JP2004245251A

JP2004245251A - 自動調心ころ軸受

Info

Publication number: JP2004245251A
Application number: JP2003032927A
Authority: JP
Inventors: Fukuji Yoshikawa; 福二吉川
Original assignee: NSK Ltd
Current assignee: NSK Ltd
Priority date: 2003-02-10
Filing date: 2003-02-10
Publication date: 2004-09-02

Abstract

【課題】特定方向のアキシアル荷重に対して耐久性を向上させた自動調心ころ軸受を提供する。
【解決手段】自動調心ころ軸受を、外周部に２列のころ列を案内する軌道面が形成された内輪と、内周部に軌道面が形成された外輪と、内輪の軌道面と外輪の軌道面との間に組み込まれる複数のころからなる２列のころ列と、ころ列の各列にそれぞれ設けられ各ころ列のころの周方向の間隔を保持する環状の保持器とを有する構成とし、各ころ列の保持器は相互に周方向に回動可能となっている構成とする。これによって、各ころ列の公転速度が異なっていても保持器相互間の回動によって吸収されるから、各ころ列のころの長さ、径および接触角等を異ならせて特定方向のアキシアル荷重を向上させることができる。
【選択図】図１

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動調心ころ軸受に関し、特に、複列の自動調心ころ軸受に関する。
【０００２】
【従来の技術】
自動調心ころ軸受は、外周部に例えば２列の軌道面が形成された内輪と、内周部に略球面に凹んだ軌道面が形成された外輪との間に、略たる状に張り出した転動面を有するころを組みこんで構成される。外輪の軌道面は、その曲率中心が略軸受の中心軸上に位置するように形成されているため、例えば軸やハウジングのたわみや軸心の不一致がある場合に自動的に調心され、軸受に無理な力が加わるおそれが低減される。（例えば、非特許文献１を参照。）
【非特許文献１】ブレイトライン、エッシュマン、ハスバルゲン、ワイカンド編著吉武立雄訳、岡本純三監修「ころがり軸受実用ハンドブック」工業調査会刊１９９６年８月１日初版第１刷発行（第３１ないし３２頁等）
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
従来の複列の自動調心ころ軸受においては、各ころ列を構成するころの公転速度、換言すれば各ころが軸受の中心軸回りに回転する速度が異なると、ころの転動面と内外輪の各軌道面とのすべりが生じ、すべり摩擦が増大してスムーズな回転が妨げられる。したがって、各ころ列の諸元、例えばころの長さや径、あるいはころの自転軸が回転軸に対してなす角度（接触角）等を同じにして各ころ列の公転速度を揃えることが要望されている。
【０００４】
一方、自動調心ころ軸受の実際の使用条件において、軸方向の一方に加わる軸方向荷重（アキシアル荷重、スラスト荷重とも称する。）が同じことは稀である。例えば、歯車装置におけるはす歯歯車軸の軸受のように、一方向へのアキシアル荷重が反対方向へのアキシアル荷重よりも著しく大きい場合にこのような設計とすることは、一方の列のころ軸受に対する負荷が過酷となって耐久性が低下するか、あるいは他方の列のころ軸受の仕様が過剰となり、無駄となる。
【０００５】
上述した問題点に鑑み、本発明の課題は、特定方向のアキシアル荷重に対して耐久性を向上させた自動調心ころ軸受を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決する手段】
本発明は、外周部に２列のころ列を案内する軌道面が形成された内輪と、内周部に軌道面が形成された外輪と、内輪の軌道面と外輪の軌道面との間に組み込まれる複数のころからなる２列のころ列と、ころ列の各列にそれぞれ設けられ各列に含まれるころの周方向の間隔を保持する環状の保持器とを有してなり、各ころ列の保持器は相互に周方向に回動可能となっている自動調心ころ軸受によって上述した課題を解決する。本発明によれば、各ころ列の保持器を相互に回動可能としたから、各ころ列の公転速度が異なっても、保持器同士が相互に回動してこれを吸収し、すべり摩擦の発生を抑える。このため、各列のころ軸受の諸元や仕様を異なるものとすることができ、特定方向のアキシアル荷重に対して耐久性を向上させることができる。
【０００７】
この場合において、各ころ列の保持器に他方の保持器と当接する面部が形成され、この保持器および他方の保持器の面部同士が、周方向に相互に摺動可能に配置されてなる構成としてもよい。
【０００８】
本発明において、２列のころ列は、それぞれ他の列と異なった寸法のころを有するようにすることができる。例えば、他の列と異なった長さのころを有する構成としてもよい。また、異なった外径のころを有する構成としてもよい。また、２列のころ列は、それぞれころの接触角が他の列と異なっている構成としてもよい。これによって、アキシアル許容荷重がその方向によって異なるように設計することができ、特定方向のアキシアル荷重に対して耐久性を向上させることができる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用してなる自動調心ころ軸受の一実施形態について説明する。図１は、本実施形態の自動調心ころ軸受を径方向に切って見た状態を示す断面図である。図１に示すように、自動調心ころ軸受は、内輪１と、外輪３と、内輪１と外輪３の各軌道面の間に組み込まれる、本実施形態の場合には例えば２列のころ列とを有する。そして、本実施形態において、一方のころ列に含まれるころ５と、他方のころ列に含まれるころ７とは、自転軸方向の長さが異なり、かつそれらが配列された状態の接触角α１、α２が異なる。具体的には、ころ５の長さｌ１はころ７の長さｌ２よりも長く、かつころ５の接触角α１は、ころ７の接触角α２よりも大きく、例えば本実施形態の場合には、α１＝２α１に設定されている。そして、各ころ列に対して、それぞれ環状に形成されて外輪と内輪との間に配置され、対応するころ列のころ同士の間隔にそれぞれ挿入され、ころ同士の間隔を保持するくし状の突起部が形成された保持器９、１１がそれぞれ設けられている。以下、これら各要素の特徴について詳細に説明する。
【００１０】
図１に示すように、内輪１は全体を略筒状またはスリーブ状に形成され、その内周面は軸方向にわたって同じ内径の平滑な面に形成され、ここには支持対象の回転軸が挿入されるようになっている。一方、内輪１の外周面には、それぞれころ５からなるころ列と、ころ７からなるころ列との転動面と接する２列の軌道面が平行に、また周方向に形成されている。また、これら複列の軌道面の外側、つまり、軌道面同士が隣接している側と反対側の端部には、軌道面より張り出して形成され、各ころの自転軸方向への移動を規制するつば部がそれぞれ形成されている。なお、軌道面同士が隣接する側の各軌道面の端部には、つば部は特に設けられていない。
【００１１】
一方、図１に示すように、外輪３の外周面は、軸方向にわたって外径の変化がない平滑な面として形成され、自動調心ころ軸受は、この外周面を図示しないハウジングに挿入することによって各種装置内に設置される。また、外輪３の内周面には、球面の軌道面が形成されている。そして、この球面の中心Ｏ１は、軸受の軸心上に位置するように形成されている。また、この中心Ｏ１の内輪１および外輪３に対する軸方向の位置は、図１に示すように、中心からころ７の側へオフセットされている。なお、ころ５およびころ７の転動面または側面は、外輪３の軌道面の曲率に対応した曲面に形成され、換言すれば、ころ５、７はそれぞれたる型に形成されている。
【００１２】
保持器９は、ころ５からなるころ列に沿って延在しころ５からなるころ列ところ７からなるころ列との間に配置される環状部と、この環状部から各ころ５の間隔に突出して、ころ５間の間隔を適切に保持するため挿入されるようくし状に形成された突起部とを有する。この突起部は、ころ５の自転軸の傾きに対応して、その先端部に向かうにつれて軸受の内周側に向くように、角度をつけられている。
【００１３】
一方、ころ７からなるころ列の保持器１１は、ころ７からなるころ列に沿って延在する環状部と、この環状部から各ころ７の間隔に突出して、ころ７間の間隔を適切に保持するため挿入されるようくし状に形成された突起部とを有する。この突起部は、ころ７の接触角がころ５ほど大きくないことに対応して、保持器９の突起部とは異なり、径方向に折り曲げられてはいない。従って、保持器１１の形状は、単純な円筒の一方の端面にころ７が挿入されるスリットを形成したものとも換言できる。
【００１４】
そして、保持器９と保持器１１の環状部のそれぞれの外径および内径は略同じである。そして、保持器９と保持器１１とが相互に対向する環状部の端面は、ともに軸方向に対し垂直な平面に仕上げられ、保持器９と保持器１１とは、この平面同士を摺動または滑動可能に面接触した状態で軸受内に配置されている。
【００１５】
なお、内輪１と外輪３とのそれぞれの両端面は、軸心と垂直な平面に形成され、それぞれの内周面および外周面との境界部には面取りがなされている。さらに、本実施形態の場合には、内輪１と外輪３とは、筒軸方向に同じ長さを有し、軸方向には両者間の端面のずれがないように配置されている。
【００１６】
以下、上述した本発明の実施形態の中の一実施例と、既存の自動調心ころ軸受の比較例とのアキシアル動定格荷重について比較する。
（比較例１）
図２は、比較例である既存の自動調心ころ軸受を径方向に切って見た状態を示す断面図である。この軸受は、呼び番号で２３２３０と称される種のものであり、図２に示すように、軸方向において中心対象に設計されているものである。したがって、外輪１３の内周面に形成された球面の軌道面の中心は、軸受の軸心上でありかつ軸方向においても外輪１３の中心に位置する。そして、各ころ列を構成するころ１５は、各列とも共通の寸法、形状を有する。そして、保持器１７は、各ころ列に対して共通のものが１つ設けられている。保持器１７は、略円筒状であり、両側の端面にそれぞれ各ころ１５が挿入されるスリットをくし状に形成されてなる。
【００１７】
そして、各部の寸法および角度は以下のようになっている。
外輪の外周直径：２７０ｍｍ
外輪の軸方向長さ：９６ｍｍ
内輪の内周直径：１５０ｍｍ
ころの長さｌ３：３９ｍｍ
接触角α３：１３度
この比較例１のアキシアル動定格荷重は、軸方向のいずれの向きに対しても等しく、３３５ｋＮとなった。
【００１８】
（実施例１）
上述した本発明の実施形態に従い、各部の寸法および角度は以下のように設定した。
外輪の外周直径：２７０ｍｍ
外輪の軸方向長さ：９６ｍｍ
内輪の内周直径：１５０ｍｍ
ころの長さｌ１：４２ｍｍ
接触角α１：１７度４０分
この実施例１において、内輪１から見て外輪３をころ７が有る側の方向にアキシアル負荷をかけた場合のアキシアル動定格荷重は、４５５ｋＮとなった。反対の方向に対するアキシアル動定格荷重は低下するが、特定一方向のアキシアル動定格荷重に対しては、軸受の外径および長さは同一ながら、比較例の約１．３６倍となった。
【００１９】
以上のように、本実施形態によれば、自動調心ころ軸受の各ころ列のころの長さおよび、接触角を異ならせても、ころ列毎に設けられた保持器が相互に回動することによって各ころ列のころの公転速度の違いを吸収するから、スムーズな回転が確保される。そして、ころの長さや接触角を異ならせることができる結果、特定の一方向に対するアキシアル許容荷重を高めることができる。このため、軸受の設計に際し、アキシアル荷重が大きい方向に対して荷重を負担する列のころの大きさや接触角を大きくすることによって、この列の軸受の負担を軽減し、耐久性を向上させることができる。また、逆に、アキシアル荷重が小さい方向に対して荷重を負担する列のころの大きさや接触角を小さくすることによって、仕様の無駄を省き、軸受を小型化することもできる。
【００２０】
なお、上述した実施形態においては、各ころ列のころの長さおよび接触角を異ならせているが、これらのうち一方のみを異ならせてもよい。また、ころの径を代えてもよい。
【００２１】
【発明の効果】
本発明によれば、特定方向のアキシアル荷重に対して耐久性を向上させた自動調心ころ軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明を適用してなる自動調心ころ軸受の一実施形態の径方向断面図である。
【図２】本発明との比較例である従来の自動調心ころ軸受の径方向断面図である。
【符号の説明】
１内輪３外輪
５ころ７ころ
９保持器１１保持器

Claims

外周部に２列のころ列を案内する軌道面が形成された内輪と、内周部に軌道面が形成された外輪と、前記内輪の軌道面と前記外輪の軌道面との間に組み込まれる複数のころからなる２列のころ列と、前記ころ列の各列にそれぞれ設けられ該各ころ列のころの周方向の間隔を保持する環状の保持器とを有してなり、各ころ列の前記保持器は相互に周方向に回動可能となっている自動調心ころ軸受。
各前記ころ列の前記保持器に他方の保持器と当接する面部が形成され、該保持器および他方の保持器の前記面部同士が、周方向に相互に摺動可能に配置されてなることを特徴とする請求項１に記載の自動調心ころ軸受。
前記２列のころ列は、それぞれ他の列と異なった長さのころを有することを特徴とする請求項１または２に記載の自動調心ころ軸受。
前記２列のころ列は、それぞれ他の列と異なった外径のころを有することを特徴とする請求項１ないし３のいずれかに記載の自動調心ころ軸受。
前記２列のころ列は、それぞれころの接触角が他の列と異なっていることを特徴とする請求項１ないし４のいずれかに記載の自動調心ころ軸受。