表面に耐磨耗性の皮膜314が成膜されてなるロッドである。母材312は、ステンレス鋼製であることが多い。皮膜314はイオンプレーティング装置で成膜する。
【0090】
[イオンプレーティング装置の構成]
皮膜をコーティングするイオンプレーティング装置316(図17、図18参照)は、チャンバ318と、チャンバの中に設置された3個のイオンソース320A〜C(図18参照)と、を有する。
【0091】
図17に示すように、チャンバ318は、所定長さのロッド310を収容できる寸法で形成されている。また、チャンバ318には、複数本のロッドを自公転可能に保持する保持部322が設けられている。
【0092】
保持部322は、中心軸324と、中心軸324の端部側に固定された平歯車326と、を備えている。中心軸324のもう一方の端部側にも、同様に平歯車(図示せず)が固定されている。また、保持部322は、平歯車326と噛み合う複数個の小型平歯車328と、小型平歯車328に内周側のギア歯331で噛み合うリング状歯車332と、を備えている。小型平歯車328には、ロッドを着脱自在に取付ける取付部330が設けられている。
【0093】
リング状歯車332には外周側にもギア歯334が形成され、チャンバ318内には、このギア歯334と噛み合う駆動用歯車336が設けられており、駆動用歯車336の回転によりリング状歯車332が回転し、これによって小型平歯車328が平歯車326の周囲を自公転するようになっている。
【0094】
このような構成を有する保持部322は、真空中であってもリング状歯車332が回転可能であって小型平歯車328が自公転可能にされている。
【0095】
また、図18に示すように、チャンバ318の出入口に近い位置にイオンソース320Aが、チャンバ318の中央位置にイオンソース320Bが、チャンバ318の奥側の位置にイオンソース320Cが、それぞれ設けられており、所定長さのロッドがチャンバ318に収容された場合に、ロッド両端部がそれぞれイオンソース320A、320Cの近くに位置し、ロッド中央部がイオンソース320Bの近くに位置するようになっている。
【0096】
[母材への成膜による製品の製造]
本実施形態では、上記のイオンプレーティング装置316を用いて、耐磨耗性の皮膜を成膜した製品(ロッド)の製造を行う。まず、塗布液量調整用の溝311(図19参照)を表面に予め形成した長尺円柱状の未使用の母材312を、小型平歯車328ごとに取付部330に取付ける。
【0097】
そして、チャンバ318内を真空吸引した後、小型平歯車328を自公転させながらイオンプレーティング法により耐磨耗性の皮膜314を母材312に成膜する。その際、所望厚さ(0.2μm〜3.0μmの範囲内であることが多い)でほぼ均一に皮膜314が成膜されるように、イオンソース320A〜Cの出力を調整して成膜する。
【0098】
これにより、耐磨耗性の皮膜314の厚さが均一なロッド310を製造できるので、皮膜314を薄膜にしても部分的に薄過ぎる皮膜部分が生じることがない。従って、このロッド310を用い、走行するウエブWに塗布液を塗布すると、ロッド310とウエブWとの接触面積が増大し、ロッド310が部分的に磨耗(偏磨耗)することを回避できる。
【0099】
よって、高速で塗布しても塗布精度が低下したり塗布スジが生じたりするなどの塗布不良が発生することを防止できる。また、ロッド310の使用時において、走行するウエブWから加えられる力により、ロッド310の表面にせん断力や垂直応力が加えられても、皮膜314にクラックや剥離が生じ難い。更に、ロッド310の寿命が長くなるので、ロッド310の使用本数が低減してコストダウンに大きく寄与すると共に、ロッド使用中(すなわちロッド310が設けられている塗布ラインの運転中)にロッド310を交換する回数が低減し、ウエブWの生産ラインの稼動率が大幅に向上する。
【0100】
また、保持部322を有するイオンプレーティング装置316を用いることにより、複数本の母材に同時に成膜してロッド310を製造することができるので、イオンプレーティング装置316を稼動させる回数が低減してコストダウンを図ることができる。また、皮膜314の膜厚分布が各ロッドで同じであり、同一物を量産することができる。更に、表面に溝が形成されているロッドであっても膜厚を容易に測定することができ、膜厚の管理、制御が容易である。
【0101】
皮膜314の材質としては、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)や窒化チタン(TiN)が好ましい。その他、好ましい材質としては、TiCN、CrN、TiC、Al、Cr、SiO、Ti、AlN、ZrN、SiCなどである。
【0102】
[実験例5]
本実験例では、上記のイオンプレーティング装置316を用い、イオンソース320A〜Cの出力をパラメータとして変化させて、成膜された皮膜の膜厚分布を測定した。
【0103】
この実験では、ロッド幅方向(すなわち長手方向)の膜厚分布を測定するために、図20に示すように、溝が形成されていない円柱状の母材であるダミー母材(ダミーロッド)340を2本取付けると共に、ダミー母材340の膜厚測定位置に複数枚のシリコンウエハ342を貼り付けた。皮膜としてはDLC膜を成膜した。ダミー母材340以外の母材取付位置には、全て上記の母材312を取付けた。
【0104】
母材312及びダミー母材340の長さLは2000mmであり、イオンソース320Aの位置は母材端部340Aから200mmだけロッド中央側の位置であり、イオンソース320Cの位置もイオンソース320Cから200mmだけロッド中央側の位置である。また、ロッド中央位置にはイオンソース320Bが位置している。すなわち、図18を用いて説明すると、チャンバ318の出入口に近いロッド端部を原点としてチャンバ奥方向へX軸をとると、イオンソース320AがX=200mm、イオンソース320BがX=1000mm、イオンソース320CがX=1800mm、に位置している。
【0105】
本実験では、イオンソース320A〜Cの出力を異ならせた3通りの成膜条件(No.1〜No.3)で成膜を行った。No.1では、イオンソース320A〜Cの出力を同一にした。No.2では、イオンソース320A、320Cの出力を100%、イオンソース320Bの出力を0%とした。No.3ではイオンソース320A、320Cの出力を100%、イオンソース320Bの出力を30%とした。
【0106】
No.1〜No.3で成膜後、シリコンウエハ342に成膜された皮膜の厚みをそれぞれ測定することにより膜厚分布を求めた。この膜厚分布を図21に示す。
【0107】
また、母材312に皮膜314が成膜されてなるロッドを用い、ウエブWの塗布面に塗布液を塗布する実験を行った。No.1〜No.3で得られたこのロッドの特性、及び、このロッドを用いた塗布実験の結果を表5に示す。なお、表5では、膜厚分布範囲を算出するにあたって図21を用いた。
【0108】
【表5】
Figure 2004249242
表5から判るように、イオンソースの出力調整を行うことにより膜厚分布範囲を25%以内に抑え、しかも皮膜314の膜厚を0.2μm〜3.0μmの範囲内に抑えたロッド(No.3で得られたロッド)で塗布実験を行った場合、塗布面にスリキズは発生しないという良好な結果が得られた。また、30%以内に抑えたロッド(No.2で得られたロッド)では、1m×1mの範囲内で数箇所にスリキズが発生していた程度であり、スリキズの発生箇所は比較的少なかった。一方、膜厚分布範囲が33%であるロッド(No.1で得られたロッド)では、塗布面全面にスリキズが発生した。
【0109】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。例えば、母材の外周面にワイヤを巻回し、ガスの発生等をコントロールしながらワイヤ外周面にウェットメッキやドライメッキ等により皮膜を形成してもよい。その際、ワイヤの径に合わせて母材に溝を形成してもよい。また、母材に溝を形成せずに皮膜を形成しても有効である。更に、ウエブWに塗布された塗布液の過剰分を掻き落とすタイプ(図22参照)のロッド350の製造方法としても適用可能である。また、上記の実施形態を相互に適宜組み合わせても実施できる。なお、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0110】
【発明の効果】
本発明は上記構成としたので、被塗工基材の塗布面に傷が生じることを防止した塗工装置用ロッドを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1形態に係る塗工装置用ロッドを用いてウエブに塗布液を塗布することを示す側面断面図である。
【図2】第1形態に係る塗工装置用ロッドの部分拡大側面断面図である。
【図3】第2形態に係る塗工装置用ロッドを用いウエブに塗布液を塗布することを示す側面断面図である。
【図4】第2形態で、予め溝を形成した母材を示す部分拡大側面断面図である。
【図5】母材に中間層を成膜したことを示す部分拡大側面断面図である。
【図6】中間層の表面をラッピングしたことを示す部分拡大側面断面図である。
【図7】中間層の上に皮膜を成膜したことを示す部分拡大側面断面図である。
【図8】皮膜の表面をラッピングしたことを示す部分拡大側面断面図である。
【図9】第2形態に係る塗工装置用ロッドにウエブの塗布面が当接することを示す部分拡大側面断面図である。
【図10】第3形態に係る塗工装置用ロッドを用いてウエブに塗布液を塗布することを示す側面断面図である。
【図11】第3形態に係る塗工装置用ロッドの構成を示す部分拡大側面断面図である。
【図12】図12(A)から(C)は、何れも、実験例3(第3形態の実験例)で、塗工装置用ロッドを用いて塗布実験を行った後のロッド表面状態を示す拡大図である(ロッド表面にチッピングが生じていない良い状態)。
【図13】図13(A)から(C)は、何れも、実験例3(第3形態の実験例)で、塗工装置用ロッドを用いて塗布実験を行った後のロッド表面状態を示す拡大図である(ロッド表面にチッピングが生じた悪い状態)。
【図14】実験例3(第3形態の実験例)で、R型のロッドを用いて塗布実験を行った実験結果を示すグラフ図である。
【図15】第4形態に係る塗工装置用ロッドの構成を示す部分拡大側面断面図である。
【図16】第5形態で製造された塗工装置用ロッドが使用されていることを示す側面断面図である。
【図17】第5形態で塗工装置用ロッドを製造する際に用いるイオンプレーティング装置のチャンバ内の構成を示す斜視図である。
【図18】第5形態で塗工装置用ロッドを製造する際に用いるイオンプレーティング装置で、ロッドとイオンソースとの位置関係を示す模式的側面図である。
【図19】第5形態で塗工装置用ロッドを製造する際に用いる母材の部分断面側面図である。
【図20】実験例5で実験を行った際に、ダミー母材及びシリコンウエハをチャンバ内に設けたことを示す斜視図である。
【図21】実験例5で得られたロッドの膜厚分布の測定結果を示すグラフ図である。
【図22】塗工装置用ロッドが、ウエブに塗布された塗布液の過剰分を掻き落とすタイプのロッドとして適用された例を示す側面断面図である。
【図23】従来の塗工装置用ロッドで、予め溝を形成した母材を示す部分拡大側面断面図である。
【符号の説明】
10 塗工装置用ロッド
12 母材
14 皮膜
18 溝
110 ロッド
112 母材
113 中間層
114 皮膜
118 溝
119 山
210 ロッド(塗工装置用ロッド)
212 母材
214 皮膜
218 溝
220E 山角部
228 ロッド
232 中間層
310 ロッド
311 溝
312 母材
314 皮膜
316 イオンプレーティング装置
318 チャンバ
320A〜C イオンソース
322 保持部(保持機構)
350 ロッド
588 溝
589 山
W ウエブ(被塗工基材)

Claims (9)

  1. 円柱状の母材の表面に形成されラッピング処理された中間層と、
    前記中間層の表面に形成されラッピング処理された耐磨耗性の皮膜と、
    を有することを特徴とする塗工装置用ロッド。
  2. 前記中間層が複数層形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗工装置用ロッド。
  3. 前記皮膜の最大表面粗さが0.2μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗工装置用ロッド。
  4. 前記皮膜の膜厚が5μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか1項に記載の塗工装置用ロッド。
  5. 前記皮膜のビッカース硬さが1000Hv以上であることを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか1項に記載の塗工装置用ロッド。
  6. 円柱状の母材の表面に中間層を形成する中間層形成工程と、
    前記中間層の表面をラッピングする中間層ラッピング工程と、
    前記中間層の表面に耐磨耗性の皮膜を形成する皮膜形成工程と、
    前記皮膜の表面をラッピング処理する最表面ラッピング工程と、
    を行うことを特徴とする塗工装置用ロッドの製造方法。
  7. 前記中間層形成工程と、前記中間層ラッピング工程と、を交互に複数回行うことを特徴とする請求項6に記載の塗工装置用ロッドの製造方法。
  8. 前記円柱状の母材の表面を予めラッピング処理しておくことを特徴とする請求項6又は7に記載の塗工装置用ロッドの製造方法。
  9. 前記母材の表面には塗布液量調整用の溝が形成され、
    前記溝を形成する山の高さのうねり幅を0.5μm以下にするまで前記母材の表面をラッピング処理することを特徴とする請求項8に記載の塗工装置用ロッドの製造方法。
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