JP2004248863A - 電気掃除機 - Google Patents
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Abstract
【課題】単一の吸込口体に複数の吸込口を設け、床に適合した吸込口を使用することにより清掃効率を高めることができるとともに、吸込口体で発生した騒音のレベルを下げることができる電気掃除機を提供する。
【解決手段】吸込口体70は第1の吸込口81と第2の吸込口82を備える。第1の吸込口81は第1の吸込通路83に連通し、第2の吸込口82は第2の吸込通路85に連通する。第1の吸込口81はアジテーター110を備え、第2の吸込口82と第2の吸込通路85は第1の吸込口81と第1の吸込通路83よりも外側に位置する。第1の吸込通路83と第2の吸込通路85の間の仕切壁88には肉厚部88aを設け、第2の吸込通路85の中に通風量調節部85aを形成する。肉厚部88aは発泡体を用いた防音構造とする。
【選択図】 図10
【解決手段】吸込口体70は第1の吸込口81と第2の吸込口82を備える。第1の吸込口81は第1の吸込通路83に連通し、第2の吸込口82は第2の吸込通路85に連通する。第1の吸込口81はアジテーター110を備え、第2の吸込口82と第2の吸込通路85は第1の吸込口81と第1の吸込通路83よりも外側に位置する。第1の吸込通路83と第2の吸込通路85の間の仕切壁88には肉厚部88aを設け、第2の吸込通路85の中に通風量調節部85aを形成する。肉厚部88aは発泡体を用いた防音構造とする。
【選択図】 図10
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電気掃除機の吸込口部の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気掃除機では、電動送風機の運転によって発生する気流とともに塵埃を吸込口から吸い込み、吸い込んだ気流を集塵装置に導入して塵埃を捕集する。このような電気掃除機の例を特許文献1〜3に見ることができる。これらの特許文献はカーペットから塵埃をかき出すアジテーターを吸込口に設けた電気掃除機の例を示すものでもある。
【0003】
【特許文献1】
特開昭61−191329号公報
【特許文献2】
特開平8−164095号公報
【特許文献3】
特開平6−154134号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
電気掃除機において、ただ1種類の吸込口ですべての種類の床の掃除を行おうとするのは無理がある。そこで本発明は、単一の吸込口体に複数の吸込口を設け、床に適合した吸込口を使用することにより清掃効率を高めることのできる電気掃除機を提供することを目的とする。また電気掃除機の吸込口体は一般的に気流を吸い込む音がうるさい。アジテーターを設ければ、アジテーターを駆動する音、アジテーターが床をこする音、さらにはアジテーターによる風切り音が加わり、騒音レベルが一層高くなる。本発明はこのように吸込口体で発生した騒音のレベルを下げることができる電気掃除機を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、電動送風機の運転によって発生する気流とともに塵埃を吸込口体の吸込口から吸い込み、吸い込んだ気流を集塵装置に導入して塵埃を捕集する電気掃除機において、吸込口体を次のように構成した。
【0006】
(1)吸込口体に第1の吸込口と第2の吸込口を設け、前記第1の吸込口は吸込口体内に設けた第1の吸込通路に連通させ、前記第2の吸込口は前記第1の吸込通路と独立して吸込口体内に設けた第2の吸込通路に連通させるとともに、吸込口体の少なくとも一部を防音構造とした。
【0007】
この構成によれば、吸込特性の異なる第1の吸込口と第2の吸込口を使い分けることにより、単一の吸込口体を多種の床に対応させることができる。また、少なくとも騒音レベルの高い側の吸込口に対し防音構造の対策を施すことにより、吸込口体の騒音レベルを下げることができる。騒音レベルの高い箇所には防音効果の高い防音構造を配置するといった具合に、防音構造の実施や防音性能の程度を調整することにより、効率良く電気掃除機の低騒音化を図ることができる。
【0008】
(2)上記のような吸込口体において、前記第1の吸込通路と第2の吸込通路の間の少なくとも一部を防音構造とした。
【0009】
この構成によれば、第1の吸込通路からの騒音と第2の吸込通路からの騒音とが直接重畳するということがなくなり、吸込口体の外で聞く騒音のレベルを下げることができる。
【0010】
(3)上記のような吸込口体において、前記第2の吸込通路の少なくとも一部は前記第1の吸込通路よりも外側にあり、この部分における第1の吸込通路と第2の吸込通路の間の少なくとも一部を防音構造とした。
【0011】
この構成によれば、第2の吸込通路の存在それ自体が第1の吸込通路からの騒音に対し防音機能を発揮する。また、この部分において第1の吸込通路と第2の吸込通路の間に設けた防音構造が第1の吸込通路からの騒音のレベルを一層下げる。
【0012】
(4)上記のような吸込口体において、前記第1の吸込通路と第2の吸込通路とが下流で合流するものとした。
【0013】
この構成によれば、第1の吸込通路と第2の吸込通路を集約し、防音構造を必要とする範囲を限定することができる。
【0014】
(5)上記のような吸込口体において、前記合流地点に吸込口切替装置が設けられているものとした。
【0015】
この構成によれば、第1の吸込口と第2の吸込口をそれぞれ単独で使用することが可能になる。
【0016】
(6)上記のような吸込口体において、前記第1の吸込通路と第2の吸込通路の少なくとも一方に、通路壁を肉厚にして通路幅を絞った通風量調節部を形成した。
【0017】
この構成によれば、通路壁の肉厚の漸増漸減によりなだらかな絞り部を形成でき、渦の発生によるエネルギー損失を招くことなく通風量の調節を行うことができる。
【0018】
(7)上記のような吸込口体において、前記通路壁の肉厚部の少なくとも一部を防音構造とした。
【0019】
この構成によれば、肉厚に構成できることを利用して防音性能の優れた防音構造とすることができる。
【0020】
(8)上記のような吸込口体において、前記第1の吸込口にアジテーターを設けるとともに、前記第2の吸込口と第2の吸込通路の少なくとも一部を、前記第1の吸込口と第1の吸込通路よりも外側に配置した。
【0021】
この構成によれば、アジテーターが存在することにより騒音レベルが高くなる第1の吸込口と第1の吸込通路に対して第2の吸込口と第2の吸込通路が防音機能を発揮し、吸込口体の騒音レベルを下げることができる。
【0022】
(9)上記のような吸込口体において、前記第1の吸込通路と第2の吸込通路の間の仕切壁が防音構造となっているものとした。
【0023】
この構成によれば、構造部材である仕切壁を防音構造とすることにより、騒音レベルを根元的に下げることができる。
【0024】
(10)上記のような吸込口体において、前記防音構造が、発泡体単独、又は発泡体と剛体の組み合わせにより構成されるものとした。
【0025】
この構成によれば、高性能の防音構造を手軽且つ安価に得るとともに、電気掃除機の軽量化ももたらすことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態である電気掃除機の構造を図1〜図12に基づき説明する。電気掃除機の構造を説明するにあたり、電気掃除機を前に置き、その後に使用者が立って電気掃除機を操作するという形で使用者が立つ側が電気掃除機の後方側、その反対側を電気掃除機の前方側(正面側)と定義する。左右に関しては、電気掃除機を前方(正面)から見たとき、観察者の左手側を電気掃除機の左側、その反対側を電気掃除機の右側と定義する。
【0027】
図1は電気掃除機の斜視図、図2は電気掃除機の垂直断面図、図3は掃除機本体の部分水平断面図、図4は吸込口体の部分を断面した電気掃除機の側面図、図5は吸込口及び吸込通路の基本的配置を示す吸込口体の部分拡大断面図、図6は吸込口切替装置の斜視図、図7は吸込口切替装置の分解斜視図、図8は吸込口体の内部機構の斜視図、図9は吸込口体の内部機構の一部の斜視図にして、図8と異なる方向から見たもの、図10は吸込口体内の防音構造を示す吸込口体の部分拡大断面図、図11は蓋を取り去った状態の吸込口体の上面図、図12は図4と同様の側面図にして、異なる動作状態を示すものである。
【0028】
電気掃除機1はアップライトタイプで、大きく二つの部分に分かれる。その一つは掃除機本体10であり、他の一つは吸込口体70である。吸込口体70を形づくるシェル(例えば合成樹脂成型品からなる)は次のような構造を有する。まず中央に平箱状の中央シェル71があり、その左右に側部シェル72、73の部分が設けられる。側部シェル72、73の後部は中央シェル71よりも後方に突き出し、後方突出部74、75を形成している。吸込口体70は全体としてコの字形の平面形状を有し、後方突出部74、75の間に掃除機本体10を受け入れる。
【0029】
掃除機本体10は二つのシェル部分から形づくられている。その一つは円筒形の送風機シェル11、他の一つは送風機シェル11から突出する集塵装置保持部12である。送風機シェル11の内部には電動送風機13が配置される(図2参照)。電動送風機13の軸線は送風機シェル11の軸線と略平行で、共に略水平状態にある。
【0030】
送風機シェル11は軸線を略水平状態にして吸込口体70の後方突出部74、75の間に配置され、その軸線上に配置した支軸を後方突出部74、75に嵌合させている。後方突出部74の側では送風機シェル11の端面から突出する支軸14が後方突出部74に設けた軸受部76に軸支される。後方突出部75の側では電動送風機13のモータ軸の延長である駆動軸15が後方突出部75の中に入り込む。この駆動軸15を包む筒状の支軸(図示省略)を送風機シェル11の端面から突出させ、この筒状の支軸を後方突出部75に設けた軸受部77に軸支させる。これら左右の支軸により送風機シェル11は水平軸線まわりに回動できるよう吸込口体70に連結される。
【0031】
集塵装置保持部12は中空で、全体として細長い、すなわち長手方向を有する形状となっており、その長手方向は送風機シェル11の軸線と略直角状態にある。集塵装置保持部12の突出位置は送風機シェル11の中央ではなく、左右いずれかに偏っている。第1実施形態では送風機シェル11の左側から集塵装置保持部12が突出する。
【0032】
集塵装置保持部12の一側には後述する集塵装置の底部及び頂部を支える台座部16及びオーバーハング部17を設ける。台座部16は送風機シェル11より立ち上がる形で設けられており、オーバーハング部17は集塵装置保持部12の側面に形成されている。台座部16とオーバーハング部17は送風機シェル11の上方空間に位置を占める。すなわち集塵装置保持部12の右側に位置する。台座部16とオーバーハング部17の間には後述する集塵装置の左半分を後から支える後部支持壁18が設けられる(図3参照)。後部支持壁18は集塵装置保持部12の側面に形成される。
【0033】
20は集塵装置である。集塵装置20は細長い円筒形のダストカップ21の中で気流を高速旋回させてサイクロン方式で塵埃を捕集するものである。図2に見られるようにダストカップ21の内部は水平隔壁22により上下2室に区画される。下方の区画は遠心分離室23、上方の区画は排気室24である。
【0034】
遠心分離室23の一側には流入口25が設けられる。流入口25は遠心分離室23の内周壁に沿って旋回気流を生じさせるような位置と角度に設定される。
【0035】
遠心分離室23の中心には排気筒26が配置される。排気筒26は下面が閉じ、上面が開口となった円筒形の籠状部材であって、水平隔壁22の中心に形設した通気口27に上面開口部を接合し、水平隔壁22から垂下する形で支持される。排気筒26の外周面にはナイロン等の合成繊維で織った細かいメッシュのフィルター28が貼着される。
【0036】
排気筒26の下端にはスタビライザー29が装着される。スタビライザー29は4枚の翼片を放射状に組み合わせ、水平断面を十字形としたものであり、その先端はダストカップ21の底面近くまで届く。スタビライザー29は気流からの塵埃の分離を促進し、またダストカップ21の底に溜まった塵埃の動きを抑制する働きをする。
【0037】
ダストカップ21の中の塵埃を捨てたり、フィルター28の掃除を行ったりするため、集塵装置20には適宜の手法でアクセス開口を設ける。アクセス開口は例えば、ダストカップ21の上部を開口として蓋で覆い、蓋を開けばそこから水平隔壁22もろとも排気筒26とスタビライザー29を引き抜けるようにするといった構造で実現できる。あるいは排気室24の部分を集塵装置20の本体、遠心分離室23の部分を本体に対し着脱可能なダストカップと、集塵装置20を上下分割構成とすることによっても実現できる。
【0038】
排気室24には流出口30が形設される。図3に見られるように、流入口25と流出口30は集塵装置20の集塵装置保持部12に対面する側の側面に設けられる。流入口25と流出口30は同じ方向、すなわち略左方を向く。
【0039】
集塵装置20の流入口25に対しては第1の通気路31が設けられ、流出口30に対しては第2の通気路32が設けられる。第1の通気路31は吸込口体70の吸込口(詳細は後述する)に連通するものであり、吸込口から吸い込んだ気流を流入口25に導く。第2の通気路32は電動送風機13の吸入口に連通するものであり、流出口30から出た気流を電動送風機13に導く。
【0040】
第1の通気路31の主たる部分はフレキシブルホース33によって構成される。フレキシブルホース33の一端は集塵装置保持部12に水平に設けた接続管34(図3参照)の一端に固定される。接続管34の他端が第1の通気路31の出口35となり、ここに集塵装置20の流入口25が接続する。流入口25接続時の気密を保つため、出口35にはシールリング36が装着されている。フレキシブルホース33の他端は吸込口体70の側部シェル72の上面に突出した接続管78に着脱自在に嵌合する。接続管78は吸込口に連通している。
【0041】
第1の通気路31の主たる部分をフレキシブルホース以外の管状体によって構成することもできる。例えば複数本の硬質パイプを伸縮自在に接続したもので置き換えることもできる。要は掃除機本体10を直立させたときと倒したときとの接続管34と接続管78の間の距離変動を吸収でき、且つ内部の圧力が大気圧より低下してもつぶれることのない管状体であればよい。
【0042】
第2の通気路32は集塵装置保持部12の中空部自体によって構成される。この中空部の上部は隔壁12a(図2参照)によって区切られ、従って第2の通気路32はオーバーハング部17の方には連通しない。集塵装置保持部12の側面には、集塵装置20の流出口30に対応する位置に、第2の通気路32の入口37が形設される。流出口30接続時の気密を保つため、入口37にはシールリング38が装着されている。
【0043】
図2に見られるように、第2の通気路32の下端は送風機シェル11の底まで届く。この第2の通気路32の下端の側壁に出口39が設けられる。出口39には電動送風機13の吸入口13aが気密保持兼用の防振クッション40を介して直接接続されている。
【0044】
集塵装置20は、その長手方向を集塵装置保持部12の長手方向と一致させる形で集塵装置保持部12に押しつける動作を通じ、集塵装置保持部12への取付が遂行される。より具体的に言えば台座部16及びオーバーハング部17と後部支持壁18とによって囲まれた空間に集塵装置20を挿入する動作を通じて取付がなされるものである。
【0045】
集塵装置20の上端にはスライド式のラッチ43が装着される。ラッチ43は図示しないバネにより常時上方に押し上げられており、集塵装置20の挿入の最終段階でオーバーハング部17の縁に係合する。このようになると、前記図示しないバネに抗してラッチ43を押し下げ、オーバーハング部17から離脱させないかぎり、集塵装置20を集塵装置保持部12から取り外すことはできない。
【0046】
台座部16の内部は電動送風機13が排気を行う排気空間50に連通する。また台座部16の中にはフィルター51が挿入されている。フィルター51は集塵装置20のフィルター28を通り抜けた細かい塵埃を捕集するため、例えば、フィルター28よりもさらに濾過性能の高い、HEPA(high−efficiencyparticulate air)フィルター等を使用してもよい。
【0047】
フィルター51で塵埃を捕捉された気流は台座部16の正面に形設された排気口54から室内に戻る。排気口54は水平なスリットを複数個、上下方向に並べて配置した形のものである。
【0048】
オーバーハング部17の内部には制御部60が配置される(図2参照)。制御部60と電動送風機13とはリード線を介して接続される。制御部60は電気掃除機1全体の動作を司るものである。オーバーハング部17の上面前部は各種スイッチボタンの並んだ操作パネル部61となる。オーバーハング部17に操作パネル部61を設けたので、操作がしやすい。
【0049】
集塵装置保持部12の先端には別成型のハンドル62が固定される。送風機シェル11の下面後部からは斜め下に向かってブラケット63が突き出し、これに車輪64が取り付けられる(図4参照)。車輪64は送風機シェル11の左右両端に1個ずつ設けられるものである。車輪64の前方には支持脚65が、これも左右1個ずつ形設される。集塵装置保持部12を垂直に立てれば、掃除機本体10は車輪64と支持脚65により床の上に4点支持される。
【0050】
次に吸込口体70の構造を説明する。前述の通り、吸込口体70は平箱状の中央シェル71の左右に側部シェル72、73の部分を設け、側部シェル72、73の後部を後方突出部74、75としたものである。中央シェル71と側部シェル72、73は例えば合成樹脂により一体成型される。
【0051】
中央シェル71と側部シェル72、73の下面は開口となっており、底板80がこの開口を閉ざす。底板80の前方部分には複数の吸込口が形設される。底板80の後方部分は後の方ほど高くなる斜面となっている。
【0052】
この実施形態では底板80の前方部分に2個の吸込口が前後に並ぶ形で設けられる。第1の吸込口81は左右に細長く、後述するベルト駆動部を除く吸込口体70の幅にほぼ等しい幅を有する。第2の吸込口82は第1の吸込口81に平行する形で、第1の吸込口81の前方に位置して形設される。第2の吸込口82の開口面積は第1の吸込口81の開口面積よりずっと小さい。
【0053】
第1の吸込口81及び第2の吸込口82に対し、それぞれ独立した吸込通路が吸込口体70内に設けられる。第1の吸込口81に連通する第1の吸込通路83は中央シェル71側の下面に形成されている(図4参照)。第1の吸込通路83は漏斗のような形状を呈し、正面から見て左側に偏った位置に流出口84が設けられている。
【0054】
第2の吸込口82に連通する第2の吸込通路85は第1の吸込通路83の上に重なるように配置される。第2の吸込通路85は中央シェル71の上面側と、それに対し間隔を置いて着脱可能に取り付けられた蓋86との間に形成される。
【0055】
蓋86は前端を中央シェル71に引っ掛け、後端をネジ又はラッチ86aで中央シェル71に連結して取付状態を保つ。蓋86は透明又は半透明の材料で成型され、第2の吸込通路85の中の様子を外からのぞくことができるようになっている。第2の吸込通路85の流出口87は第2の吸込通路85の後部中央付近に設けられる。
【0056】
側部シェル72の後方突出部74の内部には吸込口切替装置90を配置する。吸込口切替装置90はその弁箱91の前面に上下2連の流入口92、93を有する。下の流入口92は第1の吸込通路83の流出口84に接続される。図4に見られるように流出口84を流入口92に直接連結することにより、気流の通路構造が簡単になり、流通効率が向上する。上の流入口93は図示しないホースを介して第2の吸込通路85の流出口87に接続される。すなわち第1の吸込通路83と第2の吸込通路85とは下流に配置された吸込口切替装置90の箇所で合流する。
【0057】
弁箱91の上面には流入口92、93に共通する流出口が設けられるが、この実施形態の場合、その流出口そのものが第1の通気路31の始まりである接続管78となっている。
【0058】
弁箱91の中には垂直面内で回動する切替弁95が配置される。切替弁95は弁軸96に取り付けられ、弁軸96の回動に伴って回動する。回動により切替弁95は流入口92、93の一方を選択的に閉ざし、他方を開く。吸込口切替装置90の詳細な構造は後で説明する。切替弁95の両面には流入口92、93を閉ざしたときの気密性を良くするために軟質ゴム等により成型したシール部材(図示せず)が装着されている。
【0059】
吸込口体70の底面には第1及び第2の接地支持部が設けられる。第1の接地支持部101は第2の吸込口82の近傍、この場合には第2の吸込口82の両端に位置するように設けられた車輪により構成される。
【0060】
第2の接地支持部102は底板80に形設された左右一対の突起により構成される。第2の接地支持部102は第1の吸込口81の後方に設けられる。この箇所は底板80の後方部分の傾斜が始まるあたりでもある。集塵装置保持部12を直立させたときは図4に示すように第2の接地支持部102が吸込口体70の支えとなり、第1の接地支持部101は床から浮き上がる。
【0061】
吸込口体70の前端からはガイド部103が突出する。ガイド部103は第2の吸込口82の前方に位置し、ほぼ吸込口体70の全幅に等しい幅を有する。ガイド部103の下面は第2の吸込口82に向かって次第に低くなる斜面104となる(図5参照)。斜面104の前端は第2の吸込口82の入口より3mm程度高くなっている。
【0062】
第1の吸込口81にはアジテーター110が設けられる。アジテーター110としては円筒形の回転体の周囲に所定のスキュー角をもって複数条の剛毛の列を植え込んだものを使用するのが一般的であるが、剛毛の列に代え、ゴムや軟質合成樹脂の薄片を装着したものを使用してもよい。アジテーター110は、第1の吸込口81の横幅方向に軸線を整列させ、外周部の一部が第1の吸込口81から外に突出する形で吸込口体70の内部に軸支される。
【0063】
アジテーター110の回転動力源となるのは電動送風機13の駆動軸15であり、ここから次のような動力伝達機構を経由してアジテーター110に動力が伝達される。図2に見られるように、駆動軸15には原動プーリー111が固定され、この原動プーリー111と、アジテーター110の軸にアジテーター110と一体回転するよう固定した駆動プーリー(後述)とにベルト113が巻き掛けられる。原動プーリー111及びベルト113は側部シェル73の内部に位置する。なお、駆動軸15に別体の原動プーリー111を固定するということをしないで、ベルト113を駆動軸15に直接巻き掛けてもよい。
【0064】
電動送風機13の運転中にアジテーター110の回転を止めることができるよう、アジテーターと独立して回転可能なアイドラーを駆動プーリーと並べて配置する。ベルト113がアイドラーに掛かった状態ではアイドラーが空転するのみで、アジテーター110には動力が伝わらない。ベルト113の掛け替えを行うためのベルト掛替装置120が側部シェル73の内部に設けられるが、その構造は後で詳しく説明する。
【0065】
次に図6及び図7に基づき吸込口切替装置90の詳細構造を説明する。吸込口切替装置90の弁箱91は左側面が開口しており、この開口を蓋131が閉ざす。蓋131は弁箱91にネジ止め固定される。気密を保つため、弁箱91の開口部の口縁にはシール部材91aが貼着されている。
【0066】
弁軸96には切替弁95とレバー132とが一体に成形される。成形手法としては弁軸96、切替弁95、及びレバー132の三者を合成樹脂や金属の射出成型等により一体成型してもよく、あるいは別々に成型したものを組み立てて固定してもよい。
【0067】
弁軸96の右端は小径部96aとなっていて、この部分は弁箱91に設けた軸穴(図示せず)から弁箱91の右側面に突出する。小径部96aの左側の部分は弁箱91の内面に形設した断面半円形の凹部91bと蓋131に形設した半円形の切り欠き131aとに挟まれる形で軸支される。つまり凹部91bと切り欠き131aが合わさって1個の軸受部が構成されることになる。なお凹部91bは流入口92、93の間にあり、弁箱91の内部では気流の上流側に位置する。このように気流の上流側に配置するのは弁軸96に塵埃がからみついて切替弁95の動きに影響を与えたりしないようにするためである。
【0068】
弁軸96が切り欠き131aから出たところにレバー132が一体に成形される。レバー132は吸込口切替装置90とベルト掛替装置120とを連動させる連動手段の一構成要素となる。このように切替弁95に加えてレバー132まで一体に成形するため、弁軸96にはエンジニアリングプラスチックグレードの合成樹脂あるいは金属といった所定の強度を備えた材料が使用される。
【0069】
レバー132は弁軸96から長短2個のアーム132a、132bを互いに反対方向に突出させた形状になっている。長い方のアーム132aの先端の方にはスリット132cが形設されている。スリット132cの長手方向は長い方のアーム132aの長手方向に一致する。短い方のアーム132bと蓋131との間にはトグルバネ133が配置される。
【0070】
トグルバネ133はねじりコイルバネにより構成され、一端を短い方のアーム132bの先端に、他端を蓋131の外面に形設された中空ボス131bに、それぞれ係合させている。短い方のアーム132bと中空ボス131bが最も接近する弁軸96の角度位置が思案点となり、この点を境にしてトグルバネ133は、流入口92を閉ざす付勢力又は流入口93を閉ざす付勢力を切替弁95に与えるものである。
【0071】
弁軸96の左端には切替弁95の切り替え操作を行うためのペダル134が装着される(図1参照)。ペダル134は吸込口体70の後方突出部74の左上角に形設された凹部74aに配置される。ペダル134は弁軸96への取付部を中心として前後の部分が互いに角度をなし、側面から見ると「く」の字の形状を呈している。ペダル134の前後の部分のうち浮き上がった方を踏むと、ペダル134はシーソーのような動きをして弁軸96を回動させる。
【0072】
次に図8及び図9に基づきベルト掛替装置120の詳細構造を説明する。ベルト掛替装置120は細長いフレーム141を中心として組み立てられる。フレーム141は長手方向を吸込口体70の前後方向に向けて側部シェル73の内部に固定される。フレーム141の下部をベルト113が通る。ベルト113は駆動プーリー112とアイドラー114との間で掛け替えられる。駆動プーリー112はアジテーター110の軸110aにアジテーター110と一体回転するように固定される。アイドラー114は駆動プーリー112の右隣に位置し、アジテーター110と独立して回転可能である。
【0073】
フレーム141は前後方向に延びる支軸142を支持する。支軸142の軸線はベルト113の延長方向と平行である。支軸142はベルト113を動かすためのフォーク150を回動自在に支持する。フォーク150は金属製の本体151と合成樹脂製の軸支部152とを互いに回転不能に組み合わせたものである。フォーク150の本体151と軸支部152とはインサート成型、ネジ止め、カシメ等により固定される。軸支部152が合成樹脂製であるため、フォーク150が支軸142に対して回転したとき、あまり騒音が発生しない。
【0074】
フォーク150の本体151はその長手方向を支軸142及びベルト113の延長方向に平行させる形で軸支部152の前方に延び出している。本体151はその先端の1対の平行壁部151aでベルト113を挟み付ける。平行壁部151aは本体151と平行に延び、且つ互い同士も平行を保っている。平行壁部151aは軸支部152から所定距離以上隔たっている。
【0075】
軸支部152の上部にはノブの形をした操作部152aが突設される。操作部152aは吸込口体70の後方突出部75に形設した窓75aから外に突き出す。操作部152aが窓75aの一方の端に設けた当たりに当たるところが軸支部152の一方の回動限界、操作部152aが窓75aの他方の端に設けた当たりに当たるところが軸支部152の他方の回動限界となる。すなわち操作部152aと窓75aによりフォーク150の回動限界を定めるストッパー手段153が構成される。なお窓75aのところの当たりについては、操作部152aが側部シェル73に当たることとしてもよく、あるいはフレーム141に当たることとしてもよい。
【0076】
軸支部152とフレーム141との間には図示しないトグルバネが配置される。このトグルバネもトグルバネ133と同様にねじりコイルバネにより構成され、一端は軸支部152に、他端はフレーム141に、それぞれ係合し、軸支部152の角度変換を歯切れ良く行わせる。
【0077】
軸支部152の左側面からは放射方向にレバー154が突出する。フレーム141の左側面にはレバー155が支軸156により垂直面内で回動できるよう支持されている。レバー155の一方のアームに設けたスリット155aがレバー154に係合する。レバー155の他方のアームもスリット155bを有する。スリット155a、155bの長手方向はレバー155自体の延びる方向に一致する。
【0078】
吸込口切替装置90とベルト掛替装置120とは連動手段160で連結される。連動手段160の主部をなすのは鋼棒あるいは鋼管を略コの字形に折曲成形したクランク161である。クランク161は左右一対の軸受部162により水平軸まわりに回動できるよう吸込口体70の内部に軸支される。クランク161の一方の端部161aは吸込口切替装置90の側のレバー132のスリット132cに係合する。クランク161の他方の端部161bはベルト掛替装置120の側のレバー155のスリット155bに係合する。レバー132と同様、レバー155も連動手段160の一構成要素となる。
【0079】
上記のようにコの字の形をした吸込口体70で掃除機本体10を挟み、この吸込口体70の一方の側に吸込口切替装置90を配置し、他方の側にベルト掛替装置120を配置する構成により、吸込口切替装置90とベルト掛替装置120の一定部分を掃除機本体10の左右に重なるように配置でき、吸込口体70の寸法、特に前後方向の寸法を切りつめることができる。
【0080】
次に電気掃除機1の動作を説明する。使用していないとき、すなわち保管時の電気掃除機1は図4に示すように集塵装置保持部12が直立状態にあり、掃除機本体10は2個ずつの車輪64と支持脚65により床の上に4点支持されている。吸込口体70においては第2の接地支持部102が吸込口体70の支えとなり、第1の接地支持部101は床から浮き上がっている。アジテーター110も床には接触していない。
【0081】
電気掃除機1を使用するときは、図示しないコードを伸ばして電源コンセントに接続し、片手でハンドル62を持って図12のように集塵装置保持部12を傾け、清掃作業態勢へと姿勢変換する。すると掃除機本体10がてこのように作用する。すなわちハンドル62がてこの力点、車輪64がてこの支点、支軸14及び駆動軸15(駆動軸15の外側の筒状の支軸)がてこの作用点となり、支軸14及び駆動軸15(駆動軸15の外側の筒状の支軸)が吸込口体70の後部を持ち上げる。支持脚65は床から離れる。
【0082】
ハンドル62の高さが床から60〜80cm程度になるまで掃除機本体10を傾けると、第2の接地支持部102が床から離れ、第1の吸込口81及び第2の吸込口82を有する底板80の前方部分が床とほぼ平行になる。そして第1の接地支持部101及びアジテーター110が床に接触する(図5参照)。60〜80cmというのは平均的な体格の成人が清掃作業のため電気掃除機1を押したり引いたりするときのハンドル62の高さである。
【0083】
この状態で第2の吸込口82の入口の床からの高さ(図5のH1)が0.8〜2mmになるように第1の接地支持部101の突出度を調節して設定する。第2の吸込口82はこの距離(0.8〜2mm)までは床に接近するが、ここで第1の接地支持部101が床に当たり、それ以上には接近しない。
【0084】
ここで操作パネル部61の所定のスイッチを操作し、電動送風機13を駆動する。電動送風機13は吸入口13aより第2の通気路32、集塵装置20、第1の通気路31を通じて吸込口体70に吸引力を及ぼす。
【0085】
吸込口切替装置90が第1の吸込口81を選択した状態になっていれば第1の吸込口81から気流が吸い込まれる。吸込口切替装置90が第2の吸込口82を選択した状態になっていれば第2の吸込口82から気流が吸い込まれる。第1の吸込口81を選択した状態ではベルト掛替装置120がベルト113を駆動プーリー112に掛ける。従って電動送風機13の駆動によりアジテーター110が駆動される。
【0086】
以下、吸込口切替装置90により第1の吸込口81が選択されたものとして説明を進める。回転するアジテーター110は床又は床に敷かれた敷物から塵埃をかき上げる。軟質の床材(例えば毛足の長さが4〜20mmのカーペット)の上でアジテーター110を回転させるときは第1の接地支持部101が軟質床材に沈み込む。このためアジテーター110や第1の吸込口81が軟質床材に近づき、塵埃のかき出しや吸引が力強く行われる。第1の接地支持部101の正面から見た幅に制限を加えておけば(例えば第1の接地支持部101の合計の正面幅を第1の吸込口81の幅の半分以下とする、あるいは接地支持部101の各々の幅を10〜20mmとする)、第1の接地支持部101の軟質床材への沈み込みは確実なものになる。
【0087】
上記のように、カーペットの上では第1の接地支持部101がカーペットの毛足の中に沈み込み、底板80の前方部分が吸込口体70を支持する。そのため、カーペットの上での操作性は確保される。アジテーター110の外周と第1の吸込口81の後縁との間隔(図5のG1)を5〜10mmにしておくと操作性と吸込性能が両立する。
【0088】
また床からガイド部103の先端までの高さ(図5のH2)は床から第2の吸込口82の入口までの高さ(図5のH1)より3mm程度(3〜4.5mm程度でよい)高くなっているので、底板80の前方部分がカーペットに当たった状態でもカーペットの上の塵埃を排除しない。米粒大のごみであればその上をガイド部103が乗り越え、第1の吸込口81に誘い込む。ごみの乗り越え性能を確保するため、斜面104の傾斜は水平面に対し40〜50゜を超えないようにするのがよい。
【0089】
アジテーター110のかき上げた塵埃は第1の吸込口81から流入する気流とともに吸込口切替装置90の流入口92に入り、吸込口切替装置90の中から接続管78を通って第1の通気路31に入る。第1の通気路31を通り抜けた気流は集塵装置20の流入口25から遠心分離室23に入る。
【0090】
流入口25から流入した気流は排気筒26の周囲を高速で旋回する。気流中の塵埃は遠心力で気流から分離され、ダストカップ21の底に溜まる。塵埃を分離した旋回気流は排気筒26に吸い込まれ、排気室24に抜ける。遠心分離されなかった塵埃はフィルター28で濾過される。排気室24に抜けた気流は流出口30より流出する。
【0091】
遠心分離室23の中で旋回する気流は、排気筒26の周囲ばかりでなく、スタビライザー29の周囲も旋回する。その際気流がスタビライザー29の翼片に衝突すると気流中の塵埃が気流から離れてダストカップ21の底に落ちる。塵埃の吸引を続けるとダストカップ21の底の方から塵埃の塊が成長するが、スタビライザー29はこの塵埃塊の動きを抑制し、塵埃が再び舞い上がるのを防ぐ。
【0092】
集塵装置20を出た気流は第2の通気路32に入る。第2の通気路32は電動送風機13の吸入口13aまで略同一平面でつながっており、気流は何にも遮られたり邪魔されたりすることなく吸入口13aに直進する。集塵装置保持部12の中空部自体が第2の通気路32を構成しているため、大面積の通気路とすることができ、この点でも気流の流通効率が向上する。
【0093】
電動送風機13に吸い込まれた気流は排気空間50に吐出され、台座部16に入る。フィルター28で濾過されなかった細かな塵埃はフィルター51で濾過される。その後、気流は排気口54から排出される。
【0094】
電動送風機13が駆動されている間、ベルト113が走行する。走行するベルト113がフォーク150に接触するのを全く防ぐことはできない。しかしながらベルト113が接触するのは金属製の本体151の平行壁部151aである。そのため本体151は、摩擦熱で温度上昇することは避けられないが、合成樹脂成型品と異なり、過熱して損傷することはない。摩耗にも強い。また平行壁部151aは軸支部152から所定距離以上隔たっているので、平行壁部151aと軸支部152の間に位置する本体151の部分で放熱が行われ、合成樹脂成型品である軸支部152に平行壁部151aから過度の摩擦熱が伝わることはない。
【0095】
部屋の隅を掃除するときにはペダル134を操作して吸込口切替装置90を第2の吸込口82の方に切り替える。すなわち今まで切替弁95が流入口92を開き、流入口93を閉ざしていたのを流入口93が開き、流入口92が閉ざされるようにする。この時弁軸96は図8において反時計方向(矢印A方向)に回動する。するとレバー132がクランク161の端部161aを持ち上げ、クランク161全体が軸受部162の中で時計方向(矢印B方向)に回動する。この動きに伴い、クランク161の他の端部161bがレバー155の前部を持ち上げる。レバー155の後部は逆に下がり、レバー154を押し下げる。これにより、フォーク150は支軸142の軸線まわりに回動する。回動方向は正面から見て反時計方向(矢印C方向)である。
【0096】
フォーク150が正面から見て反時計方向に回動すると、平行壁部151aは支軸121の中心からの距離を半径とする弧を描いて左から右へと移動する。この動きに伴いベルト113は駆動プーリー112からアイドラー114へと掛け替えられる。フォーク150はベルト113の延長方向と平行な軸線まわりに回動するものであり、先端の平行壁部151aのところで振れが増幅される機構ではないため、ベルト113の移動は常に安定している。またストッパー手段153によりフォーク150の回動限界が定まるのでベルト113は所定の位置にきちんと位置決めされる。
【0097】
軸支部152をどれだけ回動させても平行壁部151aはベルト113の延長方向と平行を保つ。そのため、ベルト113の変形(ひねり、こじり)が少ない。これは平行壁部151aにとってもベルト113にとってもダメージが少ないということを意味する。
【0098】
電動送風機13が停止し、駆動軸15が回転していない状態では掛け替えは完全なものではないが、ひとたび電動送風機13の駆動が開始されればベルト113はアイドラー114に完全に乗り移る。ベルト113をアイドラー114から駆動プーリー112に掛け替えるときにも同じことが言える。
【0099】
第1の吸込口81から第2の吸込口82に切り替えるのは操作部152aの操作によっても可能である。すなわち第1の吸込口81を使用する状態では操作部152aは窓75aの右端に位置している。操作部152aを窓75aの左端に移動させるとフォーク150が正面から見て反時計方向に回動し、ベルト113を駆動プーリー112からアイドラー114に掛け替える。同時にレバー154が下がり、レバー155の後部を押し下げる。レバー155の前部は上がり、クランク161の端部161bを持ち上げる。クランク161全体が軸受部162の中で矢印Bの反対方向に回動し、クランク161の他の端部161aがレバー132の長い方のアームを持ち上げる。これにより弁軸96が矢印Aの反対方向に回動し、切替弁95は流入口93を開き、流入口92を閉ざす位置へと移動する。
【0100】
第2の吸込口82を用いて吸塵を行う場合、硬質の床の上では第1の接地支持部101が第2の吸込口82の入口と床との間隔を安定して所定の値(0.8〜2mm)に保つ。そのため第2の吸込口82と床との間に塵埃の通り道が確保される。第2の吸込口82は第1の吸込口81に比べ開口面積が小さく、狭い箇所に吸引力が集中する。従って第2の吸込口82の入口には高速の吸込気流が発生し、アジテーターの回転を伴う吸込方式より強力な吸引力が塵埃に及ぼされる。0.8〜2mmという隙間にすることにより、砂塵やパウダー状の塵を効率良く吸い込むことができる。
【0101】
第2の吸込口82を使用するとき、吸い込んだ気流は透明又は半透明の蓋86の下を通る。従って、塵埃の吸込状況を直接目視で確認することができる。第2の吸込通路85にごみが詰まった場合には蓋86を取り外して詰まりの原因となっているごみを取り除くことができる。
【0102】
塵埃の吸い込みに使用できるのは第1の吸込口81と第2の吸込口82だけではない。フレキシブルホース33も利用できる。フレキシブルホース33を接続管78から抜き、フレキシブルホース33の先端に隙間ノズルや家具用ブラシといった吸込ツールを取り付ければ、吸込口体70を届かせにくい狭い場所や高い場所の掃除を行うことができる。
【0103】
清掃作業が済んだら電気掃除機1を不使用時の保管場所まで運び、掃除機本体10に保管時の姿勢をとらせる。すなわち集塵装置保持部12を直立させる。すると吸込口体70の後部が下がり、第2の接地支持部102が床に当たって吸込口体70の支えとなり、第1の接地支持部101は床から浮き上がる。アジテーター110の外周も床から浮き上がる。従って、この時点でまだ電動送風機13が駆動中であったとしても、アジテーター110が床をこすることがなく、床を傷つけない。
【0104】
集塵装置保持部12を直立させているかぎり、アジテーター110の外周は床に触れない。従って長時間そのままで置いたとしてもアジテーター110に植えた剛毛(あるいは、ゴムや軟質合成樹脂の薄片)が変形することはない。
【0105】
集塵装置20に大量の塵埃が蓄積されたらラッチ43を外して集塵装置20を引き抜き、内部の塵埃を捨てる。必要があればフィルター28も掃除する。それから集塵装置20を元通りにセットする。ダストカップ21を透明又は半透明の材料で成型することとすれば、塵埃の蓄積具合を確認しやすい。
【0106】
第2の吸込口82、及び第2の吸込通路85の幅を極限まで広げてもよい。すなわち吸込口体70の左右側壁の肉厚しか残らないところまで第2の吸込口82と第2の吸込通路85(その入口部)の幅を広げるのである。吸込口体70の強度は少し低下するが、第2の吸込口82の吸い込み幅が広くなり、さらなる吸込力の向上につながる。
【0107】
次に吸込口体70の内部の防音の仕組みについて説明する。
【0108】
第1の吸込通路83と第2の吸込通路85を隔てる仕切壁88は、一部が肉厚部88aとなっている。肉厚部88aは第2の吸込通路85の中にはみ出す形で肉厚をかせぐ。このため、第2の吸込通路85は、上下の通路壁(蓋86の下面と仕切壁88の上面)のうち、下側の通路壁が肉厚となるとともに、この肉厚部88aにより通路幅(本明細書では蓋86と仕切壁88との間隔を「通路幅」と称する)が絞られている。第2の吸込口82から流出口87までの間の、通路幅の絞られた箇所が通風量調節部85aとなる。
【0109】
第2の吸込口82の両端と流出口87とを連絡するように、通路幅の絞られていない溝部85bが形設される。溝部85bは、上面又は正面から見てほぼ四分円状のカーブを描くように、左右対称的に形設される。このように通路幅の絞られていない、言い換えれば流路抵抗の小さい溝部85bが第2の吸込口82の両端と流出口87を結ぶので、第2の吸込口82の両端に対して大きな吸込力が働く。このため、第2の吸込口82の横幅が吸込口体70の横幅に満たないとしても、吸込口体70の全幅にわたり吸込力を及ぼすことができる。
【0110】
上記のように、溝部85bを設ければ第2の吸込口82を吸込口体70の全幅にわたる開口とする必要がなくなり、第2の吸込口82の左右に側部シェル72、73の前端部を残すことができる。この側部シェル72、73の前端部は第2の吸込口82を設けた部分より強度が大きく、そのため吸込口体70の耐衝撃性が向上する。この前端部の内面に補強リブを設けることとすれば、さらに耐衝撃性が向上する。それでありながら吸込性能は維持されている。
【0111】
第2の吸込通路85は通風量調節部85aと溝部85bとに区画したが、第1の吸込通路83はそれとは関係なく形状を設定する。すなわち、仕切壁88のうち、第1の吸込通路83に面する側には、第2の吸込通路85に面する側のような凹凸をつけない。左右方向に直線的に延びる、平坦な凹状湾曲面とする。
【0112】
上記のように、第1の吸込口81及びこれに連通する第1の吸込通路83と、第2の吸込口82及びこれに連通する第2の吸込通路85とは、互いに独立した設計とする。これにより、第1の吸込口81と第2の吸込口82を異なる目的に適合させることができる。
【0113】
第2の吸込通路85に通風量調節部85aと溝部85bを設けるため断面形状を変化させるのは、仕切壁88の方だけでよい。蓋86は肉厚の変わらない平坦な形状のままにしておくことができる。これにより、吸込口体70の外面は滑らかなラインを維持できる。蓋86を通しての視認性も影響を受けない。
【0114】
通風量調節部85a及び溝部85bは、吸込気流の上流側から下流側に向かって通路幅が均等であるか、あるいは漸増するようにする。このようにすることにより、通風量調節部85a又は溝部85bに塵埃が詰まる可能性を低くすることができる。通風量調節部85a及び溝部85bの最小通路幅を6mm以上にしておけば、シュレッダーで裁断した紙屑が引っかかることもない。
【0115】
通風量調節部85aは、仕切壁88に肉厚部88aを設けることによって得る。このため、通風量調節部85aを滑らかに連続する空間とすることができる。通路中にオリフィスを設けても気流を絞ることができるが、オリフィスだと後方に渦が生じる。この渦は気流のエネルギーを損じ、また騒音の原因ともなる。これに対し通路壁の肉厚変化により絞り効果を得る方式では、気流を滑らかに誘導しつつ絞り、渦の発生を少なくすることができる。これによりエネルギーロスが低減し、騒音の発生も招かない。
【0116】
気流を滑らかに誘導しつつ絞るという考えを徹底するため、通風量調節部85aと溝部85bとの境界(特に流出口87の近傍の部分)は、切り立った段差とせず、ゆるやかな傾斜面とする。これにより渦の発生がさらに少なくなり、低騒音化が促進される。
【0117】
第2の吸込通路85は、前後方向において、吸込口体70の前端下面の第2の吸込口82から流出口87まで、長い距離にわたって存在する。この第2の吸込通路85のほぼ全長にわたるように通風量調節部85aを設けることにより、気流を無理なく徐々に絞ってエネルギーロスをさらに低減し、騒音も抑えることができる。
【0118】
さて、吸込口体70の断面構造を見ると、第2の吸込通路85の少なくとも一部は第1の吸込通路83よりも外側、すなわち前方及び上方に存在することになる。この第2の吸込通路85の存在それ自体が第1の吸込通路83から発散する騒音に対し防音機能を発揮する。
【0119】
第1の吸込口81にはアジテーター110が設けられており、アジテーター110を駆動する音、アジテーター110が床をこする音、さらにはアジテーター110による風切り音が加わり、殊更騒音レベルが高い。このようにアジテーター110が存在することにより騒音レベルが高くなる第1の吸込口81と第1の吸込通路83に対し、その外側、すなわち前方及び上方に第2の吸込口82と第2の吸込通路85が位置するので、第2の吸込口82と第2の吸込通路85が防音機能を発揮し、吸込口体70の騒音レベルを下げることができる。
【0120】
仕切壁88の肉厚部88aは、肉厚であるということ自体で遮音効果が高まり、防音機能を発揮する。
【0121】
その防音機能を高めるため、肉厚部88aの少なくとも一部を防音構造にする。
具体的には、仕切壁88の蓋86に面した側に発泡体を貼り付けて肉厚にする。発泡体としては、ポリエチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、ABS樹脂をガスアシスト成型して内部を空洞にしたもの、などを用いることができる。
【0122】
このように発泡体を設けることにより、遮音性と吸音性が向上し、防音機能が高まる。
【0123】
発泡体の表面を剛体、例えば金属や硬質の合成樹脂で被覆しておけば、硬いごみが発泡体に突き刺さり、それが引金となって第2の吸込通路85の中にごみ詰まりが生じるといった事態を回避できる。
【0124】
剛体である仕切壁88の表面に発泡体を貼り付けるのでなく、仕切壁88の部分を別部品とし、全体を発泡体で成型することもできる。この場合、発泡体の中心に剛体の芯を入れてもよい。また発泡体の表面を剛体で覆ってもよい。あるいは次のようにしてもよい。すなわち別部品とした仕切壁88を中空に形成するとともに、この仕切壁88の一部をもって肉厚部88aの外殻形状を形取る。この仕切壁88の中空部に発泡体の原液を注入し、内部で発泡させる。このようにすれば、仕切壁88と肉厚部88aとが一体化した別部品を得ることができる。しかもこの場合、肉厚部88aの表面は剛体である仕切壁88に覆われた形になる。
【0125】
このように発泡体で防音構造を形成することにより、吸込口体70の軽量化を図ることができる。
【0126】
第1の吸込通路83の周囲の壁部のうち、仕切壁88以外の壁部に仕切壁88と同様の防音構造を設けることも可能である。例えば、図10においてアジテーター110の上部後方に位置する仕切壁170に、肉厚化、発泡体の貼り付け、あるいは発泡体化といった防音対策を施すことができる。ただしこの場合、正面から上面にかけての騒音を遮る仕切壁88の防音構造ほどには吸込口体70の低騒音化に貢献しない。
【0127】
なお、吸込口体70の重量増加が問題にならないのであれば、発泡体に代え、金属(例えば鉛、錫、鉄など)、金属繊維の織布に樹脂を含浸したもの、あるいは無機材料(雲母、セメントなど)により肉厚部を形成し、騒音低減を図ることもできる。
【0128】
仕切壁88の側でなく蓋86の方に肉厚部を設け、通風量調節部の形成と防音構造の生成を図ることもできる。この場合、蓋86の方だけに肉厚部を設けてもよいし、蓋86と仕切壁88の両方に肉厚部を設けてもよい。ただしこの場合、蓋86を通じての視認性が低下する、あるいは蓋86の重量が増し、着脱しにくくなるといった不利益は甘受しなければならない。また蓋86のみに防音構造を設けた場合、仕切壁88に防音構造を設ける場合に比べ、遮音できる領域の広さにおいて多少不利になる。
【0129】
この実施形態では、第1の吸込口81と第1の吸込通路83に対し、その前方及び上方に第2の吸込口82と第2の吸込通路85が位置している。第2の吸込口82と第2の吸込通路85の存在領域を拡大し、第1の吸込口81と第1の吸込通路83の側方(左側と右側)まで第2の吸込口82と第2の吸込通路85を回り込ませれば、吸込口体70の低騒音化は一層進む。第1の吸込通路83と第2の吸込通路85との間の側方の仕切壁にも仕切壁88と同様の防音構造を設けることとすれば、さらに低騒音化が進む。
【0130】
上記のように第2の吸込口82と第2の吸込通路85の存在範囲を拡大した場合、第2の吸込口82なら第2の吸込口82、第2の吸込通路85なら第2の吸込通路85を、左端から右端まで一続きのものする必要はない。第2の吸込口82であれば、例えば、吸込口体70の正面側の部分、左側面側の部分、及び右側面側の部分といった具合に3分割し、それぞれ独立させることができる。第2の吸込通路85も同様に3分割し、それぞれ独立させることができる。分割の数及び分割箇所の設定は任意である。
【0131】
以上、本発明の一実施形態につき説明したが、この他、発明の主旨を逸脱しない範囲で更に種々の変更を加えて実施することができる。また本実施形態では吸込口体を掃除機本体に回動可能に連結したアップライトタイプの電気掃除機を発明の適用対象としたが、掃除機本体と吸込口体をホースで連結するキャニスタータイプの電気掃除機も適用対象とできる。
【0132】
【発明の効果】
本発明によれば、吸込特性の異なる第1の吸込口と第2の吸込口を使い分けることにより、単一の吸込口体を多種の床に対応させることができる。また、少なくとも騒音レベルの高い側の吸込口に対し防音構造の対策を施すことにより、吸込口体の騒音レベルを下げることができる。騒音レベルの高い箇所には防音効果の高い防音構造を配置するといった具合に、防音構造の実施や防音性能の程度を調整することにより、効率良く電気掃除機の低騒音化を図ることができる。
【0133】
第2の吸込通路の少なくとも一部は第1の吸込通路よりも外側にあることとし、第2の吸込通路の存在それ自体により第1の吸込通路からの騒音に対し防音機能を発揮させることができる。また、この部分において第1の吸込通路と第2の吸込通路の間に設けた防音構造が第1の吸込通路からの騒音のレベルを一層下げる。
【0134】
また、第1の吸込通路と第2の吸込通路の少なくとも一方に、通路壁を肉厚にして通路幅を絞った通風量調節部を形成し、なだらかな絞りにより渦の発生によるエネルギー損失を招くことなく通風量の調節を行うことができるようにするとともに、この肉厚部の少なくとも一部を防音構造としたから、肉厚に構成できることを利用して防音性能の優れた防音構造とすることができる。
【0135】
さらに、発泡体単独、又は発泡体と剛体の組み合わせにより防音構造を構成することにより、高性能の防音構造を手軽且つ安価に得るとともに、電気掃除機の軽量化ももたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気掃除機の斜視図
【図2】電気掃除機の垂直断面図
【図3】電気掃除機の掃除機本体の部分水平断面図
【図4】吸込口体の部分を断面した電気掃除機の側面図
【図5】吸込口及び吸込通路の基本的配置を示す吸込口体の部分拡大断面図
【図6】吸込口切替装置の斜視図
【図7】吸込口切替装置の分解斜視図
【図8】吸込口体の内部機構の斜視図
【図9】同じく吸込口体の内部機構の一部の斜視図にして、図8と異なる方向から見たもの
【図10】吸込口体内の防音構造を示す吸込口体の部分拡大断面図
【図11】蓋を取り去った状態の吸込口体の上面図
【図12】図4と同様の側面図にして、異なる動作状態を示すもの
【符号の説明】
1 電気掃除機
10 掃除機本体
11 送風機ハウジング
12 集塵装置保持部
13 電動送風機
20 集塵装置
62 ハンドル
64 車輪
70 吸込口体
81 第1の吸込口
82 第2の吸込口
83 第1の吸込通路
85 第2の吸込通路
85a 通風量調節部
85b 溝部
86 蓋
87 流出口
88 仕切壁
88a 肉厚部
90 吸込口切替装置
【発明の属する技術分野】
本発明は電気掃除機の吸込口部の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気掃除機では、電動送風機の運転によって発生する気流とともに塵埃を吸込口から吸い込み、吸い込んだ気流を集塵装置に導入して塵埃を捕集する。このような電気掃除機の例を特許文献1〜3に見ることができる。これらの特許文献はカーペットから塵埃をかき出すアジテーターを吸込口に設けた電気掃除機の例を示すものでもある。
【0003】
【特許文献1】
特開昭61−191329号公報
【特許文献2】
特開平8−164095号公報
【特許文献3】
特開平6−154134号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
電気掃除機において、ただ1種類の吸込口ですべての種類の床の掃除を行おうとするのは無理がある。そこで本発明は、単一の吸込口体に複数の吸込口を設け、床に適合した吸込口を使用することにより清掃効率を高めることのできる電気掃除機を提供することを目的とする。また電気掃除機の吸込口体は一般的に気流を吸い込む音がうるさい。アジテーターを設ければ、アジテーターを駆動する音、アジテーターが床をこする音、さらにはアジテーターによる風切り音が加わり、騒音レベルが一層高くなる。本発明はこのように吸込口体で発生した騒音のレベルを下げることができる電気掃除機を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、電動送風機の運転によって発生する気流とともに塵埃を吸込口体の吸込口から吸い込み、吸い込んだ気流を集塵装置に導入して塵埃を捕集する電気掃除機において、吸込口体を次のように構成した。
【0006】
(1)吸込口体に第1の吸込口と第2の吸込口を設け、前記第1の吸込口は吸込口体内に設けた第1の吸込通路に連通させ、前記第2の吸込口は前記第1の吸込通路と独立して吸込口体内に設けた第2の吸込通路に連通させるとともに、吸込口体の少なくとも一部を防音構造とした。
【0007】
この構成によれば、吸込特性の異なる第1の吸込口と第2の吸込口を使い分けることにより、単一の吸込口体を多種の床に対応させることができる。また、少なくとも騒音レベルの高い側の吸込口に対し防音構造の対策を施すことにより、吸込口体の騒音レベルを下げることができる。騒音レベルの高い箇所には防音効果の高い防音構造を配置するといった具合に、防音構造の実施や防音性能の程度を調整することにより、効率良く電気掃除機の低騒音化を図ることができる。
【0008】
(2)上記のような吸込口体において、前記第1の吸込通路と第2の吸込通路の間の少なくとも一部を防音構造とした。
【0009】
この構成によれば、第1の吸込通路からの騒音と第2の吸込通路からの騒音とが直接重畳するということがなくなり、吸込口体の外で聞く騒音のレベルを下げることができる。
【0010】
(3)上記のような吸込口体において、前記第2の吸込通路の少なくとも一部は前記第1の吸込通路よりも外側にあり、この部分における第1の吸込通路と第2の吸込通路の間の少なくとも一部を防音構造とした。
【0011】
この構成によれば、第2の吸込通路の存在それ自体が第1の吸込通路からの騒音に対し防音機能を発揮する。また、この部分において第1の吸込通路と第2の吸込通路の間に設けた防音構造が第1の吸込通路からの騒音のレベルを一層下げる。
【0012】
(4)上記のような吸込口体において、前記第1の吸込通路と第2の吸込通路とが下流で合流するものとした。
【0013】
この構成によれば、第1の吸込通路と第2の吸込通路を集約し、防音構造を必要とする範囲を限定することができる。
【0014】
(5)上記のような吸込口体において、前記合流地点に吸込口切替装置が設けられているものとした。
【0015】
この構成によれば、第1の吸込口と第2の吸込口をそれぞれ単独で使用することが可能になる。
【0016】
(6)上記のような吸込口体において、前記第1の吸込通路と第2の吸込通路の少なくとも一方に、通路壁を肉厚にして通路幅を絞った通風量調節部を形成した。
【0017】
この構成によれば、通路壁の肉厚の漸増漸減によりなだらかな絞り部を形成でき、渦の発生によるエネルギー損失を招くことなく通風量の調節を行うことができる。
【0018】
(7)上記のような吸込口体において、前記通路壁の肉厚部の少なくとも一部を防音構造とした。
【0019】
この構成によれば、肉厚に構成できることを利用して防音性能の優れた防音構造とすることができる。
【0020】
(8)上記のような吸込口体において、前記第1の吸込口にアジテーターを設けるとともに、前記第2の吸込口と第2の吸込通路の少なくとも一部を、前記第1の吸込口と第1の吸込通路よりも外側に配置した。
【0021】
この構成によれば、アジテーターが存在することにより騒音レベルが高くなる第1の吸込口と第1の吸込通路に対して第2の吸込口と第2の吸込通路が防音機能を発揮し、吸込口体の騒音レベルを下げることができる。
【0022】
(9)上記のような吸込口体において、前記第1の吸込通路と第2の吸込通路の間の仕切壁が防音構造となっているものとした。
【0023】
この構成によれば、構造部材である仕切壁を防音構造とすることにより、騒音レベルを根元的に下げることができる。
【0024】
(10)上記のような吸込口体において、前記防音構造が、発泡体単独、又は発泡体と剛体の組み合わせにより構成されるものとした。
【0025】
この構成によれば、高性能の防音構造を手軽且つ安価に得るとともに、電気掃除機の軽量化ももたらすことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態である電気掃除機の構造を図1〜図12に基づき説明する。電気掃除機の構造を説明するにあたり、電気掃除機を前に置き、その後に使用者が立って電気掃除機を操作するという形で使用者が立つ側が電気掃除機の後方側、その反対側を電気掃除機の前方側(正面側)と定義する。左右に関しては、電気掃除機を前方(正面)から見たとき、観察者の左手側を電気掃除機の左側、その反対側を電気掃除機の右側と定義する。
【0027】
図1は電気掃除機の斜視図、図2は電気掃除機の垂直断面図、図3は掃除機本体の部分水平断面図、図4は吸込口体の部分を断面した電気掃除機の側面図、図5は吸込口及び吸込通路の基本的配置を示す吸込口体の部分拡大断面図、図6は吸込口切替装置の斜視図、図7は吸込口切替装置の分解斜視図、図8は吸込口体の内部機構の斜視図、図9は吸込口体の内部機構の一部の斜視図にして、図8と異なる方向から見たもの、図10は吸込口体内の防音構造を示す吸込口体の部分拡大断面図、図11は蓋を取り去った状態の吸込口体の上面図、図12は図4と同様の側面図にして、異なる動作状態を示すものである。
【0028】
電気掃除機1はアップライトタイプで、大きく二つの部分に分かれる。その一つは掃除機本体10であり、他の一つは吸込口体70である。吸込口体70を形づくるシェル(例えば合成樹脂成型品からなる)は次のような構造を有する。まず中央に平箱状の中央シェル71があり、その左右に側部シェル72、73の部分が設けられる。側部シェル72、73の後部は中央シェル71よりも後方に突き出し、後方突出部74、75を形成している。吸込口体70は全体としてコの字形の平面形状を有し、後方突出部74、75の間に掃除機本体10を受け入れる。
【0029】
掃除機本体10は二つのシェル部分から形づくられている。その一つは円筒形の送風機シェル11、他の一つは送風機シェル11から突出する集塵装置保持部12である。送風機シェル11の内部には電動送風機13が配置される(図2参照)。電動送風機13の軸線は送風機シェル11の軸線と略平行で、共に略水平状態にある。
【0030】
送風機シェル11は軸線を略水平状態にして吸込口体70の後方突出部74、75の間に配置され、その軸線上に配置した支軸を後方突出部74、75に嵌合させている。後方突出部74の側では送風機シェル11の端面から突出する支軸14が後方突出部74に設けた軸受部76に軸支される。後方突出部75の側では電動送風機13のモータ軸の延長である駆動軸15が後方突出部75の中に入り込む。この駆動軸15を包む筒状の支軸(図示省略)を送風機シェル11の端面から突出させ、この筒状の支軸を後方突出部75に設けた軸受部77に軸支させる。これら左右の支軸により送風機シェル11は水平軸線まわりに回動できるよう吸込口体70に連結される。
【0031】
集塵装置保持部12は中空で、全体として細長い、すなわち長手方向を有する形状となっており、その長手方向は送風機シェル11の軸線と略直角状態にある。集塵装置保持部12の突出位置は送風機シェル11の中央ではなく、左右いずれかに偏っている。第1実施形態では送風機シェル11の左側から集塵装置保持部12が突出する。
【0032】
集塵装置保持部12の一側には後述する集塵装置の底部及び頂部を支える台座部16及びオーバーハング部17を設ける。台座部16は送風機シェル11より立ち上がる形で設けられており、オーバーハング部17は集塵装置保持部12の側面に形成されている。台座部16とオーバーハング部17は送風機シェル11の上方空間に位置を占める。すなわち集塵装置保持部12の右側に位置する。台座部16とオーバーハング部17の間には後述する集塵装置の左半分を後から支える後部支持壁18が設けられる(図3参照)。後部支持壁18は集塵装置保持部12の側面に形成される。
【0033】
20は集塵装置である。集塵装置20は細長い円筒形のダストカップ21の中で気流を高速旋回させてサイクロン方式で塵埃を捕集するものである。図2に見られるようにダストカップ21の内部は水平隔壁22により上下2室に区画される。下方の区画は遠心分離室23、上方の区画は排気室24である。
【0034】
遠心分離室23の一側には流入口25が設けられる。流入口25は遠心分離室23の内周壁に沿って旋回気流を生じさせるような位置と角度に設定される。
【0035】
遠心分離室23の中心には排気筒26が配置される。排気筒26は下面が閉じ、上面が開口となった円筒形の籠状部材であって、水平隔壁22の中心に形設した通気口27に上面開口部を接合し、水平隔壁22から垂下する形で支持される。排気筒26の外周面にはナイロン等の合成繊維で織った細かいメッシュのフィルター28が貼着される。
【0036】
排気筒26の下端にはスタビライザー29が装着される。スタビライザー29は4枚の翼片を放射状に組み合わせ、水平断面を十字形としたものであり、その先端はダストカップ21の底面近くまで届く。スタビライザー29は気流からの塵埃の分離を促進し、またダストカップ21の底に溜まった塵埃の動きを抑制する働きをする。
【0037】
ダストカップ21の中の塵埃を捨てたり、フィルター28の掃除を行ったりするため、集塵装置20には適宜の手法でアクセス開口を設ける。アクセス開口は例えば、ダストカップ21の上部を開口として蓋で覆い、蓋を開けばそこから水平隔壁22もろとも排気筒26とスタビライザー29を引き抜けるようにするといった構造で実現できる。あるいは排気室24の部分を集塵装置20の本体、遠心分離室23の部分を本体に対し着脱可能なダストカップと、集塵装置20を上下分割構成とすることによっても実現できる。
【0038】
排気室24には流出口30が形設される。図3に見られるように、流入口25と流出口30は集塵装置20の集塵装置保持部12に対面する側の側面に設けられる。流入口25と流出口30は同じ方向、すなわち略左方を向く。
【0039】
集塵装置20の流入口25に対しては第1の通気路31が設けられ、流出口30に対しては第2の通気路32が設けられる。第1の通気路31は吸込口体70の吸込口(詳細は後述する)に連通するものであり、吸込口から吸い込んだ気流を流入口25に導く。第2の通気路32は電動送風機13の吸入口に連通するものであり、流出口30から出た気流を電動送風機13に導く。
【0040】
第1の通気路31の主たる部分はフレキシブルホース33によって構成される。フレキシブルホース33の一端は集塵装置保持部12に水平に設けた接続管34(図3参照)の一端に固定される。接続管34の他端が第1の通気路31の出口35となり、ここに集塵装置20の流入口25が接続する。流入口25接続時の気密を保つため、出口35にはシールリング36が装着されている。フレキシブルホース33の他端は吸込口体70の側部シェル72の上面に突出した接続管78に着脱自在に嵌合する。接続管78は吸込口に連通している。
【0041】
第1の通気路31の主たる部分をフレキシブルホース以外の管状体によって構成することもできる。例えば複数本の硬質パイプを伸縮自在に接続したもので置き換えることもできる。要は掃除機本体10を直立させたときと倒したときとの接続管34と接続管78の間の距離変動を吸収でき、且つ内部の圧力が大気圧より低下してもつぶれることのない管状体であればよい。
【0042】
第2の通気路32は集塵装置保持部12の中空部自体によって構成される。この中空部の上部は隔壁12a(図2参照)によって区切られ、従って第2の通気路32はオーバーハング部17の方には連通しない。集塵装置保持部12の側面には、集塵装置20の流出口30に対応する位置に、第2の通気路32の入口37が形設される。流出口30接続時の気密を保つため、入口37にはシールリング38が装着されている。
【0043】
図2に見られるように、第2の通気路32の下端は送風機シェル11の底まで届く。この第2の通気路32の下端の側壁に出口39が設けられる。出口39には電動送風機13の吸入口13aが気密保持兼用の防振クッション40を介して直接接続されている。
【0044】
集塵装置20は、その長手方向を集塵装置保持部12の長手方向と一致させる形で集塵装置保持部12に押しつける動作を通じ、集塵装置保持部12への取付が遂行される。より具体的に言えば台座部16及びオーバーハング部17と後部支持壁18とによって囲まれた空間に集塵装置20を挿入する動作を通じて取付がなされるものである。
【0045】
集塵装置20の上端にはスライド式のラッチ43が装着される。ラッチ43は図示しないバネにより常時上方に押し上げられており、集塵装置20の挿入の最終段階でオーバーハング部17の縁に係合する。このようになると、前記図示しないバネに抗してラッチ43を押し下げ、オーバーハング部17から離脱させないかぎり、集塵装置20を集塵装置保持部12から取り外すことはできない。
【0046】
台座部16の内部は電動送風機13が排気を行う排気空間50に連通する。また台座部16の中にはフィルター51が挿入されている。フィルター51は集塵装置20のフィルター28を通り抜けた細かい塵埃を捕集するため、例えば、フィルター28よりもさらに濾過性能の高い、HEPA(high−efficiencyparticulate air)フィルター等を使用してもよい。
【0047】
フィルター51で塵埃を捕捉された気流は台座部16の正面に形設された排気口54から室内に戻る。排気口54は水平なスリットを複数個、上下方向に並べて配置した形のものである。
【0048】
オーバーハング部17の内部には制御部60が配置される(図2参照)。制御部60と電動送風機13とはリード線を介して接続される。制御部60は電気掃除機1全体の動作を司るものである。オーバーハング部17の上面前部は各種スイッチボタンの並んだ操作パネル部61となる。オーバーハング部17に操作パネル部61を設けたので、操作がしやすい。
【0049】
集塵装置保持部12の先端には別成型のハンドル62が固定される。送風機シェル11の下面後部からは斜め下に向かってブラケット63が突き出し、これに車輪64が取り付けられる(図4参照)。車輪64は送風機シェル11の左右両端に1個ずつ設けられるものである。車輪64の前方には支持脚65が、これも左右1個ずつ形設される。集塵装置保持部12を垂直に立てれば、掃除機本体10は車輪64と支持脚65により床の上に4点支持される。
【0050】
次に吸込口体70の構造を説明する。前述の通り、吸込口体70は平箱状の中央シェル71の左右に側部シェル72、73の部分を設け、側部シェル72、73の後部を後方突出部74、75としたものである。中央シェル71と側部シェル72、73は例えば合成樹脂により一体成型される。
【0051】
中央シェル71と側部シェル72、73の下面は開口となっており、底板80がこの開口を閉ざす。底板80の前方部分には複数の吸込口が形設される。底板80の後方部分は後の方ほど高くなる斜面となっている。
【0052】
この実施形態では底板80の前方部分に2個の吸込口が前後に並ぶ形で設けられる。第1の吸込口81は左右に細長く、後述するベルト駆動部を除く吸込口体70の幅にほぼ等しい幅を有する。第2の吸込口82は第1の吸込口81に平行する形で、第1の吸込口81の前方に位置して形設される。第2の吸込口82の開口面積は第1の吸込口81の開口面積よりずっと小さい。
【0053】
第1の吸込口81及び第2の吸込口82に対し、それぞれ独立した吸込通路が吸込口体70内に設けられる。第1の吸込口81に連通する第1の吸込通路83は中央シェル71側の下面に形成されている(図4参照)。第1の吸込通路83は漏斗のような形状を呈し、正面から見て左側に偏った位置に流出口84が設けられている。
【0054】
第2の吸込口82に連通する第2の吸込通路85は第1の吸込通路83の上に重なるように配置される。第2の吸込通路85は中央シェル71の上面側と、それに対し間隔を置いて着脱可能に取り付けられた蓋86との間に形成される。
【0055】
蓋86は前端を中央シェル71に引っ掛け、後端をネジ又はラッチ86aで中央シェル71に連結して取付状態を保つ。蓋86は透明又は半透明の材料で成型され、第2の吸込通路85の中の様子を外からのぞくことができるようになっている。第2の吸込通路85の流出口87は第2の吸込通路85の後部中央付近に設けられる。
【0056】
側部シェル72の後方突出部74の内部には吸込口切替装置90を配置する。吸込口切替装置90はその弁箱91の前面に上下2連の流入口92、93を有する。下の流入口92は第1の吸込通路83の流出口84に接続される。図4に見られるように流出口84を流入口92に直接連結することにより、気流の通路構造が簡単になり、流通効率が向上する。上の流入口93は図示しないホースを介して第2の吸込通路85の流出口87に接続される。すなわち第1の吸込通路83と第2の吸込通路85とは下流に配置された吸込口切替装置90の箇所で合流する。
【0057】
弁箱91の上面には流入口92、93に共通する流出口が設けられるが、この実施形態の場合、その流出口そのものが第1の通気路31の始まりである接続管78となっている。
【0058】
弁箱91の中には垂直面内で回動する切替弁95が配置される。切替弁95は弁軸96に取り付けられ、弁軸96の回動に伴って回動する。回動により切替弁95は流入口92、93の一方を選択的に閉ざし、他方を開く。吸込口切替装置90の詳細な構造は後で説明する。切替弁95の両面には流入口92、93を閉ざしたときの気密性を良くするために軟質ゴム等により成型したシール部材(図示せず)が装着されている。
【0059】
吸込口体70の底面には第1及び第2の接地支持部が設けられる。第1の接地支持部101は第2の吸込口82の近傍、この場合には第2の吸込口82の両端に位置するように設けられた車輪により構成される。
【0060】
第2の接地支持部102は底板80に形設された左右一対の突起により構成される。第2の接地支持部102は第1の吸込口81の後方に設けられる。この箇所は底板80の後方部分の傾斜が始まるあたりでもある。集塵装置保持部12を直立させたときは図4に示すように第2の接地支持部102が吸込口体70の支えとなり、第1の接地支持部101は床から浮き上がる。
【0061】
吸込口体70の前端からはガイド部103が突出する。ガイド部103は第2の吸込口82の前方に位置し、ほぼ吸込口体70の全幅に等しい幅を有する。ガイド部103の下面は第2の吸込口82に向かって次第に低くなる斜面104となる(図5参照)。斜面104の前端は第2の吸込口82の入口より3mm程度高くなっている。
【0062】
第1の吸込口81にはアジテーター110が設けられる。アジテーター110としては円筒形の回転体の周囲に所定のスキュー角をもって複数条の剛毛の列を植え込んだものを使用するのが一般的であるが、剛毛の列に代え、ゴムや軟質合成樹脂の薄片を装着したものを使用してもよい。アジテーター110は、第1の吸込口81の横幅方向に軸線を整列させ、外周部の一部が第1の吸込口81から外に突出する形で吸込口体70の内部に軸支される。
【0063】
アジテーター110の回転動力源となるのは電動送風機13の駆動軸15であり、ここから次のような動力伝達機構を経由してアジテーター110に動力が伝達される。図2に見られるように、駆動軸15には原動プーリー111が固定され、この原動プーリー111と、アジテーター110の軸にアジテーター110と一体回転するよう固定した駆動プーリー(後述)とにベルト113が巻き掛けられる。原動プーリー111及びベルト113は側部シェル73の内部に位置する。なお、駆動軸15に別体の原動プーリー111を固定するということをしないで、ベルト113を駆動軸15に直接巻き掛けてもよい。
【0064】
電動送風機13の運転中にアジテーター110の回転を止めることができるよう、アジテーターと独立して回転可能なアイドラーを駆動プーリーと並べて配置する。ベルト113がアイドラーに掛かった状態ではアイドラーが空転するのみで、アジテーター110には動力が伝わらない。ベルト113の掛け替えを行うためのベルト掛替装置120が側部シェル73の内部に設けられるが、その構造は後で詳しく説明する。
【0065】
次に図6及び図7に基づき吸込口切替装置90の詳細構造を説明する。吸込口切替装置90の弁箱91は左側面が開口しており、この開口を蓋131が閉ざす。蓋131は弁箱91にネジ止め固定される。気密を保つため、弁箱91の開口部の口縁にはシール部材91aが貼着されている。
【0066】
弁軸96には切替弁95とレバー132とが一体に成形される。成形手法としては弁軸96、切替弁95、及びレバー132の三者を合成樹脂や金属の射出成型等により一体成型してもよく、あるいは別々に成型したものを組み立てて固定してもよい。
【0067】
弁軸96の右端は小径部96aとなっていて、この部分は弁箱91に設けた軸穴(図示せず)から弁箱91の右側面に突出する。小径部96aの左側の部分は弁箱91の内面に形設した断面半円形の凹部91bと蓋131に形設した半円形の切り欠き131aとに挟まれる形で軸支される。つまり凹部91bと切り欠き131aが合わさって1個の軸受部が構成されることになる。なお凹部91bは流入口92、93の間にあり、弁箱91の内部では気流の上流側に位置する。このように気流の上流側に配置するのは弁軸96に塵埃がからみついて切替弁95の動きに影響を与えたりしないようにするためである。
【0068】
弁軸96が切り欠き131aから出たところにレバー132が一体に成形される。レバー132は吸込口切替装置90とベルト掛替装置120とを連動させる連動手段の一構成要素となる。このように切替弁95に加えてレバー132まで一体に成形するため、弁軸96にはエンジニアリングプラスチックグレードの合成樹脂あるいは金属といった所定の強度を備えた材料が使用される。
【0069】
レバー132は弁軸96から長短2個のアーム132a、132bを互いに反対方向に突出させた形状になっている。長い方のアーム132aの先端の方にはスリット132cが形設されている。スリット132cの長手方向は長い方のアーム132aの長手方向に一致する。短い方のアーム132bと蓋131との間にはトグルバネ133が配置される。
【0070】
トグルバネ133はねじりコイルバネにより構成され、一端を短い方のアーム132bの先端に、他端を蓋131の外面に形設された中空ボス131bに、それぞれ係合させている。短い方のアーム132bと中空ボス131bが最も接近する弁軸96の角度位置が思案点となり、この点を境にしてトグルバネ133は、流入口92を閉ざす付勢力又は流入口93を閉ざす付勢力を切替弁95に与えるものである。
【0071】
弁軸96の左端には切替弁95の切り替え操作を行うためのペダル134が装着される(図1参照)。ペダル134は吸込口体70の後方突出部74の左上角に形設された凹部74aに配置される。ペダル134は弁軸96への取付部を中心として前後の部分が互いに角度をなし、側面から見ると「く」の字の形状を呈している。ペダル134の前後の部分のうち浮き上がった方を踏むと、ペダル134はシーソーのような動きをして弁軸96を回動させる。
【0072】
次に図8及び図9に基づきベルト掛替装置120の詳細構造を説明する。ベルト掛替装置120は細長いフレーム141を中心として組み立てられる。フレーム141は長手方向を吸込口体70の前後方向に向けて側部シェル73の内部に固定される。フレーム141の下部をベルト113が通る。ベルト113は駆動プーリー112とアイドラー114との間で掛け替えられる。駆動プーリー112はアジテーター110の軸110aにアジテーター110と一体回転するように固定される。アイドラー114は駆動プーリー112の右隣に位置し、アジテーター110と独立して回転可能である。
【0073】
フレーム141は前後方向に延びる支軸142を支持する。支軸142の軸線はベルト113の延長方向と平行である。支軸142はベルト113を動かすためのフォーク150を回動自在に支持する。フォーク150は金属製の本体151と合成樹脂製の軸支部152とを互いに回転不能に組み合わせたものである。フォーク150の本体151と軸支部152とはインサート成型、ネジ止め、カシメ等により固定される。軸支部152が合成樹脂製であるため、フォーク150が支軸142に対して回転したとき、あまり騒音が発生しない。
【0074】
フォーク150の本体151はその長手方向を支軸142及びベルト113の延長方向に平行させる形で軸支部152の前方に延び出している。本体151はその先端の1対の平行壁部151aでベルト113を挟み付ける。平行壁部151aは本体151と平行に延び、且つ互い同士も平行を保っている。平行壁部151aは軸支部152から所定距離以上隔たっている。
【0075】
軸支部152の上部にはノブの形をした操作部152aが突設される。操作部152aは吸込口体70の後方突出部75に形設した窓75aから外に突き出す。操作部152aが窓75aの一方の端に設けた当たりに当たるところが軸支部152の一方の回動限界、操作部152aが窓75aの他方の端に設けた当たりに当たるところが軸支部152の他方の回動限界となる。すなわち操作部152aと窓75aによりフォーク150の回動限界を定めるストッパー手段153が構成される。なお窓75aのところの当たりについては、操作部152aが側部シェル73に当たることとしてもよく、あるいはフレーム141に当たることとしてもよい。
【0076】
軸支部152とフレーム141との間には図示しないトグルバネが配置される。このトグルバネもトグルバネ133と同様にねじりコイルバネにより構成され、一端は軸支部152に、他端はフレーム141に、それぞれ係合し、軸支部152の角度変換を歯切れ良く行わせる。
【0077】
軸支部152の左側面からは放射方向にレバー154が突出する。フレーム141の左側面にはレバー155が支軸156により垂直面内で回動できるよう支持されている。レバー155の一方のアームに設けたスリット155aがレバー154に係合する。レバー155の他方のアームもスリット155bを有する。スリット155a、155bの長手方向はレバー155自体の延びる方向に一致する。
【0078】
吸込口切替装置90とベルト掛替装置120とは連動手段160で連結される。連動手段160の主部をなすのは鋼棒あるいは鋼管を略コの字形に折曲成形したクランク161である。クランク161は左右一対の軸受部162により水平軸まわりに回動できるよう吸込口体70の内部に軸支される。クランク161の一方の端部161aは吸込口切替装置90の側のレバー132のスリット132cに係合する。クランク161の他方の端部161bはベルト掛替装置120の側のレバー155のスリット155bに係合する。レバー132と同様、レバー155も連動手段160の一構成要素となる。
【0079】
上記のようにコの字の形をした吸込口体70で掃除機本体10を挟み、この吸込口体70の一方の側に吸込口切替装置90を配置し、他方の側にベルト掛替装置120を配置する構成により、吸込口切替装置90とベルト掛替装置120の一定部分を掃除機本体10の左右に重なるように配置でき、吸込口体70の寸法、特に前後方向の寸法を切りつめることができる。
【0080】
次に電気掃除機1の動作を説明する。使用していないとき、すなわち保管時の電気掃除機1は図4に示すように集塵装置保持部12が直立状態にあり、掃除機本体10は2個ずつの車輪64と支持脚65により床の上に4点支持されている。吸込口体70においては第2の接地支持部102が吸込口体70の支えとなり、第1の接地支持部101は床から浮き上がっている。アジテーター110も床には接触していない。
【0081】
電気掃除機1を使用するときは、図示しないコードを伸ばして電源コンセントに接続し、片手でハンドル62を持って図12のように集塵装置保持部12を傾け、清掃作業態勢へと姿勢変換する。すると掃除機本体10がてこのように作用する。すなわちハンドル62がてこの力点、車輪64がてこの支点、支軸14及び駆動軸15(駆動軸15の外側の筒状の支軸)がてこの作用点となり、支軸14及び駆動軸15(駆動軸15の外側の筒状の支軸)が吸込口体70の後部を持ち上げる。支持脚65は床から離れる。
【0082】
ハンドル62の高さが床から60〜80cm程度になるまで掃除機本体10を傾けると、第2の接地支持部102が床から離れ、第1の吸込口81及び第2の吸込口82を有する底板80の前方部分が床とほぼ平行になる。そして第1の接地支持部101及びアジテーター110が床に接触する(図5参照)。60〜80cmというのは平均的な体格の成人が清掃作業のため電気掃除機1を押したり引いたりするときのハンドル62の高さである。
【0083】
この状態で第2の吸込口82の入口の床からの高さ(図5のH1)が0.8〜2mmになるように第1の接地支持部101の突出度を調節して設定する。第2の吸込口82はこの距離(0.8〜2mm)までは床に接近するが、ここで第1の接地支持部101が床に当たり、それ以上には接近しない。
【0084】
ここで操作パネル部61の所定のスイッチを操作し、電動送風機13を駆動する。電動送風機13は吸入口13aより第2の通気路32、集塵装置20、第1の通気路31を通じて吸込口体70に吸引力を及ぼす。
【0085】
吸込口切替装置90が第1の吸込口81を選択した状態になっていれば第1の吸込口81から気流が吸い込まれる。吸込口切替装置90が第2の吸込口82を選択した状態になっていれば第2の吸込口82から気流が吸い込まれる。第1の吸込口81を選択した状態ではベルト掛替装置120がベルト113を駆動プーリー112に掛ける。従って電動送風機13の駆動によりアジテーター110が駆動される。
【0086】
以下、吸込口切替装置90により第1の吸込口81が選択されたものとして説明を進める。回転するアジテーター110は床又は床に敷かれた敷物から塵埃をかき上げる。軟質の床材(例えば毛足の長さが4〜20mmのカーペット)の上でアジテーター110を回転させるときは第1の接地支持部101が軟質床材に沈み込む。このためアジテーター110や第1の吸込口81が軟質床材に近づき、塵埃のかき出しや吸引が力強く行われる。第1の接地支持部101の正面から見た幅に制限を加えておけば(例えば第1の接地支持部101の合計の正面幅を第1の吸込口81の幅の半分以下とする、あるいは接地支持部101の各々の幅を10〜20mmとする)、第1の接地支持部101の軟質床材への沈み込みは確実なものになる。
【0087】
上記のように、カーペットの上では第1の接地支持部101がカーペットの毛足の中に沈み込み、底板80の前方部分が吸込口体70を支持する。そのため、カーペットの上での操作性は確保される。アジテーター110の外周と第1の吸込口81の後縁との間隔(図5のG1)を5〜10mmにしておくと操作性と吸込性能が両立する。
【0088】
また床からガイド部103の先端までの高さ(図5のH2)は床から第2の吸込口82の入口までの高さ(図5のH1)より3mm程度(3〜4.5mm程度でよい)高くなっているので、底板80の前方部分がカーペットに当たった状態でもカーペットの上の塵埃を排除しない。米粒大のごみであればその上をガイド部103が乗り越え、第1の吸込口81に誘い込む。ごみの乗り越え性能を確保するため、斜面104の傾斜は水平面に対し40〜50゜を超えないようにするのがよい。
【0089】
アジテーター110のかき上げた塵埃は第1の吸込口81から流入する気流とともに吸込口切替装置90の流入口92に入り、吸込口切替装置90の中から接続管78を通って第1の通気路31に入る。第1の通気路31を通り抜けた気流は集塵装置20の流入口25から遠心分離室23に入る。
【0090】
流入口25から流入した気流は排気筒26の周囲を高速で旋回する。気流中の塵埃は遠心力で気流から分離され、ダストカップ21の底に溜まる。塵埃を分離した旋回気流は排気筒26に吸い込まれ、排気室24に抜ける。遠心分離されなかった塵埃はフィルター28で濾過される。排気室24に抜けた気流は流出口30より流出する。
【0091】
遠心分離室23の中で旋回する気流は、排気筒26の周囲ばかりでなく、スタビライザー29の周囲も旋回する。その際気流がスタビライザー29の翼片に衝突すると気流中の塵埃が気流から離れてダストカップ21の底に落ちる。塵埃の吸引を続けるとダストカップ21の底の方から塵埃の塊が成長するが、スタビライザー29はこの塵埃塊の動きを抑制し、塵埃が再び舞い上がるのを防ぐ。
【0092】
集塵装置20を出た気流は第2の通気路32に入る。第2の通気路32は電動送風機13の吸入口13aまで略同一平面でつながっており、気流は何にも遮られたり邪魔されたりすることなく吸入口13aに直進する。集塵装置保持部12の中空部自体が第2の通気路32を構成しているため、大面積の通気路とすることができ、この点でも気流の流通効率が向上する。
【0093】
電動送風機13に吸い込まれた気流は排気空間50に吐出され、台座部16に入る。フィルター28で濾過されなかった細かな塵埃はフィルター51で濾過される。その後、気流は排気口54から排出される。
【0094】
電動送風機13が駆動されている間、ベルト113が走行する。走行するベルト113がフォーク150に接触するのを全く防ぐことはできない。しかしながらベルト113が接触するのは金属製の本体151の平行壁部151aである。そのため本体151は、摩擦熱で温度上昇することは避けられないが、合成樹脂成型品と異なり、過熱して損傷することはない。摩耗にも強い。また平行壁部151aは軸支部152から所定距離以上隔たっているので、平行壁部151aと軸支部152の間に位置する本体151の部分で放熱が行われ、合成樹脂成型品である軸支部152に平行壁部151aから過度の摩擦熱が伝わることはない。
【0095】
部屋の隅を掃除するときにはペダル134を操作して吸込口切替装置90を第2の吸込口82の方に切り替える。すなわち今まで切替弁95が流入口92を開き、流入口93を閉ざしていたのを流入口93が開き、流入口92が閉ざされるようにする。この時弁軸96は図8において反時計方向(矢印A方向)に回動する。するとレバー132がクランク161の端部161aを持ち上げ、クランク161全体が軸受部162の中で時計方向(矢印B方向)に回動する。この動きに伴い、クランク161の他の端部161bがレバー155の前部を持ち上げる。レバー155の後部は逆に下がり、レバー154を押し下げる。これにより、フォーク150は支軸142の軸線まわりに回動する。回動方向は正面から見て反時計方向(矢印C方向)である。
【0096】
フォーク150が正面から見て反時計方向に回動すると、平行壁部151aは支軸121の中心からの距離を半径とする弧を描いて左から右へと移動する。この動きに伴いベルト113は駆動プーリー112からアイドラー114へと掛け替えられる。フォーク150はベルト113の延長方向と平行な軸線まわりに回動するものであり、先端の平行壁部151aのところで振れが増幅される機構ではないため、ベルト113の移動は常に安定している。またストッパー手段153によりフォーク150の回動限界が定まるのでベルト113は所定の位置にきちんと位置決めされる。
【0097】
軸支部152をどれだけ回動させても平行壁部151aはベルト113の延長方向と平行を保つ。そのため、ベルト113の変形(ひねり、こじり)が少ない。これは平行壁部151aにとってもベルト113にとってもダメージが少ないということを意味する。
【0098】
電動送風機13が停止し、駆動軸15が回転していない状態では掛け替えは完全なものではないが、ひとたび電動送風機13の駆動が開始されればベルト113はアイドラー114に完全に乗り移る。ベルト113をアイドラー114から駆動プーリー112に掛け替えるときにも同じことが言える。
【0099】
第1の吸込口81から第2の吸込口82に切り替えるのは操作部152aの操作によっても可能である。すなわち第1の吸込口81を使用する状態では操作部152aは窓75aの右端に位置している。操作部152aを窓75aの左端に移動させるとフォーク150が正面から見て反時計方向に回動し、ベルト113を駆動プーリー112からアイドラー114に掛け替える。同時にレバー154が下がり、レバー155の後部を押し下げる。レバー155の前部は上がり、クランク161の端部161bを持ち上げる。クランク161全体が軸受部162の中で矢印Bの反対方向に回動し、クランク161の他の端部161aがレバー132の長い方のアームを持ち上げる。これにより弁軸96が矢印Aの反対方向に回動し、切替弁95は流入口93を開き、流入口92を閉ざす位置へと移動する。
【0100】
第2の吸込口82を用いて吸塵を行う場合、硬質の床の上では第1の接地支持部101が第2の吸込口82の入口と床との間隔を安定して所定の値(0.8〜2mm)に保つ。そのため第2の吸込口82と床との間に塵埃の通り道が確保される。第2の吸込口82は第1の吸込口81に比べ開口面積が小さく、狭い箇所に吸引力が集中する。従って第2の吸込口82の入口には高速の吸込気流が発生し、アジテーターの回転を伴う吸込方式より強力な吸引力が塵埃に及ぼされる。0.8〜2mmという隙間にすることにより、砂塵やパウダー状の塵を効率良く吸い込むことができる。
【0101】
第2の吸込口82を使用するとき、吸い込んだ気流は透明又は半透明の蓋86の下を通る。従って、塵埃の吸込状況を直接目視で確認することができる。第2の吸込通路85にごみが詰まった場合には蓋86を取り外して詰まりの原因となっているごみを取り除くことができる。
【0102】
塵埃の吸い込みに使用できるのは第1の吸込口81と第2の吸込口82だけではない。フレキシブルホース33も利用できる。フレキシブルホース33を接続管78から抜き、フレキシブルホース33の先端に隙間ノズルや家具用ブラシといった吸込ツールを取り付ければ、吸込口体70を届かせにくい狭い場所や高い場所の掃除を行うことができる。
【0103】
清掃作業が済んだら電気掃除機1を不使用時の保管場所まで運び、掃除機本体10に保管時の姿勢をとらせる。すなわち集塵装置保持部12を直立させる。すると吸込口体70の後部が下がり、第2の接地支持部102が床に当たって吸込口体70の支えとなり、第1の接地支持部101は床から浮き上がる。アジテーター110の外周も床から浮き上がる。従って、この時点でまだ電動送風機13が駆動中であったとしても、アジテーター110が床をこすることがなく、床を傷つけない。
【0104】
集塵装置保持部12を直立させているかぎり、アジテーター110の外周は床に触れない。従って長時間そのままで置いたとしてもアジテーター110に植えた剛毛(あるいは、ゴムや軟質合成樹脂の薄片)が変形することはない。
【0105】
集塵装置20に大量の塵埃が蓄積されたらラッチ43を外して集塵装置20を引き抜き、内部の塵埃を捨てる。必要があればフィルター28も掃除する。それから集塵装置20を元通りにセットする。ダストカップ21を透明又は半透明の材料で成型することとすれば、塵埃の蓄積具合を確認しやすい。
【0106】
第2の吸込口82、及び第2の吸込通路85の幅を極限まで広げてもよい。すなわち吸込口体70の左右側壁の肉厚しか残らないところまで第2の吸込口82と第2の吸込通路85(その入口部)の幅を広げるのである。吸込口体70の強度は少し低下するが、第2の吸込口82の吸い込み幅が広くなり、さらなる吸込力の向上につながる。
【0107】
次に吸込口体70の内部の防音の仕組みについて説明する。
【0108】
第1の吸込通路83と第2の吸込通路85を隔てる仕切壁88は、一部が肉厚部88aとなっている。肉厚部88aは第2の吸込通路85の中にはみ出す形で肉厚をかせぐ。このため、第2の吸込通路85は、上下の通路壁(蓋86の下面と仕切壁88の上面)のうち、下側の通路壁が肉厚となるとともに、この肉厚部88aにより通路幅(本明細書では蓋86と仕切壁88との間隔を「通路幅」と称する)が絞られている。第2の吸込口82から流出口87までの間の、通路幅の絞られた箇所が通風量調節部85aとなる。
【0109】
第2の吸込口82の両端と流出口87とを連絡するように、通路幅の絞られていない溝部85bが形設される。溝部85bは、上面又は正面から見てほぼ四分円状のカーブを描くように、左右対称的に形設される。このように通路幅の絞られていない、言い換えれば流路抵抗の小さい溝部85bが第2の吸込口82の両端と流出口87を結ぶので、第2の吸込口82の両端に対して大きな吸込力が働く。このため、第2の吸込口82の横幅が吸込口体70の横幅に満たないとしても、吸込口体70の全幅にわたり吸込力を及ぼすことができる。
【0110】
上記のように、溝部85bを設ければ第2の吸込口82を吸込口体70の全幅にわたる開口とする必要がなくなり、第2の吸込口82の左右に側部シェル72、73の前端部を残すことができる。この側部シェル72、73の前端部は第2の吸込口82を設けた部分より強度が大きく、そのため吸込口体70の耐衝撃性が向上する。この前端部の内面に補強リブを設けることとすれば、さらに耐衝撃性が向上する。それでありながら吸込性能は維持されている。
【0111】
第2の吸込通路85は通風量調節部85aと溝部85bとに区画したが、第1の吸込通路83はそれとは関係なく形状を設定する。すなわち、仕切壁88のうち、第1の吸込通路83に面する側には、第2の吸込通路85に面する側のような凹凸をつけない。左右方向に直線的に延びる、平坦な凹状湾曲面とする。
【0112】
上記のように、第1の吸込口81及びこれに連通する第1の吸込通路83と、第2の吸込口82及びこれに連通する第2の吸込通路85とは、互いに独立した設計とする。これにより、第1の吸込口81と第2の吸込口82を異なる目的に適合させることができる。
【0113】
第2の吸込通路85に通風量調節部85aと溝部85bを設けるため断面形状を変化させるのは、仕切壁88の方だけでよい。蓋86は肉厚の変わらない平坦な形状のままにしておくことができる。これにより、吸込口体70の外面は滑らかなラインを維持できる。蓋86を通しての視認性も影響を受けない。
【0114】
通風量調節部85a及び溝部85bは、吸込気流の上流側から下流側に向かって通路幅が均等であるか、あるいは漸増するようにする。このようにすることにより、通風量調節部85a又は溝部85bに塵埃が詰まる可能性を低くすることができる。通風量調節部85a及び溝部85bの最小通路幅を6mm以上にしておけば、シュレッダーで裁断した紙屑が引っかかることもない。
【0115】
通風量調節部85aは、仕切壁88に肉厚部88aを設けることによって得る。このため、通風量調節部85aを滑らかに連続する空間とすることができる。通路中にオリフィスを設けても気流を絞ることができるが、オリフィスだと後方に渦が生じる。この渦は気流のエネルギーを損じ、また騒音の原因ともなる。これに対し通路壁の肉厚変化により絞り効果を得る方式では、気流を滑らかに誘導しつつ絞り、渦の発生を少なくすることができる。これによりエネルギーロスが低減し、騒音の発生も招かない。
【0116】
気流を滑らかに誘導しつつ絞るという考えを徹底するため、通風量調節部85aと溝部85bとの境界(特に流出口87の近傍の部分)は、切り立った段差とせず、ゆるやかな傾斜面とする。これにより渦の発生がさらに少なくなり、低騒音化が促進される。
【0117】
第2の吸込通路85は、前後方向において、吸込口体70の前端下面の第2の吸込口82から流出口87まで、長い距離にわたって存在する。この第2の吸込通路85のほぼ全長にわたるように通風量調節部85aを設けることにより、気流を無理なく徐々に絞ってエネルギーロスをさらに低減し、騒音も抑えることができる。
【0118】
さて、吸込口体70の断面構造を見ると、第2の吸込通路85の少なくとも一部は第1の吸込通路83よりも外側、すなわち前方及び上方に存在することになる。この第2の吸込通路85の存在それ自体が第1の吸込通路83から発散する騒音に対し防音機能を発揮する。
【0119】
第1の吸込口81にはアジテーター110が設けられており、アジテーター110を駆動する音、アジテーター110が床をこする音、さらにはアジテーター110による風切り音が加わり、殊更騒音レベルが高い。このようにアジテーター110が存在することにより騒音レベルが高くなる第1の吸込口81と第1の吸込通路83に対し、その外側、すなわち前方及び上方に第2の吸込口82と第2の吸込通路85が位置するので、第2の吸込口82と第2の吸込通路85が防音機能を発揮し、吸込口体70の騒音レベルを下げることができる。
【0120】
仕切壁88の肉厚部88aは、肉厚であるということ自体で遮音効果が高まり、防音機能を発揮する。
【0121】
その防音機能を高めるため、肉厚部88aの少なくとも一部を防音構造にする。
具体的には、仕切壁88の蓋86に面した側に発泡体を貼り付けて肉厚にする。発泡体としては、ポリエチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、ABS樹脂をガスアシスト成型して内部を空洞にしたもの、などを用いることができる。
【0122】
このように発泡体を設けることにより、遮音性と吸音性が向上し、防音機能が高まる。
【0123】
発泡体の表面を剛体、例えば金属や硬質の合成樹脂で被覆しておけば、硬いごみが発泡体に突き刺さり、それが引金となって第2の吸込通路85の中にごみ詰まりが生じるといった事態を回避できる。
【0124】
剛体である仕切壁88の表面に発泡体を貼り付けるのでなく、仕切壁88の部分を別部品とし、全体を発泡体で成型することもできる。この場合、発泡体の中心に剛体の芯を入れてもよい。また発泡体の表面を剛体で覆ってもよい。あるいは次のようにしてもよい。すなわち別部品とした仕切壁88を中空に形成するとともに、この仕切壁88の一部をもって肉厚部88aの外殻形状を形取る。この仕切壁88の中空部に発泡体の原液を注入し、内部で発泡させる。このようにすれば、仕切壁88と肉厚部88aとが一体化した別部品を得ることができる。しかもこの場合、肉厚部88aの表面は剛体である仕切壁88に覆われた形になる。
【0125】
このように発泡体で防音構造を形成することにより、吸込口体70の軽量化を図ることができる。
【0126】
第1の吸込通路83の周囲の壁部のうち、仕切壁88以外の壁部に仕切壁88と同様の防音構造を設けることも可能である。例えば、図10においてアジテーター110の上部後方に位置する仕切壁170に、肉厚化、発泡体の貼り付け、あるいは発泡体化といった防音対策を施すことができる。ただしこの場合、正面から上面にかけての騒音を遮る仕切壁88の防音構造ほどには吸込口体70の低騒音化に貢献しない。
【0127】
なお、吸込口体70の重量増加が問題にならないのであれば、発泡体に代え、金属(例えば鉛、錫、鉄など)、金属繊維の織布に樹脂を含浸したもの、あるいは無機材料(雲母、セメントなど)により肉厚部を形成し、騒音低減を図ることもできる。
【0128】
仕切壁88の側でなく蓋86の方に肉厚部を設け、通風量調節部の形成と防音構造の生成を図ることもできる。この場合、蓋86の方だけに肉厚部を設けてもよいし、蓋86と仕切壁88の両方に肉厚部を設けてもよい。ただしこの場合、蓋86を通じての視認性が低下する、あるいは蓋86の重量が増し、着脱しにくくなるといった不利益は甘受しなければならない。また蓋86のみに防音構造を設けた場合、仕切壁88に防音構造を設ける場合に比べ、遮音できる領域の広さにおいて多少不利になる。
【0129】
この実施形態では、第1の吸込口81と第1の吸込通路83に対し、その前方及び上方に第2の吸込口82と第2の吸込通路85が位置している。第2の吸込口82と第2の吸込通路85の存在領域を拡大し、第1の吸込口81と第1の吸込通路83の側方(左側と右側)まで第2の吸込口82と第2の吸込通路85を回り込ませれば、吸込口体70の低騒音化は一層進む。第1の吸込通路83と第2の吸込通路85との間の側方の仕切壁にも仕切壁88と同様の防音構造を設けることとすれば、さらに低騒音化が進む。
【0130】
上記のように第2の吸込口82と第2の吸込通路85の存在範囲を拡大した場合、第2の吸込口82なら第2の吸込口82、第2の吸込通路85なら第2の吸込通路85を、左端から右端まで一続きのものする必要はない。第2の吸込口82であれば、例えば、吸込口体70の正面側の部分、左側面側の部分、及び右側面側の部分といった具合に3分割し、それぞれ独立させることができる。第2の吸込通路85も同様に3分割し、それぞれ独立させることができる。分割の数及び分割箇所の設定は任意である。
【0131】
以上、本発明の一実施形態につき説明したが、この他、発明の主旨を逸脱しない範囲で更に種々の変更を加えて実施することができる。また本実施形態では吸込口体を掃除機本体に回動可能に連結したアップライトタイプの電気掃除機を発明の適用対象としたが、掃除機本体と吸込口体をホースで連結するキャニスタータイプの電気掃除機も適用対象とできる。
【0132】
【発明の効果】
本発明によれば、吸込特性の異なる第1の吸込口と第2の吸込口を使い分けることにより、単一の吸込口体を多種の床に対応させることができる。また、少なくとも騒音レベルの高い側の吸込口に対し防音構造の対策を施すことにより、吸込口体の騒音レベルを下げることができる。騒音レベルの高い箇所には防音効果の高い防音構造を配置するといった具合に、防音構造の実施や防音性能の程度を調整することにより、効率良く電気掃除機の低騒音化を図ることができる。
【0133】
第2の吸込通路の少なくとも一部は第1の吸込通路よりも外側にあることとし、第2の吸込通路の存在それ自体により第1の吸込通路からの騒音に対し防音機能を発揮させることができる。また、この部分において第1の吸込通路と第2の吸込通路の間に設けた防音構造が第1の吸込通路からの騒音のレベルを一層下げる。
【0134】
また、第1の吸込通路と第2の吸込通路の少なくとも一方に、通路壁を肉厚にして通路幅を絞った通風量調節部を形成し、なだらかな絞りにより渦の発生によるエネルギー損失を招くことなく通風量の調節を行うことができるようにするとともに、この肉厚部の少なくとも一部を防音構造としたから、肉厚に構成できることを利用して防音性能の優れた防音構造とすることができる。
【0135】
さらに、発泡体単独、又は発泡体と剛体の組み合わせにより防音構造を構成することにより、高性能の防音構造を手軽且つ安価に得るとともに、電気掃除機の軽量化ももたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気掃除機の斜視図
【図2】電気掃除機の垂直断面図
【図3】電気掃除機の掃除機本体の部分水平断面図
【図4】吸込口体の部分を断面した電気掃除機の側面図
【図5】吸込口及び吸込通路の基本的配置を示す吸込口体の部分拡大断面図
【図6】吸込口切替装置の斜視図
【図7】吸込口切替装置の分解斜視図
【図8】吸込口体の内部機構の斜視図
【図9】同じく吸込口体の内部機構の一部の斜視図にして、図8と異なる方向から見たもの
【図10】吸込口体内の防音構造を示す吸込口体の部分拡大断面図
【図11】蓋を取り去った状態の吸込口体の上面図
【図12】図4と同様の側面図にして、異なる動作状態を示すもの
【符号の説明】
1 電気掃除機
10 掃除機本体
11 送風機ハウジング
12 集塵装置保持部
13 電動送風機
20 集塵装置
62 ハンドル
64 車輪
70 吸込口体
81 第1の吸込口
82 第2の吸込口
83 第1の吸込通路
85 第2の吸込通路
85a 通風量調節部
85b 溝部
86 蓋
87 流出口
88 仕切壁
88a 肉厚部
90 吸込口切替装置
Claims (10)
- 電動送風機の運転によって発生する気流とともに塵埃を吸込口体の吸込口から吸い込み、吸い込んだ気流を集塵装置に導入して塵埃を捕集する電気掃除機において、
前記吸込口体に第1の吸込口と第2の吸込口を設け、前記第1の吸込口は吸込口体内に設けた第1の吸込通路に連通させ、前記第2の吸込口は前記第1の吸込通路と独立して吸込口体内に設けた第2の吸込通路に連通させるとともに、吸込口体の少なくとも一部を防音構造としたことを特徴とする電気掃除機。 - 前記第1の吸込通路と第2の吸込通路の間の少なくとも一部を防音構造としたことを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機。
- 前記第2の吸込通路の少なくとも一部は前記第1の吸込通路よりも外側にあり、この部分における第1の吸込通路と第2の吸込通路の間の少なくとも一部を防音構造としたことを特徴とする請求項2に記載の電気掃除機。
- 前記第1の吸込通路と第2の吸込通路とが下流で合流することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電気掃除機。
- 前記合流地点に吸込口切替装置が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電気掃除機。
- 前記第1の吸込通路と第2の吸込通路の少なくとも一方に、通路壁を肉厚にして通路幅を絞った通風量調節部を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電気掃除機。
- 前記通路壁の肉厚部の少なくとも一部を防音構造としたことを特徴とする請求項6に記載の電気掃除機。
- 前記第1の吸込口にアジテーターを設けるとともに、前記第2の吸込口と第2の吸込通路の少なくとも一部を、前記第1の吸込口と第1の吸込通路よりも外側に配置したことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電気掃除機。
- 前記第1の吸込通路と第2の吸込通路の間の仕切壁が防音構造となっていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の電気掃除機。
- 前記防音構造が、発泡体単独、又は発泡体と剛体の組み合わせにより構成されることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の電気掃除機。
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-
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- 2003-02-20 JP JP2003042067A patent/JP2004248863A/ja active Pending
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