JP2004248480A - 三相交流電動機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】スイッチング素子のON遅延時間とOFF遅延時間が異なる場合の補正を行い、制御安定性を向上させた三相交流電動機の制御装置を提供する。
【解決手段】パワースイッチング素子を用いたインバータを制御する三相交流電動機の制御装置において、パワースイッチング素子のON遅延時間とOFF遅延時間に基づいて遅延時間補正値と電圧指令補正値を求め、遅延時間補正値に基づいて補正した位相角を用いて直流交流座標変換を行い、かつ電圧指令補正値を用いてPWM制御のパルス幅を補正する手段を備え、ON遅延時間をTon、OFF遅延時間をToff、デッドタイムをTdeadとした場合に、基準角読み込みから指令位相角までの時間(3/2)ΔTと遅延時間(Tdead+Ton+Toff)/2を加えた値に電気角速度ωreを乗算し、その結果を基準位相角θreに加算した値を補正後の指令位相角θre*とする三相交流電動機の制御装置。
【選択図】 図1
【解決手段】パワースイッチング素子を用いたインバータを制御する三相交流電動機の制御装置において、パワースイッチング素子のON遅延時間とOFF遅延時間に基づいて遅延時間補正値と電圧指令補正値を求め、遅延時間補正値に基づいて補正した位相角を用いて直流交流座標変換を行い、かつ電圧指令補正値を用いてPWM制御のパルス幅を補正する手段を備え、ON遅延時間をTon、OFF遅延時間をToff、デッドタイムをTdeadとした場合に、基準角読み込みから指令位相角までの時間(3/2)ΔTと遅延時間(Tdead+Ton+Toff)/2を加えた値に電気角速度ωreを乗算し、その結果を基準位相角θreに加算した値を補正後の指令位相角θre*とする三相交流電動機の制御装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は三相交流電動機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平9−23700号公報
上記特許文献1には、交流電動機の電流制御において、電圧指令値が出力されてから実際に電圧が有効に電動機に反映されるまでの電流ループの遅れ時間に相当する角度を求めて補正角とし、直流−交流変換で用いる位相角を、この補正角によって補正することにより、電流ループの遅れを補償し、制御の安定性を向上させる技術が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1においては、電流ループの遅れ時間として、電圧指令値が出力されてから、実際に電圧が有効に電動機に反映されるまでの時間、および実際に電流が流れてから、ADコンバータを経てサーボソフトが電流を読み込むまでの実電流の検出に要する時間を考慮して、直流−交流座標変換で用いる位相角を補正するという構成になっている。しかし、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のパワースイッチング素子ではOFF状態からON状態に変化するまでのON遅延時間と、ON状態からOFF状態に変化するまでのOFF遅延時間とが異なるので、電圧指令値と実際の電動機端子電圧値とのPWM幅が異なり、出力の遅延時間補正値も変化するが、上記特許文献1の構成では、このPWM幅のずれ量と遅延時間の変化を考慮していないので、補正が不十分であり、制御の安定性を十分向上させることが困難である、という問題があった。
本発明は上記のごとき問題を解決するためになされたものであり、スイッチング素子のON遅延時間とOFF遅延時間が異なる場合を考慮した十分な補正を行い、制御安定性を更に向上させることの出来る三相交流電動機の制御装置を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明においては、パワースイッチング素子を用いたインバータを制御することにより電動機に供給する電力を制御する三相交流電動機の制御装置において、前記パワースイッチング素子のON遅延時間とOFF遅延時間とに基づいて遅延時間補正値および電圧指令補正値を求め、前記遅延時間補正値に基づいて位相角を補正し、前記補正後の位相角を用いて直流交流座標変換を行い、かつ、前記電圧指令補正値を用いてPWM制御のパルス幅を補正するように構成している。
【0004】
【発明の効果】
スイッチング素子のON遅延時間とOFF遅延時間が異なる場合においても、電動機に印加する電圧を指令値どおりに制御ができるため、電流制御の安定性が向上し、電流の過渡応答特性が向上するという効果が得られ、それにより電流PI制御における制御ゲインが同じであれば、電動機の最高回転数が向上する、という効果も得られる。
【0005】
【発明の実施の形態】
(第1の実施例)
図1は本発明の第1の実施例を示すブロック図であり、三相交流電動機のベクトル制御装置を示す。
図1において、位相角補正部202、PWM変換部203および第2の二相三相変換部201の部分が従来と異なっており、その他の部分は従来と同様である。以下、まず図1のうち従来と同様の部分について構成と動作を説明する。
三相同期電動機106には回転子の基準位相角(電気角)を検出する角度検出器105および各相の電流を検出する電流センサ107が設置されている。これらのセンサから得られる情報をマイクロコンピュータ113で取り込み、マイクロコンピュータ113では電動機106に電力を供給するインバータ104を制御する信号を生成する。
【0006】
マイクロコンピュータ113内の制御(ソフトウェア)については下記のとおりである。まず、電流センサ107で検出された三相電動機電流値iu、iv、iwをAD変換部112でデジタル信号に変化して取り込む。
三相二相変換部108では、上記の三相電動機電流値iu、iv、iwを、角度検出器105で検出した電動機の基準位相角θreを用いて、下記(数1)式によってd軸電流値idおよびq軸電流値iqに変換する。
【0007】
【数1】
電流PI制御部101では、外部より指令されるd軸電流指令値id*110およびq軸電流指令値iq*111と、三相二相変換部108で算出されたd軸電流値idおよびq軸電流値iqから周知の制御である比例積分制御によって、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を演算する。
【0008】
一方、位相角補正部202では基準位相角θreから指令位相角θre*を求める(詳細後述)。
次に、第1の二相三相変換部102では、電流PI制御部101で演算されたd軸電圧指令値vd*、q軸電圧指令値vq*を、上記指令位相角θre*を用いて、下記(数2)式によって三相電圧指令値vu*、vv*、vw*に変換する。
【0009】
【数2】
次に、PWM制御部203では、上記の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*をPWM信号に変換する(詳細後述)。なお、図1においては、第2の二相三相変換部201を有し、これから出力される三相電流指令値iu*、iv*、iw*によって電流の極性を判断するように構成しているが、従来の構成では第2の二相三相変換部201は無いので、最初はこの部分を考慮しないで説明する。
上記のPWM制御部203より出力された信号に基づいて、インバータ104で直流電力を交流電力に変換し、電動機106へ供給する。これにより電動機106に流れた三相電流を電流センサ107で検出する。
以上の処理を繰り返して電動機のベクトル制御を行う。
【0010】
次に、インバータ104におけるスイッチング素子の動作について説明する。
図2、図3は共にインバータ104内の三相出力部の内の一相分、例えばU相のスイッチング素子を示す回路図である。なお、他のV相、W相においても同様である。
直流電源端子303(Vdc)と305(GND)は、それぞれ逆並列に接続されたIGBT306、308とダイオード307、309を介して電動機U相端子304に接続されている。図2には正極性、つまり直流側から電動機側へと流れる電流の流れ310と311が表示され、図3には負極性、つまり電動機側から直流側へと流れる電流の流れ401と402が示されている。
図4、図5にはそれぞれ電流が正極性および負極性の時のPWM制御部203において生成される電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャートが示されている。
【0011】
はじめにスイッチング動作における各素子の電流の流れについて説明する。電流極性が正の場合は、図2、図4に示すように、デッドタイムによるPWM幅の変化を補正した電圧指令値503がOFF指令のとき、N側IGBT308がONしているが電流は流れていない。電流はGND端子305からN側ダイオード309を通して電動機端子304へと流れる(電流311)。電圧指令値503がOFF→ON(タイミングは550)になると、まずN側IGBT308がOFF(タイミングは551)し、次にP側IGBT306がON(タイミングは552)する。P側IGBT306がONすることによりN側ダイオード309を流れていた電流311はVdc端子303からP側IGBT306を通して電動機端子304へと流れるようになる(電流310)。
電圧指令値503がON→OFF(タイミングは553)になると、まずP側IGBT306がOFF(タイミングは554)し、次にN側IGBT308がON(タイミングは555)する。P側IGBT306がOFFすることにより電流310はN側ダイオード309を流れるようになる(電流311)。
【0012】
一方、電流極性が負の場合は、図3、図5に示すように、補正後の電圧指令値603がOFF指令ではN側IGBT308がONしており、電流は電動機端子304からN側IGBT308を通してGND端子305へと流れる(電流402)。電圧指令値603がOFF→ON(タイミングは650)となると、まずN側IGBT308がOFF(タイミングは651)し、次にP側IGBT306がON(タイミングは652)する。N側IGBT308がOFFすることにより電流402は電動機端子304からP側ダイオード307を通してVdc端子303へと流れるようになる(電流401)。電流指令値603がON→OFF(タイミングは653)になると、まずP側IGBT306がOFF(タイミングは654)し、次にN側IGBT308がON(タイミングは655)する。N側IGBT308がONすることによりP側ダイオード307を流れていた電流401はN側IGBT308を流れるようになる(電流402)。
【0013】
次にIGBTによる遅延の影響について説明する。
図4では、まず、第1の二相三相変換部102より出力された電圧指令値502に対し、PWMタイマ501の比較値は518となるが、デッドタイムにより電動機端子電圧値506のON期間が変化することを補正し、電流極性が正のときは、デッドタイムTdead511の分だけ広いカウント指令値508、補正後電圧指令値503とする。これにより、P側電圧指令値504およびN側電圧指令値505は図示される値になり、電動機端子電圧値506のON期間512は電圧指令値502のON期間510と同様にT*となる。しかし、IGBT遅延を考慮した場合の電動機端子電圧値507のON期間514はT*−Td1+Td2となり、電圧指令値502のON期間510に一致しない。
【0014】
図5では、電流極性が負のため、デッドタイムTdead611の分だけ狭いカウント指令値608、補正後電圧指令値603とする。これにより、P側電圧指令値604およびN側電圧指令値605は図示される値になり、電動機端子電圧値606のON期間612は指令値602のON期間610と同様にT*となる。しかし、IGBT遅延を考慮した場合の電動機端子電圧値607のON期間614はT*−Td1+Td2となり、電圧指令値602のON期間610に一致しないことになる。
【0015】
ここで、ダイオードからIGBTへと電流が切り替わるスイッチング動作(IGBTがOFFからON)による電圧指令値と電動機端子電圧間の遅延時間をTon(ON遅延時間)、IGBTからダイオードヘと電流が切り替わるスイッチング動作(IGBTがONからOFF)による電圧指令値と電動機端子電圧間の遅延時間をToff(OFF遅延時間)と呼ぶことにすると、一般に、両時間の長さは異なり、Tonに対してToffの方が長くなる。
電流極性が正の場合は、Td1=Ton、Td2=Toffとなり、端子電圧値507のON期間514は指令値502より長くなる。一方、電流極性が負の場合は、Td1=Toff、Td2=Tonとなり、端子電圧値607のON期間614は指令値602より短くなる。
【0016】
以上をまとめると、IGBT等のスイッチング素子ではON遅延時間とOFF遅延時間が異なり、これにより電圧指令値と実際の電動機端子電圧のON期間が異なる。また、遅延時間は電流の極性によって変化し、電流極性が正の場合のON遅延時間は、電流極性が負の場合のON遅延時間より短くなり、そして電流極性が正の場合のOFF遅延時間は、電流極性が負の場合のOFF遅延時間より長くなる。ここではU相のみについて示したが、他の相についても同様に言える。
従来においては、図1の位相角補正部202において、電圧指令値が出力されてから実際に電圧が有効に電動機に反映されるまでの時間、および実際に電流が流れてからAD変換部112より電流を読み込むまで時間を電流ループの遅延時間δとし、この遅延時間δに相当する角度を求め、この補正角を基準位相角θreに加えることにより下記の数式によって指令位相角θre*を求めていた。
θre*=θre+δωre
ただし、ωre=(θre−θre’)/ΔT
ΔT:制御周期
θre’:1制御周期ΔT前のθre
しかし、前記のように、IGBT等のスイッチング素子ではON遅延時間とOFF遅延時間が異なり、これにより電圧指令値と実際の電動機端子電圧値とのON期間が異なる。そのため、補正遅延時間が実際の遅延時間と一致しないことになる。また、遅延時間は電流の極性によって変化する。これにより、例えばIGBTの立ち上がりにおける遅延時間で補正遅延時間δを決定すると、電流極性が負の状態では補正遅延時間と実遅延時間が異なり、実際の電動機端子電圧値が指令電圧値と異なることになり、そのため制御の安定性が損なわれ、電流の過渡応答が悪化することになる。
【0017】
本発明においては、上記の問題に対処するため、位相角補正部202においてIGBT遅延時間に相当する補正角を算出することによってIGBT遅延時間による位相のずれを補正し、また、PWM制御部203においてはIGBT遅延時間によるPWM幅のずれを補正している。なお、第2の二相三相変換部201ではPWM制御部203で必要となる電流の極性を判断するためのiu*、iv*、iw*を求めている。
【0018】
以下、まず、IGBT遅延時間によるPWM幅のずれの補正方法について説明する。
図6および図7は、それぞれ電流が正極性および負極性の時の1制御周期期間中の電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャートである。
ここでは、前記説明によるIGBTにおける遅延時間Ton、Toffにより端子電圧値のON期間が変化することを補正している。
まず、電流極性が正の場合は、Td1=Ton(713)、Td2=Toff(714)となるため、Tdead+Ton−Toff(708)の分だけ広いカウント指令値707、補正後電圧指令値703とし、電流極性が負の場合は、Td1=Toff(813)、Td2=Ton(814)となるため、Tdead+Ton−Toff(808)の分だけ狭いカウント指令値807、補正後電圧指令値803としている。よって、電動機端子電圧値706、806のON期間711、811は共に電圧指令値702、802のON期間709、809に一致したT*となる。
また、電流極性が正、負の両方の場合における電圧指令値のON期間の中心715、815に対する電動機端子電圧のON期間の中心716、816の遅延時間712、812は、共に(Tdead+Ton+Toff)/2となる。
【0019】
ここで、電流の極性によりカウント指令値707、807を変えるため、電流の極性を知る必要がある。図1の実施例では、第2の二相三相変換部201で求めた三相電流指令値iu*、iv*、iw*により、電流の極性を判別する。すなわち、第2の二相三相変換部201においては、d軸電流指令値id*110、q軸電流指令値iq*111から下記(数3)式を用いて三相電流指令値iu*、iv*、iw*を求める。
【0020】
【数3】
上記の三相電流指令値iu*、iv*、iw*を用いて電流の極性を判別する。なお、図1においては、電流極性の判定に三相電流指令値の極性を用いたが、電流センサ107で検出した実三相電流値を利用して判定してもよい。
また、ここで用いるダイオードからIGBTへと電流が切り替わるスイッチング動作による遅延時間Ton、およびIGBTからダイオードヘと電流が切り替わるスイッチング動作による遅延時間Toffは、スイッチング素子固有の値であるので予め求めておく。また、デッドタイム値Tdeadは上記遅延時間の関係より決定する。
【0021】
次に、IGBT遅延時間による位相のずれの補正方法について説明する。
本実施例では、位相角補正部202において、図10のタイムチャートに示すように指令位相角θre*を求める。指令位相角θre*は、下記(数4)式に示すように、基準位相角読み込みから指令位相角までの時間(3/2)△TとIGBTの遅延時間(Ton+Toff)/2、およびデッドタイムによる遅延時間Tdead/2とを加えた値に基準位相角より求めた電気角速度ωreを乗算した値を求め、その結果を基準位相角θreに加えることにより求められる。
【0022】
【数4】
ただし、ωre=(θre−θre’)/ΔT
ΔT:制御周期
θre’:1制御周期ΔT前のθre
図1においては、位相角補正部202において、上記(数4)式を用いて指令位相角θre*を求めることにより、二相三相変換部102では遅延時間分遅れた時間の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を求めることができる。
図12は以上説明した第1の実施例における電流制御のフローチャートを示す図である。ステップS1〜S8はこれまで説明した内容に対応している。
【0023】
図14は、第1の実施例における電流ステップ応答シミュレーション結果を示す図であり、(a)はid、(b)はiqの応答結果を示す。
図14は、ON遅延時間よりOFF遅延時間が長い場合において、第1の実施例、従来法(ON遅延時間のみ考慮)、および補正のない場合、のそれぞれにおける応答結果を示したものである。図14から判るように、太線で示した第1の実施例では、細実線で示した従来法に比ベてオーパーシュート量および収束時間が明らかに少なくなっており、十分な効果が認められる。また、細破線で示した補正のなしの場合より良好な特性になっていることは勿論である。
【0024】
以上説明したように、第1の実施例では、位相角補正部202においてIGBT遅延時間に相当する補正角を用いてIGBT遅延時間による位相のずれを補正し、PWM制御部203においてIGBT遅延時間によるPWM幅のずれを補正している。つまり、図10に示したように制御周期の中心1111に電圧指令値1102のON期間の中心1112を合わせるため、電動機端子電圧値1103のON期間の中心1113は制御周期の中心1111から遅延時間1107(Tdead+Ton+Toff)/2だけずれる。この遅延時間分だけ遅れた位相指令値θre*を位相角補正部202において計算する。このようにIGBTの遅延時間を補正することにより、電流応答の向上を図ることができる。したがって遅延時間が電流極性により変化した場合においても、電圧が指令値どおりに制御ができるため、電流制御の安定性が向上し、電流の過渡応答特性が向上する。それにより電流PI制御における制御ゲインが同じであれば、電動機の最高回転数が向上する、という効果がある。
【0025】
(第2の実施例)
第2の実施例の制御ブロックは、図1に示した第1の実施例と同じであるが、第2の実施例では位相角補正部202とPWM制御部203における補正の内容が異なっている。
前記第1の実施例では、位相角補正部202においてIGBT遅延時間に相当する補正角を用いてIGBT遅延時間による位相のずれを補正し、PWM制御部203においてIGBT遅延時間によるPWM幅のずれを補正しているが、第2の実施例ではPWM制御部203においてIGBT遅延時間の位相のずれとPWM幅のずれを補正するように構成している。
【0026】
第1の実施例では図10に示したように、制御周期の中心1111に電圧指令値1102のON期間の中心1112を合わせるため、電動機端子電圧値1103のON期間の中心1113は制御周期の中心1111から遅延時間1107(Tdead+Ton+Toff)/2だけずれる。よって二相三相変換部102において、電圧指令値はこの遅延時間分だけ遅れた値を計算している。一方、第2の実施例では図11に示すように電圧指令値1202のONになるタイミング1213、OFFになるタイミング1214をそれぞれの遅延時間1205、1206の分だけ早めることにより、電動機端子電圧値1203のON期間の中心1215を電圧指令値1202のON期間の中心1216に合わせている。
【0027】
図13は第2の実施例における電流制御のフローチャートである。
図13のフローチャートは、図12とはステップS4の内容のみが異なっている。つまり、位相角補正部202では、下記(数5)式を用いて1制御周期後の中心を指令位相角θre*として求める。
【0028】
【数5】
ただし、ωre=(θre−θre’)/ΔT
ΔT:制御周期
θre’:1制御周期ΔT前のθre
二相三相変換部102では、上記の指令位相角θre*を用いて、電流PI制御部101で演算されたd軸電圧指令vd*、q軸電圧指令vq*を、前記(数2)式によって三相電圧指令値vu*、vv*、vw*に変換する。
【0029】
次に、図11を用いて、PWM制御部203におけるカウント指令値の決定法について説明する。
PWM制御部203では、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*から図11に示すカウント指令値を決定する。ここで電圧値がONになるタイミング1213では、ON遅延時間1205相当のカウント値を減じることでONカウンタ指令値1204を決定し、電圧値がOFFになるタイミング1214では、OFF遅延時間1206相当のカウント値を加えることでOFFカウンタ指令値1212を決定する。
【0030】
ON遅延時間1205とOFF遅延時間1206は、図8、図9に示すように、電流の極性により時間が反転する。また、デッドタイム補正値についても電流の極性によりON遅延時間1205とOFF遅延時間1206とのどちらを付加するか決まる。電流極性については、第1の実施例と同様に(数3)式を用いて三相電流指令値iu*、iv*、iw*を求め、この三相電流指令植より電流の極性を判別する。
【0031】
次に、電流極性によるカウント指令値の補正の違いについて説明する。
図8は第2の実施例において、電流極性が正の場合の電圧指令値と電動機端子電圧値の1制御周期期間中のタイムチャート例を示す図である。図8に示すように、第1の二相三相変換部102より得られた電圧指令値902のスイッチングタイミングに対し、ON、OFF別々の遅延時間分だけ早めて補正した指令値907、916をマイクロコンピュータ113より出力することにより、電動機端子電圧値906は電圧指令値902に一致することになる。
【0032】
図9は、第2の実施例において、電流極性が負の場合の電圧指令値と電動機端子電圧値の1制御周期期間中のタイムチャート例を示す図である。図9に示すように、第1の二相三相変換部102より得られた電圧指令値1002のスイッチングタイミングに対し、ON、OFF別々の遅延時間分だけ早めて補正した指令値1007、1016をマイクロコンピュータ113より出力することにより、電動機端子電圧値1006は電圧指令値1002に一致することになる。
【0033】
図15は、第2の実施例における電流ステップ応答シミュレーション結果を示す図であり、(a)はid、(b)はiqの応答結果を示す。
図15は、ON遅延時間よりOFF遅延時間が長い場合において、第2の実施例、従来法(ON遅延時間のみ考慮)、および補正のない場合、のそれぞれにおける応答結果を示したものである。図14から判るように、太線で示した第2の実施例では、細実線で示した従来法に比ベてオーパーシュート量および収束時間が明らかに少なくなっており、十分な効果が認められる。また、細破線で示した補正のなしの場合より良好な特性になっていることは勿論である。
【0034】
以上説明したように、第2の実施例ではPWM制御部203においてIGBT遅延時間の位相のずれとPWM幅のずれを補正している。つまり、図11に示すように電圧指令値1202のONになるタイミング1213、OFFになるタイミング1214をそれぞれの遅延時間1205、1206の分だけ早めることにより、電動機端子電圧値1203のON期間の中心1215を電圧指令値1202のON期間の中心1216に合わせている。このようにIGBTの遅延時間を補正することにより、電流応答の向上を図ることが出来る。したがって遅延時間が電流極性により変化した場合においても、電圧が指令値どおりに制御ができるため、電流制御の安定性が向上し、電流の過渡応答特性が向上する。それにより電流PI制御における制御ゲインが同じであれば、電動機の最高回転数が向上する、という効果がある。
【0035】
(第3の実施例)
図16は本発明の第3の実施例を示すブロック図であり、三相交流電動機のベクトル制御装置を示す。
第3の実施例の制御ブロックは、図1に示した第1の実施例に比べて、位相角補正部202、第1の二相三相変換部102、第2の二相三相変換部201の内容が異なっている。
前記第1の実施例では、遅延時間補正値および電圧指令補正値は、1相について算出しているが、第3の実施例では、遅延時間補正値および電圧指令補正値を3相の各相毎に演算し、求めた各相毎の遅延時間補正値に基づいて各相毎に位相角を補正し、補正後の位相角を用いて直流交流座標変換を行うように構成している。
また、第1の実施例では、パワースイッチング素子がONに切り替わるスイッチング動作の際における電圧指令値と電動機端子電圧間の遅延時間Ton、およびOFFに切り替わるスイッチング動作の際における遅延時間Toffをそれぞれ一定値にしているが、第3の実施例においては、ON時の遅延時間TonおよびOFF時の遅延時間Toffをそれぞれパワースイッチング素子に流れる電流値(駆動電流)に応じた値に設定するように構成している。
【0036】
以下、図16の構成について説明する。
位相角補正部202では、U相、V相、W相の各相毎に、位相角指令値θreu*208、θrev*209、θrew*210を求める。まず、U相の位相角指令値θreu*208は、下記(数6)式に示すように、基準位相角θre120に対し、基準位相角読み込みから指令位相角までの時間(3/2)△TとIGBTの遅延時間(Ton+Toff)/2、およびデッドタイムによる遅延時間Tdead/2とを加えた値に基準位相角より求めた電気角速度ωreを乗算した値を求め、その結果を基準位相角θreに加えることにより求められる。同様に、V相の位相角指令値θrev*209、W相の位相角指令値θrew*210を求める。
【0037】
【数6】
ただし、ωre=(θre−θreu’)/ΔT
ΔT:制御周期
θreu’:1制御周期ΔT前のθreu
そして第1の二相三相変換部102では、上記のそれぞれの位相角指令値を用いて、各相毎に遅延時間分遅れた時間を補償した各相の電圧指令値vu*204、vv*205、vw*206を出力する。vu*204、vv*205、vw*206は下記(数7)式で示される。
【0038】
【数7】
以下、図6および図7を用いてIGBT遅延時間によるPWM幅のずれの補償方法について説明する。
図6はU相における電流極性が正極性の場合の1制御周期期間中の電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャートであり、図7はU相における電流極性が負極性の場合の1制御周期期間中の電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャートである。
図6に示すように、電流極性が正の場合、Td1=Ton(713)、Td2=Toff(714)となるため、デッドタイムおよびIGBT遅延時間によるPWM幅のずれを補償するため、Tdead+Ton−Toffの分だけ広いカウント指令値707、補正後電圧指令値703とする。
また、図7に示すように、電流極性が負の場合、Td1=Toff(813)、Td2=Ton(814)となるため、デッドタイムおよびIGBT遅延時間によるPWM幅のずれを補正するため、Tdead+Ton−Toffの分だけ狭いカウント指令値807、補正後電圧指令値803とする。
【0039】
したがって、電動機端子電圧値706、806のON期間711、811は共にU相電圧指令値vu*702、802のON期間709、809に一致し、T*となる。また、電流極性が正、負の両場合において、u相電圧指令値vu*のON期間の中心715、815に対する電動機端子電圧のON期間の中心716、816の遅延時間712、812は、共に(Tdead+Ton+Toff)/2となる。上記の説明は、3相の内のU相のみについて説明したが、V相、W相についても同様に言える。
【0040】
次に、電流の極性によりカウント指令値707、807を変えるため、電流の極性を知る必要がある。本実施例では、図16の第2の二相三相変換部201において、d軸電流指令値id*110、q軸電流指令値iq*111を下記(数8)式によって3相電流指令値iu*250、iv*212、iw*213に変換し、3相の各相について電流指令値iu*250、iv*212、iw*213の極性を符号によって判別する。
【0041】
【数8】
なお、ここでは第2の二相三相変換器201において、3相の各相電流指令値の極性を判別したが、電流センサ107にて検出する3相電流値iu117、iv118、iw119を用いて3相電流指令値の極性を判定してもよい。
【0042】
上記のように、遅延時間補正値および電圧指令補正値を3相の各相毎に演算し、求めた各相毎の遅延時間補正値に基づいて各相毎に位相角を補正し、補正後の位相角を用いて直流交流座標変換を行うように構成したことにより、制御の安定性を損なわずに電流の速い応答を可能にすることが出来る。
【0043】
また、上記の計算で使用したIGBTのスイッチング動作による遅延時間Tonおよび遅延時間Toffは、流れる電流値(駆動電流)によって変化する。この遅延時間Tonおよび遅延時間Toffは、スイッチング素子固有の値なので、予め計測することによって求めることが可能である。したがってデッドタイム値Tdeadは上記遅延時間Ton、Toffと電流値との関係を予め計測してマップ化しておき、電流値に基づいてマップ引きすることにより決定することができる。
このように遅延時間Tonおよび遅延時間Toffを、電流値に応じて正確な値に設定することにより、より精度の高い制御を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示すブロック図。
【図2】インバータ104内のスイッチング素子に正極性の電流が流れる状態を示す回路図。
【図3】インバータ104内のスイッチング素子に負極性の電流が流れる状態を示す回路図。
【図4】電流が正極性の時のPWM制御部203において生成される電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャート。
【図5】電流が負極性の時のPWM制御部203において生成される電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャート。
【図6】第1の実施例において、電流が正極性の時の1制御周期期間中の電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャート。
【図7】第1の実施例において、電流が負極性の時の1制御周期期間中の電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャート。
【図8】第2の実施例において、電流が正極性の場合の電圧指令値と電動機端子電圧値の1制御周期期間中のタイムチャート。
【図9】第2の実施例において、電流が負極性の場合の電圧指令値と電動機端子電圧値の1制御周期期間中のタイムチャート。
【図10】第1の実施例における補正内容を説明するためのPWM制御部203におけるタイムチャート。
【図11】第2の実施例における補正内容を説明するためのPWM制御部203におけるタイムチャート。
【図12】第1の実施例における電流制御のフローチャートを示す図。
【図13】第2の実施例における電流制御のフローチャートを示す図。
【図14】第1の実施例における電流ステップ応答シミュレーション結果を示す図であり、(a)はid、(b)はiqの応答結果を示す。
【図15】第2の実施例における電流ステップ応答シミュレーション結果を示す図であり、(a)はid、(b)はiqの応答結果を示す。
【図16】本発明の第3の実施例を示すブロック図。
【符号の説明】
101…電流PI制御部 102…第1の二相三相変換部
104…インバータ 105…角度検出器
106…三相同期電動機 107…電流センサ
108…三相二相変換部 112…AD変換部
113…マイクロコンピュータ 201…第2の二相三相変換部
202…位相角補正部 203…PWM変換部
【発明の属する技術分野】
本発明は三相交流電動機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平9−23700号公報
上記特許文献1には、交流電動機の電流制御において、電圧指令値が出力されてから実際に電圧が有効に電動機に反映されるまでの電流ループの遅れ時間に相当する角度を求めて補正角とし、直流−交流変換で用いる位相角を、この補正角によって補正することにより、電流ループの遅れを補償し、制御の安定性を向上させる技術が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1においては、電流ループの遅れ時間として、電圧指令値が出力されてから、実際に電圧が有効に電動機に反映されるまでの時間、および実際に電流が流れてから、ADコンバータを経てサーボソフトが電流を読み込むまでの実電流の検出に要する時間を考慮して、直流−交流座標変換で用いる位相角を補正するという構成になっている。しかし、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のパワースイッチング素子ではOFF状態からON状態に変化するまでのON遅延時間と、ON状態からOFF状態に変化するまでのOFF遅延時間とが異なるので、電圧指令値と実際の電動機端子電圧値とのPWM幅が異なり、出力の遅延時間補正値も変化するが、上記特許文献1の構成では、このPWM幅のずれ量と遅延時間の変化を考慮していないので、補正が不十分であり、制御の安定性を十分向上させることが困難である、という問題があった。
本発明は上記のごとき問題を解決するためになされたものであり、スイッチング素子のON遅延時間とOFF遅延時間が異なる場合を考慮した十分な補正を行い、制御安定性を更に向上させることの出来る三相交流電動機の制御装置を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明においては、パワースイッチング素子を用いたインバータを制御することにより電動機に供給する電力を制御する三相交流電動機の制御装置において、前記パワースイッチング素子のON遅延時間とOFF遅延時間とに基づいて遅延時間補正値および電圧指令補正値を求め、前記遅延時間補正値に基づいて位相角を補正し、前記補正後の位相角を用いて直流交流座標変換を行い、かつ、前記電圧指令補正値を用いてPWM制御のパルス幅を補正するように構成している。
【0004】
【発明の効果】
スイッチング素子のON遅延時間とOFF遅延時間が異なる場合においても、電動機に印加する電圧を指令値どおりに制御ができるため、電流制御の安定性が向上し、電流の過渡応答特性が向上するという効果が得られ、それにより電流PI制御における制御ゲインが同じであれば、電動機の最高回転数が向上する、という効果も得られる。
【0005】
【発明の実施の形態】
(第1の実施例)
図1は本発明の第1の実施例を示すブロック図であり、三相交流電動機のベクトル制御装置を示す。
図1において、位相角補正部202、PWM変換部203および第2の二相三相変換部201の部分が従来と異なっており、その他の部分は従来と同様である。以下、まず図1のうち従来と同様の部分について構成と動作を説明する。
三相同期電動機106には回転子の基準位相角(電気角)を検出する角度検出器105および各相の電流を検出する電流センサ107が設置されている。これらのセンサから得られる情報をマイクロコンピュータ113で取り込み、マイクロコンピュータ113では電動機106に電力を供給するインバータ104を制御する信号を生成する。
【0006】
マイクロコンピュータ113内の制御(ソフトウェア)については下記のとおりである。まず、電流センサ107で検出された三相電動機電流値iu、iv、iwをAD変換部112でデジタル信号に変化して取り込む。
三相二相変換部108では、上記の三相電動機電流値iu、iv、iwを、角度検出器105で検出した電動機の基準位相角θreを用いて、下記(数1)式によってd軸電流値idおよびq軸電流値iqに変換する。
【0007】
【数1】
電流PI制御部101では、外部より指令されるd軸電流指令値id*110およびq軸電流指令値iq*111と、三相二相変換部108で算出されたd軸電流値idおよびq軸電流値iqから周知の制御である比例積分制御によって、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を演算する。
【0008】
一方、位相角補正部202では基準位相角θreから指令位相角θre*を求める(詳細後述)。
次に、第1の二相三相変換部102では、電流PI制御部101で演算されたd軸電圧指令値vd*、q軸電圧指令値vq*を、上記指令位相角θre*を用いて、下記(数2)式によって三相電圧指令値vu*、vv*、vw*に変換する。
【0009】
【数2】
次に、PWM制御部203では、上記の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*をPWM信号に変換する(詳細後述)。なお、図1においては、第2の二相三相変換部201を有し、これから出力される三相電流指令値iu*、iv*、iw*によって電流の極性を判断するように構成しているが、従来の構成では第2の二相三相変換部201は無いので、最初はこの部分を考慮しないで説明する。
上記のPWM制御部203より出力された信号に基づいて、インバータ104で直流電力を交流電力に変換し、電動機106へ供給する。これにより電動機106に流れた三相電流を電流センサ107で検出する。
以上の処理を繰り返して電動機のベクトル制御を行う。
【0010】
次に、インバータ104におけるスイッチング素子の動作について説明する。
図2、図3は共にインバータ104内の三相出力部の内の一相分、例えばU相のスイッチング素子を示す回路図である。なお、他のV相、W相においても同様である。
直流電源端子303(Vdc)と305(GND)は、それぞれ逆並列に接続されたIGBT306、308とダイオード307、309を介して電動機U相端子304に接続されている。図2には正極性、つまり直流側から電動機側へと流れる電流の流れ310と311が表示され、図3には負極性、つまり電動機側から直流側へと流れる電流の流れ401と402が示されている。
図4、図5にはそれぞれ電流が正極性および負極性の時のPWM制御部203において生成される電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャートが示されている。
【0011】
はじめにスイッチング動作における各素子の電流の流れについて説明する。電流極性が正の場合は、図2、図4に示すように、デッドタイムによるPWM幅の変化を補正した電圧指令値503がOFF指令のとき、N側IGBT308がONしているが電流は流れていない。電流はGND端子305からN側ダイオード309を通して電動機端子304へと流れる(電流311)。電圧指令値503がOFF→ON(タイミングは550)になると、まずN側IGBT308がOFF(タイミングは551)し、次にP側IGBT306がON(タイミングは552)する。P側IGBT306がONすることによりN側ダイオード309を流れていた電流311はVdc端子303からP側IGBT306を通して電動機端子304へと流れるようになる(電流310)。
電圧指令値503がON→OFF(タイミングは553)になると、まずP側IGBT306がOFF(タイミングは554)し、次にN側IGBT308がON(タイミングは555)する。P側IGBT306がOFFすることにより電流310はN側ダイオード309を流れるようになる(電流311)。
【0012】
一方、電流極性が負の場合は、図3、図5に示すように、補正後の電圧指令値603がOFF指令ではN側IGBT308がONしており、電流は電動機端子304からN側IGBT308を通してGND端子305へと流れる(電流402)。電圧指令値603がOFF→ON(タイミングは650)となると、まずN側IGBT308がOFF(タイミングは651)し、次にP側IGBT306がON(タイミングは652)する。N側IGBT308がOFFすることにより電流402は電動機端子304からP側ダイオード307を通してVdc端子303へと流れるようになる(電流401)。電流指令値603がON→OFF(タイミングは653)になると、まずP側IGBT306がOFF(タイミングは654)し、次にN側IGBT308がON(タイミングは655)する。N側IGBT308がONすることによりP側ダイオード307を流れていた電流401はN側IGBT308を流れるようになる(電流402)。
【0013】
次にIGBTによる遅延の影響について説明する。
図4では、まず、第1の二相三相変換部102より出力された電圧指令値502に対し、PWMタイマ501の比較値は518となるが、デッドタイムにより電動機端子電圧値506のON期間が変化することを補正し、電流極性が正のときは、デッドタイムTdead511の分だけ広いカウント指令値508、補正後電圧指令値503とする。これにより、P側電圧指令値504およびN側電圧指令値505は図示される値になり、電動機端子電圧値506のON期間512は電圧指令値502のON期間510と同様にT*となる。しかし、IGBT遅延を考慮した場合の電動機端子電圧値507のON期間514はT*−Td1+Td2となり、電圧指令値502のON期間510に一致しない。
【0014】
図5では、電流極性が負のため、デッドタイムTdead611の分だけ狭いカウント指令値608、補正後電圧指令値603とする。これにより、P側電圧指令値604およびN側電圧指令値605は図示される値になり、電動機端子電圧値606のON期間612は指令値602のON期間610と同様にT*となる。しかし、IGBT遅延を考慮した場合の電動機端子電圧値607のON期間614はT*−Td1+Td2となり、電圧指令値602のON期間610に一致しないことになる。
【0015】
ここで、ダイオードからIGBTへと電流が切り替わるスイッチング動作(IGBTがOFFからON)による電圧指令値と電動機端子電圧間の遅延時間をTon(ON遅延時間)、IGBTからダイオードヘと電流が切り替わるスイッチング動作(IGBTがONからOFF)による電圧指令値と電動機端子電圧間の遅延時間をToff(OFF遅延時間)と呼ぶことにすると、一般に、両時間の長さは異なり、Tonに対してToffの方が長くなる。
電流極性が正の場合は、Td1=Ton、Td2=Toffとなり、端子電圧値507のON期間514は指令値502より長くなる。一方、電流極性が負の場合は、Td1=Toff、Td2=Tonとなり、端子電圧値607のON期間614は指令値602より短くなる。
【0016】
以上をまとめると、IGBT等のスイッチング素子ではON遅延時間とOFF遅延時間が異なり、これにより電圧指令値と実際の電動機端子電圧のON期間が異なる。また、遅延時間は電流の極性によって変化し、電流極性が正の場合のON遅延時間は、電流極性が負の場合のON遅延時間より短くなり、そして電流極性が正の場合のOFF遅延時間は、電流極性が負の場合のOFF遅延時間より長くなる。ここではU相のみについて示したが、他の相についても同様に言える。
従来においては、図1の位相角補正部202において、電圧指令値が出力されてから実際に電圧が有効に電動機に反映されるまでの時間、および実際に電流が流れてからAD変換部112より電流を読み込むまで時間を電流ループの遅延時間δとし、この遅延時間δに相当する角度を求め、この補正角を基準位相角θreに加えることにより下記の数式によって指令位相角θre*を求めていた。
θre*=θre+δωre
ただし、ωre=(θre−θre’)/ΔT
ΔT:制御周期
θre’:1制御周期ΔT前のθre
しかし、前記のように、IGBT等のスイッチング素子ではON遅延時間とOFF遅延時間が異なり、これにより電圧指令値と実際の電動機端子電圧値とのON期間が異なる。そのため、補正遅延時間が実際の遅延時間と一致しないことになる。また、遅延時間は電流の極性によって変化する。これにより、例えばIGBTの立ち上がりにおける遅延時間で補正遅延時間δを決定すると、電流極性が負の状態では補正遅延時間と実遅延時間が異なり、実際の電動機端子電圧値が指令電圧値と異なることになり、そのため制御の安定性が損なわれ、電流の過渡応答が悪化することになる。
【0017】
本発明においては、上記の問題に対処するため、位相角補正部202においてIGBT遅延時間に相当する補正角を算出することによってIGBT遅延時間による位相のずれを補正し、また、PWM制御部203においてはIGBT遅延時間によるPWM幅のずれを補正している。なお、第2の二相三相変換部201ではPWM制御部203で必要となる電流の極性を判断するためのiu*、iv*、iw*を求めている。
【0018】
以下、まず、IGBT遅延時間によるPWM幅のずれの補正方法について説明する。
図6および図7は、それぞれ電流が正極性および負極性の時の1制御周期期間中の電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャートである。
ここでは、前記説明によるIGBTにおける遅延時間Ton、Toffにより端子電圧値のON期間が変化することを補正している。
まず、電流極性が正の場合は、Td1=Ton(713)、Td2=Toff(714)となるため、Tdead+Ton−Toff(708)の分だけ広いカウント指令値707、補正後電圧指令値703とし、電流極性が負の場合は、Td1=Toff(813)、Td2=Ton(814)となるため、Tdead+Ton−Toff(808)の分だけ狭いカウント指令値807、補正後電圧指令値803としている。よって、電動機端子電圧値706、806のON期間711、811は共に電圧指令値702、802のON期間709、809に一致したT*となる。
また、電流極性が正、負の両方の場合における電圧指令値のON期間の中心715、815に対する電動機端子電圧のON期間の中心716、816の遅延時間712、812は、共に(Tdead+Ton+Toff)/2となる。
【0019】
ここで、電流の極性によりカウント指令値707、807を変えるため、電流の極性を知る必要がある。図1の実施例では、第2の二相三相変換部201で求めた三相電流指令値iu*、iv*、iw*により、電流の極性を判別する。すなわち、第2の二相三相変換部201においては、d軸電流指令値id*110、q軸電流指令値iq*111から下記(数3)式を用いて三相電流指令値iu*、iv*、iw*を求める。
【0020】
【数3】
上記の三相電流指令値iu*、iv*、iw*を用いて電流の極性を判別する。なお、図1においては、電流極性の判定に三相電流指令値の極性を用いたが、電流センサ107で検出した実三相電流値を利用して判定してもよい。
また、ここで用いるダイオードからIGBTへと電流が切り替わるスイッチング動作による遅延時間Ton、およびIGBTからダイオードヘと電流が切り替わるスイッチング動作による遅延時間Toffは、スイッチング素子固有の値であるので予め求めておく。また、デッドタイム値Tdeadは上記遅延時間の関係より決定する。
【0021】
次に、IGBT遅延時間による位相のずれの補正方法について説明する。
本実施例では、位相角補正部202において、図10のタイムチャートに示すように指令位相角θre*を求める。指令位相角θre*は、下記(数4)式に示すように、基準位相角読み込みから指令位相角までの時間(3/2)△TとIGBTの遅延時間(Ton+Toff)/2、およびデッドタイムによる遅延時間Tdead/2とを加えた値に基準位相角より求めた電気角速度ωreを乗算した値を求め、その結果を基準位相角θreに加えることにより求められる。
【0022】
【数4】
ただし、ωre=(θre−θre’)/ΔT
ΔT:制御周期
θre’:1制御周期ΔT前のθre
図1においては、位相角補正部202において、上記(数4)式を用いて指令位相角θre*を求めることにより、二相三相変換部102では遅延時間分遅れた時間の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を求めることができる。
図12は以上説明した第1の実施例における電流制御のフローチャートを示す図である。ステップS1〜S8はこれまで説明した内容に対応している。
【0023】
図14は、第1の実施例における電流ステップ応答シミュレーション結果を示す図であり、(a)はid、(b)はiqの応答結果を示す。
図14は、ON遅延時間よりOFF遅延時間が長い場合において、第1の実施例、従来法(ON遅延時間のみ考慮)、および補正のない場合、のそれぞれにおける応答結果を示したものである。図14から判るように、太線で示した第1の実施例では、細実線で示した従来法に比ベてオーパーシュート量および収束時間が明らかに少なくなっており、十分な効果が認められる。また、細破線で示した補正のなしの場合より良好な特性になっていることは勿論である。
【0024】
以上説明したように、第1の実施例では、位相角補正部202においてIGBT遅延時間に相当する補正角を用いてIGBT遅延時間による位相のずれを補正し、PWM制御部203においてIGBT遅延時間によるPWM幅のずれを補正している。つまり、図10に示したように制御周期の中心1111に電圧指令値1102のON期間の中心1112を合わせるため、電動機端子電圧値1103のON期間の中心1113は制御周期の中心1111から遅延時間1107(Tdead+Ton+Toff)/2だけずれる。この遅延時間分だけ遅れた位相指令値θre*を位相角補正部202において計算する。このようにIGBTの遅延時間を補正することにより、電流応答の向上を図ることができる。したがって遅延時間が電流極性により変化した場合においても、電圧が指令値どおりに制御ができるため、電流制御の安定性が向上し、電流の過渡応答特性が向上する。それにより電流PI制御における制御ゲインが同じであれば、電動機の最高回転数が向上する、という効果がある。
【0025】
(第2の実施例)
第2の実施例の制御ブロックは、図1に示した第1の実施例と同じであるが、第2の実施例では位相角補正部202とPWM制御部203における補正の内容が異なっている。
前記第1の実施例では、位相角補正部202においてIGBT遅延時間に相当する補正角を用いてIGBT遅延時間による位相のずれを補正し、PWM制御部203においてIGBT遅延時間によるPWM幅のずれを補正しているが、第2の実施例ではPWM制御部203においてIGBT遅延時間の位相のずれとPWM幅のずれを補正するように構成している。
【0026】
第1の実施例では図10に示したように、制御周期の中心1111に電圧指令値1102のON期間の中心1112を合わせるため、電動機端子電圧値1103のON期間の中心1113は制御周期の中心1111から遅延時間1107(Tdead+Ton+Toff)/2だけずれる。よって二相三相変換部102において、電圧指令値はこの遅延時間分だけ遅れた値を計算している。一方、第2の実施例では図11に示すように電圧指令値1202のONになるタイミング1213、OFFになるタイミング1214をそれぞれの遅延時間1205、1206の分だけ早めることにより、電動機端子電圧値1203のON期間の中心1215を電圧指令値1202のON期間の中心1216に合わせている。
【0027】
図13は第2の実施例における電流制御のフローチャートである。
図13のフローチャートは、図12とはステップS4の内容のみが異なっている。つまり、位相角補正部202では、下記(数5)式を用いて1制御周期後の中心を指令位相角θre*として求める。
【0028】
【数5】
ただし、ωre=(θre−θre’)/ΔT
ΔT:制御周期
θre’:1制御周期ΔT前のθre
二相三相変換部102では、上記の指令位相角θre*を用いて、電流PI制御部101で演算されたd軸電圧指令vd*、q軸電圧指令vq*を、前記(数2)式によって三相電圧指令値vu*、vv*、vw*に変換する。
【0029】
次に、図11を用いて、PWM制御部203におけるカウント指令値の決定法について説明する。
PWM制御部203では、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*から図11に示すカウント指令値を決定する。ここで電圧値がONになるタイミング1213では、ON遅延時間1205相当のカウント値を減じることでONカウンタ指令値1204を決定し、電圧値がOFFになるタイミング1214では、OFF遅延時間1206相当のカウント値を加えることでOFFカウンタ指令値1212を決定する。
【0030】
ON遅延時間1205とOFF遅延時間1206は、図8、図9に示すように、電流の極性により時間が反転する。また、デッドタイム補正値についても電流の極性によりON遅延時間1205とOFF遅延時間1206とのどちらを付加するか決まる。電流極性については、第1の実施例と同様に(数3)式を用いて三相電流指令値iu*、iv*、iw*を求め、この三相電流指令植より電流の極性を判別する。
【0031】
次に、電流極性によるカウント指令値の補正の違いについて説明する。
図8は第2の実施例において、電流極性が正の場合の電圧指令値と電動機端子電圧値の1制御周期期間中のタイムチャート例を示す図である。図8に示すように、第1の二相三相変換部102より得られた電圧指令値902のスイッチングタイミングに対し、ON、OFF別々の遅延時間分だけ早めて補正した指令値907、916をマイクロコンピュータ113より出力することにより、電動機端子電圧値906は電圧指令値902に一致することになる。
【0032】
図9は、第2の実施例において、電流極性が負の場合の電圧指令値と電動機端子電圧値の1制御周期期間中のタイムチャート例を示す図である。図9に示すように、第1の二相三相変換部102より得られた電圧指令値1002のスイッチングタイミングに対し、ON、OFF別々の遅延時間分だけ早めて補正した指令値1007、1016をマイクロコンピュータ113より出力することにより、電動機端子電圧値1006は電圧指令値1002に一致することになる。
【0033】
図15は、第2の実施例における電流ステップ応答シミュレーション結果を示す図であり、(a)はid、(b)はiqの応答結果を示す。
図15は、ON遅延時間よりOFF遅延時間が長い場合において、第2の実施例、従来法(ON遅延時間のみ考慮)、および補正のない場合、のそれぞれにおける応答結果を示したものである。図14から判るように、太線で示した第2の実施例では、細実線で示した従来法に比ベてオーパーシュート量および収束時間が明らかに少なくなっており、十分な効果が認められる。また、細破線で示した補正のなしの場合より良好な特性になっていることは勿論である。
【0034】
以上説明したように、第2の実施例ではPWM制御部203においてIGBT遅延時間の位相のずれとPWM幅のずれを補正している。つまり、図11に示すように電圧指令値1202のONになるタイミング1213、OFFになるタイミング1214をそれぞれの遅延時間1205、1206の分だけ早めることにより、電動機端子電圧値1203のON期間の中心1215を電圧指令値1202のON期間の中心1216に合わせている。このようにIGBTの遅延時間を補正することにより、電流応答の向上を図ることが出来る。したがって遅延時間が電流極性により変化した場合においても、電圧が指令値どおりに制御ができるため、電流制御の安定性が向上し、電流の過渡応答特性が向上する。それにより電流PI制御における制御ゲインが同じであれば、電動機の最高回転数が向上する、という効果がある。
【0035】
(第3の実施例)
図16は本発明の第3の実施例を示すブロック図であり、三相交流電動機のベクトル制御装置を示す。
第3の実施例の制御ブロックは、図1に示した第1の実施例に比べて、位相角補正部202、第1の二相三相変換部102、第2の二相三相変換部201の内容が異なっている。
前記第1の実施例では、遅延時間補正値および電圧指令補正値は、1相について算出しているが、第3の実施例では、遅延時間補正値および電圧指令補正値を3相の各相毎に演算し、求めた各相毎の遅延時間補正値に基づいて各相毎に位相角を補正し、補正後の位相角を用いて直流交流座標変換を行うように構成している。
また、第1の実施例では、パワースイッチング素子がONに切り替わるスイッチング動作の際における電圧指令値と電動機端子電圧間の遅延時間Ton、およびOFFに切り替わるスイッチング動作の際における遅延時間Toffをそれぞれ一定値にしているが、第3の実施例においては、ON時の遅延時間TonおよびOFF時の遅延時間Toffをそれぞれパワースイッチング素子に流れる電流値(駆動電流)に応じた値に設定するように構成している。
【0036】
以下、図16の構成について説明する。
位相角補正部202では、U相、V相、W相の各相毎に、位相角指令値θreu*208、θrev*209、θrew*210を求める。まず、U相の位相角指令値θreu*208は、下記(数6)式に示すように、基準位相角θre120に対し、基準位相角読み込みから指令位相角までの時間(3/2)△TとIGBTの遅延時間(Ton+Toff)/2、およびデッドタイムによる遅延時間Tdead/2とを加えた値に基準位相角より求めた電気角速度ωreを乗算した値を求め、その結果を基準位相角θreに加えることにより求められる。同様に、V相の位相角指令値θrev*209、W相の位相角指令値θrew*210を求める。
【0037】
【数6】
ただし、ωre=(θre−θreu’)/ΔT
ΔT:制御周期
θreu’:1制御周期ΔT前のθreu
そして第1の二相三相変換部102では、上記のそれぞれの位相角指令値を用いて、各相毎に遅延時間分遅れた時間を補償した各相の電圧指令値vu*204、vv*205、vw*206を出力する。vu*204、vv*205、vw*206は下記(数7)式で示される。
【0038】
【数7】
以下、図6および図7を用いてIGBT遅延時間によるPWM幅のずれの補償方法について説明する。
図6はU相における電流極性が正極性の場合の1制御周期期間中の電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャートであり、図7はU相における電流極性が負極性の場合の1制御周期期間中の電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャートである。
図6に示すように、電流極性が正の場合、Td1=Ton(713)、Td2=Toff(714)となるため、デッドタイムおよびIGBT遅延時間によるPWM幅のずれを補償するため、Tdead+Ton−Toffの分だけ広いカウント指令値707、補正後電圧指令値703とする。
また、図7に示すように、電流極性が負の場合、Td1=Toff(813)、Td2=Ton(814)となるため、デッドタイムおよびIGBT遅延時間によるPWM幅のずれを補正するため、Tdead+Ton−Toffの分だけ狭いカウント指令値807、補正後電圧指令値803とする。
【0039】
したがって、電動機端子電圧値706、806のON期間711、811は共にU相電圧指令値vu*702、802のON期間709、809に一致し、T*となる。また、電流極性が正、負の両場合において、u相電圧指令値vu*のON期間の中心715、815に対する電動機端子電圧のON期間の中心716、816の遅延時間712、812は、共に(Tdead+Ton+Toff)/2となる。上記の説明は、3相の内のU相のみについて説明したが、V相、W相についても同様に言える。
【0040】
次に、電流の極性によりカウント指令値707、807を変えるため、電流の極性を知る必要がある。本実施例では、図16の第2の二相三相変換部201において、d軸電流指令値id*110、q軸電流指令値iq*111を下記(数8)式によって3相電流指令値iu*250、iv*212、iw*213に変換し、3相の各相について電流指令値iu*250、iv*212、iw*213の極性を符号によって判別する。
【0041】
【数8】
なお、ここでは第2の二相三相変換器201において、3相の各相電流指令値の極性を判別したが、電流センサ107にて検出する3相電流値iu117、iv118、iw119を用いて3相電流指令値の極性を判定してもよい。
【0042】
上記のように、遅延時間補正値および電圧指令補正値を3相の各相毎に演算し、求めた各相毎の遅延時間補正値に基づいて各相毎に位相角を補正し、補正後の位相角を用いて直流交流座標変換を行うように構成したことにより、制御の安定性を損なわずに電流の速い応答を可能にすることが出来る。
【0043】
また、上記の計算で使用したIGBTのスイッチング動作による遅延時間Tonおよび遅延時間Toffは、流れる電流値(駆動電流)によって変化する。この遅延時間Tonおよび遅延時間Toffは、スイッチング素子固有の値なので、予め計測することによって求めることが可能である。したがってデッドタイム値Tdeadは上記遅延時間Ton、Toffと電流値との関係を予め計測してマップ化しておき、電流値に基づいてマップ引きすることにより決定することができる。
このように遅延時間Tonおよび遅延時間Toffを、電流値に応じて正確な値に設定することにより、より精度の高い制御を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示すブロック図。
【図2】インバータ104内のスイッチング素子に正極性の電流が流れる状態を示す回路図。
【図3】インバータ104内のスイッチング素子に負極性の電流が流れる状態を示す回路図。
【図4】電流が正極性の時のPWM制御部203において生成される電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャート。
【図5】電流が負極性の時のPWM制御部203において生成される電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャート。
【図6】第1の実施例において、電流が正極性の時の1制御周期期間中の電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャート。
【図7】第1の実施例において、電流が負極性の時の1制御周期期間中の電圧指令値と電動機端子電圧値の関係を表すタイムチャート。
【図8】第2の実施例において、電流が正極性の場合の電圧指令値と電動機端子電圧値の1制御周期期間中のタイムチャート。
【図9】第2の実施例において、電流が負極性の場合の電圧指令値と電動機端子電圧値の1制御周期期間中のタイムチャート。
【図10】第1の実施例における補正内容を説明するためのPWM制御部203におけるタイムチャート。
【図11】第2の実施例における補正内容を説明するためのPWM制御部203におけるタイムチャート。
【図12】第1の実施例における電流制御のフローチャートを示す図。
【図13】第2の実施例における電流制御のフローチャートを示す図。
【図14】第1の実施例における電流ステップ応答シミュレーション結果を示す図であり、(a)はid、(b)はiqの応答結果を示す。
【図15】第2の実施例における電流ステップ応答シミュレーション結果を示す図であり、(a)はid、(b)はiqの応答結果を示す。
【図16】本発明の第3の実施例を示すブロック図。
【符号の説明】
101…電流PI制御部 102…第1の二相三相変換部
104…インバータ 105…角度検出器
106…三相同期電動機 107…電流センサ
108…三相二相変換部 112…AD変換部
113…マイクロコンピュータ 201…第2の二相三相変換部
202…位相角補正部 203…PWM変換部
Claims (6)
- パワースイッチング素子を用いたインバータを制御することにより電動機に供給する電力を制御する三相交流電動機の制御装置において、
前記パワースイッチング素子のON遅延時間とOFF遅延時間とに基づいて遅延時間補正値および電圧指令補正値を求め、前記遅延時間補正値に基づいて位相角を補正し、補正後の位相角を用いて直流交流座標変換を行い、かつ、前記電圧指令補正値を用いてPWM制御のパルス幅を補正する手段を備えた三相交流電動機の電流制御装置。 - 前記パワースイッチング素子がONに切り替わるスイッチング動作の際における電圧指令値と電動機端子電圧間の遅延時間をTon、OFFに切り替わるスイッチング動作の際における前記遅延時間をToff、切り替え時に電流が流れないデッドタイムをTdeadとした場合に、前記遅延時間補正値は、遅延時間(Tdead+Ton+Toff)/2に相当する値とし、基準角読み込みから指令位相角までの時間(3/2)ΔT(ただしΔTは1制御周期)と前記遅延時間(Tdead+Ton+Toff)/2とを加えた値に電気角速度ωreを乗算し、その結果を基準位相角θreに加算した値を補正後の指令位相角θre*とすることを特徴とする請求項1に記載の三相交流電動機の電流制御装置。
- 前記パワースイッチング素子がONに切り替わるスイッチング動作の際における電圧指令値と電動機端子電圧間の遅延時間Ton、およびOFFに切り替わるスイッチング動作の際における遅延時間Toffは、前記パワースイッチング素子に流れる電流値に応じて設定され、前記電流値に応じて前記遅延時間補正値および電圧指令補正値を変えることを特徴とする請求項2に記載の三相交流電動機の電流制御装置。
- 前記パワースイッチング素子から電動機に電流が流れ込む方向を正極性、前記電動機から前記パワースイッチング素子に電流が流れ出す方向を負極性とした場合に、前記パワースイッチング素子のON遅延時間とOFF遅延時間が前記正極性と負極性とで異なる値をとることを含めて前記遅延時間補正値および電圧指令補正値を求めることを特徴とする請求項1に記載の三相交流電動機の電流制御装置。
- 前記パワースイッチング素子から電動機に電流が流れ込む方向を正極性、前記電動機から前記パワースイッチング素子に電流が流れ出す方向を負極性とした場合に、前記電流の極性を検出する手段を備え、電流の極性に応じたパワースイッチング素子による遅延時間の変化を判断し、電圧指令値のONタイミングとOFFタイミングに対して前記遅延時間を補正する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の三相交流電動機の電流制御装置。
- 前記遅延時間補正値および電圧指令補正値を3相の各相毎に演算し、求めた各相毎の遅延時間補正値に基づいて各相毎に位相角を補正し、補正後の位相角を用いて直流交流座標変換を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の三相交流電動機の電流制御装置。
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-
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