JP4397071B2 - 塗工装置用ロッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗工装置用ロッドに係り、特に、薄い金属板、紙、フィルム等のシート状或いはウエブ状の被塗工基材(以下「ウエブ」という)に各種の液状物質(以下「塗布液」という)を塗布するのに使用される塗工装置用ロッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
薄い金属板、紙、プラスチックフィルム等のウエブに各種の塗布液を塗布する塗布装置としては、ロールコータ、エアーナイフコータ、ダイを用いたコータ、及びロッドコータ等の各種の装置が知られている。
【0003】
これらの塗布装置の中で、ロッドコータは簡易な塗布装置で、しかも各種の塗布液を各種のウエブに塗布できるので、広く利用されている。ロッドコータは、ウエブに塗布された塗布液の過剰分を塗工装置用ロッドで掻き落とすタイプのものと、ウエブへの塗布と塗布液量の調整の両方を1つの塗工装置用ロッドで行うタイプのものとがある。いずれのタイプのロッドコータの場合にも、塗工装置用ロッドのロッド表面の周方向には多数の溝が形成されており、この溝の深さ、幅等によりウエブに塗布する塗布液量や掻き落とす塗布液量が調整される。
【0004】
塗工装置用ロッドの種類には3種類あり、▲1▼平滑な表面をもったロッド素材そのままのもの、▲2▼ロッド素材にワイヤーを巻いて溝を形成し、これによりロッドの表面に周方向の凹部(溝)と周方向の凸部をロッドの軸方向に交互に形成するもの、▲3▼ロッド素材自体の周方向に溝を形成し、これによりロッドの表面に周方向の凹部(溝)と周方向の凸部をロッドの軸方向に交互に形成するものがあり、切削加工、転造加工、レーザー加工等により形成される。そして、ワイヤーを巻いた塗工装置用ロッドは、ホットメルト塗布や、比較的塗布量の多い塗布に用いられ、ワイヤーの直径は0.08〜1.52mmの範囲で、一般には、0.08〜0.64mmのものが使用される(実開平1−65671号公報)。
ところで、生産性の向上や省エネ等の要請により、ロッドコータによる塗布の場合にも、高濃度の塗布液をウエブに薄く、しかも高速で塗布することが要求されてきている。更に、工業製品の多様化、高機能化等の流れにより、塗布液中に各種の分散剤が含有される傾向にあり、硬質な分散剤が含有されることもある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の塗工装置用ロッドは、塗布液に分散剤、特に硬質な分散剤が含有されたり、高速塗布を行ったりすると、ロッドに巻いたワイヤの磨耗やロッド自体に形成した凸部が短期間に磨耗してしまうという欠点がある。磨耗が短期間に発生すると、塗工装置用ロッドに形成した溝の深さが浅くなり、ウエブに塗布する塗布液量の調整精度が悪くなるので、塗布精度が低下してしまう。従って、この塗工装置用ロッドの短期間における磨耗は、生産性向上、省エネ化等を達成する上での大きなネックになっているが、有効な対策がないのが実情である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、硬質な分散剤を含有した塗布液を使用したり、高速塗布したりしても塗工装置用ロッドを磨耗しにくくすることができるので、塗布精度の低下や塗布不良が発生しない塗工装置用ロッドを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、連続走行するウエブに接触して該ウエブに塗布液を転移塗布する円柱状のロッド、又は塗布液が過剰に塗布されたウエブに接触して塗布液の過剰分を掻き落とす円柱状のロッドであって、前記ロッド表面に周方向の凹部と周方向の凸部とが前記ロッドの軸方向に交互に形成された塗工装置用ロッドにおいて、前記凸部上面を平坦面に形成して該平坦面の幅が前記凸部一つ当たり10μm以上になるようにすると共に、前記ロッド表面の表面最大粗さが0.05μm以上0.8μm以下になるようにし、前記平坦面と前記表面最大粗さを有するロッド表面に硬質素材によるコーティング膜を、該膜表面の表面最大粗さが0.8μm以下で且つ膜厚が1.5μm以上30μm以下となるように形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明によれば、凸部上面を平坦面に形成して該平坦面の幅が前記凸部一つ当たり10μm以上になるようにすると共に、前記ロッド表面の表面最大粗さが0.05μm以上0.8μm以下になるようにし、前記平坦面と前記表面最大粗さを有するロッド表面に硬質素材によるコーティング膜を形成したので、ロッド表面に対するコーティング膜の密着強度が大きくなる。従って、硬質な分散剤を含有した塗布液を使用したり、高速塗布したりしてもコーティング膜が剥離しにくくなるので、塗工装置用ロッドの磨耗防止が効果的に達成されると共に、コーティング膜の剥離等による塗布不良が発生しない。
また、ロッド表面に形成したコーティング膜の表面最大粗さは0.8μm以下になるようにしたので、塗工装置用ロッドとウエブとの接触抵抗を小さくすることができる。これにより、塗工装置用ロッドの使用時における剪断応力や垂直応力を小さくすることができるので、コーティング膜が一層剥離しにくくなる。更には、コーティング膜の膜厚は1.5μm以上30μm以下にしたので、コーティング膜に必要な硬度を十分に確保することができ、これにより塗工装置用ロッドが磨耗しにくくなると共に、特に剪断応力や垂直応力に対する耐性を大きくすることができる。
【0009】
本発明の請求項2は前記目的を達成するために、連続走行するウエブに接触して該ウエブに塗布液を転移塗布する円柱状のロッド、又は塗布液が過剰に塗布されたウエブに接触して塗布液の過剰分を掻き落とす円柱状のロッドであって、前記ロッド表面に周方向の凹部と周方向の凸部とが前記ロッドの軸方向に交互に形成された塗工装置用ロッドにおいて、前記凸部のロッド軸芯方向の断面形状を、曲率半径が50μm以上の円弧状に形成すると共に、前記ロッド表面の表面最大粗さが0.05μm以上0.8μm以下になるようにし、前記円弧状と前記表面最大粗さを有する前記ロッド表面に硬質素材のコーティング膜を、該膜表面の表面最大粗さが0.8μm以下で且つ膜厚が1.5μm以上30μm以下となるように形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明によれば、凸部のロッド軸芯方向の断面形状を、曲率半径が50μm以上の円弧状に形成すると共に、前記ロッド表面の表面最大粗さが0.05μm以上0.8μm以下になるようにし、前記円弧状と前記表面最大粗さを有する前記ロッド表面に硬質素材のコーティング膜を形成したので、ロッド表面に対するコーティング膜の密着強度が大きくなる。従って、硬質な分散剤を含有した塗布液を使用したり、高速塗布したりしてもコーティング膜が剥離しにくくなるので、塗工装置用ロッドの磨耗防止が効果的に達成されると共に、コーティング膜の剥離等による塗布不良が発生しない。
また、ロッド表面に形成したコーティング膜の表面最大粗さは0.8μm以下になるようにしたので、塗工装置用ロッドとウエブとの接触抵抗を小さくすることができる。これにより、塗工装置用ロッドの使用時における剪断応力や垂直応力を小さくすることができるので、コーティング膜が一層剥離しにくくなる。更には、コーティング膜の膜厚は1.5μm以上30μm以下にしたので、コーティング膜に必要な硬度を十分に確保することができ、これにより塗工装置用ロッドが磨耗しにくくなると共に、特に剪断応力や垂直応力に対する耐性を大きくすることができる。
【0013】
また、請求項3の発明によれば、請求項1又は2において、硬質素材のコーティング膜は、硬質クロムメッキ、アモルファスクロムメッキのコーティング膜にしたものである。
【0014】
また、請求項4の発明によれば、請求項1、2又は3において、ロッド表面の凸凹部の形成を転造加工法により形成したので、ロッド素材の繊維(例えば金属ロッドの場合の金属繊維)を切断することがなく、且つ加工硬化により表面硬度を高くでき、更にはロッド表面の最大表面粗さの制御を容易に行なうことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係る塗工装置用ロッドの好ましい実施の形態について詳説する。
【0016】
図1は、ウエブに塗布された塗布液の過剰分を塗工装置用ロッドで掻き落とすタイプのロッドコータに本発明の塗工装置用ロッドを適用した第1の実施の形態である。また、ウエブに塗布液を塗布する塗布装置としてはロールコータを用いた例で示したが、特にロールコータに限定するものではなく、任意の塗布装置を使用することができる。
【0017】
図1に示すように、矢印方向に走行するウエブ10は、ロールコータ12により塗布液が塗布される。ロールコータ12は、上側に配置されたバックアップローラ14と、バックアップローラ14の下側に配置されたコーティングローラ16とを有し、コーティングローラ16の回転により塗布液パン18中の塗布液20をピックアップする。そして、ピックアップした塗布液20をバックアップローラ14に係合支持されて走行しているウエブ10に転移塗布する。塗布液20が塗布されたウエブ10は、塗布液20が未乾燥、未固化状態にあるうちに、ロッドコータ22に達し、ウエブ10の塗布面側がウエブ10の走行方向と逆方向に回転する塗工装置用ロッド24に接触させられる。これにより、ウエブ10に塗布された塗布液20の過剰分が塗工装置用ロッド24により掻き落とされて、ウエブ10に塗布される塗布液量が調整される。掻き落とす塗布液20の量は、塗工装置用ロッド24に形成される多数の溝(凹部)25Aの深さ(L)、幅(W)や、凹部25Aから凹部25A若しくは凸部25Bから凸部25Bのピッチ長さ(P)等により変えることができる(図3及び図4参照)。この場合、塗工装置用ロッド24を、ウエブ走行方法と同方向に回転させても、或いは静止状態にしてもよいが、ウエブの走行速度を高速化する場合には逆方向に回転させる方がよい。
【0018】
次に、本発明の塗工装置用ロッド24について説明する。
【0019】
図2は、塗工装置用ロッド24の部分斜視図であり、図3はロッド表面にコーティング膜を形成した後の軸芯方向に沿った断面図である。
【0020】
これらの図に示すように、塗工装置用ロッド24は、円柱状に形成されたロッド25の表面の周方向に多数の溝が形成され、これにより、ロッド25表面に周方向の凹部25A(溝)と周方向の凸部25Bとがロッド25の軸方向に交互に形成される。図3に示すように、ロッド25表面に形成された凸部上面25Cは平坦面に形成され、この平坦面の幅(d)は10μm以上になるように形成される。また、凸部25B及び凹部25Aが形成されたロッド表面の表面最大粗さが、0.05μm以上0.8μm以下になるように形成される。そして、凸部上面25Cの平坦面の幅(d)が10μm以上の平坦面を有し且つ表面最大粗さが0.05μm以上0.8μm以下に形成されたロッド25表面に、硬質素材のコーティング膜26が施される。コーティング膜26の形成は、ウェットコーティングまたはスパッタリング等のドライコーティングあるいはメッキ等の方法を用いて行なう。
【0021】
上記した塗工装置用ロッド24の形成において、凸部上面25Cの平坦面の幅(d)が10μm以上の平坦面を有し且つ表面最大粗さが0.05μm以上0.8μm以下に形成されたロッド表面に、硬質素材のコーティング膜26を施すことにより、ロッド25の表面に対するコーティング膜26の密着性を良くすることができる。
【0022】
即ち、塗工装置用ロッド24の使用時においてロッド25表面の凸部25B上面には走行するウエブ10との接触による剪断応力や垂直応力が加わるが、凸部25B上面を平坦面にすれば、ロッド25表面全体に対してウエブ10に面接触する部分が多くなる。従って、面接触する部分が多くなることにより、凸部25B上面が半円状をした従来の塗工装置用ロッドのように、凸部25B上面がウエブ10に対して線接触する場合に比べて剪断応力や垂直応力を分散させることができる。これにより、コーティング膜26にクラックが生じたり、剥離したりしにくくできる。また、コーティング膜26の形成時(コーティング時)においても応力の集中を分散できるので、コーティング膜26がロッド25表面に密着し易くなる。この場合、平坦面の幅(d)を10μm未満にした場合には、平坦面による応力の分散作用を十分に発揮できないので、特にウエブ10の走行方向に対して塗工装置用ロッド24が逆回転する場合には、コーティング膜26にクラックが入ったり一部剥離したりする。平坦面の幅(d)の上限は、ロッド25表面に形成する溝の数との関係で設定するのがよい。
【0023】
また、ロッド25表面に形成するコーティング膜26の密着性を良くするためには、ロッド25表面(凸部も凹部も含む全面)の表面最大粗さを、0.05μm以上0.8μm以下にすることが必要である。即ち、表面最大粗さが0.05μm未満の場合には、表面の粗さが小さすぎてロッド25表面の粗面に基づいて発揮される投錨効果(コーティング膜がロッドの粗面の窪みに入り込むことにより剥がれにくくなる効果)が小さくなるので、密着強度が弱くなる。逆に、表面最大粗さが0.8μmを越える場合には、コーティング膜26を薄膜に形成した際に、ロッド25表面の粗面の影響がコーティング膜26に反映されてしまい、コーティング膜26表面が滑らかでなくなる。これにより、ロッド25表面のウエブ10に対する接触抵抗が大きくなるので、塗工装置用ロッド24の使用時にコーティング膜26にクラックが生じたり、剥離したりする要因になる。このコーティング膜26の具体的な滑らかさ、即ち表面最大粗さは0.8μm以下であることが好ましい。コーティング膜26の表面最大粗さが0.8μmを越えると、塗工装置用ロッド24とウエブ10との接触抵抗が大きくなるので、特に塗工装置用ロッド24をウエブ10の走行方向に対して逆回転させた場合には、ウエブ10によるロッド25表面に対する剪断応力が大きくなり、コーティング膜26が剥離したりクラックが発生したりし易くなる。また、コーティング膜26の表面最大粗さの下限は特になく、表面最大粗さが小さいほど良い。
【0024】
また、図3に示したコーティング膜26の膜厚(t)は、1.5μm以上30μm以下であることが好ましい。膜厚(t)が1.5μm未満では、磨耗を防止するためのコーティング膜として十分な硬度を確保できなくなるだけでなく、上述したようにロッド25表面の粗面の影響がコーティング膜26に反映されてしまい、コーティング膜表面の滑らかさを確保できなくなる。逆に、膜厚(t)が30μmを越えると硬質素材によるコーティング膜26の脆性が発現しやすくなる。これにより、ロッド25表面にコーティング膜26を形成する際に微小なクラックが発生したり、塗工装置用ロッド24の使用時においてロッド25表面に大きな剪断応力や垂直応力が加わった時にクラックや剥離が生じ易くなる。
【0025】
硬質素材のコーティング膜26としては、硬質クロムメッキ、アモルファスクロムメッキのコーティング膜を使用することができ、その他セラミックコーティング膜又はダイヤモンドコーティング膜のように超硬質なものが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば硬質性樹脂のコーティング膜を形成することもできる。
【0026】
このように、本発明の塗工装置用ロッド24によれば、凸部25B上面を平坦面に形成して該平坦面の幅が前記凸部25B一つ当たり10μm以上になるようにすると共に、ロッド25表面の表面最大粗さが0.05μm以上0.8μm以下になるようにし、平坦面と前記表面最大粗さを有するロッド25表面に硬質素材によるコーティング膜26を形成したので、ロッド25表面に対するコーティング膜26の密着強度を極めて大きくすることができる。従って、ロッドコータの塗工装置用ロッドとして、本発明の塗工装置用ロッド24を用いれば、硬質な分散剤を含有した塗布液20を使用したり、高速塗布したりしても、コーティング膜26にクラックや剥離を生じさせることなく、塗工装置用ロッド24の摩耗を極めて小さくすることができる。従って、塗布精度が低下したり塗布不良が発生したりしない。また、塗工装置用ロッド24の使用時においてロッド25表面の凸部25B上面に、走行するウエブ10との接触による剪断応力や垂直応力が加わっても、コーティング膜26にクラックや剥離が発生しにくくなる。
【0027】
図4は、本発明の塗工装置用ロッド24の変形例であり、凸部25Bのロッド25軸芯方向の断面形状が円弧状の場合には、その円弧状の曲率半径を50μm以上にした上で、ロッド25表面の表面最大粗さ0.05μm以上0.8μm以下、コーティング膜の表面最大粗さ0.8μm以下、コーティング膜の膜厚3μm以上30μm以下のそれぞれの条件を満足させることで、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
ところで、ロッド25素材の表面に凸部25Bと凹部25Aを直接形成する加工方法としては、切削加工法、転造加工法、レーザー加工法等があるが、良好な硬度と密着性の良いコーティング膜26を得るには、図5に示すように、転造加工法により加工するのが好ましい。図5の(A)は、2つのダイス40、40で加工する場合であり、図5の(B)は、3つのダイス40、40、40で加工する場合である。
【0029】
他の加工法、例えば切削加工でもロッド25表面に凸部25Bと凹部25Aを有する表面形状を形成することはできるが、切削加工の場合にはロッド25の繊維(例えば金属ロッドの場合の金属繊維)を切断してしまうために、加工後のロッド25表面の硬度が低下し、ロッド25表面に施すコーティング膜26の密着性が低下する。更に、切削加工の場合、ロッド25表面の表面最大粗さを前述した0.8μm以下にするには切削速度を速くできないので、ロッド生産の生産性が悪いという問題もある。一方、レーザ加工法では、前述したロッド25表面の表面最大粗さを0.05μm以上0.8μm以下の範囲でムラなく加工制御することが極めて困難であるという問題がある。
【0030】
これに対して、転造加工法の場合は、ロッド25の繊維の切断がないと共に加工硬化により表面硬度を高くすることができ、更にはロッド25表面の表面最大粗さの加工制御が容易であるという長所がある。
【0031】
また、ロッド25表面に凸部25Bと凹部25Aを形成する別の方法としては、ロッド25表面にワイヤを巻く方法もあるが、この場合には巻回されたワイヤ表面を研磨することにより平坦面を形成したり、表面最大粗さを調整したりするとよい。この際にも、ロッド25表面の表面最大粗さが0.05μm以上0.8μm以下の範囲になるようにすることが必要である。
【0032】
図5は、ウエブ10への塗布と塗布液量の調整の両方を1つの塗工装置用ロッドで行うタイプのロッドコータ28に本発明の塗工装置用ロッド24を適用した第2の実施の形態である。
【0033】
図5に示すように、走行するウエブ10に接触した状態で、ウエブ10の巾方向に本発明の塗工装置用ロッド24が配設される。塗工装置用ロッド24は、ウエブ10が走行する方向に回転軸30を中心に回転可能であると共に、ロッド支持部材32上に回転を阻害しないように支持される。ロッド支持部材32は、塗工装置用ロッド24に撓みが発生するのを防止すると共に、塗工装置用ロッド24に塗布液20を供給する役目を行う。即ち、ロッド支持部材32と堰部材34とで形成された塗布液供給路36に供給された塗布液20は、ウエブ10と塗工装置用ロッド24の接触部に塗布液20の液だまり38を形成する。そして、回転する塗工装置用ロッド24により液だまり38の塗布液20がウエブ10に転移塗布される。この塗工装置用ロッド24の周面の周方向には、塗工装置用ロッド24の略全長に渡って溝(凹部25A)が形成され、この溝(凹部25A)の深さ、幅、ピッチPにより塗布液量を調節する(図3及び図4参照)。
【0034】
上記ロッドコータ28にも、第1の実施の形態で説明したと同様の塗工装置用ロッド24が適用される。これにより、第2の実施の形態のように、塗工装置用ロッド24で塗布液を塗布する場合にも、ロッド25表面に対するコーティング膜26の密着強度が大きくなる。従って、分散剤を含有した塗布液20を使用したり、高速塗布したりしてもコーティング膜26が剥離しにくくなるので、コーティング膜26による塗工装置用ロッド24の磨耗防止を効果的に達成することができると共に、塗布不良が発生しない。また、塗工装置用ロッド24の使用時においてロッド25表面の凸部25B上面には走行するウエブ10による剪断応力や垂直応力が加わっても、コーティング膜26にクラックや剥離が発生しにくくなる。
【0035】
尚、本発明に使用されるウエブ10としては、帯状のものでもシート状のものでも良く、アルミニウム等の薄板金属、紙、プラスチックフィルム、レジンコーティング紙、合成紙等を使用できる。プラスチックフィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のビニル重合体、6,6─ナイロン、6─ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン─2,6─ナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート等のセルロースアセテート等が使用される。また、レジンコーティング紙に用いるレジンとしては、ポリエチレンをはじめとするポリオレフィンが代表的であるが、これらには限定されない。ウエブ10の厚みも特に限定されないが、0.01mm〜1.0mm程度のものが取り扱い、汎用性の点で有利である。
【0036】
【実施例】
次に、ウエブに塗布された塗布液の過剰分を塗工装置用ロッドで掻き落とすタイプの図1に示したロッドコータを使用して塗工装置用ロッドをウエブの走行方向に対して逆方向に回転させて行った本発明の実施例を説明する。
〔実施例1〕
径が13mm、長さが1500mmのステンレス製ロッドの凸部上面に平坦面を形成して、その平坦面の幅(d)を50μmとすると共に、ロッド表面の表面最大粗さを0.2μmとした。この平坦面と表面最大粗さを有すロッド表面に、硬質クロムメッキを膜厚が10μmになるように形成すると共に、コーティング膜の表面最大粗さが0.3μmになるようにした。
【0037】
尚、ロッドの凹部(溝)のピッチ(p)は300μmであり、深さ(L)は40μmである。
〔比較例1〕コーティング膜の膜厚を40μmとして、好ましい範囲である3μm以上30μm以下の範囲から外れるようにした以外は実施例1の塗工装置用ロッドと同じ条件とした。
〔比較例2〕ロッド表面の表面最大粗さを1.2μmとして、好ましい範囲である0.05μm以上0.8μm以下の範囲から外れるようにした以外は、実施例1の塗工装置用ロッドの条件と同じにした。
【0038】
実施例、比較例1〜2ともに、塗布液はフェノール系の樹脂を20%含有する粘度29cpのものを使用した。また、ウエブはアルミニウムを表面処理した0.2mm厚のものを使用して、70m/分で走行させた。
【0039】
その結果、実施例1の塗工装置用ロッドは、塗布液が塗布されたウエブ長さが累積で15000mになっても、ウエブ塗布面の欠陥や塗布量の精度低下が発生せず、良好な塗布を行うことができた。塗布終了後、塗工装置用ロッドを検査したがコーティング膜のクラック、剥離などは見られなかった。また、ウエブ長さが累積15000m使用後でも、コーティング膜の磨耗は僅かに0.4μmであった。
【0040】
これに対し、比較例1の塗工装置用ロッドは、塗布液が塗布されたウエブ長さが800mの時点でウエブ塗布面に塗布スジが発生し始め、正常な塗布の継続が困難になった。塗布終了後、塗工装置用ロッドを検査したがコーティング膜に微小なクラックや剥離が認められた。
【0041】
また、比較例2の塗工装置用ロッドは、塗布液が塗布されたウエブ長さが累積で2800mになったときにウエブ塗布面に塗布スジが発生した。この時の塗工装置用ロッドの表面を検査したところ、塗布スジが発生したウエブ部位に対応するロッド部位にコーティング膜の微小な剥離が見られた。
〔実施例2〕
径が8mm、長さが1000mmのステンレス製ロッドの凸部のロッド軸芯方向の断面形状を、曲率半径(R)が160μmの円弧状になるようにすると共に、ロッド表面の表面最大粗さを0.3μmとした。この円弧状の凸部と表面最大粗さを有すロッド表面に、硬質クロムメッキを膜厚が7μmになるように形成すると共に、コーティング膜の表面最大粗さが0.4μmになるようにした。
【0042】
尚、ロッドの凹部(溝)のピッチ(p)は400μmであり、深さ(L)は80μmである。
〔比較例3〕コーティング膜の膜厚を0.9μmとして、好ましい範囲である1.5μm以上30μm以下の範囲から外れるようにした以外は実施例2の塗工装置用ロッドと同じ条件とした。
〔比較例4〕凸部の曲率半径(R)を30μmとして、好ましい範囲である50μm以上の範囲から外れるようにした以外は、実施例2の塗工装置用ロッドの条件と同じにした。
【0043】
その結果、実施例2の塗工装置用ロッドは、塗布液が塗布されたウエブ長さが累積で12000mになっても、ウエブ塗布面の欠陥や塗布量の精度低下が発生せず、良好な塗布を行うことができた。塗布終了後、塗工装置用ロッドを検査したがコーティング膜のクラック、剥離などは見られなかった。また、ウエブ長さが累積12000m使用後でも、コーティング膜の磨耗は僅かに0.6μmであった。
【0044】
これに対し、比較例3の塗工装置用ロッドは、塗布液が塗布されたウエブ長さが2000mの時点でウエブ塗布面に塗布スジが発生し始め、正常な塗布の継続が困難になった。塗布終了後、塗工装置用ロッドを検査したところ、塗布スジが発生したウエブ部位に対応するロッド部位にコーティング膜の微小な剥離が見られた。また、コーティング膜の磨耗状態を、ウエブの幅方向の5か所において測定したところ、塗布されたウエブ長さが2000mと実施例2と比べて遙に短いにも係わらず、0.4μmの磨耗度が認められた。
【0045】
また、比較例4の塗工装置用ロッドは、塗布開始して間もないうちに、ウエブ塗布面に微小な塗布スジが発生した。この時の塗工装置用ロッドの表面を検査したところ、極く弱いクラックがコーティング膜面の全面に発生していた。
【0046】
以上の実施例1及び2と、比較例1〜4の対比から明らかなように、本発明の塗工装置用ロッドは、コーティング膜にクラックや剥離を長期間発生させずに摩耗防止効果を最大限に発揮させることができた。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の塗工装置用ロッドによれば、塗工装置用ロッドを磨耗しにくくすることができるので、硬質な分散剤を含有した塗布液を使用したり、高速塗布したりしても塗布精度が低下したり、塗布スジ等の塗布不良が発生することがない。
【0048】
また、塗工装置用ロッドの使用時においてロッド表面の凸部上面に、走行するウエブによる剪断応力や垂直応力が加わっても、コーティング膜にクラックや剥離が発生しにくくなる。
【0049】
従って、生産ロスを著しく低減することができると共に、塗工装置用ロッドを頻繁に交換する必要がないので、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ウエブに塗布された塗布液の過剰分を塗工装置用ロッドで掻き落とすタイプのロッドコータに本発明の塗工装置用ロッドを適用した第1の実施の形態を説明する説明図
【図2】塗工装置用ロッドの部分斜視図
【図3】コーティング膜を形成した後の本発明の塗工装置用ロッドの部分断面図
【図4】本発明の塗工装置用ロッドの変形例を示した部分断面図
【図5】ロッド表面に凸部と凹部を、転造加工法により加工する方法を説明する説明図
【図6】ウエブへの塗布と塗布液量の調整の両方を1つの塗工装置用ロッドで行うタイプのロッドコータに本発明の塗工装置用ロッドを適用した第2の実施の形態を説明する説明図
【符号の説明】
10…ウエブ、12…ロールコータ、20…塗布液、22…ロッドコータ、24…塗工装置用ロッド、25A…溝(凹部)、25B…凸部、25…ロッド、25C…凸部上面、26…コーティング膜、28…ロッドコータ
Claims (4)
- 連続走行するウエブに接触して該ウエブに塗布液を転移塗布する円柱状のロッド、又は塗布液が過剰に塗布されたウエブに接触して塗布液の過剰分を掻き落とす円柱状のロッドであって、前記ロッド表面に周方向の凹部と周方向の凸部とが前記ロッドの軸方向に交互に形成された塗工装置用ロッドにおいて、
前記凸部上面を平坦面に形成して該平坦面の幅が前記凸部一つ当たり10μm以上になるようにすると共に、前記ロッド表面の表面最大粗さが0.05μm以上0.8μm以下になるようにし、
前記平坦面と前記表面最大粗さを有するロッド表面に硬質素材によるコーティング膜を、該膜表面の表面最大粗さが0.8μm以下で且つ膜厚が1.5μm以上30μm以下となるように形成したことを特徴とする塗工装置用ロッド。 - 連続走行するウエブに接触して該ウエブに塗布液を転移塗布する円柱状のロッド、又は塗布液が過剰に塗布されたウエブに接触して塗布液の過剰分を掻き落とす円柱状のロッドであって、前記ロッド表面に周方向の凹部と周方向の凸部とが前記ロッドの軸方向に交互に形成された塗工装置用ロッドにおいて、
前記凸部のロッド軸芯方向の断面形状を、曲率半径が50μm以上の円弧状に形成すると共に、前記ロッド表面の表面最大粗さが0.05μm以上0.8μm以下になるようにし、
前記円弧状と前記表面最大粗さを有する前記ロッド表面に硬質素材のコーティング膜を、該膜表面の表面最大粗さが0.8μm以下で且つ膜厚が1.5μm以上30μm以下となるように形成したことを特徴とする塗工装置用ロッド。 - 前記硬質素材のコーティング膜は、硬質クロムメッキ、アモルファスクロムメッキのコーティング膜であることを特徴とする請求項1又は2の塗工装置用ロッド。
- 前記ロッド表面の前記凸部及び凹部を転造加工法により形成したことを特徴とする請求項1、2、又は3の塗工装置用ロッド。
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