JP2004245620A - 遊離型薬物測定方法及び装置 - Google Patents

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Hiroyuki Murakita
宏之 村北
Shinji Yamashita
伸二 山下
Naoki Asakawa
直樹 浅川
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Abstract

【課題】遊離型薬物をタンパク結合型薬物から分離するための前処理を容易にする。
【解決手段】六方バルブ4を図示の流路に設定し、ポンプ6からトラップ用移動相を供給し、オートサンプラ8から分析対象試料を注入して前処理カラム2へ送り、タンパク結合型薬物は排出し遊離型薬物のみを前処理カラム2に捕捉する。その後、六方バルブ4を切り替え、ポンプ10,12からの分析用移動相により前処理カラム2に捕捉されていた遊離型薬物を溶出して分析用カラム16に導入し、分析用カラム16から溶出した遊離型薬物をUV検出器18と質量分析計22で定性、定量を行なう。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高速液体クロマトグラフィーなどを用いて血漿や血清などの生体試料中の薬物を測定する方法と装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血漿や血清中の薬物には、タンパク質と結合したタンパク結合型薬物と遊離状態で存在する遊離型薬物がある。それらの薬物を定量する方法としては、タンパク結合型薬物と遊離型薬物の総量を定量する方法もあるが、遊離型薬物のみを定量したいという要望もある。本発明は遊離型薬物のみを定量する方法とその装置に関するものである。
【0003】
遊離型薬物のみを定量する方法としては、前処理として限外濾過によりタンパク結合型薬物と遊離型薬物とを分離した後、遊離型薬物を含んだ溶液を高速液体クロマトグラフに導入して分析することが行われている。限外濾過は試料溶液に含まれる溶質の大きさに基づいて分離を行なうものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
限外濾過によりタンパク結合型薬物と遊離型薬物とを分離する場合、1検体ずつオフラインで前処理することが必要である。
本発明は遊離型薬物をタンパク結合型薬物から分離するための前処理を容易にすることを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の遊離型薬物測定方法は、内面浸透制限型カラムを前処理カラムとして用い、タンパク質含有試料をトラップ用移動相によりその前処理カラムに通してその試料中の遊離型薬物を捕捉し、タンパク質と結合したタンパク結合型薬物をタンパク質とともに排出させる分離ステップと、分離ステップでその前処理カラムに捕捉された遊離型薬物を分析用移動相により溶出させて分析計に導いて分析するステップとを備えたことを特徴としている。
【0006】
内面浸透制限型カラムとは、外表面がタンパク質に対して不活性になる処理が施され、孔内面に薬物を捕捉する化学修飾が施された充填材が充填されたカラムである。内面浸透制限型カラムに血清や血漿などの生体試料を導入すると、タンパク結合型薬物はタンパク質のサイズが大きいためにタンパク質とともに排出され、遊離型薬物はサイズが小さいために充填材の孔内に入り化学修飾された孔内面に捕捉される。その後、流路を切替えて分析用移動相をそのカラムに流し、溶出液を分析計に導入することにより、容易に遊離型薬物のみを分析することができる。
【0007】
トラップ用移動相として、試料中での遊離型薬物とタンパク結合型薬物との平衡状態を維持するように調製された溶媒を使用すると、試料中での平衡が保たれた状態で遊離型薬物濃度のみが内面浸透制限型カラムに捕捉されるので、遊離型薬物濃度の定量精度が向上する。
【0008】
本発明の遊離型薬物測定方法を実施するための測定装置は、上記の内面浸透制限型カラムを備えた前処理部と、タンパク質含有試料をトラップ用移動相により供給する試料導入部と、前記カラムに捕捉された薬物を溶出させる分析用移動相を供給する分析用移動相供給部と、前記カラムから分析用移動相により溶出された薬物を検出する分析計と、前記試料導入部を前記カラムに接続する分離用流路及び前記分析用移動相供給部を前記カラムに接続しそのカラムからの溶出液を前記分析計に導く分析用流路の間で切り替える流路切替え部とを備えている。
【0009】
【発明の実施の形態】
内面浸透制限型カラムに充填する充填剤は、外表面がタンパク質に対して不活性になる処理が施され、孔内面に薬物を捕捉する化学修飾が施されたものである。
充填材の外表面をタンパク質に対して不活性になるように処理する方法としては、シリカゲルの外表面をタンパク質に対して不活性なポリマーでコーティングしたり、シリカゲルの外表面をアルブミンなどのタンパク質で予めコーティングして新たなタンパク質が吸着しないようにすることなどが挙げられる。
【0010】
充填材の穴内面を化学修飾する方法としては、オクタデシル基やイオン交換基で化学修飾することなどを挙げることができる。
そのような充填材を充填したカラムの具体的なものとしては、シリカゲルの外表面をタンパク質に対して不活性なポリマーでコーティングし穴内面のみをオクタデシル基で化学修飾した充填材を充填したもの(製品として、Shim−pack MAYI−ODS:株式会社島津製作所の製品)がある。
【0011】
これらの充填剤を充填した内面浸透制限型カラムに血清や血漿などの生体試料を導入すると、タンパク質結合型薬物は、たんぱく質のサイズの大きさによってこの充填剤に捕捉されずに排出され、遊離型薬物は充填材の穴に入り化学修飾されている内面に捕捉される。
【0012】
次に、図1を参照して一実施例を具体的に説明する。
2は前処理カラムとしての内面浸透制限型カラムであり、一例としてシリカゲルの外表面をタンパク質に対して不活性なポリマーでコーティングし穴内面のみをオクタデシル基で化学修飾した充填材を充填したもの(Shim−pack MAYI−ODS:株式会社島津製作所の製品)を使用する。カラム2は流路切替え部を構成する六方バルブ4の2つのポート間に接続されている。
【0013】
六方バルブ4の他の1つのポートにはカラム2に試料をトラップ用移動相により導入するための試料導入部が接続され、その試料導入部はトラップ用移動相を供給する送液ポンプ6と、その移動相流路に配置された試料注入用オートサンプラ8を備えている。トラップ用移動相としては、試料中のタンパク結合型薬物と遊離型薬物の平衡が保たれるように、分析対象の生体液に近い組成、例えば塩濃度とpHが分析対象の生体液と同じになるように調整された溶液が好ましい。
【0014】
六方バルブ4のさらに他の1つのポートには、分析用移動相を供給するための分析用移動相供給部が接続されており、その分析用移動相供給部は2台の移動相用送液ポンプ10,12と、それらの送液ポンプ10,12から供給される移動相を混合するミキサー14を備えている。分析用移動相は目的対象物に応じて種々の溶媒を使用することができ、この実施例では2種類の溶媒を混合してグラジエント分析を行なえるようにしている。分析用移動相の一例として、ポンプ10から酢酸アンモニウム溶液を供給し、ポンプ12からアセトニトリル又はメタノールを供給する。しかし分析用移動相はこれに限られるものではない。
【0015】
六方バルブ4のさらに他のポートには分析計として高速液体クロマトグラフの分析用カラム16が接続されている。分析用カラム16の下流には分析用カラム16からの溶出液から薬物を検出するために、UV(紫外線)検出器18が設けられ、更にその下流にはスプリッタ20を介して質量分析計22が接続されている。分析用カラム16からの溶出液の量によってはスプリッタを備えないで質量分析計22に直接供給するものであってもよい。
六方バルブ4のさらに他の1つのポートは前処理カラム2から流出する液をドレインに排出する排出用ポートである。
【0016】
図1の実施例において、まず六方バルブ4を図示の流路に設定し、ポンプ6からトラップ用移動相を供給し、オートサンプラ8から分析対象試料、例えば血漿を注入する。注入された試料は前処理カラム2を通り、試料中のタンパク結合型薬物は排出用ポートからドレインへ排出され、遊離型薬物が前処理カラム2に捕捉される。
【0017】
その後、六方バルブ4を切り替える。ポンプ10,12を作動させ、ミキサー4で混合した分析用移動相を六方バルブ4から前処理カラム2に供給し、前処理カラム2に捕捉されていた遊離型薬物を溶出して六方バルブ4から分析用カラム16に導入する。分析用カラム16では供給された溶液中の遊離型薬物を夾雑物から分離し、溶出してUV検出器18と質量分析計22に導き、定性と定量を行なう。
【0018】
検出計としては、実施例としてはUV検出器18と質量分析計22を備えているが、UV検出器18だけでもよく、あるいは質量分析計22だけでもよい。
また、実施例では分析用カラム16を備えているが、分析用カラム16を省略し、前処理カラム2で捕捉された遊離型薬物を質量分析計22に直接導入するようにしてもよい。
さらに、質量分析計22としてはMS/MS(タンデム質量分析法)を用いてもよい。
【0019】
【発明の効果】
本発明では、内面浸透制限型カラムを前処理カラムとして用い、タンパク質含有試料をトラップ用移動相により前処理カラムに通してその試料中の遊離型薬物を捕捉し、タンパク結合型薬物を排出させ、前処理カラムに捕捉された遊離型薬物を分析用移動相により溶出させて分析計に導いて分析するようにしたので、遊離型薬物のみを迅速に、かつ容易に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
2 前処理カラムである内面浸透制限型カラム
4 流路切替え部である六方バルブ
6 トラップ用移動相用の送液ポンプ
8 オートサンプラ
10,12 分析用移動相用の送液ポンプ
14 ミキサー
16 分析用カラム
18 UV検出器
20 スプリッタ
22 質量分析計

Claims (3)

  1. 外表面がタンパク質に対して不活性になる処理が施され、孔内面に薬物を捕捉する化学修飾が施された充填材が充填された内面浸透制限型カラムを前処理カラムとして用い、タンパク質含有試料をトラップ用移動相により前記前処理カラムに通してその試料中の遊離型薬物を捕捉し、タンパク質と結合したタンパク結合型薬物をタンパク質とともに排出させる分離ステップと、
    前記分離ステップで前記前処理カラムに捕捉された遊離型薬物を分析用移動相により溶出させ分析計に導いて分析するステップとを備えたことを特徴とする遊離型薬物測定方法。
  2. 前記トラップ用移動相は、試料中での遊離型薬物とタンパク結合型薬物との平衡状態を維持するように調製された溶媒である請求項1に記載の遊離型薬物測定方法。
  3. 外表面がタンパク質に対して不活性になる処理が施され、孔内面に薬物を捕捉する化学修飾が施された充填材が充填された内面浸透制限型カラムを備えた前処理部と、
    タンパク質含有試料をトラップ用移動相により供給する試料導入部と、
    前記カラムに捕捉された薬物を溶出させる分析用移動相を供給する分析用移動相供給部と、
    前記カラムから分析用移動相により溶出された薬物を検出する分析計と、
    前記試料導入部を前記カラムに接続する分離用流路及び前記分析用移動相供給部を前記カラムに接続しそのカラムからの溶出液を前記分析計に導く分析用流路の間で切り替える流路切替え部とを備えたことを特徴とする遊離型薬物の測定装置。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006204998A (ja) * 2005-01-26 2006-08-10 Shimadzu Corp 試料前処理方法及び試料前処理装置
JP2007000687A (ja) * 2005-06-21 2007-01-11 Shimadzu Corp 生体試料中のペプチド分析方法及び装置
JP2010529439A (ja) * 2007-06-06 2010-08-26 エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー 溶血した全血試料中の分析物の検出
JP2015206740A (ja) * 2014-04-23 2015-11-19 株式会社島津製作所 タンパク質に対する親和性評価のための分析方法及びその装置

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