JP2004245008A - 金属製瓦 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属製瓦の雨水の流れを促進させることによって、塵埃の付着や苔の発生を軽減させる。
【解決手段】所定の金属板の前後方向を臨ませ、所定間隔を存して形設した膨出部2と各膨出部2間を水上側となる後部Aから水下側となる前部Bに向けて下降傾斜させた傾斜部3とで複数一体形成させるとともに、前記膨出部2の後部の左右方向には前記膨出部2より突成する被係合段部4と更にその後部に連続する延設部6を備え、前記膨出部2の前部の左右方向には段落ち状の係合段部7と更にその前部に連続する係合開口部8を備えた係止部9とからなる嵌合部10を備えた金属製瓦1であって、屋根面20上に多数のこれら金属製瓦1同士を葺設すると、被係合段部4が嵌合部5に突合せ重合状に被嵌され、傾斜部3の傾斜勾配が膨出部2の勾配より屋根勾配に近づけるようにする。
【選択図】 図1
【解決手段】所定の金属板の前後方向を臨ませ、所定間隔を存して形設した膨出部2と各膨出部2間を水上側となる後部Aから水下側となる前部Bに向けて下降傾斜させた傾斜部3とで複数一体形成させるとともに、前記膨出部2の後部の左右方向には前記膨出部2より突成する被係合段部4と更にその後部に連続する延設部6を備え、前記膨出部2の前部の左右方向には段落ち状の係合段部7と更にその前部に連続する係合開口部8を備えた係止部9とからなる嵌合部10を備えた金属製瓦1であって、屋根面20上に多数のこれら金属製瓦1同士を葺設すると、被係合段部4が嵌合部5に突合せ重合状に被嵌され、傾斜部3の傾斜勾配が膨出部2の勾配より屋根勾配に近づけるようにする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製の薄板鋼板などからプレスまたはロール形成される金属製瓦に係り、特に横長の面板の左右方向に膨出部と傾斜部を交互に多数成形された金属製瓦を軒下側から棟側に組み付けることによって屋根を葺き上げる金属製瓦に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プレス技術の進歩に伴い屋根瓦の軽量化、量産化等を目的として従来の粘土瓦に代わり金属製瓦が多用されている。図14、図15はその従来例の1つであって(特許文献1参照)、成形体の前後方向には平坦部103から隆起して形成された半円筒形ストレート部102と、成形体の各ストレート部102の後部の左右方向には半円状のフック部104bを備えた尾根状の隆起部104(フック部104b、尾根部104a及び後方傾斜部104cとからなる。)と、該隆起部104の後部に張出した後張出部106及び開口部110と、またストレート部102の前部には下段へ延設され、各ストレート部102の延長線上に隆起して形成された半円状の開口部108を有する前張出部109とを備えて構成された金属製瓦である。また同様な形状をしたものとして、成形材の端面を折り返し等して切断小口の腐蝕防止を図った従来例もある(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特許第2624194号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】
特開2000−110305号公報(第1頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところでこれらの従来例の金属製瓦101は、図14の金属製瓦101の側面図に示すように、従来からの慣行に従い前後方向A、Bに平坦部103の面がストレート部102の稜線と平行に走るように設計されている点、及びストレート部102の後方に雨水の吹き上げによるいわゆる水返しの機能を果たすために不可欠な隆起部104を立ち上げている点で共通する。このため金属製瓦を屋根に葺く場合、ストレート部102の前部の前張出部108を隆起部104に付き合わせながら重ね合わさるようにして金属製瓦101が順次葺いていくが、星根面に対してストレート部102と平坦部103の勾配は必然的に同一となっている。すなわち平坦部103の面がストレート部102の稜線と平行に走るようにしている以上、前張出部108が隆起部104に重なるように嵌合するので屋根勾配との比較において相対的に各金属製瓦101のストレート部102(平坦部103も同じ)の勾配が緩やかになる(図15参照)。この結果対応屋根勾配が一定角度以上(例えば1寸5分)ないとストレート部102(平坦部103も同じ)の勾配が得られず雨水の水捌けができなくなる。特に陸屋根では最早雨水が平坦部102の後部側に停留する恐れがあるため、金属製瓦101の本来的な機能を発揮することが不可能となってしまう。また施工経験上、対応星根勾配が上記一定角度以上あっても、平坦部103の前部B側の下段への曲折個所B′付近に葺き上げ完了後比較的短期間で塵埃が溜まりやすいことが知られている。このため、外観上該部位に苔、錆等が生じやすく、あたかもこの部分に早期表面塗装の塗膜剥離等の劣化が発生したのではないかと間違えられることがある。
【0005】
本発明は、かかる種々課題を一掃するために創案されたものであって、従来技術が有する屋根面の横桟木が不要になること、空気流通性を向上させること及び金属製瓦同士を相互にスライド調整を可能にしたこと等の長所はそのまま維持しながら、さらに葺き上げが困難とされた一定角度未満(例えば1寸5分)の屋根勾配の屋根葺きはもとより陸屋根の水捌けも可能とし、前記平坦部の前部側に相当する部位の苔発生の軽減等を図ることができる金属製瓦を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明に係る金属製瓦は、所定の金属板の前後方向を臨ませ、所定間隔を存して形設した膨出部と各膨出部間を水上側となる後部から水下側となる前部に向けて下降傾斜させた傾斜部とで複数一体形成させるとともに、前記膨出部の後部の左右方向には前記膨出部より突成する被係合段部と更にその後部に連続する延設部を備え、前記膨出部の前部の左右方向には段落ち状の係合段部と更にその前部に連続する係合開口部を備えた係止部とからなる嵌合部を備えた金属製瓦であって、屋根面上に多数のこれら金属製瓦同士を葺設すると、被係合段部が嵌合部に突合せ重合状に被嵌され、傾斜部の傾斜勾配が膨出部の勾配より屋根勾配に近づき得ることを特徴とする。
【0007】
このように構成された金属製瓦においては、傾斜面は常に膨出部より屋根面の勾配に近づけることができ、かつ水上側が水下側より幅広のものとすることができる。したがって、この金属製瓦においては、従来の金属製瓦よりも雨水の流れをスムーズにすることができるため、傾斜面の表面の塵埃をより効果的に洗い流すことができる。また傾斜面の水上側から水下側に向けて雨水の速度圧を高めることができるので、前部側に付着し易い苔の発生防止を低減することができる。
【0008】
このように構成された金属製瓦においては、前記各膨出部間の所定間隔が屋根下地の縦桟木のピッチを整数で除した数値とすることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、いずれかの膨出部の頂部を縦桟木の直上に配置させることができるので、該膨出部の頂部を目印として係止部の係合開口部に釘やビスなどの止着具を金属製屋根の縦桟木や屋根垂木に確実に打ち込むことができ、従来目見当による経験や勘に基づいて釘やビスなどの打ち込みを行っていた方法を抜本的に解消できるばかりでなく、別途墨出しや糸張りを行うことによって打ち込み位置を定める手間を省くことができるため、施工作業性の確実化と効率化を同時に図ることができる。
【0009】
このように構成された金属製瓦においては、前記被係合段部の後壁または前記延設部に後部開口部が形成されていることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、後部開口部が膨出部、被係合段部と相俟って屋根面との間に前後左右方向の隙間を従来の金属製瓦と同様に確保することができるから、通気性を確保することができる。
【0010】
またこのように構成された金属製瓦においては、屋根面上に多数の前記金属製瓦同士を葺設した場合に、前記傾斜部の傾斜勾配が屋根勾配と略同一になるように被係合段部及び嵌合部の各高さが設定されていることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、従来一定以上の屋根勾配を必要としていた施工条件の如何を問わず陸屋根の屋根葺きを含むあらゆる屋根葺きに利用することができる。
【0011】
さらにこのように構成された金属製瓦においては、前記傾斜部は複数の下降傾斜勾配で形成されていることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、水捌けを一層良好なものとすることができる。
【0012】
またこのように構成された金属製瓦においては、前記傾斜部が前記膨出部間に凹状湾曲形状に形成され、前記傾斜部の延長線上の係止部も凹状湾曲形状に形成されていることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、金属製瓦自体の剛性を高めることができるばかりでなく、水流を湾曲底部に集中させることによって塵埃を容易に洗い流すことができる。また、係る凹状湾曲形状は外観上一種の縦樋となるから、軒下の樋と相俟って縦横の樋が屋根面に走るような斬新なデザインを醸し出すことができる。
【0013】
またこのように構成された金属製瓦においては、前記傾斜部が前記膨出部間に少なくとも2以上の凹凸条で形成され、前記傾斜部の延長線上の係止部も前記凹凸条に対応する形状に形成されていることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、金属製瓦自体の剛性を高めることができるばかりでなく、水流を凹条に集中させることによって塵埃を容易に洗い流すことができる。
【0014】
さらにこのように構成された金属製瓦においては、前記傾斜部には凹凸模様が形成されていることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、傾斜部の耐圧強度を高めることができるので、不注意による落下物による金属製瓦の表面への打痕等の発生を可及的に軽減することができ、さらに苔、さび、塵等が発生、付着した場合においても、その目立ちを緩和させる効果もある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施例の金属製瓦1を示し、金属製瓦1は耐蝕性のある金属板をプレス加工、特殊金型によるプレス加工により形成されるものであって、金属板としては例えば化粧鋼板や塩化ビニール系樹脂やフッ素系樹脂をラミネートし、または塗装した鋼板を使用することができる(これらの金属板の仕様については後記する第2実施例以下の実施例についても同様である)。
【0016】
この金属製瓦1の成形体は、図1に示すように、所定の金属板の前後方向を臨ませるようにして、所定間隔を存して形設した膨出部2と各膨出部2間を水上側となる後部Aから水下側となる前部Bに向けて下降傾斜させた傾斜部3とで複数一体形成させるとともに、前記膨出部2の後部の左右方向には前記膨出部2より突成する被係合段部4と更にその後部に連続する延設部6を備え、前記膨出部2の前部の左右方向には段落ち状の係合段部8と更にその前部に連続する係合開口部9を備えた係止部10とからなる嵌合部5を備えたものである。
【0017】
より詳細には、図3に示すように、膨出部2は前後方向に同一高さの半円筒状(これに限定されず、角形、台形、三角錐等であってもよい。)に成形されており、両膨出部2間の傾斜部3は平面状ではあるが、水上側となる後部Aより水下側となる前部Bに向けて下降傾斜をなしている。この下降傾斜は大きいほど好ましいが、傾斜部3が屋根面20より急勾配にはならないように設定される。仮に金属製瓦1の一枚の傾斜部3が屋根面20より急勾配であったとしても、葺き上げによって前後の金属製瓦1の傾斜部3との関係において、ある傾斜部3は屋根面20より急勾配にしても、ある傾斜部3は屋根面20より緩勾配とせざるを得なくなり、結果的に傾斜部2.2間に凹凸が現れてしまい本発明の目的、作用効果を達成することができないからである。このように傾斜部3が水上側となる後部Aより水下側となる前部Bに向けて下降傾斜させることによって、図2に示す金属製瓦1の平面図のように、傾斜部3は水上側Aが水下側Bより幅広い台形となる。膨出部2の頂部には稜線がはっきり現れるように成形すればさらに好ましい。この稜線が釘等の止着具12を縦桟木30の直上から確実に打ち込む場合のマーキングポイントとすることができるからである。被係合段部4は図3に示す金属製瓦1の断面図のように、膨出部2の後部にあって膨出部2とは直交状に左右方向に隆起し、膨出部2側の前壁4b、頂壁4a及び後壁4cとで形成されて断面視において台形状をなし、さらに被係合段部4の後方には後壁4cに連続して後方を臨むように延出部6が張り出されている。前記延出部6には半円状の後部開口部10が形成されている。この後部開口部10は、図8に示すように、後壁4c面に直接孔あけ加工して形成してもよい。このようにすることによって延出部6に後部開口部10を一体曲面成形するよりも加工が簡単になり、さらに後壁4c面の任意個所に大きさ、形状及び数を自由に設定することができるからである。また上記一体曲面成形に伴う部材の延びをどのように吸収するか、についてのいわゆる「逃げ」を考慮する必要もない。頂壁4aの左右方向に刻設成形された3条(もとよりこの数には限定されない。)の凹溝11は、軒下側から棟側へ吹き上げる風雨をこの部位以上に侵入させない毛細管現象防止を図る水返しを主機能とし、併せて金属製瓦1の成形によって発生する部材の伸縮ひずみをこの部位で吸収する補完機能をもつ。一方嵌合部5は、係合段部7の高さを前壁4bの高さと略同一寸法またはそれ以下とし、係合段部7の下端に連続させて前方を臨むように半円状の係合開口部8を備えた係止部9を延設して構成される。係合開口部8は膨出部2の略同一延長線上に成形され、膨出部2の水上側Aの外形と略同一形状となっている。これらの各部位は一連のプレス工程によって成形されるものである。
【0018】
被係合段部4及び嵌合部5はともに膨出部2、傾斜部3と絡まって三次元的な複雑な屈曲形状を呈するが、後記するように多数の金属製瓦1を屋根上に葺く場合、被係合段部4の前壁4b及び頂壁4aがほぼ隙間なく嵌合部5の係合段部7と前部膨出部2、傾斜部3とによって重合状に被嵌される(このとき係合開口部8が膨出部2の水上側Aを上から重ねあわせ可能に覆う)ように細部形状が設定されている。
【0019】
また、図7に示すように、屋根の縦桟本30のピッチPは古来より455mmとなっていることに着目し、各膨出部2間の所定間隔を屋根下地の縦桟木30のピッチを整数で除した数値とする。すなわち、455mm÷3=151.7mmを該所定間隔とする。これによって金属製瓦1の表面に墨出しや糸を張ることなく各膨出部2の頂部を目印として釘等の止着具12を打ちつければ確実に金属製瓦を屋根に固定することができ、作業効率を高めることができる。
【0020】
図3は本発明に係る金属製瓦の断面図であって、傾斜部3が各膨出部2間を水上側となる後部Aより水下側となる前部Bが低位となるなだらかな単一勾配としたものである。傾斜部3をさらに急勾配にすることによって、傾斜部3の勾配が星根勾配と略同一になるように設定することも可能である。したがってこの場合には、平屋根に葺くこともでき雨水が傾斜部に停留することはほとんどない。このように本発明においては、平屋根に葺くこともできる点で従来の金属製瓦にはない特色を有する。
【0021】
図4は本発明に係る金属製瓦1を屋根面に葺いた状態の斜視図である。前後方向の金属製瓦1、1同士は幅広の水上側と幅狭の水下側が交互に現われて重なりあうようになっているから、雨水が淀みなく円滑に軒下方向に流れる。また、各金属製瓦1の膨出部2と傾斜部3は相対的には傾斜勾配が異なるが、膨出部2、2同士と傾斜部3、3同士の傾斜勾配が同一であるので、従来技術の金属製瓦と同様、外観上の美感を発揮させることができる。さらに膨出部2が確実に縦桟木30の上に来るように葺くことができるから、金属製瓦1全体として強固かつ確実に屋根面に葺設することができる。これによって台風等によって発生するいわゆる巻き込み風に対しても十分な耐風圧性能を有するものとすることができる。
【0022】
次に第5図、第6図は以上の金属製瓦1によって屋根葺きを行う施工手順を示す。金属製瓦1は第5図に示すように膨出部2の延長線が連設するように前後方向に延伸させて組みつけられ、前方の金属製瓦1の被係合段部4に後方の金属製瓦1の係合段部7を前方からスライドさせて突き合わせるようにする。これによって最大延伸位置にある2枚の金属製瓦1、1は被係合段部4と係合段部7が相互に突合せ状態となって屋根面20上で前後方向に連続して所定位置に釘等で止着される。そしてこの作業を屋根面20に沿って順次繰り返すことにより、第6図に示すように屋根面全体が金属製瓦によって覆われる。このようにして屋根面全体に葺かれた金属製瓦1は、膨出部2に対して傾斜部3が軒下方向に向けて更に下降状の傾斜勾配となり、しかも平面視において水上側Aが水下側Bよりも幅広の台形となるため、雨水の速度圧が水上側Aから水下側Bに達するほど大きくなるから、傾斜部3の表面は長期に亘って耐候性、耐蝕性、耐汚染性等の機能を保持することができる。
【0023】
また従来の金属製瓦101と同様に被係合段部4と係合部5との係合によって金属製瓦1は相互に位置決めされて固定されるため、横桟木が不要となり、横桟木取り付けのための作業を省力化することができる。
【0024】
次に第1実施例の変形例として第2実施例以下を図に基づいて説明する。図9は第2実施例であって、傾斜部3を2つの傾斜部3a、3bによって構成された下降傾斜部に形成させたものである。もとより傾斜段数を3以上ないし曲面下降傾斜にしてもよい。このように構成された金属製瓦1においては、第1実施例の傾斜部より水捌けを一段と良くすることができる。また、外観上においても傾斜変化部の交線が金属製瓦1の左右方向に膨出部2を跨いで直線状に現れるのでデザイン的に斬新さを発揮させることができる。なお、傾斜部3bを傾斜部3aより急勾配にすれば水下側Bに付着し易い苔等を長期に亘って防止することができる。
【0025】
図10は、傾斜部3を両膨出部2間に凹状湾曲形状に成形し、かつ前記傾斜部3の延長線上の係止部9も凹状湾曲形状に形成されている第3実施例である。このように構成された金属製瓦1においては、金属製瓦1全体の見えがかり部分がすべて曲線となるため、外観上全体に柔らかな感じを与えことができ、丸みを帯びた外装の住宅の屋根により適合する。また、日本の代表的な平がわらと丸がわらの組み合わせからなる本瓦葺のイメージを醸し出すことができるので、瓦のデザイン面での選択の幅を広げる効果もある。
【0026】
図11、図12は、傾斜部3が膨出部2間に少なくとも2以上の凹凸条3a、3bで形成され、前記傾斜部3の延長線上の係止部9も前記凹凸条3a、3bに対応する形状に形成されている第4実施例である。このように構成された金属製瓦1においては、水流を凹条に集中させることによって塵埃を容易に洗い流すことができる。なお、図11の凹凸条3a、3bは複数の凹凸平坦条で形成され、図12の凹凸条3a、3bは複数の波形条で形成されている。
【0027】
図13は傾斜部3に凹凸形状を付した第5実施例であって、水上側Aから水下側Bに向けて交互に間隔を存して斜め下方に凸状を設けたものである。このように構成された金属製瓦1においては、傾斜部3の面板の剛性を高めることができるばかりでなく、傾斜部3の表面に苔等が付着した場合においても、その目立ちを少なくすることができる。
【0028】
以上の第2ないし第5実施例の施工手順は、第1実施例と同様である。
【0029】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、請求項1に記載したように、傾斜面は常に膨出部より屋根面の勾配に近づけることができるから、従来の金属製瓦よりも雨水の流れを早くすることができ、傾斜面を長期にわたって美感を保持できるばかりでなく、前部側の苔、さび、塵等の発生、付着の軽減を図ることができる。また、本発明によれば、請求項2に記載したように、前記各膨出部間の所定間隔が屋根下地の縦桟木のピッチを整数で除した数値とすることができるから、膨出部の頂部を目印として係止部の係合開口部に釘やビスなどの止着具を金属製屋根の縦桟木に確実に打ち込むことができる。このため従来目見当による経験や勘に基づいて釘やビスなどの打ち込みを行っていた方法を抜本的に解消できるばかりでなく、別途墨出しや糸張りを行うことによって打ち込み位置を定める手間を省くことができるため、施工作業性の確実化と効率化を同時に図ることができる。さらに本発明によれば、請求項3に記載したように、被係合段部の後壁または延出部に後部開口部が形成されているから、後部開口部裏面側の中空部が膨出部、被係合段部の裏面側の中空部と相俟って星根面との隙間を従来の金属製瓦と同様に確保することができるから前後左右方向の空気流通性を良好なものとすることができ、屋根面の結露発生を防止し、湿気による下地の腐蝕防止等に効果を奏することができる。また、本発明によれば、請求項4に記載したように、傾斜部の傾斜勾配が屋根勾配と略同一になるように被係合段部及び嵌合部の各高さが設定されているから、平屋根の水捌けも可能とすることができる。さらに本発明によれば、請求項5に記載したように、前記傾斜部は水上側の後部から水下側の前部へ向けて複数の下降傾斜勾配が形成されているから、水捌けが一層よくすることができるので、苔、さび、塵等の発生、付着を一層軽減することができる。また、本発明によれば、請求項6に記載したように、前記傾斜部が前記膨出部間に凹状湾曲形状に形成されているから、水捌けを湾曲底部に集中させることができ、傾斜部が長期にわたって苔、さび、塵等の発生、付着を防止することができる。また、本発明によれば、請求項7に記載したように、前記傾斜部が前記膨出部間に少なくとも2以上の凹凸条で形成され、前記傾斜部の延長線上の係止部も前記凹凸条に対応する形状に形成したものであるから、金属製瓦自体の剛性を高めることができるばかりでなく、水流を凹条に集中させることによって塵埃を容易に洗い流すことができる。さらに、本発明によれば、請求項8に記載したように、前記傾斜部には凹凸模様が形成されているから、傾斜部の耐圧強度を高めることができるので、不注意による落下物による金属製瓦の表面への打痕等の発生を可及的に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る金属製瓦の第1実施例の斜視図である。
【図2】第1実施例の平面図である。
【図3】第1実施例の断面図である。
【図4】金属瓦を葺き上げた状態図である。
【図5】金属瓦の組み付けを示す斜視図である。
【図6】前後方向に最大延伸して連続固定したときの金属瓦同士の側面図である。
【図7】横桟木に金属製瓦を釘打ちする状態を示す正面図である。
【図8】金属製瓦を後方から見た拡大斜視図である。
【図9】本発明に係る金属製瓦の第2実施例の斜視図である。
【図10】本発明に係る金属製瓦の第3実施例の斜視図である。
【図11】本発明に係る金属製瓦の傾斜部3を凹凸条にした第4実施例の斜視図である。
【図12】本発明に係る金属製瓦の傾斜部3の凹凸条が波型形状である第4実施例の斜視図である。
【図13】本発明に係る金属製瓦の傾斜部3に凹凸模様を施した第5実施例の斜視図である。
【図14】従来例の金属製瓦の斜視図である。
【図15】従来例の金属製瓦の側面図である。
【符号の説明】
1 金属製瓦
2 膨出部
3 傾斜部
4 被係合段部
5 嵌合部
6 延出部
7 係合段部
8 係合開口部
9 係止部
10 後部開口部
11 凹溝
20 屋根面
30 縦桟木
A 後部(水上側)
B 前部(水下側)
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製の薄板鋼板などからプレスまたはロール形成される金属製瓦に係り、特に横長の面板の左右方向に膨出部と傾斜部を交互に多数成形された金属製瓦を軒下側から棟側に組み付けることによって屋根を葺き上げる金属製瓦に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プレス技術の進歩に伴い屋根瓦の軽量化、量産化等を目的として従来の粘土瓦に代わり金属製瓦が多用されている。図14、図15はその従来例の1つであって(特許文献1参照)、成形体の前後方向には平坦部103から隆起して形成された半円筒形ストレート部102と、成形体の各ストレート部102の後部の左右方向には半円状のフック部104bを備えた尾根状の隆起部104(フック部104b、尾根部104a及び後方傾斜部104cとからなる。)と、該隆起部104の後部に張出した後張出部106及び開口部110と、またストレート部102の前部には下段へ延設され、各ストレート部102の延長線上に隆起して形成された半円状の開口部108を有する前張出部109とを備えて構成された金属製瓦である。また同様な形状をしたものとして、成形材の端面を折り返し等して切断小口の腐蝕防止を図った従来例もある(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特許第2624194号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】
特開2000−110305号公報(第1頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところでこれらの従来例の金属製瓦101は、図14の金属製瓦101の側面図に示すように、従来からの慣行に従い前後方向A、Bに平坦部103の面がストレート部102の稜線と平行に走るように設計されている点、及びストレート部102の後方に雨水の吹き上げによるいわゆる水返しの機能を果たすために不可欠な隆起部104を立ち上げている点で共通する。このため金属製瓦を屋根に葺く場合、ストレート部102の前部の前張出部108を隆起部104に付き合わせながら重ね合わさるようにして金属製瓦101が順次葺いていくが、星根面に対してストレート部102と平坦部103の勾配は必然的に同一となっている。すなわち平坦部103の面がストレート部102の稜線と平行に走るようにしている以上、前張出部108が隆起部104に重なるように嵌合するので屋根勾配との比較において相対的に各金属製瓦101のストレート部102(平坦部103も同じ)の勾配が緩やかになる(図15参照)。この結果対応屋根勾配が一定角度以上(例えば1寸5分)ないとストレート部102(平坦部103も同じ)の勾配が得られず雨水の水捌けができなくなる。特に陸屋根では最早雨水が平坦部102の後部側に停留する恐れがあるため、金属製瓦101の本来的な機能を発揮することが不可能となってしまう。また施工経験上、対応星根勾配が上記一定角度以上あっても、平坦部103の前部B側の下段への曲折個所B′付近に葺き上げ完了後比較的短期間で塵埃が溜まりやすいことが知られている。このため、外観上該部位に苔、錆等が生じやすく、あたかもこの部分に早期表面塗装の塗膜剥離等の劣化が発生したのではないかと間違えられることがある。
【0005】
本発明は、かかる種々課題を一掃するために創案されたものであって、従来技術が有する屋根面の横桟木が不要になること、空気流通性を向上させること及び金属製瓦同士を相互にスライド調整を可能にしたこと等の長所はそのまま維持しながら、さらに葺き上げが困難とされた一定角度未満(例えば1寸5分)の屋根勾配の屋根葺きはもとより陸屋根の水捌けも可能とし、前記平坦部の前部側に相当する部位の苔発生の軽減等を図ることができる金属製瓦を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明に係る金属製瓦は、所定の金属板の前後方向を臨ませ、所定間隔を存して形設した膨出部と各膨出部間を水上側となる後部から水下側となる前部に向けて下降傾斜させた傾斜部とで複数一体形成させるとともに、前記膨出部の後部の左右方向には前記膨出部より突成する被係合段部と更にその後部に連続する延設部を備え、前記膨出部の前部の左右方向には段落ち状の係合段部と更にその前部に連続する係合開口部を備えた係止部とからなる嵌合部を備えた金属製瓦であって、屋根面上に多数のこれら金属製瓦同士を葺設すると、被係合段部が嵌合部に突合せ重合状に被嵌され、傾斜部の傾斜勾配が膨出部の勾配より屋根勾配に近づき得ることを特徴とする。
【0007】
このように構成された金属製瓦においては、傾斜面は常に膨出部より屋根面の勾配に近づけることができ、かつ水上側が水下側より幅広のものとすることができる。したがって、この金属製瓦においては、従来の金属製瓦よりも雨水の流れをスムーズにすることができるため、傾斜面の表面の塵埃をより効果的に洗い流すことができる。また傾斜面の水上側から水下側に向けて雨水の速度圧を高めることができるので、前部側に付着し易い苔の発生防止を低減することができる。
【0008】
このように構成された金属製瓦においては、前記各膨出部間の所定間隔が屋根下地の縦桟木のピッチを整数で除した数値とすることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、いずれかの膨出部の頂部を縦桟木の直上に配置させることができるので、該膨出部の頂部を目印として係止部の係合開口部に釘やビスなどの止着具を金属製屋根の縦桟木や屋根垂木に確実に打ち込むことができ、従来目見当による経験や勘に基づいて釘やビスなどの打ち込みを行っていた方法を抜本的に解消できるばかりでなく、別途墨出しや糸張りを行うことによって打ち込み位置を定める手間を省くことができるため、施工作業性の確実化と効率化を同時に図ることができる。
【0009】
このように構成された金属製瓦においては、前記被係合段部の後壁または前記延設部に後部開口部が形成されていることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、後部開口部が膨出部、被係合段部と相俟って屋根面との間に前後左右方向の隙間を従来の金属製瓦と同様に確保することができるから、通気性を確保することができる。
【0010】
またこのように構成された金属製瓦においては、屋根面上に多数の前記金属製瓦同士を葺設した場合に、前記傾斜部の傾斜勾配が屋根勾配と略同一になるように被係合段部及び嵌合部の各高さが設定されていることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、従来一定以上の屋根勾配を必要としていた施工条件の如何を問わず陸屋根の屋根葺きを含むあらゆる屋根葺きに利用することができる。
【0011】
さらにこのように構成された金属製瓦においては、前記傾斜部は複数の下降傾斜勾配で形成されていることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、水捌けを一層良好なものとすることができる。
【0012】
またこのように構成された金属製瓦においては、前記傾斜部が前記膨出部間に凹状湾曲形状に形成され、前記傾斜部の延長線上の係止部も凹状湾曲形状に形成されていることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、金属製瓦自体の剛性を高めることができるばかりでなく、水流を湾曲底部に集中させることによって塵埃を容易に洗い流すことができる。また、係る凹状湾曲形状は外観上一種の縦樋となるから、軒下の樋と相俟って縦横の樋が屋根面に走るような斬新なデザインを醸し出すことができる。
【0013】
またこのように構成された金属製瓦においては、前記傾斜部が前記膨出部間に少なくとも2以上の凹凸条で形成され、前記傾斜部の延長線上の係止部も前記凹凸条に対応する形状に形成されていることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、金属製瓦自体の剛性を高めることができるばかりでなく、水流を凹条に集中させることによって塵埃を容易に洗い流すことができる。
【0014】
さらにこのように構成された金属製瓦においては、前記傾斜部には凹凸模様が形成されていることが好ましい。したがって、この金属製瓦においては、傾斜部の耐圧強度を高めることができるので、不注意による落下物による金属製瓦の表面への打痕等の発生を可及的に軽減することができ、さらに苔、さび、塵等が発生、付着した場合においても、その目立ちを緩和させる効果もある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施例の金属製瓦1を示し、金属製瓦1は耐蝕性のある金属板をプレス加工、特殊金型によるプレス加工により形成されるものであって、金属板としては例えば化粧鋼板や塩化ビニール系樹脂やフッ素系樹脂をラミネートし、または塗装した鋼板を使用することができる(これらの金属板の仕様については後記する第2実施例以下の実施例についても同様である)。
【0016】
この金属製瓦1の成形体は、図1に示すように、所定の金属板の前後方向を臨ませるようにして、所定間隔を存して形設した膨出部2と各膨出部2間を水上側となる後部Aから水下側となる前部Bに向けて下降傾斜させた傾斜部3とで複数一体形成させるとともに、前記膨出部2の後部の左右方向には前記膨出部2より突成する被係合段部4と更にその後部に連続する延設部6を備え、前記膨出部2の前部の左右方向には段落ち状の係合段部8と更にその前部に連続する係合開口部9を備えた係止部10とからなる嵌合部5を備えたものである。
【0017】
より詳細には、図3に示すように、膨出部2は前後方向に同一高さの半円筒状(これに限定されず、角形、台形、三角錐等であってもよい。)に成形されており、両膨出部2間の傾斜部3は平面状ではあるが、水上側となる後部Aより水下側となる前部Bに向けて下降傾斜をなしている。この下降傾斜は大きいほど好ましいが、傾斜部3が屋根面20より急勾配にはならないように設定される。仮に金属製瓦1の一枚の傾斜部3が屋根面20より急勾配であったとしても、葺き上げによって前後の金属製瓦1の傾斜部3との関係において、ある傾斜部3は屋根面20より急勾配にしても、ある傾斜部3は屋根面20より緩勾配とせざるを得なくなり、結果的に傾斜部2.2間に凹凸が現れてしまい本発明の目的、作用効果を達成することができないからである。このように傾斜部3が水上側となる後部Aより水下側となる前部Bに向けて下降傾斜させることによって、図2に示す金属製瓦1の平面図のように、傾斜部3は水上側Aが水下側Bより幅広い台形となる。膨出部2の頂部には稜線がはっきり現れるように成形すればさらに好ましい。この稜線が釘等の止着具12を縦桟木30の直上から確実に打ち込む場合のマーキングポイントとすることができるからである。被係合段部4は図3に示す金属製瓦1の断面図のように、膨出部2の後部にあって膨出部2とは直交状に左右方向に隆起し、膨出部2側の前壁4b、頂壁4a及び後壁4cとで形成されて断面視において台形状をなし、さらに被係合段部4の後方には後壁4cに連続して後方を臨むように延出部6が張り出されている。前記延出部6には半円状の後部開口部10が形成されている。この後部開口部10は、図8に示すように、後壁4c面に直接孔あけ加工して形成してもよい。このようにすることによって延出部6に後部開口部10を一体曲面成形するよりも加工が簡単になり、さらに後壁4c面の任意個所に大きさ、形状及び数を自由に設定することができるからである。また上記一体曲面成形に伴う部材の延びをどのように吸収するか、についてのいわゆる「逃げ」を考慮する必要もない。頂壁4aの左右方向に刻設成形された3条(もとよりこの数には限定されない。)の凹溝11は、軒下側から棟側へ吹き上げる風雨をこの部位以上に侵入させない毛細管現象防止を図る水返しを主機能とし、併せて金属製瓦1の成形によって発生する部材の伸縮ひずみをこの部位で吸収する補完機能をもつ。一方嵌合部5は、係合段部7の高さを前壁4bの高さと略同一寸法またはそれ以下とし、係合段部7の下端に連続させて前方を臨むように半円状の係合開口部8を備えた係止部9を延設して構成される。係合開口部8は膨出部2の略同一延長線上に成形され、膨出部2の水上側Aの外形と略同一形状となっている。これらの各部位は一連のプレス工程によって成形されるものである。
【0018】
被係合段部4及び嵌合部5はともに膨出部2、傾斜部3と絡まって三次元的な複雑な屈曲形状を呈するが、後記するように多数の金属製瓦1を屋根上に葺く場合、被係合段部4の前壁4b及び頂壁4aがほぼ隙間なく嵌合部5の係合段部7と前部膨出部2、傾斜部3とによって重合状に被嵌される(このとき係合開口部8が膨出部2の水上側Aを上から重ねあわせ可能に覆う)ように細部形状が設定されている。
【0019】
また、図7に示すように、屋根の縦桟本30のピッチPは古来より455mmとなっていることに着目し、各膨出部2間の所定間隔を屋根下地の縦桟木30のピッチを整数で除した数値とする。すなわち、455mm÷3=151.7mmを該所定間隔とする。これによって金属製瓦1の表面に墨出しや糸を張ることなく各膨出部2の頂部を目印として釘等の止着具12を打ちつければ確実に金属製瓦を屋根に固定することができ、作業効率を高めることができる。
【0020】
図3は本発明に係る金属製瓦の断面図であって、傾斜部3が各膨出部2間を水上側となる後部Aより水下側となる前部Bが低位となるなだらかな単一勾配としたものである。傾斜部3をさらに急勾配にすることによって、傾斜部3の勾配が星根勾配と略同一になるように設定することも可能である。したがってこの場合には、平屋根に葺くこともでき雨水が傾斜部に停留することはほとんどない。このように本発明においては、平屋根に葺くこともできる点で従来の金属製瓦にはない特色を有する。
【0021】
図4は本発明に係る金属製瓦1を屋根面に葺いた状態の斜視図である。前後方向の金属製瓦1、1同士は幅広の水上側と幅狭の水下側が交互に現われて重なりあうようになっているから、雨水が淀みなく円滑に軒下方向に流れる。また、各金属製瓦1の膨出部2と傾斜部3は相対的には傾斜勾配が異なるが、膨出部2、2同士と傾斜部3、3同士の傾斜勾配が同一であるので、従来技術の金属製瓦と同様、外観上の美感を発揮させることができる。さらに膨出部2が確実に縦桟木30の上に来るように葺くことができるから、金属製瓦1全体として強固かつ確実に屋根面に葺設することができる。これによって台風等によって発生するいわゆる巻き込み風に対しても十分な耐風圧性能を有するものとすることができる。
【0022】
次に第5図、第6図は以上の金属製瓦1によって屋根葺きを行う施工手順を示す。金属製瓦1は第5図に示すように膨出部2の延長線が連設するように前後方向に延伸させて組みつけられ、前方の金属製瓦1の被係合段部4に後方の金属製瓦1の係合段部7を前方からスライドさせて突き合わせるようにする。これによって最大延伸位置にある2枚の金属製瓦1、1は被係合段部4と係合段部7が相互に突合せ状態となって屋根面20上で前後方向に連続して所定位置に釘等で止着される。そしてこの作業を屋根面20に沿って順次繰り返すことにより、第6図に示すように屋根面全体が金属製瓦によって覆われる。このようにして屋根面全体に葺かれた金属製瓦1は、膨出部2に対して傾斜部3が軒下方向に向けて更に下降状の傾斜勾配となり、しかも平面視において水上側Aが水下側Bよりも幅広の台形となるため、雨水の速度圧が水上側Aから水下側Bに達するほど大きくなるから、傾斜部3の表面は長期に亘って耐候性、耐蝕性、耐汚染性等の機能を保持することができる。
【0023】
また従来の金属製瓦101と同様に被係合段部4と係合部5との係合によって金属製瓦1は相互に位置決めされて固定されるため、横桟木が不要となり、横桟木取り付けのための作業を省力化することができる。
【0024】
次に第1実施例の変形例として第2実施例以下を図に基づいて説明する。図9は第2実施例であって、傾斜部3を2つの傾斜部3a、3bによって構成された下降傾斜部に形成させたものである。もとより傾斜段数を3以上ないし曲面下降傾斜にしてもよい。このように構成された金属製瓦1においては、第1実施例の傾斜部より水捌けを一段と良くすることができる。また、外観上においても傾斜変化部の交線が金属製瓦1の左右方向に膨出部2を跨いで直線状に現れるのでデザイン的に斬新さを発揮させることができる。なお、傾斜部3bを傾斜部3aより急勾配にすれば水下側Bに付着し易い苔等を長期に亘って防止することができる。
【0025】
図10は、傾斜部3を両膨出部2間に凹状湾曲形状に成形し、かつ前記傾斜部3の延長線上の係止部9も凹状湾曲形状に形成されている第3実施例である。このように構成された金属製瓦1においては、金属製瓦1全体の見えがかり部分がすべて曲線となるため、外観上全体に柔らかな感じを与えことができ、丸みを帯びた外装の住宅の屋根により適合する。また、日本の代表的な平がわらと丸がわらの組み合わせからなる本瓦葺のイメージを醸し出すことができるので、瓦のデザイン面での選択の幅を広げる効果もある。
【0026】
図11、図12は、傾斜部3が膨出部2間に少なくとも2以上の凹凸条3a、3bで形成され、前記傾斜部3の延長線上の係止部9も前記凹凸条3a、3bに対応する形状に形成されている第4実施例である。このように構成された金属製瓦1においては、水流を凹条に集中させることによって塵埃を容易に洗い流すことができる。なお、図11の凹凸条3a、3bは複数の凹凸平坦条で形成され、図12の凹凸条3a、3bは複数の波形条で形成されている。
【0027】
図13は傾斜部3に凹凸形状を付した第5実施例であって、水上側Aから水下側Bに向けて交互に間隔を存して斜め下方に凸状を設けたものである。このように構成された金属製瓦1においては、傾斜部3の面板の剛性を高めることができるばかりでなく、傾斜部3の表面に苔等が付着した場合においても、その目立ちを少なくすることができる。
【0028】
以上の第2ないし第5実施例の施工手順は、第1実施例と同様である。
【0029】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、請求項1に記載したように、傾斜面は常に膨出部より屋根面の勾配に近づけることができるから、従来の金属製瓦よりも雨水の流れを早くすることができ、傾斜面を長期にわたって美感を保持できるばかりでなく、前部側の苔、さび、塵等の発生、付着の軽減を図ることができる。また、本発明によれば、請求項2に記載したように、前記各膨出部間の所定間隔が屋根下地の縦桟木のピッチを整数で除した数値とすることができるから、膨出部の頂部を目印として係止部の係合開口部に釘やビスなどの止着具を金属製屋根の縦桟木に確実に打ち込むことができる。このため従来目見当による経験や勘に基づいて釘やビスなどの打ち込みを行っていた方法を抜本的に解消できるばかりでなく、別途墨出しや糸張りを行うことによって打ち込み位置を定める手間を省くことができるため、施工作業性の確実化と効率化を同時に図ることができる。さらに本発明によれば、請求項3に記載したように、被係合段部の後壁または延出部に後部開口部が形成されているから、後部開口部裏面側の中空部が膨出部、被係合段部の裏面側の中空部と相俟って星根面との隙間を従来の金属製瓦と同様に確保することができるから前後左右方向の空気流通性を良好なものとすることができ、屋根面の結露発生を防止し、湿気による下地の腐蝕防止等に効果を奏することができる。また、本発明によれば、請求項4に記載したように、傾斜部の傾斜勾配が屋根勾配と略同一になるように被係合段部及び嵌合部の各高さが設定されているから、平屋根の水捌けも可能とすることができる。さらに本発明によれば、請求項5に記載したように、前記傾斜部は水上側の後部から水下側の前部へ向けて複数の下降傾斜勾配が形成されているから、水捌けが一層よくすることができるので、苔、さび、塵等の発生、付着を一層軽減することができる。また、本発明によれば、請求項6に記載したように、前記傾斜部が前記膨出部間に凹状湾曲形状に形成されているから、水捌けを湾曲底部に集中させることができ、傾斜部が長期にわたって苔、さび、塵等の発生、付着を防止することができる。また、本発明によれば、請求項7に記載したように、前記傾斜部が前記膨出部間に少なくとも2以上の凹凸条で形成され、前記傾斜部の延長線上の係止部も前記凹凸条に対応する形状に形成したものであるから、金属製瓦自体の剛性を高めることができるばかりでなく、水流を凹条に集中させることによって塵埃を容易に洗い流すことができる。さらに、本発明によれば、請求項8に記載したように、前記傾斜部には凹凸模様が形成されているから、傾斜部の耐圧強度を高めることができるので、不注意による落下物による金属製瓦の表面への打痕等の発生を可及的に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る金属製瓦の第1実施例の斜視図である。
【図2】第1実施例の平面図である。
【図3】第1実施例の断面図である。
【図4】金属瓦を葺き上げた状態図である。
【図5】金属瓦の組み付けを示す斜視図である。
【図6】前後方向に最大延伸して連続固定したときの金属瓦同士の側面図である。
【図7】横桟木に金属製瓦を釘打ちする状態を示す正面図である。
【図8】金属製瓦を後方から見た拡大斜視図である。
【図9】本発明に係る金属製瓦の第2実施例の斜視図である。
【図10】本発明に係る金属製瓦の第3実施例の斜視図である。
【図11】本発明に係る金属製瓦の傾斜部3を凹凸条にした第4実施例の斜視図である。
【図12】本発明に係る金属製瓦の傾斜部3の凹凸条が波型形状である第4実施例の斜視図である。
【図13】本発明に係る金属製瓦の傾斜部3に凹凸模様を施した第5実施例の斜視図である。
【図14】従来例の金属製瓦の斜視図である。
【図15】従来例の金属製瓦の側面図である。
【符号の説明】
1 金属製瓦
2 膨出部
3 傾斜部
4 被係合段部
5 嵌合部
6 延出部
7 係合段部
8 係合開口部
9 係止部
10 後部開口部
11 凹溝
20 屋根面
30 縦桟木
A 後部(水上側)
B 前部(水下側)
Claims (8)
- 所定の金属板の前後方向を臨ませ、所定間隔を存して形設した膨出部と各膨出部間を水上側となる後部から水下側となる前部に向けて下降傾斜させた傾斜部とで複数一体形成させるとともに、前記膨出部の後部の左右方向には前記膨出部より突成する被係合段部と更にその後部に連続する延設部を備え、前記膨出部の前部の左右方向には段落ち状の係合段部と更にその前部に連続する係合開口部を備えた係止部とからなる嵌合部を備えた金属製瓦であって、屋根面上に多数のこれら金属製瓦同士を葺設すると、被係合段部が嵌合部に突合せ重合状に被嵌され、傾斜部の傾斜勾配が膨出部の勾配より屋根勾配に近づき得ることを特徴とする金属製瓦。
- 前記各膨出部間の所定間隔が屋根下地の縦桟木のピッチを整数で除した数値とすることを特徴とする請求項1記載の金属製瓦。
- 前記被係合段部の後壁または前記延設部に後部開口部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の金属製瓦。
- 屋根面上に多数の前記金属製瓦同士を葺設した場合に、前記傾斜部の傾斜勾配が屋根勾配と略同一になるように被係合段部及び嵌合部の各高さが設定されていることを特徴とする請求項1ないし3記載の金属製瓦。
- 前記傾斜部が複数の下降傾斜勾配で形成されていることを特徴とする請求項1ないし3記載の金属製瓦。
- 前記傾斜部が前記膨出部間に凹状湾曲形状に形成され、前記傾斜部の延長線上の係止部も凹状湾曲形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5記載の金属製瓦。
- 前記傾斜部が前記膨出部間に少なくとも2以上の凹凸条で形成され、前記傾斜部の延長線上の係止部も前記凹凸条に対応する形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5記載の金属製瓦。
- 前記傾斜部には凹凸模様が形成されていることを特徴とする請求項1ないし7記載の金属製瓦。
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- 2003-02-12 JP JP2003072796A patent/JP2004245008A/ja active Pending
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